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日本消化器病学会慢性膵炎診療ガイドライン作成 評価委員会 は, 慢性膵炎診療ガイドラインの内容については責任を負うが, 実 際の臨床行為の結果については各担当医が負うべきである. 慢性膵炎診療ガイドラインの内容は, 一般論として臨床現場の意 思決定を支援するものであり, 医療訴訟等の資料となるもので

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日本消化器病学会

慢性膵炎診療ガイドライン 2015(改訂第 2 版)

Evidence-based Clinical Practice Guidelines for Chronic Pancreatitis 2015(2nd Edition)

© The Japanese Society of Gastroenterology, 2015

(2)

日本消化器病学会慢性膵炎診療ガイドライン作成・評価委員会

は,慢性膵炎診療ガイドラインの内容については責任を負うが,実

際の臨床行為の結果については各担当医が負うべきである.

慢性膵炎診療ガイドラインの内容は,一般論として臨床現場の意

思決定を支援するものであり,医療訴訟等の資料となるものではな

い.

日本消化器病学会 2015 年 4 月 1 日

© The Japanese Society of Gastroenterology, 2015

(3)
(4)

日本消化器病学会は,2005 年に当時の理事長であった跡見

裕先生の発議によって,Evidence-Based Medicine

(EBM)の手法に則ったガイドラインの作成を行うことを決定し,3 年余をかけ,

2009〜2010 年に消化器 6 疾患のガイドライン(第一次ガイドライン)を完成・上梓した.6 疾患

とは,胃食道逆流症(GERD),消化性潰瘍,肝硬変,クローン病,胆石症,慢性膵炎であり,

それまでガイドラインが作成されていない疾患で,日常臨床で診療する機会の多いものを重視

し,財団評議員に行ったアンケート調査で多数意見となったものが選ばれた.2006 年の第 92 回

日本消化器病学会総会の際に第 1 回ガイドライン委員会が開催され,文献検索範囲,文献採用

基準,エビデンスレベル,推奨グレードなど EBM 手法の統一性についての合意と,クリニカル

クエスチョン(CQ)の設定など基本的な枠組みが合意され,作成作業が開始された.6 疾患のガ

イドライン作成では,推奨の強さのグレード決定に Minds(Medical Information Network

Dis-tribution Service)システムを一部改変し,より臨床に則した日本消化器病学会独自の基準を用い

た.また,ガイドライン作成における利益相反(Conflict of Interest:COI)が当時,社会的問題

となっており,EBM 専門家から提案された基準に基づいてガイドライン委員の COI を公開し

た.菅野健太郎前理事長のリーダーシップのもとに学会をあげての事業として行われたガイド

ライン作成は先進的な取り組みであり,わが国の消化器診療の方向性を学会主導で示したもの

として大きな価値があったと評価できる.日本消化器病学会は,その後,6 疾患について「患者

さんと家族のためのガイドブック」も編集・出版し,治療を受ける側の目線で解説書を作成す

ることによって,一般市民がこれら消化器の代表的疾患への理解を深めるうえで役立ったと考

えている.

第一次ガイドライン作成を通じて,日本消化器病学会は消化器関連の Common Disease に関

するガイドラインの必要性と重要性の認識を強め,さらに整備する必要度の高い疾患について

評議員にアンケートを行い,2011 年から機能性ディスペプシア(FD),過敏性腸症候群(IBS),

大腸ポリープ,NAFLD/NASH の 4 疾患についても,診療ガイドライン(第二次ガイドライン)

の作成を開始した.一方では,これら 4 疾患の診療ガイドラインの刊行が予定された 2014 年に

は,第一次ガイドラインも作成後 5 年が経過するため,いわゆる Sunset Rule(日没ルール:作成

から長期経過したガイドラインは妥当性が担保できないため,退場させる取り決め)に従い,先

行 6 疾患のガイドラインの改訂作業も併せて行うこととなった.2011 年 11 月 9 日に 6 疾患の第

1 回改訂委員会が開催され,改訂の基本方針が確認された.改訂版では第二次ガイドライン作

成と同様,国際的主流となっている GRADE(The Grading of Recommendations Assessment,

Development and Evaluation)システムの考え方を取り入れて推奨の強さを決定することとした.

このシステムは,単にエビデンスに基づいて推奨の強さを決めるのではなく,患者さんへの有

益性,費用まで考慮し,たとえ比較対照試験であってもその内容を精査・吟味してエビデンス

レベルを決定するなど,アウトカムにとって有用かどうかを重視する立場に立っており,患者

さんの立場により則したガイドライン作成に有用と考えられた.また,完成後に改訂版は Journal

of Gastroenterology

に掲載することが予定されており,世界的趨勢である GRADE システムの考

え方を取り入れることで国際的ガイドラインとしての位置づけを強化する狙いもあった.

日本消化器病学会ガイドラインの刊行にあたって

© The Japanese Society of Gastroenterology, 2015

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日本消化器病学会ガイドラインの刊行にあたって

改訂作業の進捗には疾患によって多少差がみられるが,2015 年 4 月から順次完成し,秋まで

に 6 疾患すべての改訂作業が完了する予定である.最新のエビデンスを網羅した改訂版は,初

版に比べて内容的により充実し,記載の精度も高まるものと期待している.

最後に,ガイドライン委員会の前担当理事として多大なご尽力をいただいた木下芳一理事,

渡辺 守理事,ならびに多くの時間と労力を惜しまず改訂作業を遂行された作成委員会ならびに

評価委員会の諸先生,刊行にあたり丁寧なご支援をいただいた南江堂出版部の皆様に心より御

礼を申し上げたい.

2015 年 4 月 日本消化器病学会理事長

下瀬川 徹

(6)

委員長

木下 芳一

島根大学第二内科

副委員長

渡辺  守

東京医科歯科大学消化器内科

委員

荒川 哲男

大阪市立大学消化器内科学

上野 文昭

大船中央病院

西原 利治

高知大学消化器内科

坂本 長逸

日本医科大学消化器内科学

下瀬川 徹

東北大学消化器病態学

白鳥 敬子

東京女子医科大学消化器内科

杉原 健一

光仁会 第一病院

田妻  進

広島大学総合診療科

田中 信治

広島大学内視鏡診療科

坪内 博仁

鹿児島市立病院

中山 健夫

京都大学健康情報学

二村 雄次

愛知県がんセンター

野口 善令

名古屋第二赤十字病院総合内科

福井  博

奈良県立医科大学第三内科

福土  審

東北大学大学院行動医学分野・東北大学病院心療内科

本郷 道夫

公立黒川病院

松井 敏幸

福岡大学筑紫病院消化器科

三輪 洋人

兵庫医科大学内科学消化管科

森實 敏夫

日本医療機能評価機構

山口直比古

日本医学図書館協会個人会員

吉田 雅博

化学療法研究所附属病院人工透析・一般外科

芳野 純治

松柏会 テルミナセントラルクリニック

渡辺 純夫

順天堂大学消化器内科

オブザーバー

菅野健太郎

自治医科大学

統括委員会一覧

© The Japanese Society of Gastroenterology, 2015

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協力学会:日本膵臓学会

作成委員会

委員長

下瀬川 徹

東北大学消化器病態学

副委員長

伊藤 鉄英

九州大学病態制御内科

委員

石黒  洋

名古屋大学総合保健体育科学センター保健科学部

大原 弘隆

名古屋市立大学大学院地域医療教育学

神澤 輝実

がん・感染症センター都立駒込病院消化器内科

阪上 順一

京都府立医科大学消化器内科

佐田 尚宏

自治医科大学消化器・一般外科

竹山 宜典

近畿大学外科学肝胆膵部門

廣田 衛久

東北大学消化器病態学

宮川 宏之

札幌厚生病院第 2 消化器科

オブザーバー

片岡 慶正

大津市民病院

評価委員会

委員長

白鳥 敬子

東京女子医科大学消化器内科

副委員長

杉山 政則

杏林大学消化器・一般外科

委員

岡崎 和一

関西医科大学内科学第三講座

川  茂幸

信州大学総合健康安全センター健康教育学

丹藤 雄介

弘前大学大学院保健学研究科

作成協力者 五十嵐 久人 九州大学病院臨床教育研修センター 李   倫學 九州大学病態制御内科 藤山   隆 九州大学病態制御内科 肱岡  真之 九州大学病態制御内科 植田 圭二郎 九州大学病態制御内科 立花  雄一 九州大学病態制御内科 十亀  義生 京都府立医科大学消化器内科 保田  宏明 京都府立医科大学消化器内科 加藤  隆介 京都府立医科大学消化器内科

慢性膵炎診療ガイドライン委員会

© The Japanese Society of Gastroenterology, 2015

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1.改訂の目的

日本消化器病学会は 2009〜2010 年に消化器 6 疾患に関する診療ガイドラインを作成し,その

後,市民向けガイドブックも作成し刊行した.6 疾患とは,胃食道逆流症(GERD),消化性潰

瘍,肝硬変,クローン病,胆石症,慢性膵炎であり,慢性膵炎診療ガイドラインの初版出版は

2009 年 10 月 25 日であった.日本消化器病学会は対象疾患を拡大し,2011 年より機能性ディス

ペプシア(FD),過敏性腸症候群(IBS),大腸ポリープ,NAFLD/NASH の 4 疾患の診療ガイド

ライン作成が新たに開始された.これら 4 疾患の診療ガイドラインの刊行が予定された 2014 年

には,先行 6 疾患のガイドラインも作成後 5 年が経過することになるため,併せて改訂作業を

行うこととなった.

初版の慢性膵炎診療ガイドラインは 2001 年に日本膵臓学会が作成した慢性膵炎臨床診断基準

に基づいて作成されたが,この診療ガイドラインが発刊された 2009 年には,早期慢性膵炎の診

断基準を含む慢性膵炎臨床診断基準の改訂が行われた.したがって,診療ガイドラインの今回

の改訂では,慢性膵炎臨床診断基準 2009 に基づいて慢性膵炎の早期病変,診断にも言及し,ま

た,2009 年以降に本邦で使用可能となった高力価リパーゼ製剤や ESWL の保険適用,新規糖尿

病治療薬,2013 年のアトランタ分類改訂による膵仮性囊胞の定義と治療アプローチなどを含み,

初版以降の新たなエビデンスを吟味・採用して診療ガイドラインとしての精度を高めることを

目的とした.

2.改訂の手順

1)診療ガイドライン改訂委員会の設立

2011 年 7 月 1 日に日本消化器病学会ガイドライン委員会の第 1 回統括委員会が開催され,新

たな 4 疾患のガイドライン作成と先行 6 疾患の改訂が行われることが決定された.これを受け,

2011 年 11 月 9 日に先行 6 疾患の第 1 回改訂委員会が開催され,改訂の基本方針が確認された.

また,初版作成時の作成委員長および評価委員長は原則留任としたが,改訂委員会および評価

委員会の構成員には次回改訂を考慮して一部若手を採用することが決定された.この決定によ

り,初版作成委員会および評価委員会の構成員を見直し,新しい作成委員会と評価委員会が組

織された.2012 年 9 月 6 日に第 1 回[改訂]慢性膵炎作成委員会が開催された.

2)作成基準

一般臨床医を対象とした.診断基準には,慢性膵炎臨床診断基準 2009 を新たに採用した.改

訂の基本姿勢として,初版の内容を尊重しつつ,問題点・課題を整理し,CQ の見直し,削除

と追加を行うこととした.初版以降のエビデンスを収集し,新しい治療法についても言及する

よう努めた.また,改訂版では,世界的趨勢となっている GRADE システムの考え方を参考と

した「推奨の強さ」を採用した.

3)作成方法

初版の構成を踏襲し,大項目として,「1.診断」,「2.病期診断」,「3.治療」,「4.予後」

を設け,各大項目中の小項目立ても初版と同様とした.

慢性膵炎診療ガイドライン作成の手順

© The Japanese Society of Gastroenterology, 2015

(9)

慢性膵炎診療ガイドライン作成の手順

各項目内の構成要素については,以下の順に記載することで統一した.「1.CQ」,「2.ス

テートメント(推奨の強さ,エビデンスレベル)」,「3.解説」,「4.文献(文献の掲載は CQ

毎に行う)」.

保険適用の有無については別記せず,解説のなかで記述することとした.

初版 CQ の文言を吟味し,GRADE システムの推奨の強さに対応するよう変更した.また,

初版 CQ を一部変更,削除し,一部追加した.その結果,CQ は初版では総数 61 であった

が,改訂第 2 版では 65 となった.

エビデンス収集には,英文論文は MEDLINE,Cochrane Library を用い,日本語論文には

医学中央雑誌を用いた.新規 CQ については 1983 年〜2012 年 6 月末,変更 CQ についても

同期間を文献検索の対象期間とし,初版と同じ CQ については 2008 年〜2012 年 6 月末を文

献検索の対象期間とした.また,2012 年 7 月以降の重要かつ新しいエビデンスについては,

検索期間外論文として文献に掲載した.

網羅的に検索された論文から重要なものを吟味,抽出し,採用論文すべての構造化抄録を

作成した.

論文を研究デザインによって分類し,ランダム化比較試験(RCT)についてはバイアスリス

ク評価を行い,最終的なエビデンスの質を A,B,C,D の 4 段階で表した.

推奨の強さの決定は,作成委員全員のオンライン投票によって行った.投票にあたっては,

各委員が作成したステートメント,推奨の強さ,エビデンスレベルならびに採用論文の構

造化抄録を全委員に配布して情報を共有した.そのうえで,投票を行い 70%以上の賛成を

もって最終決定とした.70%に満たない場合,合意できない理由をコメントとしてオンラ

イン上で共有し,協議後に投票を繰り返した.最終合意率を記載した.

第 2 回[改訂]慢性膵炎作成委員会を 2013 年 12 月 3 日に開催し,作業進捗状況,作業上の

課題,推奨の強さ決定の方法とその時期,図・表の作成について討議した.第 3 回[改訂]

慢性膵炎作成委員会は 2014 年 7 月 30 日に開催され,推奨の強さ決定の投票結果と各推奨

の強さの協議および確認,図・表の作成,今後の作業について話し合われた.

評価委員会には,まず,CQ 選定後に CQ に関する評価をいただいた.また,推奨の強さ決

定後にも最終草案を評価委員長に上申し,評価委員のコメントを集約し,評価委員長から

フィードバックしていただいた.

2014 年 12 月 10 日〜24 日まで,日本消化器病学会のホームページ上にてパブリックコメン

トを募集した.

4)今後の改訂

本ガイドラインは,新たなエビデンスの出現,新しい治療薬や治療法の出現,日常診療の変

化に合わせて 4〜5 年毎に改訂を行う予定である.また,特に重要な変更が必要な内容について

は,Annual Review 版として日本消化器病学会のホームページ上でアナウンスする予定である.

3.使用法

本ガイドラインは,慢性膵炎の診断,治療,予後に関する一般的な内容を記載したのもので,

臨床現場での意志決定を支援するものである.日本消化器病学会慢性膵炎診療ガイドライン作

成・評価委員会のコンセンサスに基づいて作成し,記述内容については責任を負うが,個々の

治療結果についての責任は治療担当医に帰属すべきもので,日本消化器病学会および本ガイド

ライン作成・評価委員会は責任を負わない.また,本ガイドラインの内容は,医療訴訟などの

© The Japanese Society of Gastroenterology, 2015

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資料となるものではない.

4.診療アルゴリズムの構成

本ガイドラインでは,以下の診療アルゴリズムをフローチャートで示した.

慢性膵炎臨床診断基準 2009(作成:日本消化器病学会,日本膵臓学会,厚生労働省難治性

膵疾患に関する調査研究班)による慢性膵炎診断のアルゴリズム(フローチャート 1)

慢性膵炎患者の治療アルゴリズム(フローチャート 2)

慢性膵炎の内科的保存的治療のアルゴリズム(フローチャート 3)

慢性膵炎の外科的治療のアルゴリズム(フローチャート 4)

2015 年 4 月 日本消化器病学会慢性膵炎診療ガイドライン作成委員長

下瀬川 徹

(11)

1.エビデンス収集

初版で行われた系統的検索によって得られた論文に加え,今回新たに以下の作業を行ってエ

ビデンスを収集した.

それぞれのクリニカルクエスチョン(CQ)からキーワードを抽出し,学術論文を収集した.

データベースは,英文論文は MEDLINE,Cochrane Library を用いて,日本語論文は医学中央雑

誌を用いた.新規 CQ については 1983 年〜2012 年 6 月末,変更 CQ についても同期間を文献検

索の対象期間とし,初版と同じ CQ については 2008 年〜2012 年 6 月末を文献検索の対象期間と

した.また,2012 年 7 月以降の重要かつ新しいエビデンスについては,検索期間外論文として

文献に掲載した.各キーワードおよび検索式は日本消化器病学会ホームページに掲載する予定

である.

収集した論文のうち,ヒトまたは human に対して行われた臨床研究を採用し,動物実験や遺

伝子研究に関する論文は除外した.患者データに基づかない専門家個人の意見は参考にしたが,

エビデンスとしては用いなかった.

2.エビデンス総体の評価方法

1)各論文の評価:構造化抄録の作成

各論文に対して,研究デザイン

1)

表 1

)を含め,論文情報を要約した構造化抄録を作成した.

さらに RCT や観察研究に対して,Cochrane Handbook

2)

や Minds 診療ガイドライン作成の手

引き

1)

のチェックリストを参考にしてバイアスのリスクを判定した(

表 2

).総体としてのエビ

デ ン ス 評 価 は ,GRADE(The Grading of Recommendations Assessment, Development and

Evaluation)システム

3〜22)

の考え方を参考にして評価し,CQ 各項目に対する総体としてのエビ

デンスの質を決定し表記した(

表 3

).

2)アウトカムごと,研究デザインごとの蓄積された複数論文の総合評価

(1)初期評価:各研究デザイン群の評価

本ガイドライン作成方法

表 1 研究デザイン

各文献へは下記 9 種類の「研究デザイン」を付記した.  (1)メタ (システマティックレビュー /RCT のメタアナリシス)  (2)ランダム (ランダム化比較試験)  (3)非ランダム (非ランダム化比較試験)  (4)コホート (分析疫学的研究(コホート研究))  (5)ケースコントロール (分析疫学的研究(症例対照研究))  (6)横断 (分析疫学的研究(横断研究))  (7)ケースシリーズ (記述研究(症例報告やケース・シリーズ))  (8)ガイドライン (診療ガイドライン)  (9)(記載なし) (患者データに基づかない,専門委員会や専門家個人の意見は, 参考にしたが,エビデンスとしては用いないこととした)

(12)

メタ群,ランダム群=「初期評価 A」

非ランダム群,コホート群,ケースコントロール群,横断群=「初期評価 C」

ケースシリーズ群=「初期評価 D」

(2)エビデンスレベルを下げる要因の有無の評価

研究の質にバイアスリスクがある

結果に非一貫性がある

エビデンスの非直接性がある

データが不精確である

出版バイアスの可能性が高い

(3)エビデンスレベルを上げる要因の有無の評価

大きな効果があり,交絡因子がない

用量–反応勾配がある

可能性のある交絡因子が,真の効果をより弱めている

(4)総合評価:最終的なエビデンスの質「A,B,C,D」を評価判定した.

表 2 バイアスリスク評価項目

選択バイアス (1)ランダム系列生成 詳細に記載されている か (2)コンシールメント 組み入れる患者の隠蔽化がなされているか 実行バイアス (3)盲検化 検出バイアス (4)盲検化 症例減少バイアス (5)ITT 解析 ITT 解析の原則を掲げて,追跡からの脱落者に対してその原則を遵守 しているか (6)アウトカム報告バイアス  (解析における採用および除外データを含めて) (7)その他のバイアス 告・研究計画書に記載されているにもかかわらず,報 告されていないアウトカムがないか

表 3 エビデンスの質

A:質の高いエビデンス(High)    真の効果がその効果推定値に近似していると確信できる. B:中程度の質のエビデンス(Moderate)    効果の推定値が中程度信頼できる.    真の効果は,効果の効果推定値におおよそ近いが,それが実質的に異なる可能性もある. C:質の低いエビデンス(Low)    効果推定値に対する信頼は限定的である.    真の効果は,効果の推定値と,実質的に異なるかもしれない. D:非常に質の低いエビデンス(Very Low)    効果推定値がほとんど信頼できない.    真の効果は,効果の推定値と実質的におおよそ異なりそうである.

(13)

本ガイドライン作成方法

3)エビデンスの質の定義方法

エビデンスレベルは海外と日本で別の記載とせずに 1 つとした.またエビデンスは複数文献

を統合・作成した統合レベル(body of evidence)とし,

表 3

の A〜D で表記した.

4)メタアナリシス

システマティックレビューを行い,必要に応じてメタアナリシスを引用し,本文中に記載し

た.

また,1 つ 1 つのエビデンスに「保険適用あり」の記載はせず,保険適用不可の場合に,解

説の中で明記した.

3.推奨の強さの決定

以上の作業によって得られた結果をもとに,治療の推奨文章の案を作成提示した.次に,推

奨の強さを決めるためにコンセンサス会議を開催した.

推奨の強さは,①エビデンスの確かさ,②患者の希望,③益と害,④コスト評価,の 4 項目

を評価項目とした.コンセンサス形成方法は,Delphi 変法,nominal group technique(NGT)法

に準じて投票を用い,70%以上の賛成をもって決定とした.1 回目で,結論が集約できないとき

は,各結果を公表し,日本の医療状況を加味して協議の上,投票を繰り返した.作成委員会は,

この集計結果を総合して評価し,

表 4

に示す推奨の強さを決定し,本文中の囲み内に明瞭に表

記した.

推奨の強さは「1:強い推奨」,「2:弱い推奨」の 2 通りであるが,「強く推奨する」や「弱く

推奨する」という文言は馴染まないため,下記のとおり表記した.また,投票結果を「合意率」

として推奨の強さの下段に括弧書きで記載した.

4.本ガイドラインの対象

1)利用対象:一般臨床医

2)診療対象:成人の患者を対象とした.小児は対象外とした.

5.改訂について

本ガイドラインは改訂第 2 版であり,今後も日本消化器病学会ガイドライン委員会を中心と

して継続的な改訂を予定している.

6.作成費用について

本ガイドラインの作成はすべて日本消化器病学会が費用を負担しており,他企業からの資金

提供はない.

表 4 推奨の強さ

推奨度 1(強い推奨) 実施する ことを推奨する 実施しない ことを推奨する 2(弱い推奨) 実施する ことを提案する 実施しない ことを提案する

(14)

7.利益相反について

1)日本消化器病学会ガイドライン委員会では,ガイドライン統括委員・各ガイドライン作

成・評価委員と企業との経済的な関係につき,各委員から利益相反状況の申告を得た(詳細は

「利益相反に関して」に記す).

2)本ガイドラインでは,利益相反への対応として,協力学会の参加によって意見の偏りを防

ぎ,さらに委員による投票によって公平性を担保するように努めた.また,出版前のパブリッ

クコメントを学会員から受け付けることで幅広い意見を収集した.

8.ガイドライン普及と活用促進のための工夫

1)フローチャートを提示して,利用者の利便性を高めた.

2)書籍として出版するとともに,インターネット掲載を行う予定である.

・日本消化器病学会ホームページ

・日本医療機能評価機構 EBM 医療情報事業(Minds)ホームページ

■引用文献

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(15)

本ガイドライン作成方法

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22) Guyatt GH, Oxman AD, Santesso N, et al. GRADE guidelines 12. Preparing Summary of Findings tables-binary outcomes. J Clin Epidemiol2013; 66: 158-172

(16)

日本消化器病学会ガイドライン委員会では,ガイドライン統括委員と企業との経済的な関係につき,下記の基準で, 各委員から利益相反状況の申告を得た. 慢性膵炎診療ガイドライン作成・評価委員には診療ガイドライン対象疾患に関連する企業との経済的な関係につき, 下記の基準で,各委員から利益相反状況の申告を得た. 申告された企業名を下記に示す(対象期間は 2011 年 1 月 1 日から 2014 年 12 月 31 日).企業名は 2015 年 3 月現在の 名称とした.非営利団体は含まれない. 1.委員または委員の配偶者,一親等内の親族,または収入・財産を共有する者が個人として何らかの報酬を得た企 業・団体 役員・顧問職(100 万円以上),株(100 万円以上または当該株式の 5%以上保有),特許権使用料(100 万円以上) 2.委員が個人として何らかの報酬を得た企業・団体 講演料(100 万円以上),原稿料(100 万円以上),その他の報酬(5 万円以上) 3.委員の所属部門と産学連携を行っている企業・団体 研究費(200 万円以上),寄付金(200 万円以上),寄付講座 ※統括委員会においては日本消化器病学会診療ガイドラインに関係した企業・団体,作成・評価委員においては診 療ガイドライン対象疾患に関係した企業・団体の申告を求めた 統括委員および作成・評価委員はすべて,診療ガイドラインの内容と作成法について,医療・医学の専門家として科 学的・医学的な公正さを保証し,患者のアウトカム,Quality of life の向上を第一として作業を行った. 利益相反の扱いは,国内外で議論が進行中であり,今後,適宜,方針・様式を見直すものである. 表 1 統括委員と企業との経済的な関係(五十音順) 1.エーザイ株式会社,大塚製薬株式会社 2.味の素製薬株式会社,アステラス製薬株式会社,アストラゼネカ株式会社,アッヴィ合同会社,アボットジャパ ン株式会社,株式会社医学書院,エーザイ株式会社,MSD 株式会社,大塚製薬株式会社,オリンパスメディカル システムズ株式会社,杏林製薬株式会社,ゼリア新薬工業株式会社,第一三共株式会社,大日本住友製薬株式会 社,大鵬薬品工業株式会社,武田薬品工業株式会社,田辺三菱製薬株式会社,中外製薬株式会社,ファイザー株 式会社 3.旭化成メディカル株式会社,味の素製薬株式会社,あすか製薬株式会社,アステラス製薬株式会社,アストラゼ ネカ株式会社,アッヴィ合同会社,アボットジャパン株式会社,エーザイ株式会社,MSD 株式会社,大塚製薬株 式会社,小野薬品工業株式会社,花王株式会社,株式会社カン研究所,杏林製薬株式会社,協和発酵キリン株式 会社,グラクソ・スミスクライン株式会社,株式会社 JIMRO,株式会社ジーンケア研究所,ゼリア新薬工業株式 会社,センチュリーメディカル株式会社,第一三共株式会社,大日本住友製薬株式会社,大鵬薬品工業株式会社, 武田薬品工業株式会社,田辺三菱製薬株式会社,中外製薬株式会社,株式会社ツムラ,東レ株式会社,ファイザー 株式会社,ブリストル・マイヤーズ株式会社,株式会社ミノファーゲン製薬,持田製薬株式会社,株式会社ヤク ルト本社,ユーシービージャパン株式会社 表 2 作成・評価委員と企業との経済的な関係(五十音順) 1.なし 2.なし 3.アステラス製薬株式会社,アストラゼネカ株式会社,アスビオファーマ株式会社,エーザイ株式会社,MSD 株 式会社,大塚製薬株式会社,第一三共株式会社,武田薬品工業株式会社,田辺三菱製薬株式会社,中外製薬株式 会社

利益相反に関して

© The Japanese Society of Gastroenterology, 2015

(17)

第 1 章 診断 

(1)問診・診察

(2)生化学検査

(3)画像検査

(4)機能検査

(5)病理検査

(6)鑑別診断

(7)遺伝子検索 

第 2 章 病期診断

(1)病期診断の必要性

(2)臨床所見

(3)生化学検査

(4)画像検査

(5)機能検査(外分泌)

(6)機能検査(内分泌)

(7)スコア化 

第 3 章 治療 

(1)治療方針

(2)生活指導

(3)疼痛対策

(4)外分泌不全の治療

(5)糖尿病の治療

(6)合併症の治療

第 4 章 予後

(1)病態の進行阻止

(2)膵癌・その他の癌の危険性

(3)生命予後

本ガイドラインの構成

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(18)

【フローチャート 1:診断】

フローチャート

慢性膵炎を疑う・鑑別を要する 2∼3ヵ月の経過観察 画像検査(組織所見) CQ1-4∼8(CQ1-10) 病歴聴取・身体診察 CQ1-1 生化学検査 CQ1-2 機能検査(BT-PABA) CQ1-9 確診所見 準確診所見 早期所見 所見なし US,CT,EUS, ERCP 組織所見 US,CT,MRCP, EUS,ERCP 組織所見 EUS,ERCP 評価項目 ①反復する上腹部痛発作 ②血中・尿中膵酵素異常 ③膵外分泌障害 ④1 日 80g 以上の持続する  飲酒歴 評価 ①∼③のうち 2つ以上 ①∼④のうち2つ以上 ①∼④のうち2つ以上 あり なし あり なし なし あり あり なし 他疾患の除外 他疾患を考慮 診断 確診 準確診 早期 生 病 性 慢       2 1 Q C 査 検 学 化 生 1 -1 Q C体診察 身 ・ 取 聴 歴 る す 要 を 別 鑑 ・ う 疑 を 炎 膵       4 1 Q C ) 見 所 織 組 ( 査 検 像 画 過 経 の 月 ヵ 3 ∼ 2       ) 0 1 1 Q C ( 8 4 察 観 過             膵 ③血 ②反 ①価 評 能 機 生       害 障 泌 分 外 膵中・尿中膵酵素異常 血復する上腹部痛発作 反項目 価 見 所 織 組RCP ES,CT, U 診 確 9 -1 Q CABA) P -T B ( 査 検 能 2 -1 Q C 査 検 学 化 生       2 ∼ ① 上 以 つ 2③のうち ∼ ① U E 見 所 織 組US,ERCP ES,CT,MRCP, U 見 , S U E 早 見 所 診 確 準 見 所 4 -1 Q C ) 見 所 織 組 ( 査 検 像 画       上 以 つ 2④のうち ∼ ① 上 以 つ 2④のうち ∼ P C R E , S U し な 見 所 見 所 期 早 ) 0 1 -1 Q C ( 8 ∼ 4            飲1 ④ 膵 ③       歴 診 確 断 診 酒 飲日80g以上の持続する 害 障 泌 分 外 膵       以 診 確 準 診       以 外 期 早 他疾患を考慮 除 の 患 疾 他 以      

(19)

フローチャート

【フローチャート 2:治療】

慢性膵炎の診断 〈フローチャート 1〉 膵癌との鑑別診断 CQ1-11 禁煙 CQ3-5 禁酒 CQ3-3 原因があれば除去 アルコール性 非アルコール性 症状あり 無効例 無効例・感染例 無効例 無効例 無効例 無効例 無効例・再発例 腹痛・背部痛 慢性膵炎急性増悪 内科的保存的治療 〈フローチャート 3〉 内科的保存的治療 CQ3-33 内科的保存的治療 (内視鏡的膵管ステント) CQ3-38 症状なし 経過観察 内・外分泌補充療法 CQ3-21∼32 内視鏡的治療 /ESWL による治療 CQ3-12,13 (+内・外分泌補充療法) CQ3-21∼32 外科的治療 〈フローチャート 4〉 (+内・外分泌補充療法) CQ3-21∼32 急性膵炎に準じた 内科的保存的治療 合併症 膵仮性囊胞 内視鏡的ドレナージ CQ3-34,35 外科的治療 (腹腔鏡下手術) CQ3-37 外科的治療 CQ3-38 外科的治療 CQ3-39 外科的治療CQ3-40 胆道プラスチック ステント挿入 CQ3-39 膵仮性動脈瘤, hemosuccus pancreaticus 動脈瘤塞栓術 CQ3-40 IPF(膵性胸腹水) 胆道狭窄

(20)

【フローチャート 3:内科的保存的治療】

腹痛・背部痛* 内科的保存的治療 禁酒・禁煙を中心とした生活指導を行う CQ3-1,2,3,5 *:慢性膵炎急性増悪の症例に関しては急性膵炎における重症度診断を速やかに施行し,   急性膵炎に準じた治療方針を決定する. **:成分栄養剤による食事療法を考慮してもよい. ***:薬物療法に関しては個々により治療薬の選択,投与量を決定する. 薬物療法・食事療法 薬物療法*** (服薬指導を含む) 食事療法** (栄養指導を含む) 脂肪制限 CQ3-4 蛋白分解酵素阻害薬CQ3-8 消化酵素薬 CQ3-7,22 鎮痛・鎮痙薬・医療用麻薬 CQ3-6,10 その他 CQ3-9,11

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(21)

フローチャート

【フローチャート 4:外科的治療】

:交感神経由来の疼痛にのみ効果が期待できる.麻薬使用の可能性とその危険性を説明   のうえ,治療方針を決定する. **:禁酒を含めた術後の厳格な生活指導が可能な症例のみ適応となる. 悪性腫瘍の存在が否定できない場合には,膵頭部なら PD または PPPD を,膵体尾部 なら郭清を伴う膵体尾部切除を行う. 腹痛のある慢性膵炎症例 内科的保存的治療 内視鏡的治療 /ESWL による治療 無効または再発 CQ3-15 CQ3-16 CQ3-20 CQ3-17 主膵管拡張あり CQ3-16 主膵管拡張なしCQ3-17 膵頭部病変なし 膵管空腸側々 吻合術 膵頭部病変あり Frey 手術 膵頭部病変あり 膵頭十二指腸 切除術などの 膵頭切除術 麻薬使用 膵全摘術** 膵全体病変 尾側膵切除術 病変が尾側に限局 胸腔鏡下内臓 神経切除* CQ3-19 CQ3-19 CQ3-16 CQ3-17

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(22)

第 1 章 診 断

問診・診察

CQ 1-1

病歴聴取,身体診察は慢性膵炎の診断に必要か? ………2

生化学検査

CQ 1-2

血中・尿中膵酵素測定は慢性膵炎の診断に有用か? ………4

画像検査

CQ 1-3

胸・腹部 X 線撮影は慢性膵炎の診断に有用か? ………6

CQ 1-4

腹部超音波検査(US,造影を含む)は慢性膵炎の診断に有用か? ………8

CQ 1-5

コンピュータ断層撮影法(CT)は慢性膵炎の診断に有用か? ………12

CQ 1-6

腹部 MRI は慢性膵炎の診断に有用か? ………15

CQ 1-7

超音波内視鏡検査(EUS)は慢性膵炎の診断に有用か?………18

CQ 1-8

内視鏡的逆行性胆道膵管造影法(ERCP)は慢性膵炎の診断に有用か? ………21

機能検査

CQ 1-9

外分泌機能検査は慢性膵炎の診断に有用か? ………24

病理検査

CQ 1-10 病理組織学的検索は慢性膵炎の診断に必要か? ………26

鑑別診断

CQ 1-11 慢性膵炎と膵癌や膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)との鑑別診断は必要か?

(なぜ必要か?) ………28

遺伝子検索

CQ 1-12 遺伝子検査は慢性膵炎の診断に有用か? ………30

第 2 章 病期診断

病期診断の必要性

CQ 2-1

慢性膵炎の重症度・病期・治療効果の判定は必要か? ………34

臨床所見

CQ 2-2

臨床徴候(所見)による重症度・病期・治療効果の判定は可能か? ………36

生化学検査

CQ 2-3

血中・尿中膵酵素測定による重症度・病期・治療効果の判定は可能か? ………38

画像検査

CQ 2-4

画像検査は重症度・病期・治療効果の判定に有用か? ………39

クリニカルクエスチョン一覧

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(23)

クリニカルクエスチョン一覧

機能検査(外分泌)

CQ 2-5

膵外分泌機能検査は重症度・病期・治療効果の判定に有用か? ………42

CQ 2-6

脂肪便の確認は重症度・病期・治療効果の判定に有用か? ………44

機能検査(内分泌)

CQ 2-7

各種耐糖能検査は重症度・病期・治療効果の判定に有用か? ………46

スコア化

CQ 2-8

スコア化は重症度・病期・治療効果の判定に有用か? ………48

第 3 章 治 療

治療方針

CQ 3-1

成因,活動性(再燃と緩解),重症度,病期は慢性膵炎の治療に重要か?………52

CQ 3-2

生活歴の聴取は慢性膵炎の治療に有用か?(アルコール性と非アルコール性で違い

はあるか?) ………56

生活指導

CQ 3-3

禁酒・断酒指導は慢性膵炎の治療に有用か? ………58

CQ 3-4

食事脂肪制限は慢性膵炎の腹痛に有用か? ………61

CQ 3-5

禁煙は慢性膵炎の治療に有用か? ………63

疼痛対策

CQ 3-6

鎮痛・鎮痙薬は慢性膵炎の腹痛に有効か? ………65

CQ 3-7

消化酵素の大量投与や高力価消化酵素の使用は慢性膵炎の腹痛に有効か? …………68

CQ 3-8

蛋白分解酵素阻害薬は慢性膵炎の腹痛に有効か? ………70

CQ 3-9

膵石(蛋白栓)溶解療法は慢性膵炎の腹痛に有効か? ………72

CQ 3-10 麻薬は慢性膵炎の腹痛治療に必要か? ………74

CQ 3-11 抗うつ薬は慢性膵炎の腹痛に有効か? ………76

CQ 3-12 ESWL を含む内視鏡的治療は慢性膵炎の腹痛に有効か? ………77

CQ 3-13 内視鏡的治療の長期反復は慢性膵炎の腹痛に必要か? ………79

CQ 3-14 EUS/CT ガイド下腹腔神経叢 neurolysis(CPN)は慢性膵炎の腹痛に有効か? ……81

CQ 3-15 外科的治療は内視鏡的治療(ESWL 併用を含む)が無効な腹痛に有効か? …………83

CQ 3-16 膵管ドレナージ術は慢性膵炎の腹痛に有効か? ………85

CQ 3-17 膵切除術は慢性膵炎の腹痛に有効か? ………88

CQ 3-18 膵管ドレナージ術は膵切除術より慢性膵炎の腹痛に有効か? ………92

CQ 3-19 膵全摘術は慢性膵炎の難治性腹痛に有効か? ………94

CQ 3-20 内臓神経切除術は慢性膵炎の腹痛に有効か? ………96

外分泌不全の治療

CQ 3-21 適正カロリーと食事内容の指導は慢性膵炎の治療に有用か? ………98

CQ 3-22 消化酵素薬は慢性膵炎の治療に有用か? ………100

CQ 3-23 胃酸分泌抑制薬は慢性膵炎の治療に必要か? ………103

CQ 3-24 脂溶性ビタミン薬は慢性膵炎の治療に必要か? ………105

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(24)

糖尿病の治療

CQ 3-25 禁酒・食事指導は膵性糖尿病の治療に有用か? ………107

CQ 3-26 経口血糖降下薬は膵性糖尿病の治療に有効か? ………109

CQ 3-27 インスリン抵抗性改善薬は膵性糖尿病の治療に有効か? ………111

CQ 3-28 インスリン治療開始の指標設定は膵性糖尿病の治療に必要か? ………113

CQ 3-29 インクレチン関連薬は膵性糖尿病の治療に有効か? ………115

CQ 3-30 血糖コントロールの目標設定は膵性糖尿病の治療に必要か? ………118

CQ 3-31 HbA1c は膵性糖尿病の治療効果の判定に有用か? ………120

CQ 3-32 糖尿病慢性合併症の診断と治療は膵性糖尿病でも有用か? ………122

合併症の治療

CQ 3-33 保存的治療は慢性膵炎に合併した膵仮性囊胞に有効か? ………124

CQ 3-34 仮性囊胞の大きさはドレナージ治療の適応判断に有用か? ………125

CQ 3-35 内視鏡的または経皮的ドレナージは慢性膵炎に合併した膵仮性囊胞に有効か? …127

CQ 3-36 酢酸オクトレオチドは慢性膵炎に合併した膵仮性囊胞に有効か? ………129

CQ 3-37 外科手術は慢性膵炎に合併した膵仮性囊胞に有効か? ………130

CQ 3-38 膵管ステントは IPF(internal pancreatic fistula,膵性胸腹水)に有効か? …………132

CQ 3-39 胆管ステントは慢性膵炎に合併した胆道狭窄に有効か? ………134

CQ 3-40 IVR (interventional radiology)は慢性膵炎に合併した仮性動脈瘤・hemosuccus

pancreaticus

に有効か? ………136

第 4 章 予 後

病態の進行阻止

CQ 4-1

内視鏡的治療(ESWL の併用を含む)は慢性膵炎の病態進行の阻止に有効か? ……140

CQ 4-2

外科手術は慢性膵炎の病態進行の阻止に有効か? ………142

膵癌・その他の癌の危険性

CQ 4-3

癌のスクリーニング検査は慢性膵炎患者に必要か? ………144

生命予後

CQ 4-4

アルコール性膵炎を予後不良群として扱うことは慢性膵炎の生命予後改善に有用か?

………146

CQ 4-5

長期的経過観察は慢性膵炎患者の生命予後改善に有用か? ………148

索引 ………151

© The Japanese Society of Gastroenterology, 2015

(25)

略語一覧

AVM arteriovenous malformation 動静脈奇形

BMI body mass index

CCK cholecystokinin コレシストキニン

CF cystic fi brosis 膵囊胞線維症

COMT

CPN celiac plexus neurolysis 腹腔神経叢 neurolysis

CPR C-peptide immunoreactivity C- ペプチド

CT computed tomography コンピュータ断層撮影

DP distal pancreatectomy 尾側膵切除術

DPPHR duodenum-preserving pancreas head resection 十二指腸温存膵頭切除術

ENPD endoscopic naso-pancreatic drainage

ERCP endoscopic retrograde cholangiopancreatography 内視鏡的逆行性胆道膵管造影

ERP endoscopic retrograde pancreatography 内視鏡的逆行性膵管造影

ERPD endoscopic retrograde pancreatic duct drainage

ESWL extracorporeal shock wave lithotripsy 体外衝撃波結石破砕療法

EUS endoscopic ultrasonography 超音波内視鏡

FNA fi ne-needle aspiration biopsy 穿刺吸引生検法

GA glycoalbumin グリコアルブミン

GIP glucose-dependent insulinotropic peptide グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド

GLP-1 glucagon-like peptide-1 グルカゴン様ペプチド -1

HOMA-IR homeostasis model assessment of insulin resistance インスリン抵抗性指数

IPF internal pancreatic fi stula 膵性胸腹水

IPMN intraductal papillary mucinous neoplasm 膵管内乳頭粘液性腫瘍

IVR interventional radiology 血管内治療

LPJ longitudinal pancreaticojejunostomy 膵管空腸側々吻合術

MCT medium chain triglyceride 中鎖脂肪酸

MRCP MR cholangiopancreatography 膵胆管 MRI

MRI magnetic resonance imaging 核磁気共鳴画像

NSAIDs non-steroidal anti-infl ammatory drugs 非ステロイド抗炎症薬

OGTT oral glucose tolerance test 経口糖負荷試験

PABA para-aminobenzoic acid パラアミノ安息香酸

PD pancreatoduodenectomy 膵頭十二指腸切除術

PPI proton pump inhibitor プロトンポンプ阻害薬

PPPD pyrolus-preserving pancreatoduodenectomy 全胃幽門輪温存膵頭十二指腸切除術

PS performance status

SEMS self-expandable metallic stent

SNRI serotonin norepinephrine reuptake inhibitors セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬

SSRI selective serotonin reuptake inhibitors 選択的セロトニン再取り込み阻害薬

TP total pancreatectomy 膵全摘術

US ultrasound 超音波検査

WON walled-off necrosis

(26)

1

.診 断

© The Japanese Society of Gastroenterology, 2015

(27)

解説

病歴聴取,身体診察が慢性膵炎の診断に必要であるという根拠を示すエビデンスレベルの高

い論文はない.しかし,慢性膵炎の主要症候の約 80%が腹痛であり,腹痛発作は何らかの誘因

で起こることが多く,特に飲酒は重要な要因である.したがって,飲酒歴の聴取は極めて大切

である.また,家族歴や発病年齢の聴取も必要である.

慢性膵炎では,膵炎発作を起こすことがあり,苦悶様顔貌,前屈位,黄疸などの視診,腸雑

音の聴診(麻痺性イレウスの有無),肺肝境界,腹部鼓音のチェックなどの打診,脱水の有無,

腹水の存在,触診による圧痛・抵抗・腹膜刺激徴候のチェックなどの身体診察は必要である

1, 2)

典型例では腹痛は心窩部から左側腹部にかけて持続的に出現し,しばしば背部あるいは左右の

Clinical Question 1-1

1.診断 ― ❶問診・診察

病歴聴取,身体診察は慢性膵炎の診断に必要か?

CQ 1-1

病歴聴取,身体診察は慢性膵炎の診断に必要か?

ステートメント

推奨の強さ

(合意率)

エビデンス

レベル

病歴聴取,身体診察は慢性膵炎の診断に必要であり,行うことを推

奨する.

(100%)

1

C

表 1 アルコール性と非アルコール性慢性膵炎

の主要症候の比較(オッズ比)

アルコール性のオッズ / 非アルコール性のオッズ* 95% CI 腹痛 1.66 1.44∼1.92 背部痛 1.66 1.47∼1.87 食欲不振 1.83 1.62∼2.07 悪心・嘔吐 1.31 1.16∼1.48 腹部膨満感 1.45 1.28∼1.65 腹部重圧感 1.47 1.30∼1.67 口渇・多飲 2.42 2.05∼2.85 下痢 1.43 1.23∼1.67 黄疸 1.25 1.05∼1.49 腹部圧痛 1.57 1.39∼1.77 腹部抵抗 1.60 1.40∼1.83 (文献 2 より一部改変) *:点推定値,無関連値(null value)= 1.

(28)

①問診・診察

肩に放散する

3, 4)

.腹痛,背部痛,食欲不振,悪心・嘔吐,腹部膨満感,腹部重圧感,口渇・多

尿,下痢,黄疸,腹部圧痛,腹部抵抗は,いずれもアルコール性慢性膵炎で非アルコール性慢

性膵炎より有意に多く認められる(

表 1

1, 2)

以上より,病歴聴取,身体診察は慢性膵炎の診断に必要である.

文献

1) 厚生省特定疾患難治性膵疾患調査研究班(竹内 正班長).慢性膵炎全国集計調査報告 昭和 60 年度研究業 績,1986: p5-41(横断) 2) 野田愛司,伊吹絵里,泉 順子.診断―EBM に基づいたスクリーニングから確定診断へ.臨床医のため の膵炎,大槻 眞(監修),現代医療社,東京,2002: p55-62 3) 朴沢重成,佐伯恵太,宮田直輝.慢性膵炎.Medicina 2011; 48: 1630-1634 4) 山口武人,須藤研太郎,中村和貴,ほか.腹痛の患者をみたときに.内科 2011; 107: 396-400

(29)

解説

慢性膵炎では膵外分泌組織の破壊が進むと,アミラーゼやリパーゼの血中値は低下傾向を示

す.

慢性膵炎における血中アミラーゼ,リパーゼ,トリプシノーゲン異常低値の診断における特異

度は 92〜98%と高いが,感度は 20〜32%と低く

1, 2)

,軽症の慢性膵炎では異常が認められない

3)

慢性膵炎では血中膵型アミラーゼの測定のほうが総アミラーゼより異常低値を示す率が高い

3〜5)

正常な膵臓のエコー像を呈し高アミラーゼ血症が続く 75 例中 20 例が,経過観察後早期の慢性

膵炎であったと報告されている

6)

血中トリプシノーゲン値は,膵外分泌不全例で低値を示し,慢性膵炎の診断に有用とされる

4, 7)

血中エラスターゼ 1 値も,非代償期の慢性膵炎 43 例中 15 例で低下し,重症な膵外分泌不全例

では診断に有用と報告されている

7)

一方,尿中膵型アミラーゼ/尿中クレアチニンは慢性膵炎例で低下することがあるが,その頻

度は必ずしも高くない

8)

.また,尿中の膵酵素値は腎機能の影響を受けるので,注意が必要であ

る.

以上より,血中・尿中膵酵素の測定は,慢性膵炎の診断に有用なことがあるが,感度は高く

ないことを理解する必要がある.

文献

1) Dominguez-Munoz JE, Pieramino O, Buchler M, et al. Ratios of different serum pancreatic enzymes in the diagnosis and staging of chronic pancreatitis. Digestion1993; 54: 231-236(ケースコントロール) 2) Hayakawa T, Kondo T, Shibata T, et al. Enzyme immunoassay for serum pancreatic lipase in the diagnosis

of pancreatic diseases. Gastroenterol Jpn1989; 24: 556-560(ケースコントロール)

3) 日野一成,大海庸世,山本晋一郎,ほか.EIA による血中膵型アミラーゼアイソザイム定量の慢性膵炎診 断における臨床的有用性.膵臓 1989; 4: 59-66(ケースコントロール)

Clinical Question 1-2

1.診断 ― ❷生化学検査

血中・尿中膵酵素測定は慢性膵炎の診断に有用か?

CQ 1-2

血中・尿中膵酵素測定は慢性膵炎の診断に有用か?

ステートメント

推奨の強さ

(合意率)

エビデンス

レベル

血中・尿中膵酵素の測定は,慢性膵炎の診断に有用なことがあり,

行うことを提案する.

(100%)

2

C

(30)

②生化学検査 4) Pezzilli R, Talamini G, Gullo L. Behavior of serum pancreatic enzymes in chronic pancreatitis. Dig Liver

Dis2000; 32: 233-237(ケースコントロール)

5) Ventrucci M, Gullo L, Daniele C, et al. Comparative study of serum pancreatic isoamylase, lipase, and trypsin-like immunoreactivity in pancreatic disease. Digestion1983; 28: 114-121(ケースコントロール) 6) Pezzilli R, Morselli-Labate M, Casadei T, et al. Chronic asymptomatic pancreatic hyperenzymemia is a

benign condition in only half of the cases: a prospective study. Scand J Gastroenterol2009; 44: 888-893 (ケースコントロール)

7) 成瀬 達.診断基準の解説―4.膵酵素.膵臓 2009; 24: 666-670

8) Berk JE, Ayulo JA, Fridhandker L. Value of pancreatic-type isoamylase assay as an index of pancreatic insufficiency. Dig Dis Sci1979; 24: 6-10(ケースコントロール)

(31)

解説

腹部 X 線撮影は非侵襲的で簡便に検査ができ,膵石症の診断が可能である(

図 1

).また,慢

性膵炎の結石の経過観察や結石の出現に対しても,費用対効果から有用である.正面のみの腹

部 X 線では膵石と特定するのが難しい場合もあり,正面と左右斜位の 3 方向の撮影が有用であ

1〜3)

.慢性膵炎における膵石灰化率は 17〜60.8%とされるため腹部 X 線のみで診断可能な症例

はこれより少ない

3〜6)

.現在最も石灰化に診断能の高い X 線 CT で確認できる膵石のうち 68%が

腹部 X 線で指摘可能とされ

7)

,膵石症すなわち石灰化慢性膵炎の診断には低費用かつ低侵襲であ

り,有用な検査と位置づけられる.なお,腹部 X 線では非石灰化慢性膵炎の診断は困難である.

胸部 X 線撮影は慢性膵炎の急性増悪などで膵管や膵仮性囊胞が破綻し,胸腔内に膵液成分が

漏出すると胸水としてその存在を知ることは可能である.しかし,胸部 X 線撮影によって慢性

膵炎を直接的に診断することは困難である.

文献

1) Ammann RW, Muench R, Otto R, et al. Evolution and regression of pancreatic calcification in chronic pan-creatitis: a prospective long-termstudy of107 patients. Gastroenterology 1988; 95: 1018-1028(コホート) 2) Bank S, Chow KW. Diagnostic tests in chronic pancreatitis. Gastroenterologist 1994; 2: 224-232(ケースシ

リーズ)

3) Ammann RW, Akovbiantz A, Largiader F, et al. Course and outcome of chronic pancreatitis: longitudinal study of a mixed medical-surgical series of245 patients. Gastroenterology 1984; 86: 820-828(コホート) 4) Lankisch PG, Otto J, Erkelenz I, et al. Pancreatic calcifications: no indicator of severe exocrine pancreatic

insufficiency. Gastroenterology1986; 90: 617-621(ケースシリーズ)

5) Cavallini G, Talamini G, Vaona B, et al. Effect of alcohol and smoking on pancreatic lithogenesis in the course of chronic pancreatitis. Pancreas1994; 9: 42-46(コホート)

Clinical Question 1-3

1.診断 ― ❸画像検査

胸・腹部 X 線撮影は慢性膵炎の診断に有用か?

CQ 1-3

胸・腹部 X 線撮影は慢性膵炎の診断に有用か?

ステートメント

推奨の強さ

(合意率)

エビデンス

レベル

腹部 X 線撮影は結石を有する慢性膵炎の診断に有用であり,行う

ことを推奨する.

(90%)

1

B

胸部 X 線撮影はごく一部の慢性膵炎症例でしか有用とはいえない.

慢性膵炎の診断を目的としては行わないことを提案する.

2

(100%)

C

(32)

③画像検査

6) Hacken JB, Baer JW. Calcifications within the duct of Wirsung in calcific pancreatitis. Gastrointest Radiol 1978; 3: 173-180(ケースシリーズ) 7) 春日井政博,税所宏光,山口武人,ほか.膵石灰化からみた慢性膵炎の診断と病態に関する研究.膵臓 1995; 10: 9-18(横断)

図 1 腹部 X 線

a:びまん性小結石 b:びまん性大結石(鋳型状) c:びまん性混合結石 d:限局性小結石 a b c d

(33)

解説

腹部超音波検査(US)は,血液生化学検査や腹部 X 線診断と同様に簡便で患者への苦痛や侵襲

が少なく,各種画像診断のなかで膵の形態診断が最も容易にできる検査法である(

巻頭フロー

チャート 1

参照).慢性膵炎における腹部超音波検査では,膵全体の大きさ,辺縁の形態,石灰化

の有無,囊胞の有無と,さらに膵管系と実質系の大きく 2 つの変化に注目し診断される

1〜9)

.日

本では 2009 年の慢性膵炎臨床診断基準(

表 1

)の特徴的な画像所見の確診所見のなかに「膵管内

の結石」および「膵全体に分布する複数ないしびまん性の石灰化」があり,両者は腹部エコー

にて診断できる項目である.また,準確診例のなかで「US(EUS)において,膵内の結石または

蛋白栓と思われる高エコーまたは膵管の不整な拡張を伴う辺縁が不規則な凹凸を示す膵の明ら

かな変形」として取りあげられている

10)

図 1a,b

).

慢性膵炎の腹部超音波検査による診断率は 48〜83%であり,特異度は 75〜90%とされる

5〜7, 9)

ただし,この検査は腹部の脂肪やガスなどに影響され,膵全体の描出が常に十分できるわけで

はない.膵管の描出能も 77%

4)

程度,膵石の描出率は 74%

11)

とされ,膵全体の評価としては不

完全である.また,加齢による変化として,実質の萎縮,高エコー化や膵管拡張が起こるため

超音波検査のみでは慢性膵炎の診断は十分ではない.最近,膵実質の脂肪沈着や加齢の影響が

比較的少ない超音波エラストグラム

により,膵の線維化による硬度が検討されており,正常膵

より慢性膵炎で硬度が高いと報告されており,診断に有用な可能性がある

12)

*注

:超音波エラストグラム:日本で開発され集束超音波により一定した圧迫を加えることに

より,任意の部位の組織硬度が B モードをみながら相対的に表示可能.

文献

1) 石原 武,山口武人,税所宏光.慢性膵炎の合併症とその取り扱い―慢性膵炎の画像診断 US,CT,MRI の役割と最新動向.消化器の臨床 2004; 7: 484-491 2) 村木 崇,尾崎弥生,浜野英明,ほか.体外式超音波検査による胆すい疾患の拾い上げから診断まで―こ

Clinical Question 1-4

1.診断 ― ❸画像検査

腹部超音波検査(US,造影を含む)は慢性膵炎の診断に有用

か?

CQ 1-4

腹部超音波検査(US,造影を含む)は慢性膵炎の診断に有用か?

ステートメント

推奨の強さ

(合意率)

エビデンス

レベル

腹部 US は結石の存在や膵管拡張有無などが描出できる.慢性膵

炎の診断に有用であり,行うことを推奨する.

(100%)

1

B

(34)

③画像検査

表 1 慢性膵炎臨床診断基準 2009

●慢性膵炎の定義と分類 定義:  膵臓の内部に不規則な線維化,細胞浸潤,実質の脱落,肉芽組織などの慢性変化が生じ,進行すると膵外分泌・ 内分泌機能の低下を伴う病態である.膵内部の病理組織学的変化は,基本的には膵臓全体に存在するが,病変の程 度は不均一で,分布や進行性も様々である.これらの変化は,持続的な炎症やその遺残により生じ,多くは非可逆 性である.  慢性膵炎では,腹痛や腹部圧痛などの臨床症状,膵内・外分泌機能不全による臨床症候を伴うものが典型的であ る.臨床観察期間内では,無痛性あるいは無症候性の症例も存在し,このような例では,臨床診断基準をより厳密 に適用すべきである.慢性膵炎を,成因によってアルコール性と非アルコール性に分類する.自己免疫性膵炎と閉 塞性膵炎は,治療により病態や病理所見が改善することがあり,可逆性である点より,現時点では膵の慢性炎症と して別個に扱う. 分類:  ・アルコール性慢性膵炎  ・非アルコール性慢性膵炎(特発性,遺伝性,家族性など)  注 1:自己免疫性膵炎および閉塞性膵炎は,現時点では膵の慢性炎症として別個に扱う. ●慢性膵炎臨床診断基準 慢性膵炎の診断項目:  ①特徴的な画像所見  ②特徴的な組織所見  ③反復する上腹部痛発作  ④血中または尿中膵酵素値の異常  ⑤膵外分泌障害  ⑥ 1 日 80g 以上(純エタノール換算)の持続する飲酒歴 慢性膵炎確診:a,b のいずれかが認められる.  a.①または②の確診所見.  b.①または②の準確診所見と,③④⑤のうち 2 項目以上. 慢性膵炎準確診:  ①または②の準確診所見が認められる. 早期慢性膵炎:  ③∼⑥のいずれか 2 項目以上と早期慢性膵炎の画像所見が認められる. 注 2:①,②のいずれも認めず,③∼⑥のいずれかのみ 2 項目以上有する症例のうち,他の疾患が否定されるものを慢性 膵炎疑診例とする.疑診例には 3 ヵ月以内に EUS を含む画像診断を行うことが望ましい. 注 3:③または④の 1 項目のみ有し早期慢性膵炎の画像所見を示す症例のうち,他の疾患が否定されるものは早期慢性膵 炎の疑いがあり,注意深い経過観察が必要である. 付記:早期慢性膵炎の実態については,長期予後を追跡する必要がある. (文献 10 より)

図 1 腹部 US 像

膵管の不整拡張(矢頭)と膵管内の結石を示す音響陰影を伴う高エコー(矢印). a b

表 1 つづき ●慢性膵炎の診断項目 ①特徴的な画像所見  確診所見:以下のいずれかが認められる. a.膵管内の結石. b.膵全体に分布する複数ないしびまん性の石灰化. c.ERCP 像で,膵全体にみられる主膵管の不整な拡張と不均等に分布する不均一 * 1 かつ不規則 * 2 な分枝膵 管の拡張. d.ERCP 像で,主膵管が膵石,蛋白栓などで閉塞または狭窄しているときは,乳頭側の主膵管と分枝膵管の 不規則な拡張.  準確診所見:以下のいずれかが認められる. a.MRCP において,主膵管の不整な拡張ととも
図 1 腹部 X 線 CT 像 a:びまん性混合結石 b,c:びまん性小結石 d:造影 CT.主膵管の不規則なびまん性の拡張とともに,膵辺縁が不規則な凹凸を示す膵の変形が認められる.abcd
図 1 慢性膵炎確診 膵全体にみられる主膵管の不整な拡張と不均等に分布する不均一かつ不規則な分枝膵管の拡張.abc 図 2 早期慢性膵炎 頭部から体部にかけ分枝膵管の不規則な拡張が認められる.
表 3 DPPHR の治療成績 報告者 報告年 例数 観察期間 緩解率腹痛 周術期致死率 合併症発生率 文献No Izbicki ら 1995 20 1.5 年 95% 0% 20% 18 Ikenaga ら 1995 41 3 年 92% 0% 27% 19 Buchler ら 1997 298 6 年 88% 1% 28% 20 Beger ら 1999 338 5.7 年 91.3% 0.8% − 21
+2

参照

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