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中高年女性における運動習慣の有無が下腿部の筋厚 に及ぼす影響

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Academic year: 2021

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(1)

中高年女性における運動習慣の有無が下腿部の筋厚 に及ぼす影響

著者 加藤 浩人, 黒川 貞生

雑誌名 明治学院大学教養教育センター紀要 : カルチュー

ル = The MGU journal of liberal arts studies : Karuchuru

巻 2

号 1

ページ 31‑35

発行年 2008‑03‑31

その他のタイトル Effect of habitual exercise on the calf muscle thickness in elderly females

URL http://hdl.handle.net/10723/3137

(2)

Effect of habitual exercise on the calf mus- cle thickness in elderly females

Hiroto KATO 

1) 

and Sadao KUROKAWA 

2)

1) 

Center  for  Liberal  Arts  (Health  &  Sports  Sciences),  Meiji  Gakuin  University, 

2) 

Center  for   Liberal  Arts  (Environment,  Health  &  Sports  Sciences), Meiji Gakuin University.

Abstract

The  purpose  of  this  study  was  to  investigate  the  effect  of  habitual  exercise  on  muscle  thickness  of  ankle  plantar  flexors  and  ankle  dorsiflexors.  One  hundred  and  two  females  participated  in  this  study. 

Seventy-three  females  (60-79  years  old)  were  trained  and  twenty-nine  females  (60-79  years  old)  were  not  trained. The muscle thickness of ankle plantar flexors  and ankle dorsiflexors were measured using a B-mode  ultrasonic  apparatus.  1)  In  60s  muscle  thickness  of  ankle  plantar  flexors  in  exercise-group  was  greater  than  that  of  untrained  group  (p<0.05).  In  70s  there  was no difference in muscle thickness of ankle plantar  flexors  between  exercise  group  and  untrained  group,  2)  muscle  thickness  of  ankle  dorsiflexors  in  exercise- group was greater than that of untrained group in 60s  (p<0.01). Difference in muscle thickness of ankle dorsi- flexors  between  exercise  group  and  untrained  group 

was  no  significance  in  70s.  These  findings  suggested  that the effect of habitual exercise on muscle thickness  of lower limbs was more effective in early elderly age. 

In  addition,  there  may  be  slight  difference  in  relative  load between 60s and 70s. 

Key  words:  elderly  female,  habitual  exercise,  muscle  thickness,  plantar  flexors  and  dorsiflex- ors 

明治学院大学 教養教育センター

 (健康・スポーツ科学)

明治学院大学 教養教育センター

 (環境および健康・スポーツ科学)

連絡先:加藤浩人 

    〒 244-8539 横浜市戸塚区上倉田町 1518     [email protected]

受理日:2007 年 11 月 30 日

目 的

わが国は本格的な高齢化社会を迎えて,寝 たきりなどを原因とした生活の質(Quality of  life : QOL)の低下や介護負担の増加が社会問 題となっている.したがって,単に高齢者の疾 病を予防して寿命の延長を図るだけでなく,

健康寿命を延ばすことが重要な課題となってい る.

加齢による身体機能の低下は,老化による ものと不活動によるものが複合的に影響した結 果と考えられているが,しかし高齢者であって も不活動の要素を減少させると,その低下を抑 制することは知られている

24)

.近年のライフス タイルの変化により,日常生活において身体活 動を積極的に取り入れなければ,高齢者はます ます不活動になりつつある.したがって,高齢 者にとって充実した日常生活を送るためにはま ず歩行能力の維持と,さらには向上が重要とな る.

高齢女性における歩行速度の低下は下肢筋 力の衰退が原因であるとされており

25)

,さらに 高齢者に多い障害発生の要因として転倒があげ られ,転倒が引き金となり,骨折さらには寝た きりを招くことは少なくない.Wolfson ら

27)

は 高齢者が転倒しやすい要因として足底屈力と足 背屈力の低下を指摘している.また足背屈力の 低下が,高齢者におけるすり足歩行を引き起こ

中高年女性における運動習慣の有無が 下腿部の筋厚に及ぼす影響

加藤 浩人1),黒川 貞生2)

(3)

加藤 . 黒川

していると考えられており,転倒の一要因とし て有力視されている

26)

.さらには,成人から高 齢者までを標本として,加齢に伴う筋量減少が 歩行能力の低下を引き起こす因果構造モデルを 検証した報告もある

16)

下肢筋群は, 「老化は脚から」と言われるよ うに極めて重要であると考えられ,加齢に伴う さまざまな身体の構造的・機能的変化の中で,

筋肉量や筋力もその例にもれず,成人以後に明 らかな減少傾向を示すことが知られており

1)3)

21)

 ,足底屈力については,若年群(26-45 歳)

より有意に低いこと

10)

や,20 歳代と 80 歳代の 間に有意差が認められる報告がある

15)

.足背屈 力についても 40 歳代以後の明らかな低下が報 告されている

28)

.下腿の筋組織における加齢変 化については,20 歳代から 50 歳代にかけては 下腿部の筋断面積に変化がみられなかったとす る報告が存在する

13)

が,60 歳以上の高齢者を対 象とした研究においては,足底屈筋の筋厚は全 般的に加齢による減少の傾向が明らかで 

20)22)

, 20 歳代と 60 歳代の間に 1%水準の,20 歳代と 80 歳代の間に 0.1%水準の有意差が認められて いる

15)

.また足背屈筋の筋厚も加齢に従って減 少傾向にあり

20)22)

,40-80 歳代では 0.40% / 年 の低下率を示している

15)

このように下肢の筋群は,加齢に伴い顕著 な減少を示し,高齢者が自立した生活を送る上 で非常に重要な役割を担っていると考えられる が,一般的な運動習慣が下肢の筋群にどれほど の効果を与えているかは明らかではない.そこ で本研究では,60-79歳の中高年女性102名を対 象として,運動習慣の有無が下腿部の筋厚に与 える影響について明らかにしようとした.

方 法 被験者

被験者は,身体的に特別な支障を有しない 60 歳から 79 歳までの健康な女性 102 名であっ た.彼女らを定期的に卓球,太極拳そしてウオー キングなどのスポーツ教室に参加している運動 群(n=73)と定期的な運動を行っていない非運 動群(n=29)に分けた.さらに,年代別に 60 歳 代と 70 歳代にも分けて分析した.60 歳代の運 動群における平均年齢は 65.5 ± 2.54 歳であり,

70 歳代では 73.6 ± 2.52 歳であった.非運動群 における 60 歳代の平均年齢は 64.1 ± 2.81 歳で あり,70歳代においては74.1±3.08歳であった.

年齢においては,60 歳代と 70 歳代の両群とも 運動群と非運動群の間には有意差が認められな かった.彼女らの身長と体質量(平均値±標準 偏差)を年代別に示した(表 1).

筋厚の計測

筋厚の計測部位は,下腿後部および下腿前 部(いずれも脛骨点から脛骨長の30%遠部)と し,計測は超音波診断装置(アロカ社製小型 軽量リニア電子装置 SSD-500)を用いて行っ た.また,計測時の体位は,立位で右脚(怪我 の場合は左脚)についてだけ計測した.なお,

計測時の超音波発振周波数は5MHzとし,筋厚 は皮下脂肪組織と筋組織の境界面から脛骨まで の距離とした(図1).

図 1. 足底屈筋厚と足背屈筋厚の計測について 表 1. 被験者の身体特性

(4)

統計処理

身体特性や筋厚のデータについては,すべ て平均値±標準偏差で示した.各年代の足底 屈筋と足背屈筋の運動群と非運動群における 筋厚計測値の平均値の差の検定については,

studentの対応のないt検定を用いた.すべての 統計処理における有意水準は5%と設定した.

結 果 足底屈筋厚

60 歳代の運動群における足底屈筋の筋厚は 54.5 ± 4.09mm であり,非運動群における筋厚 は 51.6 ± 4.44mm であった(図 2).両群の間に は,5%水準で有意差がみられた.一方,70 歳 代においては,運動群における足底屈筋の筋厚 は 52.9 ± 3.93mm であり,非運動群では 52.7

± 4.15mm であった(図 3).両群の間に有意差 は認められなかった.

足背屈筋厚

60歳代の運動群における足背屈筋の筋厚は 24.2±1.95mmであり,非運動群における筋厚 は22.5±3.03mmであった(図4).両群の間に は1%水準で有意差が認められた.

一方,70歳代のおいては,運動群における 足背屈筋の筋厚は23.1±2.32mmであり,非運 動群では22.3±3.46mmであった(図5).両群 の間には有意差がみられなかった.

考 察

運動習慣の有無が高齢者の筋量にどのよう な影響を与えるかを検証した先行研究は数少な い.馬場ら

4)

の研究では,60歳代と80歳代の高 齢男性アスリートにおける膝伸筋群の筋横断面 積と運動を行っていない健康な男性のそれと比 較したところ,80歳代の男性の筋断面積は運動 習慣の有無にかかわらず変わらないとされてい る.また金ら

17)

の研究では各種の競技大会で優 秀な成績を収めた高齢女性アスリートの下腿三 頭筋と前脛骨筋の筋横断面積は,特別な運動習 慣を持たない高齢女性と有意差が認められな かったと報告されている.また縦断的な研究で は,高齢者において6ヶ月間のウオーキングト レーニングを実施した結果,足底屈筋群の筋厚 には変化が見られなかった

18)

.これらの研究 は,高齢になるに従ってより筋量に対してト レーニング効果が見られにくくなっていること が示唆されている.また高齢とはいえ,アス

図 2. 運動実施群と非実施群における 60 歳代の足底屈筋厚

図 3. 運動実施群と非実施群における 70 歳代の足底屈筋厚

図 4. 運動実施群と非実施群における 60 歳代の足背屈筋厚

図 5. 運動実施群と非実施群における 70 歳代の足背屈筋厚

(5)

加藤 . 黒川

リートの水準であっても下腿部の筋委縮に抑制 がかからないのは興味深いことである.この現 象は,長期間トレーニングを継続しても加齢に よる筋量の低下は避けられず,神経系の適応で 同世代に比べて高い運動パフォーマンスを発揮 できている可能性が示唆されている.本研究の 被験者も60歳代までは,筋厚に対して運動習慣 の効果が認められるが,70歳代になると筋厚に 対して運動習慣の効果が認められなかったこと と類似した傾向を示している.

運動量が高齢者の下腿筋厚に及ぼす影響を 横断的に検証した研究では,60-78歳の高齢者 における日常生活における歩行数と下腿前部お よび後部の筋厚の間には有意な相関関係は認め られなく,この原因として下腿筋群は日常生活 において常に自分の体重が負荷となっているた め,他の部位に比べてトレーニングによる筋肥 大の可能性が低いことが示唆されている

12)

.ま た,高齢者における筋力トレーニングの縦断的 研究によれば,高齢者の場合は若者と比較し て,低-中強度のレジスタンストレーニングで は高齢の被験者の筋力増はきわめてわずかであ るか,ほとんどなく

2)11)19)

,高強度の負荷で のみ優位な筋力向上を見せている

6)7)8)9)

.こ れらの知見から推察されることは,高齢者にお いて運動効果を挙げるためには,比較的高強度 で運動することが必要であると考えられる.本 研究においては,60歳代では下腿部の筋厚を保 つだけの運動強度で運動を行っていたが,70歳 代になると運動強度が低下することによって,

下腿部の筋量を維持できなくなっていることが 推測される.

運動習慣をもつ高齢者において運動能力を 測定した研究として,ゲートボールを実施し ている75−79歳の高齢者ではバランス能力に優 れ,6分間歩行についても70−79歳の高齢男性 と75−79歳の高齢女性においてすぐれていたと する報告

23)

や,規則的な運動習慣のある60歳以 上の高齢者は,敏捷性・移動能力(足タッピン グ,8の字歩行)において規則的に運動を行っ ている運動群が有意に優れているとする報告も ある

5)

.これらの研究から,運動習慣のある高 齢者は運動能力に優れており活動的である.し かしこれらの研究では形態的な差異については

言及されていなく,前述の高齢者における筋量 に対する運動効果は薄いとする報告から考える と神経系の改善によって,運動能力が維持され ていることが推察される.

さらに,運動習慣をもつ高齢者において運 動能力を縦断的に検証した研究として,60-79 歳の女性を対象として健康づくり運動を半年間 行ったところ,5m通常歩行時間について,70 歳以上の被験者には有意な改善は見られなかっ た

14)

.このような縦断的な研究は6カ月程度の 短期で行われることが多いことから,高齢にな るに従って身体の活動量や運動強度が減少する ことを考えると,70歳以上の高齢者に対して筋 力や運動能力に対して運動効果を望むために は,運動を長期間継続することが必要であるよ うに考えられる.

まとめ

60歳から79歳の中高年女性102名において運 動習慣の有無が足底屈筋と足背屈筋の筋厚にど のような影響を及ぼしているかを検討した.

彼女らを定期的にスポーツ教室に参加して いる運動群と定期的な運動を行っていない非 運動に分けて,下腿後部および下腿前部におけ る筋厚の計測を,超音波診断装置を用いて行っ た.

60歳代の足底屈筋の筋厚には,運動群のほ うが非運動群より5%水準で有意に多かった が,70歳代においては,両群の間には有意差が 認められなかった.一方,足背屈筋の筋厚は60 歳代では,運動群のほうが非運動群より1%水 準で有意に多かったが,70歳代においては両群 の間には有意差はみられなかった.

これらの結果から比較的初期の高齢者にお

いては,下腿部の筋量に対する運動効果が認め

られるが,中期以降の高齢者においては,一般

的な運動では下腿部の筋量を維持することが困

難であることが示唆された.

(6)

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