主要な研究成果
背 景
地球温暖化防止や循環型社会の構築に向け、バイオマス利用技術の開発ニーズが急速に高まっている。バイ
オマスをガス化することで、ガスエンジンをはじめ、ガスタービンや燃料電池等、各種発電方式との組合せの
選択肢が拡大し、高効率化が狙えるほか、バイオマス種や規模等の立地条件に見合った発電システム構成の検
討が可能となる。各種バイオマスを用いた種々方式のガス化発電システムの成立性の検討には、ガス化効率や
発電プラントの熱効率等を推定・評価する技術が不可欠である。
目 的
各種バイオマスのガス化反応特性を実験的に解明し、反応モデルを構築するとともに、バイオマス発電シス
テムにおけるガス化効率や各種発電プラントの性能を推定できる一連の評価技術を開発する。
主な成果
1.各種バイオマスのガス化反応特性の解明とモデリング
熱天秤や気流層管状炉等の反応速度測定装置を用いて、各種バイオマスのガス化反応速度を解明した(図
1)。バイオマスのガス化反応速度は、種類により大きく異なっており、実験により反応速度パラメータを求
める必要がある。また、石炭のガス化反応に対してよく用いられる細孔モデル式では、バイオマスのガス化
反応速度の変化を充分に表現できないことがわかり、細孔構造の変化を表す項のパラメータを実験結果と合
うよう改良することで、各種バイオマスに適用可能であることがわかった(図 2)。
2.バイオマスガス化効率の推定
上記 1 で得た反応速度モデルを、当研究所が開発した 1 次元ガス化炉解析ツールに反映することで、任意
のガス化方式(ガス化剤、ヒートロスや滞留時間(規模)等を指定)における、炉内温度、生成ガス組成・
発熱量、炭素転換率、冷ガス効率等のガス化効率を推定することが可能である(図 3)。
3.各種バイオマス発電システムの性能解析・評価技術の開発
ガス化効率の推定結果に基づき、当研究所が開発した「発電システム熱効率解析汎用プログラム
(EgWin)* 1
」を用いることで、ガスタービンコンバインドサイクルや燃料電池発電の他、新たに開発した
ガスエンジンによる発電システムの熱物質収支解析が可能である。図 4 に示す 240 トン/日規模の木質バイオ
マスガス化複合発電システムの性能解析結果例を表 1 に示す。
以上、各種バイオマスに対応した反応モデルを構築することにより、プラント規模、発電システム構成等
の要望に応じ、ガス化効率や発電性能を推定でき、バイオマス種に応じた各種発電システムの事前評価が可
能である。
なお、本研究の一部は、NEDO /電力受託研究として実施した。
今後の展開
評価対象とするバイオマス種を拡大し体系化を図るとともに、バイオマス利用で問題となるタールの発生・
分解メカニズムを解明・モデル化し、バイオマス利用プラントの総合的な評価技術を開発する。
主担当者 エネルギー技術研究所 システム熱工学領域 上席研究員 芦澤 正美、
主任研究員 梶谷 史朗、大高 円、渡邊 裕章
関連報告書 「バイオマス IGCC 発電システムの検討─既存発電システムの調査とプラント性能評価─」
電力受託研究報告: M04507(2005 年 6 月)、「バイオマス炭化物のガス化反応性の解明─ガ
ス化反応速度式の検討と籾殻炭化物のガス化反応速度解析─」電力中央研究所報告:
M04007(2005 年印刷予定)
48
バイオマスガス化発電システムの性能評価技術の開発
* 1 :幸田他、「発電システム熱効率解析汎用プログラムの開発」電力中央研究所報告: W99034(2000 年 9 月)
C.エネルギーと環境の調和
49
7 8 9 10 11
10–5
10–4
10–3
10–2 1100℃ 900℃ 700℃
TGによる各種チャー・コーク
PH2O=0.05MPa
PE
PP
再生紙
コーヒー
石炭B
石油
コークス
石炭A
サラダ油
の水蒸気ガス化
籾殻
杉バーク
焙煎滓
PP:ポリプロピレン
PE:ポリエチレン
7 8 9 10 11
10–5
10–4
10–3
10–2
1/T [K–1
×10–4
]
ガス
化反応速度dx/dt
|x=0.5
[s
-1]
700℃
900℃
1100℃
TGによる各種チャー・コーク
PH2O=0.05MPa
PE
PP
再生紙
コーヒー
石炭B
石油
コークス
石炭A
サラダ油
の水蒸気ガス化
籾殻
杉バーク
焙煎滓
図1 各種バイオマスのガス化反応特性
80
85
90
95
100
0.40 0.45 0.50 0.55
炭素転換率(%)
60
70
80
90
100
0.40 0.45 0.50 0.55
600
700
800
900
1000
0.40 0.45 0.50 0.55
生成
ガ
ス
発熱量
(kcal/Nm3
、HHV)
冷ガス効率(%)
a)生成ガス発熱量 b)炭素転換率 c)冷ガス効率
図3 木質バイオマス(杉)のガス化効率推定結果例
炉
化
ス
ガ
器
換
交
熱
脱塵装置
ガスタービン
蒸気タービン
空気
バイオマス
乾燥 空気
排熱回収ボイラ
煙突
炉
化
ス
ガ
器
換
交
熱
脱塵装置
ガスタービン
蒸気タービン
空気
バイオマス
乾燥 空気
排熱回収ボイラ
煙突
図4 バイオマスガス化複合発電システム構成例
表1 発電性能解析例
240T/日規模
バイオマスIGCC
燃料供給量 t/d 240
熱乾燥後 t/d 218
発電端出力 MW 13.53
(GT出力) MW 7.90
(ST出力) MW 5.63
送電端出力 MW 9.35
所内動力 MW 4.18
発電端効率(HHV)% 36.7
送電端効率(HHV)% 25.3
所内率 % 30.9
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
0.0000
0.0002
0.0004
0.0006
0.0008
0.0010
ガス化反応率 X [−]
ガス化反応速度dx/dt
[s
-1]
TGによる籾殻炭化物の二酸化炭素ガス化
900℃、常圧、CO2 100%
細孔モデル
(Ψ=0.7、b=2.2)
修正速度式
実験結果
(
)
{
(
)
}
b
p
k
dt
dx
= 1−x 1−Ψln1−x
(Ψ=10、b=0.5)
図2 ガス化反応速度改良モデルによる相関例
横軸1/Tは温度の逆数で、参考のため上側の軸に温度軸を
示した。本図より反応速度は、バイオマスの種類によって大
きく異なることがわかる。
細孔構造の変化を表す項のパラメー
タを改良することで、種々バイオマス
の反応速度変化を表現可能
バイオマスの反応特性実験に基づく速度式を構築することで、空気比、滞留時間、ヒートロス等をパラメータと
し、ガス組成、発熱量、炭素転換率、冷ガス効率等のガス化効率を推定することが可能
ガス化効率の推定結果に基づき、当研究所が開発した「発電システム熱効率解析汎用プロ
グラム(EgWin)」等を用いることで、種々の発電システムの熱物質収支解析が可能