2015 年第 2 版 03/03/15 著作権 © 2015 National Comprehensive Cancer Network, Inc. 無断転載を禁止する。NCCN®
の明示の書面による許諾なく、本ガイドラインおよびここに含まれるイラストを複製することは、いかなる形においても禁じられている。
非ホジキンリンパ腫
NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines
®
)
(NCCN腫瘍学臨床診療ガイドライン)
2015年 第2版
NCCN.org
原発性皮膚 CD30 陽性 T 細胞
リンパ増殖異常症
2015年 第2版
NCCN.org
NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines
®
)
(NCCN腫瘍学臨床診療ガイドライン)
注意:特に指定のない限り、すべての推奨はカテゴリー2Aである。
臨床試験:NCCNはすべてのがん患者にとって、最良の管理法は臨床試験にあると考えている。臨床試験への参加が特に推奨される。
原発性皮膚CD30陽性T細胞リンパ増殖異常症
2015 年第 2 版 03/03/15 著作権 © 2015 National Comprehensive Cancer Network, Inc. 無断転載を禁止する。NCCN®の明示の書面による許諾なく、本ガイドラインおよびここに含まれるイラストを複製することは、いかなる形においても禁じられている。
考察
概要と定義
原発性皮膚 CD30 陽性 T 細胞リンパ増殖異常症は、原発性皮膚未
分化大細胞リンパ腫(ALCL)、リンパ腫様丘疹症(LyP)、および
臨床的、組織学的特徴が重複する「境界」例を含む一連の疾患群
である
a,b。
原発性皮膚 CD30 陽性 T 細胞リンパ増殖異常症の確定診断には、
臨床所見と病理組織学的所見の相関を確認することが必須であ
り、病理学的検討のみに基づいて診断を下すことはできない。
鑑別診断
CD30 陽性 T 細胞リンパ増殖異常症は、皮膚を侵す CD30 陽性の
他の病態と鑑別することが極めて重要であり、鑑別疾患としては
以下のものが挙げられる:
全身性リンパ腫(例、全身性 ALCL、ATLL、PTCL)
菌状息肉症(MF)(特に形質転換を来した MF、細胞傷害性
T 細胞リンパ腫)といった他の CD30 陽性皮膚リンパ腫などの
他の皮膚疾患
リンパ腫様薬物反応、節足動物による刺咬症、ウイルス感染症
などの良性疾患
リンパ腫様薬物反応は、特定の薬剤(例、アムロジピン、カルバ
マゼピン、セフロキシム、バルサルタン)との関連が報告されて
おり、組織学的には CD30 陽性の大型異型細胞との関連がみられ
る。
MF と原発性皮膚 CD30 陽性 T 細胞リンパ増殖症は同時に併発す
ることがある。
原発性皮膚 ALCL(PC-ALCL)
皮膚リンパ腫症例の約 8%を占める
b。
全身性 ALCL とは異なり、PC-ALCL は一般的にインドレントな経過をたど
り、皮膚再発がよくみられるものの、通常は非常に良好な予後が保たれる
c。
組織学的には、未分化、多形性または免疫芽球性の形態像を呈する大型の
CD30 陽性(75%超で)細胞がびまん性、凝集合性のシート状に分布するこ
とを特徴とする
a,b。
典型的な臨床所見としては、孤立性または限局性の結節または腫瘤(しばし
ば潰瘍化)などがあり、約 20%の症例では多巣性に病変が生じる。
約 10%の症例で皮膚外病変が生じ、通常は所属リンパ節が侵される
a,b。
まれな例を除き、PC-ALCL は ALK 陰性である
リンパ腫様丘疹症(LyP)
リンパ腫様丘疹症(LyP)はリンパ腫に分類されているが(WHO-EORTC 分
類)、一様に自然退縮する病態であることから、リンパ増殖性疾患として分類
するのが最善である可能性がある
b。
LyP は MF、PC-ALCL、全身性 ALCL、ホジキンリンパ腫など他のリンパ腫
と関連があると報告されている
d,e。
組織学的に不均一で、著明な炎症を背景として未分化、免疫芽球性またはホ
ジキン様の大型異型細胞がみられるが
a、皮膚病変の進展に基づいて、いくつ
かの組織学的亜型(A~D 型、CD30 陽性細胞)が定義されている
d。
臨床的には、慢性、再発性かつ自然に退縮する丘疹結節状(集簇または汎発
性)の皮膚病変を特徴とする
a,b,d。
診断(PCTLD-2)を参照
aRalfkiaer E, Willemze R, Paulli M, Kadin ME. Primary cutaneous CD30-positive T-cell lymphoproliferative disorders. In: Swerdlow SH, Campo E, Harris NL, et al., eds. WHO classification of tumours of haematopoietic and lymphoid tissues (ed 4th). Lyon: IARC; 2008:300-301.
b
Willemze R, Jaffe ES, Burg G, et al. WHO-EORTC classification for cutaneous lymphomas. Blood 2005;105:3768-3785.
c
Benner MF, Willemze R. Applicability and prognostic value of the new TNM classification system in 135 patients with primary cutaneous anaplastic large cell lymphoma. Arch Dermatol 2009;145:1399-1404.
d
Kempf W, Pfaltz K, Vermeer MH, et al. EORTC, ISCL, and USCLC consensus recommendations for the treatment of primary cutaneous CD30-positive lymphoproliferative disorders: lymphomatoid papulosis and primary cutaneous anaplastic large-cell lymphoma. Blood 2011;118:4024-4035.
e
免疫表現型および形態像に重複がみられるため、リンパ節内に認められた CD30 陽性 T 細胞を HL と診断
しない
よう注意が必要である(Eberle FC, Song JY, Xi L, et al. Nodal involvement by cutaneous CD30-positive T-cell lymphoma mimicking classical Hodgkin lymphoma. Amer J Surg Pathol 2012;36:716-725.)。f成熟 B 細胞腫瘍と成熟 NK/T 細胞腫瘍の鑑別診断における免疫表現型検査/遺伝子検査の利用(NHODG-A)を参照。 g
典型的な免疫学的表現型:CD30+(>70%の細胞)、CD4+、CD2/CD5/CD3 の発現欠失(症例による)、CD8+(<5%)、細胞傷害性顆粒蛋白質陽性。
h
原発性皮膚 ALCL および LyP では、ALK1 陽性と t(2;5)転座は一般的に認められない。
i TCR 遺伝子再構成の結果は慎重に解釈すべきである。クローン性の TCR 再構成は悪性疾患以外でも認められることがあり、また MF/SS の全例で確認できる わけではない。一部の症例では、皮膚、血液、リンパ節の 2 つ以上で同一のクローンを確認することが有用となりうる。 j リンパ腫様丘疹症(LyP)は悪性疾患とはみなされていないが、他のリンパ系腫瘍(菌状息肉症、古典的ホジキンリンパ腫または原発性皮膚 ALCL)の発症が 認められる。LyP では、合併したリンパ腫による全身性病変が疑われる場合に限り、病期分類のための検査を行うこと。
診断
必須:
臨床像:概要と定義を参照
臨床所見と病理学的所見との相関を確認する必要がある
全身の皮膚診察による MF の所見の検索
疑わしい部位の皮膚生検
十分な生検検体(パンチ、切開、切除)の病理組織学的検討
腫瘍を代表するパラフィンブロック 1 つ以上について、皮膚
T 細胞リンパ腫の診断に精通した病理医がすべてのスライドを
血液病理学的に検討すべきである。提供された検体で十分に診
断できない場合は再生検を施行する。
皮膚生検での確定診断に十分な免疫表現型検査
f,g:
IHC:CD3、CD4、CD8、CD20、CD30、CD56、βF1、ALK1
h特定の状況で有用:
皮膚生検時:
広範囲な免疫染色:CD2、CD5、CD7、CD25、TIA1、
granzyme B、perforin、GM1、EBER-ISH
分子生物学的解析:TCR 遺伝子再構成
i(クローン性の評価)
疑わしいリンパ節の摘出または切開生検(皮膚生検で確定診断が
得られない場合)
CD30 陽性 ATLL を同定するため、HTLV-1 の抗体検査
皮膚 ALCL
LyP
j精査(PCTLD-3)
を参照
形質転換を来した
CD30 陽性の菌状息肉症
菌状息肉症ガイドライン
(MFSS-1)を参照
注意:特に指定のない限り、すべての推奨はカテゴリー2Aである。
臨床試験:NCCNはすべてのがん患者にとって、最良の管理法は臨床試験にあると考えている。臨床試験への参加が特に推奨される。
原発性皮膚CD30陽性T細胞リンパ増殖異常症
2015 年第 2 版 03/03/15 著作権 © 2015 National Comprehensive Cancer Network, Inc. 無断転載を禁止する。NCCN®の明示の書面による許諾なく、本ガイドラインおよびここに含まれるイラストを複製することは、いかなる形においても禁じられている。
考察
精査
原発性皮膚
ALCL
必須:
全身の皮膚を含めた徹底的な身体診察
k;
末梢リンパ節領域の触診;肝腫大または
脾腫
血算、白血球分画
生化学検査(comprehensive metabolic
panel)
LDH
胸部/腹部/骨盤の造影 CT または全身
PET-CT
病変リンパ節の生検
e,l,m一部の症例で有用:
妊娠可能年齢の女性では妊娠検査
n
孤立性の皮膚 ALCL または画像検査で
皮膚外病変を認めない皮膚 ALCL で
は、骨髄穿刺および骨髄生検の実施は
しなくてもよい
一次治療
(PCTLD-4)
を参照
所属リンパ節
病変を伴う皮
膚 ALCL
皮膚 ALCL
全身性 ALCL
必須:
全身の皮膚を含めた徹底的な身体診察
k;
末梢リンパ節領域の触診;肝腫大または
脾腫
血算、白血球分画
生化学検査(comprehensive metabolic
panel)
LDH
一部の症例で有用:
妊娠可能年齢の女性では妊娠検査
n
胸部/腹部/骨盤の造影 CT または全身
PET-CT
j,o
骨髄穿刺および骨髄生検(典型的な
LyP には施行しない)
j,oLyP
j e免疫表現型および形態像に重複がみられるため、リンパ節内に認められた CD30 陽性 T 細胞を HL と診断
しない
よう注意が必要である(Eberle FC, Song JY,Xi L, et al. Nodal involvement by cutaneous CD30-positive T-cell lymphoma mimicking classical Hodgkin lymphoma. Amer J Surg Pathol 2012;36:716-725.)。
j リンパ腫様丘疹症(LyP)は悪性疾患とはみなされていないが、他のリンパ系腫瘍(菌状息肉症、古典的ホジキンリンパ腫または原発性皮膚 ALCL)の発症が 認められる。LyP では、合併したリンパ腫による全身性病変が疑われる場合に限り、病期分類のための検査を行うこと。 k 病変の大きさと数のモニタリングが治療効果判定の参考となる。 l 原発性皮膚 ALCL および大細胞変異を来たした MF でリンパ節腫大を伴う場合、診断が全身性 ALCL である可能性を考慮すること。 m 病変部につながるリンパ節腫大のみが認められる場合は、診断は原発性皮膚 ALCL でよい。 n 妊娠中は、多くの skin-directed therapy および全身療法が禁忌、もしくは安全性が不明である。個々の薬剤情報を参照。 o リンパ腫の合併を除外するためにのみ施行される。
PCTLD-3
末梢性 T 細胞
リンパ腫
(TCEL-1)
を参照
LyP に対する一次
治療(PCTLD-5)
を参照
フォローアップ
s亜型
進展度
一次治療
再発/難治例
病変が皮膚に限定している場
合は、初回治療の選択肢で再
治療
多発皮膚病変または皮膚外病
変については、以下を参照
再発の有無
を経過観察
奏効
孤立性
または
集簇病変
外科的切除±放射線療法
qまたは
放射線療法
q無効/難治性
メトトレキサート(100mg 以下で週 1 回)
または
放射線療法
qまたは
レチノイド内服
rまたは
Pralatrexate
または
ブレンツキシマブ ベドチン
または
無症状の場合、経過観察
または
インターフェロン
α(カテゴリー2B)
原発性皮
膚 ALCL
p再発の有無
を経過観察
奏効
t多巣性
病変
臨床試験
同じレジメンで治療(難治性
または不耐容の患者以外)
一次治療で使用しなかった代替
レジメン
菌状息肉症用の「カテゴリーC
全身療法」(SYST-CAT C)で
治療(
MFSS-A を参照
)
無効/難治性
メトトレキサート±放射線療法
qまたは
Pralatrexate±放射線療法
qまたは
ブレンツキシマブ ベドチン±放射線療法
qまたは
一部の症例では CHOP または CHOEP±放
射線療法
qまたは
一部の症例では放射線療法
q再発の有無
を経過観察
奏効
所属リンパ節病変を伴う
皮膚 ALCL(全身性
ALCL を除く)
無効/難治性
t 皮膚病変の奏効もしくは臨床的有益性が得られた患者には、奏効期間を最大限に延長するた め、維持または漸減レジメンを考慮すべきである。再発した患者では、同じ治療法で良好な 反応が得られることが多い。PR と判定された患者には、難治例に対する治療に進む前に、反 応を改善させるため、一次治療用の別の選択肢による治療を行うべきである。一次治療後に 再発または不変と判定された患者には、臨床試験への参加を考慮してもよい。 p 最大 44%の症例で病変の退縮が得られる。 q放射線療法の原則(NHODG-D)を参照。 r 症例報告からの限定的データに基づく(例、bexarotene)。 s 時間の経過とともに菌状息肉症が発生することがあるため、フォロ ーアップ中には徹底的な皮膚診察を継続して行うこと。注意:特に指定のない限り、すべての推奨はカテゴリー2Aである。
臨床試験:NCCNはすべてのがん患者にとって、最良の管理法は臨床試験にあると考えている。臨床試験への参加が特に推奨される。
原発性皮膚CD30陽性T細胞リンパ増殖異常症
2015 年第 2 版 03/03/15 著作権 © 2015 National Comprehensive Cancer Network, Inc. 無断転載を禁止する。NCCN®の明示の書面による許諾なく、本ガイドラインおよびここに含まれるイラストを複製することは、いかなる形においても禁じられている。
考察
フォローアップ
v亜型
進展度
一次治療
再発/難治例
経過観察を継続
または
外用ステロイド
症状なし
経過観察(無症状の場合は
望ましい)
または
外用ステロイド
または
光線療法
病変が限局的で、
症状なし
一次治療で使用しなかった
代替レジメンで治療
または
他のレジメン
症状あり
リンパ
腫様丘
疹症
(LyP)
経過観察
または
メトトレキサート
(10~35mg を週 1 回
u)
または
光線療法
または
レチノイド内服
rまたは
外用ステロイド
または
外用 mechlorethamine
(ナイトロジェンマスタード)
再発の有無
を経過観察
臨床試験
または
経過観察
または
再治療または一次治
療で使用しなかった
代替レジメンで治療
奏効
w病変が広範
または症状
あり
難治性の場合
無効/難治性
ブレンツキシ
マブ ベドチン
または
臨床試験
r 症例報告からの限定的データに基づく(例、bexarotene)。 uKempf W, Pfaltz K, Vermeer MH, et al. EORTC, ISCL, and USCLC consensus recommendations for the treatment of primary cutaneous CD30-positive lymphoproliferative disorders: lymphomatoid papulosis and primary cutaneous anaplastic large-cell lymphoma. Blood 2011;118:4024-4035.
v 二次的なリンパ系腫瘍の発生リスクが高いため、生涯のフォローアップが必要 となる。フォローアップ中は徹底的な皮膚診察を継続して行う。 w 奏効もしくは臨床的有益性が得られた患者には、奏効期間を最大限に延長するた め、維持または漸減レジメンを考慮してもよい。再発した患者では、同じ治療法で 良好な反応が得られることが多い。PR と判定された患者には、難治例に対する治 療に進む前に、反応を改善させるため、一次治療用の別の選択肢による治療を行う べきである。一次治療後に再発または不変と判定された患者には、臨床試験への参 加を考慮してもよい。
PCTLD-5
参考文献
一般的なアプローチ/全身管理の概要Kempf W, Pfaltz K, Vermeer MH et al. EORTC, ISCL, and USCLC consensus recommendations for the treatment of primary cutaneous CD30+ lymphoproliferative disorders: lymphomatoid papulosis and primary cutaneous anaplastic large cell lymphoma. Blood 2011;118:4024-4035.
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