修.士学位論文
懸名 …、己量泰霞施設し掌枚の正.携
!)尺童家言隻施改頁甜瓦し掌杖駅夏パ
皇確して妓を㍍打洲こ〜
買五〜70買
掲欝教員 下iソ 唱尺 孝疋改
平蔵巧年 /月 /9貝提樹・
人文科学研究科 . 人..間竹掌専攻
率修番母 一!/86λ・ピ03 ヤベ ・林〔工こ
ポが義尺.書1細手
目次
第1章 問題と目的 1 1−1.問題意識一 1 1−2.先行研究の外観 1
1−2−1.児童養護施設入所児童への対応,支援に関する研究 1
1−2−2.児童養護施設入所児童の学校における課題の難しさ,支援に関する研究 2 1−2−3.児童養護施設と学校の連携の必要性 3
1−3.先行研究の問題点 5 1−4.本研究の目的 5
第2章 本論 6 2−1.問題提起 6 2−2.研究 6
2−2−1.研究1卒業論文の再分析,再考察 6 (1)方法の選択 6
(2)対象者 7
(3)データ収集の手続き 7 (4)データの分析について 8 (5)分析と結果 ,、10
(6)考察 17
(7)1まとめ、研究2に向けて 18
2−2−2.研究2施設CWと学校教員の連携プロセス 19
(1)方法の選択 19
(2)対象者 19
(3)データ収集の手続き 19
(4)データの分析について 20
(5)分析と結果 20
(6)考察 31
(7)まとめ、研究3に向けて 36
2−2−3.研究3施設CWと学校教員の連携プロセス 37
(1)方法の選択 37
(2)対象者 37
(3)データ収集の手続き 37
(4)データの分析について 38
(5)分析と結果 38 (6)考察 49 (7)まとめ 54 2−3.総合考察 55
2−3−1.本研究で見られた知見 55
2−3−2.これまでの先行研究との位置づけ 59 2−3−3.本研究の成果と課題 59
引用文献一覧 61 謝辞 63
資料 64
第1章問題と目的
1−1.問題意識
現在,日本には約590の児童養護施設があり,2〜18歳の約3万人の児童が入所している.
児童養護施設とは,児童福祉法に規定された児童福祉施設の一つであり,r乳児を除いて,
保護者のいない児童,虐待されている児童その他環境上養護を要する児童を入所させて,
これを養護し,あわせて退所した者に対する相談その他の自立のための援功を行うことを 目的とする施設とする」とされる(児童福祉法第41条).
筆者は学部時代,児童養護施設でボランティアをする中で,ある施設入所児童に出会っ た.施設で働く心理士の方から,その児童が小学校で不適応を起こしているため,支援の ために小学校に学生ボランティアを入れたいという話があり,筆者ともう一人の学生が週 に1日ずつ入ることになった.支援を通して,児童の学校生活での課題の難しさを目の当 たりにし,児童の周囲の人が連携して支えるということの大切さを感じると共に,その連 携の難しさを強く感じた.そして,児童養護施設入所児童にとって学校は重要な生活場面 であるにもかかわらず,学校生活全般を支援する際の課題に焦点を当てた研究があまりな いこともわかった.そこで卒業論文では,「児童養護施設と小学校との連携」をテーマに,
筆者の小学校での参与観察記録と,学校との連携に主にかかわっていた施設の心理職と児 童の担任教師へのインタビューデータを分析し,①施設児童の学校における問題,②それ に対する学校の対応,③施設の対応のそれぞれ,そして④両者の連携による対応をま ニめ,
施設と学校が連携して児童を支える難しさがどこから来ているのか,連携するために必要 な要因について考察を行った.
本研究では,卒業論文のデータと新たな児童養護施設ケアワーカー(以下,CW)のデー タを,クラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて再分析することで,施設職員と学 校教員が連携して児童を支援するプロセスを明らかにし,どこで両者の間にすれ違いが生
じているのか,すれ違いが生じた場合とのように修正を行うのか,あるいは行わないのか,
連携して児童を支えるために重要な要因は何か,などを考察したい.また,卒業論文では 一事例を対象としていたため,より多くの施設でインタビューを行い,学校との連携の現 状を明らかにしたい.
1−2.先行研究の外観
1−2−1.児童養護施課入所児童への対応,支援た関する研究
児童養護施設入所児童の多くが不適切な養育環境で育ち,乳児期の愛着の形成に未解決 の問題を抱えたまま,家族と離れて集団生活をせざるを得ない状況にある.そして彼らは
日常生活で問題とされる行動を起こし,その中には施設入所児童に特有なものもある.児 童養護施設に心理士として長く勤務している森田(2006)は,児童養護施設の子どもたち の様相と行動について,次のような特徴を挙げている.①落ち着きのない子,②乱暴な子,
③いじめっ子・いじめられっ子,④強がる子,⑤クームに勝たねばならない子,⑥うそを つく子,⑦友達と遊びたがらない子,⑧経験の少ない子,⑨頼りになる子,⑩自慢話とつ
くり話,⑪人懐っこい子.施設の中では,共に生活している児童指導員による日々の対応 だけでなく,施設職員全体による様々な働きかけがなされており,研究としては心理療法 担当職員による個別の心理療法や集団で行う遊戯療法など,数多くの研究がされている.
宇賀神ら(2007)は,児童養護施設入所児童の不適応行動の実態,行動を引き起こす心 理的な要因について分析し,養護支援についてまとめている.その中で取り上げられてい る児童Aは,誕生して間もなく両親が離婚し,2歳で施設に入所するまでは母親に育てられ るが,母親との間に適切な愛着関係を形成することができなかった.母親も祖母からネグ レクトをされ児童養護施設で育?ているため,わが子をどのように受け入れ,どのように 愛情表現したらよいかを経験的に学習していなかった.この児童Aは,夏でもコートを着 ており,ケアワーカーが「暑いから脱ごう」と言っても脱こうとせず,箪笥にしまっても 探し出して着ていた.これについて施設の心理療法担当職員が,施設での生活という新し い環境におかれた不安は想像を超える程大きく,外界から自分を守る砦として厚いコート が必要であり,着用しなければ心の安定を保つことができないという解釈をし,ケアワー カーがAの冬物着用について制限や言及をやめた結果,施設での生活が安定した翌年に,A は冬物を着用しなくなった.また,大人を独り占めしようとし,ほかの児童に暴力的な振 る舞いをすることもあり,Aの行動改善を図るため,Aの要求に出来る限り応えるようにす るなど,基本的信頼関係を形成するための努力を行った.しかし,ケアを要する子は他に もいるので限界があり,Aの心の安定をはかるために,ケアワーカー以外の大人との1対1 のか永わりが必要であると判断し,週に1回,1時間30分程度,ボランティアスタッフを つけるという取り組みを始めた.この試みによって,Aの言動に明らかな変化が見られるよ
うになり,表情が和らぎ,学校におけるいじめや学校備品の無断持ち出しが減少していっ た.また,家庭で受けた虐待などの話を,自ら語り始めたり,自分の気持ちを,暴力とい う方法ではなく,言語で表現するようになっていった.「ここ(児童養護施設)にいたい」
など,施設に対する愛着の言葉を口にするようにもなり,施設で関わる大人が,Aにとって 安心で安全なも、のであると認識されていったことに他ならない,と考察している.
1−2−2.児童養護施設入所児童の学校における課題の難しさ,支援に関する研究
1−2−1では,児童養護施設児童への支援の1つとして,施設の中における取り組みを中 心に取り上げたが,児童養護施設入所児童にとって,もう一つの重要な生活場面である学 校の申での様々な課題,支援について取り上げる.
ある児童養護施設の職員である桑原ら(2009)は,施設児童の教育的な課題とそれに対 する取り組みをまとめている.児童の課題として,低学力のため各教科の内容についてい けない,落ち着きのない児童が多く授業への参加状態に問題が目立つ,自信を失い投げや りな態度が見られる,注意の集中が長続きしない傾向があり一つの課題に集中できる時間 が限られている,などを挙げている.そしてこうした子どもたちに学習の習慣を身に付け
させることは容易ではなかった,と述べている.
教師である上田は,近くの児童養護施設から多くの児童が通っている小学校に赴任した
際に,児童が「非常に投げやりである」という印象を持ち,投げやりな態度を何とかした いという思いが発端となって始めた取り組みについてまとめている(上日ヨ,2006).施設児 童の特徴として他には,「キレてしまう」,「手や足が出てしまう」,「気持ちがすごく張り詰 めている」などを挙げている.そしてその原因として,施設に入所してきた,経済的な理 由,虐待,親の病気などの様々な事情を挙げている.
上田が受け持ったクラスの児童Yさんは,幼少の頃,父親から性的虐待を受けており,
その後母親と2人暮らしをしていたが,母親が夜の仕事に出かけるため,寂しさに耐えら れず,夜中の町を俳個することが続き,近所の人の通報で保護された.Yさんはかまって欲
しいという気持ちが強く,「あそこが痛い」と言っては保健室に行っていたり,上閏が他の 児童に対応していて「待ってね」と言うようなことがあればすぐにキレてしまうというこ
とがあったりした.ある時,Yさんは「足が痛い」と言いながら足を引きずっていたので,
上目ヨが「大丈夫か」と声掛けをして,保健室で一通り見てもらって湿布を貼ってもらった ところ,帰る時は反対の足を引きずっていた.足が痛いという演技を一生懸命している姿 を見て,本当にこの子はかまってほしいんだなという思いがこみあげてきたと述べている.
また別の児童Kさんは父親と死別し,母親が再婚して,その再婚相手も体調が悪く,母 親が仕事をしながら住まいを転々とし,その度にKさんは転校を繰り返し,最終的に上岡 のいる小学校に落ち着いていた.上閏は保護者と連絡が取れない時期があり,ない時は1 年も途絶えてしまうことに困惑しており,そのような状況の中で,Kさんの情緒は不安定で 喧嘩が絶えなかったようである.
別の児童Mさんは,もの心づく前から車の中で生活していた.兄がおり,兄は赤や青と いう色が分からない状態であったほど,生活経験が不足していた.入所前は,借金から逃 れるため父親が家の近くに車を置いて,ずっとその申で生活しており,母親の顔は覚えて いないようであった.Mさんは授業中じっとすることが出来ず,ずっと動き回って友達に ちょっかいを出して喧嘩をしたり,時には暴力的になって物をガラスに向かって投げたり もした.上目ヨは,危険なことをした時は子どもを本当に叱るのだが,この時は近隣に聞こ えるような大声で「腕が折れた」とか「上田先生がやった」とか泣き叫び,落ち着くまで 話をするのだが,本人は意識がここにはないという感じで,目が宙を泳ぎ,語りかけても 耳に入っていないと感じられたようである.上日目は,Mさんはこれまでの大人との対応の 中で,そうせざるを得なかったのであろうと述べている.
上田は,Mさんに対応していると,KさんとYさんが喧嘩しているとか,それに巻き込 まれて他の子も喧嘩しているとか,こっちを止めに入ったら別のところでトラブルという ような状態が続き,同僚に「疲れました」と弱音を吐いていたようである.教室に行く足 取りも重く,「このままだったらどうしよう」という先の見えない不安があり,何とかしな いといけないという気持ちもありながら,不安定な状態で過ごしていたと述べている.そ
して,後になって振り返ってみると,「子どもが見えていなかった」と述べ,毎日の対応に 苦慮していたことがとてもよくわかる.
1−2−3.児童養護施設と学校の連携の必要性
1−2−2で取り上げた上図(2006)の小学校では,地域のネットワークを作ることを大切 にしており,中学校,施設,児童相談所,市の教育委員会と5者懇談会を実施し,施設の 児童について話し合う場を定期的に持っている.このように連携することで,それぞれの 機関が抱える課題も明らかになり,それを解決するためにどのように協力できるかという 話し合いも可能になると述べている.また,施設の子どもたちは,自分の悩みなどを相談 する相手となる大人が限られているため,ネットワークを広げて施設に第三者機関がかか わることが重要であり,子どもたちの未来にとって、も必要なことであるとも述べている.
桑原ら(2009)も,児童が毎目通学する地域の学校との連携を最も重要な課題の一つに 挙げている.特に,次の5点で児童の教育に関して学校側へ理解と協力を求めることを必 要としている.①施設では年度途中であっても入過所が多いため,急な就学への対応を依 頼しなければならない状況がある.特に小人数学級や特別支援を要する児童が多い.②児 童の入所に至る経過は様々であり,外部との接触が問題になるような例では,児童の安全 の確保が課題となる.③児童は施設での人間関係を学校まで引っ張ってしまうことがある.
ほかの児童とのトラブルを生じたり,施設の子ども同士がかたまって行動す一ることがある.
④基本的な生活習慣が確立されていない児童への対応が課題となる.⑤施設への入所前に,
登校や就学ができていなかった児童では,個別対応が必要である.このような多様な課題 があるため,学校区域の小中学校に施設児童への対処を依頼することが多いと述べている.
1−2−1で取り上げた宇賀神ら(2007)のケースでは,児童Aの不適応行動の変化の一つ に,学校におけるいじめや学校備品の無断持ち出しの減少があったが,施設と学校とが的 確な連携をとってAに対応したことによって,Aの行動は学校においても「模範的である」
と評価されるようになっていらた,と学校との連携の重要性にも触れている.しかし詳し い連携の内容はわからない.
石一(2006)が勤める児童養護施設内では,子ども同士の暴力的な行動,職員に向ける攻 撃行動,極端な甘えが問題視され,学校では施設児童の器物損壊,学力低下,無気力など が報告されていた.石は,2004年に行った調査の結果より,特に思春期頃の男子の攻撃性 の問題へ対応してくことがgWの心の安定に繋がることを示唆し,「感情的攻撃の一般モデ ル」(Lindsay&Anderson,2000)に従って対応の手掛かりを検討し,暴力に関する価値観・
信念の修正,挑発的行為を小さい芽から摘むこと,認知評価過程への介入,生理的覚醒水 準を低減するという4つの直接的な介入を挙げている.そして石は,攻撃性などの問題行 動への対応として,子どもへの直接治療的な介入の他に,もう一つの生活の中心となる学 校との連携も重要であろうと述べている.
また児童養護施設ではないが,敷地内に小中学校の分校が設置されている児童自立支援 施設に勤務する大迫は,ケアワーカーによる学校訪間など,学校と施設が連携して学校適 応を進めており,施設と施設外とのチーム連携の重要性を述べている(大道,2003).
また,藤原ら(2007)は,ある児童養護施設入所児童の在籍する小学校の4〜6年生への
質問紙調査によって,児童養護施設入所児童も家庭児童も,信頼できる他者が家庭,施設,
学校という場に存在することを示した.そしてこのことから,友だちや学校教諭といった
「学校」という新しいエンバワメントの力を通じて児童の心理支援態勢を作ることも施設 入所児童にとって意味を成すものであると思われると述べている.
1−3.先行研究の問題点
ここまで,児童養護施設入所児童の施設,学校での課題と対応,支援,施設と学校の連 携の重要性について概観してきた.施設と学校との連携は,外観してきた研究においても
その重要性が述べられているが,現場で直接児童にかかわる者同士がどのように連携して 児童を支えているのかという具体的な構造,プロセスに焦点を当てた研究は見当たらない.
これについては,高橋(2012)もいくつかの先行研究を取り上げ,諸機関の連携を強調す ることの危険性について述べている.例えばSmith(2009)の,諸機関の連携を強調するこ とが子どもの発達についての良い結果をもたらすという信念が諸システム間の責任をあい まいにしてしまうという指摘や,TheIntegratedCareNe耐。rk(2004)の,子どもへの支援の 実践がどのような結果にむすびつくかということよりも,ネットワークの構造と運用が強 調されているという指摘を取り上げ,システムの枠づけとその維持に重点が置かれた場合,
実践との間に齪薗吾が生まれることになる,と述べている.
また,連携したことによって児童にプラスの変化をもたらしたという報告が多く,連携 がうまくいかないために,児童の支援に繋がりにくくなってしまうという事例は研究とし て取り上げられにくい.筆者が現場で感じた異なる組織の者が連携していく上での困難,
関係作りの難しさを取り上げている研究はほとんどない.多くの課題を抱える児童を支え るためには周囲の人々の連携が必要であり,その人々の関係構築は,児童の支援にとって 最も重要な課題の一つであり,現場で起こる連携の難しさがどこから生じているのかを取
り上げることは,その状況を予防・改善するためにも有意義であると考える.
1−4.本研究の目的
以上のように,児童養護施設職員と学校教員とが連携して施設児童を支える構造,プロ セスを具体的に明らかにし,連携して児童を支えるために重要な要因について考察するこ
とを本研究の目的とする.
平成11年度の厚生労働省の通達により,各児童養護施設に心理療法士が配置され始め,
児童への個別の心理療法と職員への専門的助言が期待されている中で,施設の心理職によ る研究や報告が徐々になされてきている.本研究で施設職員の語りを中心に,連携の全体 像を明らかにし新たな視点を提供することは,心理職が施設で行う心理コンサルテーショ ンのような働きをすることが期待され,現場で役に立つのではないかと考えられ,その結 果,より良い施設児童の支援にも繋がると考えられる.
2−2−2.研究2施設CWと学校教員の連携プロセス
次に,研究1で生成した児童養護施設職員と学校教員の連携プロセスのモデルが,フィ ールドを変えた時にも見られるのか,施設ごとに学校との連携には共通しているところと 差異のあるところがあるのではないか,ということを検証したいと考えた.また,研究1 の中で見出されたリサーチクエスチョンについても検討したい.そのため,研究2では,
フィールドを変えて新たに別のY児童養護施設でCW3名にインタビューを行う.学校との 連携の難しさはX施設と同じような状況で発生しているのか,またその状況をどのように 克服して児童を支えようとしているのかなど,X施課との差異なども明らかにしたい.
(1)方法の選択
研究1では、連携がうまくいかない事例を中心に聞き取りを行っていたため、研究2で は,連携がうまくいく事例といかない事例についてインタビューを行い、比較を行いたい
と考えた。Y施設には,筆者のゼミ出身の先輩が勤務しており,筆者のゼミと施設とはボラ ンティア等で何年も繋がりがある.筆者も2007年からボランティアとしてかかわっており,
施設の様子がある程度理解できていることや,研究協力の依頼がしやすいこと,ラポール もとれており信頼性のあるデータが収集できると考えられたことなども,Y児童養護施設を フィールドとして選択した理由の一つである.
(2)対象者
研究1では,施設でのインタビューの対象者が心理職であったが,学校との連携に心理 職が直接かかわることは稀であるため,現場で直接かかわることの多いCWを対象とする.
対象者は,Y児童養護施設のCW3名である.事前に施設長に研究の依頼をし,承諾を得 て,施設長と心理士によって,3名のCWを選んでもらった.対象者の詳細は表2−2に示
す.
表2−2.対象者の内訳 対象者 性別 CW経験年数 現在の施設
フ勤務年数 職務
C
女 40年 16年 本園CW D 女 5年 5年 本園CWE
女 12年 12年 グループホームCW(3)データ収集の手続き
本研究では,質問項目が具体的に決められるが,その場の語りに合わせて質問項目を選 択したり追加したり,確認をしたりすることができるため,半構造化面接を行った.
面接時期は,2012年6月で,面接時間は1人当たり約1時間程度であった.面接場所は,
Y児童養護施設に調査者が出向き,児童養護施設内の面接室をお借りして行った.
面接は以下に示す手順で全て調査者が行った.本研究の主旨,録音の許可,調査内容の
取扱いについて文書を用いて説明し,調査協力の承諾を得た.現在の施設に勤務している 間の,学校教員との連携について,あらかじめ用意した下記め質問を中心にインタビュー
を行った.
①本施設勤務中に学校と連携してかかわったケースについて
「施設の中,学校の申でも子どもを支えるために色々なことがなされているが,、お互いが 連携してかかわったことによって子どもを支えることにプラスだったとか,また,もっ と連携していればプラスだったとか,重要だったと思うケースについて伺いたい」と前 置きし,対象者の語りに合わせて,以下の5点を追加で質問した.
・対象児童の属性(性別,当時の学年)
・対象児童の学校での問題の特徴
・学校での問題に対する学校の対応,施設の対応それぞれ
・どんな連携をしたのか,関わった人(学校以外で関わった機関があればその機関)
。連携したことがプラスだったと思う点(連携してからの子どもの変化など),もっと連 捜していればプラスだったと思う点
②学校と連携する際に配慮していること
③学校との連携で苦労する,難しい,大変だな,と思うこと
面接終了時には,調査協力への感謝と面接終了後も記録を分析から除外することが可能 であることを説明した.
(4)データの分析について
分析は,研究1と同じG凧の手続きに沿って行った.
(5)分析と結果
分析によって,本研究で明らかにしようとする施設職員と学校教員の連携プロセスは,
図2−2のようになった.以下,各カテゴリーの内容とカテゴリー同士の関係について,デ ータを参照しながら具体的に記述する.
1)児童の問題,CWの働きかけ
研究1では,状況に当たる《児童の問題》を,学校場面で問題となっ牟り,支援が必要 とされたりする児童の問題としたが,Y施設では,児童の抱える<学校ではわからない問題
>も考慮して,施設CWから学校教員に働きかけを行ってい走.Eさんは,ある児童Iさん について,「最近は,え一つとIいよいよ退寮になって,合すごい不安定に.もう退寮どう すんだどうすんだっていう」と,Iさんが退寮後の不安に直面していることと,「学校から は進路のこと言われるしっていうところで不安定になってて,今部活の部長にもなって不 安定になってる.学校の先生は,やっぱIにガンガンに部長としても求めるし,でHはも
う窮屈になっちゃった,最近」というように学校でもIさんが課題に直面していること,「で 学校の先生に最近言ったのが,今部長のプレッシャーもかなり抱えてるのと,退寮後の不 安でいうのがあるんですよって」という《CWの働きかけ》を語っていた.この切片では,
uで」が意味するもの:結果として行ったこと というプロパティとディメンションから,
前の語り(退寮後の不安と学校での課題を抱えIさんが窮屈になっていること)の結果とし て起こったことであり,次のカテゴリー「CWの働きかけ」に矢印を引くのが妥当であると 考えられた.また,Dさんも「家の方で子どもの様子を見ながら,まあちょっと学校に連絡
していくっていうのを,常日頃気をつけていますね.子どもから話してくれれば,やっぱ gこういいんですけど,う一んそういう子じゃない,こう自分から出せない子もいるので,
そういった時は,もう私たちがキャッチするしかないのかなっていう部分もありますね」
と,学校で気付かれない児童の抱える問題を,施設で毎日児童に接しているCWがキャッ チして,先生に伝えて配慮をお願いするということを述べていた.Cさんの語りからも,「気 になる子については,結構頻繁に学校に連絡とってます」というように,《CWの働きかけ
》は,児童への 支援の必要を感じる度合 が 高い ほど起こるというプロセスがある と考えられた.
しかし,Y施設のCWはDさんの「ちょっと気になったらこう聞いて大丈夫ですかあ一 って言う感じでちょっと聞いて」という語りのように,些細なことでも連絡をする,少し でも気になることがあったら連絡するというような,CWからの積極的な働きかけが起こっ ていた.今回は,連携する場合を中心に聞いているということもあり,《児童の問題》か ら《働きかけなし》に至るプロセスついての話は聞けなかったため,《働きかけなし》へ の矢印は破線で示した.
この《働きかけ》の中身として,X施設では出てこなかったものに,<児童・施設理解の 促し>,〈連絡の要求>,<連携の可能一性の判断>があった.
まず,児童を学校に受け容れてもらうために,児童,施設について知ってもらう<児童・
施設理解の促し>がされていた.例えばCさんは,施設児童は必ずトラブルを起こすとい う《児童の問題》について述べてから,「そういう中で,まずは担任の先生に子どものこと を知?てもらうっていうことがまず第一ですよね」と述べている.また,施設を知っても らうことも,学校,教員に受け容れてもらう上で重要であることを述べていたが,これは,
施設と学校という組織同士の関係作りが,児童を学校と連携して支えるために重要である ことを示唆している内容であると思われる.
またY施設では,児童の入学,転入などで学校に行き始める前や進級して先生が変わっ た場合などに,CWから学校教員に挨拶をし,そこで何かあったら連絡をして欲しいという
<連絡の要求>をする・そしてDさんの語りより「もう常日頃から,何かあの困ったこと とか気になることがあったら,些細なことでもお願いしますっていうことを,先生には何 度も何度も伝えているので」というように,学校教員と出会った当初だけでなく,連携を し始めてからも常に先生に言い続けているようであり,<連絡の要求>は学校との連携の 重要なポイントになっているようであった.
そして<連携の可能性の判断>も,その後の教員への働きかけを工夫するなど連携して いく上で非常に重要なポイントになっているようであった.Eさんは,ある児童Iさんの高 校入学前に,Iさんの抱えている問題や高校で起きてくるであろう問題などを考慮し,連携
の取れそうな教員かを判断するために,いくつか高校を訪間して《働きかけ》を行ってい た.以下,Eさんの語りを参照したい.
「実はI,高校入学する前に,今行かせてる高校に,試験前に3回行かせてんですよ.3 回行って,学校見させて,部活も2回3回体験させて.でそれは何のためかって言ったら,
Iは自分で選んだっていう,まあ表向きは.ただ裏向きは,学校教員とどれだけ連携ができ るかなっていう,そこを,私白身が判断しに行った.やっぱりIって絶対もう,高校なんか 行ったらもっと視野広がるし,色んな行動出す子だから,これもう学校との連携がないと,
かなり難しい子だなっていうのがあって.ただ高校って他の子見てても,やっぱそこまで 連携ができない.高校の先生とかってやっぱもう高校生大人扱いに半分しちゃってる面も
あるから,今までのような小学校中学校のような連携がきっと難しいだろうなと思って,
学校連携が一番強くできる高校はどこかなっていうところで,試験前に今の高校に3回行 って,で部活だったらこの先生,もうバスケ部っていうのはもう揺るがないと思ってたか
ら,バスケ部の顧問にも会って,施設の紹介して,職員の紹介カードとかも渡して,こう いう事情があるんですっていう話もして,いや全然うちの学校そういう子多いから見ます よっていう,気持ちさえあれぱ見ますよって言ってくれて,ああこの先生だったら大丈夫 がなって」
Cさんの語りとDさん.の語りからは,同じような内容が見られた.Cさんは「こんなこ とを本当は言っちゃいけないのかもしんないけど,先生によって,やっぱすごく違います.
すっごく力のある先生と,いや一ちょっと大変ねって先生に言っても通じない先生と.っ ていうのは本当にありますので,だからそこの辺ところは,あの一とにかく丁寧に説明し たりとか,理解して頂いて,こんな言い方あれかもしれないけど,私たちがこう,ね,先 生を,育てていくっていうこともあるのかなっていう」と述べ,Dさんはrやっぱりこう先 生を知るっていうのも大事なのかな一と思って.あの言い方じゃ多分先生に伝わってなか ったんだろうなあとか,違うニュアンスで受け取っちゃったのかなあって思う時とかは,
まあちょっと…こちらの方でちょっといけなかったなあと思って,まあ言い方変えてみた りだとか,したりするのもあるし,まあこっちが求めているけど,あの一こう…やっぱこ う先生によって違うので」というように,先生との<連携の可能性の判断>を行い,《CW の働きかけ》を工夫していることがわかった.
2)教員の働きかけ
研究1では,《児童の問題》という状況から,《働きかけ》という行為/相互行為に至る プロセスには,児童の問題の 困難感 や 危険度 が 大きい ということが影響して いることがわかった.そして, 困難感 や 危険度 が 小さい 場合でも 教員から 施設職員へ働きかけが起こる場合があるのではないかというリサーチクエスチョンが見出
された.
1)より, 支援の必要を感じる度合い が 高い と《CWの働きかけ》に繋がること がわかった.しかし同時に, 支援の必要を感じる度合い が 高い か 低い かにかか
わらず, Dさんの語りからわかるように「Y施設でも子どもを見ている中でちょっとでも気 になったら,まあ,連絡は取るようにしてるんですけど」と,Y施設では CWの働きかけ の多さ が常に 多い こともわかった.ここから,研究1のX施設とY小学校のような
「難感 や 危険度 よりも, CWの働きかけの多さ が,《教員の働きかけ》に繋が っているプロパティとして重要なのではないかと考えた.そしてDさんの語りからわかる キうに,「子どものこう,なんか間極性がエスカレートしていると,…うんちょっと,一うん 連絡もらえ辛いと難しいなとか,まあそれが先生のやり方なので,まあこちらからどうこ
うそれについては言えないんですけど」と,《児童の問題》の 困難感 や 危険度 が 大きい 場合でも,《教員の働きかけ》ではなく《働きかけなし》に繋がる場合がある.
そのため,CWが教員に<連絡の要求>をしたり<様子の確認・報告>をしたりということ を積極的に行っており,それによって《教員の働きかけ》に至る可能性を高めようとして いると考えられた.つまり, CWの働きかけの多さ が,《児童の問題》から《教員の働 きかけ》に至るプロセスでは最も重要なのではないかと考えた.
また, 施設理解の程度 が 高い と《教員の働きかけ》が生じやすい, 低い と《
働きかけなし》に繋がりやすいということも示唆された.例えば,Dさんの語り「Y施設の ことを知ってくださってる先生の方は,結構まめに華絡をくれるんですね」では, 施設理 解の程度 が 高い と《教員の働きかけ》が起こりやすいことがわかり,「まだ知らなく
って,赴任してきたぱっかの方がやりぱ担当すると,こう連携が取りにくいので」と 施 設理解の程度 が 低い と連携が取りにくいことがわかるが,Dさんは,教員によってあ まり連絡をくれない人がいることを連携の難しさに挙げていたことから,《教員の働きか け》が起こりにくいために連携の取りづらさを感じていると考えられ, 施設理解の程度 が 低い ことは,教員の《働きかけなし》に繋がるのではないかと考えられる.またE
さんは,「よくね子どもがやっぱり好き放題言うから,みんな施設で虐待されてるって言っ てるんですよ,だから先生たちって虐待の目から入る,私たちを.でいやいや違うんです
よって」というように,Y施設のことを知らない教員がY施設に抱く不信感や誤解の解消 をしてか ら関係作りをしていくということを語り,これがとても大変であるということを 述べている.ここからも, 施設理解の程度 が 低い と,《教員の働きかけ》には繋が
りにくい状況があることがわかる.
また1)で《CWの働きかけ》として,施設を知ってもらうということが重要視されてい たが, 施設理解の程度 が 高い ほど《教員の働きかけ》が生じやすいことから,《教 員の働きかけ》を増やして連携態勢を作ってために,1)のCWの働きかけの<児童・施 設理解の促し>は重要と言える.
以上の1),2)より,研究1から見出されたリサーチクエスチョンのうち,連携の始めの
《働きかけ》が施設CWと学校教員の双方向になされていることが連携して児童を抱える 上で重要な要因になっているということが示唆された.
3)すり合わせ
研究1では,教員か施設職員のどちらかが《働きかけ》をしたことにより,<児童の像 の共有>,く見立ての共有>といった《見立てのすり合わせ》が行われ,この《見立ての すり合わせ》を踏まえて<対応方針の相談>という《方向性の統一》が行われていること がわかった.
Y施設のインタビューでも,《すり合わせ》の中身は同じような概念が出てきた.そして
<児童の像の共有>〈見立ての共有><対応方針の相談>は, 伝える内容 児童の問題 の意味 問題の経過の予測 対応方針 という共通するプロパティとディメンション,
似ているプロパティとディメンションが抽出されていたため,一つのグループにし,《す り合わせ》というカテゴリーに統合した.Cさんの語りからも「それ(児童の問題)が本当 にすぐは直らなくて,繰り返し繰り返しかもしれませんが,とにかく長い目で見てあげて いただけないでしょ5かっていうような.で,.それは,この子のせいではなくて,今まで の環境,やっぱり大人一の問題なんですよねというようなことをお話して,まあそういう ことをお話ししていく中で,その子が出す言動,言葉とか,ちょっと乱暴な態度とかって いうのを,あっそういうところからきてるのかなって先生が理解していただくことで,こ うすごくね,それを,まあ(児童の問題が)無くなりはしないけど,協力していただける」
というように,ここで<児童の像の共有>,<見立ての共有>,<対応方針の相談>を行 っていることがわかる.
そして《すり合わせ》から《役割分担》へ至るプロセスには, 児童理解の広がりの程度 が 大きい ことが影響していることがわかった.例えばDさんは,担任の先生からの《
働きかけ》によって《すり合わせ》を行った結果,施設での<組織内の対応>《役割分担
》ができ,それによって児童の問題が改善し,児童も施設職員も助かっているということ を述べていた.この役割分担ができたのは,施設では見えない児童の学校での姿が,《す り合わせ》によって共有できだからであり,それによってCWの児童理解が広がったため,
<組織内の対応>を工夫するという支援に繋がったと考えられる.また,Eさんも「で先生 が,え一つとIが(問題を)出し始めた時に,先生があっ,この間の話はこういうことなん だなっていうのがわかるのとわからないのとでは,全然,もうI自身への対応が変わってく る」というように,《すり合わせ》をしたことで,教員の児童理解が広がり,<組織内の 対応>の変化へと繋がっていることがわかる.つまりこれらのことから,児童理解の広が りとは,《すり合わせ》によって視点が変化することであると考えられる.これは,先程 のCさんの「あっそういうところからきてるのかなって先生が理解していただくことで…
略…協力していただける」という語りや,「実はこれ,こうなんですよって言うと,先生も ちょっとびっくりするっていうかね」,「そこで先生も,ああ一っていう.こう,あっ抱え なきゃいけないっていう思いを持ってくださって」というように教員の視点の変化が起こ っているのがわかり,そこから「でその後からは,この子に対して,すごく優しい声がけ をしていただくようになったりとか」というような<組織内の対応>あるいは<持ち出し による協力態勢>へと繋がっていると考えられる.
また,研究1と同じ様に, 対応方針の合意の程度 が 高い ことも,《すり合わせ》
から《役割分担》に至るプロセスにかかわっていた.例えばEさんは,Iさんの部活の顧問 と,Iさんの現在の状況について話し合い,《すり合わせ》を行った時の顧間の発言につい てrだからちょっと部活だけでがみがみ言っちやうのもだめですねって,じやあ進路のこ
ともそれとなくあの子が発散できるような,関わり方をIにはしていきたいと思いますって」
という内容を語っていた.ここで顧問とCWの 対応方針の合意の程度 が 高い こと がわかり,その後の顧問が行う<組織内の対応>へと繋がって行くことがわかる.またC
さんの語り「そこでガンガンもう何やってんのってやってた人,先生が,じゃあちょっと 後で話そうねっていうことでクールダウンさせてもらうことができる」からも,《すり合 わせ》の中で 対応方針の合意の程度 が 高い ことが影響して,その後の<組織内の 対応>へと繋がっていることがわかる.
そして,研究1と同様に, 対応方針の合意の程度 が 低い と《すれ違い》へと至る プロセスがあった.これは,Eさんの連携で難しさを感じたことについての語りからよくわ かるので,以下,Eさんの語りを参照したい.
「学校との連携で難しさを感じたのが,やっぱりこう,その子の見方が,いっまでたって もすれ違いだったりする時がある.それが結構多いのが知的障害児の学校で,学校側は,
知的障害児に対して,その子が希望するものを叶えてあげたい,少しでも可能性を広げて あげたい,成長を見たいっていう思いがあって.施設側とすれば,やっぱり,知的障害児 って,高等部の子が結構多いんだけど,Y施設を出たら他の施設に行かなくちゃいけないと か,また他の支援してくれる人たちのお世話になっていかなくちゃいけないっていうとこ ろで,やっぱY施設の今やってるような枠っていう施設が,高校出たらなかなかないんで すよ.あの財政的にも態勢的にも.ていうところで,その子が着実に就労できる場所だっ たりとか,生きていける場所っていうのをY施設は望む.う一ん.だから,まあ変な言い 方するけれども,冒険はさせない二その子はやっぱり,ね…支援が必要な子っていうのは,
ずっとそういうのが大事だから,ちゃんとその子が安心して生活していける場所で,働い たりとか施設入所したりとカ㍉そういうのを望むけれども,学校はその子の可能性を見出 していきたいっていう目的が今あるので,どうしても子どもの希望に振り回されちゃう.
で,そういう子ってやらぱり知的に低い子って,自分の限界を知らない.自分の可能性を 知らない子が多いので,なんでもかんでもこれやりたいあれやりたいとか,そういう夢が 膨らんじゃって,それを担任に伝えると,担任としてはああそうか,じゃあそれに近づけ るために,叶えてあげたいな?ていう.そこのギャップが,この数年は難しいなっていう のはすごく感じる.」
このように,CWと教員とで《すり合わせ》までは至っているものの,両者の児童への対 応方針が合意しないまま,CWが<考えの伝わらなさ>に困難を感じていることがわかった.
4)役割分担,問題改善
CWと教員の間で《すり合わせ》がなされ,児童の理解が広がり視点の変化があったり,
対応方針の合意がされたりすると,それぞれの組織でできる役割を分担して児童の支援を 行う《役割分担》へと至っていた.ここで,対応に困っていた問題への 対応しやすさ
が 大きい ≒感じるほど,また, 児童へのプラスの影響 が 大きい ほど,『帰結』
である児童の《問題改善》に至っていた.例えば,Dさんの語りの申の,学校で刃物を振り 回す,鉛筆を指すなど荒れていた男児のケースについて,毎日施設職員が授業参観に行き,
後ろで見ていて止めるという《役割分担》(<持ち出しによる協力態勢>)がされていた.
児童は衝動的にやってしまい,教員は怒るが,児童はまたやってしまうという悪循環があ り,児童も教員も「辛い」状況であった.ここで職員が行くことで,「その前に止めてくれ るし,自分でもこうだんだんコントロール仕向けるっていうか,その連鎖を切っていく」
ことができ, 児童へのプラスの影響 は 大きい し,教員の 対応しやすさ も 大き い ため,《問題改善》(<状況の改善>)に至っていた.
またDさんが語った別のケースでは,《児童の問題》から《問題改善》に至るプロセス や,具体的な《役割分担》がよくわかるので参照する.「繰り上がりの筆算についていけて なくってっていう話があって《児童の問題》,ちょっと厳しくなってきてるっていう話が あったんですけど.まだちょっと遅れは出したくないので,家の方でもちょっと丁寧に見 れる時とかがあったら,様子を聞いてもらったり一緒に取り組んだりしてもらえますかっ ていう形で連絡が入って《教員の働きかけ》.多分その子も集団の中ではあんまりできな い,授業が《すり合わせ》.なので1対1,先生も1対1でやると,まあできるんですけ
ど,こちらの方でも限界があるのでっていうことで,まああの一できればお願いしますっ ていう形で《すり合わせ》.そいういう連絡してもらえれば,こちらの方でもこう,職員 と1対1でこうわかるまでっていうか,できる《役割分担》.時間をできるだけ持って,
やったので,今はこう理解してどんどんできてるっていうのもあって《問題改善》.」
またこの《役割分担》の具体例として,対人トラブルが起きた時の連携の内容も参照し たい.学校から施設に,児童の対人トラブル(《児童の問題》)について連絡が入ると(《
教員の働きかけ》),教員と施設職員の間では,どうしてそのようなトラブルが起きたのか という<見立ての共有>がされたり,Cさんの語り「まずはじゃあ聞いてみます」というよ うな,施設で児童に理由を聞いてみるという対応や,Dさんの語りのように「先生から謝り にいってくださいって」言われたりrこちらから謝りに行きますって」と,相手への謝罪 をするという対応の話し合い(<対応方針の相談>)が行われていた(《すり合わせ》).
そして実際に,施設では児童にトラブルの理由を聞いたりI,トラブル相手に謝罪しに行っ たりする《役割分担》が行われていた.
このような役割を施設CWが行うことは,児童を学校と連携して支える上で非常に重要 になっていることがわかる.Cさんは,児童の学校でのトラブル時の状況を,「カッカして る持っていうのは,も日う売り言葉に買い言葉でガンガンガンガンやっちゃう」と述べて いるが,CWの役割として「私たちが,きちっと代弁をして,言葉で,きちっと,あの一こ の子のこういうところをちょっと見ていただきたいとか,この子はこういう理由ですごく
苦しんでるとカ㍉そういうことはきちっと伝えます」という,児童の話を施設でゆっくり 聞いて児童の思いを知る,そしてそれをトラブルの相手や,学校の教員にも伝えるという 児童の気持ちの代弁について述べていた.つまりトラブル発生時にも,学校教員の対応の 限界があったり,児童の問題の理由がわからなかったり,児童も相手をどれだけ困らせて いるか自覚がなかったり,教員と児童のずれ違いが起きており,そこにCWが介入して児 童の代弁をすることによってすれ違いを解消することができるのである.このメリットに
より, 児童へのプラスの影響 が 大きい ことは言うまでもない.また,Cさんが「そ こで,あの一合みたいな形で,.先生もその方法を知っていただく」と言うように,施設CW の,落ち着いて話を聞くという対応を教員が取り入れることで, 対応しやすさ や 児童 へのプラスの影響 が大きくなるというメリットもある.
5)すれ違い,問題悪化
すれ違いについては,関連するカテゴリーの結果と重複するため,重複するところはそ の箇所を示すことにする.学校との連携がうまくいっているY施設においても,<働きか けによる変化のなさ>,<考えの伝わらなさ>,<考えのわからなさ>といった《すれ違 い》は様々な場面で起きていた..まず,《CWの働きかけ》があっても,連絡をくれないと いうような<働きかけによる変化のなさ>で困惑しているようであった.これは,CWの 働 きかけの多さ が 少ない ほど, 持ち出しの可能性 が 不可能 であるほど, 相手 の組織理解の程度 が 低い ほど,関心の満たされ具合が 低い ほど,《すれ違い》
が生じる可能性が高くなっていることが示唆された.また教員によっては,連絡をくれな かったり,CWから連絡をしても表面的な返事しかも一らえないというような<考えのわから なさ>に困惑することがあるようであった.この<考えのわからなさ>に至る可能性の高 いプロパティとディメンションも,同様のものが挙がっていた.<考えの伝わらなさ>は,
《働きかけ》の段階で生じることもあれば,《すり合わせ》の段階で生じることもあった.
これは,結果の3)すり合わせの記述からもわかる.
そして《すれ違い》が生じた時に,CWはそこから働きかけの工夫をしていることが,結 果の1)働きかけの記述からもわかる.この 働きかけの工夫の効果 が 大きい 場合に
は,そのまま《CWの働きかけ》から,連携していくプロセスに戻っていることが示唆され た.しかし,CWが働きかけを工夫しても難しい場合もあった. 働きかけの工夫の効果 が 小さい 場合,教員から連絡がもらえないまま,児童の問題や状況が悪化していると いうことがある.例えば,Dさんの語りでは,CWから働きかけをしていたにもかかわらず 先生から連絡がもらえず,「いじめがエスカレートしちゃったところでわかったっていうケ ースもあって」という《問題悪化》に至ったケースの話があったが,Y施設では問題や状況 が悪化していることがわかった時にそれを修正するために様々な取り組みがなされるため,
そこからまた連携のプロセスを辿っていくこ、とがわかった.つまり,<児童の問題>とい う状況に戻るのであって,Cさんが述べるように,不登校児童がゼロという状況が生まれて いると考えられる.またY施設では,《すれ違い》があることがわかり,《問題悪化》に
至りそうだとわかった時点で,すぐに《すれ違い》を修正するための取り組みがなされて おり,《問題悪化》に至るケースがあまりないと思われた.この取り組みが,次に説明す
る《第三者の介入》である.
6)第三者の介入
これは,CWと教員の間セ《すれ違い》が起き,児童にマイナスの影響を及ぼしている,
あるいは及ぼす可能性がある時に,第三者が介入することによってすれ違いを修正する試 みそある.これは,教員とCWの連携プロセスに影響を与えるものとして考えられるので,
他の矢印のようなプロセスを表す矢印ではなく,影響を与えているという意味として別の 矢印を用いて図に組み込んだ.例えば,Cさんの語り「担当と,担任の間だけで済んでるう
ちはいいんですが,まあその辺がこじれたりしてきた場合には,必ず,主任や,施設長と,
向こうの副校長とで,きちっと話し合い持ったりとか,その辺のところは協力して頂くっ ていうこともあります」と述べている.つまり,組織同士の関係を基に,CWと教員のずれ 違いを修正するような働きかけの工夫があるようであった.また,結果の3)すり合わせの
ところで,対応方針の合意の程度が低く,《すれ違い》に至っていたEさんのケースを参 照したい.このケースでは,《すれ違い》を修正するために,「面談が担当と教員だけだっ たのが,主任が行ったり施設長が行って,向こうも学年主任が来たりとか」という,組織 同士の関係を基にした修正をしようとしていたが,「最終的には,そこはもう福祉司さんの 判断になるので,う一ん.福祉司さんに全部の情報を伝えた上で,どう持ってきますかっ ていう」という第三者に判断をしてもらうということもなされていた.
7)児童を抱える環境の拡大
これは,∵研究1では,筆者が施設児童A君のボランティアに入ったように,児童が学校 にいる時間に外から支援をお願いして持ち出しの限界を補ったり,児童が学校の枠組みの 中でやっていくのが難しいという判断から,通級や固定級に通わせるという対応をしたり することであった.しかし,研究1からは,このカテゴリーへの矢印がどこから引けるの か,またその結果とのような帰結に矢印が引けるのかまで,明ら三かにすることができず,
研究2のリサーチクエスチョンに加えていた.
Y施設でも,児童を通級や固定級に通わせるという対応をすることがあった.《役割分担
》をする中で, 対応しやすさ や 児童へのプラスの影響 が 小さい 場合に!《児 〜 童を抱える環境の拡大》が生じると考えられたが,同時に,《役割分担》に影響を与える
ものとしても考えられたため,影響を与えているという意味として別の矢印を用いて図に 組み込むのが適切であると考えられた.例えば,Cさんの語ったケースでは,rちょっと限 界が来てるので,学校変更をちょっと考えてますっていうことを担任とこまめに連携を取 って,きっちりやる度合をちょっと下げてもらう,甘めに,ちょっと丸をつけてもらった
り,もう答えを教えるような形で取り組んでるんですけど,とりあえず形では,本人の達 成感っていう部分もあって,とりあえず宿題は取り組んでますっていうことを連絡したり
して,とりあえずその年を乗り切ったっていうか」というように,お互いの役割分担への
影響があることがわかった.そして,,通級や固定級に通わせる対応をすることで,教員や CWの 対応しやすさ も大きくなるし, 児童へのプラスの影響 も大きくなり,《問題 改善事のプロセスを迫るという流れになっていた.
8)連携して埠童を抱える環境
CWと教員で連携して児童を支援するために,《役割分担》が行われ,児童の問題が改善 したり,状況が改善したりすると, 連携の効果の実感 が 大きい 場合に,《連携して 児童を抱える環境》へと至っていた.例えば,Dさんは,施設のことをよく知っている先生
は,まめに連絡をくれるということを述べ,その理由として「やっぱり学校の先生も,Y施 設に連絡すれば,こう子どもにとっても集団にとっても良くなるっていうのが多分,わか ってこられると思うので」ということを語っていた.Eさんは,学校で問題行動のある児童 への対応を,《役割分担》して行うことについて,「施設に帰ってきて,ぴしっと叱る,も
うしっかりやりなさいってふざけんじゃないぐらいにもう,本当に厳しく叱ると,次の目 から,先生がどんなに注意してもだめだった子が,ぴしっと本当になる」と述べ,《役割 分担》から《問題改善》が生じていることがわかるが,「それが,1目だけじゃなくて,怒
られて最初はそうなってんのかなって先生たちも最初思うみたいだけど,そうじゃなくて それがず一つとこう続いていくっていうところで,あっなるほどって」というように,そ の後教員の三 連携の効果の実感 があることがわかる.Cさんも,問題行動のある児童への 強く叱るという対応を先生にお願いするということについて,「繰り返し繰り返し先生にお 願いして,それで先生がだん.だんこう強く出て,で1回ば一んとやって,でその後,ケロ っとして残らないっていうのを,先生が実際に体験していただくと,あっ大丈夫なんだと 思うと,同じような,向し目線で対応していただけるっていうケースもあります」と述べ ており, 教員に 連携の効果の実感 を持ってもらい,そこから同じ目線で連携して児童 を支援してい けることに繋がっていると考えられる.
また,《問題改善》に至っても, 連携の効果の実感 が 小さ い というデータは得ら れなかったため,その場合に辿るプロセスを破線で表し,CWまたは教員の《働きかけ》に 繋がるのではないかという予想をした、これは,連携することによって児童の問題や状況 が改善しているため,少なからず連携の効果は感じるのではないかと考えたのと,Y施設で は常にCWの働きかけが多いため,どちらにしても《働きかけ》に向かっていく可能 性が あると考えたためである.