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九州大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

カンセイ カチ ニ チャクモク シタ デザイン ヒョ ウカ システム コウチク ニ カンスル ケンキュウ

曽我部, 春香

九州大学大学院芸術工学研究院

https://doi.org/10.15017/13946

出版情報:Kyushu University, 2008, 博士(芸術工学), 論文博士 バージョン:

権利関係:

(2)

第 5 章 調査結果の活用法

89 95

104

109 102

5.3.1 グッドデザイン賞受賞作品を対象としたワークショップ 5.3.2 福岡県大川市の家具ブランド「SAJICA」を対象と    したワークショップ

5.4 ワークショップを実施することにより得られた課題と成果

5.1 本章の目的 86

87 5.2 研究の方法

115 5.7 作り手によって考察された結果を「ものづくり」へ

   結びつけるための可能性

87 5.3 作り手が評価のズレを考察するための場づくり

5.5.1 グッドデザイン賞受賞作品を対象としたワークショップの結果 5.5.2 大川家具ブランド「SAJICA」を対象としたワークショップ    の結果

5.6 2 事例のワークショップの結果のまとめ 113 5.5 ワークショップの結果 104

5.10 5 章のまとめ 125

119 5.9 ワークショップにおいて考察を行うことに対する

      作り手の反応

5.8 デザイン評価システムの構築 118

116

5.7.1 作り手の考察結果をもとにした検討

(3)

5.1 本章の目的

 本章では、第 4 章において実施した、3事例の調査の中から、

2事例の調査結果を用いて、作り手が評価のズレについて考察を行 うワークショップを実施した。そして、このワークショップを観察 することによって、作り手が評価のズレを考察することの効果を分 析する。

 第4章での 3 事例の調査結果からは、作り手と受け手の間で頻 繁に評価のズレがみられる傾向があり、作り手はあまり一般化はさ れていない、デザイン分野における特有の情報や知識に強く影響を 受ける傾向があることがわかっている。これは、直接的に「ものづ くり」に関わる作り手が、評価のズレの要因に頻繁に関与している 可能性があるといえる結果である。この結果をふまえた上で、作り 手がワークショップで行う発言や導き出した考察を分析することに よって、作り手が評価のズレを考察することの効果を検証する。

 ここで、作り手が直接、調査結果の考察を行うことを選択した理 由を簡単に述べる。本研究における評価調査では、作り手、送り手、

受け手の3者の評価結果を比較分析し、どういった指標について評 価のズレがみられるのかを明確に示すことができる。これは、作り 手や送り手、受け手の価値観の違い及び事物に対してのとらえ方の 違いを表現している。したがって、この結果については、良い悪い といった単純な判断を行うべきではなく、思考を行うひとつのきっ かけとして活用することが有効であると判断した。そもそも、頻繁 に評価のズレがみられる作り手と受け手の2者について、どちらか の調査結果が正しいというとらえ方は的確とはいえない。評価の対 象である製品の特性や3者の評価傾向を、客観的にとらえ、調査結 果を評価の対象にとっての状況を判断する1つの手段とすることが

第 5 章 調査結果の活用法

(4)

重要だといえる。そして、この状況判断の結果、解決策が必要だと 診断した場合には、引き続き解決策を考える必要がある。この具体 的な解決策を考える行為は、デザイン活動だといえ、デザイン活動 を行う作り手が考察を行うことによって、自然なデザインプロセス が成立すると考え、作り手による考察の場を設ける手段を考えた。

 具体的な評価調査と、その結果を作り手が考察する行為を結びつ ける仕組みをつくり出すことが、実践的な場面で役立つデザイン評 価システムとして成立するといえ、その妥当性を導出することを、

本章の目的とする。

5.2 研究の方法

 実践的に作り手として活躍する、デザイナーや設計者を集め、第 4章の評価調査において導き出された結果である評価のズレを課題 に、その要因をワークショップにおいて議論した。

 ワークショップ中に各グループで行われる会話や参加者の行動を 観察し、導き出された考察や各グループの発表を整理した。そして、

ワークショップで得られた考察をもとに、シミュレーションを行う ことで、考察から具体策の立案が行えるかどうかを検証した。ここ でのシミュレーションとは、筆者が、作り手によって考察された結 果をもとに、評価の対象となった製品のリデザインを行うことを想 定し、具体的なデザイン方針を立案することである。また、ワーク ショップ後に、ワークショップの実施についてのアンケート調査を 行い、回答から参加者のワークショップについての意見を整理した。

 以上の取り組みにより得られたデータの分析から、総合的に本デ ザイン評価システムの可能性と効果を検討し、評価調査と考察、具 体策の立案までの、一連のプロセスによるデザイン評価システムの 構築に結びつける。

5.3 作り手が評価のズレを考察するための場づくり

(5)

 一般生活者のみを対象とした調査結果の考察においては、各質問 項目について、回答者の回答結果がよくなかったものを、課題項目 としてとらえる傾向がある。したがって、調査結果が出た時点で、

課題に対しての解決や改善を行うことが、正しい方向であるといっ た道筋が暗黙的に示されており、調査結果をまとめた時点で、その 対応策を考えることが作り手の役目であり、解決に結びつくといっ た方向性が、ある程度確定しているといえる。このような調査の回 答者である一般生活者の大半は、本論中の受け手、つまりはエンド ユーザーであるといえ、彼らの出した調査結果に応えることだけが

「ものづくり」に携わる人々の仕事であると認識されてしまうこと に、筆者は問題があると考える。エンドユーザーの意見やニーズに 応えることは重要である。しかし、エンドユーザーから抽出された 一方向的な結果に応えることが、正しい解決策であるととらえた時 点で、その「ものづくり」は、既に魅力が欠けたものになっている のではないかと考える。この流れは、ある程度事前に決定した枠組 みの中で、作り手に具体策の立案を強要する行為であり、作り手が 持っている価値観や創造力を尊重していない方法だといえる。この ように指示的な状態で、作り手がデザイン活動を行う環境が常態化 していることが、「ものづくり」の不振を招いているといえる。

 このような状況の改善のためには、作り手自身が調査結果につい て納得し、深い理解を行うことが必要であり、作り手が調査結果を 考察することが、自然なプロセスをつくり出し、創造される事物に 効果的に反映されていくと考えられる。

 調査結果にみられる評価のズレが、有効なデータとして発想の きっかけや戦略に役立てられるためには、デザイナーや設計者など の作り手に、デザイン評価指標を用いて実施した調査の結果が、考 察を行うことによって活用できると理解され、考察することに価値 があると認識される必要がある。したがって、第4章で実施した、

3事例の調査の中から、グッドデザイン賞の受賞作品を対象とした 調査結果と福岡県大川市の家具ブランド「SAJICA」の家具を 対象とした調査結果を題材に、デザイナーや設計者などの作り手に

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属する人々を集め、ワークショップを実施した。

 ワークショップは、一方向的な知識伝達のスタイルとは異なり、

参加者らが参加・体験することによって、双方向的な効果を得る ことが出来る方法とされている(注 1)。また、近年まちづくりや 製品開発などのさまざまな場面で、意見交換や合意形成にワーク ショップは、採用されている。調査結果の考察といった行為は、実 践的に活躍する作り手にとっては、馴染みがなく、敬遠されること が予想される。したがって、複数人で話し合いながら行えるワーク ショップは、1人での考察よりも、さまざまな刺激を得ることがで きることから、有効な手段であると判断した。

5.3.1 グッドデザイン賞受賞作品を対象としたワークショップ

 第4章のグッドデザイン賞受賞作品を対象とした評価調査の結果 のうち、アイボを除く4製品の結果を題材とし、ワークショップを 実施した。ワークショップは、複数人で行うことから時間が制限さ れるため、参加者の拘束時間や討論を行う時間を考慮し、4製品の 結果を題材とした。また、アイボ以外の4製品は、後継機が現在も 量販店などで、一般的に販売されており、より身近な製品であると いえる。しかし、アイボについては、生産が中止されたことによっ て、現在では一般的な量販店などで購入することが難しく、一般的 な製品とはいえない製品になっている。したがって、アイボの結果 をワークショップの題材からは除くことにした。

 本ワークショップは、東京ミッドタウンタワー5階デザインハブ 内にある、リエゾンセンターにて、2007 年3月8日(木)に実施 した。参加資格を実践的に活躍するデザイナーとしたことから、参 加者の仕事に支障を及ぼさないことに配慮し、開始時刻を参加が行 いやすい平日の 18 時からに設定した。東京で開催したことにより、

デザイナーを集めやすい状況に恵まれたため、検討する調査結果に あわせ、主に参加者をプロダクトデザイナーとした。参加者は、フ リーランスデザイナーが 9 名、インハウスデザイナーが 6 名の計 15 名である。フリーランスデザイナーの内 2 名は、グッドデザイ

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ン賞の審査員である。この 15 名に加え、九州大学ユーザーサイエ ンス機構において、本研究プロジェクトに関わる 6 名(内 1 名は、

グッドデザイン賞の審査員)が参加者となり、計 21 名で 7 名ずつ の 3 グループにわかれ、グループごとに活動を実施した。

 参加者にはまず、本研究の概要を説明し理解を得た上で、題材と したグッドデザイン賞受賞作品を対象とした調査についての概要を 説明した(図 5-1)。各グループでの議論のために、題材とした4 製品を、「バタフライスツール」「キッコーマンの醤油注し」のペア、

「斜めドラム洗濯機」「液晶テレビ “ アクオス ”」のペアに分け、そ れぞれのペアに対し 45 から 50 分の話し合いの時間を設けた。各 評価の対象で、作り手がかかわる評価のズレがみられた各指標をと りあげ、評価のズレがみられた要因について考察を行った。

 各グループのテーブルには、課題にした結果をグラフで表した模 造紙を事前に用意した。各参加者は、評価のズレがみられたそれぞ れの結果について考察を行い、各自の考察をポストイットに書き出 し、模造紙に貼り付けた。貼り付けられた考察に対し、各グループ のファシリテーターがそれぞれの考察に至った理由を尋ね、グルー プ内での議論を重ねた。グループ活動に入る前には、グループ内で 闊達な意見交換が行えるよう、まず他人の意見を否定することは避 け、他人の意見を十分に理解した上で、自分の意見述べることをルー ルとして、参加者に認識させた。

 各グループでの議論の後には、模造紙に貼りだされた内容をもと にグループごとの発表を行い、各グループの発表を聞き終わった後 には、グループごとの考察の違いなどを取り上げ、全体で各グルー プの考察に対しての討論を行った。当日のタイムスケジュールは、

図 5-2 に示す。

 考察を行いやすくするよう、参加者には題材となっている評価の ズレのグラフや対象となっている製品を調査した際に評価者に伝え た情報を、資料として渡した。評価のズレの考察のために参加者に 知らせた情報については、図 5-3-1 および図 5-3-2 に示す。

 作り手は、日常的にグラフを目にする機会が少ないと考えられた

図 5-1 調査概要の説明に用いた資料 被験者:デザイナー(212名)メーカー(42名)エンドユーザー(489名)会場:東京ビックサイト(東京)2006年8月23日(水)~26日(土)東京藝術大学(東京)2006年10月3日(火)~13日(金)国際デザインセンター(名古屋)2006年11月17日(金)~26日(日)福岡アジア美術館(福岡)2007年1月18日(木)~23日(火) ■グッドデザイン賞についてあなたのご意見をお尋ねします。9.グッドデザイン賞についてどの程度ご存知ですか。当てはまる項目を1つだけ
図 5-4 SAJICA調査の概要を説明した資料
図 5-6-3 課題考察のために提示した資料★作り手送り手受け手作り手送り手受け手思うやや思うあまり思わない思わないX1.1細かい部分まで神経が行き届いている X1.2完成度が高い X1.3優れた美しさがあるX2.1様々な使い方に対応できるX2.2多様な文化に対応できるX4.1形態にオリジナリティがあるX4.2素材にオリジナリティがある X4.3今までに無い使い心地を感じる X4.4今までに無いライフスタイルの提供・提案を感じるX5価格が適切であるX6.1親しみを感じるX7.1使う人の心や体に快適さを与える
図 5-6-4 課題考察のために提示した資料 全体 作り手 送り手 受け手109名16名7名86名X1.1細かい部分まで神経が行き届いている3.002.873.293.00X1.2完成度が高い3.002.882.673.05X1.3優れた美しさがある2.962.632.573.06X2.1様々な使い方に対応できる2.512.312.142.58X2.2多様な文化に対応できる2.822.382.712.92X3.1見た目が世代に関係なく受け入れられる2.932.732.143.04X3.2自分のライフスタイル
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