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ポリスチレンの熱劣化

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Academic year: 2021

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(1)

ポリスチレンの熱劣化            原  泰毅・赤間 忠司・長田 英世

Thermal Degradation of:Polystylene

Yasutake HARA, Tadashi AKAMA. Hideyo OSADA

  In the previous report, the mechanism of the photochemical degradatioll of polystylene was investigated. In the preSent study, the mechanism of the thermal degradation of polystylene was reported by the methods of differential thermal analysis, thermal gravimetric analysis, measurement of molecular weight and infrared Spectroscopic analysis

etc.

  The 4egradation of polystylene was accelerated with oxygen, and the rate of depol−

ymerizati皿in the air was faster than ill the reduced pressure. For this reason, it was

「considered that glycol, hydroperoxide and epoxide were formed from the reaction between oxygen and double bond in polystylene, and that these products、were unstable under the condition of heating.

 1 緒  言       \         た。

 近年,高分子化学の進歩は目覚ましいものがあ    2・示差熱分析

り,合成繊維,合成樹脂の需要が急速に伸び,ま    試料容器は内径6mmの石英管で・これを銅製 たその用途も広くなって来た.これにともない. のブ・・ク中で加熱し・標醐質として用いた 高分子物質の着色,亀裂等の品質低下が重大な問  酷アルミナとの温度差を検流計で測定した。 ま 題となり,これら劣化現象の機構解明が急がれて  た減圧下で測定する場合・Fig・1に示したような        装置を作製して用いた。

いる。

 一般に高分子の劣化現象は非常に複雑であるが

(1)熱劣化,(2)酸化劣化,(3)紫外線劣化,(4)放射線

劣化,(5)機械的劣化等にわけて考えることが出来       to Vacuum        Pump

る。先に筆者らはポリスチレンの光劣化について 報告(1)したが,今回は光劣化とともに,実用に

際して最も大きな影響をおよぼすと考えられる酸      . 化劣化を中心とした,ポリスチレンの熱劣化過程       … を,示差熱分析,赤外分光分析,分子量測定,重

量減少測定等の方法を用いて考察した結果につい

て報告する・        T     口

 1 実  験

       P      G   1.試  料

       T;Transformer, P;Pyrometer,

 試料のポリスチレンはA社製の120°C,熱重合      G;Galvanometer

のもので,粘度平均分子量が約20万のものを用い    Fig.1DTA Apparatus in Vacuum

(2)

  3・赤外分光分析      を得た。 〔η〕と分子量]砺との関係は〔η〕=K

装置は島津讐所製のRS型(ダブルビー トパで示され,試料が、2。℃鰭合によるも

ム・NaClプリズム)を用いた・試料を四塩化炭 のであるからK−。.55×、。一・,α一。.8、を用し、

素酪解し・岩塩板上噛机て・溶媒を灘下 た.(・)

で除去したのち・空気中・2Wmlnの割合で加 6.二重結合の定量

熱昇

?ウ‡㌘惨竺て分竺をご撫㌶慾講

 担体としては150〜200メッシュのシリカゲルを

      を調製し,試料の四塩化炭素溶液に臭化ピリジン 1°°℃で3時間・空気中で加熱アして用いた・ 溶液を加えて反応させ,過剰の臭素をヨード法で

これを内径田mm・長さ8°cmのカラス管1こ撲 滴定する.本実験では,二重結合数紗なし、ので し,ベンゼンで展開した。溶出した試料および坦

      0−01−Nの臭化ピリジン溶液を用いた。

体に吸着された試料はメタノールで溶出したのち

溶媒を留去して,赤外分光分析およびラスト法に    皿 結果および考察 よる分子量測定を行なった。       1.示差熱分析(DTA)

  5・分子量の測定      Fig.3に空気中および5〜10mmHgの減圧下  i 氷点降下法およびラスト法 氷点降下法の  におけるDTA曲線を示した。いずれも90。C 溶媒は・金属ナトリウムで脱水後蒸留したベンゼ  付近にガラス転位点(Tg)が認められた。 また

ン(Kf=5.12)を用い,ラスト法の場合は,試

薬特級のシ・ウノウ(Kf=⑩・°)をそのまま使 ↑E  h・a・i・g・a・・−2℃/疏 用した。      100       400Temp.(℃)

  ηsp=〔η〕十K 〔η〕2・C      (a) in Air,  (b) in Vacuum

        但し腰縫米翫。。ml) F g 3 DTA°f P°1搾ty ene

で  η=(_1+γ・1+4K ηsp)/2K C       高分子の多くは・はっきりした融点を示さないた となり,η、p/C〜Cのグラフより〔η〕およびK め・測定困難で・DTAでも熔融こよる熱変化を が求められる.本実験ではFig.2セこ示したグラ 認めることは出来なかった・しかし加熱顕微鏡で フが得られ,これよりK 一・.2983,〔η〕一・.・76 継すると・12°°〜13°℃で軟化し始め・徐々に       熔融して行くのがわかった。

       熔融が進むと,空気中で,曲線は徐々に発熱側

1.3

0  1.2   1.1

o

       々に吸熱側に傾むいて行くが,これは切断された   __〔η〕=1.076       少量のモノマーの蒸発によるもと考えられる。空        気中の160°Cからのゆるやかな発熱は,Fig.4に

1.0 0      0.5     1.0     示した加熱試料の赤外分光分析により,試料中に       C・nc・(9/100ml)      カルボニル基(−CO−:1680cm−1)が増加して行

Fig.2ηsp/C〜c       くことから,空気中の酸素の酸化反応によるもの

(3)

       Cm−1

3600 2800 200019001700 1500  1300 1100  900  700

二叉……甦

  (4) Adsorped matter by silica gel (liquid chromatography)

Fig.4  1㎡rared Spectra of Polystylene

と考えられる。この結果,空気中ではカルボニル   ンに溶解させ,メタノールを加えて再沈澱させた 基の生成が認められるように,酸素の付加による  試料の分子量を測定した。またメタノールに不溶 若干の発熱があり,これによって解重合が促進さ  な部分を集めて秤量すると,その重量は温度とと れ,短分子化したスチレンの蒸発等により大きな  もにFig.6のように変化した。メタノールに可 吸熱を示すもので,減圧下における短分子の蒸発  溶なポリスチレンの分子量の上限は約1万と考え は,解重合の速度が遅く,従って吸熱は徐々に進

行するものと考えられる。       100   2.分子量の変化

 空気中および減圧下,2°C/minの昇温速度で   §80        む加熱した試料について,粘度平均分子量を測定し   §60        エこれをFig.5に示した。空気中では,200°Cよ   o        ゼり急激な分子量低下を起こし,約10万程度となり   璽40 その後220。〜260。Cでは徐々に分解し,260。C   ≧20 以上でさらに急激な分子量低下を起こすのである

     insol. in MeOH  匂◎一◎−0−一、O

       \

        \

㎞・一一・℃呼〉<(

        /        み一・H

       

が,これをさらに正確にみるため,試料をトルエ     100   200   300    400       Temp.(℃)

20

寸 151

×10

1自

 5

0

㎞tin@m惚=2℃んi ̲?〜   増加しており・これは Fig・5の25・℃以上の高

0       100      200      300      400

      TemB(℃)       一ルに不溶な分子量1万以上のものが大部分残っ       Fig.6Weight change of MeOH−soluble matter

°{ uぐ\ られる_よりメタノ_な部が

Fig.5 M・lecular Weight〜Temperature    ており,250°Cを越えると短分子化が急激に起こ

(4)

り,メタノール可溶分の増大がある。また減圧下  度も大きくなった。固定相に吸着されたものをメ では空気中に比較して,分子量の低下はゆるやか   タノールで溶出して分析すると,分子量は300〜

で,特に空気中で見られた。200°Cにおける急激  500(ラスト法),赤外分光分析では,カルボニル な分解は認められず,分解過程における酸素の作  基の吸収がさらに大きく,また3400〜3600cm−1 用の差異によるものと考えられる。        に幅広い水酸基の吸収が認められた(Fig.4)こ  一方示差熱分析では250°C附近で,スチレン  とから,二量体ないし四量体の酸化物であること

モノマー特有の臭気が認められたと述べたが,  がわかった。以上のことからこの液体クロマトグ Fig.7に示した装置で試料を分解させ,留出して  ラフィーでは,酸化程度の差によって分離され,

来る揮発分を集めて,ラスト法および氷点降下法  着色度の差も発色団(>CO),助色団(−OH)の により分子量を測定した結果,Table.1に示し  増加から当然であり,ポリスチレンの熱劣化に,

       空気中の酸素が大きく影響することがわかった。

      次に,温度を一定にして,分子量の経時変化を        測定し,その結果をFig.8に示した。これから        反応次数,反応速度定数を求め,活性化エネルギ

(a)     20

      ㊥15

   P、P,。。m。,。ち D、 D。war vessel   文10       1皇 Fig.7 Apparatus for catch the volatile matter

      5 Table l Molecular Weight of Volatile Matter    O

、、、、、.A

、     、o、一、、

●、       、−o−一一一一一一一一一一一〇一  、●

?  、、

    ・E  °\\

蕊   ゜\一一〜←

ピミ8<こ.

 \Φ Φ〜._一゜     8=

   k==6=〜一一一Φ_

魏気|測難1&鑓1蕊逼  ゜ 1Tim:㈱34

減圧下(・)12締下法・・5一モ・マー   :lllε一i・A・・

(b)

空気中(b)

iラスト法

氷点降下法

198〜220 98〜105

C8H8:96      0300℃  一一一一in Vacuum

鷺㍍、、92  Fi・・8M・1ecul・・w・i・h・−Tim・

       一を計算した。Fig.8の曲線より自触反応でな たようになり,さらにこれらのものについて,前  いことがわかるので,反応速度の一般式:dx/dt 述した方法で二重結合数を測定すると,一分子中  =K(1−x)mxnにおいてn=0,即ちdx/dt=K に一個の二重結合を有していることがわかった。   (1−x)mとおける。したがってlog dx/dtとlog

したがってこれらの揮発分はスチレンのモノマー   (1−x)の関係を図示し,その直線の傾きからm およびダイマーである。      が決定出来る。その結果Fig.9のグラフが得ら  さらに空気中で加熱分解した着色試料を,液体   れ,空気中の場合も,減圧下の場合も,反応次数

クロマトグラフィーで分離すると,ベンゼンによ  mは%となった。

り展開されて移動する部分と,担体のシリカゲル   さらに活性化エネルギー(Ea)はArrhenius に吸着されて,ほとんど移動しない部分の二つに  の式K=AeE・/RTよりlogKと1/Tのグラフ 大別された。 移動相は溶媒留去後,赤外分光分   より求めた。その結果Fig.10のグラフが得られ 析を行なうと,展開時間とともにカルボニル基  減圧下の場合17.6K¢al/moleとなった。また空

(1680cm−1)の吸収が大きくなり,試料の着色  気中の場合Fig.5に示したように,分子量低下

(5)

3.0

 2.5 二〜2.0

3 ヱ1.5

1  1.0

//  ・.・

://§:::

  む      ペコ

/  蚕、.,

/     l

        l.0

in Air      Temp.(℃)

      100       200        300        400

!/  乞一2°    ・ふ.

      −30

Fig.11 Weight loss of Polystylene by heating

0・50 。.51.0 0・50 0.51.0

   −1°9(1−x) 。200℃  −1・g(1−・)    る。その結果をFig.11に示した。重量減少は          3il8C      250°c附近から始まり,300°c以上で著じるしく  Fig.9.1。9(dx/dt)〜□。9(1.x)      なった。 Fig・5の分子量変化と比較すると・空

o

一1.0

一2.0

       気中200°C附近の急激な分子量低下は,モノマ        ーの発生をともなっていない。さらに空気中加熱        試料中の一分子当りの二重結合数を測定した結果

\   (⑭4〜5個の二重結舗つ分子がぴ5

\㎞品 i:

 、←●\      8        

  o       「コ

  、       9 3

  、       迫    、      Φ

      ピ

   \       §2

   0      ㊥

    、in Vacuum     甘     、      も 1       唱       皇       0

ぺ㎞∵三一

   〇         /       o

o/o

 一3・°、.。 、.5 2.。 2.5    ・ 1・・ 2・・ 3・・ 4・・

      Temp.(℃)  一一一       1/T×103

  ,Fi・.・・A・・i・a・i・n E…gy_    Fig・12 Change°輌uble b°nd b・heating        (Caluculated from Mv change)

       個まで減少することがわかった。 したがって,

が二段に進行することから,この温度範囲で直線  100°C附近から空気中の酸素とポリスチレンの二 とならず,低温部(200〜250°C)で,Eaは空気  重結合が反応してエポキシ,グリコール等を生じ 中の酸素の影響により非常に小さく,高温部   て二重結合数が減少し,これらの結合がポリスチ

(250〜300°C)では,ほぼ減圧下におけるEaの   レンの分子構造に影響して200°C附近でポリス 値に近い値が得られた。       チレン分子の結合の切断が生じ,第一段の分子量   3.重量変化       低下の原因になるものと考えられる。また250°〜

 先に述べた如く,ポリスチレンの熱分解によっ  300℃からの分子量低下は,結合がランダムに切 て発生する揮発分は,ポリスチレンのモノマーお  断され,ダィマーおよびモノマーまで分解されて よびダイマーであり,試料の重量減少を測定する  行く過程だと考えられる。一方減圧下において ことによって,モノマー発生量を知ることが出来  は,酸素の影響がほとんど認められず,ポリマー

(6)

からのモノマーあるいはダイマーの留出が,劣化   より生ずるモノマーあるいはダイマーのポリスチ の主反応であると考えられる。       レン系外への拡散は極めて速く,重量減少の測定  次に,一定温度で重量の経時変化を測定し,モ   の律速段階は分子の結合切断の過程であることを

ノマー発生の反応次数および活性化エネルギーを  示すものと考えられる。

計算した(Fig・13)。反応次i数は・モノマー発生    W 結  論 量が時間とほぼ直線関係にあり,0次反応である

ことがわかった。 また活性化エネルギーはFig.   以上の結果より・ポリスチレンの熱劣化過程は 14のグラフより19.5Kca1/moleとなった。こ  次のように考えられる。

れは分子量減少を行なわせる活性化エネルギーと   (1)90°C附近にガラス転位点が認められる。

ほぼ一致した。即ちポリスチレン分子の解重合に

       (2)軟化点は120°〜160°Cで,明確な融点を 100

 80

iiミ

三60

.i那40

20

0

・_: ・   ←  示さない・

Φ ・べ.   ・_        (3)試料中の二重結合数は100°〜200°Cで著   \。       じるしく減少するが,これは二重結合に空気中の

    \   

酸酬加噸化物あるいは過酸化物を生成し

       ているものと考えられる。

         inAi「         (4)分子量低下の測定およびモノマー発生量の       0200℃

・         ・250℃       測定から,二重結合と酸素の反応で,ポリマー分

1   :ll⑪ε   子のいずれかの部分喘合の弱い点を生じ,2・・

       °C附近でこの結合が切断されて分子量が低下し 0   !.0  2.0  3.0  4.o    さらに200°〜300°Cで・ダイマーおよびモノマ        Time(h「s)         一まで分解されていく。

Fig.13 Weight l・ss〜Time         (5)赤外分光分析による試料中のカルボニル        基,水酸基の増加からも,ポリスチレンの熱劣化

一1.0

      過程において,酸素が大きく影響することがわか       った。

o      (6)空気中に於ける酸素はポリスチレン中にカ       ルボニル基等を生成することによって以後の分解       を促進するが,減圧下ではポリスチレンよりのモ       ノマー, ダイマー留出の反応が起こるのみであ

       (7)重量の減少を律する過程は解重合過程であ

菖一、.。      って,鯉合を受けたスチレンモ・一,ダイマ

      ーの拡散は速く,見掛けは0次反応となるが,そ        o       の活性化エネルギーは解重合のエネルギーと同一       である。

       (8)200°C附近では重量の減少のない解重合反       応であって,この反応は空気中の酸素によって促  一3.0

   1・5  1・75   2・0   2・25    進される。250°C以上になると,この解重合スチ       1/T×10・         レンよりモノマー,ダイマー等のスチレンの留出  Fig.14 Activati。n Energy      が開始されるとともに,重量減少が生じ,さらに       (calulated from weight l・ss)     解重合および酸化が進行して,カルボニル基や水

(7)

酸基を含有する着色物質を残渣として生成し,熱 劣化は終る。

文    献

(1)羽原哲志,橋本次雄,赤間忠司,長田英世;

  九州工業大学研究報告 (工学)第17号,83,

  (1967)

(2)M.L. Huggins;J. Am. Chem. Soc 64,

  2712,  (1951)

(3)T.Alfrey, A. Bartorics, H. Mark;J・

  Am. Chem. Soc.,65,2319(1943)

(4)Rosemund, K. W., Kuhnhenn., W. Z.;

  Nahr. U. Genussm,46,154(1923)

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