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PbTe 薄膜の作成と温度特性

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Academic year: 2021

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(1)

Pb Te

薄 膜 の 作 成 と温 度 特 性

島 久 夫*

The Temperature Characteristic of PbTe Thin Films  Produced by Physical Vapor Deposition Method

Hisao MATSUSHIMA

Thestudyofthermoelectoricdevicehasalonghistoryandhasacomprehensive 丘eldofapplication.

TllispaperdescribesthethermoelectriccharacteristicofPbTetbin丘lmsproduded bythephysicalvapordepositionmethod.Theexperimentalresultsaresummarizedas follows.ComparedwiththethermoelectromotiveforceofPbTe,thatofmetalther・

mocoupleissmaller.Thep・typePbTechangestothen・typePbTewiththesubstraite temperaturearound200oC.Thethermoelectriccharacteristiccanbecontrolledbythe compositionofPbandTe.

1. ま え が

物質の熱起電力に関する研究の歴史は古 く,さかのぼればSeebeck,Peltierにその端を 発する.以来,多数の研究者による努力が現在の熱電発電 ・熱電冷却の理論をほぼ完成させ, それにもとず く製品はすでに我々の生活の中で使用されている.また,近年は温度セソサー

として熱電変換素子を使用する例は非常に多い.調理機辞,空調機器をはじめ温度制御を必 要 とする分野に対 し,また,安全性か ら各種機器の加熱防止が重要な問題 とな り,熱の使用 を 目的 としない横器に対 しても加熱防止などの面か ら温度セソサーが使われている.

熱電変換素子 として代表的なものは,古 くか らまた,数多 く使用されている熱電対である が測定対象に対する形状的対応,熱起電力の大 きさに問題がある.

今回の報告は,小型化の可能な,熱起電力の大 きいPbTe(本来は光伝導物質 として研究 されてきた)を蒸着法により作成 しその温度特性か らセンサーとしての可能性を探 ったので 報告する.

2.半導体のゼーベック効果

PbTeは,半導体である.一般に p形あるいはn形半導体の一端を高温に保ち,他端を 低温に保つ と半導体の両端に起電力が発生する.この起電力を熱起電力といい, この現象を ゼーベック効果 とい う.

図 1(a)のようにp形半導体の一端AToに保ち,他端BTo+ATに保つ と,価電子帯 書 電気工学科 助教授

原稿受付 昭和63928

(2)

46 松 島 久 夫

の電子は,エネルギーを得てアクセプターレベル‑励起 され負のアクセプタイオンと正孔を 形成する. ここで半導体中の温度勾配が一様である とし,また,正孔濃度は温度に より指数 関数的に変化す るもの と考 えれば半導体中の温度勾配に より正孔濃度の勾配が生ず る. この ため正孔は B(高温側・To+AT)か らA (低温側・To)に向か って拡散 し,A端に蓄捺 され正の空間電荷が生 じる. この空間電荷は, 半導体中にA (低温側) か らB (高温側) へ向か う電界を生ず る. この電界は正孔に対 してA (低温側)か らB(高温側)へ向か う力 を及ぼすが,定常状態では これ と拡散効果 とが平衡 している.図1(也)にこの場合のエネルギ ー準位図を示す. これによれば,定常状態でエネルギー帯は傾斜 し,B端 とA端のエネルギ ー帯 の差が空間電荷電界に よる電位 の差を表わ している.また, フェル ミ準位 自身が温度の 関数であるため高温になるに従いフェル ミ準位は禁止帯 の中央に近づ く. よってB端 (高温 側) のほ うがA端 (低温側) よ りもフェル ミ準位が禁止帯に近 くなるためフェル ミ準位の傾 斜はエネルギー帯の傾斜 よりも大 きくな り, この両端のフェル ミ準位の差がゼーペ ック電圧 となる.以上は, p形半導体についての説明であるがn形半導体についても同様に考えるこ とができる.n形半導体の一端を加熟 して高温側(To+AT)とし, 他端を低温側 (To)

A B鵡

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(af % o

(b)

1 p形半導体におけるゼー ベック効果の説明

して温度を一定に保つ.高温側では, ドナー準位か ら 伝導帯‑の励起がさかんとな り伝導帯の電子密度は増 加 し,正にイオン化 した ドナーが生成 される.伝導帯 中の電子は,低温側に向かって拡散 し一様に分布す る.

高温側では,正イオンは拘束されているか ら正の電荷 が蓄積 され,全体Iとして高温側が正に低温側が負に帯 Lp形 とは道の極性 となる.次にp形半導体のゼー ペ ック係数が どのような形で表わ され るか簡単に説明 す る.高温,低温の温度差に より生 じた正孔 の拡散に よる電流密度 と,正孔蓄積の結果生 じた電界による電 流密度は,定常状態においては等 しいことを基に して 計算すれば,次のように表わせる.

a ‑% i i (1,

ただ し,VFはフェル ミ準位を価電子端か ら計 った ,kはボルツマン定数,qは電子の電荷量,Tは把 対温度である.

3. 試料の作成 と実験方法

'本実験における試料は総て真空蒸着法に より作成 した.PbTeは',化合物半導体であ り結 晶構造は NaCl形で融点は917oCである. この粉末状の微細な結晶をモ リブデソのポー ト 上に置 きモ リブデンに流れる電流に より加熱 して蒸着 した.また,PbTeの重量比を変える 場合は,Pb,Teそれぞれの粉末をポー トに乗せて蒸着 した.蒸着時にモ リブデンポ‑ トに一 流れ る電流は,スライダックをに より調節 したが,電流の変化割合を一定にす るためには,

(3)

0

l I

PbTe k TAi II

Ag.At

a

a.1‑4.5bl

b.14.5‑36n

c.5‑ll.8m

2 PbTe勲電素子の形状

スライダックの変化を,プログラムされたモーター ドラ イブにより行なった.

試料の形状を図2に示す.基板はガラスを使い, この 上にマスクに依 りL形のPbTeをまず蒸着 しさらにAg または,AuL形に蒸着 し中央でPbTeと金属の接合 をはかっている. また, 基板は基板上部に ヒーター を 配置 し基板加熱を 行なっている. 基板上に 蒸着 された PbTe熟電素子には, 導電性接着材料に よりリー ド線

bをオーム接触 させ外部に とりだ してある.なお,素子 の 寸法は,図 2のなかに3種類示 してあるが基本的特性に 与える影響はない.なお,蒸着初期におけるベルジャー 内の真空度は (2‑ 4) ×10t[mmHg]程度である.

作成 した素子は,図3に示す温度特性測定装置に よ り 測定 した. この装置の上部にセ ッ トされた素子の接合部 を ヒーターに より加熱 し,温度差を生 じさせるための低 温部には,冷却水を流 して温度を一定に保つ ように した.

温度の測定は,低温部,高温部 ともに熱電対温度計に よって測定 した.

3 温度特性測定装匿

4.実験結果および検討 ガラス基板へ真空蒸着 した場合の蒸着量 の 目安 としては,基板温度100,200,300,400oC に対 し蒸着量は,1.5,0.8,0.3,1.Ommg である.ただ し, ボー ト上の PbTeの蒸発

‑ 量が110mmgの場合である.

作成 した PbTeの表面状況は,基板加熱 子 温度が低い場合は金属光沢を示 し,高い場合 は光沢を失 っている.これは,基板加熱の温 度が上昇すると,残留ガスの運動が活発 とな りこれ と蒸発分子 との衝突回数が増加するた め,蒸発分子はエネルギーを失い過冷却の状 憩 とな り金属光沢を失 うのである. このため 薄膜の表面は汚染され特性にも影響が及ぶ ことになる. このためにも蒸着時の真空度 には, 十分の注意が必要 となる.

4および図5に熱起電力ー温度特性を示す.図4は蒸着 した ̀PbTeの寸法が最 も大 き い素子,図5は最 も小 さい素子の特性を示す.基板温度が常温のものを除いていずれ の特性 も直線的な関係を示 している・飼‑ コンスタンタン熱電対の熱起電 力 が 約 0.05mmV/°eg であるのに対 し,PbTe素子では044mmW deg(蒸発量70mmg,基板加熱温度400oC) が得 られた.この値は,鍋‑ コソスタソタン熱電対の10倍に達 している. この ようにPbTe

(4)

48

、 50 JR 岩 40

30

20

10

0

‑10

‑20

島 久 夫

150

R [ 墓100

50

0

50

100

5 熱起電力ー温度差特性 4 熱起電力ー温度特性

素子は直線性が よく,またゼーペ ック係数が大 きいのでセンサーとしての条件を十分備えて いる.また,両国ともに基板温度が 200oC前後において負の熱起電力を示 しているがこれ ,PbTe素子が半導体 としての性質をp形か らn形に変化 した ことを表わ している・

6, 7は,基板温度を横軸にとって整理 したものである.図6によれば基板温度が200o

Cより若干高い ところで熱起電力の符号が変わ りn形か らp形‑の変化が生 じていることが

57

3 2

(5)

才つか る.

7についても同様なことが云える.たた,いずれの場合 もp形からn形へ変化する温度 紘,明確ではない.

このことについて検討をするため PbTeのホール起電力を測定 じてp, n形の判定を行 な った・結果は次の とうりである・素子は蒸発量 110mmgのものである. これに よれは基 坂温度 200oC付近でn形か らp形へ変化していることは,図6. 7の特性曲線 とあおせて 明 らかである.以上の結果か らPbTeは,両性半導体であることが分かる.

基板温度(oC) 100 200 300 400

p n p p

次に,PbTeに含まれるPb,Teの割合を変 化 させてその影響を検討した結果が図9に示 し てある. これは,PbTe150mmg中に含ま れ るPb,Te20,40,60,80% (重量パー七ソ ト) と変化させたもので, まず Pbの場 合は,Pbの増加につれて僅かで'はあるが熱起電力の減少がみ られる. これに対 しTeを増 加 した場合は,熱起電力が増加 している.

また,熱起電力の符号を考慮すると,Pbを多量に含む場合はn形の,Teを多量に含む場 合 はp形の特性を表わす ことがわかる.蒸着で作成 した素子を電子線回折で解析 した結果試 料 の組成はPbTeであることが判明した.よって,PbTeの状態図によれば Pb,Teそれ ぞれ0‑20,50‑80wt%の範囲で Pb+PbTe,Te+PbTeの状態が存在 していると考え ら れ る・つまりPbTeの多数の結晶の問をPbあ、るいはTeが埋めている状態である・一方 Teは元素半導体であ り低温ではp形の特性を持つため半導体 としての特徴やミ強 く現われ, Pbは金属であるためその熱起電力は,相対的に小さ くなっている.

図 8は図 9と同様にPb,Teの重量比を変えた場合の抵抗値の変化を表わす ものである.

いずれの場合 も重量比が増加すると怒抗値は減少 している.ただ し,Pbの抵抗率は低いの Teの場合がキロオーム単位であるのに対 し,Pbはオーム単位の値 となっている.

10は,作成 した試料について温度差 90oCのときの熱起電力と抵抗の関係を表わ してい る. これによれば 100kgとを掛 こし.て, これ以上はp形,以下はn形半導体 となっている・

8の抵抗変化 と重ねるとn PbTeTeを増加すると抵抗値は減少 し熱起電力は増加,

: L

ゝ芸 ,

1

5

0

L

周8 抵抗値と重量比の関係

(^]=): 8

5%

18Rュoo102

(6)

島 久 夫

8(S.)M‑。 lIl

0 20 40 60 80 100 温度(℃)

10抵 抗 値 分 布 図 11温 度 履 歴 曲 線

n PbTePbを増加す ると抵抗は減少 し熱起電力減少す る.以上 よりPb,Teを一種 の不純物 と考えp形, n形素子を作成で き,また,適当なゼ‑ペ ック電圧を得ることもでき る.

PbTeを蒸着 した場合,作成 した素子の組成は,あま り変化がない.

しか し,基板加熱に より素子がpn形を表わす とい うことは元素半導体であるTeの影 響が大 きいと考 えられる.Teは,低温でp形,温度を上げて真性領域でn形になる.Te 伝導帯には狭いソ ドと広いバ ン ドがあ り,温度をさらに上げると電子は狭い,:ソ ドに押 し 上げ られ る.電子に とっては実効質量が増 した ことにな り,電子の移動度が減少 して結局は

p形 になる.Teのエネルギーギャップが0.34eV,PbTe0.31eVであるか らPbの影響 でギャップ幅が小さ くな り,狭いソ ドヘ押 し上げ られ る電子が増加 してp形半導体に変化 した といえる.以上のことか ら基板加熱に よって もn形,か らp形への変化が生ず ることが 判明 した.

図11温度変化に よるヒステ リシス特性を表わす もので,これ よ り基板加熱 したほ うが ヒス テ リシスの幅が小 さくなることがわかる.

5. と が

本論文は,蒸着法に より作成 した PbTe熟電半導体素の温度特性などのiRTl定を通 じて(1) この素子の ゼ‑ペ ック係数は熱電対に比べて大 きく,直線性が よいこと,(2)Te,Pbの添 加に よりn, p形 いずれのタイプの素子で も作成す ることが可能で,適当なゼ‑ペ ック電 圧を得 られること,(3)基板を加熱することに よってもn, p形の変化を生 じさせることがで きることなどについて述べ,温度セソサーとしての条件を幾つか満た していることか ら実用 化への可能性を示 した.

参 考 (1) 菅 義夫 :熟電半導体,損書店,1969,p317 (2)高橋 清 :半導体工学,森北出版,1980,p242

(3)原留美書 :半導体物性工学の基礎,工業調査会,1980,p168

参照

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