己の変容 : 不登校経験者のキャンプリーダー体験 の分析を通して
著者 吉本 顕太朗
雑誌名 同志社社会学研究
号 8
ページ 55‑69
発行年 2004‑03‑20
権利 同志社社会学研究学会
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000011972
1
はじめに1960
年代の初めから小学校、中学校、高等学 校の教育の現場において、不登校やいじめの問題 が取りざたされてきた。これらの問題は、学校や 友人のグループなどの集団と個人との関係の中で 現われる。彼らは、集団に適応できないことで自 信をなくしており、毎日の生活の中で、自分がい きいきと暮らせているという実感をもてないこと がある。自分の人生を充実していると感じる感覚 は、その子ども自身にとっても、その子どもが属 する集団、小さな単位でいえば家族や友人関係、大きな単位でいえば、日本という国が元気である ためにも必要なことだと考えられる。では、不登 校経験者などの、集団への不適応から自信を失っ た青少年が自分のあり方に自信をもち、生活に充 実感をもてるようになるにはどうすればいいの か。その
1
つの手段として、キャンプに参加さ せ、自己効力感や集団生活をやれるという自信な どを身につけさせたり、自分がどんな人間である かについての認識、すなわち自己概念を自分にと って良いものに変えていこうとする試みがなされ てきた。キャンプ活動に参加した人たち(小学 生、中学生、高校生)は、自己概念が変容 し た り1)、不安感が和らいだり2)、自己効力感を身に つけたり3)することがいくつかの研究で明らかに なっている。本論文では、このようなキャンププログラムの
場を「社会的相互作用の場」として捉える。すな わち、多くの他者がお互いに対して働きかけあう ような場として捉える。自分自身に対する感じ方 や他者との関係の中での自分のあり方の両方を含 めた「自分というもの」が、社会的相互作用の中 で変化可能であることを実証することが本論文の 意義である。
さらに、本論文の意義をもうひとつ述べる。キ ャンププログラムが、小学生、中学生、高校生、
女子大学生などの自己概念の変化や社会的態度の 変容に影響を与えることを実証する研究は数多く 存在する。しかし、これらの研究のほとんどが、
心理学と教育学の観点からなされており、どちら かというと「自己の内面に変化がおこるのだ」と いうことが強調され、その変化を引き起こしたの が、キャンプ現場でのどのような「場」やどのよ うな「関係性」を通じてであったのかについての 考察が弱いと考えられる。この点について考察を 行った点が本論文の
2
つ目の意義である。2
キャンプの概要本論文で取り上げるのは、財団法人こども教育 支援財団の主催する「タッチ・ザ・ネイチャー」
(以下、TNと略記)というキャンププログラム である。対象者は、クラーク記念国際高等学校
(以下、C高校と略記)の
1
年生から3
年生まで の生徒である。キャンプ中は、高校生リーダー1
人、高校生サブリーダー1〜2
人が、同財団職員キャンププログラムにおける 場の構造と参加者の自己の変容
──不登校経験者のキャンプリーダー体験の分析を通して──
吉本顕太朗
YOSHIMOTO Kentaro
や同高校教員の指導を受けながら、キャンプリー ダーとして、自分の班の班員である数名の小学生 班員の指導にあたる。参加リーダーの多くは主に 中学生のときに不登校をしたことのある高校生で ある。現在は
C
高校に登校しており、臨床的な 治療が必要な場合もある引きこもりの生徒とは異 なる。本キャンププログラムの目的は、現在は高 校に登校しているが、中学生のときに不登校を経 験した生徒たちの更なる精神的な成長を促すこと である。リーダーたちは、高校教員や財団職員ら の指示を受けて、食事の準備や、農作物の収穫と いった行事を行ったが、指示を受ける「客体」と してだけでなく、自分の班の小学生キャンパーに 対して世話をする「主体」としてふるまうことを 求められた。この点が本プログラムの特徴であ る。キャンププログラムは、2002年度の第4
回を除きデイキャンプであり、農作物の種まきや収 穫などの農作業と昼食の調理、リーダーたちが準 備したゲームやクイズなどのレクリエーションが 主な内容であった。具体的な行事の内容がわかる ように、2002年度プログラムの各回の行事を表
1
に示しておく。3
調査フレームの作成本キャンププログラムを通じて、どのような心 理・社会的なプロセスが生ずるのかを誰よりも一 番よく知っているのは、プログラムを実際に経験 したリーダーたちである。そこで、TNに参加す ることにより、どのような変化が参加リーダーに 生じるのか、2001年度
TN
のリーダーたちに意 見を聞くために、KJ法を用いたワークショップ(以下、WSと略記)を開催した4)。WSに参加し 表1 タッチ・ザ・ネイチャーの開催日程、実習内容と参加者数(2002年度)
回 月日(曜日) 実施内容 リーダー人数 小学生数
第
1
回5
月19日(日)サツマイモの植付け 餅つき
アスレチック
ネイチャーゲーム(各班競争で虫を取る)
ネイチャースタディ(自然についてのクイズをリーダー が出し、キャンパーが答える)
13
名21
名第
2
回6
月16日(日)昆虫採集
サツマイモの植えなおし(根腐れを起こしていたため)
アスレチック 飯ごう炊さん ネイチャースタディ
17
名47
名第
3
回7
月7
日(日)ジャガイモ収穫 オリエンテーリング 飯ごう炊さん ネイチャースタディ
18
名53
名第
4
回9
月15日〜9
月16日(日・祝)サツマイモ収穫 かぶら・大根根付け 夜のレクリエーション大会
ネイチャースタディ(星についての学習)
18
名36
名第
5
回11月17日
(日)かぶら・大根収穫 ネイチャーゲーム ネイチャースタディ
ネイチャーキッズ表彰式、閉会式
18
名40
名小さな子供たちを相手に、兄貴分・姉貴分としてふるまうことを通して、
対人的に練られ、自分に自信ができ、精神的に成長した。
兄貴分・姉貴分
自己の確立
自分が好き
自分も他者も 尊重できる 積極的・能動的な
対人的関わり
た リ ー ダ ー
OB
た ち が 作 成 し た 親 和 図 を も と に、リーダーたちの体験を鳥瞰図としてまとめた のが、図1
である。図
1
を本研究全体を通しての調査フレームとし た。なお、「自分も他者も尊重できる」という概 念は、2002年度の調査フレームには含まれてい なかったが、2003年度調査で付け加えたもので ある。4
アウトカム調査4. 1
方法4. 1. 1 対象者
この調査は、キャンプ参加者が不参加者よりも 精神的に成長していることを、質問紙を用いて実 証するためのものである。質問紙への回答におけ るキャンプ参加者の得点が、事前より事後の方が 高くなっているというだけでは、その「伸び」を プログラムそのものの効果であると断定はできな い。キャンプに参加しなかったがその他の条件は 同じである生徒たち(これを「統制群」と呼ぶ)
に対しても同じ調査を行い、彼らよりもキャンプ 参加者たち(これを「実験群」と呼ぶ)の事後の
得点の伸びの方が大きいことが分かってはじめ て、キャンプの効果を実証したことになる。よっ て、実験群と統制群の
2
グループを設定し、それ ぞれのキャンプ開始前と終了後の得点を比較する ことでキャンプの効果を実証した。両年度の対象 者を上記の表2
にまとめる。4. 1. 2 用具
図
1
を調査フレームとし、調査対象者が図中の 楕円で囲まれた「兄貴分・姉貴分」の性質をどの 程度持っているか、自分が他者に対して「積極的 能動的な関わり」をどの程度していると意識して いるか、「自己の確立」がどの程度できているの 図1 本研究の調査フレーム表2 2002年調査と2003年調査の対象者うちわけ
2002
年度調査 実験群C
高校芦屋キャンパス生徒33
名(有効回答30)
C
高 校 夙 川 分 室 生 徒2
名(有効回答
2)
統制群
C
高校芦屋キャンパス生徒345
名(有効回答303)
2003
年度調査実験群
C
高校広島分室生徒15
名(有効回答
12)
統制群
C
高校広島分室生徒66
名(有効回答
61)
か、「自分が好き」という意識をどの程度持って いるのか、そして、どの程度「自分も他者も尊重 できる」意識を持っているのか、それぞれを測る
5
つの尺度を用意した。4. 1. 2. 1 兄貴分・姉貴分度尺度の作成
3
で説明したように、本研究の調査フレームを 作成する際に、プログラムを経験することで自分 たちがどうのように成長したのかを、2001年度 のTN
のリーダーたちに、KJ法を用いて聞き、彼らの意見を親和図にまとめた。その親和図か ら、TNに参加したリーダーがどのように変化す るかを一言で表すと、「子どもが好きで世話をす るのが苦にならない、楽しい」という意識をもつ ようになるということであった。本研究では、こ のようなリーダーたちの状態を「兄貴分・姉貴 分」と名づけた。すなわち、キャンププログラム に参加することで参加高校生は、小学生キャンパ ーの「兄貴分・姉貴分」として成長すると考え た。「兄貴分・姉貴分」であるという意識や態度 を測る尺度を、本研究において独自に開発し、
「兄貴分・姉貴分度尺度」と名づけた。以下、そ の尺度の作成の過程を記述する。
まず、3で説明したように、2001年度の参加リ ーダーと引率教員に作成してもらった親和図上の 意見カードを、研究スタッフがもう一度
KJ
法で まとめなおし、「兄貴分・姉貴分」であるという 概念を構成する、9つの下位概念を抽出した。こ れを表3
に示す。次に、表
3
に記した9
の下位概念を測る項目 を、1概 念 に つ き10
項 目 程 度 作 成 し た。そ し て、1つ1
つの項目について、研究スタッフで話 し合い、妥当でないものを却下した。この結果、概念
1「子ども が 苦 手」で あ る 程 度 を 測 る 6
項目、概念
2「子どもと接触したら、子どもたちの
ほうからなついてくれた」程度を測る
9
項目、概念
3「子どもとうまく接するのは難しい」と感じ
た程度を測る
9
項目、概念4「子どもとうまくや
るために意識を変えようとした」程度を測る9
項目、概念
5「子どもとうまくやるために意識を変
えようとした」程度を測る
7
項目、概念6「チー
ムワークができ、子どもたちとコミュニケーショ ンできるようになった」と感じる程度を測る6
項目、概念
7「子どもたちに気づくようになった」
程度を測る
9
項目、概念8「子どもたちが喜べば
自分も楽しい」と感じる程度を測る7
項目、概念9「自発性、自信、思いやりがついた」と感じる
程度を測る8
項目の、合計70
項目から構成され る兄貴分・姉貴分度尺度を作成した。質問紙調査の対象者は、C高校芦屋キャンパス
378
名、夙川分室2
名、計380
名の生徒である。本調査に用いた標本は、ランダムサンプリング したものではないので偏りが生じている可能性が ある。しかし、この調査では「実験群」と、プロ グラムへ参加していないという点だけが「実験 群」と異なり他の条件は同じである生徒群、すな わち「統制群」を設定する必要があり、プログラ ムに参加していない同じ高校の生徒を「統制群」
とみなせると考え、この標本を用いることにし た。
これらの調査対象者に対して質問紙調査を行 い、得られた回答をもとに因子分析を行った。最
表3 「兄貴分・姉貴分」概念の9つの要素 概念
1
子どもが苦手概念
2
子どもと接触したら、子どもたちの方か らなついてくれた概念
3
子どもと接するのは難しい概念
4
子どもとうまくやるために意識を変えよ うとした概念
5
子どもとうまくやるために行動を変えよ うとした概念
6
チームワークができ、子どもたちとコミ ュニケーションできるようになった 概念7
子どもたちに気付くようになった 概念8
子どもたちが喜べば自分も楽しい 概念9
自発性、自信、思いやりがついた初に想定していた
9
因子から6
因子まで探索的因 子分析を行い、「兄貴分・姉貴分」という概念を6
つの下位概念で構成することとした(表4)
。因 子分析の結果により、概念1「子どもと遊ぶのが
楽 し い」と 感 じ る 程 度 を 測 る21
項 目、概 念2
「子どもの気持ちが分かるし、合わせようとする」
程度を測る
16
項目、概念3「子どもが苦手だと
か、一緒に楽しめないなどとは思わない」程度を 測る12
項目、概念4「自信・リーダーシップ・
自発性がついた」程度を測る
9
項目、概念5「年
上として子どもの指導をするのは難しいとは思わ ない」程度を測る8
項目、概念6「人を思いやっ
たり、世話をしたりするのは大切だ」と感じる程 度を測る3
項目、合計69
項目で尺度を作り直し た。こうして兄貴分・姉貴分度尺度は作成された(次ページの表
4)
。この尺度の項目への回答の総和を「兄貴分・姉 貴分度得点」とし、回答者がどの程度「子どもが 好きで世話をするのが苦にならない、楽しい」と 感じているかを示す指標とした。
4. 1. 2. 2 兄貴分・姉貴分度尺度以外の4つの尺度の
説明
図
1
調査フレームにおいて示した、「能動的な 対 人 的 関 わ り」の 程 度 を 測 る 尺 度 と し て 栗 本(1997)の「社会的コンピテンス尺度」(22項目)
を用いた。「自己の確立」の程度を測る尺度とし ては立木・栗本(1994)の「自我同一性尺度」(57 項目)を用いた。「自分が好き」である程度を測 る尺度としては今村ほか(1998)の「自己受容度 尺度」(20項目)を用いた。「自分も他者も尊重 できる」程度を測る尺度として江上ほか(2001)
の「健康な自己愛尺度」(47項目)を用いた。以 上、兄貴分・姉貴分度尺度と合わせて
5
つの尺度 を用いて質問紙を作成した。4. 1. 3 手続き
4. 1. 2
で示した5
つの尺度を盛り込んだ質問紙を、2002年度、2003年度ともに(ただし、2002 年度調査では、健康な自己愛尺度は質問紙に含ま れない)、キャンプ開始前とキャンプ終了後に、
各キャンパス、分室の各クラスに配布し回答して もらった。2002年度調査では、事前調査は
5
月 から6
月にかけて、事後調査は11
月に行った。2003
年度調査では事前調査は7
月に、事後調査 は10
月に行った。4. 2
結果2002
年度調査、2003年度調査ともに、プログ ラム開始前と終了後の質問紙への回答をもとに、プログラムの前後での対象者の得点の変化を表す 散布図を作成した。統計処理ソフト
SPSS
バージ ョン10.0
を用いて、回答者一人一人について、事前と事後の両時点における
5
つの得点を計算し た。そして、事前の得点を横軸(X軸)、終了後 の得点を縦軸(Y軸)にとるような散布図を、5 つの尺度得点それぞれについて作成した。散布図 上の点は回答者1
人につき1
点わりあてられ、各 回答者の事前と事後の得点によって位置を決定さ れており、TNへの参加日数によって3
種類に区 別される。○はTN
不参加者(統制群)を、▲は4
日以上参加した生徒を、□は4
日未満参加した 生徒をそれぞれ表している。散布図上の直線のう ち、細い直線はTN
不参加者を表す○全てからも っとも近いところを通る直線(回帰直線)であ り、TN不参加者の点の散らばりの様子を代表す るものである。太い直線は4
日以上参加者を表す▲の散らばりの様子を、破線は
4
日未満参加者を 表す□の散らばりの様子を表す回帰直線である。2002
年度調査の5
つの散布図は、いずれも同 じような傾向を示した。事前調査での得点がある 程度高かった生徒は、事後調査の得点が伸びてい るが、逆に事前調査の得点が低かった生徒は、事 後調査の得点がさらに低くなるという傾向であ表4 兄貴分・姉貴分尺度の因子構造(バリマックス回転後)
漓子どもと 遊ぶのが楽 しい
滷子どもの 気持ちが分 かるし、合 わせようと 努める
澆子どもが 苦手だが、
一緒に楽し めないなど とは思わな い
潺自信・リ ーダーシッ プ・自発性 がついた
潸年上とし て子どもを 指揮するの は難しいと は思わない
澁人を思い やったり、
世話をした りするのは 大切だ
共通性
(q 3−69)小学校低学年の子供たちと遊ぶと元気が出る。 0.678 0.355 0.233 −0.005 −0.018 0.139 0.517
(q 3−07)子供がはしゃいでいるのを見ると自分もはしゃぎた
くなる。 0.666 0.003 0.023 0.038 0.020 0.101 0.622
(q 3−08)初めてあったこどもと上手に話すことが出来る。 0.647 0.160 0.292 0.345 −0.046 0.039 0.704
(q 3−12)*小学校低学年くらいの子供の世話をするのは好き
だ。 0.642 0.387 0.352 0.048 −0.045 0.122 0.713
(q 3−16)子供の笑い声が好きだ。 0.640 0.407 0.306 0.067 0.064 0.137 0.663
(q 3−17)*今まで見ず知らずでも、小学校低学年くらいの子
と仲良くなれる。 0.639 0.196 0.359 0.272 −0.114 −0.027 0.671
(q 3−05)小学生くらいの子に、私はなつかれると思う 0.623 0.189 0.282 0.244 −0.054 −0.041 0.547
(q 3−65)小学校低学年の子供たちと遊ぶと楽しい。 0.613 0.402 0.328 0.028 0.001 0.132 0.568
(q 3−15)子供からよく話しかけられるほうだ。 0.612 0.271 0.102 0.271 −0.200 −0.133 0.652
(q 3−45)初めてあう小学生は自分になつくと思う。 0.611 0.078 0.191 0.424 −0.169 0.138 0.589
(q 3−67)*初めて出会う小学校低学年の子供と仲良くなれる
と思う。 0.603 0.305 0.287 0.303 −0.181 0.085 0.458
(q 3−06)小学校低学年の子供をまとめることが出来る。 0.594 0.207 0.221 0.329 −0.195 0.033 0.643
(q 3−03)子供と触れ合うことが多いほうだ。 0.570 0.214 0.281 0.118 −0.047 −0.284 0.694
(q 3−46)小学校低学年の子供と仲良くできる。 0.567 0.363 0.434 0.163 −0.119 0.107 0.460
(q 3−18)小学生が喜んでいるのを見ると、自分もうれしい。 0.545 0.482 0.353 0.002 0.182 0.174 0.456
(q 3−49)小学生と仲良くすることができる。 0.543 0.355 0.452 0.233 −0.145 0.094 0.574
(q 3−31)小学校低学年の子どもたちと喜びを分かち合えると
思う。 0.510 0.494 0.293 0.152 −0.115 0.184 0.432
(q 3−29)私は子どもが喜びそうな遊びを考えることができ
る。 0.499 0.364 0.047 0.375 −0.208 0.064 0.582
(q 3−09)子供の笑顔をみるとうれしくなる方だ。 0.498 0.444 0.339 0.112 0.204 0.224 0.490
(q 3−37)小学生と協力して運動会などの行事に取り組むこと
が出来ると思う。 0.480 0.316 0.345 0.253 −0.122 0.204 0.599
(q 3−66)年下の子供に恐がられないように服装や髪型を変え
る時がある。 0.345 0.312 −0.138 −0.115 −0.263 0.203 0.488
(q 3−56)小学生がうまく仲間関係を持てているか見ててわか
る。 0.196 0.656 0.085 0.318 −0.028 −0.106 0.640
(q 3−64)小学校低学年の子供が楽しそうにしているかはすぐ
にわかる。 0.183 0.637 0.204 0.235 0.102 −0.098 0.515
(q 3−55)子供が何をしようとしているかすぐにわかる。 0.291 0.608 −0.015 0.256 −0.368 0.016 0.231
(q 3−13)子供が一生懸命かどうか見て分かる。 0.189 0.598 0.107 0.307 0.051 −0.009 0.553
(q 3−35)自分より年下の小学生と接する時は、相手とうまく
やれるよう自分の姿勢を変える。 0.265 0.563 0.174 0.082 −0.117 0.210 0.515
(q 3−19)自分の行動が小学校低学年の子どもに影響を与えて
いるかどうかわかる。 0.314 0.548 0.000 0.307 −0.060 −0.138 0.582
(q 3−24)小学校低学年の子どもの目線に合わせてしゃがんだ
りする事がある。 0.386 0.548 0.117 −0.014 −0.100 0.156 0.413
(q 3−26)子どもの立場に立って考える必要があると思う。 0.088 0.541 0.188 0.183 0.320 0.208 0.487
(q 3−51)小学校低学年の子どもにあわせるために努力するほ
うだ。 0.409 0.523 0.207 0.094 −0.202 0.229 0.297
(q 3−59)年下の子供に親身になって考えることは必要だ。 0.207 0.520 0.262 0.204 0.198 0.393 0.581
(q 3−30)小学校低学年の子どもの気持ちがよくわかる。 0.469 0.511 0.199 0.206 −0.203 0.062 0.617
(q 3−28)先の事を考えるのは大切だと思う。 0.005 0.503 −0.002 0.212 0.222 0.254 0.362
(q 3−10)年下の子供と触れ合うとその見本となる言動をする
必要があると思う。 0.292 0.499 0.104 0.139 0.222 0.372 0.497
漓子どもと 遊ぶのが楽 しい
滷子どもの 気持ちが分 かるし、合 わせようと 努める
澆子どもが 苦手だが、
一緒に楽し めないなど とは思わな い
潺自信・リ ーダーシッ プ・自発性 がついた
潸年上とし て子どもを 指揮するの は難しいと は思わない
澁人を思い やったり、
世話をした りするのは 大切だ
共通性
(q 3−52)こどもとスムーズに会話することができる。 0.433 0.454 0.363 0.332 −0.211 0.031 0.482
(q 3−42)小学校低学年の子どもにあわせて話し方を変えるこ
とができる。 0.384 0.403 0.266 0.227 −0.052 0.219 0.483
(q 3−70)子供と接することで兄・姉(上の人)の苦労がわかる。 0.127 0.367 0.032 0.159 0.230 0.018 0.643
(q 3−14)*小学校低学年くらいの子供と、あまり関わりたく
ない。 0.402 0.215 0.705 −0.016 −0.047 −0.076 0.586
(q 3−01)*小学校低学年の子どもには、話が通じないと思う。 0.153 0.018 0.697 0.046 −0.072 −0.010 0.359
(q 3−02)*自分より年下の子(小学校低学年くらい)は苦手
だ。 0.423 0.008 0.661 0.014 −0.013 −0.078 0.441
(q 3−47)*子供と目をあわせるのが苦手だ。 0.112 0.217 0.622 0.070 −0.080 −0.045 0.526
(q 3−20)*小学生と協力して発表会などの行事に取り組む事
ができないと思う。 0.157 0.094 0.580 0.158 −0.180 0.117 0.372
(q 3−23)*小学生と楽しんで話をするのが下手だ。 0.303 0.090 0.577 0.188 −0.227 0.076 0.570
(q 3−50)*子どもが近づいてくると避ける方だ。 0.313 0.095 0.570 0.114 0.018 0.106 0.710
(q 3−62)*年上として子供と触れ合うのは苦労する。 0.229 0.054 0.538 0.038 −0.378 0.002 0.680
(q 3−40)*小学校低学年の子どもたちと一緒に楽しく過ごせ
ない。 0.246 0.311 0.534 0.000 −0.207 −0.117 0.502
(q 3−57)*小学校低学年の子供の考えていることはよくわか
らない。 0.153 0.170 0.488 0.117 −0.357 −0.309 0.516
(q 3−21)*私は物事を人任せにしてしまう方だ。 −0.083 0.047 0.484 0.208 −0.230 0.087 0.571
(q 3−41)*初対面の小学生には好かれないと思う。 0.421 −0.037 0.432 0.168 −0.237 −0.095 0.609
(q 3−27)人に言われなくても何か自分からやろうと思う。 0.294 0.205 0.197 0.614 0.115 0.159 0.375
(q 3−32)人に言われなくても自分のやるべき事はわかる。 0.110 0.301 0.116 0.608 −0.030 −0.008 0.656
(q 3−04)私は自分に自信がある。 0.100 0.151 0.094 0.594 −0.149 −0.096 0.589
(q 3−43)小学生の前に立って指示を出すことができる。 0.398 0.220 0.213 0.594 −0.133 0.144 0.527
(q 3−39)私は人の上に立って指導できる。 0.376 0.015 0.076 0.575 −0.344 0.231 0.557
(q 3−33)自分が正しいと思う方だ。 0.021 0.140 0.021 0.519 −0.075 −0.036 0.456
(q 3−38)他の人と協力すると早く行動できる。 0.208 0.251 −0.036 0.465 0.204 0.286 0.665
(q 3−48)私は責任感があるほうだ。 0.031 0.377 0.237 0.455 −0.142 0.140 0.696
(q 3−34)団体行動ができる。 0.226 0.036 0.153 0.385 −0.199 0.330 0.717
(q 3−61)*子供をリードすることは難しい。 −0.114 −0.053 −0.177 −0.122 0.732 0.032 0.660
(q 3−63)*指導する方に立ってグループをまとめるのは難し
い。 −0.138 0.084 −0.268 −0.047 0.727 0.102 0.499
(q 3−11)*ひとに何かを教えるというのは難しい。 −0.067 0.252 −0.136 −0.033 0.695 −0.050 0.663
(q 3−54)*私がリーダーとして子どもを教える立場になるの
は大変だ。 0.037 0.123 −0.213 −0.060 0.642 −0.111 0.426
(q 3−68)*子供に言うことを聞かせるのは難しい。 −0.044 0.001 −0.280 −0.134 0.552 0.334 0.592
(q 3−53)人をリードするのは簡単だ。 −0.360 −0.208 0.117 −0.401 0.484 0.006 0.347
(q 3−22)小学校低学年の子どもを教えることは容易だ。 −0.359 −0.219 0.080 −0.207 0.453 −0.030 0.447
(q 3−36)*小学校低学年の子どもの行動は予測不可能だ。 0.012 −0.097 −0.271 0.038 0.441 0.309 0.649
(q 3−60)視野の狭さは責められるべきだと思う。 0.070 0.300 −0.148 0.030 0.040 0.493 0.569
(q 3−44)私は人の気持ちを思いやることが出来る。 0.238 0.348 0.124 0.373 0.054 0.483 0.446
(q 3−58)私が何かのグループのリーダーになったら、できる
限りメンバーの世話をしようとつとめるだろう。 0.154 0.303 0.301 0.415 0.159 0.421 0.659 固 有 値
寄 与 率(%)
23.306 14.924
5.677 11.600
3.232 10.131
2.141 7.547
1.833 6.879
1.470 3.499
*は逆項目
る。代表例として兄貴分・姉貴分度尺度の散布図 を図
2
において示す。プログラムへの参加の有無(参加日数が
0
日、4
日以上、4日未満のいずれであるか)が兄貴分・姉貴分度得点に対して効果をもつかどうか明ら かにするために、5つの尺度について共分散分析 を行った。代表例として、プログラムへの参加の 有無が兄貴分・姉貴分度得点に与える効果につい ての結果を示す。
表
5
に示すように、兄貴分・姉貴分度得点に対 する参加日数の効果が統計的に有意であるとはい えない。しかし、図2
の散布図上に1
つだけ、事 前と事後を較べて、得点が大きく下がっている点がある。この点があらわす対象者
A
さんのデー タを分析から除外し、同様に共分散分析を行って みると、結果は表6
(次ページ)のようになった。表
6
から、例外的なA
さんのデータを分析から 除外すれば、参加の有無の兄貴分・姉貴分度得点 に対する効果は統計的に有意であることが明らか になった(参加の有無:F(2.329)=3.56, p<.05)。2002
年度調査の「社会的コン ピ テ ン ス 得 点」「自我同一性得点」「自己受容度得点」について も、それぞれ共分散分析を行ったところ、社会的 コンピテンス得点に対する、プログラムへの参加 の有無の効果のみ、統計的な有意さは認められな かった。兄貴分・姉貴分 度 得 点 の 場 合 同 様、A 図2 2002年度 事前と事後での兄貴分・姉貴分度得点の変化
表5 2002年度調査においてキャンプ参加の有無が、兄貴分・姉貴分度得点に及ぼす効果 変 動 因 自由度 平方和 平均平方
F
値 有意確率 事前の兄貴分・姉貴分度得点参加の有無 級内誤差 全体
1 2 330 333
301794.02 1085.73 266554.19 605152.99
301794.02 542.87 807.74
373.63 0.67
0.00***
0.51
*p<.10 **p<.05 ***p<.01
さんのデータを分析から除外して共分散分析を行 ったところ、社会的コンピテンス得点に対する参 加の有無の効果は統計的に有意であった。つま り、2002年度調査の結果、参加の有無は「兄貴 分・姉貴分度得点」「社会的コンピテンス得点」
「自我同一性得点」「自己受容度得点」に対して効 果を持つということが統計的に明らかになったと いえる。
次に、2003年度調査の結果をみる。2002年度 調査と同様に、事前と事後の得点の変化を表す散 布図を、5つの得点について作成した。代表例と して、兄貴分・姉貴分度得点についての散布図を 示す(図
3)
。図
3
を見ると、4日以上参加者を表す▲の散ら ばりの様子を表す太い直線の方が、不参加者を表 す○の散らばりの様子を表す細い直線よりも全体 的に上に位置している。このことから、事前に同 じくらいの得点をとっていた回答者で、4日以上TN
に参加した者と不参加者の得点を較べてみる と、4日以上TN
へ参加した回答者の方が得点が 高くなることが明らかである。次に
2002
年度調査同様、プログラムへの参加 の有無の兄貴分・姉貴分度得点への効果が統計的 に有意であったのかを調べるために共分散分析を 行った。表
7
がその結果である。表7
から、参加の有無 表6 2002年度調査においてキャンプ参加の有無が、兄貴分・姉貴分度得点に及ぼす効果(Aさんのデータを削除した場合)
変 動 因 自由度 平方和 平均平方
F
値 有意確率 事前の兄貴分・姉貴分度得点参加の有無 級内誤差 全体
1 2 329 332
298295.41 5326.55 245965.01 595771.44
298295.41 2663.27 747.61
399.00 3.56
0.00***
0.03**
*p<.10 **p<.05 ***p<.01
図3 2003年度 事前と事後での兄貴分・姉貴分度得点の変化
小さな子供たちを相手に、兄貴分・姉貴分としてふるまうことを通して、
対人的に練られ、自分に自信ができ、精神的に成長した。
兄貴分・姉貴分
自己の確立
自分が好き
自分も他者も 尊重できる 積極的・能動的な
対人的関わり の兄貴分・姉貴分度得点に対する効果が統計的に
有意であることが明らかになった(参加日数:F
(2, 70)=3.97、p<.01)。
兄貴分・姉貴分度得点以外の
4
つの得点に関し ても同じ分析を行った結果、2003年度調査にお いて、プログラムへの参加の有無の効果は、「自 己受容度得点」に対しては統計的に有意であっ た。「自我同一性得点」、「健康な自己愛得点」に 対しては統計的に有意な傾向があると認められ た。「社会的コンピテンス」においては有意さは 認められなかった。5
考 察5. 1
調査フレームの実証結果をもとに考察を行う。まず、調査の結果で あるが、プログラムへの参加の有無は、自己の成
長を測定する
5
つの得点に対して効果をもってい ると実証された(2003年度調査での社会的コン ピテンス得点に対してのみ統計的な意味を持たな かった)。調査の結果をもとに 結 論 づ け る な ら ば、本研究の調査フレームはその妥当性が支持さ れたといえる。すなわち、プログラムを通じて図4
のような変化が、高校生リーダーたちの中で生 じたことが確認された。キャンププログラムにおいて、図
4
のような、彼らの精神的な成長をもたらした要因はどのよう なものだったのだろうか。考えられる要因をキー ワードとして
2
つあげたい。1
つ目は、「世話をする」ということである。現在の高校生の日常生活では、他者から世話をさ れることはあっても、他者の世話をするという体 験はなかなか得がたいものである。しかし、人は 表7 2003年度調査においてキャンプ参加の有無が兄貴分・姉貴分度得点に及ぼす効果
変 動 因 自由度 平方和 平均平方
F
値 有意確率 プログラム開始前の兄貴分・姉貴分度得点参加の有無 級内誤差 全体
1 2 70 73
40106.52 6862.55 60535.23 111327.33
40106.52 3431.28 864.79
46.38 3.97
0.00***
0.00***
*p<.10 **p<.05 ***p<.01
図4 実証された調査フレーム
世話をされることもあれば、世話をすることもあ るという状態が自然なものだと思われる。他者か ら一方的に世話をされることは、実は、他者を世 話できる能力を発揮する場を奪われているのだと 言い換えることも出来る。リーダーたちは、小学 生の世話を否応なしに求められる現場に投げ込ま れることにより、自分の知らなかった能力に気づ き、その能力を発揮することが他者を喜ばせると いう体験をしたのではないだろうか。
2
つ目は、「場」である。上記のような生徒た ちの成長は、カウンセリングの面接のような1
対1
の関係を通してではなく、自分以外の参加リー ダー、小学生キャンパー、引率教員、財団職員、農園の職員、研究スタッフとしてプログラムの場 に居合わせた大学生という「複数の多様な他者」
が共存し、互いに行為しあう「場」の中でおこっ たのだということである。
5. 2
伴走者の設置とその効果5. 1
で述べた、参加リーダーの成長に大きく寄 与した2
つの要因のうち、本キャンププログラム における「場」につい て、以 下 考 察 す る。2003 年度のプログラムでは、キャンプの「場」を構成 する構成員として、伴走者というものを設置し た。まず、伴走者とはなにか、なぜそれを設置す るにいたったかを説明する。2002
年度TN
では、行為のレベルで成長がみ られる、すなわち小学生キャンパーに指示を出 し、年長者として彼らの手助けをできるように成 長しているのに、事後の質問紙への回答におい て、すべての得点が大きく下がってしまったリー ダーが見受けられた(Aさん)。この生徒の内面 の変容を説明するために、自己というものを「対 他的自己」「対自的自己」の2
つの側面を持つ存 在と位置付けてみる。G・H・ミードは、
「自己」のあり方には2
つの側面があると主張した。一つは、「対他的な存在」
としての自分、すなわち他者との関係の中での存 在だという側面である。もう一つは、「対自的な 存在」としての自分、すなわち自分の内面で対話 を行う存在だという側面である。図
4
を見てほし い。「兄貴分・姉貴分」として「積極的、能動的 な対人的関わり」をすることは、リーダーたちの「対他的な」あり方であり、「自己の確立」すなわ ち自分がしっかりしていると感じたり、「自分が 好き」だと感じたりすることは、彼らの「対自的 な」あり方である(Mead 1934)。
そして、2002年度プログラムに参加した、A さん以外のリーダーたちの内面(「対自的自己」) の変容は、他者との間に交わされる行為のやり取 りのパターン(「対他的自己」)の変容が内面化さ れたものであると考えた。逆に、Aさんがプロ グラム終了後に
5
つの得点が全て下がってしまっ たのは、何らかの理由で、対自的な循環の中に対 他的なあり方の変容が取り入れられないケースで あると考えたのである。そして、Aさんのようなケースにおいて、対 他的変容を対自的変容にまでいたらせるには、信 頼できる第三者、すなわち「伴走者」が、リーダ ーたちの思考に寄り添い、彼らの話に耳を傾け、
あいづちをうつなど、彼らの話をきちんと受け止 めることが必要であるという結論に至ったのであ る。これが「伴走者」という制度が発案され、設 置された過程である。
そして、2003年度
TN
では、実際に「伴走者」をプログラムに組み込んだ。伴走者として同志社 大学立木ゼミの院生および大学生が各班ひとりず つについた。具体的に行ったことは、参加リーダ ーの活動の様子をビデオカメラに収め、その撮影 時に彼らと雑談を交わした。また、毎回のキャン プ終了後の振り返りの会で会を進行させるために ファシリテーターとして各班につき、彼らの発言
にあいづちをうったり、おうむがえしをしたりし て、この役割をになった。そのような「伴走」行 為を行った結果、2003年度調査の結果において は、2002年度の
A
さんのようなケースは見受け られなかった。5. 3
場の構造の与える参加リーダーの成長への 影響についてと こ ろ が、や は り
A
さ ん ほ ど で は な い に し ろ、2003年度の事後調査の結果においても、5つ の尺度の得点が全て下がってしまっているリーダ ーがいた。図5
上の太い点線で囲まれた▲が示す 生徒B
さんである。彼は、事前の調査では、兄貴分・姉貴分度得点 は
300
点近くの得点を取っているのに、事後調査 では250
点以下にまで下がってしまっている。こ れはなぜだったのだろうか。このことの要因を2003
年度のプログラムでの「場の構造」を説明 することで明らかにしたい。2002
年度と2003
年度では、TNの構成員の性質によって場の構造が異なっていた。それぞれの 年度におけるキャンプの場の構造を図
6(次ペー
ジ)に図示した。左側が
2002
年度の、右側が2003
年度のTN
の 場の構造である。図中の楕円は場の構成員を示 し、他の楕円より太い線で描かれた楕円は引率の 教員を示し、図の一番下部に描かれ、点線で囲わ れた小さな楕円は小学生キャンパーを、点線は班 を表す。そして、図の中段に描かれた楕円が高校 生リーダーを表す。引率の教員の態度や指導の様子、そして、教員 とリーダーたちの関係性によって
2
つの場の構造 は大きく異なった。2002年度プログラムでは、数人の引率の教員が現場で大きな力を持ってお り、上から下へのタテの指示系統ができていたよ うに思われた。そして、教員たちはある「枠」を 提示し、「この枠に収まればすばらしい。だが、
この枠から外れてはいけない」というメッセージ を送るような存在、つまり「評価者」としての性 質が強かった。よって、自分に自信を持てるかど
図5 2003年度調査で兄貴分・姉貴分度得点が、事後調査で下がってしまったBさん
うかは、教員との関係によるところが大きかった ように思われる。それと較べて、2003年度プロ グラムでは、引率教員は
1〜3
人であり、教員が 強力なリーダーシップを取っていたわけではな く、引率責任者はリーダーたちからあだ名で呼ば れ親しまれるような存在だった。つまり、教員と リーダーたちの関係はヨコの関係に近かった。さ らに、2003年度のキャンプの場では、「ヨコの関 係」、つまりは他のリーダーとの関係が良好かど うかが、自分に自信をもてるかどうかにおいて重 要であったと思われる。このような場の中で、B さんは子どもを面白がらせるのがうまい生徒で、子どもとの関係は良好であったにもかかわらず、
事後調査の得点が下がってしまった。普段から
B
さんの授業を担当している教員によると、なぜか 彼は周りの友人の腹を立てさせてしまうらしいの である。そんな彼は他のリーダーとはあまりうま くやれているように見えなかった。このことが質 問紙の各得点が下がった要因ではないかと考えら れる。B
さんと対照的に、キャンプの場において他の リーダーとの「ヨコの関係」がうまくいくことで 対自的な自己概念が良い方向に変容したのはC
さんであった。彼女は、キャンプ後に話を聞いた 際、グループへの愛着、つまりはグループ内の小 学生やサブリーダーとの関係よりも、他班のリー ダーが何も言わなくても助けてくれたことがたい へん助けになり、TN全体に対して愛着を持った というのである。そんな彼女は、自分の内面的な 変容をこう語ってくれた。「プログラムに参加す るまでは、自分のことで精一杯だった。プログラ ムで子どもと触れ合って、子どもに対する固定観 念がなくなり、心に余裕が出来た」。
立木(1999)によると、不登校経験者は
2
種類 に分類できる。まず1
つは、Cさんのような対人 緊張型である。これは、対人関係を結ぶことに緊 張してしまい不登校してしまった人のことであ る。もう1
つは、課業緊張型である。これは、何 か課題を与えられるとそれを達成することに緊張 してしまい、それで不登校になる型の人である。このタイプの生徒は、友人関係がうまくいってい るのだが、教員とそりが合わないといった理由か ら不登校になることが多い。
2003
年度のプログラムへの参加者は、どちら かというと課業緊張型の生徒が多かった。そし て、Cさんは対人緊張型の生徒だと思われる。彼 図6 2002年、2003年両年度のタッチ・ザ・ネイチャーの場の構造(左が2002年度、右が2003年度)
女は、自分とはタイプの異なる他者や、子どもた ちに接することで、自分の中での「こうあらねば ならない」という強迫的な部分が和らいでいった と考えられる。そして、それは自分と自分の班の 成員との関係性だけでなく、自分と、もっと大き な
TN
全体との関係性が整合的であると感じられ た場面で、Cさんの中で起こった変化だったので ある。これは清水(2000)のいう、人が自分のい る場とも、それを取りまとめるさらに次元の高い 場所とも整合的にふるまうことで起こった変化で あるとはいえまいか。これは、他のリーダーたち と整合的な関係性をもてず、自信をなくしてしま ったB
さんのケースと対照的であると思われる。本研究は、多様な他者が存在し、ある構造を持 った社会的相互作用の場において、自己の豊かさ や成長があることを確認してきた。Cさんの気づ きも、カウンセリングなどの、安全だが限られた 他者しか存在しない場の中では生まれてくるもの
ではなかったであろう。
以上述べたように、伴走者との関係や、それを 含めたキャンプ全体の場の構造が、リーダーたち の成長に大きく寄与したのではないだろうか。今 後は、どのタイプの生徒たちにも対応していける ような場の構造に変更していくことが、TNの存 在意義を高めていくためには必要であろう。
〔注〕
1)飯 田 ほ か(1988)、川 村(1981)、野 口(2001)を 参照されたい。
2)飯田ほか(1988)を参照されたい。
3)宮本(1994)を参照されたい。
4)ワークショップの詳しい進行の手順は、立木茂雄 編,2003,『不登校生の自立のために何ができるか
−無学年制自然体験キャンプにおけるリーダー経 験の効果を検証する−』2002−2004年度社会福祉
・医療事業団(子育て支援基金)助成金研究成果 報告書,財団法人こども教育支援財団.の
3
ペー ジから7
ページを参照されたい。〔参考文献〕
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