奈良教育大学学術リポジトリNEAR
母親の養育態度と母子生活環境との関連性
著者 宮原 時彦, 北村 陽英
雑誌名 奈良教育大学紀要. 自然科学
巻 43
号 2
ページ 11‑24
発行年 1994‑11‑25
その他のタイトル The Correlation between the Maternal
Bringing‑Up Attitude and the Mother‑Child's Living Environment
URL http://hdl.handle.net/10105/1643
母親の養育態度と母子生活環境との関連性
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(浜松医科大学公衆衛生学教室) 北 村 陽 英 (奈良教育大学学校保健教室)
(平成6年4月8日受理)
The Correlation between the Maternal Bringing‑Up Attitude and the Mother‑Child s Living Environment
Tokihiko Miyahara
(Department of Public Health, School of Medicine Hamamatsu University, Shizuoka 431‑31, Japan) and
Akihide Kitamura
(Department of School Health, Nara University of Education, Nara 630, Japan) (Received April 8, 1994)
Abstract
The purpose of this study is to investigate the correlation between the maternal bringing‑
up attitude that was suggested to be concerned with the physical underdevelopment of child and the mother‑child's living environment factors (EF). As EF, we defined a family, a presence of child‑rearing supporter, a risk factor of child, time for humoring child, order of birth and an abortion or a stillbirth. The analyzed objects were 928 pairs of mother and child (235 of 4months old, 215 0f 10 months old, 254 of 18 months old and 244 of42 months old). On the re‑
spective attitudes, the mothers were separated into three groups (exccesive attitude group.
average attitude group and pertinent attitude group) according to the score of bringing・up atti‑
tildes that related to the underdevelopment of child. And the incidence of EF among the groups was compared by means of cross‑table analysis. The results were as follows :
1. Exccesive attitudes are caused by that mothers are in little contact with their children and that mothers have few mental or physical supporters.
2. Risk factors of child have important effects on maternal bringing‑up attitudes.
3. There is correlation between the exccesive attitude and the experience in an artificial abortion or stillbirth.
I は じ め に
人間の子どもは,他の多くの動物とは異なり,出生後しばらくの間は歩くことも食物を摂取す ることも一人ではできない.ゆえにその生命を維持していくには養育者,一般的には母親,の存 在が不可欠となる.子どもにとって母親との関係は,子どもの社会性の獲得やパーソナリティ形
Ill
12 宮 原 時 彦・北 村 陽 英
成の出発点であり,重要なものである.特に子どもが有する人間関係は,主養育者である母親を 中心とした特定少数の者に限られるため,子どもが受け取る人間関係に起因する様々なストレス は,彼女らの子どもへの接し方,つまり養育態度に強く影響されることが予測される1)・この点 について,子どものパーソナリティと養育態度とに関連性のあることはすでに示唆されてお
り16,17,18)我々もまた身体発育との間に関連性を認めている12)
しかしながら,母子が相互に影響し合う要因は両者間にのみ存在するのではなく,他の家族構 成員,社会的・経済的環境,子どもや母親が抱える問題など様々な要因による作用が少なからず あると思われる8'.そこで本研究では,先行研究12)により子どもの低発育と関連の認められた母 親の養育態度と母子の生活環境との関連性を明かにし,母親の養育態度形成要因について考察す ることを課題とした.
Ⅱ 対象と方法 1.調査対象と方法
1992年4月9日‑1992年9月29日の期間中,某中堅都市にて実施されている乳幼児健康診査(以 下,健診という)を受診した4ヶ月児, 10ヶ月児, 1歳6ヶ月児, 3歳6ヶ月児の母親1290名を 対象に質問紙(巻末参照)による調査を実施したところ, 1153名から回答を得た(回収率89.4%).
質問紙は健診会場にて直接配布および回収されたが,回収については一部郵送による方法を用い た.また,誤答,無回答等を避けるため回答者の任意による記名方式を採用した.
2.調査内容
調査内容は,品川ら22)を参考にして作田ら16)が開発して用いた養育態度10項目(消極的拒否, 積極的拒否,厳格型,期待型,不安型,干渉型,溺愛型,盲従型,矛盾型,不一致型)および母 子生活環境16因子4'(出生順位,家族構成,育児補助者,夫の育児補助,母親の就労,あやす時間,
育児の手本者,育児に関する話相手,育児に関する心配事およびその解決,世話以外に子どもと 接する時間,自然および人工流・死産,出生時体重,保育器経験)であり,これは大阪府下の1 都市の1980年出生児2000児を対象に6年間にわたる追跡調査において用いられた質問紙から抜粋
したものである.さらに健診対象児の身体測定値(体重,身長)および出生時の体重値,身長値 も併せて質問した.また,養育態度は1項目5間×2点(2, 1, 0点) ‑10点満点により構成さ れており,得点の低さはその態度が相対的に過度であることを表している.なお,養育態度の概 略は表1に示した.
3.分析方法
対象児の受診日のずれによる乳幼児の日齢差をなくするために各月齢対象児の平均日齢士標準 偏差内に属する乳幼児を分析対象とした.各健診対象児の平均日齢は, 4ヶ月児134.0士7.5日,
10ヶ月児332.0±14.4日, 1歳6ケ月児563.3±22.4日, 3歳6ヶ月児1289.1士13.6日であり,そ の結果,分析対象母子数は, 4ヶ月児235組(男児113組,女児122組), i0ケ月児215組(男児113
表1母親の養育態度とその内容 消極的拒否:無視,放任,無関心等の態度を示す.
積極的拒否:体罰,虐待,威嚇等の態度を示す.
厳格型:常に厳格な態度をとり,絶えず子どもを監視す る.
期待塑:親の要求や野心を子どもに強要する態度.
干渉塑:子どもをよりよくするた捌こできるだけの助力 を与える態度.
不安型:子どもの日常生活にほとんど無意味な不安を抱 き,必要以上の保護を与える態度.
溺愛型:必要以上に子どもをかばい,少しも手放したが らない態度.
盲従型:一切の権力を子どもにもたせ,どんな犠牲をも 惜しまない態度.
矛盾型:子どもの同じ行動に対して一貫性のない態度.
不一致型:両親の態度が‑致せず,子どもが両親から異 なった扱いを受ける.
級,女児102組), 1歳6ケ月児254組(男児117組,女児137組), 3歳6ヶ月児244組(男児120組, 女児124組)となった.
本研究における低発育児は,各月齢,性により分割された8集団の体重,身長, kaup指数(体 重kg X104/身長em2)の平均値より‑ 1標準偏差値以下に属する相対的な低発育児を指している.
この低発育と関連のあった母親の養育態度得点と母子生活環境16因子とを単相関し,さらに統計 的有意性の認められた養育態度と環境因子について,その内容を詳細に把握するためにクロス集 計を行った.
クロス集計において,分析対象となった母親は,身体的低発育と関連のみられた各月齢の養育 態度項目得点の平均値と標準偏差より,過度な養育態度を示す"過度群" (平均値一標準偏差値 以下の得点), "平均群" (平均値士標準偏差値内の得点)および相対的に傾向のみられない"過 切群" (平均値+標準偏差値以上の得点,ただしこの債が10点を越える場合は10点を採用した)
の3群に分割された.
なお,統計的有意性の検定に用いたT‑test, X ‑testの有意水準は5 %と設定した.
Ⅱ 結 果
・養育態度と母子生活環境のクロス集計
結果を表2に示した.以下に,月齢および性別に結果を述べる.
(94ヶ月男児
過度な不安を示す母親の75.0%は育児に関する話をできる相手が少なく,その18.8%は育児に
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宮 原 時 彦・北 村 陽 英表2 子どもの身体的低発育と関連のみられた養育態度およびその内容と生活環境因子との関係 月齢 性 養育態度 程度 生活環境因子 因子における母親出現率(%)
過度群 平均群 適切群 4ヶ月 男児 不 安 過度 育児の話相手少ない
いつも育児の心配事あり 出生時体重2500g以下 女児 積極拒否 過度 子どもと接触1時間以下
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10ヶ月 男児 厳 格 適切 女児 積極拒否 過度 溺 愛 過度
育児の心配事あまりない あやす時間が少ない 人工流・死産の経験あり 第1子
育児の補助者がいない 育児の話相手いない 有職
自然流・死産の経験なし
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1歳6ヶ月 男児 不 安 適切 夫がよく子どもをあやす 育児の心配事あまりない 子どもと接触2時間以上 女児 矛 盾 過度 育児の心配事比較的多い 人工流・死産の経験あり
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3歳6ヶ月 男児 消極拒否 過度 第1子
積極拒否 過度 厳 格 過度 矛 盾 過度 女児 消極拒否 適切
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育児の手本者がいない いつも育児の心配事あり 子どもに保育器経験あり いつも育児の心配事あり 夫の育児補助がない 育児の補助者あり 育児の手本者あり あやす時間多い 育児の心配事少ない 自然流死産経験なし 夫の育児補助がない 夫は子どもをあやさない
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荏:各項目の数値下部の波線は,低発育児をもつ母親の群の出現率を示している.
関する心配事をいつも抱えていた.また,これらの母親のうち,出生時体重が2500g以下であっ た子どもをもつ母親は31.3%みられた U2‑test, p<0.001).
②4ヶ月女児
過度の積極的拒否を示す母親の52.9%tま,排准,食事以外にその子どもと接する時間が1時間 以下であった U2‑test, p<0.05).
③10ヶ月男児
厳格傾向のない母親の45.5%は育児に関する心配事を余り抱えておらず,盲従傾向のない母親 は子どもの出生順位にとらわれていなかった.
④10ヶ月女児
過度な積極的拒否を示す母親の21.7%は子どもをあやす時間が少なく(X2‑test, p<0.01), その13.6%が人工流・死産の経験者であった.
過度な溺愛を示す母親の子どもは,その54.5%が第一子であり, 36.4%の母親には育児を補助 してくれる人物が不在であり,同じく36.4%の母親には育児に関する話をする相手がいなかった
U2‑test, p<0.01).また,彼女らは全員職に就いており,自然流・死産の経験者はみられな かった(x2‑test, p<0.05).
⑤1歳6ケ月男児
不安傾向のない母親の夫の52.6%は子どもをよくあやし, 52.6%の母親には育児に関する心配 事はあまりなく CT‑test, p<0.05), 78.9%の母親は排港,食事以外での子どもと接する時間 を2時間以上有していた.
⑥1歳6ヶ月女児
過度な矛盾を示す母親の81.8%は育児に関する心配事を比較的多く抱えており,その15.2%が 人工流・死産の経験者であった X ‑test, pく0.05).
⑦3歳6ヶ月男児
過度な消極的拒否を示す母親の子どもの53.3%は第一子であり, 53.3%の母親には育児の手本 となる人物が不在であり, 20.0%は常に育児に関する心配事を抱えていたU2‑test, p<0.05).
過度な積極的拒否を示す母親の子どもの25.0%は保育器の経験があった.
過度な厳格を示す母親の18.2%は育児に関する心配事をいつも抱えていた.
過度な矛盾を示す母親の10.0%は夫の育児の補助を受けていなかった.
⑧3歳6ヶ月女児
消極的拒否傾向のない母親の83.3%には育児の補助者ならびに育児の手本となる人物がいた.
また,彼女らの47.1%は子どもをあやす時間が多く,同じく47.1%の母親は育児に関する心配事 が少なかった 1 ‑test, p<0.05).
過度な厳格を示す母親の88.2%が自然流・死産未経験者であり,他の母親らより高い出現率で 1388だ
過度に夫との不一致を示す母親の37.0%は夫の育児補助がなく Cr‑test, p<0.01),またそ の夫の26.9%はこどもをあやしていなかったU2‑test, p<0.01).
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子どものもつ危険因子は,母子相互作用に影響を及ぼす重要因子であると思われるため,本調
16 宮 原 時 彦・北 村 陽 英
重では,原3'にならって低出生体重と保育器経験を子どもの危険因子として取り上げた.
斉藤15)は,低出生体重児が出生後早期に母子と分離された場合,罪償感を持ったり,未熟児で あったら死んだ方がよかったという反応をした例では、母親はその後の養育に自信が持てないこ
とを報告している.これは出生直後マターナル・アタッチメントの感受期があり,母子が分離さ せられることによって愛着9.15)の形成に障害が起こるとするものである.また,こどもが低出生 体重などの危険因子を有している場合,母親にはそれに対する心理的動揺があることは十分に考 えられる.この点について松尾ら11)は,低出生体重児(2500g未満)の追跡調査の結果,幼児期 において何等かの発達障害,外科的内科的疾患をもつ児の母親は「育てるのにてがかかる」 「健 康に育つか心配」などの悩みを,それ以外の母親では「食事量が増えない」 「身長・体重が増え ない」などの悩みを抱いており, 53.5%の母親がこのような育児に関する心配事をひとつ以上抱 えていると報告している.さらに本調査において,育児に関する心配事の多きと養育態度の過度 さとの関連性が見られたことから,低出生体重などを原因として保育器等により分離させられた 母子間には,その関係に歪が生じることが予測される.しかしながら一方では,ハイリスク児の 問題傾向は長期的にはよほど重篤でない限り後に障害を残すことはない25)とされていることから, 子どもが平均的な発育水準に近づくことによって母親の抱える心配事も消失し,母子間の歪もま た解消していくものと思われる.ゆえにこれらの現象は乳幼児期にみられる流動的傾向として捉 えることがよいと考えられる
6,7,ll,26)
本調査において,母親の養育態度に関わる因子として育児に関する心配事の多きが認められた.
しかし,それら心配事が解決することと養育態度の程度との間に関連性がみられなかった.また 10ケ月女児の過度の溺愛を示す母親の36A%1こは,気楽に育児の話などできる人がほとんどいな かった.これらより育児の心配事を抱える母親にとっては低出生体重などの心配事が解決するこ とも重要だが,むしろそれらの心配事を容易に打ち明けられるカウンセラー的人物の存在がより 重要であると考えられるg'.このカウンセラー的人物は母子にとって最も近い存在である父親(夫)
が適任であると考えられる.松尾ら11'によれば,母親の50.0%が第一相談相手は夫であるとし, 母親の育児への関わりにおいて夫の心理的な支えが重要であることを示している.
女性は専ら育児に従事するもの14)とする考えが支配的であった我が国においても,近年育児休 業法が制定され,父親が育児に参加できる素地がある程度整った.この事実は父親の育児参加が, 母親の育児の物理的・精神的負担減につながることを法律の面から認めたものである.深谷2)は, 家族構成員の減少が家庭内での父親の地位と役割を変えてしまい,その結果としての弱すぎる父 親像が子どもの成長や発達に良くないとしたうえで,育児に関して父親と母親がバランスよく子 どもの成長に働きかけていく必要性を述べている.また,母親の就労等による母親と子どもの分 離時に母親の代替として適切な二次的対象者の存在が重要となり5),この役を母親にとって第一 の相談相手である父親が担うことは,母親を過度の育児負担から開放するとともに,母親の精神 的健康状態の保持にとって非常に重要になるものと考える6).本調査における父親の育児参加程 度の低さは母親の養育態度を予測するものである.つまり,父親の積極的育児参加は母親の育児 に関する行動を安定させると同時に,子どもの安定した成長の大きな要因であることが示唆され る.さらに本調査において,父親を含む広い意味での育児参加者の存在も母親の養育態度を良好 にすることが示唆されており,特に父親が不在もしくは不在がちな家庭では,それに替わる人間 が積極的に育児援助する必要があると考える
13.24)
母親の就労について,これは母親とその子どもとの接触時間を決定する重大要因であることが
考えられる.これに関して清水2㌦ま,夕方の時間帯,母親達の子どもへの関わり方を観察したと ころ,有職の母親にとって特別な交流時間である夕方に,無職の母親よりも有職の母親の方が子 どもによく話しかけ,よく遊んでやっていたとしている.つまり子どもとの接触時間が制限され ている有職の母親は,限られた時間内で子どもと積極的に関わろうとし,それが結果的に溺愛傾 向を強めていると考えられる19)本調査において, 10ヶ月女児の過度の溺愛を示した母親11名全 員が就労している結果を得ており,仕事をもつ母親の養育態度は,子どもとの関係を積極的に求 めるため,必然的に溺愛傾向が強くなると思われる.
子どもとの接触時間,あやす時間の程度について,結果全体としてはその時間の少なさと発育 の悪さは関連性があると思われる.しかしながら,先行研究12'より3歳6ヶ月女児の場合,発育 の良い子どもを持つ母親は拒否的傾向が強いことが明かとなっている.これはいわゆる「手のか からない育てやすい子」であると考えられ,少なくとも幼児期女児において,相対的に発育の良 い子どもを持つ母親は,他の母親と比較して,積極的に育児に関わる必要性が薄くなったことが 原因であると思われる
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出生順位について, 10ヶ月女児, 3歳6ヶ月男児にみられるように,長子を持つ母親の養育態 度は過度になる傾向にあった.渋谷ら20)は,長子に対する親の態度は服従的であるとしている.
特に乳児期の場合,長子の誕生は母親だけでなく父親にも服従的態度をとらせることも十分に考 えられる.父親の養育態度の影響は定かではないが,母性的対象者としての母親の影響力をもし のぐとは考えられない.また,渋谷ら20)は次子以降の誕生によって一時的に長子の性格に間堵傾 向がみられることもあわせて報告している.心身の発達は相関関係にあり,特に年少児はその心 身の機能が未分化状態にある23'ことから,パーソナリティへの影響要因は,身体発育においても 作用することが十分予測される.したがって,次子の誕生により母親の長子への関わりが少なく
なれば,長子の身体発育のリズムは乱れるものと思われる10)
女児をもつ母親の養育態度に影響を及ぼす要因として特徴的にみられた項目は人工流・死産, 自然流・死産の経験の有無であり,これらの経験の影響に子どもの性差があることを示唆する結 果であったが,それが何を意味するのかは本調査では不明である.
自然流・死産の経験者は相対的に溺愛・厳格傾向がなかった.溺愛傾向のない10ヶ月期におい て,同経験者の就労頻度は低く,育児補助者や気軽に話せる相手が比較的多くいることを特徴と しており,その子どもの発育も比較的よかった.これらから,自然流・死産の経験者のうち溺愛 または厳格傾向のない母親は,自らの意志に反して子どもを失った経験をもとに,母親本人およ び周囲の人間の積極的な育児参加の結果として,これらの態度形成がなされたことが示唆される.
一方,人工流・死産の経験者は積極的拒否や矛盾的態度が過度であり,また,その子どもの発育 も相対的に良くない.このような態度形成が母親の気質に起因するのか,それとも,この経験を することにより誘発されたものなのか因果関係は不明であるが,本調査において人工流・死産と 母親の過度な養育態度,乳幼児の低発育との関連性が示唆されており,安易な中絶行為を避ける
ための保健教育の充実は不可欠であると考えられる.
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乳幼児健康診査を受診した4ヶ月児, 10ヶ月児, 1歳6ヶ月児, 3歳6ケ月児の母親1290名に 対し,健診対象児に対する養育態度,母子生活環境,対象児の健診時体重および身長を質問紙法
IB 宮 原 時 彦・北 村 陽 英
を用いて調査したところ, 1153名の母親から回答を得た.分析対象となった948組の母子について, 乳幼児の身体的低発育と関連のあった母親の養育態度と母子生活環境との関連性を分析・検討し た結果,以下の事柄が示唆された.
1.低出生体重児の母親は過度な不安を示す.
2.育児に関する心配事の少ない母親は不安傾向がない.
3.育児に関する心配事の多い母親は過度な消極的拒否を示す.
4.子どもと接する時間の少ない母親は過度な積極的拒否を示す.
5.過度な溺愛を示す母親は話し友だちが少ない.
6.育児に一貫性のない母親には人工流・死産経験者が多い.
7.消極的拒否を示さない母親には育児の補助者がおり,育児に関する心配事があまりない.
8.夫の育児協力の少なさと子どもの身体的低発育とは関連する.
母子関係は母と子の二者に限られるのではなく,その生活環境にも大きく影響される.それゆ え特に母子にとって最も近い存在である父親の果たす役割は重大である.その一方で父親を中心 とした第三者の育児参加の素地が十分整っているとはいえないだろう.今後の母子保健意識の向 上ならびに母子保健事業の推進と充実が望まれる.
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20 宮 原 時 彦・北 村 陽 英
乳幼児健康珍重に関するアンケート
このアンケートは、今回受珍されたお子さんについてお答えくださいO
ア ン ケ ー ト記 入 日 月 日 ア ン ケ ー ト記 入 時 月 令 年 ヵ 月 目
お 子 さ ん の 性 別 男 . 女 第 ( ) 子 昭 和 . 平 成 年 月 日生
・同居されている家族について書いてください(お子さんを中心にして)
父 母
・今回のお子さんの体重、身長(健診で測定した億)を書いてください。
体重[ロキロ[Ⅱ]グラム 身長[]コ.口cm
・育児の手伝いをしてくださる方はありますか。 1)は い 2)いいえ お父さん(夫)は育児をよく手伝ってくれますか。
1)よく手伝ってくれる 2)まあまあ 3)手伝ってくれない
・お父さん(夫)は赤ちゃんをよくあやしてくれますか。
1)よくあやす 2)まあまあ 3)あまりあやさない
・お母さんは現在仕事をされていますか。 1)いいえ 2)は い 子供を十分、あやしたり、だいたり、遊んだりする時間はありますか0
1)十分ある 2)まあまあある 3)あまりない(なぜですか:
お母さんが育児をするうえで手本となる人はいますか。
1)いない 2)いる
近所にふだん世間話をしたり子供の話をしたりする人がいますか。
1)数名いる 2) 1‑2名いる 3)ほとんどいない 育児のことで今まで心配なことがありますか。
1)いつも心配だった 2)ときどき心配だった 3)あまり心配ではなかった その時心配は解決できましたか。
1)はい 2)まあ 3)あまり解決できなかった
排椎や食事の世話以外にお母さんが子供と接する(遊んだり、散歩する)時間は1日どのくらいですか.
1)2時間以上 2)1時間くらい 今までに自然流産・死産がありましたか。
1)いいえ 2)はい( )回 今までに人工流産・死産はありますか。
1)いいえ 2)はい( )回 お子さんは保育器にはいりましたか。
1)いいえ 2)はい 3)わからない
3)30分くらい 4)ほとんどない
(今回受診されたお子さんについて)
各問題の3つの答のなかで、いちばんよくあてはまると思う 1. 「忙しいからね」などと取りあわなかったり、話
相手にならなかったりしますか。
2.こどもの欠点を他人にこぼしたり、話したりしま すか。
3.このお子さんとは何となく気が合わないように思 いますか。
4.このこどもさえいなければと思うことがあります か。
5.こどもの欠点ばかりが目についたり、気になった りしますか。
6.子供をしかる時、打つとか、つねるとかしぼると いうような体罰を用いますか。
7.外出の時こどもにるす番をさせたり、他家へあず けたりしますか。
8.親子いっしょに外出したり、遊んだり、接したり しますか。
9.ちびとか、ぐずとか、ばかとかこどもの欠点を口 にしますか。
10.気にくわないことがあると、こどもにあたりちら しますか。
ものに必ず○印をつけて下さい。
はい はい (いいえ) (ときどき) (いつも)
(いいえ)
(いいえ)
(いいえ)
(いいえ)
(いいえ)
(いいえ)
はい (ときどき)
(いいえ)
(いいえ)
はい はい (ときどき) (いつも)
はい はい (ときどき) (いつも)
MS HPW (ときどき) (いつも)
㌣IIS リFJ5
(ときどき) (いつも)
はい はい (ときどき) (いつも)
はい はい (たびたび) (いつも)
あまり ほとんど しない しない
㌣FJS リFJ5
(ときどき) (いつも)
はい はい (ときどき) (いつも)
22 宮 原 時 彦・北 村 陽 英 ll.親がよいと思うことは、こどもに強制しますか。
12.こどものしていることを「あれはいけない」 「こ れはいけない」と禁止しますか。
13.こどもに何かものを買い与えていますか。
14.親の思いどおりにならなければ、きびしくしかり imz/B
15.家庭の中のだれかがいばってこどもを、おさえつ けていますか。
16.こどもを他家のこどもと比較して気にしています か。
17.こどものしつけのためによくものを与えますか。
18.よい本、よいテレビ番組、よい友だち、その他環 境や設備などできるだけよいものばかりを与えよ
うと苦心していますか。
19.こどもの将来について計画をたて、どんな犠牲を はらっても目標に到達させようとしていますか。
20.こどもが遊びに熱中しているのを無理に中途でや めさせて、しつけや勉強に向けますか。
21.こどもの身の回りのことを黙ってみていられない で干渉しますか。
22.こどもの食事のことや、栄養についてやかましく いいますか。
23.こどもはもっと能力があるのに、それを出してい ないように思いますか。
24.こどものけんかや遊びに親が顔を出しますか。
25.テレビ・ビデオ・絵本・遊びなどやかましく干渉 しますか。
(いいえ)
(いいえ)
(いいえ)
(いいえ)
(いいえ)
(いいえ)
(いいえ)
はい はい (ときどき) (いつも)
はい はい (ときどき) (いつも)
はい はい (た ま に) (いつも)
はい はい (たびたび) (いつも)
はい はい (たびたび) (いつも)
はい はい (たびたび) (いつも)
はい はい (ときどき) (いつも)
はい はい (かなり) (と て も) (極度に)
はい はい はい (多 少) (と て も) (極度に)
(いいえ)
(いいえ)
(いいえ)
(いいえ)
(いいえ)
(いいえ)
はい はい (ときどき) (いつも)
はい はい (ときどき) (いつも)
はい はい (たびたび) (いつも)
はい はい (ときどき) (いつも)
はい はい (たびたび) (いつも)
ias ltm (ときどき) (いつも)
26.こどものちょっとしたけがや病気に必要以上の手 当てをしたり心配をしたりしますか。
27.こどもが危険なことをしているのではないかと気 になりますか。
28.こどもの欠点を、かわいそうに思ってしらずしら ずにかばっていますか。
29.かぜをひかないようにと注意したり厚着をさせが ちですか。
30.親としてもっとこどもにしてやるべきことがある ように思われて心配ですか。
31.あなたはこどもをE]の中へ入れても痛くないほど かわいがったり、こどもだけをただひとつのなぐ さめとしたりしていますか。
32.こどものためならどんな犠牲をはらっても満足し ていられますか。
33.あなたはこどもを、しかれないではめてばかりい ますか。
34.こどもが家にいないと淋しかったり物たりない思 いをしますか。
35.こどもの病気がなおっても、ながくかばったり牡 話をしたりしますか。
36.あなたはこどもの機嫌をとったりちやほやしたり しますか。
37.きめてあることでもこどもがいやがればゆるして やりますか。
38.子供が面自そうにしていれば、悪いことでもしかっ たり、禁止したりできにくいですか。
39.こどもが何をしていても、しかれない方ですか。
40.なにごとも子供本位にだけ考えますか。
はい はい はい (少 し) (かな り) (ひどく)
はい はい はい (ときには) (たびたび) (いつも)
はい はい はい (ときには) (ときどき) (いつも)
はい はい はい (ときには) (かな り) (ひどく)
(いいえ)
(いいえ)
us HHS (ときどき) (いつも)
はい はい (だいたい) (いつも)
はい はい はい (少しは) (たいてい) (いつも)
はい はい (いいえ) (たいてい) (いつも)
はい はい はい (多 少) (たいてい) (いつも)
(いいえ)
(いいえ)
(いいえ)
(いいえ)
(いいえ)
(いいえ)
はい はい (ときどき) (かならず)
はい はい (ときどき) (いつも)
はい はい (ときどき) (いつも)
はい はい (たいてい) (いつも)
はい はい (たいてい) (いつも)
はい はい (たいてい) (いつも)
24 宮 原 時 彦・北 村 陽 英 41.あなたはその時の気分によって、しつけ方が変わ
りますか。
42.子供は同じことをしているのに、ある時はしかり、
ある時はみのがしたりしますか。
43.ひどくしかったあとで、あやまったり、きげんを とったりしますか。
44.ひごろ甘やかしておきながら、時にはひどくしか りますか。
45.あなたは来客時とか、外出先とか、人前とかでは 態度を変えがちですか。
46.両親のうち一方の親が厳格で、もう一方の親が甘 くそのちがいが大きいですか。
47.両親のうち一方の親が放任で、もう一方の親が世 話をしすぎ、そのちがいが大きいですか。
48.一方の親がこどもをひどくしかると、かならずも う一方の親はとめますか。
49.父親(または母親)のこどもに対する態度をいつ も不満に思いますか。
50.子供の教育やしつけについて両親の方法や意見が どうしても合わないと感じますか。
(いいえ)
(いいえ)
(いいえ)
(いいえ)
(いいえ)
(いいえ)
(いいえ)
(いいえ)
(いいえ)
(いいえ)
ご協力ありがとうございました
はい はい (ときどき) (いつも)
はい はい (ときどき) (いつも)
us Hォa (ときどき) (いつも)
はい はい (ときどき) (いつも)
はい はい (ときどき) (いつも)
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(かな り) (ひどく)
はい はい (かな り) (とても)
はい はい (ときどき) (いつも)
はい はい (ときどき) (いつも)
はい はい (ときどき) (いつも)