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「PCグラウトの設計施工指針」の改訂について

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(1)

1 .  は じ め に

 ポストテンション方式におけるプレストレストコンク リート構造物では,シース内に配置された PC 鋼材の隙 間に PC グラウトを注入し充塡することは,PC 鋼材を 腐食から保護する,および部材コンクリートと一体化す る観点から極めて重要である。相互の配置概念を図-1 に示す。

 しかし,これまでに施工面,材料面での対応が十分で はなく充塡不足を招き,PC 鋼材が腐食し破断して落橋 した事例が 1985 年にイギリス,1992 年にベルギーなど で発生した。我が国においても,落橋には至らないが PC グラウトの技術的な問題点が顕在化し,PC 橋の耐 久性が大きな問題となった。

 プレストレストコンクリート工学会(2012 年 3 月以 前は同技術協会,以下,PC 工学会)ではそれを受けて,

その問題点を解消する対策を講じた「PC グラウトの設 計施工指針」を 2005 年に規準化した。その後,PC グラ

ウトの技術的な発展や多くの経験を積み重ねた結果,ま た ISO 規格化の動向等により,改訂の必要性が生じて きた。そこで,PC 工学会に PC グラウトの設計施工指 針改訂委員会(委員長:池田尚治・横浜国立大学名誉教 授)を設置し,より合理的な品質管理方法,さらなる信 頼性の向上に向けて改訂作業を進め,2012 年 12 月に

「PC グラウトの設計施工指針─改訂版─」(以下,改訂 版)を発刊した。

 本稿では,改訂内容のうち主な点を概説するものであ る。全体の内容を網羅するために改訂版も併せて参照頂 ければ幸いである。

2 .  全 体 構 成

 改訂版は,第Ⅰ編 設計施工指針,第Ⅱ編 標準マニュ アル,付録,参考資料(CD)で構成されている。

 第Ⅰ編 設計施工指針(以下,指針と略す)では,PC 工学会発刊「コンクリート構造設計施工規準─性能創造 型設計─」の概念に基づいて,プレストレストコンクリー ト橋の保有すべき性能のうち,特に PC グラウトに関連 する保有すべき性能を明確にし,性能照査,施工,検査,

記録,教育等についての基本原則を示している。

 第Ⅱ編 標準マニュアル(以下,標準マニュアルと略 す)では,指針の考え方に沿って現時点の技術レベルに おける PC グラウトの標準的な設計施工方法を示してい る。その構成を図-2に示す。

 付録では,標準マニュアルを理解する上で必要となる 情報等を掲載したものである。

 参考資料は,付録の原典となる報告書,文献等を CD に集録したものである。

 今回の改訂版では,標準マニュアルの改訂を主眼に置 いて取り扱ったので,本稿では標準マニュアルの改訂事 項について示す。

解説

「PC グラウトの設計施工指針」の改訂について

睦好宏史

*1

・手塚正道

*2

・二井谷教治

*3

・細野宏巳

*4

 概 要 プレストレストコンクリート工学会において,2005 年に「PC グラウトの設計施工指針」が規準化されて以来 7 年の経過を経て改訂された。主な改訂点は,① PC グラウトに携わる技術者の資格要件を明確にしたこと,②使用材料を 最新版に更新したこと,③実物大試験の位置付けを明確としたこと,④配合において優先すべき事項を明確としたこと,

⑤施工において PC 鋼材挿入後 PC グラウト注入までの期間を明確としたこと,⑥圧縮強度試験の保証材齢を短縮したこ と,⑦日常管理試験の頻度を実態に即して変更したこと,等が挙げられる。

 キーワード: PC グラウト,設計施工指針,プレストレストコンクリート,実物大試験,JP 漏斗流下時間,PC グラウト 温度,圧縮強度,ブリーディング率,体積変化率,日常管理試験

*1  むつよし・ひろし/埼玉大学大学院 教授(正会員)

*2  てづか・まさみち/オリエンタル白石㈱ 技師長(正会員)

*3  にいたに・きょうじ/オリエンタル白石㈱ 技術研究所 所長(正 会員)

*4  ほその・ひろみ/三井住友建設㈱ 土木技術部 次長 PC グラウト PC 鋼材 シース

<部材コンクリート>

-1 PC グラウトの概念図

(2)

3 .  改 訂 事 項

 標準マニュアルの主な改訂事項について,章立てに 沿って以下に示す。

3.1  1章 総則

 1 章の総則では,「1.2 PC グラウトの設計施工の基 本」において,PC グラウトに携わる技術者は PC グラ ウトに関して十分な知識を有する必要があることを条文 に追加した。

 さらに解説には具体的な資格要件として,PT システ ム(ポストテンション方式において,PC 鋼材,シース,

定着具,アンカーキャップ,グラウトキャップ,グラウ

トホース,PC グラウト等から構成された一連のものを いう)および PC グラウトの設計に携わる技術者は,PC 工学会認定のプレストレストコンクリート(PC)技士,

またはコンクリート構造診断士の資格を有するものとす ること,また,グラウト作業管理者およびグラウト検査 員は PC 技士,またはコンクリート構造診断士の資格を 有し,かつプレストレスト・コンクリート建設業協会で 実施している PC グラウト研修会受講修了者であること を記載している。

3.2  2章 材料

 2 章の材料では,プレミックス材(セメントと混和材 料があらかじめ混ぜ合わせられて製品化されたもの)と

Revision of the Guidelines for Design and Construction of Grouting for Prestressed Concrete Structures By H. Mutsuyoshi, M. Tezuka, K. Niitani and H. Hosono

Concrete Journal, Vol.51, No.8, pp.621~626, Aug. 2013

Synopsis The Guidelines for Design and Construction of Grouting for Prestressed Concrete Structures, established in 2005 by the Japan Prestressed Concrete Institute, have been revised for the first time in seven years. Among the major revisions are 1) the clarification of the necessary qualifications of engineers involved in PC grouting work, 2) the update of the materials used to the latest version, 3) the clarification of the positioning of full-scale tests, 4) the clarification of priorities regarding mixing, 5) the clarification of the period from after prestressing steel insertion to PC grout injection, 6) the reduction of the guaranteed material ages for the compressive strength test, and 7) changes to the frequency of routine control tests according to actual conditions.

 Keywords: PC grout, guidelines for design and construction, prestressed concrete, full-scale test, JP funnel flow time, PC grout temperature, compressive strength, bleeding rate, volume change ratio, routine control test 1章 総  則

1.1 適用の範囲

1.2 PC グラウトの設計施工の基本 1.3 用語の定義

2章 材  料 2.1 一 般 2.2 PC 鋼材 2.3 定着具

2.4 PC グラウト材料 2.5 ダクト形成材料 2.6 グラウトホース 2.7 グラウトキャップ 2.8 あと埋め材料

2.9 あと埋め部分の防水材料 3章 PC グラウトの設計

3.1 一 般

3.2 塩化物イオン含有量および圧縮強度の照査 3.3 有害となる残留空気の照査

4章 配  合 4.1 一 般 4.2 使用材料の選定 4.3 配合の決定 4.4 試し練り 4.5 施工時の配合決定

5章 施  工 5.1 一 般 5.2 施工計画 5.3 使用材料の確認 5.4 使用材料の保管と取扱い 5.5 注入までの処置 5.6 材料の計量 5.7 練混ぜおよび攪拌 5.8 注入作業

5.9 ステップバイステップ注入方式 5.10 注入口,排気口,排出口のあと処理 5.11 定着具のあと埋めおよび部材端面の保護 5.12 施工機械,器具

5.13 寒中グラウト工 5.14 暑中グラウト工

5.15 プレキャストセグメント工法 5.16 トラブル対策

6章 検  査 6.1 一 般

6.2 PC グラウトの品質検査 6.3 PC グラウトの施工に関する検査 6.4 PC グラウトの充塡検査 6.5 発注者による検査 7章 記  録

7.1 一 般 7.2 記録内容 7.3 記録の保存 8章 教  育

8.1 一 般

8.2 PC 技術者の教育 -2 第Ⅱ編  標準マニュアルの構成

(3)

グラウト混和剤について,現状で流通し,6 章の検査で 合格が確認できているものについて,解説に名称,主要 成分等を表示した。

 また,プラスチック製シースについて,これまでは,

塩害対策等で特に耐久性が要求される場合に推奨してき たが,改訂版では,PC 鋼材の腐食に対してより対策を 高めておくとの観点から,一般環境においても推奨する こととした。

 解説には,その主旨と取り扱い上,鋼製シースと異な る留意すべき点を記載した。

3.3  3章 PC グラウトの設計

 3 章の PC グラウトの設計では,「3.3 有害となる残 留空気の照査」において,実物大試験によることを原則 としているが,改訂前では,実物大試験についてどのよ うな試験を実施するのか明確に記載されておらず,ま た,実物大試験と実際の施工との関連性も不明確であっ た。そこで,改訂版では,「3.3.2 実物大試験」の項を 設けて,条文,解説にどのような試験を実施するのか記 載するとともに,「3.3.1 一般」に実施工との関連性に ついて,条文に明記した。

 実物大試験で充塡が確認されているグラウト材料,施 工方法,例えば,排気口の位置,注入流量等を施工でも 確実に踏襲することを明確に示した。また,5 章の施工 においても,「5.2 施工計画」の条文に実物大試験との 関連性を追記している。

 実物大試験については,試験の効率化,試験の内容で 必要となるデータを収集し,より有効なデータベースの 構築を図ることを目的に,統一的な試験方法を策定し た。策定した統一的な試験方法を「付録Ⅰ PC グラウト 設計施工指針試験方法案 1.PC グラウトの充塡性に関 する実物大試験方法」として収録している1)

 次に,「3.3.5 注入口,排気口,排出口の配置」にお いて,グラウトホースの処理に関して,複数本ある場合 に束ねて橋面に出す方法がこれまで採用されてきたが,

束ねることによってホース間に隙間が生じ,その隙間が 水みちとなる場合があることが分かってきたため,解説 に,グラウトホース間のあきを「粗骨材最大寸法の 4/3 以上」確保しコンクリートが回るよう注意喚起した。

3.4  4章 配合

 4 章の配合では,実際の施工で使用されているプレミッ クス材およびグラウト混和剤について見直すとともに,

それらの材料に関して,配合を決定する上で必要な配合 例などを最新の情報に更新した。その他に改訂した点は 以下のとおりである。

( 1 ) 試し練りについて

 試し練りは,施工時において設計で設定された PC グ ラウトの品質を担保するために重要であり,水粉体比ま たは水セメント比を調整して所要の流動性を確保する必 要がある。そのために工事ごとの基準試験を実施して,

PC グラウトの品質が設定された判定基準を満足するこ とを確認しなければならない。図-3は,水粉体比また は水セメント比を一定とした時の,PC グラウト温度と JP 漏斗流下時間との関係の例1),2)である。PC グラウト の流動性は,その温度に大きく影響を受けることがわか る。すなわち,PC グラウトの特性,とりわけ PC グラ ウトの流動性は,施工時の環境条件および気象条件の影 響を大きく受けるため,PC グラウトの練上がり温度を 予測して,試し練りを行うことが必要である。

 これまでは,PC グラウトの圧縮強度は,材齢 28 日で 30 N/mm2以上であることを確かめることによって保証 していた。したがって,試し練りと実施工との期間は,28 日以上確保する必要があり,施工場所や時期などによっ ては,試し練りと実施工との環境差が大きくなる場合が あり,実施工に試し練りの結果を反映できないことも想 定された。改訂版においては,後述する「3.6 6 章 検査」において示すように,材齢 7 日以上で強度を保証 することに変更しても問題がないと判断できたため,試 し練りと実施工との期間は,最短で 7 日となり,より実 施工と近い環境で試し練り実施することが可能となった。

( 2 ) 施工時の配合について

 気象条件などの自然条件により,施工時の環境が試し 練りにおいて想定した条件と異なり,PC グラウトの流 動性などが設定した条件と異なる場合には,注入直前 に,水粉体比あるいは水セメント比の軽微な変更によっ て調整を行い設定した流動性を確保することが充塡性を 確保する上で重要であることを記載した。

3.5  5章 施工

 5 章の施工については,実際の施工を反映した最新の 情報に更新したのに加え,より信頼性が高く合理的な施 工が行えるように改訂を行った。

( 1 ) PC グラウト注入までの期間について

 PC 鋼材は,速やかに PC グラウトを注入し,有害な 錆が生じないようにしなければならないが,「速やか」

35

HV(高粘性型混和剤) / =42.5%

Pre-HLV(高粘性〜低粘性型プレミックス材) / =31.5%

LV(低粘性型混和剤) / =44.0%

Pre-ULV(超低粘性型プレミックス材) / =36.0%

JP漏斗流下時間(sec)

0 5 10 15 20 25 30

10  20  30  40  50

PC グラウト温度(℃)

-3 PC グラウトの温度と流下時間との関係

(4)

とはどの程度の期間なのかが明確ではなかった。そこで,

今回の改訂では,実験を行って PC グラウトを注入する までの期間を明らかにし,その期間を例示することとし た。実験の内容については文献 1),2)を参照頂きたい。

 PC 鋼材は,ダクトへ挿入後,PC グラウトを注入する まで錆が全く生じないのが理想であるが,実施工では現 実的とはいえない。そこで,表面的な極軽微な錆は許容 し,有害な錆が発生する前に PC グラウトを注入すること が合理的である。したがって,実験においても許容でき る錆を定義することとした。それらは,以下のとおりであ る。a)錆の形成:錆が発生したときの暴露材齢,b)錆 の程度:柔らかい乾布で錆が拭き取れること,c)機械 的特性:PC 鋼材の引張強度がブランクと比較して 95%

以上であること,d)電気化学的特性:PC 鋼材を PC グ ラウトに埋めた時の自然電位により再不導体化している と判断できること,の 4 項目であり,これらから総合的 に判定することとした。なお,「柔らかい乾布で拭き取 れる錆」は許容できる錆であることの判定については,

FIP の文献 3)を参考にした。

 これらの実験結果を受け,環境条件に応じて,PC 鋼 材をダクトへ挿入後,次の期間を限度として PC グラウ トの注入を実施してもよいこととした。

a) 厳しい環境の場合(期間中の日平均気温が 30℃以 上になると予想される場合,または海上での施工):

2 週間以内。

b) 中程度の環境の場合(期間中の日平均気温が 30℃

未満になると予想される場合):4 週間以内。

c) 穏やかな環境の場合(期間を通して日平均気温が 20℃未満と予想される場合):8 週間以内。

 ただし,上記期間内でできる限り速やかに PC グラウ トの注入を行うことが原則である。また,降雨時の PC 鋼材の挿入は避け,やむを得ない場合はシートで覆うな どして雨を直接 PC 鋼材にあてないよう処置をしなけれ ばならない。誤って PC 鋼材を濡らした場合には,乾い た布などで水分を拭き取ってからシースに挿入しなけれ ばならない。なお,これらと同様の記述は,fib の文献 4),5)にも見ることができる。

( 2 ) 材料の計量について

 これまでは,材料の計量に関する規定は設けていな かった。しかしながら,PC グラウトの配合は,品質に 大きく影響するため,国際規格(ISO)への対応も視野 に入れ,PC グラウト材料は,配合に示された質量であ ることを計量するなどして確認することとした。

 現場で実施した計測結果から,プレミックス材および グラウト混和剤については,製造会社で計量した質量が 製品に記載されているものを使用することを原則とし て,その値を計量値としてよいこととした。一方,セメ ントと練混ぜ水については,現場において,練混ぜ前ま でに計量を実施し,設定された質量であることを確認す

ることとした。なお,セメントと練混ぜ水の質量の計量 誤差については,次の範囲内とした。

a) セメント:セメント計量値の平均値に対して±2.0%

以内。

b) 練混ぜ水:セメント計量値の平均値に対して調整 した練混ぜ水質量の±1.0%以内。なお,セメントの 計量は,抜取り方法によって行うこともできること としたが,詳細については,改訂版を参照されたい。

( 3 ) 寒中グラウト工について

 日平均気温が 4 ℃以下になることが予想されるとき は,PC グラウトの注入作業を行わないことを標準とし ている。しかしながら,冬季においても PC グラウトの 注入作業を行わなければならない場合もある。やむを得 ず寒中に PC グラウトの注入を行う場合は,次の 2 項目 の条件を満足しなければならないこととしている。

a) 注入前にダクト周辺のコンクリート温度を 5 ℃以 上にしておかなければならない。

b) PC グラウトの温度は,注入後少なくとも 3 日間 5 ℃以上に保つことを原則とする。図-4は,現在使 用されているプレミックス材および混和剤 4 種類の PC グラウトについて 5 ℃で養生した時の圧縮強度 と材齢との関係1),2)を示す。5 ℃で 3 日間養生を行 えば十分 5 N/mm2に達することが確認されている。

そこで,土木学会「コンクリート標準示方書[施工 編]」の寒中コンクリート6)で,普通の露出状態に ある部材では,圧縮強度が 5 N/mm2に達するまで を要件として,5 ℃以上で養生する期間の目安が示 されていることに準拠し,グラウトの温度を 5 ℃以 上に保つ期間は,以前の 5 日間から 3 日間を原則と するように短縮した。

 実際の寒冷地における施工では,冬季において 5 ℃を 3 日間保持することが困難であったり,不合理であった りする場合がある。また,冬季施工以外においても,先 に示した環境に応じた PC グラウト注入までの期間を超 えて注入作業が行えないことが想定される場合には,以 下に示す一時的な防錆対策のうち,いずれかを行わなけ ればならない。

0 10 20 30 40 50 60 70 80

圧縮強度(N/mm2

7  10  14  21  28

材 齢(日)

Pre-ULV Pre-HLV LV HV

-4 低温環境下(5 ℃)における圧縮強度発現結果

(5)

a) 防錆油によってコーティングされた PC 鋼材を使 用する。

b) 乾燥空気(ダクト内の湿度が 60%を上回らない ような制御)を連続的または間欠的にダクトに通風 をしなければならない。

 これは,先に示した屋外暴露実験の結果を反映したも のであり,これらの対策を行った場合は,PC 鋼材をダ クトに挿入後 25 週程度まで有効であることが実験に よって確認されている。

 上記の対策を実施しても,PC 鋼材の腐食が避けられ ないこととなることが想定される場合には,PC 鋼材の恒 久的な防錆対策を実施することが望ましいとした。恒久 的な防錆対策としては,樹脂被覆 PC 鋼材の使用がある。

これを用いる場合には,関連基準を参考にするとよい。

3.6  6章 検査

 6 章の検査では,主な改訂として下記の項目が挙げら れる。

( 1 ) 圧縮強度試験について

 「6.2.2 品質検査」において,これまでの圧縮強度試 験の判定基準は材齢 28 日で 30 N/mm2以上としていた。

工事ごとの基準試験(試し練り)は実施工に近い環境条 件で実施することが重要であるが,この判定基準に従う と,施工場所や時期によっては実施工と環境が異なる場 合があることが指摘されていた。

 そこで,圧縮強度の発現が遅れる低温環境下(5 ℃環 境)において,材齢に伴う圧縮強度発現を確認する試験 を実施した1),2)。試験結果を図-4 に示す。その結果,一 部の PC グラウト材料を除いては,材齢 7 日において 30 N/mm2を超えることが確認された。また,材齢 7 日で 保証強度を満足しなかった材料に関しても,材齢 28 日 では 40 N/mm2以上の強度発現が確認された。この結果 を踏まえ,より実施工と近い環境条件で工事ごとの基準 試験(試し練り)を実施することを目的として,圧縮強 度の保証材齢を材齢 7 日以降で 28 日までに 30 N/mm2 以上を確認することとした。

( 2 ) ブリーディング率,体積変化率試験について  「6.2.2 品質検査」において,ブリーディング率およ び体積変化率試験については,図-5に示す鉛直管試験

(JSCE-F 535)を採用しているが,鉛直管試験に関する 日常試験について以下のように改訂した。

 今回実施した一般環境下における鉛直管試験結果を 図-6,図-7に示す1),2)。その結果,一度,ブリーディン グ高さが 0 mm となるとその後ブリーディングが再発生 することがないこと,体積変化においては,ある程度の 時間を経過すれば,それ以降の体積変化がほとんどな く,かつ 24 時間後の測定においては,体積変化率の判 定基準である±0.5%以内を満足することが分かった。

また,低温環境下でも同様な結果となった。そこで,従 来の鉛直管試験では 24 時間後に最終の測定を行う必要

があったが,日常管理試験に限り,グラウト上端の高さ 変化が±0.5%以内で,その値が連続 3 回(2 時間)の 計測で変化しないことを確認した時点で,ブリーディン グ高さが 0 mm(ブリーディング率が 0 %)であれば,

試験を終了してもよいものとした。日常管理試験におい ては,PC グラウトが硬化前に鉛直管試験を終了できる

200程度

グラウト高さ  1500 

PC 鋼より線 キャップ

注入口

管長 1700程度

-5 鉛直管試験の概要

0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30 0.35

ブリーディング率(%)

0. 6. 12. 18. 24.0 経過時間(h)

Pre-ULV-1 〜 3 Pre-HLV-1 〜 3 LV-1 〜 3 HV-1 〜 3

-6 一般環境下におけるブリーディング率の推移

−0.35

−0.30

−0.25

−0.20

−0.15

−0.10

−0.05 0.00

体積変化率(%)

0. 1. 2. 3. 4. 5.0 経過時間(h)

Pre-ULV-1 〜 3 Pre-HLV-1 〜 3 LV-1 〜 3 HV-1 〜 3

-7 一般環境下における体積変化率の推移

(6)

ことになり,試験装置(鉛直管)の再利用が可能となる。

( 3 ) 日常管理試験の頻度について

 PC グラウトの品質は現場の状況により微妙に変化す るため,適切な頻度で試験を行って品質を確保する必要 があり,「6.2.5 日常管理試験」において,これまで 5 バッチごとに 1 回レオロジー試験を実施することとして いた。しかし,性状の変化が少ない割に頻度が過大との 指摘を受け,以下に示す試験時期および頻度で品質管理 試験を実施することとした。

 材料温度や PC グラウト機器の温度の影響を受けやす いと考えられる施工日の最初においては,連続した 3 バッチについて連続的にレオロジー試験と温度測定を実 施する。その 3 バッチの試験結果が,規格値を安定して 満足し,かつ温度差が 5 ℃以内であることが確認された 場合には,シースへのグラウト注入を開始してよいこと とし,以降のバッチについては,温度計測のみを継続的 に確認すればよいこととした。

 PC グラウトの施工日の最初には,設計で設定した流 動性を満足するために配合の調整と練上がり温度を確認 するため,同一日内においては,PC グラウトの練上が り温度が大きく変化することは考えられず,練上がり温 度が 5 ℃以上変化する場合には,材料の恒温状態が維持 できていない等,なんらかの状況の変化が発生したと想 定されることから,その時点で流動性のチェックを行う こととした。

4 .  お わ り に

 今回の改訂により,PC グラウトの設計施工における 信頼性の更なる向上,より合理的な品質管理が図られた ものと考えられる。PC グラウトの役割は極めて重要で ある。そのことを再認識し,今後の PC 構造物の施工に 本改訂版をご活用頂ければ幸いである。

 最後に,改訂にあたり多大なるご協力をしていただい た委員会委員各位および WG に参加していただいた 方々,また,各種試験で材料の提供他,協力をしていた だいた混和材料製造会社,PC 鋼材製造会社に厚くお礼 申し上げます。

参 考 文 献

1) プレストレストコンクリート工学会:PC グラウトの設計施工指針

─改訂版─,付録,2012

2) 池田尚治・手塚正道・二井谷教治・細野宏巳:PC グラウトの設計 施工指針の改訂について,プレストレストコンクリート,Vol.55,

No.3,pp.74~83,2013

3) FIP:FIP Recommendations, Corrosion Protection of Prestressing Steels, 1996. 9

4) fib:Bulletin 20, Grouting of Tendons in Prestressed Concrete, 2002

5) fib:Bulletin 33, Durability of Post-Tensioning Tendons, 2005 6) 土木学会:2007 年制定コンクリート標準示方書[施工編],2007

PC グラウトの設計施工指針改訂委員会 委員構成

委員長 池田尚治 幹事長 睦好宏史

委 員  青木圭一,呉 承寧,小川彰一,勝田浩一,

国枝 稔,近藤拓也,玉井真一,玉越隆史,

津吉 毅,野島昭二,橋本親典,矢口 稔,

山家芳大,渡辺博志

委託側  今川隆広,國富康志,鈴木雅博,武部行男,

手塚正道,徳光 卓,二井谷教治,西村一博,

舩野浩司,細野宏巳,大和信夫,吉松秀和 WG メンバー(委員を除く)

     東 洋輔,中田 学,堀 健治,本田 亮,

山口隆裕,山口光俊

(敬称略)

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