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早期産で低出生体重児を出産した母親の出産体験に関する検証研究

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早期産で低出生体重児を出産した母親の

出産体験に関する検証研究

森 島 知 子, 國 清 恭 子, 堀 込 和 代

平 川 君 恵, 常 盤 洋 子

要 旨 【背景と目的】 早期産で低出生体重児を出産した母親の出産体験に関する研究は少ない. 本研究の目的は, 早期産で低出生体重児を出産した母親の出産体験の内容を明らかにし, 出産体験の意味づけへの支援を え る手がかりを得ることである. 【対象と方法】 対象は研究実施施設で低出生体重児を出産し, 出産から 1カ 月検診までの間に研究参加の同意が得られた母親 9 名とした. データは半構成的面接法により収集した. 析方法はベレルソンの内容 析を参 に行った. 【結 果】 対象となった 9 名の出産様式は帝王切開での 出産が 5名, 経腟出産が 4名であった. 早期産で低出生体重児を出産した母親の出産体験の内容として,【出 生後の子どもの生存を憂慮した体験】,【早期産となることに恐怖を感じて出産した体験】,【危機的な状況で の夫の対応に満足・不満足感を感じて出産した体験】,【医療スタッフの対応に満足・不満足感を感じて出産し た体験】,【出産に伴う身体の苦痛を感じて出産した体験】,【切迫早産に伴う心身の苦痛を感じて出産した体 験】の 6つのコアカテゴリーが抽出された. また,【出生後の子どもの生存を憂慮した体験】,【早期産となる ことに恐怖を感じて出産した体験】, で全記録単位数の 80%を占め, この 2つのコアカテゴリーが早期産で低 出生体重児を出産した母親の出産体験の特徴を示した. 【結 語】 本研究で抽出された出産体験の内容か ら, 子どもの生存を憂慮し自尊心の傷つきをもつ早期産で低出生体重児を出産した母親には, 産褥早期に妊 娠中の経過からの振り返り, その時々の体験を母親がどの様に受けとめているか確認し, 意味づけを支援す ることが必要であると示唆された.(Kitakanto Med J 2011;61:15∼23) キーワード:出産体験, 早期産, 低出生体重児 は じ め に 我が国の低出生体重児の出生数は年々増加し, その割 合は 1980年 5.2%であったが, 2009 年には 9.6%となっ た. また妊娠期間別出生状況にみる早期産の占める割合 は 1980年 4.1%であったが, 2009 年には 5.7%と増加傾 向にある. 生殖医療の発達に加え, 女性の社会進出に伴 う出産年齢の高齢化, 妊婦の高齢化に伴う合併症の増加 により, 今後も早期産による低出生体重児の出生は増加 することが予測される. 近年, 医療管理の充実や周産期医療の進歩に伴い安全 に出産することがほぼ可能となった. その一方で, 母子 の安全性に加えて満足できるような出産への要望が高 まっている. 出産後の母親は産後 2∼ 3日頃に出産を想起しなが ら, 出産体験を統合し意味づけを行い, 出産体験を再構 築する. 出産体験は母親意識の形成や発達に影響を及 ぼす要因の一つである. 母親が出産体験を価値ある体 験として意味づけができるよう, 看護者による出産体験 の振り返りの支援が行われており,多くの研究者によっ て意味づけの支援の重要性が報告されている. 出産の 経過の事実より, 出産のとらえかたが出産後の母親の心 1 群馬県みどり市笠懸町阿左美606-7 桐生大学短期大学部専攻科 2 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学医学部保 学科 3 群馬県前橋市上沖町323-1 群馬県立県民 康科学大学看護学部 4 群馬県前橋市昭和町3-39-15 群馬大学医学部附属病院看 護部 平成22年11月18日 受付 論文別刷請求先 〒379-2392 群馬県みどり市笠懸町阿左美606-7 桐生大学短期大学部専攻科 森島知子

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理状態に影響を及ぼし, 出産体験を否定的にとらえて いる母親は産後うつ傾向の出現が高いことや, 心的外 傷後ストレス症候群 (PTSD) となり, 子どもに愛着を示 せない母親が存在することが報告されている. しかし, 出産体験に関する先行研究では, 正期産で成熟児を出産 した母親が対象とされている. 新生児集中治療室 (以下 NICU) に子どもが入院した 母親は, 機械的な環境と子どもの外観に衝撃を受け, 自 責感と子どもの将来に不安を感じる. NICU 入院の子 どもをもつ母親の心理過程に関する研究では, 入院の ショックから自責感をもつが, 子どもの生命の保障によ る安 から, 子どもを受け入れるプロセスが深まると報 告されている. また,早期産児をもつ母親の心理過程に 関する研究では, 想像と違う子どもから衝撃を受け, 早 期産への自責感をもつが子どもの成長と共に愛着が高ま り,親役割への適応に至ると報告されている. それらの 母親の中には出産から 1年経過しても出産による自尊心 の傷つきを持ち続けているケースがあった.橋本 は,母 親の自尊心の傷つきが大きいと母親への適応過程が滞る と報告しており, 低出生体重児の出産は母親が加害者と なる虐待の要因になることが懸念される. 以上から, 早期産や低出生体重児を出産した母親は, 母親として自尊心の傷つきを体験し心理的に危機的な状 況にあると えられ, 心理的支援が望まれている. 出産 後の母親の心理的 康には出産体験の意味づけへの支援 が重要であり, 産褥早期に出産体験の振り返りを通して 意味づけを支援し, 出産体験の再構築を促すことができ れば, 出産後の母親の心理的 康の増進に貢献できると える. しかし, 早期産で低出生体重児を出産した母親 を対象とした出産体験に関する先行研究は少ない. そこで, 本研究は, 早期産で低出生体重児を出産した 母親の出産体験を明らかにすることを目的とした. その ことによって, 早期産で低出生体重児を出産した母親の 出産体験の意味づけを支援する手がかりが得られると えた. 本研究における用語の定義 1) 出産体験 : 妊娠の診断から出産開始までの経過と, 出産開始から出産後の経過の中で母親の情緒を伴っ た体験 2) 早期産 : 妊娠 28週から 37週未満の出産 3) 低出生体重児 : 致命的な先天性疾患や予後不良であ る子どもを除いた出生体重が 1,000g 以上 2,500g 未 満の子ども 方 法 1.対象者および調査期間 対象者は研究実施施設 2施設にて出産し, 入院中から 1ヵ月検診までの間に研究参加の同意が得られ, 以下の 4 つの選定条件を満たした母親 9 名とした. 選定条件は, ①妊娠 28週以後, 37週未満で単胎を出産した, ②重篤な 精神疾患の既往がない, または治療中でない, ③子ども は致命的な先天性疾患を合併しておらず, 予後不良でな い 1,000g 以上, 2,500g 未満で出生した, ④子どもは生命 の危機的状況から回復し安定した状態となり, 母親は産 褥経過に問題がない, とした. なお, 子どもの 康状態は母親の心理的 康に影響を 与えることを 慮し, 低出生体重児のなかでも超低出生 体重児は今回の対象から除外した. また, 出生体重が同 じであっても在胎週数により子どものリスク因子は大幅 に異なることから妊娠 28週以後に出産した母親を対象 とした. 調査は 2006年 7∼11月に行った. 2.データ収集 1) データ収集までの手続きは以下の手順で行った. ①群馬大学の臨床研究倫理審査委員会の研究実施の承認 を得た後, 研究実施施設の院長, 産科医師, 産科病棟師 長に本研究に関する説明を文書および口頭で行い, 研 究協力の同意を得た. ②研究者は, 研究実施施設の産科病棟師長より選定条件 に合致した母親の出産の連絡を受け, その後カルテよ り情報を収集した. ③母親について, 出産後の身体の回復状態を研究者がア セスメントし, 研究参加への依頼をしても良いかどう か, 産科病棟師長と産科医師に相談した. ③産科病棟師長と産科医師の許可が得られた母親につい て, 産科病棟の助産師などのスタッフおよびカルテか ら, 子どもの状態や面会時の様子について情報を得た. 得られた情報を基に, 母親に研究参加への依頼をする 時期を産科病棟師長と研究者が相談し決定した. ④産科病棟スタッフより母親に研究者を紹介していただ き, 研究参加への依頼についての説明をする時間がい ただけるか確認した. ⑤母親の了承が得られたら, 個室において文書および口 頭で研究の趣旨・内容を説明した. 研究参加の同意が 得られた母親には同意書に署名をいただいた. ⑥同意書の署名が得られたら, 面接の日時を母親の希望 にそって決定した. ⑦母親との面接日時が決定したら, 産科病棟師長に文書 および口頭で報告し承諾を得た. 面接は個室で行った. ⑧ 9 名の母親に研究依頼し, 依頼した全員から研究協力

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の同意が得られた. 2) データ収集方法 データは, インタビューガイドに基づく半構成的面接 法により収集した. 面接は産褥 2∼ 7日に行い, 面接内 容は母親の同意を得た上で IC レコーダーに録音した. インタビューガイドは以下に示す. ①「出産が始まった時のお気持ちをお聞かせください」 ②「出産開始から, 赤ちゃんが生まれるまでのお気持ち をお聞かせください」 ③「早めの出産となりましたが, その時のお気持ちをお 聞かせください」 ④「出産後, 初めて赤ちゃんに会われた時のお気持ちを お聞かせください」 ⑤「出産前後, ご主人はどのような関わりをしてくださ いましたか?」 ⑥「ご主人の関わりについて, どのようなお気持ちでし たか?」 ⑦「スタッフの関わりについて, 感じたことをお話しく ださい」 3. 析方法 データ 析は, 表明されたコミュニケーション内容を 客観的, 体系的, かつ数量的に記述する調査技法である Berelson の内容 析法 を参 に以下の手順で行った. 1) コード化 逐語録を作成し, 母親が語った出産体験のうち情緒を 伴った体験が表現された文脈を抽出してデータ化し記録 単位とした. 1つの文脈の中で, 異なる情緒を表す言動が 複数あった場合は, その種類ごとに け複数の記録単位 とした. 次に, 同じ出産体験について表現された記録単 位を集め, 意味内容を変えないように注意しながら初期 コード化の作業を 1事例ごとに行った. 続いて, 9 事例そ れぞれで整理した初期コードを集め, 内容の類似性に 従って 類し, 抽象化の作業を経てコード化した. 2) コアカテゴリー化 コードを類似性に従って 類し抽象度を高めてサブカ テゴリー化した. 類したサブカテゴリーは, データ 類およびサブカテゴリーネームの適切性について検討し た上で命名した. サブカテゴリーは, さらに高次概念で カテゴリー化, コアカテゴリー化し, 同様にネームの適 正性について検討し命名した. 3) 析の信頼性・妥当性 析過程においては質的研究法を熟知した研究者 2名 にスーパービジョンを受け, データに忠実に解釈が行な われるよう努めた. また 析結果の信頼性を確認するた めに, 助産学の研究者 4名に 析を依頼し, スコットの 一致率を算出した. 4.倫理的配慮 研究実施施設へは研究協力の内諾を得た上で研究計画 書を提出し, 群馬大学の臨床研究倫理審査委員会の審査 を受け研究実施の承認を得た (番号 GU06005).研究対象 者に対し, 個別に研究目的および内容, 研究に参加した 場合の利益・不利益, 自由意思による参加と同意撤回の 自由, 個人のプライバシーの保護と研究成果の 表, 研 究終了後の資料・データ等の破棄方法についての説明を 口頭及び書面にて行ない同意を得た. 結 果 1.対象者の背景 対象者の年齢は 20歳代が 3名, 30歳代が 6名であっ た. 9 名のうち 5名が初産婦, 4名が経産婦であった. 出 産様式は経腟出産が 4名, 緊急帝王切開が 5名で, 子ど もの出生体重の平 は 1,742g (SD562g) であった. また, 切迫早産などで入院中に出産となった人は 6名, 前期破 水などで緊急入院し出産となった人は 3名であった (表 1). 2.早期産で低出生体重児を出産した母親の出産体験を 構成する6つのコアカテゴリー 対象者 9 名のデータから, 早期産で低出生体重児を出 産した母親の出産体験が 283記録単位抽出された. これ らの記録単位を類似性に従って 類した結果, 209 初期 コード, 83コード, 41サブカテゴリー, 14カテゴリーが 抽出され, 最終的に以下の 6つのコアカテゴリーが抽出 された (表 2).【出生後の子どもの生存を憂慮した体験】, 【早期産となることに恐怖を感じて出産した体験】,【危 機的な状況での夫の対応に満足・不満足感を感じて出産 した体験】,【医療スタッフの対応に満足・不満足感を感 じて出産した体験】,【出産に伴う身体の苦痛を感じて出 表1 対象者の背景 事例 A B C D E F G H I 初 ・ 経 初 初 経 経 初 初 経 経 初 年 齢 20代 20代 30代 30代 20代 30代 30代 30代 30代 在胎週数 34週 30週 29 週 33週 30週 32週 34週 35週 33週 夫 立 い 無 無 無 有 有 無 無 無 無

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産した体験】,【切迫早産に伴う心身の苦痛を感じて出産 した体験】と命名された. また,【出生後の子どもの生存を憂慮した体験】,【早期 産となることに恐怖を感じて出産した体験】で全記録単 位数の 80%を占め, この 2つのコアカテゴリーが早期産 で低出生体重児を出産した母親の出産体験の特徴を示し た. 以下,各コアカテゴリー (【 】で示す)の内容につい て, カテゴリー ( > で示す) と, そこに含まれた記録 単位 (「 」で示す) を用いて説明する. 1)【出生後の子どもの生存を憂慮した体験】 このコアカテゴリーは, 母親は妊娠中から早期産で生 まれてしまう子どもの生命を最優先に え心配しながら 出産し, 無事の出生に一時安 感をもったが, 出生後に 小さな身体で治療を受ける子どもの姿を見て, 無事に育 つか思い煩い今後の生存を憂慮した体験が示された. 5 カテゴリー, 16サブカテゴリー, 37コードに統合された 142記録単位で構成され, 記録単位全体の 50.2%を占め た. (1) 出生時の子どもの 康状態を思い煩って出産した 体験> このカテゴリーは, 母親が子どもの未熟性について医 療スタッフから説明を受け, 出生時の子どもの生命や 康状態を思い煩いながら出産した体験が示された. 母親からは, 生まれた時, 子どもは泣けるのか心配 だった」, 早い週数で生まれてしまうから, 生まれた時 どうなるか心配だった」と語られた. (2) 治療を受ける子どもの姿に今後の生存を危惧した 体験> このカテゴリーは, 子どもは無事に出生し一時安 感 をもったが, 小さな身体で点滴などの治療を受ける子ど もの姿を見て, 今後の生存を危惧した体験と, 子どもの 姿に母親が自責感をもった体験が示された. 母親からは, 子どもは小さく生まれたが, 生命は大 夫なのか心配に思った」, 子どもの顔を見たら, 早く生 まれてしまったことが心配で自 を責めた」と語られた. (3) 子どもの未熟性を心配した体験> このカテゴリーは, 妊娠中の子どもの推定体重や早期 産で出産した場合のリスクについて医療スタッフから説 明を受け, 子どもの未熟性を心配した体験が示された. 母親からは, 子どもは (推定) 体重が小さいと言われ たから心配だった」, 早い週数で生まれると障害がある かもしれないと心配だった」と語られた. (4) 出産によって子どもと離れ寂しく感じた体験> このカテゴリーは, 母親が妊娠中に子どもの生命を自 の胎内で感じ, 子どもと一体感をもっていたが, 出産 によって自 と子どもが離れてしまったことを寂しく 思った体験が示された. 母親からは, お腹で子どもの生命を感じていたが, 出 産で離れ寂しく思った」, 生まれる前は一体感があった が, 生まれて離れてしまい寂しかった」と語られた. 表2 早期産で低出生体重児を出産した母親の出産体験を構成するコアカテゴリー 【コアカテゴリー】 記録単位数(%) カテゴリー> 記録単位数 出生時の子どもの 康状態を思い煩って出産し た体験> 66 治療を受ける子どもの姿に今後の生存を危惧し た体験> 38 【出生後の子どもの生存を憂慮した 体験】 142 (50.2%) 子どもの未熟性を心配した体験>出産によって子どもと離れ寂しく感じた体験> 18 12 妊娠週数から子どもの生命に気がかりはなかっ た体験> 8 思わぬ早い時期の出産に困惑を感じた体験> 43 緊急帝王切開に不安を感じた体験> 22 【早期産となることに恐怖を感じて 出産した体験】 94 (33.2%) 子どもを産んだ実感は得られず虚しいと感じた 体験> 12 切迫早産の治療から解放されたと感じた体験> 9 怖さは拭えなかったが出産を覚悟した体験> 8 【危機的な状況での夫の対応に満 足・不満足感を感じて出産した体験】 14 (5.0%) 危機的な状況での出産に夫を頼り, 関わりに満 足・不満足感をもった体験> 14 【医療スタッフの対応に満足・不満 足感を感じて出産した体験】 14 (5.0%) 早期産を意識したことに対する医療スタッフの 支援に満足・不満足感をもった体験> 14 【出産に伴う身体の苦痛を感じて出 産した体験】 10 (3.5%) 出産に伴う身体の痛みを感じて出産した体験> 10 【切迫早産に伴う心身の苦痛を感じ て出産した体験】 9 (3.1%) 切迫早産の治療が辛く妊娠継続の苦痛を感じた 体験> 9

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(5) 妊娠週数から子どもの生命に気がかりはなかった 体験> このカテゴリーは, 母親は妊娠中に子どもの在胎週数 やエコー上の推定体重を え, 子どもの生命について気 がかりはなかった体験が示された. 母親からは, この (妊娠)週数まできたから,子どもの 生命は大 夫と安心していた」と語られた. 2)【早期産となることに恐怖を感じて出産した体験】 このコアカテゴリーは, 思わぬ時期に陣痛が発来した ことや急な前期破水などで事態が一変し出産が決定さ れ, その出産様式が帝王切開であった場合は, 未体験な 手術に対し不安や恐怖を感じながら出産した体験が示さ れた. また, 出産後は出産した実感が得られない体験も 示された. そして経腟出産の場合も, 早期産が信じられ ず戸惑い, 困惑した体験が示された. 5カテゴリー, 14サ ブカテゴリー, 26コードに統合された 94記録単位で構 成された. 記録単位全体の 33.2%を占めた. (1) 思わぬ早い時期の出産に困惑を感じた体験> このカテゴリーは, 母親は想像していたよりも早い時 期の出産が信じられず困惑した体験が示された. 母親からは, こんなに早く出産 す る と 思って い な かったから, 信じられず戸惑った」, 出産までの展開が 速すぎて気持ちが追いついていけず戸惑った」と語られ た. (2) 緊急帝王切開に不安を感じた体験> このカテゴリーは, 急な血圧上昇や前期破水があり, 母親は順調だと思っていた妊娠経過から事態が一変し, 自 の身体を心配しながら未体験な手術に不安を感じた 体験が示された. 母親からは, 急に破水や出血があり, どうなるのか不 安だった」, 手術や麻酔の経験はなく不安だった」と語 られた. (3) 子どもを産んだ実感は得られず虚しいと感じた体 験> このカテゴリーは, 思いがけず早期産での緊急帝王切 開を終えたが, 子どもを産んだ実感が得られなかった, また出産に実感が得られなかったから, 自 だけでなく 子どもが退院しなければ出産は終わらず虚しいと感じた 体験が示された. 母親からは, 出産した実感が湧かず虚しいと思った」, 子どもが退院し自宅に帰らないと出産が終わらず虚し いと思った」と語られた. (4) 切迫早産の治療から解放されたと感じた体験> このカテゴリーは, 切迫早産の治療中であった母親が, 早期産となったことでようやく終わったという解放感を もった体験が示された. 母親からは, 産は感動よりも『やっと終わった』とい う解放感のほうが大きかった」と語られた. (5) 怖さは拭えなかったが出産を覚悟した体験> このカテゴリーは, 経腟出産や緊急帝王切開での早期 産が決定され, 出産はどうなるか からず怖さは拭えな かったが, 基本的に大 夫だと感じ出産の覚悟をもった 体験が示された. 母親からは, 出産はどうなるか からず怖いが, 基本 的には大 夫だろうと感じた」, 帝王切開の準備を受け ながら,怖かったけど『もう産むしかない』と覚悟を決め た」と語られた. 3)【危機的な状況での夫の対応に満足・不満足感を感じ て出産した体験】 このコアカテゴリーは, 思いもよらなかった早期産で 低出生体重児を出産した母親が, 危機的な状況での出産 に夫の支援を受け満足感をもった体験が示された. また 一方で, 期待した夫の関わりが得られず不満足感をもっ た体験も示された. 1カテゴリー, 4サブカテゴリー, 7 コードに統合された 14記録単位で構成された. 記録単 位全体の 5.0%を占めた. (1) 危機的な状況での出産に夫を頼り, 関わりに満 足・不満足感をもった体験> このカテゴリーは, 危機的な状況での出産となった母 親が, 出産に付き添った夫の存在を拠り所とし満足感を もっていた体験が示された, 一方で期待した夫の関わり が得られなかった場合, 不満をもった体験が示された. 母親からは, 夫は出産の労をねぎらってくれ満足し た」, 出産時, 夫が付き添ってくれ安心した」, 夫は傍に いるだけで何もせず, 腹立たしく思った」と語られた. 4)【医療スタッフの対応に満足・不満足感を感じて出産 した体験】 このコアカテゴリーは, 急な早期産で不安や恐怖を感 じている母親が, 医師や助産師など医療スタッフの支援 を得て, 安心して出産に臨み満足感をもった体験が示さ れた. また, 一方で期待した支援が得られなかった場合 は, 不満足感をもった体験が示された. 1カテゴリー, 2 サブカテゴリー, 4コードに統合された 14記録単位で構 成された. 記録単位全体の 5.0%を占めた. (1) 早期産を意識したことに対する医療スタッフの対 応に満足・不満足感をもった体験> このカテゴリーは, 早期産となることに不安や恐怖を 感じていた母親が, 医師や助産師など医療スタッフの支 援を得て, 安心して出産に臨み満足感をもった体験と, 反対にスタッフの説明に不十 さを感じ不満をもった体 験も示された.

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母親からは, スタッフの声かけによって安心して出 産に臨めた」, 自 は麻酔中で感覚がないのに子どもが 生まれたことを教えてくれず, 不満だった」と語られた. 5)【出産に伴う身体の苦痛を感じて出産した体験】 このコアカテゴリーは, 母親の出産期から産褥期の間 で身体の苦痛を感じた体験が示された. 1カテゴリー, 3 サブカテゴリー, 6コードに統合された 10記録単位で構 成された. 記録単位全体の 3.5%を占めた. (1) 出産に伴う身体の痛みを感じて出産した体験> このカテゴリーは, 母親が出産期から産褥期までの間 で産痛や 痛など身体の痛みを感じた体験が示された. 母親からは, 傷 ( 部) が痛くて歩くのが辛かった」, いきみ逃しが本当に辛かった」と語られた. 6)【切迫早産に伴う心身の苦痛を感じて出産した体験】 このコアカテゴリーは, 母親は出産前に切迫早産と なってしまったが, 子どもの生命を守り安全な出産をす るために, 妊娠中に感じた切迫早産に伴う心身の苦痛の 体験が示された.1カテゴリー,3サブカテゴリー,3コー ドに統合された 9 記録単位で構成された. 記録単位全体 の 3.1%を占めた. (1) 切迫早産の治療が辛く妊娠継続の苦痛を感じた体 験> このカテゴリーは, 母親が切迫早産となり入院中に受 けた点滴治療をストレスに感じ, 妊娠継続自体を苦痛に 感じた体験が示された. 母親からは, 破水で安静や点滴がどの位続くか か らず, それがストレスで嫌だった」, 点滴の副作用で湿 疹がでて辛かったから, お腹を切って子どもを出して欲 しいと思った」と語られた. 3. 類の信頼性 本研究における 析の結果で示した 類の信頼性をス コットの一致率によって確認した. コアカテゴリーの 類において, 4名の研究者間の一致率はスコットの一致 率が 92.5%となり, 信頼性が確保された. 察 早期産で低出生体重児を出産した母親の出産体験の内 容は, 子どもに関すること, 早期産に関すること, 夫の対 応に関すること, 医療スタッフの対応に関すること, 妊 娠期の治療に関すること, 出産に伴う身体の苦痛に関す ることの 6つのコアカテゴリーが明らかになった. 早期 産で低出生体重児を出産した母親の出産体験は, 子ども に関する記録単位が全記録単位の半数を占め, 子どもに 関する思いが際立っていた (表 2). 本研究の母親は, 切迫早産の治療が辛く妊娠継続の 苦痛を感じた体験> があっても, 子どもの生命を最優先 に え妊娠中の辛い治療にも耐えていた. 子どもの未 熟性を心配した体験> から, 少しでも長く胎内で育てた いと希望をもっていたが, 早期産が避けられない状況と なり,【早期産となることに恐怖を感じて出産した体験】 となった. その状況でも 出生時の子どもの 康状態を 思い煩って出産した体験> があり, 思いがけず子どもの 産声を聴いたことで一時安 感をもった. 無事に生まれ たこと, 子どもの生命があることを嬉しく思った母親で あったが, 出生後小さな身体で治療を受ける子どもの姿 を見て【出生後の子どもの生存を憂慮した体験】となり, その思いは持続していることが明らかとなった. 正期産で成熟児を出産した母親の出産体験の内容で は, 子どもに関する内容は肯定的因子として大きな割合 を占めている. しかし早期産の子どもは身体が小さく 皺があり未熟児特有の顔貌を有することから, 母親は想 像していた子どものイメージとの差に戸惑う. 本研究 の母親も未熟な弱々しく小さな身体で治療を受ける子ど もの姿に衝撃を受け, 接する怖さや自責感, 今後の生存 を憂慮する思いを抱いていた. 母親 Bは「壊れそうで怖 くて触れなかった」, 生まれてからのほうが心配になっ た」と語った. また母親 C は「思わないようにしていた けど, 子どもの顔を見たら早く産んでしまって自 が悪 いと思った」と自責感を語り, 自尊心の傷つきが推察さ れた. 出産体験の影響要因の一つに子どもの 康があ る. ようやく出産した子どもの生存を憂慮し続ける状 況は, 母親の産後の心理的 康に影響を及ぼすと えら れる. 正期産で成熟児を出産した母親の出産体験の内容に関 する先行研究では, 自己の成長や母親になれて満足とい う自己の価値観に関する内容や出産様式や陣痛に関する こと, 医療スタッフや夫のサポートなどの内容が明らか になっている. しかし自己の成長や母親になれて満 足という内容は, 本研究の母親の出産体験の内容には認 められず, 6つのコアカテゴリー内でも憂慮や恐怖, 不満 など否定的な情緒が認められる. 出産は情緒を伴う体験 なので, 出産体験を否定的に受けとめるということは, 不安,怒り,悲しみなどの情緒をもっていることである. 本研究の結果から, 早期産で低出生体重児を出産した母 親は出産体験を否定的にとらえる傾向があると えら れ, 産褥早期に出産体験の意味づけへの支援の必要性が 示唆される. また, 本研究の帝王切開で出産した母親 5名全員が, 子どもを生んだ実感は得られず虚しいと感じた体験>を 語り, 母親 G は「子どもを見ても自 が産んだ子だって 実感が湧かない」,「傷が痛むから子どもの面会に行かな

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かった」と語った.側島 は,極低出生体重児を出産した 母親は出産にまつわる自責感と情緒不安定が持続し, 子 どもを実感として受け入れられない時期や子どもへの否 定的・消極的な感情を表明する時期があると報告してい る. 母親の傷つきを癒すためには, 自責感や不安, 恐れ, 子どもへの消極的な感情など, すべて「あって当然のも の」として母親自身の心理的支持を行う必要性がある. 愛着形成の促進から母子の接触は推奨されているが, 早 期産で生まれた子どもを受け入れる時期には個人差が生 じることを 慮し, 受け入れられる状態でない母親には 母親役割獲得への支援を急がず, 母親の自尊心を回復さ せるケアを産褥早期に行うことが重要であると える. 思わぬ早い時期の出産に困惑を感じた体験> や 緊 急帝王切開に不安を感じた体験> から, 母親は医療ス タッフを頼り【医療スタッフの対応に満足・不満足感を 感じて出産した体験】となった. 切迫早産のため母体搬 送後 2日目に出産した母親 Bは「安心して出産に臨ん だ」と語り, 母体搬送当日に出産となった母親 A は「忙 しそうで何も教えてくれず苛立った」と語った. 本研究 の母親の出産体験の内容から, 落ち着いて出産に臨んだ と母親自身が認識することが重要と える. 産後 1年の 母親を対象とした出産体験に関する先行研究では, 医療 スタッフに対する否定的評価が高率に認められ, 産後 うつ傾向を規定する要因には医療スタッフの対応に対す る満足度が低いことも報告されている. これらから医 療スタッフの対応は, 早期産に恐怖や不安を感じている 母親には に影響を及ぼすと えられる. 医療スタッフ と信頼関係が構築できていることが望ましいが, 出産後 に母親が納得して出産に臨んだと認識できるような支援 が必要である. また,【危機的な状況での夫の対応に満足・不満足感を 感じて出産した体験】から, 母親は妊娠中から子どもの 生命の安全や 康状態について励まし, 支えてくれた夫 を頼りにしていた. 田島ら は, 夫の存在は, 母親の気持 ちを安定させ不安や恐怖を軽減させると報告している. 切迫早産の治療は点滴や安静が主であり, 行動の制限が 生じることから入院生活は苦痛を伴う. 妊娠継続を負担 に思う母親の思いを受け止めることで, 正常な妊娠経過 から逸脱した母親の心理的な支えとなっていたことが えられる. 反対に夫の関わりに満足できなかった体験も 語られたことから, 母親は夫の存在を拠り所とし期待し ていたことが理解できる. 母親が夫に支えられた出産体 験であったと認識することにより, 母親の心理的 康が 促進されると える. 以上から, 本研究で得られた早期産で低出生体重児を 出産した母親の出産体験の内容を踏まえ, 子どもの生存 を憂慮し自尊心の傷つきをもつ早期産で低出生体重児を 出産した母親には, 産褥早期に妊娠中の経過からの振り 返り, その時々の体験を母親がどの様に受けとめている か確認し, 意味づけを支援することが必要であると示唆 された. 研究の限界と今後の課題 本研究の限界は, 早期産で低出生体重児を出産した母 親の出産体験の内容は明らかとなったが, 出産様式や出 産週数, 子どもの 康状態により出産体験の内容には偏 りがある可能性がある. したがって 類の信頼性は得ら れたものの, この結果を一般化するには限界がある. 今 後は対象者を増やすと共に複数の出産場所での調査を行 い, より詳細に出産体験の内容を明らかにし, 出産体験 の意味づけへの支援方法を検討していきたい. 謝 辞 本研究にご協力を頂きました対象者の皆様と施設のス タッフの皆様に深く感謝いたします. また, 本論文をご 指導くださいました群馬大学医学部保 学科教授常盤洋 子先生に心から感謝いたします. 本研究は群馬大学大学院医学系研究科修士論文に加 筆・修正したものである. 文 献 1. 厚生労働省. 人口動態調査, 政府統計の 合窓口 ; http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/list.do?/id=000001066472. 平成 22年 11月 3日 13時 10 2. 中野美佳, 森 恵美, 前原澄子. 出産体験の満足に関連す る要因について. 母性衛生 44(2): 307-314.

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Research 2000; 49(5): 72-281.

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Delivery of Preterm Low-Birth-Weight Newborns

Tomoko Morishima,

Kyoko Kunikiyo,

Kazuyo Horigome,

Kimie Hirakawa

and Yoko Tokiwa

1 Midwifery Course Department of Nursing, University Kiryu Junior College, 606-7 Azami, Kasakake-machi, Midori, Gunma 379-2392, Japan

2 Department of Nursing, School of Health Sciences, Gunma University Faculty of Medicine, 3-39-22 Showa-machi, Maebashi, Gunma 371-8511, Japan

3 Department of Nursing,Gunma Prefectural College of Health Sciences,323-1 Kamioki-machi,Maebashi, Gunma 371-0052, Japan

4 Department of Nursing,Gunma University Hospital,3-39-15 Showa-machi,Maebashi,Gunma 371-8511, Japan

Background and Objectives: We clarified delivery details of preterm low-birth-weight newborns to find ways to help mothers understand the importance of their experience. Subjects and M ethods: Nine mothers delivering low-birth-weight newborns at study facilities and who gave consent within one month of delivery were studied in semi-structured interviews analyzed by applying content analysis as suggested by Berelson. Results: Of the 9, 5 delivered by Caesarean section and 4 vaginally. Their delivery experience yielded 6 categories(i)concern for the child s health,(ii)fear of preterm delivery,(iii)satisfied or dissatisfied with the husband s behavior in a critical delivery,(iv)satisfied or dissatisfied with health care professional behavior during delivery,(v)physical pain during delivery,and (vi)mental and physical pain in threatened preterm delivery. (i) concern for the child s health and (ii) fear of preterm delivery accounted for 80% of all comments,reflecting the mothers delivery experience. Conclusion : Our results suggest a need to better support such mothers,who may suffer subsequent low self-esteem. Retrospective-ly anaRetrospective-lyzing such feelings during pregnancy may help them understand their experience earRetrospective-ly in the puerperal period.(Kitakanto Med J 2011;61:15∼23)

参照

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