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審 決 と そ の 司 法 審 査

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(1)

審 決 と そ の 司 法 審 査

一 七

8 ‑ 4 ‑471 (香法'89)

(2)

当労働行為についての命令︵労組法二七条︶

準司法機関による行政審判のうちには前審と認めて良いものがあるとの考えに立つ兼子教授は︑公正取引委員会

の審決︵独占禁止法五五条︶︑特許審判官の審決︵特許法一五七条︶︑公害等調整委員会の裁定︵土地調整法四二条︶︑

海難審判庁の裁決︵海難審判法四条︶︑電波監理審議会の異議についての議決︵電波法九三条の四︶︑労働委員会の不

その事項について裁判官と同様な独立の権限を有する

前審としての審判手続

判することは妨げられない 公正取引委員会や特許庁などの準司法機関の行う審判手続を訴訟の前審とみるべきか否かについては争いがある︒いうまでもなく︑行政機関は終審として裁判を行うことができない

︵裁

判所

法三

条二

項︶

︒ そこで︑準司法機関による行政審判に前審としての地位を認めて良いものがあるか︑認めるとした場合には当該審 判がどのような構造手続を有していなければならないか︑また︑前審としての地位を認めた場合に︑審決と司法審査

との関係はどのようになるのかという問題がある︒

本稿は︑これらの点について︑これまで論じられていることを整理しつつ︑若干の私見を述べたものである︒

は じ め に

などについては︑ ︵憲法七六条二項︶が︑行政機関が前審として審

一 八

8 ‑ 4 ‑472 (香法'89)

(3)

審決とその司法審査(波光)

一 九

機関が︑訴訟手続に準じる法律的手続による審問・証拠調べを行ったうえで審決しており︑訴訟の前審としての意味

をもつとされる︒この種のものは︑専門技術的分野において︑その方面の学識経験を有する職員にまず審査させるこ

とが︑一般の法律専門家だけによって構成される裁判所に取り扱わせるよりも正確な事実認定が期待でき︑また︑裁

判官の負担の軽減となって合理的であるからである︒

また︑園部教授は︑公正取引委員会の審判手続きつき︑審決取消訴訟の提起があったとき裁判所は公正取引委員会

に対し︑当該事件の記録の送付を求めなければならないとしていること︵独占禁止法七八条︶及び審決取消訴訟に実

(2 ) 

質的証拠法則が採用されていること︵同法八

0

条︶から︑裁判の前審的手続としての位置は明確であるとされる︒す

なわち︑﹁このように記録の送付の制度が設けられていることは︑審決取消訴訟の提起を通常民事訴訟の控訴の提起の

場合と同様に考えて︑委員会を第一審裁判所に当たるものとしているとみることができる︒民事訴訟の場合︑控訴裁

判所の裁判所書記官は︑遅滞なく第一審の裁判所書記官に訴訟記録の送付を求めなければならない︵民訴法三六九条︶︒

これに対し通常の行政訴訟では︑行政庁の処分に至る手続にあらわれた一件記録は︑証拠として当事者の申立て又は

職権により取り調べられることはあるが︑裁判所から行政庁に対し直接一件記録の送付を求めることはできない︒行

政訴訟においても文書提出命令︵民訴法三一三条︑三一四条︶又は文書送付嘱託︵同法三一九条︶の制度が準用され

るが︑これらは︑所定の要件の下で︑個々の文書について裁判所が文書の所持者にその提出を命じ又は嘱託するもの

で︑事件記録の送付とは制度の趣旨を異にする︒このようにみてくると︑審決取消訴訟における事件記録の送付の制

度は︑実質的証拠の原則とあいまって︑委員会の審決手続を裁判所の手続と密接に関連づけ︑裁判所の前審的手続と

しての位置を明確に定めたものということができる﹂と述べられている︒

このような論理からすれば︑公害等調整委員会の裁定に対する訴訟も東京高等裁判所の専属管轄であり︵土地調整

8‑4 ‑473 (香法'89)

(4)

か ら

法五七条︶︑事件記録の送付の制度︵同法五一条︶︑実質的証拠法則が認められる

は裁判の前審と解されるし︑さらに︑電波監理審議会の異議についての議決に対する訴訟も東京高等裁判所の専属管

轄であり︵電波法九七条︶︑事件記録の送付の制度︵同法九八条︶︑実質的証拠法則が認められる

その聴聞についても裁判の前審と解してよいことになる︒

(3 ) 

公害等調整委員会の審理については︑我妻教授も第一審的役割を果しているとされる︒

特許審判について︑肯定説は︑特許庁における審判手続は︑一般行政庁のなす行政処分と異なり準司法的な手続で あり︑その点で前審としての裁判がなされているわけであるから︑裁判所における事実審理の二番を省略した形で東

(4 ) 

京高等裁判所に専属管轄権を認めたものであるという︒否定説は︑法律上の根拠も認められないばかりでなく︑その

(5 3)  

構成手続に関する実質においても︑前審たるに耐えうるようなものではないとする︒

また︑海難審判につき斉藤浄元氏は︑﹁海難審判は行政上の裁判である︒そしてその裁決は︑海難の原因に関し具体

的事件について行政機関たる海難審判所の公権的判断であり︑これに処分を行うのであるが︑憲法第七六条の規定に

よって︑行政機関は終審として裁判を行うことが出来ない︒﹂と述べられ︑その審判が裁判の第一審的性格を持つとさ

(6 ) 

れる

行政審判の審決に対する訴訟のうちで︑東京高等裁判所の専属管轄と規定されているものには︑独占禁止法八五 ︒

条︑八六条︑中小企業等協同組合法︱

0

九条︑特許法一七八条︑実用新案法四ヒ条︑意匠法五九条︑商標法六三条︑

上地調整法五七条︑海難審判法五三条︑電波法九七条がある︒これらの法律が規定する審決に対する訴訟は︑

も地方裁判所を経ることなく直接東京高等裁判所の審理の対象となるものである︒

行政事件に関する訴訟は︑行政事件訴訟法に定めのない事項については︑民事訴訟の例による

︵同法九九条︶こと

︵行政事件訴訟法七

︵同法五二条︶ことから︑

0

)

しすォ

その審理

8 ‑ 4 ‑474 (香法'89)

(5)

審決とその司法審脊(波光)

二 三

号 ︶

ょ ︑

 

独占禁止法八九条から九.条までの罪に係る訴訟︶ 条︶が︑現行民事訴訟では︑・].審制をとり︑第一審と控訴審は事実審とされ事実問題︑法律問題につき審理が行われ︑上告審は法律審として︑法律問題についてのみ審理が行われる︒原告︑被告両酋事者は︑判所において︑事実間題について:度︑法律問題について

. .

.  

度の審理・判決を受けることが保障されている︒両当事

うな審級の利益は︑ それぞれ別個の三審級の裁

このような審理・裁決を繰り返すことによって

甘な判決の実現が期待できるのである︒このよ

l E

両山ー事者に保即されているとみるべきであり︑審級制を単に立法政策の問題としてかたづけるに

は問題があると思われる︒これらのことからも︑右のように第一審が省略された行政審判については︑裁判所の第一

審として取り扱われているという考え方がでてくる︒

なお︑民事訴訟の一部︵例えば独占禁止法.ー五条の規定に基づく損害賠償請求訴訟︶

し︑二審制を採用しており︑この点について判例は︑﹁憲法一二ニ条はすべての者に対して憲法及び法律の定める裁判所

において裁判を受ける権利を保障しているが︑右規定は︑三審制を保障したものではなく︑裁判所の裁判権の分配︑

するものでなく︑

については︑第一審裁判権が東京高等裁判所に属するものと規定 審級その他の構成を法律の現定に委ねることとしたものと解すべきであるから︑そのような規定が憲法三二条に違反

また同法^四条に違反するものではない﹂としている︒このような法制及び判例があるからといっ て︑前記のような行政審判を裁判の第

1審と解しないことの積極的理由とはならないと思われる︒

独占禁止法︵昭和二二年法律第五四号︶︑土地調整法︵昭和二五年法律第二九二号︶︑電波法︵昭和二五年法律第

いずれも戦後制定され︑それぞれの法律において︑専門技術的な行政領域を担当する機関として︑ア メリカの独立規制委員会

( i

n d

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d e

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r y

o   c

m m

i s

s i

o n

s )

を範とした行政委員会制度を設け︑

専門技術的問題については︑その準司法的機能によって処理することとされた︒ 者にとってみれば︑

や刑事訴訟法の一部︵例えば

その取り扱う

8 ‑ 4 ‑475 (香法'89)

(6)

として発達したものであるが︑

か し

その審理の対象とする事項は︑裁判によっても処理することのできる問題である︒し

その専門技術的性質によって︑特に特別の行政審判制度を設けたものであって︑云わば裁判に代るべき性質を

もつものである︒したがって︑そこでの手続にも︑英米法的な準司法的手続とは別の意味で司法手続類似の構造をと

(8 ) 

っているのである︒旧制度の下では行政処分の審査は一般には司法裁判所の権限に属しなかった

であるが︑戦後司法審査が全面的に認められる現行制度になってから︑

略して東京高等裁判所としたのは︑各行政機関の審判手続を訴訟の前審と認めたからであると思われる︒

( l ) 兼子一・竹下守夫﹃裁判法﹄︹新版︺︵法律学全書三四︶一1

︱1

0

頁︒兼子一﹁審決の司法審査﹂﹃訴訟と裁判﹄︵岩松還歴記念︶四六

四頁︒兼子教授が指摘される審決のうち︑第一次的処分の審査を目的とする審決は︑実質

t

は司法作用であって︑行政機関の前審

としての裁判に当たるとされる︒これに対して︑﹁公正取引委員会や労働委員会の行為のように自ら第一次的処分となるものもあ

り︑これらは性格

t

公権的確認行為に尽きず︑命令的若しくは処分的性格をもつわけであるが︑その基礎となる認定資料について

審問手続が要求される点で審決に属するということができる︒特に処分の公正を期し︑関係人の利益を保障するため処分前に審問 特許庁及び海難審判庁の審判は︑ い

と思

われ

る︒

これらの審決に対する訴訟を︑審級を一審省

︵旧

憲法

六一

条︶

元来アメリカの独立規制委員会による手続は︑司法手続に代る意味をもつものであったから︑司法手続による保障

に代るべき手続的な保障が要請され︑

d u e p r

o c

e s

の原理の下に︑準司法的手続を行うことになったものである︒わがs

国に設けられた行政委員会についても︑その独立性を保障するとともに︑その行う準司法的機能については︑公正性

を確保する手続規定を設けたのである︒そして審決に対する訴訟を東京高等裁判所に専属せしめ︑さらに実質的証拠

法則を認めた︒このことは︑それらの機関の行う審判手続について訴訟の前審として位置付けをしたからに外ならな

いわば大陸法型の行政審判制度であり︑行政権に内在する行政の自己統制の手段

8‑4 ‑476 (香法'89)

(7)

審決とその司法審査(波光)

たものでなければならない︒しかし︑

審判手続の特質

の形式を用いるのであるしと述べられており︑これらの審決についても訴訟の前審としての意味を持つものと解しておられると思

( 2

)

園部逸夫﹁審決取消訴訟の法理﹂

l E 取引四1

( 3

) 我妻栄・豊島陸﹃鉱業法﹄︵法律学全書五‑)↓1

( 4 )

豊崎光衛﹃工業所有権法﹄︹新版︺︵法律学全書五四

I ) 九五頁︒播磨良承・盛岡

1夫﹃

L業所有権入門﹄︵法学書院︶こハ

0

頁 ︒

( 5

)

原増司﹁特許訴訟﹂﹃民事訴訟法溝座﹄第

巻︵有斐f i

o o )

q

( 6

)

斉藤浄元﹃海難審判法﹄︵日本海事振輿会︶.四四貞︒

( 7

)

最高裁大法廷昭和二三年↓

1

1

‑ 0

日判決刑集.一巻三号.七五頁︒同昭和二九年二2月一三日判決民集八巻↓

0

号一八四六頁︒東京 高裁第三特別部昭和五五年九月二六日判決公取委審決集:八巻別冊二

1九六¥‑亡九七頁︒同昭和五六年七月1

七日判決同七〇\七

一頁︒最高裁第一一小法廷昭和五九什二月一一四日判決公取委審決集ぞ〇巻二四四頁︒

( 8

) 雄川一郎﹃行政争訟法﹄︵法律学全書九︶q

0

頁 ︒

この際注意すべきことは︑ 行政庁の準司法的機能が裁判の前審的機関たるためには︑独立の権限を有する審判機関が訴訟手続に準じる法律的

手続による審問・証拠調べを行うことによって︑当事者や利害関係人の利益が十分保護されているという実体を備え

それらの作用を行う行政機関の組織や手続の構成原

理が裁判所のそれと全く同一である必要はないということである︒

近時の行政手続の特色として︑行政手続における﹁司法形式化﹂あるいは﹁民事訴訟手続への傾斜﹂がみられると

8‑4 ‑477 (香法'89)

(8)

いわ

れ︑

るた

め︑

また︑行政事件訴訟法は七条で﹁この法律に定めがない事項については民事訴訟の例による﹂

その審理手続の構造については︑多くの点で民事訴訟があてはまるであろう︒しかし︑以上のことは︑行政

(l ) 

手続に固有な本質的性格と矛盾しない限りであることはいうまでもない︒

そこで︑行政手続に固有な本質的性格とは何かが問題となる︒それぞれの行政委員会の性格︑任務によって異なっ てくる点もあろうが︑行政手続法

1般に適用される基本原理としては︑次の点があげられている︒①職権主義︑②書

面主義︑③間接審理主義︑①当事者公開主義︑⑤当事者聴聞の原則︑⑥自由証拠主義︑⑦簡易・迅速・経済の原則︑

⑧信義誠実の原則︒

右のうち︑職権主義︑書面主義︑間接審理主義等は︑民事訴訟の審理方式と基本的に相容れない原理であり︑行政 手続と民事訴訟とは菫要かつ基本的な点で相異なるものと考えざるをえないところであり︑結局において︑右のよう

いかにして手続の基本的要請である適正手続を実現していくか

雄川教授も︑行政機関の手続構造につき︑裁判手続そのままのものが要請されるわけではなく︑行政手続としての 性格をもちながら︑いかに適正な手続を形成するかが肝要であることを強調される︒また︑園部教授も︑行政手続の

完全な司法化は不可能であるし︑また司法化を究極の目標とすべきでないと次のように論じられている︒﹁行政委員会

の司法化におのずから限界があり︑完全な司法化は不可能であるし︑また司法化を究極の目標とすべきでないと考え ている︒行政作用の特色は︑複雑な社会的︑経済的事象に対する臨機応変な対応の可能性にあり︑司法作用の特色で ある紛争の公正な処理とは必ずしも相容れないところである︒行政委員会の手続は︑行政と司法の双方の長所をでき

るだけ活かして︑事案の迅速かつ公正な処理を図らなければならない︒﹂ を検討していくことが重要となってくると思われる︒ な行政手続における基本原理の特質を生かしながら︑ と規定してい

ニ四

8 ‑ 4 ‑478 (香法'89)

(9)

審決とその司法審査(波光)

(l

) 

( 2 )   ( 3 )  

準司法機関の行う審判手続を裁判の前審と位置付けたからといって︑

審判手続が司法手続と同↓でないことをもって︑前審としての位置付け

九じ八\九七九貞゜

二五

和田英人﹁行政委員会の準

I払的機能

L

u

中村弥:こ次可行政手続法概説し︵自治日報社︶^

 

^ご\:し貞゜

雄川.郎﹁司法審代に関する.問題﹂﹃裁判法の諸間遅

R

口︵兼

f還暦品念︶五四.ご\五四四貞︒兼子教授は︑後述のとおり︑そ

の指摘される審決の

r i J 法審行においては︑その審理手続で提出しなかった事実や申出なかった証拠に基づいて審決の詔定を攻撃 することができないとされるとともに︑これらの審決については︑法律に明文の規定がない場合でも実質的証拠法則が適用される べきであるとされる︒雄川教授は︑兼f

教授が司法審行の制約される根拠を︑第.に準司法機関の審決手続が裁判類似の構造をと っている点に求めており︑そしてこの審決理論を否定した判例は審決手続が裁判手続と必ずしも同様でないことをその理由とし ているものがあることを指摘されたうえ︑次のように述べられている︒﹁しかし︑私は一般論としてはむしろ逆に考えるべきでは ないかと思う︒準司法機関が実質的意味における争訟判断作用に限ってその機能としているとは限らず︑一般的には行政的機能を 併有している場合が多いことは︑わが国においても︑またアメリカにおいても同様に見られるところである︒また︑争訟の判断の 場合であっても︑それが裁判所ではなく︑行政機関の権限とされていることは︑そこに自ら司法権による判断とは別の見地が存す ると考えざるを得ないであろう︒そうであれば︑それらの作用を行う行政機関の組織や手続の構成原理が裁判所のそれと同一であ り得ないことはむしろ当然であるといわなければならないであろう︒即ち︑裁判所と行政機関の手続の相違を前提としながら︑司 法審査が制限され︑或るいは行政機関の事実認定が裁判所を或る範囲ないし或る意味において拘束する理由が存するからこそ︑行 政機関の審決手続自体が準司法的溝造をとることを要請されるという問題が生ずることになるのではないかと思われる︒従って また︑その場合の行政機関の手続構造の考え方としては︑必ずしも裁判手続そのままの構造が要請されるわけではなく︑行政手続

としての性格をもちながら、そこに事案の公正な判断、当事者•関係人の権利保護の要請を汲み人れた手続を形成することになる

のであろうと思われるのである︒﹂

を否定する理由にもならないということである︒ ければならない必要はないのであり︑

つま

り︑

また

その手続は司法手続と全く同一でな

8 ‑ 4 ‑479 (香法'89)

(10)

公害等調整委員会の審理 特 許 庁 の 審 判

公正取引委員会の審判

公害等調整委員会設置法

七条 法施行令︱︱二条 独

禁 法 二 九 条 法 三 五 条 三 項

審判官の任命資格

四審判手続に関する規定

( 4 ) 園部逸夫﹁審査審判手続の法理﹂公正取引四︱二号八頁︒

独立に関する直接の規定 はないが︑そのように扱

(l ) 

われている

設置法五条︑九条 審査審判規則二七条 法三一条 法二八条

委員会又は審判 官の独立性

関係行政庁の審判機関の独立及び審判手続における審問・証拠調べに関する規定は︑次のとおりである︒

法五二\五三条の二の︱︱

五四条の三︑五九条 規則三二\六五条 六八\六八条の三 特許法一四五\一五一条 証拠調べ等に関し民訴法 の規定を多く準用してい

る土地調整法三〇\四

0

証拠調べ等に関し民訴法 の規定を多く準用してい

審問・証拠調べ に関する規定

二六

8 ‑ 4 ‑480 (香法'89)

(11)

審決とその司法審査(波光)

電波監理審議会の聴聞

は保

障さ

れ︑

以上のとおり︑右の各審判機関について︑審判官は相応の資格のある者が任命され︑かつ︑その職権行使の独立性

その行う審問・証拠調べに関しては民事訴訟法の多くの規定を準用したり︑準用しなくてもそれぞれ詳 細な規定を設けており︑当事者や利害関係人の利益は十分保護されているという実体を備えたものとなっており︑こ れらの各機関が第一審としての審判を行うにふさわしい構造手続を有していると思われる︒

第一審としての審判を行政機関に委ねている理由は︑各機関の取り扱う事案が特殊な専門技術的な知識経験を必要 とする行政領域に属することによるものである︒このような特殊の行政領域に属する事案の実体的判断は︑

行政庁に行わせることが公正な結論を導くために妥当であるとの考えに基づくものとみられる︒

( 1

)

吉藤幸朔﹃特許法概説﹄︹第七版︺四八八貞は︑﹁審判官は︑特許庁長官の指揮命令から独立して職務を行使することができる﹂と

する︒同趣旨中山信弘編著﹃注解特許法﹄︵下巻︶八四八頁︒なお︑審判官の除斥及び忌避に関する現定がある︵特許法一三九\一

海難審判官の審判

電波法九九条の 法施行令三条

二 七

電 波 監 理 審 議 会 聴 聞 規 則 法 八 六

\ 九 四 条 八 条 規 則 一 五

\ 四 二 条

海難審判法二条

法三五\五二条

まず当該

8 ‑4 ‑481 (香法'89)

(12)

行政審判手続でなされた決定・裁決等の行為は︑その手続面たると実体面たるとを問わず︑また事実の認定及び法 律の適用の両面にわたり︑裁判手続で完全な再審査がなされるのが原則である︒また︑その際原行政行為又は決定・

裁決等の行政行為の当否そのものを審査の対象となし得るのであって︑行政審判手続に現われなかった問題でも︑当 事者の主張があれば︑裁判所はこれを審理し︑判決の基礎とすることができる︒そこに︑国民の権利の司法的保障の

一般的な意義がある︒

しかし︑右に述べたような原則に対して︑特殊な見地から裁判所の審理権が制限されうる場合がある︒すなわち︑

特に専門技術的事項に関して︑行政審判機関が特にそのための機関として構成され︑またその手続が当事者及び利害 関係人の利益の手続的保障の要請を満足するものである場合には︑行政審判手続と司法手続とを通ずる全体としての 争訟制度の合理的な構成の上から︑裁判所もそのような審判機関のなした判断を尊重すべきことが要請される︒行政 審判手続が準司法的手続の性格をもち︑裁判所の裁判に代る意味をもつ場合には︑原行政行為の当否は︑その審判手 続において集中して争わせ︑裁判所は︑その審判手続及びそこでなされた判断の適否を審在する権限を有するに止ま ると解するのが制度の趣旨に合致するというべきである︒すなわち︑この場合には︑審判手続における判断行為のみ

が司法審脊の対象となるのであり︑原行政行為自体は︑直接の司法審査の対象とはならなくなる︒そう解しなければ︑

(2 ) 

特殊の専門的審判機関の制度を設けた制度の趣旨が没却されることになるからである︒

兼子

教授

は︑

その指摘される審決(‑八頁︶の国法審育においては︑審決のみが審査の対象となり︑原処分又は行為

五審理の対象と新証拠提出の制限

ニ八

4 ‑482 (香法'89)

(13)

審決とその司法審査(波光)

定を攻撃することができるかという問題がある︒ ただ︑審決の示した理由の適否に関する攻撃防禦の方法として新たな事実の主張・立証をなすことを妨げないと説明 審判における審決又は決定を直接の対象とするから︑審理の範囲は審決理由に示された事実に限られるものとされ︑ 自体は直接司法審査の対象とはならないとされる︒原裁判官は︑特許審判の前審性は否定されるが︑特許訴訟は抗告

(4 ) 

されている︒また︑斉藤浄元氏は︑﹁海難審判所の裁決に対する訴の客体は海難そのものでなくして︑海難審判の処分

であ

り︑

それが合法的に行われたかどうかが問題である︒したがって︑

5)  

でなくて海難審判所における審判の過程である︒﹂と述べられている︒

二九

次に︑審決の違法審査は︑専ら審理手続において適法に収集提出された資料に基づいてのみ行われなければならな

いとするか︑あるいは当事者は訴訟の段階で︑審理手続で提出しなかった事実や申し出なかった証拠により審決の認

実質的証拠法則が認められる公正取引委員会の審決︵独占禁止法八

0

条︶︑公害等調整委員会の裁定︵土地調整法五

二条︶及び電波監理審議会の異議についての議決︵電波法九九条︶については︑必然的に新主張・新証拠の申出の制

限は随伴する︒前二者については独占禁止法八一条︑土地調整法五︱1一条にそれぞれ規定があり︑後者については電波

法には規定がないが︑新証拠の申出の制限は︑実質的証拠法則の当然の帰結として認められるとの最高裁判決がある︒

兼子教授は︑その指摘される審決︵一八頁︶について︑当事者は訴訟の段階で︑新主張・新証拠の提出はできないと

(8 ) 

されるが︑実質的証拠法則が認められる右の審決以外ついては学説上争いがあり︑ここでは判例の動向を示しておこ

特許審判に関して︑最高裁は︑昭和三五年に﹁独占禁止法八一条のような規定がない以上︑審決に対する訴である

からといって︑所論のように解することはできない︒所論は立法論としては格別︑現行法の解釈としては︑結局独自 この訴において裁判する事実は︑海難の内容

8‑4 ‑483 (香法'89)

(14)

の見解というほかなく︑とることができない﹂との理由を付して商標法に関する審決に対する訴訟で︑当事者は審判

(9 ) 

に提出されなかった新事実を主張することができると判示した︒また︑昭和四三年にも︑最高裁は︑実用新案登録無

効審判審決の取消訴訟で︑審決の判断をうけていない新たな公知刊行物に基づいて当該実用新案を無効と主張される

( 1 0 )  

ことを妨げない旨を判示した︒しかし︑最高裁は︑昭和五一年︑特許無効の抗告審判で審理判断されなかった公知事

実との対比における特許無効原因を審決取消訴訟において主張することは許されず︑この見解に反する従前︵右昭和

( 1 1 )  

三五年及び昭和四︱︱︱年︶の判例は︑これを変更すべきであるとの判示を行った︒

労働委員会の不当労働行為命令に関する訴訟においては︑労働委員会の審査段階で提出されていなかった訴訟当事

者の新たな主張・立証を許容し︑その審理の結果に基づいて労働委員会のした事実認定の当否を判断しうるものとし

( 1 2 )  

てい

る︒

一三一頁︒兼子一

﹁審決の司法審査﹂﹃訴訟と裁判﹄︵岩松還暦記念︶四六

( 1 )

雄川一郎﹃行政争訟法﹄︵法律学全書九︶

( 2

)

( 3

)

兼子一・竹下守夫﹃裁判法﹄︹新版︺︵法律学全書三四︶

( 4 )

原増司﹁特許訴訟﹂﹃民事訴訟法講座﹄第五巻︵有斐閣︶

( 5 )

斉藤浄元﹃海難審判法﹄︵日本海事振興会︶一四五頁︒

( 6

)

独占禁止法八一条は︑昭和五︱︱年に大幅な緩和改正が行われたために︑上地調整法五三条等との整合性が保たれない結果となって

( 7

)

最高裁昭和四三年︱二月二四日判決民集ニ︱︱巻一三号三二六一頁︒

( 8

)

兼子一前提書﹃裁判法﹄︱︱︱︱一頁︑同﹁審決の同法審査﹂四六六頁︒ただし︑﹁審理に当たって︑当該機関が職責上当然顧慮し得

三 〇

8 ‑4 ‑484 (香法'89)

(15)

審決とその司法審査(波光)

̲ . ̲  

た事実を看過したり︑行うべき証拠調べを怠った場合は審理の不尽︑違法の問題が生じるに過ぎない︒なお︑当事者が故意又は過

失なくして審理の段階に提出できなかった資料については︑当事者に不能を強いず追完を許すために︑審理不尽に準じて取り扱う

余地があろう︵独占禁止法八一条一項二号︑土地調整法五三条一項二号はこれを規定する︶﹂とされる︒

( 9

)

最高裁第三小法廷昭和三五年ニ︱月二

0

‑ 0

( 1 0 )

最高裁第一小法廷四三年四月四日判決民集二ご巻四号八一六頁︒

( 1 1 ) 最高裁大法廷昭和五

1

年三月

1 0

日判決民集

1

1 0

巻こ号ヒ几頁︒

( 1 2 )

東京高裁昭和三四年六月一六日判決労民例集︱

0

巻三号五

0

五頁︒東京地裁昭和四一年八月三

0

日判決労働民例集一七巻四号一

00

兼子

教授

は︑

その指摘される審決︵一八頁︶については︑

実質的証拠法則

すべ

て︑

その取消訴訟において︑法律に明文の規定がな

い場合でも︑専門技術的分野における専門家で構成する行政委員会が審決手続によって事実認定していることから︑

(l )

2

) 

実質的証拠法則が適用されるべきであるとされる︒

また︑原田教授は︑実質的証拠法則の採用には︑不可欠の前提として︑①行政審判機関が専門技術的能力を備える

よう構成され︑かつ︑第三者的立場から公正に事実審査ができるよう制度上保障されていること︑②審判手続が事実

認定の適正を担保し︑当事者や利害関係人の利益が十分保護されるよう整備されていることが最小限要求されるとさ

れたうえ︑特許審判官の審決︑海難審判庁の裁決︑労働委員会の不当労働行為命令などにつき︑﹁法に規定のないこと

8 ‑ 4 ‑485 (香法'89)

(16)

を唯一の理由として実質的証拠法則の適用を排除するというのは︑

(4 ) 

拠を見出すことは困難なように思われる﹂とされる︒

法的なものであるならば︑ いささか形式論にすぎ︑

さらに斉藤浄元氏は︑直接的表現ではないが︑次のように述べられている︒﹁その証拠資料に対して︑いやしくも合

その価値判断は全く高等海難審判所の自由裁量によるものであって︑裁判所はその価値判

(6 ) 

一貫して︑実質的証拠が認められるのは︑法律に明文の規定がある場合に限られるとする︒

断まで立ち入ることができないことである︒また︑行政処分の内容である懲戒裁量の多寡に対しても裁判所はこれを

批判するものでないことである︒けだし︑これらの事項は︑法律によって審判所にその権限を認めたものであって︑

(5 ) 

裁判所といえどもこれに干渉することはできないからである︒﹂

判例

は︑

特許審判官の審決︑海難審判官の裁決については︑法律では実質的証拠法則を規定していない︒これは︑行政作用 の手続には︑実体法審理を保障する手続としての固有の価値を体系的に認めて来なかったというわが国法の沿革に由 来するものではないかと思われる︒しかし重要なことは︑事実を公正正確に認定し︑法を正しく適用するのに︑実質

的に裁判所がそれに適していない場合がありうるということである︒

特許や海難の審判は︑特殊な専門技術的な知識経験を必要とする分野であり︑

た知識経験を有する専門官が当たることが適切である︒現在これらの審判では︑そうした専門官である独立した審判 官が︑裁判に準ずる手続により審問・証拠調べを経て事実認定している︒とくに海難審判については︑地方海難審判 庁と高等海難審判庁との二審制とすることにより︑事実認定の正確性が確保されている︒このようなことから︑これ

らの審決の司法審査においては︑審決のした事実認定について︑

よりこれを信じることが合理的でないと判断される場合以外は︑ このような分野については︑

そうし

そこに実質的な合理的根 その引用する証拠自体が実験則に反する等の理由に

その認定を尊重することが妥当であると思われる︒

8 ‑ 4 ‑486 (香法'89)

(17)

審決とその司法審査(波光)

独占禁止法︑土地調整法等の制定の際に︑行政機関による準司法的機能の統一的見直しを行い︑特許法︑海難審判法

等にも実質的証拠法則を規定すべきであったように思われる︒

労働委員会の不当労働行為命令については︑前述のとおり︑兼子教授︑石原教授は︑積極に解されるが︑学説の大

勢は消極に解しているようである︒本間教授は︑積極に働く要因として︑労働委員会の権限行使の独立性︵労組法施

行令一六条︶︑審問当事者の証拠提出︑証人に対する反対尋問の機会の保障︵労組法二七条一項︶︑審問手続の法定︵労

働委員会規則二九条以下︑労組法二六条︶等があり︑現実の審問手続においても労働委員会の方が裁判所より﹁綿密

な﹂証人調べを行い︑審問回数も多いこと︑また︑一般に審問手続の民事訴訟化が指摘されていることを上げられ︑

一方︑消極に働く要因として︑委員の任命資格が厳格でないこと︑委員の身分保障につき規定がないこと︑除斥・忌

一 九

条 ︶

のあるこ避の制度がないこと︑中労委の地労委に対るする指示・示唆・助言の権限︵労組法施行令一八条︑

と︑審査委員による審査という形での間接主義の可能性︵労働委員会規則四一条︑九条一項二号︶︑証拠調べについて

( 9 )  

の規定の未整備等の問題が残されていることを上げられている︒

なお︑人事院の不利益処分の審査も︑制度上準司法手続がとられており︑和田教授は︑行政手続の﹁民事訴訟手続

( 1 0 )  

への傾斜﹂の典型例の一っとしてあげられている︒しかし︑その司法審査における実質的証拠法則の積極論は見当ら

( 1 1 )  

ないようである︒判例は︑次に見られるように︑不利益処分の訴訟においては︑原処分を自ら全面的に審査するとの

態度のようである︒﹁原告は︑被告主張の食餌運搬拒否の点については︑処分理由書に記載されていないし︑かつ︑人

事院における審査請求でもその対象外とされたところでもあり︑本件訴において被告が再び主張することは許されな

い旨主張する︒しかし︑懲戒処分の取消の訴において処分理由書に記載されていない事由でも︑懲戒処分の事由とし

て主張することは妨げないと解すべきであり︑本件処分についての人事院審理で右の点が審査の対象から除外された

8 ‑4 ‑487 (香法'89)

(18)

( 1 2 )  

国家公務員法が人事院の権限の最終性を定めている︵三条三項四号︑九二条三項︶点との関連については︑判例は︑

これらの規定は︑﹁人事院が行政機関として最終の審判をする権限を有し︑他の行政機関の干渉をうけないことを規定

したものであって︑裁判所の事実認定の権限を制限するものではない﹂

ま ︑

' ︑

こと

当事者間に争いがないが︑かかる事情があっても︑右の理は変らないというべきである︒﹂

( l )

兼子一・竹下守夫﹃裁判法﹄︹新版︺

念︶四六六\四六七頁︒

( 2 ) 兼子教授が︑このように審決の司法審査の限界を認めても憲法上の問題が起きないとされる理由は︑次のとおりである︒﹁人身の 自由︑思想表現の自由︑集会・結社その他政治活動の自由権的な自然的人権については︑その保障は厳格でなければならず︑特に 刑罰その他これに類する制裁を科するについては︑罪刑法定主義の上からも︑その実質的要件である犯罪事実の有無を行政機関の 認定に任せ︑司法審在を事後審査に限ることは許されない︒しかし︑財産権やこれを基礎とする経済活動の自由︑職業選択の自由 等は︑元来公共の福祉に適合することが要求されているものであり︵憲法二二条︑二九条︶︑その場合の法律の定めによる制約は 単に実質的要件だけでなく︑如何なる機関の判定に服させるかの手続上の制約をも含めたものとして考えることができる︒例え ば︑権利の付与や制限を行政機関の認定にかからせ︑これを最後的とすることも可能である︒そうなれば︑これに対する司法審杏 は︑その認定事実の存否でなく︑認定の方法手続だけに局限される︒現在認められている審決は︑大体この分野に属するものとい えるから︑実質的証拠法則の導入も憲法上是認できる︒勿論︑これらの場合が無条件に許されるのではなく︑審決の形式を採るこ とが公共の福祉の上から必要であり︑かつ︑その手続が適正なものでなければならない︒これには公平な組織を有する独立の機関 が︑争訟手続に準じた公開審理として︑関係人の審訊及び証拠調べを行った上で審決し︑裁判に準じた認定理由を付さなければな らないことが要求されるが︑この点でも現在の審決について認められている手続は︑大体この要件を具備しているから問題はない

といえよう︒﹂︵前掲書﹁審決の司法審査﹂四六八\四六九頁︶︒

( 3 )

原田尚彦﹃訴えの利益﹄︵弘文堂︶一九四頁︒

( 4 )

原田尚彦同一九七頁︒

( 5

)

斉藤浄元﹃海難審判法﹄

﹁審決の司法審査﹂﹃訴訟と裁判﹄︵岩松還歴記

と解

して

いる

三四

8 ‑ 4 ‑488 (香法'89)

(19)

審決とその司法審査(波光)

七 結 び に か え て

三五

( 6

)

高等海難審判庁の裁決の取消訴訟法につき︑最高裁昭和四七年四月一ー一日判決民集二六巻一二号五六七頁︒判決は︑﹁裁決における

事実の認定は︑独占禁止法八

0

条︑八一条︑電波法九九条のような規定がない以上︑事実審たる裁判所を拘束するものではない﹂

とする︒また︑労働委員会の不当労働行為命令の取消訴訟につき︑東京地裁昭和三

0

年九月二

0

日判決労民例集六巻五号六

0

‑ 0

日判決労民例集一七巻四号一

00

( 7

)

雄川一郎﹁司法審査に関する一問題﹂﹃裁判法の諸問題﹄

m

︵兼子還暦記念︶五四四頁︒

( 8

)

高橋貞夫﹁不当労働行為制度における行政訴訟運用上の問題点し日本労働法学会誌一ここ号四:百貞︒中島︷郎﹁裁判所における救済

手続﹂﹃労働法講座﹄二巻四四

0

( 9

)

本間義信﹁労働委員会の審判に対する不服申立と実際﹂﹃裁判と上訴﹄︵小室・小山還暦記念︶二七〇\二七一頁︒

( 1 0 )

和田英夫﹁行政委員会の準司法的機能﹂﹃公法の理論﹄団︵田中古稀記念︶九七八頁︒

( 1 1 ) 新潟地裁昭和四三年四月九日判決行裁例集1九巻四号五八一頁︒

( 1 2 )

仙台地裁昭和三三年二月二六日判決行裁例集九巻二号三五六頁︒

公正取引委員会の審決︑公害等調整委員会の裁定︑電波監理審議会の異議についての議決︑特許審判官の審決及び

海難審判庁の裁決に対する訴訟は︑いずれも東京高等裁判所の専属管轄とされ︑その審判は訴訟の前審と考えられる︒

審決の司法審査において︑前三者については新主張・新証拠の提出が制限されるとともに︑審決の認定した事実につ

いては実質的証拠法則が適用される︒

後二者についても︑同様に新主張・新証拠の提出の制限とともに︑実質的証拠法則について法定されて然るべきで

8‑4 ‑489 (香法'89)

(20)

あると思われる︒特許審判官の審決については︑最高裁は︑新主張・新証拠の提出の制限を認めたが︑現実の訴訟に

おいては︑明文の規定がないのに原告側の申出を拒絶することは困難を伴うであろうし︑

(1 ) 

適用について︑原告の理解をうることは容易ではないと思われるからである︒ まして︑実質的証拠法則の

次に︑労働委員会の不当労働行為命令について︑仮りに実質的証拠法則を採用したときには︑審決に対する訴訟に

おいて︑実質的証拠の有無だけの審理に一審と二審とが必要であるとする理由は乏しいということになる︒

いずれにしても︑現在の行政機関の準司法的機能と裁判との関係について︑全般的に立法的な見直しと整備が必要

だと思われるのである︒

( 1 )

古崎慶長﹁行政委員会の審判に対する不服申立﹂﹃裁判と上訴﹄田︵小室・小山還暦記念︶二五五頁︒

( 2

)

古崎慶長同二五五頁︒

三六

8 ‑4 ‑490 (香法'89)

参照

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