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ショッピングから見た保険商品の購買の 異質性

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(1)

ショッピングから見た保険商品の購買の 異質性

鎌 田 浩

■アブストラクト

消費者の購買意思決定において 購買関与 と 商品の判断力 は極めて 重要な要因である。購買関与は どこでどのように買うか という購買チャ ネルの問題,商品の判断力は 何を買うか という商品の問題と捉えられる。

本稿では保険商品の購買をショッピングとして捉え,小売業の発想と取り 組みを保険業にあてはめその違いを明確化する。消費者の購買意思決定プロ セスを通じて,保険の商品特性と購買形態の違いから保険商品の購買の異質 性を明らかにし,購買行動にもたらす影響を考察する。

今日,消費者は保険商品を購買するためにインターネットにアクセスし,

あるいは来店型店舗を訪れる等多様なチャネルを求め,自らの購買関与を深 めている。あらたな購買行動に適応した保険募集の取り組みが求められる。

■キーワード

保険商品の購買の異質性,保険ショッパー,購買関与

1.はじめに

ショッピングには商品 を 少しでも安く , 気軽に , 便利に 購買で

*平成23年2月19日の日本保険学会関西支部報告による。

/平成24年2月19日原稿受領。

1) 本稿では,モノそのものである 製品 と対比し,市場において購買者に望 まれる対象物(モノとサービス)を 商品 と定義する。

(2)

きる特性がある。そこで保険商品 の購買をショッピングと見た場合,その 異質性を明らかにする。消費者 には商品を購買する ショッパー と使用 する ユーザー という2つの側面がある。本稿では消費者から ショッパ ー という側面を切り離し, 保険ショッパー というカテゴリーで論じる。

保険商品は代理店が消費者の所へ 売りに行く ことによりニーズが喚起さ れることが多く,受動的な行動に特徴が見られる。筆者はインターネットに アクセスしあるいは来店型店舗(ショップ)を訪れる等,自ら 買いに行 く 消費者(いわゆる 情報探索型消費者 )群に注目した。本稿ではイン ターネットを通じて保険商品を購買する者を (狭義の)通販型保険ショッ パー ,また来店型店舗において保険商品を購買する者を 来店型保険シ ョッパー と定義しその購買意思決定プロセスを考察する。

変化する市場環境を見る場合,消費者と購買チャネル との関係および顧 客インターフェイスの場を理解することが有意と考え,小売業の発想や取り 組みを保険業にあてはめてみる。その上で,保険商品の購買行動に適応した 保険募集のあらたな取り組みを提言したい。

次章において,本研究に係わる研究の動向をレビューする。

2.研究動向の整理

購買行動の包括的意思決定モデルとして

Howard-Sheth

[1969] があり,

2) 本稿では個人を対象に販売する保険商品,具体的には生命保険,医療保険,

自動車保険等を考察の対象とし,企業分野の保険商品は除外する。

3) 本稿では保険商品を購買する者(保険契約者)の他,保険商品によって具現 化される効用を消費する者(保険金およびサービスの受領者等)と定義する。

4) 広義の 通販型保険ショッパー には

DM(ダイレクトメール)やテレ(電

話)を通じ保険を購買する者を含む。

5) 商品流通の経路としてのチャネルを小売業では 流通チャネル ,保険業で は 募集(販売)チャネル と呼ぶことが多いが,本稿では消費者の購買行動 の視点からチャネルを論じていることから 購買チャネル と呼称する。

6)

Howard & Sheth

(1969)

, “ The Theory  of  Buyer  Behavior”, Jon

Wiley & Sons.  

(3)

 

Bettnan

[1979] によって 刺激―反応型 モデルに情報処理システムを加 えたあらたな概念モデルが集大成されている。消費者行動を能動的な問題解 決行動と捉え,情報の 処理能力 を中核とし, 動機付け , 注意 , 情 報取得と評価 , 決定プロセス といった構成要素からなるフローチャート である。消費者が製品やサービスを選択・購買するために自ら進んで必要な 情報を探索,取得,解釈,統合と貯蔵をする一連の情報処理行動に焦点を当 てている点に特徴がある。本稿の購買行動の考察は本モデルに準拠している。

本稿では,ショッパーの行動にフォーカスした新しい概念としてショッパ ー・マーケティング(Shopper Markering) を採用している。店頭におけ るショッパーに対して 商品をどう売るか ではなく,ショッパーに軸足を 置いて ショッパーにどのように買ってもらうか を研究対象にしている。

代表的な研究として

Stahlburg& Maila

[2009] ,Sorensen[2009] ,消 費者の店舗内における購買行動を分析した研究として田島・青木 ,店舗の 重要性にフォーカスした研究として守口[2009] [2010] がある。

流通産業という視角から生命保険の販売面を解釈する方法を提示した米山

[1993] [1998] ,生保マーケティングについて論じた下和田[2001] ,

7)

Bettman, J.R

(1979)

, “ An  Information  Processing  Theory of Con- sumer Choice ”, Addison-Wesley Publishing Company.

8) 米国の

Grocery Manufactures Associationによれば ショッパーの行動

という深い理解を基に展開され,ブランドエクイティを組み立て,ショッパー を惹きつけ,購買に導くことを目的とした全てのマーケティング刺激 からな る行動と定義している(Deloite/

GMA  Shopper Marketing Study,

2009)。

9)

Stahlburg&Maila

(2009)

, “ Shopper Mareketing”, Kogan Page.

10)

Sorensen(2009) , “ Inside The Mind  of The Shopper”, Pearson Educa- tion.

11) 田島義博・青木幸弘 店頭研究と消費者行動分析 ,1989年。

12) 守口剛 店頭を基点としたマーケティング―これまでの流れと今後の方 向―

Marketing Researcher No.108,2009年,pp.10‑15。

13) 守口剛 ショッパー・マーケティングとは何か〜その概念と発展可能性〜

流通情報

No.

487 42巻4号,2010年,pp.6‑12。

14) 米山高生 戦後生命保険産業における募集チャネルの特殊性 保険学雑誌 ,

(4)

産業組織論の観点から保険募集チャネルの多様化を論じた井口[2005] が ある。保険における消費者の購買行動研究として自動車保険の購買行動を論 じた

Cockrell& Dickinson[1980] ,消費者の保険購入の意思決定の研究

として石田[1989] ,金融商品選択の異質性を論じた西久保[1997] ,保 険に係わる消費者の意識の研究として井口[2003] 等が挙げられる。

以上の研究動向のレビューから本稿では,保険商品の購買をショッピング として捉え,小売業の発想と取り組みを保険業にあてはめその違いの明確化 を狙いとする。次章では保険商品の購買をめぐる異質性を明らかにしてみる。

3.保険商品の購買をめぐる異質性

⑴ 保険商品の異質性

商品は有形財と無形財とに大きくは分類されるが,購買時には財に応じて サービスを伴うことが多い。レストランでの食事の際,店員によるサービス を受けることが一例である。有形財の場合,商品の品質・機能の他,外観

(スタイル),デザイン等が購買の判断基準となり,購買時に評価がしやすい。

一方,保険商品は購買時には無形財であり,外観やデザインはなく商品の

第540号,1993年,pp.99‑119。

15) 米山高生 生命保険産業研究の課題 現代社会と保険 ,1998年,pp.93‑

109。

16) 下和田功 生保マーケティングの特質とその課題―情報技術(IT)との関 連を中心に 文研論集 第134巻第1号,2001年,pp.25‑65。

17) 井口富夫 産業組織論の観点から見た保険販売チャネルの多様化 保険学 雑誌 第583号,2005年,pp.4‑18。

18)

Cockerell & Dickinson(1980) , “Motor Insurance and the Consumer”, Woodhead-Faulkner Ltd.

19) 石田重森 生命保険における消費者行動 保険研究 第41集,1989年,pp.

119‑135。

20) 西久保浩二 金融商品選択の異質性 生命保険経営 第64巻第5号,1997 年,pp.43‑61。

21) 井口富夫 保険に係わる消費者の意識調査結果に関する研究 生命保険論 集 ,2003年,pp.1‑34。

(5)

品質・機能の評価が得にくい。対価(保険料)と引き換えにリスクに対する 保障(補償)が担保され,購買後に保険事故等により保険金給付(支払)や サービスの提供を受けて初めて商品の品質・性能を知り得る。

次に,食品,衣服,嗜好品等の生活商品のニーズの認識は生理的欲求から 惹起されることが多く,購買者自身が直接的に問題あるいはニーズを認識す る。保険商品は,結婚や子供の誕生,自動車の購買等を機に死や事故に対す るリスクの備えとして,保険募集人,家族・親類等他人から間接的に購買の 認識が惹起されることが多い。

商品を購買する場合,購買者と売り手である企業との間の情報格差が見ら れる。商品の品質・機能情報は購買者に比べ企業側が多く有する(情報優位 となる)いわゆる 情報の非対称性 が見られる。購買者の商品に対する関 心の程度の強弱や商品内容の複雑性がこの非対称性に影響を与える。保険商 品は本来的に複雑性を有し,他の商品に比し情報格差は大きいと考える。

⑵ 保険商品購買時の異質性

インターネットの普及前は店舗に行って店員の説明を聞きながら購買した い商品を確認,または商品カタログ・パンフレットから入手した。現在は口 コミサイトが商品購買時の主たる参考情報源となっており,インターネット,

ブログ等のコミュニュティ・サイトを通じて収集される情報源が購買行動に 影響を与えている。一方,保険商品は,購買決定において営業職員等の商業 的情報源および家族・親類等の個人的情報源が大きく影響する(図表1)。

友 人・知 人(19.4 家族・親類 (21.0%) %)

民 保,郵 便 局,JAな ど の営業職員(48.1%)

保険商品

テレビ・ラジオ番 組(47.6%)

テ レ ビ・ラ ジ オ の

CM(47.6%)

口コミサイト(52.4%)

商品

第3位 第2位

第1位

(出所)商品は内閣府 平成20年度 国民生活白書 (2009年,p.54),保険商品は 生命保険文化センター 平成22年度 生活保障に関する調査 (2010年,

p.

184)より作成。

図表1.商品購買(保険加入)時の参考情報源(情報入手経路)

(6)

また消費者行動論の一般的なモデルでは,消費者は一人で自分のための購 買の意思決定を行うとされるが,保険ショッパーの意思決定プロセスには他 人(家族,保険募集人)と相談し意思決定をする傾向が見られる。

生命保険の販売には しがらみ や 付き合い と言った心理特性を利用 したマーケティング手法として

GNP

(Gは義理,Nは人情,Pはプレゼン トを表す)があり,営業方法・人情等のパーソナルな選好が意思決定要因に なりやすい。保険商品の場合,他人の情報を参考にし,営業職員から購買す る意思決定プロセスが見出され ,人的関与が大きく影響している。

⑶ 保険商品の購買チャネルの異質性

小売業の販売形態は店舗の介在の有無により,店舗販売と無店舗販売の2 つに区分される。一方,保険業では店舗は劣位にあり,保険募集人の介在の 有無により対面販売と非対面販売とに区分することが有意であると考える。

4.保険ショッパーに見る購買行動

4.1 保険契約者の購買チャネル意向

生命保険を例に,加入契約と意向のあるチャネルについて考察する(図表 2)。直近加入契約が圧倒的に多い 生命保険の営業職員 の加入意向は低 い。 郵便局の窓口や営業職員 , 民保・

JA

の窓口 , インターネットを 通じて , 銀行を通して および 保険代理店の窓口や営業職員 の加入意 向が強く,自ら保険商品を購買したい消費者が多い。そこで本稿では通販型 保険ショッパー,来店型保険ショッパーおよび銀行窓販における保険の購買 行動を各々考察する。

22) 生命保険文 化 セ ン タ ー 平 成22年 度 生 活 保 障 に 関 す る 調 査 (2010年)

p.182 .

直近加入契約の加入チャネルは営業職員(51.7%)と高い。

(7)

保険募集においては保険業法等において顧客保護の観点からの規制があり,

募集形態の特性も踏まえた適切な保険募集のための態勢が求められるため,

販売される商品は購買チャネルに応じて異なったものになる。したがって保 険の購買チャネルを論じる場合,保険商品の特性を踏まえて保険種目との親 和性についても考察しておく必要がある。また保険商品の加入窓口のポジテ ィブ・イメージからは,購買行動の多様化を示している(図表3)。

23) 加入意向のあるチャネル から 直近加入契約の加入チャネル の数値を 差し引いた乖離指数は,各チャネルに対する加入意向の高低を示している。

証券会社の窓口や営業職員 家庭に来る営業職員

不明 その他

15.8 2.7

16.9 2.8

4.3 4.9

2.9 7.9

11.5

‑2.2 14.0

‑5.1 2.3 2.6 4.4 3.9 6.7 6.5 テレビ・新聞・雑誌などを通じて

0.2 0.6 0.3 0.2 0.5 0.8

0.8 1.1 0.1 0.1 0.9 1.2 信託銀行の窓口や銀行員

2.9 4.2 1.6 1.0 4.5 地方銀行,信用金庫,信用組合の窓口 5.2

や銀行員

5.9 6.2 1.2 1.0 7.1 都市銀行の窓口や銀行員(ゆうちょ銀 7.2

行を含む)

7.7 9.0 2.8 2.1 10.5 11.1 銀行を通して

7.8 9.2 3.1 2.3 10.9 11.5 銀行・証券会社を通じて

5.4 5.3 6.0 9.2 11.4 14.5 勤め先や労働組合等を通じて

7.3 7.6 5.4 7.0 12.7 14.6 保険代理店の窓口や営業職員

6.9 10.9 0.9 1.2 7.8 12.1 インターネットを通じて

6.9 10.2 5.3 5.1 12.2 15.3 通信販売

14.9 15.2 6.6 6.0 21.5 21.2 民保・JAの窓口

15.4 15.1 13.2 7.1 28.6 22.2 郵便局の窓口や営業職員

‑0.8

‑5.5 13.1 25.5 12.3 20.0 職場に来る営業職員

‑4.4 0.9 36.6 28.5 32.2 29.4

‑9.1

‑10.4 49.8 54.0 40.7 43.6 生命保険会社の営業職員

女性 男性 女性 男性 女性 男性 世帯主性別

直近加入契約の 乖離指数 加入チャネル 加入意向のある

チャネル

(出所)生命保険文化センター 平成22年度生活保障に関する調査 (2010年,

p182および189)より作成。

図表2.直近加入契約(民保)と加入意向のあるチャネルとの関係

(8)

4.2 通販型保険ショッパーに見る購買行動

⑴ 通販型保険ショッパーの出現と購買の異質性

わが国の保険のダイレクト販売は1982年に開始されたが ,当時の通信販 売は保険普及および意識向上の施策として取り組まれた側面が強い 。その 後1990年代以降の電子情報革命,1996年に始まった保険の自由化により,電 話募集をはじめとした通信販売が注目され ,インターネット利用者が保険

図表3.各チャネル別のポジティブ・イメージ

(出所)全国銀行協会 銀行による保険窓販に関する消費者アンケート調査結果報 告書 (2011年,p.19)より作成。

第1位 第2位 第3位

営業職員

(外交員)

保険について詳しく 説明してもらえる

(49.0%)

自宅や職場まで営業職 員(外交員)が来てく れて便利(47.2%)

保険の知識がある

(43.2%)

通信販売 自分のペースで選べ る(55.5%)

保険料が安い

(48.4%)

手続に手間がかから ない(36.3%)

来店型 店舗

親しみやすい・相談 しやすい(35.1%)

保険の知識がある

(34.4%)

複数の保険会社の商 品から選ぶことがで きる(21.8%)

銀行金融 全般に関する知識が ある(38.7%)

保険以外の商品(定期 預金,投資信託など)

とも比較しながら検討 できる(33.8%)

店舗が近くにあり,

便利(31.1%)

24) アメリカンホーム保険会社が普通傷害保険と個人賠償責任保険の通信販売を 開始したことが始まりと言われている。

25) 宮本英利・山本孝之 損害保険 21世紀のビジョン (1988年,p.181)によ れば①広く一般大衆に,手軽な方法で保険に加入できる機会が提供され,保険 の普及に資するとともに,副次的ではあるが,損害保険そのものの

PR,イメ

ージアップにもつながる,②消費者にとって加入のタイミングの選択などまっ たく自由な意思決定が可能となり,消費者の保険意識向上が図れることを挙げ る。

26) 生命保険では1997年にオリックスダイレクト社が,損害保険では1998年にチ ューリッヒ保険会社が電話による自動車保険募集を開始し,また1999年にはイ ンターネットによる保険料見積りサービスを開始している。

(9)

のチャネルにもアクセスするようになっている。インターネットによる保険 購買には次の3つの異質性が挙げられる。

第一に,いつでもどこでも必要な時に人間関係や付き合いを気にせずイン タ−ネット上で比較検討が出来,保険を購買できる点が挙げられる。保険の 比較サイトを通じて保険ショッパーが各社商品の保険料と保障(補償)やサ ービス内容を比較し,資料を一括請求出来る等利便性が高い。

第二に,インターネット,携帯電話を通じて保険購買する場合, インタ ーネット割引 等により他の購買チャネルより安く保険商品を購買できる場 合が多い。

第三に,インターネットショッピングにはワンストップショッピングとい うメリットがある一方,商品を注文してからそれを入手するまでの時間がか かるというデメリットがある。しかしインターネットによる保険ショッピン グの場合,申込手続が完結(注文と同時に商品を受領)し,手間がかからな い。

⑵ インターネットチャネルと親和性のある保険商品

消費者から見た場合は保険商品において保障(補償)内容等の理解が困難 であること,保険会社から見た場合はモラルリスク(逆選択)の誘発,適切 な告知を得ることの困難さ,代理入力等の問題があるため,保険の目的物が 明確である保険商品やパターン販売の保険商品の親和性が高い。インターネ ットチャネルの場合,商品内容がシンプルである保険商品に親和性が見出さ れる。具体的には生保では死亡保険,損保では自動車保険,国内旅行傷害保 険,海外旅行保険が挙げられる。

⑶ インターネットにおける保険購買の課題

インターネットを用いた一般の商品の通信販売は1990年代後半から急成長 したが,保険商品の場合,2000年代後半であり しかも進化が遅い 。表

27) ひっそりと始まった生保商品のネット販売 日経ビジネス 2000年9月25 日号,pp.184‑187。

28) 英国を例にとると,損害保険の30%がダイレクト販売であり,インターネッ

(10)

面的には情報の非対称性は低下し,保険ショッパーは保険料(価格)につい て興味深い手掛かりを得ることが可能となった。しかしインターネットの普 及と進化により保険ショッパーが高知識化したと捉えることは危険である。

その理由として次の3点が挙げられる。

第一に,商品選択時の判断の困難性が挙げられる。インターネットによる 保険ショッピングは保険募集人を介さず自ら保険商品を比較し購買できる点 に特徴がある。比較サイトにおいては複数の保険会社の商品を比較し,類似 した商品群の中から一番価格の安い保険商品を選択することは可能であるが,

どの保険商品が自分に適しているかを選択することの困難が伴う。

元来,保険商品を示す約款は消費者には複雑であり,商品を比較するため には商品内容の理解が前提となる。インターネットの普及と進化は保険商品 を選択する情報と同時に商品購買の判断を妨げる情報も伴う。保険商品の選 択基準としてブランド(保険会社),保障(補償)内容,サービス内容,価 格(保険料)の4つが挙げられるが,自分に最適な保険商品を選択すること は至難の業と言えよう。

買物におけるインターネットの影響度調査 によると,情報収集として 家電製品は比較サイト,ゲーム機は

ECサイトの活用率が検索エンジンより

高く,保険購買は比較サイトの親和性が低い。これは数十社もの保険会社の 商品を比較することの意味合いが十分に評価されていないと理解される。

第二に,商品購買時の躊躇・不安の発生が挙げられる。守口[2009] は スーパーマーケットにおける購入経験および比較商品の有無と躊躇・不安の タイプとの関連について,比較商品があり購入経験がある場合は経済面の不

トによる自動車保険の購買率は約20%とわが国と比べて高い(Datamonitor, 2006年)。

29) 博報堂 買物における

Webの影響度調査 結果速報 (2007年)によれば,

自動車保険,生命保険・医療保険の検索エンジンの活用率は各々63.0%,52.1

%と高位であるのに対し,比較サイトでは26.1%,17.6%と活用率が低い。

30) 守口剛 購買時点における躊躇・不安の発生原因と発生頻度

JAPAN

MARKETING  JOURNAL No.115,2009年,pp.45‑58。  

(11)

安・躊躇があり,購入経験がない場合は機能側面と経済面ともに躊躇・不安 が見られると指摘する。前述の影響度調査結果ではインターネットで情報収 集後購買に至っている比率が自動車保険では高く,生命保険では低いことが 明らかとなっている 。基本的に1年更新の自動車保険と一生において一度 の買い物である生命保険では購買経験の差がある。生命保険の場合,インタ ーネット上の情報収集から成約に至る操作手順の過程において躊躇・不安が 発生し,スクリーンアウトされて購買には至らないと考えられる。

第三に,インターネットショッピングにおける個人情報の取り扱いに不安 を持っている消費者が多い点が挙げられる 。意思確認の困難性,なりすま し,盗聴といったセキュリティの問題,漏えいや個人情報の他の目的の使用 等解決すべき課題は多い。

4.3 来店型保険ショッパーに見る購買行動

⑴ 来店型店舗と来店型保険ショッパーの出現

営業職員(外務員)が契約者の自宅,勤務先等に訪問するスタイルを変え たのが来店型店舗である。ショッピングセンター,スーパーマーケット等に 専用のカウンターを設置し,来店客に保険の説明や販売を行う店舗である。

1970年代の米国においては直販形態の店頭販売が行われていた点が特筆さ れる 。わが国においては保険会社と百貨店・スーパーの店頭における販

31) 前掲注29)によれば自動車保険におけるインターネットでの情報収集と購入 経験の活用率はそれぞれ33.0%,26.1%であるのに対し,生命保険・医療保険 の場合,それぞれ21.2%,4.1%と低い。

32) 経済産業省 平成21年度わが国情報経済社会における基盤整備(電子商取引 に関する市場調査)報告書 (2010年,p.84)によれば,インターネットショ ッピングを利用していない理由として 個人情報の取り扱いに不安があるか ら (24.6%)が上位に挙げられている。

33) オールステート社は新人営業をシアーズ・ローバック社の店舗内とブースに 配置した。斉藤寿男 日本市場にどう取組むべきか外資系生保 金融ジャー ナル (1987年2月号,pp.24‑27)によれば,来店客を中心に保険の募集を行 い,700名程度の顧客を獲得するとブースを離れてそれを基盤に募集活動をさ

(12)

売の2つに分類され実施された。前者は主に生命保険会社の店頭(営業窓 口)に来店した顧客に対して直接,その場で生命保険の募集を行う販売方式 である。後者は①保険会社の専門職員を派遣・常駐させて販売する方式,② 百貨店等を募集代理店としその従業員(使用人)が販売する方式により,

生命保険コーナー 等を設けて生命保険の募集を行う販売方式であった 。 その後,大手生保を中心にアンテナショップ等店頭販売のあらたな取り組 みが行われたが,マーケットを大きく変えるまでには至らなかった。その理 由としては次の2点が考えられる。1点目は,店舗において必要な商品の 品揃え がなかったことが挙げられる。これは,生損保商品の併売が禁止 されていたこと,保険自由化前で保険料が同一であり商品内容の差異が生じ にくかったこと,一社だけの商品だけでは顧客に対し訴求力が弱かったこと 等が理由として挙げられる。2点目は,消費者が百貨店・スーパー等におい て保険契約をすることに抵抗感を持っていたことは否めない。

2000年に来店型店舗が出現し ,保険会社の直営,代理店型(保険会社の 資本参加型,全国型,広範地域型,地域密着型)店舗,銀行等の窓口販売,

小売業が行う店舗(百貨店,スーパーマーケット,生協等)等が出現した。

来店型店舗は複数の保険会社の商品を扱い,中立的な立場で気楽に相談で きることを訴求力にしており,保険の見直しの駆け込み寺とも言われてい る 。保険商品の多様性,手数料の大きさ,保険契約の長期性などの点から

せたが,新人の育成,定着化のために非常に効率的な方法といわれていた。

34) 由井常彦 セゾンの歴史 下巻 (1991年,pp.612‑614)によれば,シアー ズ・ローバック社が得意とする保険の店舗内ブース販売をチェーンストアとし ての西友ストアに導入したものであった。

35) 生命保険文化研究所 生命保険新実務講座第3巻 ,1990年,p.242

.

なお,

1972年には当時の西武流通グループとシアーズの業務提携が成立し,1975年に 西武オールステート社が誕生して,生命保険では1976年,損害保険では1980年 に保険会社として最初の店頭販売を行っている。

36) 2000年3月にライフプラザホールディング社が代理店として多くの保険会社 の商品を店舗で販売したのが始まりと言われる。

37) 週刊東洋経済 2009年版 生保・損保特集 ,2009年,p.55

.

(13)

生命保険の商品(医療保険,死亡保険等)の販売が中心となっている。

⑵ 来店型保険ショッパーの購買における異質性

来店型保険ショッパーの購買行動には次の3つの特徴が挙げられる。

第一に,店頭において保険を購買することが容易になったことで,主体的 に自ら情報探索をし,パーソナルな選好が意思決定要因になりにくいという 点において従来とは明らかに異なる消費者群である。

第二に,保険購買意図の予定がない来店の購買行動はあまり見られない点 に特徴がある。一般には,店頭における購買行動のパターンは購買意図と購 買実績により4つのパターンに区分されると考える(図表4)。

来店型ショップの多くは,相談体制(対応出来る保険募集人とブース数)

の関係から予約制(あるいは予約優先)であり,相談時間として1〜2時間 の枠を要している。来店型保険ショッパーは来店時にすでに購買意図の予定 がある点に異質性がある。

第三に,来店型保険ショッパーの場合, 保険のムダをなくしたい 等保 険の見直しを考え来店する客が多いことが挙げられる 。また,来店に至る 38) 前掲注37)

p.

55によると来店型保険ショッパーには次の3つの特徴が見られ る。①初回の来店は 妻1人 で来店が4割, 夫婦2人 が3割, 独身女 性 2割超, 男性1人 が5%程度である。②1回約2時間,3回ほどの来 店を経て契約となる。③保険料が安い商品への見直しを考え来店する客が多く,

1世帯当たり契約保険料は4〜5万円であり,貯蓄型商品の人気が高い。

非計画購買 購買

実績 予定なし

予定あり 計画購買 購買

非購買 購買中止

非購買 購買実績

(出所)田島義博・青木幸弘 店頭研究と消費者行 動分析 (1989年,p.71)より作成。

図表4.店頭における購買行動のパターン

(14)

経緯は直接来店に至る場合の他,インターネットで見積り後,来店する場合

(Web to Real)と コ ー ル セ ン タ ー で 見 積 り 後,来 店 す る 場 合(Call to

Real

)等の購買行動の特徴が見られる。

 

⑶ 来店型保険ショッパーと親和性のある保険商品

来店型店舗は複数の保険会社から保険商品を選択する点はインターネット の場合と同じであるが,対面のコンサルティングにより選択する点が異なる。

前述のとおり保険の見直しの相談が多いことから貯蓄型の保険商品の親和性 が高い。具体的には生保では死亡保険,医療保険,損保では傷害保険が挙げ られる。

⑷ 来店型店舗における保険購買の今後の課題

来店型店舗の誕生はショッパーを店舗へ 買いに行く ことを喚起した。

来店型保険ショッパーは保険購買行動のあらたな試金石であり次の4つの課 題が挙げられる。

第一に,来店型保険ショッパーのニーズ,とりわけ保険の見直しにどこま で応えられるかという点である。来店型保険ショッパーには保険商品を比較 検討したいが煩わしいと感じ,店舗の店員に選んでもらおうとする傾向が見 られる。来店型店舗は主に大型乗合代理店が経営し, 品揃え を訴求力に している。来店型保険ショッパーに対し数十社の保険会社の保険商品から適 合する商品を推奨するためには,保険募集人は相当な商品知識が要求される。

第二に,属人的なものを排しているといいながら店員というパーソナルな 選好が意思決定要因になりやすい点が挙げられる。店員誰もが来店型保険シ ョッパーに対して同じように接客するためには研修ロードとコストがかかる。

また,訪問型の保険募集人との差別化がどこまで図れるかも課題となる。

第三に,今日の来店型店舗は路面店舗,ショッピングセンター内店舗等良 い立地条件にありながら,来店者数を増やす取り組みにやや欠けると考える。

気軽に来店してもらえるよう集客力をアップする取り組みが課題と考える。

最後に,前述のとおり保険に加入する窓口としてのポジティブ・イメージ は極めて低く,店舗の多くが都市部に集中しており, 全国いつでもどこで

(15)

も保険ショッピングができる というインフラ整備において限界がある点が 挙げられる。

ショッパー・マーケティングではショッパーの店舗内の購買行動を分析し,

売場に注意を払うことで,売上拡大とショッパーのロイヤリティ向上に取り 組んでいる。同様に来店型店舗においても,保険ショッパーが店頭における 利便性を享受できるよう,店員の相談対応の品質やサービスに取り組むこと が喫緊の課題と言えよう。

4.4 銀行窓販利用者の購買行動

⑴ 銀行窓販の出現と銀行窓販利用者の購買における異質性

保険における銀行窓販は銀行等の窓口において生命保険会社と損害保険会 社が保険商品を販売することである。2001年に住宅関連信用生命保険の解禁 を皮切りに,段階的に販売できる商品が広がり,2007年に全面解禁されてい る。コンサルティングセールスという観点から注目される。

様々な金融商品と保険商品との比較検討が可能となる利便性が向上する一 方,消費者保護の観点から2007年の金融商品取引法の施行により,特定保険 契約(変額年金保険等)についての販売・勧誘は規制されている。

銀行窓販利用者と通販型保険ショッパー・来店型保険ショッパーの購買行 動には次の3つの違いが見られることから,同列には論じられないと考える。

第一にニーズ喚起(認知経路)が挙げられる。銀行窓販の認知率も 詳し く内容まで知っている (3.8%), 内容はよく分からないが,加入できるこ とは知っている (43.8%)と認知計で5割弱であり,認知経路も 銀行の 窓口 (62.1%)が圧倒的に多い。保険商品の購買に銀行の窓口へ行くとい うより,銀行店頭での案内により保険購買のニーズ喚起が行われ,来店型保 険ショッパーが保険の見直しという明確な目的で来店しているのとは対照的 である。

第二に,銀行窓販での加入理由として 信頼できる (48.0%), (窓口や 渉外)担当の銀行員に勧められた (38.4%)が大半を占め,銀行と銀行員

(16)

の信頼性が加入に至った理由として挙げられる。

第三に,ポジティブ・イメージとして 金融全般に関する知識がある

(38.7%), 保険以外の商品とも比較できる (31.1%)等,銀行において保 険商品を金融商品の一つとして位置づけ購買しようとすることが伺える 。

⑵ 銀行窓販と親和性のある保険商品

2010年度の生保全チャネルに占める銀行窓販の販売シェアは件数7.0%,

保険金額8.6%に対し,損保全チャネルに占める銀行窓販の販売シェアは件 数0.3%,保険金額0.5%である。銀行窓販では生保商品の親和性が高い。

商品としては,全チャネルに占める割合では投資性の強い保険商品である 変額年金保険(88.4%)の親和性が高い。銀行窓販全商品に占める割合では 傷害保険(53.5%),死亡保険(終身保険等)(46.4%)の親和性が高い 。

⑶ 銀行窓販における保険購買の今後の課題

保険商品の全面解禁を迎えたものの,銀行等がその優越的地位や影響力を 行使することによる懸念,銀行等にとって投信よりも仕組みや手続きが難し い等の課題がある。特に弊害防止措置等の実効性確保の措置として,保険商 品と預金との誤認防止,顧客の非公開情報の利用同意の手続の見直し,他の 銀行取引に影響がない旨の説明の見直し等が求められている 。銀行窓販の 利用者はまだ3%と低いが,顧客との接点を多く有する点において銀行等が 優位にあると思われ,今後マーケットの裾野拡大につながる可能性がある。

最後に本稿で明らかとなった保険ショッパーの購買行動から今後の課題に ついて検討する。

39) 全国銀行協会 銀行による保険窓版に関する消費者アンケート調査報告書 , 2011年,p.16。

40) 金融庁 銀行等による保険募集に関するモニタリング結果 ,2011年,pp.

2‑3。

41) 金融庁 銀行等による保険募集に係る弊害防止措置等の見直しについて , 2011年。

(17)

5.まとめと今後の課題

5.1 保険商品の判断力と購買関与

保険商品の購買行動を商品判断力と購買関与の高低により類型化し,その 変遷を見る。保険自由化前は低判断力・低関与の 購買消極型 であり,保 険自由化後は商品関与の高まりから購買関与も高くなり保険募集人のサポー トを受けながら商品を購買する低判断力・高関与の 購買リスク回避型 へ と変遷する。さらに自ら購買判断する高判断力・高関与の 購買積極型 の 行動が見られるようになる(図表5)。

その背景にはインターネットの普及・拡大,来店型店舗の出現,2006年の 保険商品の販売・勧誘に関する重要なルール変更等がある。 購買積極型 に類型化される保険ショッパーにはヒューマンな感情を排し,自分に合った 購買チャネルを選択し自らの判断で商品を購買すると共に,購買関与が高く,

図表5.保険購買の行動類型とその変遷

(18)

情報探索においても多面的に意思決定を行う傾向が見られる。

この移行過程における課題がその商品特性に応じて自分に適合する保険商 品かどうかの情報提供であり,購買意思決定プロセスに応じ保険会社が保険 ショッパーとの接点の機会を増やすことが極めて重要となる。具体的には,

保険募集人が対面で説明する,コンタクトセンターのオペレータが電話で説 明する,インターネットを通じて問合せメールに対し回答する,インターネ ットのホームページ上に

FAQ

を掲載する等の方法が挙げられる。ベストア ドバイスをするには接客を通じた保険募集人の方が密度の高いコミュニケー ションが期待され優位ではあるが,インターネット世代を中心に非対面を嗜 好する層がいることも事実であり,どの購買チャネルを選択するかはショッ パー側に委ねられるべきと考える。

わが国の保険流通は 利便性 と 品揃え を重視する日本人の消費者特 性に未だ十分にマッチしていないと考える。比較サイトは情報リソースを高 め購買の判断時の 利便性 には寄与するが,商品の 品揃え は商品機能 の違いがわからない(商品判断力のない)ショッパーには有意ではない。保 険商品の比較の困難性は購買のストレスをもたらし,対面販売の紙媒体から インターネットに置き換えた募集サイト画面はインターネットユーザーには 受容されにくい。購買に適した情報量を勘案し, 商品の比べやすさ を追 求した画面づくりと 商品の見つけやすさ が求められる。

5.2 購買関与(購買意思決定関与)

小売業マーケティングでは流通チャネル対応は最も重要な取り組み課題で ある。消費者のニーズの多様化・利便性・価格志向等様々な欲求を充足する ために様々な商品(品揃え,品質,価格等)と場所(立地,チャネル等)を 提供している。ショッパーは商品に応じて購買チャネルを使い分けており,

まずインターネットで欲しい商品を比較検討し,店舗(リアル)で店員に相 談後,インターネットで当該商品を購買する行動が見られる。

一方,保険商品の場合,見積りから契約に至るまで同一の保険募集人とい

(19)

う単一チャネルを通じて購買することが一般的であるが,セキュリティの強 化から保険の訪問販売は勤務先や自宅への訪問が困難になっている。あらた に保険に加入しようとする場合,自ら保険募集人を探すか,あるいはインタ ーネットを通じ自ら情報探索を試み,第三者による口コミやレビューを参考 にするものに変化しており,購買チャネルのマルチ化を促す。しかし現在の 購買チャネルは依然,見積りから契約に至るラインは対面と非対面とに厳然 と分けられ,対面と非対面のどちらで加入するかといった二者選択を迫り,

購買チャネルのマルチ化を妨げているのが実状である。

今日,保険においても購買チャネルを巧みに使い分けて購買しようとして いる。保険購買意思決定プロセスにおいても,購買前(見積り)はインター ネットで情報探索をし,購買(成約)時は保険募集人,来店型店舗(Web

to Real

),またはコールセンター(Web to Call

 

)にて加入する等,対面と

非対面を上手く使い分けをする行動が多く見られる。

前述のインターネットの情報収集と購入経験の活用率の格差が示唆するよ うに,情報収集しても保険商品の購買を断念する離脱者は多く,その囲い込 みが出来ていない。また保険商品を購買する場合,アクセスするチャネル毎 にその都度はじめからの見積りを余儀なくされる等のストレスが見られる。

このように購買チャネル間の障壁の高さは大きな機会損失となる。保険シ ョッパーの多様な購買行動に合わせたチャネルミックス の取り組みを推 進し,購買チャネル間をシームレスにアクセスできるスキームが必要と考え る。具体的には,保険会社が顧客毎に顧客番号を付与し管理する。顧客は加 入したい購買チャネルにアクセスする際,顧客番号を基に

ID

PW

を申告

(ログイン)し,ストレスを感じることなく購買できるようになる。保険会 社が購買意思決定プロセスにおいて購買ラインを複数化し顧客接点を多く設 けることがシナジー効果を生み,保険加入をもたらすと考える。

42) チャネルミックスとは電話,訪問,販売,インターネットなどアプローチ手 段を戦略的に組み合わせることである。

(20)

5.3 おわりに

本稿で明らかとなった 保険商品の購買の異質性 の問題は,医療におけ る インフォームド・コンセント に相通ずる点がある。以前,医療の現場 において患者は常に医師の決定に従うものであるという医師と患者の関係が 見られた。今日,医療は患者に十分説明され,同意されてはじめて実施すべ きものへと変化している。保険においても消費者は保険会社の決定に従うも のという関係はなかっただろうか。消費者に十分説明され,同意されてはじ めて契約することは必然の理である。

保険商品の購買においては,能動的な購買行動が受け入れられるよう購買 チャネルの裾野を広げ,チャネル間の障壁を低くすることが必要であろう。

保険の場合,潜在需要を顕在化させてきたのは保険募集人であることは首肯 しうるところであるが,訪問による保険募集人との接点を失った20代,30代 の層が 保険難民 になるおそれがある。募集形態の多様化に対し 対面型 か非対面型か というような二者択一ではなく,保険に未加入であったネッ トユーザーをあらたに保険マーケットに取り込むという発想も必要である。

保険購買の入口を広げるためには保険を他の商品と異質なものとして示す のではなく,小売業の発想を参考にしショッピング感覚で 少しでも安く ,

気軽に , 便利に 購買できるよう商品と場の提供に取り組むべきと考え る。そのために保険ショッパーの購買行動に着目し,どこでどのように買っ てもらうかを解析することが購買チャネルの活性化につながると思われる。

結びとして,保険購買においてはチャネル間の障壁を低くしチャネルのア クセスにかかるストレスをなくすこと,購買意思決定プロセスに応じた有意 な情報提供により顧客接点の拡大が求められる。このことが保険ショッパー のニーズの多様化,利便性,価格志向などの欲求を充足する一つの答えであ り,商品判断力を高め保険商品の購買決定を支援する取り組みにつながる。

(筆者は

au損害保険株式会社勤務)

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