論文審査の結果の要旨
氏名:長 崎 真 希
博士の専攻分野の名称:博士(歯学)
論文題名:Effects of LPS and high concentrations of glucose on zoledronate-induced RANKL/OPG expression and PGE2 production in osteoblasts
(骨芽細胞におけるゾレドロネート誘導性の RANKL/OPG 発現と PGE2産生に及ぼす LPS と高濃度グルコースの影響)
審査委員:(主 査) 教授 佐 藤 秀 一
(副 査) 教授 外 木 守 雄 教授 川 戸 貴 行 教授 鈴 木 直 人
ビスフォスフォネートは,骨粗鬆症や悪性新生物の骨転移などの治療で高い有効性を示す一方で,
副作用としてビスフォスフォネート系薬剤関連顎骨壊死 (bisphosphonate-related osteonecrosis of the
jaw; BRONJ) が問題となる。全身的基礎疾患である糖尿病,喫煙習慣,観血的処置,歯周病,および,
窒素含有ビスフォスフォネート製剤であるゾレドロネートの長期投与は BRONJ のリスク因子とされ ている。歯周病では,歯周病原菌の内毒素 (LPS) が歯周組織における炎症性サイトカインやプロスタ グランジンE2 (PGE2)の産生のトリガーとなる。また,歯周病は糖尿病の合併症の1つである。
骨芽細胞は,破骨細胞分化促進因子receptor activator of NF-kappa B ligand (RANKL) とそのおとり受
容体 osteoprotegerin (OPG) を産生し,破骨細胞の分化を調節する。また,LPS は,骨芽細胞の
cyclooxygenases (COX)-2の発現増加を介してPGE2の産生を誘導し,PGE受容体 (EP) を介したPGE2
のautocrine作用がRANKLとOPGの産生に影響する。しかし,BRONJのリスクとなる糖尿病と歯周
およびゾレドロネートの投与が骨芽細胞に及ぼす影響の詳細は不明である。そこで,本研究では,歯 周病と糖尿病を想定した LPS と高濃度グルコースの存在下でのゾレドロネート刺激が,骨芽細胞の RANKL および OPG の発現,ならびに PGE2産生に及ぼす影響を調べた。さらに,PGE2の autocrine
作用がRANKL/OPG比に及ぼす影響をCOX-2選択阻害剤であるNS398を用いて検討した。
骨芽細胞様細胞であるMG-63をPorphyromonas gingivalis由来LPS (1 µg/mL),高濃度 (25 mM) グ ルコースまたは ゾレドロネート (1×10-8, 1×10-7, 1×10-6, 5×10-6, 1×10-5 M) を含む培地で培養し,細胞を 刺激した。COX-2,EP2,EP4,RANKLおよびOPGの遺伝子発現をreal-time PCR法で調べた。NS398
(10 µg/mL) の存在下または非存在下で細胞をLPS,高濃度グルコースまたはゾレドロネートで刺激し
た培養上清中のRANKLとOPGタンパク,ならびにPGE2の濃度をELISA法で調べた。
その結果,以下の結果および結論を得ている。
1. COX-2の遺伝子発現は5×10-6 Mのゾレドロネートで顕著に増加した。
2. ゾレドロネート単独刺激に比べて LPS と高濃度グルコース存在下でのゾレドロネート刺激で COX-2の遺伝子発現とPGE2産生が増加し,NS398はPGE2の産生増加を阻害した。
3. ゾレドロネート単独刺激に比べて LPS と高濃度グルコース存在下でのゾレドロネート刺激で
RANKLとOPGの遺伝発現は増加し,EP2とEP4の発現に影響は認められなかった。
4. RANKLとOPGのタンパク発現は,LPSと高濃度グルコース存在下でのゾレドロネート刺激で増
加し,NS398はゾレドロネート刺激によるこれらの発現増加を阻害した。
5. RANKL/OPG比は,ゾレドロネートの単独刺激に比べてLPSと高濃度グルコース存在下でのゾレ
ドロネート刺激で増加した。
以上のように,本研究は,LPS と高濃度グルコースは,PGE2の autocrine を介してゾレドロネート 刺激によるRANKLとOPGの産生に影響し,RANKL/OPG比を増加させることを明らかにしたもので あり,口腔外科学領域における研究発展に寄与するところが大である。
よって本論文は,博士(歯学)の学位を授与されるに値するものと認められる。
以 上 令和3年3月10日