はじめに
肥満やメタボリック症候群人口の増加に伴 い,非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease:NAFLD)/非アルコール性脂 肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis:NASH)患 者も益々増加しており,今や国内に 2,000 万人 以上患者がいるとされている.このため,NAFLD 全例を肝臓専門医に紹介して肝生検・精査する ことは現実的ではない.そこで,本稿ではNASH や 非 ア ル コ ー ル 性 脂 肪 肝(non-alcoholic fatty liver:NAFL)の診断の基本について述べるとと もに,内科医がNAFLD患者を診たときに必要な 検査内容とNASHや肝線維化進展症例を見つけ 出し専門医に紹介する際のポイントについて, 最新の知見を含めて概説する.
1.NAFLD/NASH診断の進め方
2014 年に日本消化器病学会から刊行された 「NAFLD/NASH診断ガイドライン 2014」におけ るNAFLD/NASH診 断 フ ロ ー チ ャ ー ト に よ れ ば1),NAFLDと診断するためには,血液検査・ 画像検査などで肝障害および脂肪肝の存在診断 の後に,ウイルス性肝炎,自己免疫性肝炎など の各種慢性肝疾患の除外後,飲酒歴の聴取によ診断の進め方:
専門医への紹介のポイント
要 旨 小野 正文1)2) 西原 利治2) 患者数のさらなる増加が予想される非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease:NAFLD)患者の中から治療が必要な 非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis:NASH)や肝 線維化進展症例を見つけ出すのは容易ではない.肝臓の組織診断がNASH と非アルコール性脂肪肝(non-alcoholic fatty liver:NAFL)を鑑別でき る唯一の方法であるものの,NASHや肝線維化進展の可能性が高い症例を 画像検査,スコアリングシステムならびにバイオマーカーなどを用いて診 断し,適切な時期に肝臓専門医に紹介することが重要である.今後,有用 な血液バイオマーカーの登場も期待されており,肝不全や肝細胞癌の高発 症リスク症例の早期診断が内科医には求められる. 〔日内会誌 105:47~55,2016〕
Key words NAFLD/NASH診断,非侵襲的NASH診断法,バイオマーカー
1)高知大学医学部附属病院光学医療診療部,2)高知大学消化器内科学
Clinical Importance of Non-alcoholic Fatty Liver Diseases. Topics:VI.Diagnostic procedures:when referring to specialists.
Masafumi Ono1)2) and Toshiji Saibara2):1)Department of Endoscopic and Photodynamic Medicine, Kochi Medical School Hospital, Japan and 2)Department of Gastroenterology and Hepatology, Kochi Medical School, Japan.
Ⅵ. 診断の進め方:専門医への紹介のポイント
りアルコール性肝障害の除外を行うとしている (図1).さらに,NAFLおよびNASHを区別するに は,肝生検にて診断を行う必要がある.現時点 では,NASHの確定診断のためには肝生検による 肝組織診断がゴールドスタンダードであるた め,NASH診断において内科医が知っておくべき 内容を中心に,組織診断から非観血的診断法, さらにはバイオマーカーについても最新の情報 について概説する. 1)NASH診断のための肝組織所見 肝生検の主な目的は,(1)NASHとNAFLの鑑 別診断,(2)重症度(主に肝線維化進展度)の 把握・診断,(3)治療効果の判定の 3 つが重要 である.NASHの診断はMatteoni分類によりなさ れるのが一般的である.肝組織において(1)肝 細胞の脂肪化(steatosis),(2)炎症性細胞浸潤 (inflammation),(3)肝細胞の風船様腫大(bal-looning hepatocyte),(4)肝臓の線維化(fibro-sis),(5)Mallory-Denk体の有無をもとに,Matteoni らはNAFLDをType1~4 に分類している(図 2).
Matteoni Type 1は肝細胞の脂肪化のみ,Type 2 は肝細胞の脂肪化に炎症細胞の浸潤のみを認め るもの,Type 3 は肝細胞の風船様腫大を認める もの,Type 4はType 3に加えて肝線維化を認め るもの,と定義されており,Type 3,4 がNASH と診断される2).さらに,NASHと診断された場 合はBrunt分類に基づいて活動性(Grade 1~3) と線維化(Stage 0~4)の評価も行われるのが 一般的である3).また,KleinerらNASH Clinical Research Network(CRN)は肝組織所見を脂肪 化の程度(0~3),実質炎症の程度(0~2),肝 細胞の風船様腫大の出現頻度(0~2)に基づく スコアリングの合計で 5 点以上をNASH,2 点以 下を非NASH(NAFL),3~4 点を境界(確定診 断保留)とする NAFLD activity score(NAS)を 提唱しており,NASHの組織診断に頻用されてき た4).しかし,スコアリングに線維化の評価項 目が入っていないこと,脂肪化が強いだけで NASHと診断する確率が上がるなどの問題点が 多く,最近ではNASはNASHの診断目的ではな く,治療の評価には有用であるとの認識が一般 図1 NAFLD/NASH 診断フローチャート(文献1より改変引用) 注:HCV抗体陽性例は,HCV-RNAを測定してC型肝炎・肝硬変を鑑別する. 注:NAFLD/NASHと自己免疫性肝炎の鑑別は,困難であることがある. 脂肪肝・肝障害 HBs抗原,HCV抗体, 各種自己抗体など なし あり 飲酒歴 なし あり NASH NAFL ウイルス性肝疾患, 自己免疫性肝疾患ほか アルコール性肝障害 NAFLD 肝生検
的になってきている.この場合,Brunt分類, NASともに組織学的脂肪化は,5%以上の肝細胞 に脂肪滴を認めた場合と定義されている点に注 意が必要である. 肝硬変に進展した病変では,アルコール性肝 硬変と同様に小結節性肝硬変となる場合が多い とされている.さらに,NAFLD/NASHが肝硬変 へと進展した場合,肝細胞の脂肪化のみなら ず,風船様腫大やMallory-Denk体などのNASHに 特 徴 的 な 病 理 所 見 も 消 失 す る 場 合 が 多 い (burned-out NASH)5).このため,画像もしくは 病理学的に肝の脂肪化が事前に確認できていな い症例では,NASHからの肝硬変と診断するのは 難しい場合が多いので注意が必要である. 2)非侵襲的なNASH診断法 (画像診断,スコアリングシステム,バイオマーカー) 国内のNAFLD患者の頻度については,江口ら が多施設共同研究結果で報告している通り,男 性で 41.0%,女性で 17.7%がNAFLDである6). このように,検診などで指摘されたこれら多数 の人たち全てに肝生検を実施してNASHかNAFL かの診断をつけるのは現実的ではない.このた め,非侵襲的な診断手段が求められるように なっており,最近は様々なデバイスを用いた診 断法,各種血液検査マーカーを用いた診断法な ど,かなり診断能の高い方法が開発されてい る.さらに,今後期待できるマーカーを含め, 図2A Matteoni分類に基づく病理組織像(大阪大学消化器内科 准教授 鎌田佳宏先生 ご提供) Type 1~3はHE染色,Type 4はアザンマロリー染色(矢印は風船様腫大) 図2B Matteoni 分類(文献1より改変引用) Type 1 単純性脂肪肝 NAFL Type 2 炎症を伴う脂肪肝(肝細胞風船様腫大や線維化はない) Type 3 Type 2に肝細胞風船様腫大を伴った状態 NASH Type 4 肝細胞風船様腫大、肝線維化、炎症性細胞浸潤を伴う Type 1 Type 3 Type 2 Type 4
その有用性についても概説したい. 3)画像検査による診断,評価 (1) 腹部超音波検査,腹部CT, 腹部MRI,フィブロスキャン 内科医が日常診療を行う現場や検診などで広 く用いられている腹部超音波検査は,肝臓の脂 肪化の有無を診断するには簡便かつ有用であ る.超音波画像Bモードにて肝実質の高輝度変 化,肝腎コントラスト,肝内脈管の不明瞭化, 肝深部のエコー減衰などにより,脂肪肝の診断 を行う.しかし,腹部超音波検査で明らかな脂 肪肝と判定するには 20%以上の肝内脂肪化が 必要であることや,腎不全患者では肝腎コント ラストが正確に判定できないなどの注意が必要 である7).近年では,腹部超音波検査にて肝臓 の 線 維 化 の 程 度 を 評 価 で き るARFI(acoustic radiation force impulse)などの測定法が各メー カーから登場しており,肝の組織学的所見とも よい相関関係を示し,今後の発展も有望視され ていることから,腹部超音波検査によるNAFLD の評価の重要性がますます高まってくることが 期待される. CTによる脂肪肝の診断には,肝臓と脾臓のCT 値の比(liver/spleen比)が用いられる.一般に L/S比が0.9未満の場合,脂肪肝があると診断さ れるが,軽度の脂肪化の判定は困難とされてい る.近年,菅らは肝組織における脂肪化面積測 定 とCT値 の 相 関 を 検 討 し,steatosis grade 1 (S1:5~33%の脂肪化)に相当するL/S比の平 均は0.88 ± 0.28であること,さらにL/S比が1.1 以上の場合には「脂肪肝なし」と診断するべき である,と述べている8). MRIに お け る 脂 肪 肝 の 診 断 は,T1 強 調 像in phaseでは診断は難しいものの,out of phaseで は低信号となることから診断が可能である. MRIのproton-density-fat-fraction(PDFF)法やMR spectroscopyなどを用いた肝の脂肪化定量も期 待されている9).また,MRI検査は脂肪成分の選 択的な画像化が可能であることから,肝臓だけ でなく最近注目されている筋肉など異所性脂肪 として溜まった脂肪量の評価ができる点でも優 れている. また最近では,振動子を利用して低周波・低 出力のせん断波を肝臓に送り,その波の伝わる 速度を測定することにより,肝臓の硬さを評価 できるフィブロスキャンが多くの施設で使われ るようになってきた.フィブロスキャンは非侵 襲的かつ瞬時に測定可能であるため,NASH/ NAFLDのみならず,種々の慢性肝疾患の肝線維 化進展の評価および治療効果の判定にも有用で ある10).さらに最近,フィブロスキャンには肝 線維化測定の際に肝臓の脂肪化も同時に半定 量 的 に 測 定 で き るCAP(controlled attenuation parameter)が搭載されている.脂肪化測定の感 度が高く,軽度の脂肪肝でも検出可能であり, 肝組織の脂肪化の程度ともよい相関があること が報告されている11).また,肝の脂肪化と線維 化の測定が同時に行えることから,同一患者を 経時的に診ることで,上記で述べたburned-out による肝硬変症例を見逃す危険が減少すること が期待されている. 4)スコアリングシステムによる診断 これまで世界中で数多くのスコアリングシス テムによるNASH診断の試みが行われてきた.そ れは,NAFLD全ての症例に肝生検を実施するの は現実的ではなく,NAFLD患者の中からNASHや 肝線維化進展が疑われる患者を効率よく選び出 し,限定的に肝生検による精査するとともに, 積極的な治療が必要な患者を選び出す必要があ ると考えられてきたためである.スコアリング システムは日常診療において検査が可能な測定 項目を用いたスコアリングが一般に提唱されて おり,その有用性と簡便性が期待されている. (1)NASH鑑別のためのスコアリングシステム これまで,NASHとNAFLの鑑別に関して,HAIR score, Nash Test(NT),NASH clinical scoreなど
多くのスコアリングシステムの報告があるが, 現在までに確立された鑑別システムは存在しな いのが現状である.しかし,日本人において比 較的有用であるスコアリングシステムの報告も みられることから一部紹介する.日本の多施設 共同研究により角田らが報告したNAFIC score はNAFLとNASHの 判 別 を 目 的 と し て, 日 本 人 619 症 例 でestimation studyお よ びvalidation studyが行われた信頼に足るスコアリングシス テムである12).構成要素としては,(1)血清 フェリチン値(1点:女性200 ng/ml以上,男性 300 ng/ml以上),(2)空腹時インスリン値(1 点:10 μU/ml以上),(3)IV型コラーゲン7S(2 点:5 ng/ml以上)というわずか3項目の点数を 合計し,4点満点にてNASH鑑別を行うものであ る.NAFIC 4 点の場合 9 割がNASHと診断され, 2 点でもNASHである可能性が 5 割であると報告 されている.NASH鑑別のためのAUROC(area under receiver operator characteristic curve)が 0.803 と日本人NAFLD患者での評価では他のス コアリングシステムに比較して良好である.こ の事からも,NASH鑑別には血中フェリチン値, 空腹時インスリン値,肝線維化マーカーに注目 することは有用であり,NAFIC scoreが 2 点以上 の症例は一度肝臓専門医に紹介するのが重要で あろう. (2) 肝線維化進展例鑑別のための スコアリングシステム 肝線維化進展群を鑑別するスコアリングシス テ ム も 数 多 く 報 告 が あ りFIB4 index, NAFLD fibrosis score, BARD scoreなどはAUROCも高く有
用とされている(図 3).しかし,BARD scoreに
はBMI(body mass index)が含まれており,BMI の小さい日本人ではその有用性が低くなること を藤井らが報告しているなど13),BMIが含まれ るスコアリングシステムの場合は,欧米人では 有用であっても日本人NAFLDでの鑑別には注意 が必要である.このため,日本人における各ス コアリングシステムの有用性を確認する目的 で,角田らは多施設共同研究において日本人 NAFLD 576 症例を用いて有用なスコアリングに ついて検討を行っている(図 3)14).それによれ
ば,FIB4 index: 年 齢 ×AST(IU/l)/( 血 小 板 数 (109/l)×√ALT(IU/l))が日本人NAFLD患者に おいても最もAUROCが良好で信頼できる肝線維 化スコアリングシステムであり,カットオフ値 が 1.45 でstage 3,4 の 高 度 線 維 化 症 例 を 感 度 90%,特異度64%で検出できると報告している. さらに,日常診療の中で肝線維化進展を簡便 に鑑別する方法として血小板減少に注目した研 図3 日本人(576名)を対象とした肝線維化鑑別のためのスコアリングシステム (文献14より改変引用) スコアリング指標 オリジナル著者 (発表年) AUROC カットオフ値 (%)感度 特異度 (%)
FIB4-index Shah AG(2009) 0.871 1.453.25 9048 6495
AST/ALT ratio(AAR) McPherson S(2010) 0.788 0.81 6648 7692
AST to plate ratio index(APRI) Kruger FC(2011) 0.823 1 67 81
Age-plate index(AP index) Poynard T(1997) 0.81 6 66 78
NAFLD fibrosis score Angulo P(2007) 0.863 -1.455 0.676 9233 6396
BARD score Harrison SA(2008) 0.765 2 80 65
究が米田らにより報告されている.多施設共同 研究における日本人NAFLD 1,048 名について, 肝線維化stageごとの血小板数を検討したとこ ろ,図 4のように肝線維化が進行するにした がって徐々に減少することが明らかとなった. 血小板数 19.2 万/μlをカットオフ値とすれば, stage 3 の線維化症例を感度 63%,特異度 76% で検出でき,血小板数15.3万/μlをカットオフ値 とすれば肝硬変症例を感度 80%,特異度 88% で検出できることが示されている15).一般に, C型慢性肝炎では血小板数が10.0万/μl未満とな れば,8 割の確率で肝硬変であるため注意が必 要とされているが,NAFLDでは他の慢性肝疾患 と比べて血小板の減少速度が遅いことが指摘さ れており,血小板数が20.0万/μl未満となった場 合にはstage 3, 15.0 万/μl未満では肝硬変を疑っ て肝臓専門医への紹介を考慮すべきであろう. 以上のように,これらのスコアリングシステ ムを用いてNASHの鑑別とともに,肝線維化が進 展した集団を日常診療や集団検診受診者の中か ら早期にスクリーニングして肝臓専門医による 二次検診へと導く制度の確立が急がれる.
5)バイオマーカーによる診断
(1) NASH鑑別および肝線維化進展鑑別の ためのバイオマーカー NASHとNAFLの鑑別に有用性が確立された単 一のバイオマーカーは現時点では存在しない. その中で,単一パラメーターとして比較的有望 とされているのがアポトーシスのマーカーであ るサイトケラチン 18 断片(CK18 fragment)で ある.NAFLに比べ,NASHでは肝細胞のアポトー シスが促進的に作用していることが知られてい るが,アポトーシスの亢進に伴い,カスパーゼ 活 性 が 上 昇 し 肝 細 胞 の 細 胞 骨 格 を 構 成 す る CK18 fragmentが切断され,血中で測定可能とな る.CK18 fragmentは単一マーカーとしてNASH 鑑別診断に用いることができるため,現時点で 最も注目され有用性が有望視されている.しか し,鑑別のためのカットオフ値が報告により大 きく異なっていることや16),現在のところ保険 適応がないなど課題は多く,その有用性は一般 臨床レベルでの測定には到達していない. 最近,血清Mac-2 binding protein glycosylation isomer:M2BPGi(Mac2 結合蛋白糖鎖修飾異性 体)がC型慢性肝炎における肝線維化進展の評 価に有用であることが報告された.さらに,阿 部らはNAFLDの肝線維化の評価にもM2BPGiの 測定が極めて有効であることを 289 名の多施設 共同研究の成果として報告した17).それによる と,M2BPGi値は肝線維化進展により増加し,各 線維化stageの鑑別に有用であったとしている (図 5).さらに,血小板,ヒアルロン酸,AST/ ALT比,FIB4 indexなどと比べても各線維化stage における鑑別にも有効であったと報告してお り,肝線維化バイオマーカーとして期待され る.このため,カットオフ値が 1.0 を超えるよ うなNAFLD症例は肝線維化が進展している可能 性が高いため,専門医への紹介を検討すべきと 思われる. 図4 NAFLDにおける肝線維化と血小板の関連 (文献15より改変引用) 0 5 10 15 20 25 30 35 Stage 0(n=216)(n=334)Stage 1(n=270)Stage 2(n=187)Stage 3(n=41)Stage 4 肝線維化ステージ 平均血小板数(104/μl) 血小板数(10 4/μl ) 24.8 23.7 22.0 18.9 12.4
(2) 今後,臨床的応用が期待される バイオマーカー
最近,フコシル化ハプトグロビン(Fuc-Hpt) とMac-2 binding protein(Mac2bp)を用いたバ イオマーカーの組み合わせによる非侵襲的な NASH診断法の有用性について,鎌田らは我々と ともに行った多施設共同研究による成果を報告 した18).Fuc-HptはNASH患者で上昇しており, 中でも肝細胞の風船様腫大の出現頻度増加に伴 い有意な上昇を示し,風船様腫大評価の血液バ イオマーカーとして報告されている.Mac2bpも NASH患者で上昇しており,中でも肝線維化進展 の程度との関連が強く,その相関係数は前項で 述べたM2BPGiよりもさらに強い相関を示すこ とが明らかとなっていた.このため,肝生検に て診断されたNAFLD患者 506 名と健診受診者 803 名の解析を行い,Fuc-HptとMac2bpの両バ イオマーカーの組み合わせが,AUROC 0.8144, 感度71.4%,特異度82.3%,陽性的中率83.5%, 陰性的中率69.5%と,他のスコアリングシステ ムによるNASH鑑別に比べ極めて有用な非侵襲 的NASH診断法であることを報告した(図 6). 現時点では保険適応がなく,一般臨床レベルで の測定には到達していないものの,今後保険適 応となり,肝生検に代わり得るNASH鑑別マー 図5 血清M2BPGiとNAFLD線維化との関係 (文献17より改変引用) M2BPGi:Mac2 結合蛋白糖鎖修飾異性体 8 6 4 2 0 Stage 0
(n=35)(n=113)Stage 1 (n=49)Stage 2 (n=41)Stage 3 (n=51)Stage 4 肝線維化ステージ
血清
M2BPGi
(COI)
(n=289)
図6 Mac2bp & Fuc-HptバイオマーカーのNASH診断の有用性 (文献18より改変引用)(大阪大学消化器内科 准教授 鎌田佳宏先生 ご提供)
Parameters AUROC 感度(%) 特異度(%) 陽性的中率(%) 陰性的中率(%)
Mac2bp & Fuc-Hpt 0.844 71.4 82.3 83.5 69.5
FIB4 index 0.732 61.5 89.8 88.5 64.5
BARD score 0.569 75.8 40.3 64.6 63.3
NAFLD fibrosis score 0.622 50.0 74.0 66.1 58.4
FIB4 index
NAFLD fibrosis score BARD score Mac2bp & Fuc-Hpt
0.0 0.5 1.0 0.0 0.5 1.0 感度 1-特異度
カーになることが期待される.
2.専門医へ紹介するポイント
国内に 2,000 万人以上いるとされるNAFLD全 例を肝臓専門医に紹介することは非現実的と言 わざるを得ない.そこで,NAFLDの中でどのよ うな状態,検査値が出現した際に肝臓専門医に 紹介するべきかについて概説する. 肝臓専門医に紹介すべきNAFLDの状態として は,(1)NASHが疑われる患者,(2)肝線維化 進展が疑われるNAFLD患者,(3)肝細胞癌発症 の リ ス ク が 高 いNAFLD患 者,(4) 非 肥 満 の NAFLD患者などである. これまで述べたように,肝組織診断なしで NASHを鑑別することは容易ではない.しかし, 表で示すように「糖尿病・高血圧などメタボ リック症候群の基準を満たしている」「高度肥満 (BMI 30 以上)」「血清フェリチン値,空腹時イ ンスリン,4 型コラーゲン 7Sの高値例(NAFIC score 2点以上)」などはNASHである可能性が高 いことから,専門医への紹介を考慮すべき症例 である19).また,肝線維化進展が疑われる症例 と し て, 上 記 で 述 べ た「AST/ALT比 0.8 以 上 」 「FIB4 index 1.45 以上」「血小板数 20 万/μl未満」 「フィブロスキャンなどでの高度線維化症例」 とともに「閉経後の女性」も知られており,こ れらに合致する患者については専門医への紹介 を考慮すべきと考えられる.肝線維化がstage3 以上の症例は,肝細胞癌発症の高度危険群であ ることから,肝線維化高度進展が疑われる場合 は 専 門 医 へ の 紹 介 が 必 要 で あ る. 非 肥 満 の NAFLD症例も時々見かけることがあるが,その ような症例の中にはホルモン異常や慢性膵炎な ど の 2 次 性NAFLDで あ る 場 合 も 少 な く な い た め,一度専門医への紹介をお勧めする.おわりに
NAFLDおよびNASHの診断法および専門医へ 紹介するポイントについて概説してきた.今後 も増加が予想されるNAFLD患者全てを肝臓専門 医に紹介するのは現実的ではないため,内科医 としてもNASHや肝線維化進展症例の診断の基 本を理解することが大切である.そのうえで, 病状の進行した患者を適切な時期に肝臓専門医 に紹介することで肝不全,肝細胞癌の発症を抑 制することが望まれる. 著者のCOI(conflicts of interest)開示:本論文発表内容 に関連して特に申告なし 表 肝臓専門医に紹介した方がよいNAFLD患者(文献19より改変引用) 性別・年齢 閉経後の女性 合併症 糖尿病・高血圧などメタボリック症候群の基準を満たしている 体重 高度肥満(BMI 30以上)を認める 検査値 AST/ALT比 0.8以上 血小板数 20万/ml未満 画像所見 フィブロスキャンなどでの高度線維化症例 スコアリング NAFIC score 2点以上 FIB4 index 1.45以上文 献
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