循環型社会の地球温暖化対策
独立行政法人国立環境研究所 循環型社会・廃棄物研究センター
橋本征二
21世紀環境立国戦略
低炭素社会
温室効果ガス排出量の 大幅削減
循環型社会
3
R
を通じた資源循環自然共生社会
自然の恵みの享受と継承
生態系と環境負荷 気候変動と生態系
気候変動と エネルギー・資源
21
世紀環境立国戦略は、低炭素社会、循環型社会、自然共生社会 づくりの取組を統合的に進めていくことにより地球環境の危機を 克服する持続可能な社会を目指す地球温暖化の危機 資源の浪費による危機 生態系の危機
出典:日本政府(2007)21世紀環境立国戦略(http://www.env.go.jp/guide/info/21c_ens/21c_strategy_070601.pdf)より作成
広義の循環型社会
広義の 循環型社会
健全な物質循環
自然共生社会
自然の恵みの享受と継承
生態系と環境負荷 気候変動と生態系
気候変動と エネルギー・資源
広義の循環型社会 ( 健全な物質循環社会 ) は
低炭素社会や自然共生社会の一部も包含する概念
“Sound Material-Cycle Society”
低炭素社会
温室効果ガス排出量の 大幅削減
ごみ処理・ 3R 活動と温室効果ガスの排出
廃棄 収集
運搬 リユース 焼却 埋立 リサイクル
物質の一生と温室効果ガスの排出
温室効果ガスは私たちが使う物質の一生、すなわち採取から廃棄に至 る全ての段階から発生
廃棄段階の技術やシステムを変えることによって、これらの温室効果 ガスの発生量は変わる生産 使用
採取
リデュース リデュース
ごみ処理・ 3R 活動と温室効果ガスの排出
廃棄段階の温室効果ガス排出量が変わる
例えば、収集車を高燃費のものに変えれると、収集運搬段階の排出量 は減る 廃棄以外の段階の温室効果ガス排出量が変わる
例えば、容器包装をリデュースすると、原材料の採取、容器包装の生 産、廃棄の全段階の排出量が減る廃棄 収集
運搬 リユース 焼却 埋立 リサイクル
生産 使用
採取
リデュース リデュース
ごみ処理・ 3R 活動と温室効果ガスの排出
廃棄以外の段階の温室効果ガス排出量が変わる
例えば、容器包装プラスチックのリサイクルをすると、分別区分が増えて収集運搬段階の排出量は増加する リサイクル段階の排出量が加わる
それまで必要となっていた焼却、埋立段階の排出量は減少する 資源採取、製品生産段階の排出量は減少する
収集
運搬 焼却 埋立
リサイクル
生産 使用 採取
収集
運搬 生 使用
産 リサイクル
する場合
リサイクル しない場合
ごみ処理・ 3R 活動と温室効果ガスの排出
廃棄以外の段階の温室効果ガス排出量が変わる
例えば、中古の冷蔵庫をリユースショップで購入して使うと、廃棄段階および新しい冷蔵庫の生産段階の排出量は減少する 古い冷蔵庫はエネルギー効率が悪いため
使用段階の排出量は減少しない
収集
運搬 焼却 埋立 収集 リユース
運搬 リユース
する場合
リユース
しない場合 採取 生産 使用
使用
廃棄段階で発生する温室効果ガス
2008
年度における温室効果ガス排出量は4,100
万トン程度(CO
2換 算)で、日本の総排出量の3.2
%程度(
この図は温室効果ガスインベントリから抽出可能なデータで作成)
温室効果ガスインベントリと廃棄段階からの排出
2006 年 IPCC 温室効果ガスインベントリ ガイドラインの部門
エネルギー部門燃料の燃焼
(
エネルギー産業、製造業、運輸業など
)
など
工業プロセス及び製品使用部門鉱物製品、化学製品、金属などの生産、
製品の使用
(
冷媒、発泡剤など)
など
農業、林業及びその他の土地利用部門 土地利用(
森林、農地など)
、家畜及び家 畜ふん尿の管理、木製品の利用など
廃棄物部門固形廃棄物の埋立・焼却、廃水処理など
焼却(
廃プラ・廃油等の燃焼=CO
2、全廃棄物の燃焼= CH
4・N
2O)
埋立(CH
4・N
2O)
リサイクル(
コンポスト化= CH
4・N
2O
)
その他(し尿処理・廃水処理= CH
4・N
2O)
温室効果ガスインベントリと廃棄段階からの排出
2006 年 IPCC 温室効果ガスインベントリ ガイドラインの部門
エネルギー部門燃料の燃焼
(
エネルギー産業、製造業、運輸業など
)
など
工業プロセス及び製品使用部門鉱物製品、化学製品、金属などの生産、
製品の使用
(
冷媒、発泡剤など)
など
農業、林業及びその他の土地利用部門 土地利用(
森林、農地など)
、家畜及び家 畜ふん尿の管理、木製品の利用など
廃棄物部門固形廃棄物の埋立・焼却、廃水処理など
収集運搬(燃料の燃焼)
焼却(
助燃剤・機器燃料の燃 焼)
埋立(
機器燃料の燃焼)
リサイクル(
廃プラ・廃油等 及び機器燃料の燃焼)
焼却(
厨芥・紙ごみ等の燃焼=CO
2、農業廃棄物の燃焼)
埋立(CO
2)
リサイクル(コンポスト化=CO
2)
その他(
家畜ふん尿の管理)
埋立(HFCs
、PFCs
、SF
6の 漏洩)
リサイクル(HFCs
、PFCs
、SF
6の漏洩)
温室効果ガスインベントリと廃棄段階からの排出
廃棄物部門の温室効果ガス排出量の データを見る際の留意点
廃棄物管理のために必要となる化石燃料の燃焼に 伴う排出はエネルギー部門に計上される
生物系廃棄物の燃焼、生物分解によって発生するCO
2は農業、林業及びその他の土地利用部門で考 慮されるため、二重計上を避けるため廃棄物部門 では計上されない生物系廃棄物はカーボンニュートラルだからその
CO
2は計上しない
化石燃料系廃棄物が燃料として利用された場合は エネルギー部門に計上するのがIPCC
ガイドライン 上のルールだが、日本のインベントリにおいて は、この排出を廃棄物部門に計上している
インベントリ上の廃棄物部門にはし尿処理・廃水 処理から発生する温室効果ガスが含まれる廃棄段階で発生する温室効果ガス
廃棄物の焼却および廃棄物のエネルギー利用による排出が多くを占め ており、これが増加の傾向にあったが近年減少傾向
廃棄物のエネルギー利用とは、熱回収等された廃プラスチック、廃 油、廃タイヤ、ごみ固形燃料の燃焼によるもの廃棄段階で発生する温室効果ガス
だたし、廃棄物のエネルギー利用は化石燃料を代替するために使われ ているので、日本全体としては温室効果ガスの排出削減に貢献
次いで多いのが家畜ふん尿の管理、埋立・コンポスト化(
世界的に見 れば、埋立地からのCH
4が廃棄物部門における主要な温室効果ガス)
ごみ処理における地球温暖化対策
収集運搬
ごみの分別区分が増える方向にある中で、少量の 異なるごみを効率的に収集運搬することが必要
ごみの分別区分が増えれば一般に収集運搬の温室 効果ガス排出量は増加、しかし、多くの場合その 増加分はリサイクルによる削減分を十分に下回る ため、全体で見れば削減収集運搬の効率化
一時停止、低速走行の多い収集車にとって燃費の 技術的向上が重要収集車の燃費向上
BDF(Bio Diesel Fuel)
などへの燃料転換も有効 収集車の燃料変換ポイント 対策の例
ごみ処理における地球温暖化対策
焼却
リデュースによって廃プラスチックの発生量その ものを減らすこと、焼却よりもリサイクルを優先 させることで焼却量を減らすことが重要化石燃料系廃棄物 の焼却回避
焼却を行う場合には、できるだけ高効率でごみの 持つエネルギーを利用することが必要
ごみ発電については、できるだけ高効率の技術(
最近のもので20
%程度)を導入することが必要
熱利用については、どれだけの化石燃料を代替し ているのかについての情報を収集するとともに、化石燃料を代替する有効な熱利用について検討を していくことが必要
ごみ発電の効率向 上/有効な熱利用
ポイント 対策の例
ごみ処理における地球温暖化対策
埋立
日本は多くの場合焼却によってこれを回避してい るが、発生源での分別や中間処理施設での選別な どの手段も有り生物系廃棄物の 埋立回避
埋立地の構造を改善し、生物系廃棄物がCH
4では なくCO
2になるような状態に埋立地内部を保つこ とが必要準好気性埋立
CO
2の21
倍の温室効果を持つため、CH
4を回収し て燃焼するだけでも効果有り
日本では適用が難しいが、多くの国においては十 分な量のCH
4が得られるならCH
4のエネルギー利 用は経済的にも有望CH
4の回収ポイント 対策の例
リサイクルによる地球温暖化対策
リサイクル(熱回収)
生物系廃棄物起源のCO
2はカーボンニュートラル が成立していれば正味の温室効果ガス排出とはな らないため、仮にごみから燃料ガスへの転換で化 石燃料を利用したとしても、それを上回る燃料が 得られれば、地球温暖化対策として意味有り生物系廃棄物のガ ス化
(
熱分解もし くは発酵による)
RDF
は貯蔵時の取り扱いに慎重を要するが、人 口密度の低い地域でごみから効率よく熱回収を行 うには有効な方法 RPF
はRDF
に比べて発熱量が高く、産業におい て石炭を代替する燃料として利用されれば有益
こうした形態での熱回収は焼却による熱回収より 効率が高いことから、より推奨すべきRDF
・RPF
による 熱回収
セメント産業でも多種のごみが燃料として利用さ れ、石炭を代替セメントキルンで の熱回収
ポイント 対策の例
リサイクルによる地球温暖化対策
リサイクル(再生利用)
よく知られているのはアルミニウム
鋼材も鉄くずから生産する方がエネルギー消費が 少ない(約3
分の1
程度、日本の電源構成のもとで は、CO
2の量は6
分の1
程度)
金属くずの 再生利用
多様なリサイクルの方法(マテリアル、ケミカ ル、熱回収など)
に加え、その費用を誰が負担す るかについて様々な意見
プラスチック製容器包装については、マクロには 温室効果ガスの削減効果有り
理想形は、質の高いマテリアルリサイクルをまず は行い、段階を経て最終的には熱回収もしくはそ れに近いケミカルリサイクルをするというカス ケード型の利用廃プラスチックの 再生利用
ポイント 対策の例
リサイクルによる地球温暖化対策
リサイクル(再生利用)
紙の生産のためのエネルギー消費量は減るもの の、エネルギー源がバイオマス(
黒液)
から化石燃 料にシフトすることにより、再生利用した方が化 石燃料起源のCO
2排出は増加
紙の需要量が世界的に増加している状況下で、古 紙が再生利用されなければ森林の劣化や減少を招 くなら、そのCO
2排出を適切に評価する必要有り 古紙の再生利用
厨芥については焼却、コンポスト化、メタン発 酵、ディスポーザなどの様々な方法があるが、温 室効果ガス削減という観点からは、メタン発酵し て発電する方法が有利
家畜ふん尿についても、ガス化などの技術を適用 することによって、CH
4、N
2O
の排出を抑制する とともに、得られた燃料ガスを利用することによ り化石燃料の代替効果有り厨芥・家畜ふん尿 の再生利用
ポイント 対策の例
リサイクルによる地球温暖化対策
リサイクル(再生利用)
産業活動から発生する副産物の再生利用で、地球 温暖化対策として大きな効果があるのは、高炉ス ラグや石炭灰のセメント原料としての利用
セメント生産における焼成のためのエネルギー消 費だけでなく、原料となる石灰石(CaCO
3)
に由来 するCO
2排出も削減可能高炉スラグや石炭 灰のセメント原料 利用
ポイント 対策の例
リユース・リデュースによる地球温暖化対策
その他のごみを減らすこともその生産、廃棄の段 階で発生する温室効果ガスを減らすことに貢献 その他のごみの発生抑制
飲料容器についてはPET
ボトルのリユース実験等 も行われているが、リユースが有利になる条件は 回収率が高いことであり、回収率が低いとその効 果は発揮されないリターナブル容器 の使用
最近身近になったリデュース活動はレジ袋の削減(その消費量からすれば、
CO
2の削減効果は大き くないが、ライフスタイルを見直す一つのアプ ローチと考え、他の廃棄物のリデュースにつなげ ていくことが重要)
レジ袋に限らず廃プラスチックの焼却量を減らす ことが、ごみ処理から発生する温室効果ガスを直 接的に減らすことになる廃プラスチックの 発生抑制
ポイント 対策の例
リユース・リデュース
リユース・リデュースによる地球温暖化対策
耐久財のリユースについては慎重な評価が必要
家具のように、使用段階でエネルギーを消費しな いものは、長期間使用することによって、その生 産、廃棄段階で発生する温室効果ガスを減らすこ とが可能
自動車や家電製品など、使用段階でエネルギーを 消費するものは、長期間使用することによって、使用段階で発生する温室効果ガスが新しい製品よ り増加
使用段階のエネルギー効率が大幅に改善している 場合は、買い換えたほうがライフサイクルでみた 温室効果ガスの排出を削減可能
この場合、ごみ・資源対策と地球温暖化対策にト レードオフが生じる耐久財の長期使 用・再使用
ポイント 対策の例
リユース・リデュース
ごみ処理・3R活動における地球温暖化対策の行政的位置づけ
2010
年の削減見 込量(万tCO
2)
対策温室効果ガス
523 HFC
の回収代替フロン等
3
ガス146
焼却施設における燃焼の高度化(N
2O)
50
ごみの最終処分量の削減(CH
4)
CH
4、N
2O
580
ごみの焼却に由来するCO
2の削減112
混合セメントの利用拡大非エネルギー起源
CO
270
ごみ発電の増強、収集運搬におけるBDFの導入、プラスチック製容器包装のリサイクル エネルギー起源
CO
2 京都議定書目標達成計画
ごみの焼却に由来するCO
2の削減とHFC
の回収で大きな削減を見込む
プラスチック製容器包装のリサイクルによる間接的なCO
2の削減効果 はエネルギー起源CO
2に関する対策の中でその効果を見込む
鋼材のリサイクルやセメント産業におけるごみ燃料利用の効果など は、下表には含めていない出典:日本政府(2008)京都議定書目標達成計画(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ondanka/kakugi/080328keikaku.pdf)