【同志社大学法科大学院国際セミナー】中国におけ る国有株改革の動向 : 上場会社買収法制の背景と して
著者 楊 東
雑誌名 同志社法學
巻 59
号 4
ページ 255‑286
発行年 2007‑11‑30
権利 同志社法學會
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000011334
中国における国有株改革の動向二五五同志社法学 五九巻四号 文部科学省 法科大学院等専門職大学院教育推進プログラム 「国際的視野と判断力をもつ法律家の養成」同志社大学法科大学院 第八回国際シンポジウム(二〇〇七年二月二三日)
中国における国有株改革の動向
―
上場会社買収法制の背景として―
楊 東 (中国人民大学法学院講師)
(二一三九) はじめに
一九九〇年代初頭に上海証券取引所および深圳証券取引所が設立されて以来、これら証券取引所は、主に国有企業の資金調達の場として機能してきた。しかし、上場会社株式の六割以上を占める国有株(国家株と国有法人株)は市場に
流通しておらず、このような国有株の非流通の問題は、中国の証券市場におけるM&Aの発展に対する大きな障害とな
二五六同志社法学 五九巻四号中国における国有株改革の動向
っている。このような構造的な問題は、中国のM&A活動と法制、とくに上場会社買収活動と法制に対して大きな影響
を与えている。したがって、中国の上場会社買収法制を研究するためには、その証券市場の国有株問題を考察しなければならない。
中国の国有株の問題は国有企業改革と株式会社制度の導入とともに発生したのであり、本文ではこのような視点に立ち、中国の国有企業改革の歴史と株式会社制度導入とともに形成された特殊な株式種類と構造、国有株の性質を考察し
たうえ、国有株の非流通によって生ずる障害などの法的諸問題を分析し、その解決策を見出しながら、二〇〇五年四月に正式にスタートした「股権分置改革」という国有株非流通改革の状況を詳細に分析する。
Ⅰ 株式の分類と国有株
国有企業改革は中国の特色ある株式会社制度を形成させた。特に、複雑な株式所有構成が証券市場の発展に大きな影
響を与えている。 中国に株式会社制度を導入するに際して、公的所有の経済における支配的地位を守るために、様々な特殊な制度を設
けた。主として株式所有者の属性に基づく株主権の種類の設定、国家の持株比率の制限、株式発行と譲渡・流通面における法と行政による規制などがある。さらに、株式会社制度を導入する産業の範囲の制限、株主の権利が異なる種類株
(普通株と優先株)の発行という方法も取られた。 地方レベルの規定や一九九二年の「株式有限会社規範意見」では、株式は、株式の権利内容のほかに、投資主体別に
分類されていた。企業に出資する主体の相違によって、株主権に四つの形態が設けられた。すなわち、国家株、法人株、 (二一四〇)
中国における国有株改革の動向二五七同志社法学 五九巻四号 従業員株、一般公衆株である。 一九九四年七月に施行された「会社法」では、投資主体別による株式の分類方法が用いられていない。
そこで、国家国有資産管理局が、一九九四年一〇月に「会社法」を実施するための規定として「株式有限会社における国有株主権管理暫定弁法」を通達した。この「暫定弁法」によれば、国有株は、国家株と国有法人株に二分されてい
る。この「暫定弁法」は、国家株の概念については、「株式有限会社規範意見」を踏まえて、「国を代表する投資機構または部門が国有資産をもって株式会社へ投資して形成した株式、またはこれらの機構と部門が法定の手続に従って獲得
した株式である。」と定めている。 国家株の株主としての権利行使については、国の国有資産管理機構が設置される前は、政府の財政部門または企業の
行政主管部門が代行して株主としての権利を行使し、当該機構設置後は、当該機構が国家株を保有し、株主としての権利を行使する。この国有資産管理機構は、一九九〇年代初めから多難な道を辿ってきた。また、国家株の権利行使も様々
な形態がとられ、複雑化している (
事株会社に投資して取得する式産、または法人格を有するを資にる人株は、法人企業が法よ り支配することができ法 。 1)
業組織および社会団体が経営に用いることを国から認められた資産を会社に投資して取得する株式をいう(「株式有限
会社規範意見」第二四条)。 社会主義公有制の下で、これらの法人企業や事業組織、社会団体が保有している法人株の大部分は国有法人株である (
。 2)
従業員株は、企業の従業員が投資した株式であり、市場で流通されていない。これは、従業員に対する優遇措置として使われている。もっとも、内部従業員が引き受ける株式は、株式発行会社の株式総数の二〇%を超えてはならず、一
人の自然人が保有する株式は、会社の株式総数の五%を超えてはならないとされていた(「株式有限会社規範意見」第
(二一四一)
二五八同志社法学 五九巻四号中国における国有株改革の動向
二四条)。なお、一九九六年の従業員株のシェアは、五・九%であった (
。 3)
一般公衆株は非国有企業と個人投資者を対象とした一般公募による株式であり、全株市場で流通されている。一般公衆株の中に、A株、B株と海外上場株の三種類がある。中国大陸で発行され、中国国内投資家を対象にして発行される
株式がA株と呼ばれるのに対して、外資株はB株と呼ばれ、外国および香港、マカオ、台湾地区の法人および個人投資家が会社に投資して取得する株式をいう。B株は正式には人民元建て特殊株と称し、額面は人民元であるが、外貨建て
で価格が表示され、記名式株券不発行株式である。配当金支払いは人民元建てで行われるが、外貨に換算した上で支払われる (
。 4)
企業が外貨導入の目的で株式を発行する場合、B株を発行する以外に、直接に海外の証券取引所で株式を上場する方法がある。海外上場株は、上場の場所によって、H株(香港)、N株(ニューヨーク)、L株(ロンドン)、S株(シン
ガポール)とT株(東京)と名づけられている (
。はるいてれば呼もと株人個、株衆公般一と株員業従、おな 。 5)
また、資産の性格に応じて、国有資産を投資して取得または発行される株式(国家株)と、集団所有の投資により取得または発行される株式(法人株)は、公有資産株(国有株 (
、従株A(株衆公般一、株員業(式株の他のそ、れば呼と) 6)
B株と海外上場株))は非公有資産株と呼ばれる。 このような株式所有者の属性によって株式を分類するのは、中国の株式会社制度と証券市場構造における極めて特徴
的な点である。そして重要なことは、持株比率、株式の売買、および種類株(優先株と普通株)の設定などの面で、国家株・法人株という公有資産株(国有株)と個人株・外資株という非公有資産株とが全く異なった扱いを受けるという
ことである。 (二一四二)
中国における国有株改革の動向二五九同志社法学 五九巻四号 Ⅱ 株式の譲渡と売買の規制
次に、流通市場で、この四種類の性質の異なる株式がどのように譲渡、売買されているかを概観する。
「株式有限会社規範意見」及び「会社法」のいずれも株式譲渡の自由原則を設けている。「株主が保有する株式は法により譲渡することができる」(新会社法第一三八条、旧会社法第一四三条)。
しかし、「株式発行と取引管理に関する暫定条例」(一九九三年六月に国務院にて採択)は、国家株の譲渡と売買について、「国家の所有する株式の権益を損なってはならない」という前提を置き、「国家株の譲渡と売買に当たっては、国
家関係部門の許可を得なければならない」(第三八条)と規定している。つまり、国家株の譲渡は、政府の証券監督管理機構の政策によって規制されている (
譲引るが、証券取所て以外の場所でのいれ場さ家株は証券市で。の流通を禁止国 7)
渡は現実的に行われている (
資。いて規定が置かれていたすになわち、国の授権した投つ渡の譲た、二〇〇五年改正前旧 会社法では、国家株のま 。 8)
機構は、法によりその保有する株式を譲渡することができ、またその他の株主が保有する株式を買い受けることもできる(旧会社法第一四八条)と規定されていたが、新会社法では、当該条文が削除された。国家株を含む企業の国有財産
権の譲渡は、二〇〇四年一二月に公布された「企業国有財産権譲渡の暫定規定」などの特別規制が適用されるようになった。
法人株は、前述のように、一九九二年の「株式有限会社規範意見」では、企業法人または事業組織が会社に投資して形成した株式であると定義されていた。法人株は、所有制形態別に公的資産と私的資産を分けるという考えに基づいて
設けられた株式の一種である。これは、国有企業が株式会社に変更される際に、会社が他の国有企業または集団所有制
(二一四三)
二六〇同志社法学 五九巻四号中国における国有株改革の動向
企業を対象に発行したものである。株式の権利内容からすれば、法人株は、個人株と同様に普通株であるが、その売買
取引は、個人株と完全に切り離された市場で行われている。しかも、その市場の参加主体は国内の会社法人と証券業者に限られ、海外投資家や国内の自然人(個人投資家)は法人株の売買取引に参加できず、また、企業法人も一般公募に
よって発行された株式を買い入れることができない。法人株の譲渡と売買は、上海・深圳の両証券取引所で行うのではなく、許可を得た上で、北京に設立された二ヵ所の店頭売買市場(NETSとSTAQS、国債と法人株取引のみの店
頭市場)と南方法人株取引所の三个所で行うことができる (
ある現段階の実情に適応させ上国でやむをえないやり方での中て、式投資家の属性によっ、 株式を分類することは株 。 9)
ろう。また、株式の性格によって別々の流通市場を設けるのは、極めて特徴的なことである。 A株内の分類とそれに基づく流通市場の分割は、中国の公有制原則と株式会社制度との結合という発想に基づいて行
われた結果である。これに対し、A株とB株間の分類及びその流通市場の分割は、公有制原則を維持するという要素以外に、中国の外資導入政策を反映している。これは、資本市場において株式発行により外資誘致を図るとともに、外資
の参入に対して一定の制限を加えようとする発想であると指摘されている (
。 10)
Ⅲ 国有株非流通の障害
実際には、株式制企業の試行が行われて以来、国有株の流通・譲渡が規制されているために、多くの弊害が生じている。主な弊害として、以下のようなものがある。
まず、第一に、国が産業構造を調整し、企業の資産を再配分できないことである。第二に、企業が、株式を売買する (二一四四)
中国における国有株改革の動向二六一同志社法学 五九巻四号 ことによって株価の差益を獲得する機会を失っていることである。第三に、株式市場による会社の経営に対する監督機能が働かないことである。これらの弊害によって、株式会社の経営方式を改善し、所有者と経営者の健全な委任関係を 構築することが困難になる、と指摘されている (
、。」の原則に違反している国権家株、法人株の非流通は利同通株国家株、法人株の非流は、法律上、会社法の「同 。 11)
中国国有企業株式制改革とともに発生した大きな問題である。 国有企業が株式会社制度を導入して以来、上場によって資金調達が可能となり、赤字から黒字に転換するなど成功し
た一面もあるが、実際に中国の上場会社の業績は年々低下し、上場会社の赤字経営が増加している。その原因として様々なものが考えられるが、根本的な要素は、上場会社の経営メカニズムが徹底的に変革されていないことである。国有企
業は株式化したのであるが、経営メカニズムは計画経済期の国有企業に復帰した。復帰の原因は上場会社の株主構造が偏り、国家株と法人株が六〇%以上を占め、大株主である国家によるいわゆる「内部者支配(コントロール)」の現象
が頻発したことにある。国有株が支配している上場会社の株主総会は政府部門の現場執務の会になり、また、取締役会は政府役人の職場移動の会(天下りのこと)になり、そして、監査役会は政府役人の退職者会となって、計画経済期に
ある「政企不分」などの現象が再び、更なる深刻さを増して発生したのである。
国家株、法人株が市場で流通しないため(それは、国有資産流失を防ぎ、公有制を維持するという効果がある。)、証券市場を通じたM&A(合併・買収)は障害が多く実現できない。そのため、経営者たちは、その地位を脅かされるこ
ともなく、計画経済期における国有企業の状況とまったく同じであると指摘されている (
、更く、現代企業制度を建設するのはに難根は題問な的本の困そ。るあで難しは指、「が革したように摘中の国有企業改国 央さに中共中王党校の珏氏。ま 12)
国有株が六〇%を占めるために投資主体の多元化が実現されず、よって真の法人財産権を形成するのは難しく、コーポ
(二一四五)
二六二同志社法学 五九巻四号中国における国有株改革の動向
レート・ガバナンスの構築が困難である (
」ことにある。 13)
日本証券経済研究所の中国人研究者王東明氏は、実態調査に基づいてこう述べている。すなわち、「中国のコーポレート・ガバナンスの実態は諸外国との差がかなり大きく、今回の調査結果を見ても、党組織の役割、『一身三役』(取締
役会会長、社長、党書記)と兼任(取締役会会長、社長)の状況、重役の履歴、経営者のステークホルダーに対する態度などの側面から見れば、ガバナンスのあり方に関する問題が依然多く残されている。その意味で、現在は中国の社会
環境に適応した企業ガバナンスの制度がまだ確立されておらず、新しい企業制度の模索段階にあるといえる (
、邦てきた。たとえば、北京和さ財富研究所所長韓志国氏がれ論法議この問題を解決する方については、中国で大いに 」。 14)
この点について、「分類株式による株式市場の分割と国有株の非流通という方式は、計画経済の思考様式であり、このような計画経済方式を現代資本市場へ浸透させることは、資本市場の機能を歪曲させ、もたらす危害は極めて大きい。
この問題を解決するためには、国有株を売却して、民間に放出しなければならない。」と指摘している (
。圧ば、市場に対する大きな力めとなるなどの問題があるれ認株をしかし、国有株(国家・法人株)の市場での流通 。 15)
そのため、多くの学者が様々な方法を提案している (
で産所有権を享受する国有資管国理委員会を設立するだけ家は人にたとえば、「国家株、法株の流通問題を解決する 。 16)
なく、いかにして国有資産管理委員会が政府と分離するのかにある。以前の国有企業改革は『党政分離』、『政企分離』、『所有権と経営権の分離』の問題であったが、現在は『政(政府)資(資本)分離」の問題である。公有制が主体地位
を占めるといって、すべての上場会社、すべての産業構造の中に公有制が主体地位を占めるわけではないのである。どの産業領域の上場会社の国有株を流通させることができるのかという研究が必要である (
。」と指摘されている。 17)
また、在日中国学者張紅教授が以下のように提案している。すなわち、「現実にこの問題を解決するためには、まず (二一四六)
中国における国有株改革の動向二六三同志社法学 五九巻四号 もって民間の大衆株主が購入する転配株 (
法定株衆大の間民、し設がにうよるなく低で主購価あ方なうよのこ。るで入きべすにうよるきで格勢、く高りよ額産実 家き。うろあでずべるめ認のまを通そ株後上資純を格価場の、株人法・の国流 18)
により、株式購入時の価格不平等の問題を解決しうる (
、と人法・株家国、い全なでうそ。るす案株体を場き招を化洞空の市の、ずせ現実が通流提法上方のどなるす場てし割 るに圧力対す後に場市、に過がな大なもの。らないように、分最 19)
根本的に証券市場の主旨に反することになる (
のののコーポレート・ガバナンス構企築、中国証券市場の健全化など業、のの 国有株度場流通上問国題社会制中、は 。」。るいてれさ案提と 20)
課題と密接にかかわっているため、中国政府、とくに中国証券監督管理委員会(以下「証監会」と略す。)は、一九九九年から本格的にこの歴史的な難問の解決に取り組み始めた。
Ⅳ 国有株の市場売却の失敗
中国は、狭義の公有経済の傍らで混合所有経済と非公有経済を発展させてきた。「それでも全体としては公有制だ」
と説明(理論作り)するために、一九九七年一〇月の第一五回党大会は「合弁会社(混合所有経済)の公有持分を合算すると、公有制の成分が量的に過半を占める。」と解釈したが、一九九九年の中国共産党第一五期中央委員会第四回全
体会議(四中全会)ではこの量的基準も放棄したのである (
のお全体会議(四中全会)にい四て、「国有企業改革と発展回第国会一九九九年九月に、中共産党第一五期中央委員 。 21)
若干の重要な問題に関する中共中央の決定」が出された。この「決定」には、主に三つの内容がある。すなわち、①戦略面から、国有経済の配置を再調整すべきであること、②国有企業の株式会社化によって、「現代企業制度」を確立す
(二一四七)
二六四同志社法学 五九巻四号中国における国有株改革の動向
べきこと等の方針を打ち立てたこと、③国有株売却の推進をはじめて公式に表明したことである。
一九九九年一一月に、証監会は、上場企業一〇社を選定して、国有株売却の試行を決定した。また、同年同月、国有資本の一般業種からの撤退と戦略業種への集中に関する国家統計局の報告が公表された。そして、同年一二月には、貴
州タイヤなどの国有株部分の売却が実施された。 その後、二〇〇一年六月に、国務院は、「国有株削減による社会保障資金調達の管理に関する暫定規則」を通達・施
行した (
保ては金資たし達調のそ、し会出放を株有国の業企該社保るの会社はで国中。るあでも障ういと、るす填補に金基当た 場容規新が業企るあ、は内あな主の」則規定暫「の上発。達に%〇一の額金資定予調行、合場るす行発資増やこ 22)
障体制の確立とその資金ルートの確保が長年の懸案であったが、これを上場企業の株式所有構造の是正とリンクさせ、いわば一挙両得的に問題を解決しようとしたのである。
しかし、流通株式のほぼ倍にあたる非流通株式が市場に流れ込むことになれば市場における需給バランスが崩れるのではないかという投資者の不安が広がり、株価が暴落し市場が混乱した。そのため、証監会は、二〇〇一年一〇月に「暫
定規則」の国有株売却関連条項の執行を一時凍結し、これにより株価は再び上昇した (
タ、いての意見を公開募集し同に時に国務院発展研究センつ案、出暫定規則の一時凍結後証監会は、新たな国有株放 。 23)
ーでは「国有株放出方案専門家評議会」を組織し、財政部など関連機関もこの難問の研究に着手し始めた。二〇〇二年一月、証監会は、公開募集によって得られた国有株放出案四三〇〇件を整理・総括し、国有株放出方案の中間報告とし
て発表した。 こうした一連の措置や相場の変動を経て、株式市場の長期的な保護育成がますます重要視されるようになる中で、中
国政府は、国有株放出という問題がきわめてセンシティブな問題であると認識するようになった。具体的には、国務院 (二一四八)
中国における国有株改革の動向二六五同志社法学 五九巻四号 は、二〇〇二年六月二三日に、「国有株削減による社会保障資金調達の管理に関する暫定規則」のうち、国内証券市場を利用した国有株放出とそこから得られた資金による社会保障制度の確立に関する規定の半永久的凍結を発表すること となった (
。は月二三日の半永的凍結久ま」さえいとる車急「に停 二ば、この二〇〇年六ならるが二凍時一の日二月あ〇一年一〇〇結国。急で」キーレブ「有るす関に出放株二 24)
結局、二〇〇一年の中国政府の国有株削減政策は失敗した。筆者は、国務院と証監会による国有株の削減手法に対して批判的な立場を取っている。筆者は、法律的な手段を用いて、つまり法によって国有株削減の問題を解決すべきだと
考える。具体的には、国有株の分類と概念、国有株削減の目標、削減の政策決定機関と実施機関の組織化、国有株の買手側(需給主体)、削減の対象と範囲、削減の合理的な方式などについて、明確に法に規定しなければならないと考える。
そして、国有資産の保護の視点から、全人民所有の国有株を削減する法律が、立法機関である全人代常務委員会で制定されるべきと考えている (
。 25)
Ⅴ 国有株問題改革の新たな動向
―
「股権分置改革」1
「股権分置改革」誕生の背景国有株の放出という問題は、日本でも同じ現象があった。電電公社からNTT、国鉄からJRに国営企業が民営化される際、政府はすべての株式を市場に放出せず、多くの株式を保有し、時機を見て徐々に市場に放出した。その売却資
金は国庫に入り、財政の足しになったのである。しかし、中国の場合、大多数の企業が国営企業から民営化している。上場企業の株式の多くを筆頭株主である国有企業が握っていて、その規模たるものは日本の比ではない。しかも、中国
(二一四九)
二六六同志社法学 五九巻四号中国における国有株改革の動向
の国有株の削減と放出は、中国の根本的な経済政治制度にかかわっているためにより複雑な問題となる。
二〇〇一年の証券市場における国有株削減の政策が失敗した後、中国政府は、新たな解決策を二〇〇二年後半から模索し始めた。具体的には、中国国内の証券市場を通さずに、民営企業や外資に国有株を譲渡するという新たな解決策を
採用したのである。この解決策を採るにあたっては、特に、外資への国有株の売却政策が大きな役割を果たした。この外資への国有株の売却政策については、二〇〇二年一一月の第一六回党大会において、その政策が示唆された。このよ
うにして、中国政府は、国有株を外資に譲渡する政策を本格的に展開し始めたのである。結局、外資M&Aは、中国証券市場の国有株非流通の歴史的な構造問題を解決する一手段として、外資M&A関連の法整備が推進される中で、今現
在利用されつつある。 一方、国有株の海外での売り出しは、継続して行われた。たとえば、中国大陸本土の企業がH株のIPOや増資を実
施する際、「国有株削減による社会保障資金調達の管理に関する暫定規則」に規定されているように、募集株式数の一〇%に相当する国有株が売り出される。例えば、公募・売出株式数が一億一〇〇〇万株の場合、うち新たに発行される
H株は一億株であり、その他の一〇〇〇万株は既発行の国有株がH株として売り出される分となる。この場合、発行済株式総数の増加は一億株となる。そして、国有株株主の保有株が一〇〇〇万株減少し、H株となるのである。また、一
〇〇〇万株の売り出しで集まった資金は、全国社会保障基金理事会が管理するのである。 海外の証券市場での国有株の削減は進められているが、大陸本土市場では依然として国有株の売り出しによる需給悪
化懸念が存在し続け、株価低迷の一大要因となった。中国経済は二ケタ近い高度成長を続けているが、株式市場は企業統治の不透明さといった従来の問題に加え、「非流通株」である国有株の放出問題で、株価の押し下げリスクが懸念され、
長期的に低迷していた。二〇〇四年一二月一九日、上海証券取引所は創設一四周年記念日を迎えたが、まさにその前日 (二一五〇)
中国における国有株改革の動向二六七同志社法学 五九巻四号 に、上海総合指数は株式市場崩壊警戒ラインと言われた一三〇〇ポイント以下に下落した。これを受けて、中国株の時価総額は二〇〇一年九月の一兆七〇〇〇億人民元から二〇〇四年一二月に一兆四〇〇〇億人民元に減少し、新規上場株 式を除くと、約八〇〇〇億人民元が消失した (
ト資あを益収ちうの家投た三%が収支小ントンげの中なるあでとこのといぎは過に%三・五かずわ、 ( 七・る調査によると、中小投資家の九。・三%が損失を被り、その一五あ 26)
。 27)
二〇〇五年に入っても、株価の下落趨勢はさらに続き、五月の大型連休明け後、上海総合指数は二度、一一〇〇ポイントを下回り、アジア通貨危機直後の一九九七年九月以来の安値となった。
2
第一段階:「上場会社の『股権分置改革』試行の関連問題に関する通知」の公布このような背景の下で、証監会は、二〇〇五年四月二九日、「関于上市公司股権分置改革試点有関問題的通知」(「上場会社の『股権分置改革』試行の関連問題に関する通知」)を公布した(同日施行、以下「通知」と略す)。これにより、
国有株を含む非流通株が流通化に向け動き出した。すなわち、この通知は、本土株式市場の「病根」に対する新たな治療方法を示すものと評価できるのである。
「股権(株主権)分置」とは、直訳すれば「株主権が分断されて配置される」の意味である。二〇〇五年八月に発表
された「上場会社の股権分置改革に関する指導意見」は、「股権(株主権)分置」問題について、以下のように位置づけている。すなわち、「『股権分置』とは、「A株市場の上場会社の株式が証券取引所で取引できるか否かによって『非
流通株』と『流通株』に区分するというわが国の経済体制の転換過程において形成された特殊な問題である。」としている(意見の一の二)。「股権分置」は非流通株主と流通株主の権益不均衡の問題であり、これまで資本市場の価格形成
機能や、有効な企業統治(コーポレートガバナンス)の確立などを阻害していると指摘されてきた。すなわち、「股権
(二一五一)
二六八同志社法学 五九巻四号中国における国有株改革の動向
分置改革」は、「株主権構造改革」、「株式市場構造改革」と呼ぶことができる。これは、国に代表される非流通株主が
一般株主に対し、非流通株を無償、または、株式分を現金で補償するというものである。 最初に「股権分置」を解決するための指導原則等を明確に提起したのは、二〇〇四年二月二日に国務院により公布さ
れた「国務院関於推進資本市場改革開放和穏定発展的若干意見」(「国務院が資本市場の改革開放と安定発展を推進することに関する若干意見」)である。この「若干意見」は、「積極的に且つ安定的に「股権分置」問題を解決しよう」、「こ
の問題を解決するとき、市場規律を尊重し、市場の安定と発展に寄与し、投資家、とくに一般投資家の合法的権利・利益を着実に保護しなければならない」旨を明確に提起し、「股権分置」問題を解決する目標と指導原則を確定した。
中国政府は、最初に国有株問題を解決するために、まず「国有株の削減」政策を実施し、その後、「国有株の全流通」政策を提出しながら、上記のとおり二〇〇四年に入り、「股権分置の改革」の概念と政策を明確に提唱した。すなわち、
「国有株の削減」は証券市場を通じた国有株の利益実現と国有資本の撤退を意味する概念として、「国有株の全流通」は不流通の国有株を市場に流通させることを意味する概念としてそれぞれ表しているに対して、「股権分置の改革」は、
その本質として、不流通の株式を流通株式に変えて、真の株主権の平等を実現することを目的とする改革の概念である。「股権分置」問題を解決した後、流通できる株式は必ずしも実際に流通するとは限らず、中国国内の株式市場に大きな
負担をかけるとは必ずしも言えない (
を間府は四个月という短い期の国中で「股権分置」の難題政中お、その後、上で述べたとり、二〇〇五年四月末から 。 28)
解決するための一連の措置を打ち出した。すなわち、二〇〇五年四月二九日に証監会により公布されたこの「通知」は、中国政府の「股権分置」改革のスタートの宣言である。
非流通株の株主に対して流通株主に利益補償するようにさせるのは法的根拠がないという状況の下で、証券市場監督 (二一五二)
中国における国有株改革の動向二六九同志社法学 五九巻四号 管理機関としての証監会により公布された「通知」には、非流通株主に利益補償を行う主旨が含まれ、中国政府の市場低迷状況の改善を狙う強い意思が窺える (
。 29)
「通知」はまず「流通権」の概念を初めて提示した。その意味は、非流通株の株主は、市場における流通権を獲得するために流通株の株主に対価を支払わなければならないというものである。明確な法律根拠はないが、中国政府は、流
通株の証券市場と上場会社の発展に果たした役割および中国株式市場の歪んだ発展により流通株主が蒙った損失を鑑みて、非流通株の株主が流通株の株主に対する利益補償(補填)を行わせ、投資者の株式市場に対する信頼を回復させ株
式市場の発展を狙おうとしている。 次に、「通知」は、市場全体への衝撃と改革のリスクを抑えるために、個別の上場会社を選んで、その会社によって
独自の改革案を出させることで、テストを行うこととしている。したがって、市場全体には統一した基準はなく、上場会社は自社の経営状況と特徴に基づき相応しい解決案を制定する。これは、現実的に可能な状況の下で非流通株主が主
体的に流通株主に対して補償を行う原則を表しており、これによってテストの成功の可能性を高めた。 最後に、「通知」は流通株の株主の議決権を強調した。すなわち、上場会社に出された改革案は「議決に参加した流
通株の株主が保有する議決権の三分の二以上の承認を経て可決されなければならない」と規定され、流通株の株主の利
益保護が強化されるようになった。 さらに、二〇〇五年五月八日に、深圳証券取引所、上海証券取引所と中国証券登記決算有限責任公司は、「股権分置」
改革に向けた試行作業について、作業手順を定めた手引きを公布した (
四行たれらめ決が社試の初最るす ( 改を革」月置して、同年五九。日に、「股権分そ 30)
)下管理委員会(以「監国資委」と略す督産に資年五月三〇日は。、証監会と国有同 31)
が共同して、「股権分置改革試行の順調展開に関する意見」を発布し、大・中型上場会社に対し積極的な股権分置改革
(二一五三)
二七〇同志社法学 五九巻四号中国における国有株改革の動向
の推進を要求し、経営陣に対して改革を徹底する決心をさせた。
3
第二段階:「上場会社の股権分置改革に関する指導意見」などの発布二〇〇五年六月一七日に、国資委は、「国有株支配上場会社の股権分置改革に関する国務院国有資産監督管理委員会の指導意見」を発布し、国有株の株主がその支配する上場会社での最低の持株比率を決定するよう、改革を実行する会
社に要求した。また、この指導意見は、証券市場の安定を守るために、国有株が取引できるようになったことは、直ちに市場で売り出すことを意味しないと明らかにした。同年六月二〇日に、中央国有企業である宝山鉄鋼および長江電力
の二社を含む四二社が、「股権分置」改革テスト第二陣の会社となった。このテストの第二陣は、二〇〇五年五月に発表された第一陣の計四社と比較して、会社数が大幅に増加し四二社となり、会社種類も大型の中央国有企業、地方の国
有企業、民営企業、中小企業ボード (
の強いてれさ出ち打くがと志意の府政国中、うるいと一社六四、はに日九月え八年同、てしそ。るいくてめ進に的極い こなれま含が業企さまざまい、でま業てこる関積を革改るすに。置分権股、にの企 32)
股権分置改革のテスト会社全てが、定められた改革手続きを実施完了した。 二〇〇五年八月二三日に、証監会、国資委、財政部、中国人民銀行(中央銀行)、商務部などの五つの部門は、共同
して、「関于上市公司股権分置改革的指導意見」(「上場会社の股権分置改革に関する指導意見」)(以下「意見」と略す)を発布し、上場会社の非流通株問題の改革に関する基本方針を明らかにした。
この「意見」は、非流通株の流通化に向けた「股権分置」問題の改革に関する綱領的な文書である。二〇〇五年四月からの二回にわたる改革試験が無事終了し、市場の反応に手応えを得たため、中国政府は改革の全面的な展開を進める
ことを決めた。「意見」は、「股権分置改革」は非流通株の流通化を目的としており、資本市場を利用した国有株の売出 (二一五四)
中国における国有株改革の動向二七一同志社法学 五九巻四号 ではないと強調し、資本市場の健全的な発展を目指すため、思い切った改革を行うとともに、市場の安定も配慮するという立法趣旨を示した。
「意見」は、以下のように「股権分置改革」の原則を確立した。すなわち、上場企業は必要な条件を満たしたものから改革を実行し、証券監督管理当局は必要に応じて流通化のスピードや規模を有効的にコントロールする。「股権分置
改革」はA株株主の利益調整である。A・H株あるいはA・B株を同時上場している場合、A株市場の関連株主が話し合って「股権分置」問題を解決することになる。業績の悪い企業の場合、改革を遂行するためには、優良資産の注入な
どの手段を活用することになる。改革の進捗状況に応じて、新規上場(IPO)企業に対して非流通株と流通株の区別を無くす。「股権分置改革」が完了した上場企業に対し、増資スケジュールなどの面で優先的に考慮する。増資する場
合の管理監督方式を改革し、効率を高める。「股権分置改革」を契機に、上場会社のコーポレート・ガバナンスを改善する。大株主が上場会社の資金を占用する問題を解決するとともに、規則違反の担保提供を抑制する。また、関連当事
者取引を利用して上場会社の利益を侵害するような行為を禁止する。優良な大型企業の場合は、「股権分置改革」で全株上場を実現した後、傘下の上場会社を通じて株主割当発行を行い、企業の「全体上場」を実現させる。
また、改革をスムーズに進めるため、ビジネス化手段を通じて資金面でも支持するなどの方針も明らかにされた。証
監会はこうした基本方針をもとに、「上市公司股権分置改革管理規則」を策定するほか、関連当局も国有資産の管理、企業の監査体制などの関連政策を改善するように求めた。これにより、証監会は、改革の具体的な管理方法などを策定
する作業の任務を与えられた (
。 33)
(二一五五)
二七二同志社法学 五九巻四号中国における国有株改革の動向
4
第三段階:「上場会社股権分置改革管理規則」の公布二〇〇五年九月四日に、証監会は、正式に「上市公司股権分置改革管理弁法」(「上場会社股権分置改革管理規則」)を発布した(同日施行)。全八章五五条で構成される同規則は、関連手続きを整備し、全面的に改革を推進するための
全体的な政策枠組みを明確にした。これによって、非流通株の解消に向けた改革の基礎となる法的基盤が正式に整った。これは、「股権分置改革」における最も重要な法令である (
。 34)
同年九月六日に、上海と深圳証券取引所及び中国証券登記決算有限責任公司は、共同して「上場会社股権分置改革業務実施手引き」を公布し、改革の全面的な展開のための実施手引きを提供した。同年九月九日に、国資委は、「股権分
置改革における国有株主権管理の関連問題に関する通知」を発布し、国有上場会社の股権分置改革のために最後の政策
的障碍を取り除いた。
⑴ 五つの改正点
「上場会社股権分置改革管理規則」(以下「規則」と略す)の公布・施行により、「上場会社の「股権分置改革」試行の関連問題に関する通知」(証券発二〇〇五年第三二号)が廃止された(規則第五五条)。証監会のスポークスマンによると、試行期間中の改革テストとしてのこの「通知」と比べると、「規則」は主に五つの面において大きな改正を行っ
たという (
用に革がより実現可能なものな、るように、試行期間に採改は出」第一に、改革議案の提について修正した。「規則 。 35)
された「原則上、非流通株主全員の一致同意により改革議案を提出しなければならない。」といった規定を残しながら、 (二一五六)
中国における国有株改革の動向二七三同志社法学 五九巻四号 「一致同意に達することができない場合は、単独または共同で会社の三分の二以上の非流通株式の株主により改革議案を提出することもできる。」と規定した(第五条)。第二に、「規則」は、株主会議の合法的な形を明確化した。つまり、
試行期間に採用された「臨時株主総会」が「A株式市場関連株主会議」に明確化された。第三に、「規則」は、非流通株株主と流通株株主の協議期間を改善した。つまり、試行期間に採用された「改革試行の開始を公告する日より流通株
株主の意見を徴集し協議を始める。」といった規定を、「関連株主会議の通知の公布日より一〇日以内に会社の取締役会は非流通株主と協力して、投資者座談会、メディア説明会、インターネット実験、機関投資家への訪問、意見徴集書の
発布などの方式でA株式市場の流通株株主(以下「流通株株主」と略す)と十分な意思交流と協議を行わなければならない」に改正した(第一〇条)。この改正によって、改革にかかる期間が三〇日程度に短縮されるようになった。第四に、
「規則」は、改革議案の修正に制限的な規定を設けた。試行期間中は臨時株主総会会日の一五日前までは改革案を協議し修正することができるとされていたが、「規則」は、協議結果が公布され会社株式の取引再開後、改革案を改めて修
正することはできないと定められた(第一一条)。これは、改革案の安定性を確保するためである。第五に、「規則」は、改革実施中の株式取引停止に関する規定をより合理化した。
るた流通株の放出を実現するめ、に、市場への衝撃をでき非は権分規則」における「股に置 改革」の具体的な内容「
2 需給悪化懸念の回避措置
限り緩和し、需給悪化懸念の回避に力点が置かれている規定が多い。とくに、以下のように、流通可能となった株式の売却に時間的・数量的な制限が設けられている。すなわち、改革後の会社の元非流通株株式の売却は、下記の規定を遵
守しなければならないとされている(第二七条)。すなわち、①改革案の実施日より一二个月以内に上場取引または譲
(二一五七)
二七四同志社法学 五九巻四号中国における国有株改革の動向
渡をしてはならない。②①の規定期間満了後、上場会社の株式総数の五%以上を保有している元非流通株株主が証券取
引所で売却する元非流通株式数が当該会社株式総数に占める比率は一二个月以内で五%を超えてはならず、二四个月以内で一〇%を超えてはならない。
また、上場会社の株式総数の五%以上を保有または支配する元非流通株株主は、証券取引所で売却する株式数が当該会社株式総数の一%に達した場合、当該事実発生日より二営業日以内に公告を行わなければならない。なお、公告期
間中は株式売却を停止する必要がない(第三九条)。
、「はの社会と」革改置分権股再で産条六二第」則規、「たま 編資 (
3 股権分置改革と資産再編
置た分権股、「ちわなす。し定規ていつに連関のと 36)
改革と会社の資産再編とを組み合わせる際、再編側が優良な資産の注入、債権債務の負担などによって会社の経営能力または財務状況の改善をする場合は、資産再編手続および股権分置改革手続は、本規則および証監会の関連規定に従う
ものとする。」と規定されている。 「股権分置改革」と上場会社、とりわけ
ST
類の上場会社の株式譲渡と資産再編とを結びつけることは、二〇〇五年に おける上場会社株式譲渡の創造であり、「股権分置改革」の注目点であると評価されている (。とるが、経営不振の上場会社にっさてより実践的な意義を有するれ用置す権分適革」は、改べの上場会社にて 式産再編方「による股。資 37)
経営不振に陥った上場会社の株式は株式価値自体が低いので、その流通株主にとって、たとえ非流通の大株主から無償で当該株式をもらってもあまり大きな意義はない。そのため、株式の贈与の代わりに、大株主が優良資産をもって上
場会社の不良資産と資産置換えを行うなどの資産再編方式が活用されれば、上場会社の株式価値を高めることができ (二一五八)
中国における国有株改革の動向二七五同志社法学 五九巻四号 る。 「股権分置改革」の進展は、中国上場会社のM&Aの促進につながるが、「資産再編」という中国式のM&A方式によ って、「股権分置改革」が促進するであろう。二〇〇五年には、「ST農化」、「天大天財」、「寧夏恒力」などの一〇数社の上場会社が「股権分置改革」を実施する際に、「資産再編」方式と組み合わせてこれを進めたという (
。 38)
4 B 株、 H 株株主との関係
「規則」は、B株やH株も発行しているA株上場会社についても言及した。すなわち、「規則」は、「股権分置」問題の改革は、「A株式市場における株主間の利益バランスの問題を解決することある。」と強調し、H株やB株を上場して
いるA株上場会社については、A株株主の協議により、「股権分置」問題を解決するとしている。具体的には、「規則」第二条が「上場会社股権分置改革は、非流通株株主と流通株株主の間における利益バランス協議メカニズムを通じ、A
株式市場の株式譲渡の制度的な差異を解消する過程である。」と定めている。 上場会社の非流通株株主がA株株主のみに何らかの利益を支払い、B株株主やH株株主へは何らも支払わないことに
対して「一部の株主に対する不公平な扱い」、「中国人の株主のみに現金や株式を与えるのは、外国人株主への差別」、「中
国企業による外国人株主に対する不公平な対応」、「なぜB株株主を差別する。納得がいかない。」など外国投資家から疑問や意見が出されたが、「股権分置」改革の背景を知ればきっと納得できると思う。非流通株の流通株化で需給が悪
化するのはA株だからである。つまり、流通株となった非流通株はA株として流通することになり、B株として流通することはなく、B株式市場に「股権分置」改革による需給悪化は起こらないからである。B株を保有する株主に損失は
生じないはずであるので、対価を支払う必要もないということになるのである。
(二一五九)
二七六同志社法学 五九巻四号中国における国有株改革の動向
しかも、「股権分置」改革での対価は「非流通株株主が流通株株主」に支払うものであり、これはあくまでも「株主
同士の問題」ということになる (
。 39)
流)する株主(非流通株株主が保、流通株を保有する株主(有をっと股権分置改革」のも株も 大きな特徴は、「非流通「
5 非流通株株主が流通株株主に対価を支払う法的根拠
通株株主)に対価を支払う」という点にある。 では、なぜ「対価」を支払うのか。「非流通株が流通株となる過程で、A株を保有する株主に対価が支払われるのは、
一種の「損失補償」のためである。非流通株が流通A株となることで、A株式市場の需給が悪化する懸念が生じ、株価が低迷すれば、A株を保有する株主が損失をこうむることになる。このため、こうした損失を与える非流通株株主が、
損失を受けるA株株主に対価を支払うのである。」、「今回の「股権分置」改革のポイントは、一般投資家に非流通株の一部を無償寄贈することである。証監会は、この無償寄贈方式により、証券市場への衝撃を最小限に抑え、大暴落を防
ぐことを望んでいる。」などといった解釈が一般であるが、正式な法的根拠はまだ示されていない。 中国国有企業が株式会社に転換する中で、発起人など非流通株株主は、株式会社の株式公開発行および上場の際に、
国有資産の保護の観点から国有株の流通を意識的に禁止し、目論見書や上場公告書に非流通株を「暫定的に譲渡しない」という約束をした。このような約束は、一般投資者(流通株株主)に心理的な期待を与え、市場の需給関係および流通
株の株価に決定的な影響を与えた。この非流通株を「暫定的に流通しない」という文言は、拘束力がある契約の条項であると認めることができる。そのため、非流通株株主は契約条項を変更して非流通株株式を流通させるためには、契約
のもう一方当事者である流通株株主と協議しなければならない。 (二一六〇)
中国における国有株改革の動向二七七同志社法学 五九巻四号 「中華人民共和国契約法」第七七条によると、「当事者が合意した場合、契約を変更することができる。法律、行政法規で契約変更につき認可、登記等の手続を行うよう規定されている場合、当該規定に従う。」と規定されている。した
がって、当事者の間に合意が達成されるまで、非流通株株主は流通権を取得することはできない。非流通株株主は、流通権を取得するためには流通株株主が納得する対価を支払わなければならない。流通株株主が納得し、契約当事者が協
議一致に至ってから、契約変更の上、非流通株の流通は実現することができる (
。 40)
)す下のようなものがある。な、わち、IPO(新規公開以て連し股権分置改革」に関いて 打ち出された政策につ「
5
「股権分置改革」の関連政策の停止、株式消却を目的とした流通市場での自社株買いの解禁、改革実施企業の大株主による流通市場での買い増しの解禁、「対価」に対する印紙税・所得税の免除、カバードワラントの解禁、最低持株比率の策定などが挙げられる。こ
れらは、いずれも需給悪化を回避するための策である。こうしたことからも分かるように、改革の力点は「需給悪化防止」にある。対価を支払うという方法が功を奏してか、「股権分置改革」は現在のところスムーズに進んでいる。
二〇〇五年五月から「G株 (
会場在、大部分の上会月社が「G株」上場現二増一場会社が大幅に加」し、二〇〇六年上 41)
社となった。「股権分置改革」が着実に進められている結果、上海総合株価指数も二〇〇五年五月時点の一二〇〇点程度から上昇しつつあり、二〇〇六年一二月一四日には歴史的な記録であった二二四五点を超え (
、二〇〇七年三月に三〇 42)
〇〇点、同年五月に四〇〇〇点を超えたという状況である。
(二一六一)
二七八同志社法学 五九巻四号中国における国有株改革の動向
Ⅵ 上場会社買収法制の動向
一九九八年証券法は、二〇〇五年の大改正を経て一〇月二六日に公布された(二〇〇六年一月一日施行。以下、一九
九八年証券法を「旧証券法」と略す、二〇〇五年証券法を「新証券法」と略す)。証券法並びにその関連規則及び規範性文書において、上場会社のM&Aについて規定されている。すなわち、旧証券法第四一条(二〇〇五年改正で削除)、
旧証券法第七八条(新証券法第八五条)から旧証券法第九四条(新証券法第一〇一条)の株式保有の情報開示および公開買付義務等に関する規定である。
中国証監会は、二〇〇二年九月二八日に「上場会社買収管理規則」および「上場会社株主の持株変動情報開示管理規則」(上市公司股東持股変動信息披露管理弁法、同年一二月一日施行)を公布した (
一は年二〇〇二、則規のつ二のこ。 43)
月一日から施行された「上場会社における重大な資産の買付、売却、置換の若干問題に関する通知」、二〇〇三年五月二〇日の「公開買付にかかわる買収対象会社の株式上場取引条件の関連問題に関する通知」および二〇〇四年一月七日
の「上場会社における実質的な支配権移動行為の規範化の関連問題に関する通知」などの一連の法規とともに、十分な情報開示の上、投資者権益を保障し、上場会社の買収管理制度の枠組みを初歩的ながらも形成したことを意味する (
。 44)
旧証券法が制定される前に、証券市場を通じた企業買収に対して適用されていた法規は、主として一九九三年に定め
られた「株券発行及び取引管理暫定施行条例」と「株券を公開発行する会社についての情報開示実施細則 (
るしおいて初めて上場会社に対て国仕掛けられた買収事例であに中めたれらの法規が定、れら直後の一九九三年九月 」こ。るあで 45)
「宝延事件」が発生した。その後、一九九七年、国有企業改革を促進するために、企業のM&Aと組織再編成に関して多くの政策的措置が行われ、その直後、企業のM&Aブームが起こった。そのブームに対応するために、旧証券法の第 (二一六二)
中国における国有株改革の動向二七九同志社法学 五九巻四号 四章において上場会社に対する買収規制が置かれた。さらに、二〇〇五年新証券法は第四章の規定を大幅に改正した。 旧証券法では、第四章で上場会社の買収について規定した。しかし、旧証券法には、様々な欠陥があった。すなわち、
旧証券法は、客観的に上場会社買収を定義し、その買収方式を区分することができなかった。また、立法技術において、ロジックの混乱や不確定な概念が見られるなどの問題があり、法律の適用に障害があった。
そこで、新証券法は、全面的に第四章「上場会社の買収」を改正した。具体的な改正は、公開買付、協議譲渡の以外に、その他適法な方法の追加(新証券法第八五条)、強制公開買付の義務者の範囲が共同行為者までに拡大、強制的全
部公開買付から比率に応じた強制的部分公開買付に改め、協議買収により強制的公開買付の義務の発生及び免除に関する規定の新設などが挙げられる。
二〇〇六年七月三一日に中国証監会は、二〇〇二年九月二八日に公布された「上場会社買収管理規則」(上市公司収購管理弁法、同年一二月一日施行)を大改正して公布した。この改正案は二〇〇六年五月二二日に発表され、五月末ま
でパブリックコメントが募集されていた。二个月ぐらいの意見収集とドラフトの改正を経て、正式に七月三一日に公布され、九月一日に施行された。
同時に、中国証監会は、二〇〇六年八月四日に新しく改正した証券公開発行会社情報開示内容及び様式準則の第一五
号(権益変動報告書)、第一六号(上場会社買収報告書 (
一報申除免務義付会告文書)、第買九号(請書開六行施日一月九年〇)〇二(たし布公を公 ( )、役一七号(公開買付報告書第)、一八号(被買収会社取締第 46)
)。これらは、上場会社買収 47)
にかかる情報開示の具体的な内容および様式を定めた準則(ガイドライン)である (
令場伴い、二〇〇二年の「上会行社買収管理規則」(証監会に施新」二〇〇六年九月一日の「上場会社買収管理規則 。 48)
第一〇号)および「上場会社株主の持株変動情報開示管理規則」(証監会令第一一号)は廃止された (
。 49)
(二一六三)