、):iE大学社会福祉研究所年報 第12号(20]O}
第6章司法福祉へのファミリーグループ カンファレンス(FGC)の適用
Application of Family Group Conference to Juvenile Delinquent Case
村尾 泰弘*
Yasuhiro Murao
はじめに
ファミリーグループカンファレンスFamily Group Conference(家族グループ会議と訳 されることもある。以卜 ,FGCと略す)は子どもの虐待,非行などの問題を抱える家族に 対して,拡大家族(祖父母,親戚)などを含めて会議を開き,参加者のみで討議し,問題の 解決策について意思決定していくものである。ニュージーランドにおいて1989年に施行され た「児童,青少年およびその家族に関する法律」を根拠とする実践をその始まりとしている。
筆者はFGCを虐待ケースのFGCと少年非行ケースのFGCに大別して論じることができる と考えているが,ここでは少年非行に対応するFGCを論じることにしたい。とくに少年非 行におけるFGCは,損害の賠償,被害者と加害者の関係修復,コミュニティの回復といっ た要素を含み,修復的司法(restorative justice)の]つの実践形態として,新たな方向を 示している (伊藤,2004)、
修復的司法(Restorative Justice:!l多復的正義,回復的「fJ法とも訳される)とは,犯罪を 被害者と加害者,その家族を含む地域社会の問題としてとらえ,地域社会の回復力で自ら修 復していこうとするものである。もともと犯罪は,地域社会の問題であった。それが近代に 至り,社会の秩序維持が国家の役割となってから,犯罪は国家に対する犯罪となり,刑事事 件では,最近まで.被害者は当事者として参加する機会もなく疎外感を持たざるをえない存 在になっていた(近年,被害者支援活動の高まりの中で,この被害者の立場は制度的にも是 正されてきているピ修復的司法は,もう一度犯罪を被害者と加害者と地域の人間的な関係 の中でとらえ直し,当事者参加的対話的手法によって,被害回復と加害者の更生,地域の安 全をはかろうとするものである。具体的には,犯罪を人々およびその関係の侵害と把握し,
司法を,被害者,加害者,コミュニティが一緒になってそれぞれの回復,和解,保障を促進 する解決を探るもの(高橋,2003)である。
*、力E大学社会福祉学部人間福祉学科
キーワード;ファミリーグルーブカンファレンス、FGC、少年非行,修復的司法, VONI
司法福祉へのFGCの適用(村尾}
少年非行のFGCはこのような修復的司法との関連で論じられることが多いが,本稿では,
家族の持つ力や家族存在意義を再検討しつつ,少年非行ケースへのFGCの我が国導入の可 能性と導入する場合の具体的な課題等を検討してみたい,
1.少年非行に対するFGCとはどのようなものか
さて、少年非行に対するFGCとはどのようなものであろうか。
まず,伊藤(2004)に従いながら,ニュージーランドにおける少年非行のFGCを紹介し てみたい
ニュージーランドにおける少年司法の経路についてFGCを中心に概略化したものが図1 である一t警察が少年犯罪を扱う選択肢としては主に次の3つがある。①警察による警告もし
くはダイヴァージョン(diversion:非公式の非刑罰的処理),②少年司法コーディネーター
(youth justice coordinator,以下コーディネーター)への委託,③少年がユ4歳以ヒで一定 の基準を満たしているもしくは犯罪が殺人(murder:謀殺とmanslaughter:傷害致死を 含む)である場合は逮捕し少年裁判所に送致する。さて,このような少年非行の流れの中で,
選択されることがもっとも多いのは警告ないしダイヴァージョンで,次に多いのはFGCで あるという. 警察による警告等で済まされるような軽犯罪と,殺人事件を除くすべての少年 犯罪 1[件はFGC開催の対象となる.FGCは警察から直接コーディネーターに委託されて開 催される場合と.裁判所から送致されて開催される場合がある。まれではあるが,FGCで の勧告を受けて再び裁判所に送られるケースもある。
犯 罪
1r
そ 為
一 一.一一一L _一一一一一一一一一一一二望一一_一一一一一一一一一_ , 一一一」L−一一一一一一_
警察による警告 少年司法コーディネーター 逮捕し少年裁判所 俳公式な制裁を含○ !への委託 での起訴 ミ
1 7−
/
.〔一て
\I− .−7・
同 意 )1少年裁判所1
ペ ノ
一藩ば//\一
1の実行 l k,)令:
出典 :Nlorris and Nlaxwel1ほ993:80
図1 ニュージーランドにおける少年司法:システムの経路(伊藤,2004による)
、乞[1:大学社会福祉研究所年報 第12号C201⊂)}
2.FGCの実際
1)FGCの参加者
FGCへの参加資格を有するのは,対象となった少年,両親,後見人もしくは養護者,家 族メンバー,拡大家族もしくは対象者の部族の代表者,コーディネーター,警察の代表者,
犯罪(申し、TtLてられた犯罪)に関係する被害者,少年の弁護人,ソーシャルワーカーなどで
ある,
FGCの課程において家族が果たす役割はきわめて重要であり,1989年法が定める家族に は肉親のみでなく,拡大家族,結婚によって結びついた一族,先祖を1日1じくする部族(マオ リ語でそれぞれWhanau, hapu, iwiとよばれる)なども含まれる。また家族の支援者,た とえばスポーツクラブのコーチや学校のカウンセラー,親しい隣人や友人を含める場合もあ る。このような人々の参加は少年に,いかに多くの人々が少年のことを気にかけているかを 悟らせ,社会的支援ネットワークを広がるうえでも意味があるとされている。
1989年法では被害者もしくはその代理人の参加が規定されていたが,1994年の法改正によ り被害者は支援者を伴うことができ,FGCの開催や決定された計画に関して相談を受ける 権利が明記された。被害者がFGCに参加しなかった場合でも, FGCで決定した計両やその 実施結果について通知される,被害者が参加しない場合は警察が被害者の利益を代表する。
少年弁護人(youth advocate)と素人弁護人(lay advocate)は,少年が逮捕され少年裁 判所に送致される場合,裁判所によって任命される。少年弁護人は少年の利益を代理し,少 年からの求めがあればFGCに参加する。素人弁護人とは,少年がもつ民族的背景を理解し その文化的価値を支援できる者を指す。
また,ソーシャルワーカーはソーシャル・ウェルフェア局の職員であり,児童養護・保護 と少年司法の担当を兼ねている場合が多い。FGC開催に向けてコーディネーターの仕事を 援助したり,FGCの決定事項の実行状況をモニタリングし必要なサービス提供を支援する。
コーディネーターは1989年法によって定められた地位であり,ソーシャル・ウェルフェア 局の長官によって任命される。FGCを招集するうえでの役割,任務。権威を果たすために 必要な人格,訓練,経験を兼ね備えていること,かつ対象となった少年の文化的背景に敏感 でなくてはならないとされる。その任務は警察からの委託を受け,FGCを開くために参加 者間の調整をして法律に従ってFGCを招集し,そこで決定された計画や勧告などを記録し,
その記録を閲覧資格のある者が利用できるようにしておくことである」
2)過程
a)FGCが開かれるまで
警察もしくは裁判所から委託されたケースについて,コーディネーターはそのケースにか かわる情報を検討したうえで,対象の少年と家族に連絡をとり家族訪問をする、、この訪問で
司法福祉へのFGCの適用(村尾)
コーディネーターはFGCについて説明し,少年がその告訴を認めるか否かを決める,t FGC への参加が決まると.開催の日程,場所等について取り決められる、FGCが開かれる場所 は,被害者がいない犯罪,たとえば薬物所有.無免許運転などでは,少年の家となることが 多い.被害者がいる犯罪の場合は、少年と被害者双方の文化的背景が配慮され、地域の集会 所、コミュニティ・ハウス,学校もしくは教会などが選ばれる一マオリ族の少年の場合,マ エラとよばれる少年が属する部族の集会場などでひらかれることもある.
b)FGCの開催
FGCは1989年法に基づいて地域ごとに多様に行われているが,基本的に「情報提供」「少 年と家族だけの討論」「参加者全員の合意」という3段階から成る。以卜 に,コーディネー ターの役割を中心に,その概略的内容を記す(Stewart,1996)。コーディネーターは,開催 前に参加者の座席の位置を決め,飲み物などを準備する。座席は[1]形にして参加者全員の顔 がみえるようにし,コーディネーターは全員を観察できる位置に座るのが・般的である。
FGCは,家族の文化的背景を配慮しその希望にそって祈りや祝福などの儀式で始められ る。被害者が出席している場合は,コーディネーターによって被害者が阻害されないための 配慮がなされる。コーディネーターはまず参加者全員にT会合が開かれる理由,FGCの過 程と決定 ]噸の遵守,会合内容の秘密保持などについて詳しく説明し,FGCについての理 解が徹底されるように努める。
FGCの第ユ段階として,情報提供と質疑応答の時間がとられるz招かれた警察官が少年 の犯した行動に関する概要書を読み上げる。次に被害者側からの意見陳述があり,通常「な ぜそのようなことをしたのか」「いまどんな気持ちでいるのか」などといった質問が続く。
少年はこのような質問に答えることをとおして.自分の犯した行為についての自覚を促され る.さらに,少年の家族からも質問や意見が述べられる。被害者と関係者からすべて情報が 提供され,質問が出なくなったところで休憩に入る。
第2段階では,対象少年の家族だけで(他の参加者は別室で待機する).第1段階で話し 合われた内容を基に討議する、この討議では,被害者への謝罪,賠償,ペナルティ(pen−
a]ty)の3点を含んだ計画を立てることが求められる。謝罪については,少年が被害者へ手 紙を書くことなどを家族とともに計画する。賠償はさまざまな方法によって行われるが,た
とえば少年がアルバイト等で得た賃金を定期的に支払う,自転車やステレオなど少年の持ち 物を売ったお金をあてる。家族が立て替えるなどがある。ペナルティについては,少年の犯 罪の内容によって異なるが,コミュニティ・ワーク(コミュニティにおける無報酬の労働),
外出禁止,友人との交際禁止などが課される場合が多い。
第3段階では再び被害者や警察官などすべての参加者が集まり,、ltlてられた計画について 確認し実行期限などを定め合意に至る。ほとんどの計画は3カ月以内に実行することが求め
られる,コーディネーターは計画が実行可能なものになるように細部をチェックし,計画の 実施状況を再検討する日程を決める。
立正大学社会福祉研究所年報 第12号(2010)
会合を終えるにあたって,コーディネーターは参加者の最後の陳述を求め.出席への労を ねぎらい,必要な儀式をもって終了する。少年に対しては,計画が実行されることによって 本ケースが終了となることを確認する。
3)FGC終了後
コーディネーターにはFGCで作成された計画や決定事項をレポートにまとめ,参加者全 員にそのコピーを送付する責任がある。計画の遂行をモニタリングするのは,ソーシャルワ
ーカーで,コミュニティ・ワークを始めることを援助したり,賠償金の支払いを管理したり,
アセスメントやカウンセリングを行う。もし計画が実行されなかった場合は,ソーシャルワ
ーカーがコーディネーターに連絡し,コーディネーターは少年に警告の手紙を送る。それで も計画が実施されないケースは,警察によって少年裁判所に送致される。(以上,伊藤
(2004)による)。
3.わが国における修復的司法の試み
修復的司法は,わが国においても1990年代後半から多くの研究者によって紹介されるよう になり,近年は制度政策や実践において具体的な取り組みがなされるようになっている,
先駆的実践として注目されるものに,千葉県内の弁護士,家庭裁判所の調停委員,元調査 官による三団体が母体となって2001年に発足した「被害者加害者対話の会運営センター」に よる実践がある(山田,2002a,2002b)。このセンターは,少年事件における修復的司法の 実践を目的として,被害者,加害者,それぞれの家族,代理人弁護士などから申し込みを受 け,被害者と加害者の対話を実現させる活動を行っている。センター会員は約130人,保護 司,調停委員,元家裁調査官,弁護士など直接少年非行にかかわった経験をもつ専門家から 元会社員,主婦などの一般の社会人に至るまで多様な人々が集まり,その会費を財源として 運営されている。
対象は加害者少年が非行事実を認めている事件で,両当事者に参加への意思があることが 要件となっている。
D「被害者加害者対話の会運営センター」の実践
それでは,「被害者加害者対話の会運営センター」が行う「対話の会」のプログラムの一 部を紹介したい。
1)対話の準備
センター内で担当する進行役(通常2名)を決め,この進行役が被害者・加害少年・家族 等と面談し,対話の目的・意義などを十分に説明し,被害者の被害状況・加害少年が非行を 犯すに至った経緯などを聞くとともに,両当事者に産科の意思があるか,相手の人格を尊重
ifJ法福祉へのFGCの適用 村1由
しつつ対話できる状態にあるかなどを確認する。
2)対話の参加者
両当事者の希望により,家族やそれ以外の支援者,地域の人(教師,保護司,友人,近所 の人等)参加できる,,
3)対話の進め方
非公開,秘密保持を基本とし,次の四段階で進める,
第一段階
各参加者が事件での日分の体験.事件によって受けた影響を話す時間。
第二段階
質問と答えの時間、被害者は「どうして自分が襲われたのか」,「警察に通報したことで,
自分を逆恨みしてやしないか」などの疑問や不安を加害少年に直接尋ねることができる、
第三段階
被害の回復や少年の史生のために何ができるか話し合う時間。
第四段階
話し合いが合意に達した場合,進行役はその内容を文書にまとめ,これを読み上げて参加 者に確認し,各参加者の署名をもらってコピーを渡す.
4)対話の後で
合意文書の約束事が守られたかどうか確認し,必要に応じてフォローアップのための対話 の会を開く。
このセンターの行う「対話の会」のモデルは,アメリカのミネソタ大学にある「修復的司 法調停センター」が提唱し,進行役の養成講座等を開いて普及に努めている「被害者家族調 停」やFGCにあるという。
同センターの山田由紀子弁護十は,加害者と被害者,お圧いが人間的な接点をまったく持 たないままにマスコミ報道や刑事・民事の手続きが進行していくことの弊害を指摘し,「マ スコミを通じて見た相手のわずかな言動や民事裁判で相手の代理人弁護士が書いた法律上の 主張を見て,「自分に都合のよいことばかりを書いている』,『反省の気持ちが感じられない』
などと不信感をつのらせたり疑心暗鬼になったりする」と述べる。そして,「(その結果),
その溝や距離は何倍にもなってしまう。進行役として,別々に 双方に会ってみると,どち らの当事者も家族も普通以ヒに常識的で人間的な人々であることを実感する」と,直接対話 の意義の大きさを強調している(山田,2002a)。
FGCが少年の拡大家族や支援者を巻き込むことに力点をおいているのに対して,対話の 会は両当事者の話し合いを重視しているといえる(伊藤,2004)。
、Ttl.[1{大学社会福祉研究所年報 第12号(2010)
4.FGCの我が国への導入
わが国においてFGCを導入する手法については,すでにさまざまな提案がなされている
{前野,2002b;守屋,2002;石井,2001)、たとえば,最終処分前の家庭裁判所による試験 観察における活用,保護観察・少年院などの処遇過程や処遇後での導入などが考えられてい
る (伊藤,2004)。
ここでは,試案として,児童相談所での適用と家庭裁判所での適用(試験観察での適用)
を論じてみたい。
①児童相談所での適用試案
14歳未満の非行(触法,ぐ犯)においては,手当の必要がある場合、まず児竜相談所で扱 われる。そのうえで、家庭裁判所に送致することが必要な場合のみ家庭裁判所に送致される のである。
このような14再未満の非行は,FGCが有効ではないかと考えられる。 FGCを適用した場 合,裁判所に対する関係や構造は,ニュージーランドの場合とよく似ている.したがって,
14歳未満の非行については,大まかに言ってニュージーランドのFGCがかなりそのまま適 用することが可能ではないだろうか,
第1段階〔情報提供とL7 1疑応答の時間)での参加者は,児童相談所職員,(非行を犯した)
少年本人,その家族(拡大家族),被害者,教師などが想定される。ニュージーランドの場 合のように警察官が入るかどうかは慎重な検討が必要であろう。私見では,日本の状況を考 えると,警察官の参加はないほうが良いと考える。これらの参加者で話し合いを行う。
ここで重要なプロセスは,情報提供と質疑応答である。警察官ではなく児竜相談所の職員 が,少年の犯した行動に関する概要書を読み一ヒげるtt次に被害者側からの質問や意見が述べ られる。「なぜそのようなことをしたのか」「いまどんな気持ちでいるのか」などといった質 問。あるいは,被害者がどれだけ恐かったか.あるいは,どれだけ嫌な思いをしたか等の気 持ちの表明などが続くことになる。少年は被害者や関係者,家族の質問に答えることを通し て,白分の犯した行為についての自覚を促されることになる。さらに,少年の家族からも質 問や意見が述べられる。被害者と関係者からすべて情報が提供され,質問が出なくなったと ころで休憩に入るc
次の第2段階で、少年本人と家族(拡大家族)だけの,いわゆるファミリータイムを実施 する。第1段階で話し合われた内容を基に討議する.ニュージーランドのFGCでは,この 段階では,被害者への謝罪.賠償,ペナルティ(penalty)の3点を含んだ計画を立てるこ とが求められるという。謝罪については,少年が被害者へ手紙を書くことなどを家族ととも に計面したり,賠償を少年本人が家族と一緒に考える。ペナルティについては,例えば,コ ミュニティ・ワーク(コミュニティにおける無報酬の労働),外出禁止,友人との交際禁止 などが検討されることになろう。
司法福祉へのFGCの適用|村 尾)
第3段階では再び被害者や関係者などすべての参加者が集まり,、ヒてられた計画について 確認し実行期限などを定め合意に至る。コーディネーターとなる児苗相談所の職員は計画が 実行可能なものになるように細部をチェックし、計画の実施状況を再検討する日程を決める,
会合を終えるにあたって,コーディネーターは参加者の最後の陳述を求め,出席への労を ねぎらい,必要な儀式をもって終了する。少年に対しては.計画が実行されることによって 本ケースが終了となることを確認する。
FGC終了後
コーディネーターである児童相談所の職員はFGCで作成された計画や決定 狂項をレポー トにまとめ,参加者全員にそのコピーを送付する,計画の遂行をモニタリングするのも児童 相談所の職員が担当する。ソーシャルワーカーが,コミュニティ・ワークを始めることを援 助したり,賠償金の支払いを管理したり,アセスメントやカウンセリングを行う、もし計画 が実行されなかった場合は,ソーシャルワーカーがコーディネーターに連絡し,コーディネ
ー ターは少年に警告の手紙を送る。それでも計画が実施されないケースは,家庭裁判所への 送致が検討される。このような流れが想定出来よう,
2)家庭裁判所での適用試案
次に家庭裁判所での適用,特に,試験観察での適用を論じてみたい。
試験観察においてFGCを適用する場合,ニュージーランドでおこなわれている,裁判所 からFGCに付された場合が,構造的に近似したものとなろう、その意味では,かなり忠実 にFGCの適用が可能になると考えられる。児童相談所での適用と厄なるところが大きいの で,重複を避けるため、基本的なところのみを記載する.
第1段階晴報提供と質疑応答の時間)での参加者は.家庭裁判所調査官,〔非行を犯し た)少年本人,その家族拡大家族),被害者、教師などが想定される.警察官が入るかど
うかについては、私見では,日本の家庭裁判所の制度や実情.社会状況を考えると,警察官 は参加すべきではないと考える。これらの参加者で話し合いを行う,
ここで重要なプロセスは,情報提供と質疑応答である,家庭裁判所調)fFfffが,少年の犯し た行動に関する概要を説明する。手続E,もちろん否認tlll件は除外される 次に被害者側か らの質問や気持ち.意見が述べられる。少年は被害者や関係者.家族の質問に答えることを 通して.自分の犯した行為についての自覚を促されることになる、さらに,少年の家族から
も質問や意見が述べられる。被害者と関係者からすべて情報が提供され,質問が出なくなっ たところで休憩に入る。
次の第2段階で,少年本人と家族(拡大家族)だけの.いわゆるファミリータイムを実施 する。第1段階で話し合われた内容を基に討議する。謝罪については,少年が被害者へ手紙 を書くことなどを家族とともに計画したり,賠償を少年本人が家族と一緒に考える。ペナル ティについては,例えば,コミュニティ・ワーク(コミュニティにおける無報酬の労働),
立正大学社会福祉研究所年報 第12号(2010)
外出禁止,友人との交際禁止などが検討されることになろう。ここでは,現在,家庭裁判所 が行っている奉仕活動などを当てることも検討されるべきであろう。
第3段階では再び被害者や関係者などすべての参加者が集まり,立てられた計画について 確認し実行期限などを定め合意に至る。コーディネーターとなる家庭裁判所調査官は計画が 実行可能なものになるように細部をチェックし,計画の実施状況を再検討する日程を決める。
会合を終えるにあたって,コーディネーターは参加者の最後の陳述を求め,家庭裁判所調 査官はFGCで作成された計画や決定事項をまとめ,少年保護者に確認する。必要に応じて,
参加者にそのコピーを送付する。参加者の出席への労をねぎらいFGCを終了する。
FGC終了後
このFGCは在宅試験観察の一環として行われるので, FGCが終わったからといって試験 観察が終わるわけではない。家庭裁判所調査官は計画の遂行をチェックし,賠償金の支払い を確認したり,カウンセリング的なかかわりを継続的に続けることになる。そのうえで,審 判が開かれ,終局処分が決められることになる。このような流れが想定出来よう。
3)課題
児童相談所や家庭裁判所でFGCを行う場合の最大の課題は,拡大家族を集められるかど うかということであろう。
前述の「被害者加害者対話の会運営センター」が行う「対話の会」の実践活動と比較した 場合,FGCが少年の拡大家族や支援者を巻き込むことに力点をおいているのに対して,「対 話の会」は両当事者の話し合いを重視しているといえる(伊藤,2004)。「対話の会」との違 いは,FGCにはいわゆるファミリータイムが入るという点である。拡大家族が集まるかど
うかが最大のポイントとなろう。
ニュージーランドでのFGCは,先住民族の家族の絆の強さがその背景にあると考えられ る。それだけに少年の更生に家族の影響は大きいといえる。
日本の場合,拡大家族の結束力は強くはない。オジ,オバの参加は難しいであろう。少な くとも両親が揃っている場合は,両親の参加は是非とも必要であり,そこに祖父母の参加を 期待したい。
おわりに
日本の家族を考えてみると,戦後は,もっぱら「家制度」をなくすことに力を注いできた といえる。それは日本の民主化に大きな影響をもたらしたが,また,失うものも大きかった のではないだろうか。家族の力,とりわけ拡大家族の力の衰退はそのことと大きな関係があ るといえよう。しかし,もともと日本は家族を大切にしてきた。家制度があろうとなかろう と,家族を大切にすることとは直接関係がないともいえる。筆者は家族療法を標榜する心理
司法福祉へのFGCの1訓川村尾)
臨床家であるが,臨床活動の中で家族の力をまざまざと見てきている。我々にとって,この 家族の力を引き出せるかどうかが,臨床活動の結果に大きく影響を及ぼすものとなる.
さて,「被害者加害者対話の会運営センター」が行う「対話の会」の活動はVOM(被害 者と加害者の対話Victim Offender Mediation)が[1−i心に据えられ,修復的司法の考えがそ の基本にあるといえる。しかし,FGCの本質はやはり家族の力を活かすことにあるのでは ないかと筆者は考えている。したがって,H本の司法福祉へのFGCの導入も,修復的riJ法 よりの考え方よりも,家族の力をいかに活かすかということを中心に筆者は考えたいのであ る。虐待防止活動の方法として,例えば、サインズ・オブ・セイフティ・アブローチ等に注 目が集まっているが、司法福祉領域にも,このような家族療法から派生した技法をもっと導 入していくことを考えたい。そして,今まで議論されてきた修復的司法としてのFGCとい うよりも,家族の力を活かすための方法としてのFGCをさらに考えていくこの重要さを最 後に指摘しておきたい.
文 献
石井小夜子(2001)「少年犯罪と向き合う」岩波書店.
伊藤富iri[(2004)「少年司法における家族グループ会議一ソーシャルワーク実践からの検
言寸一」 「ト]二≦ミト畠hiit;t 2 45(1)、 67−76.
前野育.三〔2000)「ニュージーランドのFamily Group Conferenceとマオリの文化的伝統」
「?.jEと正 〈ifl』 51 (1), 15−40.
前野育.三(2002a)「修復的司法一市民のイニシァティブによる司法を求めて」『犯罪社会学
石升究』 27, 11−26.
前野育三(2002b)「修復的少年司法一少年の更生と被害者の権利の調和をH指して」『自山 と止義』 53,40−7.
守屋典子(2002)「少年事件協議の実現に向けて」「自由と正義』53(5),48−57.
高橋則夫(2003)「修復的司法の探求』成文堂.
山田山紀子(2002a)「少年と被害者の関係修復をめざして」「月刊少年育成』47(4),8−14.
山田由紀子(2002b)「「被害者加害者対話の会運営センター」の発足と実践」『自由と正義:
53(5), 58−67.