オーストリア刑法における損害回復論
著者名(日)
高橋 則夫
雑誌名
東洋法学
巻
38
号
1
ページ
181-201
発行年
1994-09-10
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00000545/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.jaオーストリア刑法における損害回復論
高
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貝u夫
一 二 三 四 五 序説ー損害回復的行為の刑法的意義 行為による悔悟︵一六七条︶について 所為の当罰性の欠如︵四二条︶について 刑の減軽事由︵三四条一四号・一五号︶について 結語−損害回復的行為の刑法的規制 一 序説−損害回復的行為の刑法的意義 損害回復的な行為者態度の典型例は、ドイツ語圏刑法学において伝統的に認められている、行為による悔悟︵↓警蒔① 勾Φ器︶である。これは一般に刑罰消滅事由︵ωq畦窪跨①ゴ轟詔霊且︶と理解されている。オーストリア刑法典は、こ ︵−︶ のような損害回復的行為を比較的広範囲に認める形で規定している。たとえば、一六七条は、財産犯における﹁行為 東 洋 法 学 一八一オーストリア刑法における損害回復論 り八二 による悔悟﹂を規定し、刑事訴追機関の発覚前に、外部的強制なしに、損害回復をした場合を刑罰梢滅事由としてい ︵2︶ る。この規定は一九八七年に改正され、対象となる財産犯の範囲がさらに拡大された。また、四二条は、﹁所為の当罰 ︵3︶ 性の欠如﹂を規定しているが、一九八七年の改正により、損害回復および﹁行為者と被害者の和解﹂が行われた場合 ︵4﹀ を刑罰消滅事由としている。そして、三四条一四号、一五号では、量刑において損害回復が特別な減軽事由とされて いる。このように、オーストリア刑法典ではこれらの三段階において損害回復的側面が考慮されている。 以上のような損害回復的行為は、既に発生した危殆化結果を除去し、あるいは侵害結果を修復する事後行為と特徴 づけることができる。そして、既に発生した危殆化結果を除去し、あるいはその後の侵害結果を回避する類型を﹁予 ︵5︶ 防的な損害回復﹂、既に発生した侵害結果を修復する類型を﹁補償的な損害回復﹂に分類することができる。損害回復 的行為の基礎にある考え方は、被害者利益とくに被害者の損害の回復を強く考慮しようとする刑事政策的視点であ ︵6︶ る。いわば、被害者保護のために、行為者に﹁黄金の橋﹂を架けるものということができるであろう。このような損 ︵7︶ 害回復的行為の考え方は、犯罪から後戻りする態度すべてにあてはまるものである。 わが刑法典においては、予備段階・未遂段階・既遂段階に対応して、損害回復的行為についての規定は若干存在す ︵8︶ るが、﹁行為による悔悟﹂のような規定は存在しない。しかし、わが国においては、刑法解釈論上、とりわけ違法性あ るいは責任の判断の中に、﹁行為による悔悟﹂的な判断を取り込むことが可能なように思われる。すなわち、損害回復 的行為は、とくに可罰的違法性や可罰的責任を肯定する立場によれば、必然的に考慮の対象となっているといわざる ︵9︶ を得ないであろう。
本稿は、以上のような損害回復的行為の刑法上の意義について、オーストリア刑法の展開を素材に若干の検討を加 えるものである。 ︵1︶ ︵2︶ オーストリア刑法一六七条︵行為による悔悟︶は次のように規定する。 ﹁︵一項︶ 器物損壊、データ損壊、エネルギーの侵奪、横領、動産横領、物の継続的侵奪、他人の狩猟権若しもは漁 業権の侵害、盗取、詐欺、詐欺的なデータ処理の濫用、給付の詐欺、困窮詐欺、背任、権力者による贈り物の収受、暴 利、詐欺的な違法破産、他人の債権者に対する加害、債権者の庇護、過失による違法破産、執行を無効にする行為、隠 匿及び過失による物の領得、物の隠匿若しくは売却を理由とする可罰性は、行為による悔悟によって消滅する。 ︵二項︶ 次の場合、行為による悔悟が行為者に役立つものとする。官庁︵一五一条三項︶が行為者の罪過を聞知する 前に、行為者が、たとえ被害者の要求に基づくにせよ、それに強制されることなく、 λ一号︶ 自己の所為から生じた損害の全部を回復したとき、または、 ︵二号︶ 一定の期間内に被害者に対してそのような損害回復を行う義務を契約上負担したとき。ただし、行為者が 自己の義務を厳守しないときは、この第二号の場合においては、可罰性が再び復活する。 ︵三項︶ 官庁︵一五一条三項︶に対し自己の罪過を打ち明ける自首の過程において、自己の所為から生じた損害の全 部を当該官庁に供託して回復したときも、行為者は罰せられない。 ︵四項︶ 損害回復のために真摯に努力した行為者は、第三者が行為者の名において、または所為に関与した他の者 が、第二項に挙げられた条件の下で、この所為から生じた損害の全部を回復したときも、行為者は罰せられない。﹂ オーストリア刑法四二条︵所為の当罰性の欠如︶は次のように規定する。 ﹁職権をもって訴追される所為が罰金だけを科され、または三年以下の自由刑、または右の自由刑と罰金とが併科さ れるときは、その所為は、次の場合可罰的でない。 東 洋 法 学 八三
︵3︶ ︵4︶ ︵5︶ ︵6︶ ︵7︶ オーストリア刑法における損害回復論 一八四 ︵一号︶ 行為者の責任が軽微であり、 ︵二号︶ 所為が何らの結果を惹起せず、または些細な結果を惹起したにすぎず、または所為の結果が本質的に除 去、回復、あるいは調整され、行為者が少なくともこれに真摯に努力し、 ︵三号︶ 行為者に可罰的行為をさせないため、または他人による可罰的行為の遂行を阻止するために、処罰が必要 でない場合。﹂ 高橋則夫訳﹁フリーダー・デュンケル﹃ドイツにおける行為者・被害者の和解についての経験ー刑法における新た な反作用1﹄﹂比較法︵東洋大︶二八号︵一九九〇年︶二一五頁以下参照。 オーストリア刑法三四条︵特別の減軽事由︶一四号、一五号は次のように規定する。 ﹁とくに、次の場合は、減軽事由となる。行為者が、 ︵一四号︶ より重大な損害を加える機会があったにもかかわらず任意にこれを抑制した場合、または損害が行為 者あるいは行為者に代わる第三者によって回復された場合、 ︵一五号︶ 惹起した損害を回復しまたはその他の不利益な結果を阻止するために真摯に努力した場合、﹂ 霞一Φ爵婁葺竃α讐。算①凶§αR国毫Φ一§§閃αΦωH鼻一葺ωαR鼠凶磯雪園Φ仁ρ昌ω。ま昌︵年超︶︶譲一&Φ茜⊆冒鋤− oど鑛⊆且ω霞鉱おo拝這o 。8ω●o 。。 。は、﹁行為による悔悟﹂を予防的︵實競<8岳く︶な類型と補償的︵ぎヨ需お簿oユω魯︶ な類型とに分類している。 蜜昌雫gΦ貫寄一巨惹一℃・まω。冨§αα。閃暴け一ω。箒牢・σ一窪Φα①ωω富︷雲跨①び琶鵯讐巨αΦω8二似凝窪零器︵留①刈 ωおゆンO一N一零8ψ認盟参照。 勾αωω器び≦δαΦ鑛暮B8ゴ轟ω鼠暮OびΦ一<Rひq①一8p一員竃蝉詩ω\国αω撃R︵=尻ωひQ︶、↓警Φ学O冨Φ雫︾仁ωひq一Φ一〇F一8PN。 >巨4ψN。 。団。己Rω4日似§−○鳳Φ同−>qω磯一①酵巨α囚・色蓉<R碧σΦ善⇒磯 ヨΦぼ餌一ω嵩霞Φ汐U一<Φ邑8葵。98江費 評窓琶一窪包邑一憂””冒uくご︵=廊●︶w窯Φぼ§げ>良讐督ーζ①鼠四9浮ぎ瀞昌ρ一8Pωお一己R9 ≦一a①茜暮§。ど鑛ぎω欝杭§算 ω5穿①。聾一ω。げ。9巨α語Φa①ω>国−≦Oζ甘ま餌詩ω\ζ亀Φ﹃\ω。ぼΦ。窪轟\
︵8︶ ︵9︶ 薫彗母2︵=お堕︶︶巧一8R凶暮日碧ど轟巨qω霞錬おo拝8轟鉱9這8一ψω占噛h参照。 高橋則夫﹁刑法における損害回復論−刑法理論的・解釈論的アプローチ ﹂刑法雑誌三二巻三号︵一九九二年︶三 五六頁以下参照。 たとえば、いわゆる﹁マジックホン事件﹂︵最決昭六丁六二西刑集四〇巻四号二九二頁。町野朔・刑法判例百選− 総論︵第三版︶︶において、被告人の﹁取り外し行為﹂は一種の損害回復的行為と評価することができ、最高裁決定とは 異なり、可罰的違法性の判断に影響を及ぼしうるように思われる。なお、私見によれば、損害回復的行為は可罰性阻却・ 減少事由として位置づけられる。高橋・前掲論文︵注︵8︶︶三五九頁以下参照。 二 行為による悔悟︵一六七条︶について ︵一︶ 財産犯についての損害回復 刑法一六七条の﹁行為による悔悟﹂の規定は、オーストリア刑法の伝統ともいうべきものであり、一七八七年のヨ ーゼフ刑法典︵一五六条︶にまで遡り、二〇世紀においていくつかの批判があったにもかかわらず、今日一般に擁護 ︵−o︶ され、実務によっても積極的に評価されている。 対象となる回復可能な犯罪は、前述のように︵前掲注︵1︶参照︶、一九八七年の改正により、器物損壊、物の継続 的侵奪、データ損壊、詐欺的なデータ処理の濫用などに拡大され、暴力的側面を伴わない財産犯のほぼ全部を包含す ︵11︶ ることになった。また、これらの犯罪は制限列挙ではなく、一六七条の類推適用が一定の範囲で可能とされている。 東 洋 法 学 八五
オーストリア刑法における損害回復論 一八六 損害回復の時間的限界について、一六七条二項は、﹁官庁が行為者の罪過を聞知する前﹂でなければならないと規定 している。ここでいうところの﹁官庁﹂とは、刑事訴追の職務を有する官庁︵検察官、予審判事、裁判所刑事部︶お よび刑事訴追の職務を有する公の保安機関︵刑事警察、地方警察︶である︵一五一条三項︶。なお、行為者に対する嫌 疑が一定の事実に基づいて蓋然的である場合にのみ、﹁行為による悔悟﹂は排除され、漢然とした嫌疑では不十分とさ ︵12︶ れている。 損害回復の任意性について、一六七条二項は、直接それに言及しておらず、﹁被害者の要求に基づくとはいえ、それ に強制されることなく﹂、損害を回復することを要求している。この要件は、中止犯における任意性よりもきわめて広 く解釈されている。すなわち、内面的な改俊は問題とならず、また、告発あるいは訴追を免れるという動機があって も任意性を排除しない。任意性は、行為者が損害回復を拒否し得た限り存在し、それは、損害回復を拒否する可能性 についての行為者の表象によって判断される。たとえば、行為者が、犯罪行為の現場を押さえられたために、あるい は、賊物を安全な場所に移すことが不可能という理由で、財物を被害者に返還したような場合には、損害回復は強制 ︵13︶ されたものとされている。 損害回復の完全性について、一六七条二項は、その第一号において﹁所為から生じた損害の全部を回復﹂すること を要件としている。これは所為によって生じた物の回復のみならず、所為と結びつく犯罪類型的な損害︵たとえば、 ︵14︶ 住居侵入における器物損壊など︶をも回復しなければならないことを意味している。損害が一部だけ回復された場合 には、一九八七年の刑法改正前は単なる刑の減軽事由であったが、現在では、四二条︵所為の当罰性の欠如︶が適用
︵15︶ されることになる。 一六七条二項二号においては、﹁一定の期間内に被害者に対してそのような損害回復を行う義務を契約上負担﹂し得 ることが規定されている。これによって、経済力のない犯罪者についても損害回復の可能性が開かれることになる。 ︵16︶ この義務は、損害回復の程度について数字で表され、最終期日について暦で確定されなければならない。被害者が損 ︵17︶ 害回復の契約に同意しない場合には、﹁行為による悔悟﹂は排除される。また、被害者が損害回復を放棄した場合に も、同様と解されていたが、最近の判例および学説は、行為者が事実上真摯に完全な損害賠償を提供した場合には、 ︵18︶ ﹁行為による悔悟﹂を認める傾向にある。さらに、同条同号後段においては、﹁行為者がその義務を厳守しなかった場 合には﹂、﹁可罰性が再び復活する﹂とされている。これは、判例によれば、契約上の義務の不遵守が責任のない場合 でも妥当するとされ、また、事後的な和解の変更は、その変更が刑事訴追機関の聞知前に行われた場合にのみ不処罰 ︵19︶ の効果が生じるとされている。 一六七条四項は第三者による損害回復を規定している。行為者が完全な損害回復をできない場合、次のような要件 の下で不処罰となる。すなわち、行為者が、﹁損害回復のために真摯に努力し﹂、﹁第三者が行為者の名において、また は所為に関与した他の者が﹂損害を回復した場合がこれである。行為者と第三者との間にはこの点について合意が存 ︵20︶ しなければならない。単に任せただけでは不十分である。第三者として、法律上の代理人、配偶者、あるいはその他 ︵21︶ の第三者が挙げられているが、被害者の保険会社は除かれると解されている。なお、学説上、第三者の契約上の義務 ︵22︶ づけでも十分であるという見解もある。この条項によって、被害者が損害回復に関わることを拒否したような場合に 東 洋 法 学 一八七
オーストリア刑法における損害回復論 一八八 も、損害回復措置を採ることができる。 一六七条三項は自首についての規定である。すなわち、行為者は刑事訴追機関に自首する過程で、供託によって損 害を完全に回復した場合には不処罰となる。供託は速やかで完全な損害回復を意味し、契約上の義務︵一六七条二項 ︵23︶ 二号︶では不十分とされている。 ︵二︶ 刑法的・刑事政策的意義 一六七条の﹁行為による悔悟﹂は、刑法解釈論的および刑事政策的に興味深い規定といえるであろう。財産犯の領 域における実体法上の非刑罰化であり、たとえば、ドイッ刑法四六条二項のような単なる量刑事由でない点に特色が ある。 この﹁行為による悔悟﹂は、一般に人的刑罰消滅事由と理解されているが、一六七条四項によって他人による損害 回復をも包含されていることから、本条は、行為者︵↓鮮R︶関係的というよりはむしろ所為︵↓琶関係的なものと いえるであろう。概念的に﹁悔悟﹂という表現は、本条における財産犯における効果的な損害回復を狭めるものであ ︵24︶ って妥当ではないとの批判もある。いわゆる﹁悔悟﹂などの動機は本条の成立にとって必要ではないのである。 それでは、﹁行為による悔悟﹂の刑法理論的な根拠はどこに存するのであろうか。前述のように、行為者は、何らか の責任を減少させる動機から行為することも、自ら損害を回復させることも必要ではないことから、本条は行為者関 係的ではなく所為関係的な規定である。他方で、犯罪は既遂となっているので、犯罪性としてはより重大であるにも
かかわらず、任意性について、確かに要求されてはいるが、中止未遂における任意性の要件よりもはるかに緩やかと なっている。これらの点からみると、個人予防的な刑罰目的論的考慮は背後に退いていると考えざるを得ない。した がって、被害者の回復要求に対して、迅速で効果的な満足を与えることが、﹁行為による悔悟﹂の基礎にある根拠とい えるように思われる。すなわち、いわゆる﹁黄金の橋﹂の意味が、中止犯において論議されている行為者的側面︵一 般予防あるいは特別予防︶の趣旨どしてではなく、損害回復に対する被害者の利益という被害者的側面の趣旨として ︵25︶ 理解されることになるのである。国家の﹁責任﹂調整への利益が﹁損害﹂調整への利益の背後に退くことになり、し かも、それが犯罪概念の次元で行われる。もっとも、﹁行為による悔悟﹂は被害者的側面に重点があるとしても、行為 者的側面も二次的にあるいは帰結的に重要な意味を持つことになる。すなわち、行為者によって実現された犯罪行為 について、その後の損害回復行為により、所為の当罰性あるいは可罰性が阻却あるいは減少し、刑罰の必要性が減弱 一 ︵26︶ することになるのである。 ︵10︶ω雲BきP9蝉︵田ωひq。︶︶≧けΦ旨鋤牙曾薯二ほ譲一ΦαΦ樋q冒蝉畠琶閃︵︾国−巧O匡︶●浮薯貫暁晋Φω>号Φ一けωξΦ凶ω①ω αΦ暮ω魯gα曾R邑。匡ω魯R⊆&ω畠藷一N豊ω号Rω霞臥お。辟ω一ΦぼR︵>吾Φ一け葵邑ω︾国︶︶一。βψ一。ω︸田Φ惹葺9 0⊇昌母覧8ωα曾Rお8﹃δ魯8ω霞緯おo窪9甲日こ閃阜戸ド>亀r這G 。o 。”ψミ押寓亀一R−U冨貫︵前掲論文注︵6︶︶ω●逡紳 =9︷①一も一Φω冨守Φ眺邑Φ民Φ聾督勾窪①⊆且<R語民叶Φ田目一畠g轟8α①ωαω§邑。び一ω魯窪幻8冴甘一国ωR\密一ωR\ ζ匿一窪R︵浮ω閃。︶︸Z窪Φ譲①鴨αR≦一8①茜暮ヨ8ゴ鑛ぎω霞錬お。拝一8Pω巳一・ 。ごU﹃一Φ且一℃≧汁Φ旨&<Φ 寄一巨p巴も。一一爵汐Oωけ窪Φ酵§まRω。薯。Fぼ室曙\いΦH倉Φ馨邑R︵牢超︶Ψu一<Rω一9−≧gヨ9 D牙Φ目爵一餌ωω一ω− 東 洋 法 学 一八九
︵n︶ ︵12︶ ︵13︶ ︵14︶
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24 23 22 21 20 19 オーストリア刑法における損害回復論 一九〇 魯窪o oき耳δ冨8﹃ヨΦPω創戸おo 。どψおω味参照。 ωoぼ○戸Nqα窪おま㌶げ一磯窪UΦ=耳窪α8くRBα鳴湧馨円蝉ヰ8洋ρO一N這o 。貸ωまO捨室①き葺9︵前掲書注︵10︶︶ω 囑寵旧ωR冨一\ω畠≦巴閃ぎ8おO艀Rお8匡零げ8ωq畦お昌戸甲日4ンおo 。Pω。曽曾参照。 零︾田寧田a9誓冨α窪ω讐旦8ど轟巨ωq魅①3こ&言Z3窪弩9富。拝お=8Pψω轟困Φ轟鳳Φ一ス前 掲書注︵10︶︶ω遽○ 。ど口3ω魯9薫一曾R因OB目①導胃墜日幹声凝89Nび8F留①8おo 。ジψo 。刈参照。 国く匪おo 。O\一?O盲白ω民一〇〇 。更Oo 。馴国く匪おo 。Oミ?O一N・Uω内お○ 。O\曽旧ζ。>函αR−困8R”︵前掲論文注︵12︶︶ω。謹鱒 口3ω39︵前掲書注︵12︶︶ω。o 。8困Φ墨冨9︵前掲書注︵10︶︶ω妹o 。駅h参照。 ωωけ8\る檜ミ\8旧国く匪お刈O\まo 。旧一国おo 。98合O一N−一ω内ピ蕊\お押口3ω号①お︵前掲書注︵12︶︶ω。o 。o 。暁卦ω轟昌阜 ω8#R︸U一①鼠広鴨園窪Φ凶昌αR一&篤魯ξ8ω○○頃﹂田おo 。8ω。躍竃廿内一Φ轟鳳9︵前掲書注︵10︶︶ω●ミ試h参照。 ζ卜函α段カ一89︵前掲論文注︵12︶︶ω●ω島参照。 口Φげω魯①ぴ︵前掲書注︵12︶︶ωb9廿ωωけ8\る合国く国一8ミo 。鶏旧ω誓&\富門国く匪おミ\ま㌣O旨N−一ω丙お﹃ミ嵩9 一〇胡\嵩ざ国く田這o 。O\$−O冒−いω内おお\逡押﹃匪おo 。ザo 。竃参照。 O一N−いω国おお\8錦ゆ轟&馨①辞p︵前掲論文注︵14︶︶ω。蜜O参照。 国く匪這o 。ミ旨合這o 。O\ぎ“ω轟昌房房暮Rス前掲論文注︵14︶︶ψ韻ご口①訂3Rス前掲書注︵12︶︶ωbρωR冨くω3薫巴ひQ− ぎδお︵前掲書注︵n︶︶ψ器O参照。 国く匪這お\竃旧這o 。O\8−O盲陰いω囚一㊤お\逡曾おお\認合国く田這o 。更一蕊”O冒−一ω内這o 。Oおo 。参照。 ωωけ鳶≧?国く田おミ\ま㌣O冒・Uω囚一〇お\るご国く田這。 。ω\H守α冒−一ω内おo 。㎝\8参照。 口3ω畠9︵前掲書注︵12︶︶ωOω旧内一Φ轟冨卑︵前掲書注︵10︶︶ω卜o 。①参照。 閃oお器RゆR一葺誓轟︷鳴器訂げ8F望︾亀r這箪り留雪︾旨ヨく参照。 国く匹おお\置㌣O属−[ω内一零o 。\3参照。 因一①轟鳳9︵前掲書注︵10︶︶ω。ミ禽口筈零箒さ︵前掲書注︵12︶︶ω・o 。o 。参照。︵25︶ 鼠艶一R−9①貫︵前掲論文注︵6︶︶ω’o。臨楚閃きBきPgP︵=お喰・︶︶︵前掲書注︵10︶︶ω・一〇〇 。一参照。 ︵26︶ω9鋒Φぴ9①牢一色Φ讐①目琶鵬8ω..団邑惹一凝も。ω凶牙曾.、<Φ浮葺窪ωαΦωUΦ一一B器艮窪墨魯︷。賊BΦ二<・一一①且①§ ω霞鋤津舞H。8︾ψN日拝困塁−ωq巳一g妻一①αΦお暮日碧ど轟冒ωq鉱お畠け口8ω︶ψ。試静零89U一Φωけ窪Φ旨8臣一。冨 ωΦ一びω叶彗N①蒔。 N彗窪巨昌巴℃○一一叶一ω魯窪N幕畠B毬一嗅Φ津αΦω㈱鴇一︾ρH。。一”ω。一旨無頃睾Φざω“9Φ薯一8①撃 閃9ヨ8ゴ轟α①ωω9銭①ロω巴ωω嘗臥磐酔Φび§暢ひQ誉昌α冒αΦ暮ω9①昌仁且α雪R邑9一の畠窪ωq四坤Φ9“N勾勺一。。 。ρω● ωOQ 。臣参照。 三 所為の当罰性の欠如︵四二条︶について ︵一︶ 四二条二号における損害回復 一九八七年に改正された四二条二号においては、軽微犯罪のみならず、所為の結果が軽微でない場合でも、それが ﹁本質的に除去、回復、あるいは調整され、行為者が少なくともこれに対して真摯に努力し﹂た場合も包含されてい ︵27︶ る。ここでは、効果的な損害回復が所為結果に及ぼす影響とこれに対する行為者の真摯な努力とが区別されている。 前者には、損害の除去あるいは回復、その他の所為結果の調整が包括される。完全な損害の調整は必要ではなく、ま た、行為者の真摯な努力があれば、所為結果が第三者によって調整された場合でも十分である。したがって、行為者 ︵28︶ がすべての必要な事前措置を行っていれば、行為者の保険による損害回復も適用されることになる。所為結果の調整 は公判の終結まで行うことができる。契約による義務づけについては規定されていない。 東 洋 法 学 一九一
オ!ストリア刑法における損害回復論 一九二 ︵二︶ 一六七条との差異 ︵29︶ 四二条は、特殊な処罰阻却事由として起草され、一定の刑罰消滅事由をも含むものである。後者の刑罰消滅事由の 点では、一六七条の﹁行為による悔悟﹂よりも範囲が広くなっている。たとえば、四二条においては、﹁所為結果の除 去、回復あるいは調整﹂が原則として、公判手続きの終了まで刑罰消滅効果を有し、不処罰の可能性が拡大された。 さらに、四二条は、︸六七条の対象となっていない犯罪、たとえば傷害罪などにも適用され、対象犯罪の点でも拡大 されている。しかし、三年以下の自由刑という限定がある点で、一六七条よりも狭い。また、四二条においては、三 号における﹁行為者に可罰的行為をさせないため、または他人による可罰的行為の遂行を阻止するために﹂という刑 罰目的を考慮しなければならないこと、一号における﹁責任が軽微であり﹂、二号における﹁些細な結果﹂でなければ ならないという要件が必要なことなども、一六七条よりも狭い点である。 ︵三︶ 四二条の法的性質 四二条を犯罪論体系の中でいかに位置づけるかについては、オーストリア刑法上最も争いのある問題の一つである。 ︵30︶ たとえば、パリンは当初、可罰的違法性の欠如としていたが、現在では、非定型的形態︵即8辟ω︷お昌ω岳磯窪R一ω︶ ︵3 1︶ ︵3 2︶ と解しており、ノヴァコフスキーは、一方で責任阻却的考え方を表明し、他方で量刑事由に属しているとの見解も主 ︵33︶ 張している。
四二条は、その一号で責任の軽微性を要求している点から、﹁責任﹂の存在を前提としていると解せざるを得ない。 したがって、構成要件該当性・違法性・責任が存在していることは前提としてよいように思われる。その結果、四二 条の体系的位置づけとしては、処罰阻却事由か、刑罰消滅事由か、量刑規制とするかなどの可能性が考えられる。通 ︵34︶ 説的見解は、特殊な処罰阻却事由と、一六七条よりも広い刑罰消滅事由を含む規定と解している。すなわち、一六七 条がもっぱら所為関係的な刑罰消滅事由であるのに対して、四二条は、所為関係的な側面と行為者関係的な側面との ︵3 5︶ 両者に関わる、処罰阻却事由と刑罰消滅事由とを包含していると解しているのである。これに対して、ロクシンは、 四二条を、予防的な刑罰目的を一般的犯罪論に統合しようとした規定であり、したがって、犯罪論の枠内すなわち責 ︵36︶ 任の中で理解されるべきであるとして、答責性阻却事由と解している。と同時に、ロクシンによれば、四二条三号に おいて特別予防および一般予防という刑罰目的が明示的に規定されていることから、四二条が量刑規制でもあること ︵37︶ も承認されている。ちなみに、四二条二号の損害回復の規定も量刑要素とされている。このように、ロクシンは四二 条を一部は可罰的責任の問題、一部は量刑の問題という混合的性質を有するものと把握している。オーストリア刑法 典における四二条の形式的位置をみると、章のタイトルは﹁量刑﹂となっているのに対して、四二条の文言が﹁可罰 ︵38︶ 的でない﹂とされており、ロクシンの考え方に相応しているようにも思われる。 たしかに、所為関係的な要素は可罰性の問題、行為者関係的な要素は量刑の問題というように分類することは可能 である。四二条の法的性質の理解としては、おそらく妥当な見解といってもよいであろう。しかし、本稿のテーマで ある損害回復︵四二条二号︶を後者の量刑の問題に含めている点は妥当でないように恵われる。四二条二号の損害回
東洋法学
一九三・オーストリア刑法における損害回復論 一九四 復は、所為の結果に影響を及ぼす違法関連的な要素である。また、四二条三号の刑罰目的は、予防的必要性に影響を 及ぼす責任関連的な要素である。これらの違法あるいは責任関連的な要素は、量刑要素という比較的不安定な箇所に 位置づけるよりも、犯罪成立要件の中に位置づけることが妥当であるように思われる。私見によれば、四二条は可罰 ︵39︶ 性阻却事由として統一的に理解することが可能と考える。四二条一号の軽微な責任、二号の所為関係的な結果につい て、前者は可罰的責任阻却であり、後者は可罰的違法阻却である。これらに対して、四二条二号の損害回復および三 号の刑罰目的は、どちらも事後的な行為あるいは事後的な事情が問題となる点に注意しなければならない。これらの 事後的な行為あるいは事情は、可罰性を事後的に廃棄させるものであり、既に確定された可罰性に影響を与えるもの ではない。その意味で、犯罪行為時の違法・責任に関連する可罰性とは異なる種類の︵いわば真正のV可罰性といえ るものである。もっとも、四二条二号の損害回復は、違法関連的な可罰性阻却であり、四二条三号の刑罰目的は、責 任関連的な可罰性阻却というように把握することができる。 このように、四二条一号の軽微な責任、二号の所為関係的な結果については、犯罪行為時の可罰性︵可罰的違法性、 可罰的責任︶阻却事由として、四二条二号の損害回復、三号の刑罰目的は犯罪行為後の可罰性︵違法関連的、責任関 連的︶阻却事由として位置づけられるように思われる。 ちなみに、一九八七年改正によって追加された、四二条二号︵損害回復および﹁行為者と被害者の和解﹂︶の意義を ︵40︶ 高く評価し、﹁刑法における紛争規制﹂へのアプローチと看倣す見解もある。﹁行為者と被害者の和解﹂を一定の範囲 で認めたことは、このような方向に向かう契機となるといえるように思われる。
︵27︶
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一九五オ!ストリア刑法における損害回復論 一九六 四 刑の減軽事由︵三四条一四号・一五号︶について 損害回復的行為は、量刑において様々な観点から考慮される。オーストリア刑法の立法者は、三四条の刑の減軽事 由の中に、﹁損害が行為者あるいは行為者に代わる第三者によって回復された場合﹂︵一四号︶、あるいは、行為者が﹁損 害を回復するために真摯に努力した場合﹂︵一五号︶に、刑が減軽されるものと規定した。既にテレジア刑法典におい て、一定犯罪たとえば窃盗について損害回復が減軽事由とされ、一七八八年以来、侵害の生じるすべての犯罪に拡大 ︵41︶ された。このような規定は、損害回復が行為者の責任の徴表的役割を有し、それ故、責任減少的に機能することから 理解できる。また、違法関連的にも、損害回復によって犯罪の程度が軽くなるということも考えられる。しかし、第 三者の損害回復が刑罰減少的な機能を果たすことの理由を説明することは困難なように思われる。制限的な要件が必 要となるであろう。 惹起された損害を回復するために行為者が真摯に努力することは、行為者が、法的に保護された価値との結びつき を完全には無視してはいないことを示すといえる。 損害は、完全に回復される必要はないが、一部の損害回復はそれに相応した評価が行われることになろう。単なる 契約上の義務づけは、実際の損害回復に含まれないが、﹁努力﹂の要件に該当する可能性はあろう。行為者が官庁の聞 知の前に行為しなければならないという意味での任意性は必要ではない。
第三者による損害回復の場合、この第三者は、行為者を代理し、その義務を履行するという意図を有していなけれ ばならない。したがって、被害者の保険の給付は刑罰減軽効果を生じさせない。他方、行為者の保険については争わ ︵42︶ れているが、行為者の真摯な努力を前提として刑罰減軽効果を付与しうると思われる。 第三者が行為者を代理したことの動機は重要ではない。たとえば、共犯者が、自己および正犯者の刑を減軽させる ため、盗品を返還した場合でも十分とされている。また、行為者が回復に何らかの形で寄与することは必要ではない。 問題となるのは、被害者は、損害回復に同意しなければならないか、あるいは、より重い刑を期待して回復の履行を 拒否することによって、応酬することができるか、という点である。しかし、この問題は、損害回復の努力が実際上 の損害回復と原則的に同置されるということにより、重要性を失うことになる。もちろん、実際上の損害回復は行為 ︵醤︶ 者により大きな利益が付与されることになろうが、行為者の真摯な損害回復の試みで十分なのである。 以上の、三四条一四号・一五号の規定は、一六七条の﹁行為による悔悟﹂および四二条の﹁所為の当罰性の欠如﹂ の両者が適用されない場合にも、刑罰の減軽を認めるものとして注目に値する。 ところで、損害回復による刑の減軽は、次のような形態でも実現しうる。すなわち、賦課された刑種の変更と判決 確定後の損害回復による刑の減軽がこれである。前者として、罰金刑による短期自由刑の代替︵三七条︶などがあり、 また、保護観察のための刑の延期︵四三条︶や自由刑からの条件付き釈放などとの関係で、指示︵≦Φ一ω§閃︶として損 害回復の遵守事項が規定されている︵五一条二項︶。後者として、すべての減軽事情に妥当する刑訴法四一〇条の規定 が実務上重要である︵新たな量刑事情が事後的に明らかとなった場合、第二審において考慮しうる︶。このような事後 東 洋 法 学 一九七
オーストリア刑法における損害回復論 的な減軽は、刑の量のみならず、刑種にも影響を及ぼしうるものである。 また、損害回復が付加的な役割を果たす場合として、刑の執行の延期 条a一項︶や訴訟費用の徴収の放棄︵刑訴法三九一条一項︶などがある。 一九八 ︵行刑法六条一項二号aおよび刑訴法四〇九 ︵41︶
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冒図あ魯呂窪ω碧旨8ど轟びαω霞緯N仁幕ωω琶磯琶αびΦ蝕お§ω富砂8琶。﹃け魯函ωΦこ。鉾︵田ω鵬。︶︶蓋9R讐喜鋤− 9§讐Bω現緯お畠什扇Φ9房<Φお一蝕魯Φ&ΦωωΦ巨昌震。 。。トーω。㎝.這。 。Pω●㎝。 。“評一一一pU一Φo o霞錬N¢BΦωω§讐旨Φ。区一畠R ω8拝﹂。。 。㌣ψお顕参照。なお、犯罪後の態度と量刑の関係について、城下裕二﹁量刑基準に関する一試論︵一︶︵二︶︵三︶ ︵四・完︶﹂北大法学論集四三巻四号八七頁以下、同巻五号一頁以下、四四巻二号四七頁以下、同巻五号三九頁以下︵一九 九二年、一九九三年、一九九四年︶、岡上雅美﹁責任刑の意義と量刑事実をめぐる問題点︵一︶︵二・完︶﹂早稲田法学六 八巻三・四号七七頁以下、六九巻一号二頁以下、とくに三五頁以下︵一九九三年︶参照。 閃○お躇RゆR一三ス前掲書注︵22︶︶畜自HN置参照。 ζ>両αR−西包B︵前掲論文注︵12︶︶ωり。禽廿い仁〆︵前掲論文注︵41︶︶ω.昭参照。 五 結語−損害回復的行為の刑法的規制 以上、オーストリア刑法における損害回復の実体法的規制を概観してきたが、このような広範囲な規制を設けた実 際的な理由は、オーストリアにおける厳格な起訴法定主義を緩和していくという点にあることは否定できない。しかし、刑事手続上の規制とは独立して、損害回復的行為を実体刑法上考慮していくことは刑法理論上妥当なことなので あり、そうであれば、起訴便宜主義を採用するわが国においても、オーストリァ刑法における損害回復についての規 制は注目に値するように思われる。 なぜ損害回復的行為を実体刑法上考慮することが刑法理論上妥当なのかについて、詳細な議論は別稿に譲らざるを 得ないが、結論をいえば、損害回復的行為は、行為者には非刑罰化傾向を、被害者には損害回復の利益を、社会には ︵44︶ 積極的な規範強化をそれぞれもたらしうる可能性を有しているからである。すなわち、損害回復的行為は、﹁積極的一 般予防﹂の点で多大な効果を発揮するように思われる。積極的一般予防については様々な考え方が披渥されているが、 刑罰の内容を、規範違反者の負担で行われる、規範の否認の否定と捉える一般予防、一般的な法意識が行為者との紛 争を処理されたものと看徹すことによる満足効果に焦点をおく統合予防、あるいは、犯罪によって侵害された法的平 ︵45︶ 和の回復と捉える一般予防などと理解する考え方である。たとえば、ロクシンは、積極的一般予防における三つの作 用を挙げている。すなわち、第一に、法への忠誠によって引き起こされる、社会教育的に動機づけられた学習効果、 第二に、法が貰徹されているということを市民が知る場合に生じる信頼効果、第三に、犯罪者による多大な寄与によ って、一般的な法意識が法違反について安定し、犯罪者との紛争が処理されたと看倣された場合に生じる満足効果が ︵46︶ これである。ロクシンによれば、さらに、統合予防という概念を満足効果に限定し、積極的一般予防を、その他の効 ︵47︶ 果をも包含する上位概念とすることが合目的的とされている。 いずれにせよ、損害回復的行為によって、以上のような﹁積極的一般予防﹂的な効果をもたらすことができるよう 東 洋 法 学 一九九
オーストリア刑法における損害回復論 二〇〇 に思われる。そもそも、損害回復論は、犯罪によって生じた紛争を行為者・被害者・社会の三面構造として捉えて紛 争解決壱意図するものである。すなわち、行為者と被害者間の紛争が第一次的紛争であり、次に、第二次的紛争とし て行為者と社会間の紛争を問題とし、最後に行為者と国家間を問題とするのである。第一次的紛争さらに第二次的紛 争が解決されたならば、それによって法的平和が回復されたことになり、国家刑罰は撤退することになるわけであ ︵48︶ る。 このような刑罰目的論からのアプローチからみれば、オーストリア刑法における損害回復的行為の実体刑法上の規 制は理想的なモデルを提示しているといってよいように思われる。しかし、現実的な実行可能性については、なお多 くの問題を解決しなければならないことはいうまでもない。たとえば、社会国家原理の強力な貰徹が必要とならざる ︵49︶ を得ないであろうし、また、とくに一六七条は紛争の私事化を促進しすぎる規制であり、刑罰目的と調和しうるか否 ︵50︶ かも問題となろう。 しかし、損害回復的行為を刑罰消滅事由として承認することは、刑法の最終手段性・補充性に合致するものである。 刑法の任務である法益保護は、たとえば民事法上の手段などの他の形で実現されるならば、刑法上の手段によって実 現される必要はないのである。前述のように、わが国の刑法においては損害回復的行為を部分的にしか規制していな い。もっぱら、起訴猶予を中核とするディヴァージョン的方法により処理されているのである。しかし、前述のよう に、損害回復的行為を、可罰的違法性あるいは可罰的責任の判断に含めることも可能であるし、あるいは、私見のよ うに、事後行為であるが故に、違法性・責任とは別個の可罰性の判断に含め、可罰性阻却事由・可罰性減少事由とし
︵51︶ て位置づけることも可能であるように思われる。