論文内容要旨
Whole-genome analysis of human papillomavirus genotypes 52 and 58 isolated from Japanese women with cervical intraepithelial neoplasia and invasive cervical cancer
(日本人女性から検出される HPV52/58 の全ゲノム解析)
Infectious Agents and Cancer 12 巻 44 頁 DOI 10.1186/s13027-017- 0155-4 2017 年
外科系 産婦人科学 天神林友梨
背景:
ヒトパピローマウイルス 52 型および 58 型(HPV52/58)は、日本を含む東 アジア諸国での子宮頸部異形成(CIN)および子宮頸がん(ICC)の患者に 頻繁に検出される。HPV52/58 には他の HPV 型と同様に、ウイルス全ゲノム 配列の 10%未満の違いによるバリアントが存在する。しかし、これまでに その全ゲノム配列およびウイルス蛋白質の変異に関する研究は、十分には 行われていない。本研究は、日本人における HPV52/58 の全ゲノム配列を 解析することで、その配列多様性を明らかにすることを目的とした。
方法:
日本人 CIN/ICC 患者から採取した子宮頸部擦過細胞検体より DNA を抽 出し、long-range PCR によって HPV52/58 全長ゲノムを増幅した。増幅し た HPV DNA を、次世代シークエンサーを用いて解析し、その全ゲノム配列 を決定した。得られた HPV52/58 全ゲノム配列を用いて系統樹解析を行い、
各検体のバリアント lineage/sublineage の帰属を行った。またウイルス 蛋白質のアミノ酸残基の多様性を解析するために、個々の HPV 蛋白質にお けるシャノンエントロピー値を計算した。
結果:
52 例の HPV52 陽性検体(CIN1, n = 20; CIN2/3,n = 21; ICC, n = 11) のうち、50 例が lineage B(sublineage B2)、2 例が lineage A(sublineage A1)に属していた。48 例の HPV58 陽性検体(CIN1, n = 21; CIN2/3, n = 19; ICC, n = 8)のうち、47 例が lineage A(sublineage A1/A2/A3)、1 例 が lineage C に属していた。また日本人の HPV52/58 ゲノム配列とバリア
ントの リフ ァレ ン ス配列 を比 較 解 析 するこ とで 、個 々 のバリ アント lineage に特有の一塩基多型を同定した。エントロピー解析の結果、HPV52 で E1 蛋白質の多様性が高かったのに対し、HPV58 では E7、E4、L2 蛋白質 の多様性が豊富であった。
結語:
日本人 CIN/ICC 患者からの臨床検体において、HPV52/58 のバリアント 分布は、その組織型に関わらず、特定のバリアント(HPV52 は lineage B、
HPV58 は lineage A)に著しく偏っていた。ウイルス蛋白質のアミノ酸残 基の多様性は、HPV52/58 の間で異なるパターンを示したことから、異なる 選択圧がこれらの HPV に働いていることが示唆された。