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看護師による電話での検診調整の取り組み

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Academic year: 2021

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(1)

A. 研究目的

前年度、 患者個々の受診困難な理由に対してできる 限り調整することで、 スモン検診率の向上を図ること を目的に、 検診案内送付時に返信用はがきを同封し、

そのハガキの返信後に看護師による電話での検診調整 を試みた。 その結果、 前年度より検診者 1 名の増加に つながったが、 研究の課題として、 1 回の電話での調 整が困難であると考えた。 今年度は、 スモン検診率向 上を図ることを目的として、 新たに、 検診案内送付前 にも電話での検診調整を試みたので、 ここに報告する。

B. 研究方法

平成 27 年度筑後地区検診案内送付名簿をもとに、

検診案内送付前に、 検診対象者 16 名と電話での調整 を試みた。 検診案内送付時には昨年と同様に、 検診希 望と検診調整の電話連絡希望の有無を確認するために 郵送ハガキを同封した。 郵送ハガキの返信後、 再度、

対象者に対して、 電話での検診調整を実施した。

郵送ハガキには、 検診場所の希望と、 検診希望しな い方に対して、 電話で検診が難しい状況、 生活などを うかがい検診調整や状況に応じた相談が可能であるこ とも記載した。 今年度は新たに、 現在の療養場所と連 絡先の記載を追加した (図 1)。

(倫理面への配慮)

知り得た情報は研究以外の目的に使用しない、 個人 が特定されないように配慮し、 研究終了後に破棄する。

― 150 ―

看護師による電話での検診調整の取り組み

〜検診案内送付前後の連絡を試みて〜

藤井 直樹 (国立病院機構大牟田病院 神経内科) 今村亜由美 (国立病院機構大牟田病院 看護部)

研究要旨

前年度、 福岡県筑後地区におけるスモン患者の検診率向上を図ることを目的として、 看護 師による電話での検診受診の調整を試みた。 今年度は、 その課題を踏まえて、 検診案内時の 郵送ハガキの返信にて、 現在の療養場所と連絡先を把握できるようにして、 検診案内送付前 と後に、 看護師による電話での検診調整を試みた。

検診案内送付前に、 対象者 16 名のうち 11 名と電話連絡にて調整を図った。 また 6 名から の返信はがきにて、 検診希望を把握し日程調整を図ったこと、 ハガキの返信はなかったが検 診案内送付前の電話連絡で検診希望のあった対象者に電話連絡にて調整を図り、 8 名が検診 受診した。 昨年同様の検診受診者数の維持であったが、 検診歴のない患者の新たな検診者の 確保と死亡された対象者の把握につながった。

看護師による電話連絡により、 検診の内容や意義、 検診調整できることの説明、 生活状況 や困りごとの相談において、 検診につなぐことができたと考える。 長期に渡って薬害による スモンを抱えて生きる患者にとって、 検診や電話連絡で自分の身体や生活を病いの体験とし て語るという医療者との関わりが、 苦悩を和らげること、 しいては信頼関係を築くことにつ ながる、 さらに病気とともに歩んできた経過を振り返ることで、 現在やこれからの人生を歩 むための対応を考え実行することを支えることにつながると考える。 検診と電話連絡の機会 は、 このような意味で重要であると考え、 継続していくことの必要性があると考える。

(2)

C. 研究結果

今回の取り組みにより、 前年度同様の検診受診者 8 名を維持できた (表 1)。

検診対象者 16 名に対して、 検診案内送付前の電話 連絡にて、 連絡先不明の 5 名を除いて、 家族のみとの 連絡を含め 11 名と話すことができた。 案内送付同封 ハガキの返信は 6 名であり、 その後、 再度、 4 名の対 象者に電話連絡にて日程調整を図り、 病院での検診 7 名、 往診 1 名となった。 検診者数は前年度と同様であ るが、 内訳は死亡された対象者がおられ、 電話連絡に て、 検診歴のない新たな検診者 1 名の確保につながっ た (図 2)。

案内送付前の電話連絡では、 これまでの経過や生活 の様子をうかがい、 困りごとがないか確認するととも に、 検診のお知らせと、 検診を受けたことのなかった 対象者には、 検診の意義や方法について説明した。 そ の結果、 前回検診後の変化の確認や、 生活での困りご とを聴くことができ、 療養場所の確認ができた。 また、

死亡された対象者の把握ができ、 遺族と病気の経過に ついて話すことができた。 検診希望しない理由として、

自立して何とか生活できているが付き添いがいない、

心理面の弊害として、 検診してもよくならない、 周り に理解されない、 周りに隠しているなど話され、 1 名 は検診案内を拒否された。

ハガキの返信 6 名において、 病院での検診希望者 4 名、 往診希望者 1 名であった。 療養場所の把握ができ、

連絡先不明者A氏と連絡がとれた。 A 氏は入院中であ り検診にはつながらなかったが、 家族と患者のスモン の経過や思い、 家族の介護状況について聴く機会になっ

た。 検診経験のある 5 名は病院での検診と往診につな がった。

案内送付後の電話連絡では、 4 名に電話連絡をした 結 果 、 新 た に 検 診 歴 の な い B 氏 が 病 院 で の 検 診 に つ ながった。 1 名は昨年同様、 往診の日程調整を図り実 施につながった。 案内送付前の連絡で希望があったが ハ ガ キ の 返 信 の な か っ た B 氏 に つ い て は 検 診 歴 が な く、 付き添いの家族との調整を図り検診につながった。

B 氏は検診案内送付前の連絡後、 継続して検診の日程 調整や症状に対する電話相談を数回行っていた。 また、

A 氏はこれまで検診歴がなく、 他の疾患による誤嚥性 肺炎で入院中であったが、 案内送付前後の電話連絡に より、 家族から入院中の病院への往診希望があり、 経 過や状態の把握を重ねたが、 期間中に検診できる状態 の改善がみられず往診にはつながらなかった。 残りの 1 名は、 検診歴がなく、 前年度の電話連絡にて検診の 希望があったが病院が遠方であることや検診期間中の 日程の調整ができずに検診につながらなかったもので あり、 今回、 送付前後ともに電話連絡を試みたが、 不 在で連絡がつながらなかった。

― 151 ―

表 1 検診受診者の年度別比較

図 1 研究方法

図 2 看護師による電話連絡の結果

(3)

D. 考察

前年度からの看護師による電話連絡の取り組みは、

電話・手紙等で個別に受診推奨を行う、 未受診への再 度受診推奨を行うことであった。 がん検診の高い受診 率を達成している国では、 コール・リコール制度とい う仕組みが用いられており、 報告している取り組みの 個別受診推奨がコール、 電話での連絡がリコールとな り、 検診率維持や向上につながっていると考える。

今回、 新たな取り組みとして、 看護師による案内送 付前の電話連絡にて、 生活状況の把握、 療養場所の把 握、 検診が困難な理由の把握のみならず、 検診歴のな い対象者にとっては検診内容や意義を具体的に知るこ とができ調整につながったと考える。 また、 死亡され た対象者の家族のグリーフケアのひとつの機会になっ たと考える。

返信ハガキの療養場所と連絡先の把握の追加によっ て、 対象者の状況把握だけでなく、 新たに連絡がとれ ることにつながった。 案内送付後の電話連絡において も、 対象者の生活状況や身体状況の相談にのることが でき、 介護者である家族の状況や思いを聴く事ができ た。

以上のことから、 看護師による検診調整のための電 話連絡は、 受診推奨にとどまらず、 電話相談の特徴も もつと考える。 電話相談の目的の中に、 心理的緊張を 和らげ気持ちを整理する、 当面の生きる希望や方向を 得る、 情報や社会資源の提供 (コンサルテーション) があると言われている。 本取り組みは検診率向上に向 けた調整の電話連絡という目的ではあるが、 看護師に よる電話連絡によって、 生活状況や苦悩を語り聴く機 会になっており相談につながることもあった。 長期に 渡ってスモンという病気を抱え苦悩している対象者と 家族の状況を尋ね気持ちを整理する、 検診や介護の情 報提供の機会になっていると考える。

看護師による検診調整のための電話連絡は、 高齢化 により対象者の減少ゆえに可能であるが、 案内送付に よる文字での検診説明や返信はがきによる状況把握に 加え、 電話での検診の内容や意義、 検診調整できるこ との説明、 さらに、 生活状況を尋ねながら、 対象者や 家族の病気とともに生きている、 生活していることを 語る機会になっていることから、 検診内容や調整の具

体的な理解につながり、 検診をうけることにつながる のだと考える。 さらに、 検診や電話を通じて、 スモン を理解している医療者に生活や病気を語ることは、 患 者と家族にとって、 病気を隠す者には苦しいことが推 測されるが、 苦悩を和らげること、 しいては信頼関係 を築くことにつながるのではないかと考える。 長期に 渡って続く病気を抱える慢性疾患患者の看護において、

病みの軌跡や人生の軌跡を描くことの重要性が言われ ている。 病気とともに歩んできた経過を振り返ること は、 現在やこれからの人生を歩むための対応を考え実 行することを支えることにつながる。 長期に渡って薬 害によるスモンを抱えて生きる患者にとって、 検診や 電話連絡で自分の身体や生活を病いの体験として語る という医療者との関わりがこのような意味で重要であ ると考え、 継続していくことの必要性があると考える。

E. 結論

検診案内送付前後の連絡調整を図ったことにより、

検診対象者の生活状況の把握と、 検診率の維持、 さら に検診歴のない対象者の検診につながった。

G. 研究発表 なし

H. 知的財産権の出願・登録状況 なし

I. 文献

1 ) ピエール ウグ編・黒江ゆり子他訳:慢性疾患の 病みの軌跡 コービンとストラウスによる看護モデ ル 医学書院 1995

2 ) 長江弘子編:看護実践にいかすエンド・オブ・ラ イフケア 日本看護協会出版会 2014

3 ) 桂木綾:電話相談の特徴と非専門家の電話相談ボ ランティアへのサポートに関する文献研究 九州大 学心理学研究 11 p 145-152 2010

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参照

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