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「NICU入院を経験した母子の関係性に関する研究−母親の主観的体験と母子相互交渉場面の検証を通して−」 [ PDF

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(1)NICU 入院を経験した母子の関係性に関する研究 −母親の主観的体験と母子相互交渉の検討を通じて− キーワード:低出生体重児・主観的体験・母子相互交渉・交互作用発達モデル 人間共生システム専攻 中島俊思 1.問題と目的 近年、産科学や新生児医療の発展により低出生体重児 の生存率は著しく増加している。Klaus Mind(2000) は、低出生で生まれたことに加えてその後の子の生活に 影響を与えるような様々な要因を報告している。初期に 何らかの神経学的なダメージを受けやすく、2∼3倍の 割合で行動上での障害が起こりやすいとしている。国内 における低出生体重児の発達に関する研究でも、知的機 能(塚本 2000, 神谷 2001, !田 2001, 野井 2003, 松 尾 2003)に関する研究が多数見受けられ、低出生体重児 特有の傾向として視知覚能力の特異性が報告されている。 他方、早産に伴う長期的な結果として、早産を経験した 各々の養育者に特有の反応が生み出されることが報告さ れている。低出生体重児を出産した母親は、非現実感、 失望感、中断感を抱くことが報告されている(Klaus and Kennell 1985, Sturn 1998) 。Klaus Mind(2000)は、未 熟児の出産・妊娠にかかわる失敗感や人工授精や薬物療 法にかんする罪悪感といった様々な母親の心理特性を報 告している。原田(2001)は NICU での面会をへて愛着 を形成していく過程を明らかにしている。下田(2001) は正常分娩をした母親に比べて NICU に入院した児を持 つ母親の不安が高いことを示唆している。低出生体重に ともなう様々な子ども側のリスクと母親側のリスクを統 合的・全体的に捉えようとする報告が臨床現場から際立 って多くなされている。小泉 (2000)は医療サポート、 看護的なサポートに加えて、その後の育児や母子関係性 を考慮にいれた心理社会的サポートの必要性を取り上げ ている。永田(2002)は NICU 退院児の母子同席による 母子治療の過程を報告している。橋本(1996,2000)は NICU における母子の関係性の発達を段階モデルとして 整理し、治療のみならず母子を支える環境としての NICU の役割の重要性を説いている。Meisels(1993)は、 80 年代から 90 年代初期に実施された低出生体重児を対 象とした 13 の介入プログラムの研究を包括的に位置づ け考察し、妊娠・出産にともなう母親の主観的体験への サポートや母親の子に対する感受性や応答性など養育態 度へのガイダンスをプログラムとしている介入が、乳児 から幼児にかけての長期的な認知面や知覚・運動面の改 善に効果がある可能性を考察している。 臨床現場や基礎研究からの報告や示唆には、大きく2 つの子どもの発達に関する視点が含まれている。一つに 交互作用発達モデル(Sameroff 2004)があげられる。 交互作用発達モデルで定義される発達とは、個体の生物. 学的要因や養育者の応答などの環境的要因のみが単 独で作用するのではなく、双方が絶えず影響を与え合 いながら一つの発達の様相を呈するというものであ る。二つ目の視点に母親の主観的な意味づけの重要性 の強調である。これは近年の乳幼児精神保健の普及に 由来する。Rosenblum(2004)は乳幼児の問題行動など に、母子の関係性という立場からの査定・診断の重要 性を提唱し、その関係性は単に行動のみならず、関係 性をどのように意味付けているかといった表象の重 要性を説いている。これまでの研究では、NICU 入院 といった特殊な体験をもった母子に対して NICU 入 院中やその直後の母子の関係性に関する研究は見ら れるものの、NICU を退院した乳幼児期において、母 子が相互交渉場面でどのようなかかわりを展開して いるかという客観的行動と、母親が母親自身や子ども との関係のなかで出産・妊娠や NICU の入院をどの ように意味づけているかという主観的体験の両側面 から十分に検証がされてきたわけではない。したがっ て本研究では交互作用発達モデルの見地から母子相 互交渉場面における母子の行動を検証し、語りを通し て表現される母親の主観的体験との連続性を見出す ことを目的とする。 相互交渉場面の検証に際し、交互作用モデルの視座 にたった低出生体重児を対象とする重要な研究とし て、Landry らの乳児の共同注意:Joint-attention に 関する縦断研究があげられる。母子の玩具を用いた自 由遊戯場面のビデオ観察において、低出生体重児は母 親の注意を向けさせることや視線を調整することに 問 題 が あ る こ と が 示 さ れ て い る ( Landry 1989, Gartner et al 1991) 。子どもに対する母親の働きかけ の影響として、中でも医学的な高リスク群には子ども の注意にそった形の働きかけや誘いかけが、乳児の注 意とは別の玩具を扱うといった働きかけよりも、共同 遊びを増加させる。長期縦断的検証においても、初動 や応答性といった社会的能力には状況維持的な養育 態度が高く寄与し、この寄与の程度は未熟児群のほう が満期群にくらべて有意に高いことが支持されてい る(Landry 1998) 。同様に認知・言語能力に対して は状況制限的養育態度が負の寄与をし、高リスク群は 満期群にくらべて高く負の寄与することがわかって いる(Landry 1997) 。本研究は、Landry の一連の研 究に倣い、母子相互交渉場面の観察に、母子共同の玩 具による自由遊戯場面を設定した。子ども側から母親.

(2) に対する行動を広く“社会的コミュニケーション行動” として捉え検討した。母親の行動に関しては、子どもの 注意関心ごとに、どのような働きかけをどの程度行なう かといった観点から検討した。母子相互交渉の母子双方 の情緒的状態や遊びを通しての活動性に関しても評定し た。母親の乳児との関係性における主観的体験に関する 研究として、Zeanah(2000)は、母親が乳児に関する 観念や思いを自由に語る半構造化面接、WMCI;Working Model of the Child Interview を考案している。本研究で は、Zenah の一連の研究にならい半構造化面接法を用い て、 母親の子どもや NICU などの主観的体験を検討した。 質問項目として、NICU 入院・妊娠・出産・子どもに関 するが設定された。データの分析に際して、質問を介し て展開する発話行為への積極性、語りに付随する情緒的 な表出、それらの一貫性・安定性、といった語りの形式 に関して主に検討を行なった。 2.方法 1)協力者・調査日時・場所・家庭訪問の手続き 2002 年9月から 2003 年1月の期間に某大学病院周 産期医療センターの NICU への入院を経験した8家庭 (双子1家庭を含む)の母子を対象に子どもの出生年月日 より 22∼23 ヶ月の期間に実施。母親と調査者による半 構造化面接、母子の自由遊戯場面のビデオ観察、母親記 述による遠城寺式乳幼児発達検査の順で実施した。尚、 本研究では、NICU 入院に対する意味づけを含む母親の 主観的体験を、より広義に捉えるため、NICU 入院の理 由が低出生体重児でない母子を2組を含む。(2名に関して. Table1 母子相互交渉場面の分析指標 母親行動−①維持率・・・子どもの注意関心によりそう行動 や声かけをした比率(初動や応答性といった社会的能力に 高く寄与(Landry 1998, 1997) ) 、②指示率・・・母親主導で 子どもを母親の関心事にむけさせる働きかけで共同遊びに 展開し難い働きかけの比率、③関与率・・・“維持”か“指示” いずれかの、子どもに対する積極的な関与を行なっている 比率、④抑制率・・・子どもの行動を抑制し制限する働きかけ の比率(認知・言語・社会的能力に負の寄与(Landry 1997,1998) ) 。[評定者間一致率=89.4% ] 子ども行動−①誘いかけ率・・・子どもの母親の注意を向け させる方略を用いた比率②表情注視率・・・母親の表情を参 照した比率。[評定者間一致率=82.8%] 母子の状態の評定−①快情動率(母子ごと)・・・笑顔や笑い 声など快の情動を表出した比率、 ②活動性率(母子ごと)・・・ 移動や大きな動作を伴うような活動的な行動が見られた比 率、③声質・・・子どもの声調に応じた変化の度合い. Table2  半構造化面接質問項目 現在の状況. 妊娠出産について. NICUについて. 子どもについて. は NL:Not Low-birth-weight で示す。) 将来について. 2)母子相互交渉のビデオ観察 指定玩具のみを用いた母子の自由遊戯場面をビデオ録 画し、うち8分間を 10 秒1単位、合計 48 単位にタイム サンプリング法のよる評定を行なった。分析で用いた指 標を Table1 に示す。 3)半構造化面接 半構造化面接は①現在の状況、②妊娠・出産について、 ③NICU について、④子どもについて、⑤将来について、 ⑥面接の感想の6つのテーマから質問項目が構成され、 各テーマに質問項目が配されている。質問項目を Table 2に示す。面接を通じ母親が時間軸にそって体験やその 意味づけを築いていくことを目的とし、テーマ②からテ ーマ⑤に至る質問項目は、過去・現在・未来と時系列に 配されている。②妊娠・出産、③NICU のテーマでは、 状況や経緯の説明といった事実の叙述を求める項目(例 〈出産の時の状況を聞かせてください〉)、母親自身の視 座に立った意味づけを表現することを目的とした項目 (例〈お母さんにとって NICU はどのような場所・時間 でしたか〉 ) 、子どもの視座にたった意味づけを求めた項 目(例〈○○ちゃんにとって NICU はどういう時間・場 所でしたか〉 ) 、母子という視座にたった意味づけを求め た項目(例〈お母さんと○○ちゃんお二人にとって NICU はどういう時間・場所でしたか〉 )が、各々のテーマに配 されている。⑤将来について、のテーマも同様の項目が 配されている。④子どもについて、のテーマにおける8. 面接について. NICUの入院から今までのことを簡単に聞かせてください。 退院後に身体疾患に関わることで医療機関にかかりましたか。 今までにお子様のことで相談機関等を領されたことはありますか。 通園施設等に通われたことはありますかすか。 その他育児サークルの活動に参加していますか。 妊娠・出産する前に、子どもを持つということにどのようなイメージがありましたか。 妊娠した時の状況を覚えていますか。聞かせてください。 今振り返ってみて、お母さんにとって○○ちゃんの妊娠とはどんなものでしたか。 お母さんとお子さんお二人にとって○○ちゃんの妊娠とはどんなものでしたか。 出産したときの状況・お気持ちは覚えていますか。聞かせてください。 今振り返ってみてお母さんにとって○○ちゃんの出産とはどんなものでしたか。 お母さんと○○ちゃんお二人にとって出産とはどんなものでしたか。 振り返ってみてNICUでの時間はお母さんにとってどのような時間・場所でしたか。 NICUでの時間は○○ちゃんにとってどのような時間・場所でしたか。 NICUでの時間は○○ちゃんとお母さんお二人にとってどのような時間・場所でしたか。 お母さんにとって出産から今までの二年間はどんな時間でしたか。 お母さんから見て○○ちゃんはどのような性格の子ですか。 どのあたりからそのように思いますか。 兄弟姉妹と比べてみてどうですか。 お子さんは、ご両親のどちらかに似ているところ、似ていないところはありますか。 実際に子育てを経験されていて、○○ちゃんを育てるとはどのようなものですか。 ○○ちゃんを扱う上で難しいと思う気象または行動などのような時ですか。 そのときお母さんはどういうお気持ちでそのように対応されていますか。 周囲の人は○○ちゃんをどのようなお子さんだと思っていますか。 ○○ちゃんは将来どうなっていくと思いますか。 お母さんと○○ちゃんお二人は将来どのようになっていくと思いますか。 将来に関する心配事はありますか。 今回このようなインタビューという形で話されてみてどうでしたか。 妊娠や出産など改めて振り返ること関してどうですか、どのようなお気持ちになりますか。 ○○ちゃんについて振り返ることに関してどうですか、どのようなお気持ちになりますか。. Table3 半構造化面接の語りの形式の評定の定義 語りの自由度・・・質問項目から自らの体験を振り返り、表 現する度合いに相当する指標。4段階評定で最も低い“1” は表現や質問に対する回答の“硬直”や“停滞”といった 回避的な態度を意味すると定義する。 “4”は回答・対話 への“柔軟”や“活性”といった積極的態度を意味する。 自由度変動指数・・・自由度の一貫性の指標として自由度 の散らばり指数である標準偏差を自由度の変動指数とし て採用する。自由度変動指数の低さは、面接を通して“一 貫性ある” “安定した”語りの態度を、変動指数の高さは “不安定さ”や“一貫性のなさ”を表す。 感情表出度・・・質問への回答を通じて付与されている感 情的側面の強さを示す指標である。4段階評定で最も低い “1”は“ためらい”といった抑制的な情緒特性を意味す る。評定“4”は“明け透け”や“感情の吐露”といった 開放的な情緒特性を意味する。 表出度変動指数・・・感情表出度の一貫性の指標として感 情表出度の散らばり指数である標準偏差を感情表出度の 変動指数として採用する。表出度変動指数の低さは、面接 を通して一貫性ある情緒的態度を、変動指数の高さは情緒 的な“移ろいやすさ”や“不安定さ”を表すと定義する。. つの質問項目は Zeanah(2000)を参考に考案された。.

(3) 得られた録音テープと逐語録をもとに、語りの形式に関 して分析を実施した。語りの形式に関する評定は、 “語り の自由度”と“感情表出度”の2つの指標から評定がな された。評定は質問項目1つに対して、それぞれ二つの 指標による評定がなされた。定義を Table3に示す。 3.結果と考察 1)相互交渉場面における母子の影響について 母子相互交渉に影響を与える子どもの行動や状態に関 して、発達指標の影響を取り除いた偏相関による検討を 行なった。結果を Table4 に示す。 “母親の快情動率”と “表情注視” 、 “母親の活動率”と“表情注視”の間に正 の偏相関がみられた。同様に、 “子どもの快情動表出率” と“母親の快情動表出率” 、 “子どもの快情動表出率”と “母親の活動性率”との間にも有意な正の偏相関がみら れた。このことは、母親の情緒的な高まりや活性化した 活動と、子どもの情緒的な高まりや母親の表情をみる行 為が強く連動していることを示すと考えられる。子ども の母親への表情注視を伴うような母子ともに活性化され た状態は、母子が互いの反応や情動状態を強く意識した 相補的なやり取りを展開していることを示す可能性が想 定される。 子どもの行動・状態において、 “誘いかけ率”と“子ど もの快情動率” 、 “誘いかけ率”と“子ども活動率”との 間に正の偏相関がみられた。また、 “誘いかけ”と遠城寺 式発達検査によって得られた子どもの発達指標との間に 有意な傾向の正の偏相関がみられた(Table4外) 。 “誘い 掛け”といった母親から反応が返ってくるのを期待して 働きかけたり依頼したりする行動が、子どもの発達年齢 が上がるのに伴って増加する行動である可能性を示唆す る。さらに、その“誘いかけ”が“情動表出”や“活動 性”の高まりと強く連動していることから、発育状況に よって左右される子どもの発達要因が、母子相互交渉の 質を規定する側面が想定される。 一方で“維持” “抑制” “指示”といった母親かの働き かけと、子どもの“誘い掛け” “表情注視”との間に有意 な偏相関がみらなかった(Table4外)。このことは即ち、 “維持” “抑制” “指示”などの母親から子どもへの行動 は、子どもから持ちかけられるコミュニケーション行動 への応答や反応するのとは異なり、母親が主導する形で 相互交渉に持ち込まれる行動であることを示す。即ち、 母親が母子相互交渉の質を規定する側面が想定される。 2)相互交渉場面における母親の働きかけ・状態と、語り の形式との関連性について 発達指数の影響を取り除いた偏相関による、語りの形 式と相互交渉における母親の行動との関連の検討を行な った。結果を Table5に示す。 “語りの自由度”と“抑制 率”に有意な負の偏相関、 “自由度変動指数”と“抑制率” に有意な正の偏相関がみられた。想起や発話行為に対す る消極的・抑制的態度に顕れている母親の特定の主観的 体験が、子どもの行動を制限し・抑制するような養育態 度を取らしめる要因となっている可能性として考えられ る。 “感情表出度変動指数”と“活動率”に有意な負の偏 相関、 “感情表出度変動指数”と“抑制率”に有意な傾 向の正の偏相関がみられた。主観的体験の表出における. 情緒的な不安定さが、“抑制”といった養育態度や活 動性の低さをもたらしているのかもしれない。一方、 “語りの感情表出度”と“快情動率” 、 “語りの感情表 出度”と“活動率”との間にそれぞれ有意な正の偏相 関みられた。1)の分析において、活動性や情動表出 が母子相互交渉の相補的な性質である可能性、さらに 子どもの発達要因が相互交渉の質を規定する要因が 見込まれた。これらを踏まえると、比較的発達水準の 高い子どもが“誘いかけ”を積極的に用い活発で positive な情動表出がさかんな場合、母親も必然的に 高い活動性や肯定的な情動表出を経験すると推察さ れる。このように情緒的に豊かな相互交渉を日常的に 経験している母親は、主観的体験においても感情表出 の豊かで一貫性ある安定した語りをするのかもしれ ない。つまり子どもの成育状況によって左右される相 互交渉の質が、母親の主観的体験に影響を与える可能 性が考えられる。概して結果は NICU 入院を経験し た母子の関係性は、行動レベルでの相互交渉における 働きかけや態度と主観的体験レベルでの語りの形式 など態度との間に、強い関連性があることを支持して いた。. Table4 子どもの社会的コミュニケーション行動と母子の状態との関連 誘いかけ率 表情注視率 母快情動率. 母活動率. 母声質. 表情注視率. 0.29. 母快情動率. 0.57. * 0.72. 母活動率. 0.58. * * 0.88. 声質. - 0.03. 0.59. 0.40. 0.44. 子快情動率. * 0.75. 0.42. * * 0.88. * 0.76. 0.18. 子活動率. * * 0.84. 0.51. †0.67. †0.66. 0.11. 子快情動率. * * 0.87. †0.67. *の偏相関係数は 5% 水準で有意 (両側) **偏相関係数は 1% 水準で有意 (両側) †の偏相関係数は 10% 水準で有意傾向(両側). Table5 語りの形式の評定と母親行動との関連 関与率. 維持率. 指示率. 抑制率. 快情動率. 活動性. 語りの自由度. †0.68. 0.54. 0.38. * −0.82. †0.67. †0.69. 自由度変動指数. −0.34. −0.55. −0.41. * 0.77. - 0.03. - 0.23. 感情表出度. 0.30. 0.01. 0.25. - 0.14. * * 0.87. * 0.82. 表出度変動指数. - 0.45. - 0.48. - 0.38. †0.66. −0.48. * - 0.71. *の偏相関係数は 5% 水準で有意 (両側) **の偏相関係数は 1% 水準で有意 (両側) †の偏相関係数は10%水準で有意傾向(両側). 3)個別性の検討 個別に相互交渉場面と主観的体験の連続性を検討 するために、母子ペアごとに標準化法を用いて比較検 討を行なった。母親の子どもへの働きかけにおいて、 “D” “G” “H!の 3 名が、他の母親より SD1 以上子 どもの発育に負の寄与をする関わりをする由で抽出 された(Table6,Fig.1,Fig.2 参照)。語りの形式の4つ の評定においても、関わりの特異性で抽出された“D” “G” “H!の 3 名のみが SD1 以上否定的な傾向を持つ 由で抽出された(Table6 参照)。つまり個性記述的視点 からも相互交渉における行動と主観的体験の連続性 を支持しているといえよう。さらに抽出された3名に 対して、“語りの形式”を基軸に“語りの内容”に関 する質的検討を行なった。.

(4) 120.0% 100.0% 80.0% 60.0% 40.0% 20.0% 0.0% A. ) NL B(. C. ) D① D② (NL E. F. G. 関与率. 指示率. 35.0% 30.0% 25.0% 20.0% 15.0% 10.0% 5.0% 0.0%. 指示比率 関与比率. H. Fi g.2 個別にみた母親の関与率と指示率. 50.0%. 120.0% 100.0% 80.0% 60.0% 40.0% 20.0% 0.0%. 関与率. 抑制率. 40.0% 30.0% 20.0% 10.0% 0.0% A. ) NL B(. C. ) D① D② (NL E. F. G. 抑制比率 関与比率. H. Fig.1 個別にみた関与率と抑制率. きかけよりも母親主導でやり取りを展開していく態 度である“指示”の多用する点で抽出された(Fig.2 参 照)。 “語りの形式”においては語りに対する抑制・消 極的態度の指標で抽出された。“語りの内容”の検討 から、全体を通してして調査者の質問からの話題の想 起や対話が展開しない傾向があり、妊娠や NICU に 関して想起に対する困難さを頻繁に表現するなど、表 現に回避的な傾向が目立った。“G”同様「今が大事 だと思っているので」という表現は過去より現在を重 視する“H”の主観的体験を反映されているように読 み取れた。尚、抽出さえた 3組は全て、子どもの NICU 入院の理由が低出生体重であった。3名に共通 して“妊娠” “出産”“NICU” といった過去の想起 に対する回避的傾向が見られたように、低出生体重に まつわる早産や長期 NICU 入院に関する主観的体験 が、母親の子どもへの関わりに強く影響を与えている と考えれる。一方で低出生体重児が快の表情表出に乏 しい傾向(Stiefel, G S. 1987)や気質的な難しさ(Mind 2000)が報告されていることをふまえると、母親の否 定的な働きかけや情緒的に単調な関わりを引き出し やすい子どもの要因がある可能性は否めない。日常的 にそのような相互交渉を経験している母親は、相互交 渉に同調する形で抑制的な主観的体験を形成してい ると見込まれる。. Table6 語りの評定と母親の行動の標準値一覧表 面接の評定 語りの自由度 自由度変動指数 感情表出度 表出度変動指数 母親の行動 関与率 指示率 抑制率 快情動率 活動性率. A 1.10 - 0.89 0.81 - 1.63 A 0.33 - 0.38 - 0.28 - 0.34 0.33. B 0.96 - 0.29 0.63 - 0.06 B 0.52 0.06 - 0.95 0.42 - 0.03. C(NL) 0.70 0.52 1.23 0.12 C(NL) 0.70 - 0.47 0.22 1.46 1.12. D - 1.40 1.98 - 0.10 1.72 D① D② - 0.04 - 1.34 - 0.91 - 0.77 0.72 2.23 - 0.34 - 1.19 - 0.73 - 1.21. E(NL) 0.53 0.45 0.58 - 0.98 E(NL) 1.26 - 0.57 - 0.61 1.56 1.98. F 0.10 0.05 - 0.49 0.07 F 0.33 0.98 - 0.45 0.04 - 0.62. G - 0.71 - 1.10 - 1.73 0.62 G 0.14 - 0.14 - 0.95 - 1.19 - 0.85. H - 1.27 - 0.72 - 0.92 0.15 H - 1.90 2.21 0.06 - 0.43 0.21. “D”は、相互交渉における関わりの消極性や、否定・ 抑制的態度の多用、活動性や情動的な表出の希薄さ、の 指標で抽出された(Fig.1 参照)。語りの形式において、語 りに対する抑制・消極的態度や、まとまりのなさ、それ にともなう感情の表出の不安定さ・一貫性のなさ、が明 らかになった。語りの形式に影響を与える“D”の語り の内容の検討から、妊娠のテーマに関して回答が浮かば ないなどの返答に窮するやり取りが連続した。 “D”が D 自身や母子の関係性を通して妊娠に関するテーマを十分 に整理できず、言語表現として形にならない状態である ことが読み取れた。感情表出度においては、非常に強い が内容は具体的事実にとどまり叙述が深まらない一面、 対照的に NICU への意味づけなど抑制的な一面など特異 な傾向が明らからかになった。 “G”は相互交渉における 情動表出の低さと、面接における抑制的な感情表出で抽 出された。語りの内容の検討から、 “G”妊娠・出産を普 通の出産とは異なる体験の大きなものであるという意味 づけをし、子どもの身体的な発育や状態を非常に強く危 惧し、それら体験や心配事に感情的に抑制された態度を とっていることが読み取れた。 「思い出したくない」 「今 の子育てを楽しみたい」といった明確な想起に関する否 定的な感想から、 “G”の語りにおける感情面での態度を 象徴していると考察される。 “H”は相互交渉における関 わりの消極的である点と、子どもの注意関心に沿った働. 4.本研究の臨床的意義と今後の課題 本研究では、NICU 入院を経験した母親の相互交渉 における子どもへの行動と、主観的体験が連動するこ とが確認された。また、主観的体験が相互交渉に影響 を及ぼす可能性と、子どもの発達に連動する相互交渉 の質が主観的体験を形作るといった、双方向的な解釈 を試みた。一連の結果考察は、2つ点で臨床における 有用性を秘めているように思われる。一つに母親の主 観的体験を用いた母子の関係性のアセスメントであ げられる。主観的体験は、母親が現時点で“妊娠” “出 産”“NICU”など過去の体験に対して「思い出さな い」「よく分らない」といった語りの自由度の低い態 度や、感情表出の希薄な抑制的な傾向が、行動と関連 していることが推察された。つまり主観的体験が関係 性の指標になりうることを意味する。このことは、母 親の主観的体験を取り扱うことの重要性を主張する 乳 幼 児 精 神 保 健 ( Rosenblum 2004 、 Stern1995,2004)の流れに一致する。行動に影響を 及ぼす主観的体験の“語りの形式”や“内容”に関す るより詳細な検証は今後の課題である。二つに主観と 行動の関連性を踏まえた多様な臨床的介入の可能性 である。低出生体重による NICU 入院など母子とも にリスクを持った母子に対して、交互作用発達モデル のように子どもの発達状況・相互交渉・主観的体験な どの視点から他方向的で広義な解釈の余地を残すこ とは、臨床介入の選択や有意義であるように思われる。 臨床介入の目的は、因果モデルに基づいた原因の探求 ではなく、母子の関係性に好循環をもたらすことだか らである。.

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