県 教 育 委 員 会 と し て 考 え る 「 担 任 力 」
教 育 山 形 「 さ ん さ ん 」 プ ラ ン ( H 14~ )
「 一 人 一 人 の 子 ど も を 大 切 に し た 、 よ り き め 細 か な 指 導 」
「 学 習 と 生 活 と が 一 体 と な っ た 教 育 」
○義 務 教 育 9年 間 の少 人 数 学 級 編 制 (33 人 以 下 )の実 施
○重 点 とする教 科 (算 数 )の学 力 の向 上 や不 登 校 の未 然 防 止 等 の
諸 課 題 に対 応 するための教 員 配 置 等
指 導 環 境
の改 善
成 果 等
○ 学 力 の 向 上 ○ 不 登 校 児 童 生 徒 の 減 少 ○ 欠 席 率 の 低 下
課 題 や 今 後 取 り 組 ん で い き た い こ と
○ 改 善 さ れ た 指 導 環 境 を 活 か し た「 児 童 生 徒 が 精 一 杯 考 え 合 い 、表 現 し 合 う 」
授 業 づ く り
○ 生 徒 指 導 上 の 課 題 を 抱 え た 子 ど も も 含 め 、特 別 な 支 援 を 必 要 と す る 子 ど も
の 学 び を 保 障 で き る 学 級 経 営 や 授 業 づ く り
○ 子 ど も の 相 談 に の っ た り 、同 僚 と 子 ど も を 語 り 合 っ た り 、次 の 日 の 教 材 研
究 や 授 業 づ く り に 専 念 す る 時 間 の 不 足
少 人 数 学 級 編 制 等 に よ り 担 任 ( 学 級 担 任 +教 科 担 任 ) を 受 け 持 つ 教 員 が 多 い 本
県 に お い て は 、こ の よ う な 諸 課 題 等 へ 対 応 す る た め 、担 任 に よ る 授 業 を 核 と し
た 学 級 経 営 の 一 層 の 充 実 が 必 要 で あ り 、そ の た め に 必 要 な 学 級 担 任・教 科 担 任
の 力「 担 任 力 」を 育 成 し 、担 任 が 子 ど も と じ っ く り 向 き 合 い 授 業 に 専 念 で き る
学 校 経 営 の 改 善 に 取 組 む こ と が 不 可 欠 で あ る 。
担 任 力 :「 学 習 指 導 力 」「 生 徒 指 導 力 」「 特 別 支 援 教 育 力 」 の 3 つ を 統 合 し て 、
授 業 を 核 と し た 学 級 経 営 を 行 っ て い く 力
「 学 習 指 導 力」 : 教 材 や 学 習 活 動 に 精 通 し 、 児 童 生 徒 を 理 解 し 、 授 業 を 計 画 ・ 実 践 ・ 評 価 す る こ と で 、 一 人 一 人 の 学 力 を 伸 ば す 力 「 生 徒 指 導 力」 : 学 校 教 育 全 体 を 通 し て 、 認 め 合 い 高 め 合 う 集 団 を つ く り 、 そ の 中 で 一 人 一 人 の 個 性 を 大 切 に す る こ と に よ り 、 自 己 指 導 能 力 を 伸 ば す 力 「 特 別 支 援 教 育 力 」: 児 童 生 徒 一 人 一 人 の 教 育 的 ニ ー ズ に 応 じ た 適 切 な 対 応 を 通 し て 、 そ れ ぞ れ の よ さ を 伸 ば す 力今後の「担任力育成推進プロジェクト」
(授業改善プロジェクト)の
展開について
これまでの授業改善プロジェクトの取組の成果を継承しながらも、
「担任力育成」を校
内研究・校内研修の視点とした取組を更に充実させ、授業改善を進めていく。
校内研究・校内研修の進め方(例)
○ 昨年度までの研究・研修の成果と課題、学習指導要領が求める内容等から一人一人
が目指す授業改善のイメージを持つ。
○ 学年・学校で目指す授業改善のイメージを明確にする
「担任力 リーフレット 第1 集」 のチェックリストの活用【例1】 担任力 リーフレット 第2集の研修例を活用する
(Aタイプ) 継続して行えるもの
(Bタイプ) トピック的に行うもの
【例2】 3つの力から切り込み口をしぼる
【例3】 H24年度授業改善プロジェクト校の取組を参考に
する
〈担任力育成の参考となる取組〉
○ 学び合う姿(自分の考えをもち、進んで話したり書いたりし、友達の考え
を共有していく中で自分の考えを検討したり再構築したりする姿等)と、学
び合いで付けたい力(一人一人に基礎的・基本的な知識・技能を習得させる
ことに加え、思考力・判断力・表現力の育成、学ぶ意欲を高めるなど、確か
な学力を身に付けさせる等)を明確にして質の高い学び合いをめざしていく。
(朝日町立宮宿小学校)
○ 3つの視点(
「示す」
「ひびく」
「求め生かす」
)を軸にした授業づくり。
「本
時の目標が達成されたかどうかを明確に捉えるために、注目生徒[A]を設定
する。生徒の姿(事実)から授業を語る。
(山形市立高楯中学校)
○ 国語・特別活動、社会科、理科の3つの部会を組織して、児童の姿を可視
化し指導案検討を行ったり、KJ法により児童の姿から授業の検討を行った
りする。
(新庄市立日新小学校)
○ “ L I V E 授 業 研 究 ” の 試 み 。 日 々 の 授 業 改 善 に 最 善 を 尽 く す 。
資質・能力の向上、同僚性の構築を目指す校内研修を実施する。
(最上町立富沢小学校)
諸研修との連携
初任者研修
経験者研修
ミドルリーダー研修
管理職研修
特別支援研修
教育事務所研修
センター専門研修等
○ 「授業改善」
「子どもにとって良い授業」
「提案性のある授業」について共
有化する。また事後研究会のワークショップを2段階にすることで、課題や
成果の確認だけで終わらず、授業者から学んだことを更に掘り下げて考え、
自分の授業に生かす。
(舟形町立舟形小学校)
○ 「わからない。」「困った。」という子どもの気持ちを大切にしていくこと
を共通理解して取り組むことで、教師側に待つ姿勢、つぶやきを拾う意識が
高まった。授業の流れは指導案どおりでなくとも、子どもの反応に応じて臨
機応変に対応していく。
(戸沢村立戸沢小学校)
○ 教科担当が違う先生方を個人テーマに沿って3チームに編制。同一学級で
2教科の授業研究会を行う。
参観のポイント・指導の自己チェックの取組。
(金山町立金山中学校)
○ 1時間の中に「活動」
「学びあい」
「表現の共有」のいずれか(または複数)
を組み込み、生徒にどのような効果をもたらしたか検証する。不定期の教師
間による授業参観週間の実施。事後研修会では、
「聴きあい、学びあいの様
子」
「自分が学んだこと」に視点を置いて話し合い、必要に応じてビデオ撮
影した授業の様子を活用する。
(真室川町立及位中学校)
○ 「支援表」の作成や「ユニバーサルデザイン」を意識した授業づくり。特
別支援の視点で子どもと授業を語る時間を事後研究会の中に設ける。
(米沢市立愛宕小学校)
○ 生徒が主体的に学習に取り組むための課題設定の工夫として「単元のゴー
ルを明確にした指導過程」。生徒の「学習意欲」や「認知の力」を高めるた
めの支援の工夫として、思考の過程の『可視化』をする。
(飯豊町立飯豊中学校)
○ 指導者一人一人が自分の授業で何を改善して、どんな授業をしたいのかと
いう具体的なイメージを持つことからスタート。学校教育全体会で一人一人
の考え・思いを出し合い、日々の授業で改善していきたいことを焦点化する。
(遊佐町立蕨岡小学校)
○ 各教師の個人課題を出し合い、共有しながら、
「授業週間」などで授業を開
き、日常的に語り合う。注目生徒を決めて、3点セット
※を指導案に明記し、
見取っていく。
(庄内町立立川中学校)
※注目生徒A 3 点セット
①前時までの学びの姿 ②本時に願うこの生徒の姿
県教育センターの研修と担任力
~初任者研修における担任力育成の実際~
1 はじめに
県教育センターでは、キャリアステージに応じた研修を充実し、今日的な教育課題に即 した研修を実施するとともに教員と学校の課題解決力を高め、教員の継続的な資質向上を 図ることを目指して研修を行っている。 「担任力」は、「学習指導力」「生徒指導力」「特別支援教育力」の3つを統合して、授業 を核とした学級・学年・教科経営を行っていく力である。それだけに、担任力は、「ある一 つの研修を行ったから身につく」、「ある期間だけ研修を行ったから身につく」といったも のではないと考える。県教育センターにおける研修においても、「学習指導力」を身につけ ることをねらいとした研修、「生徒指導力」を身につけることをねらいとした研修、「特別 支援教育力」を身につけることをねらいとした研修、さらに、初任者研修や経験者研修な どといったキャリアステージに応じた研修を行っている。教員自身が、こうした研修と日 常の授業を繰り返しつないでいくことで、担任力を高め、授業を核とした学級・学年・教 科経営を充実させていくことになると考える。 ここでは、県教育センターにおける研修の概要と担任力を高めるための初任者研修の実 際を紹介する。2 県教育センターにおける研修の基本方針(平成 24 年度)
(1) 山形県教員研修体系に基づき、教員の資質向上に資するために、キャリアステー ジや職務に応じた研修講座を推進する。 (2) 学習指導要領や5教振の趣旨、時代のニーズに対応する研修の充実を図る。 (3) 教員自らと学校組織の活力を高める、マネジメント研修の充実を図る。 (4) 県教育センターで企画する研修を、各学校等を会場として実施し、より多くの教 員に研修の機会を提供することによって、指導力の向上を図る。また、校内研修や 教育研究会等への支援を行い、OJTの充実を図る。 (5) 校内研修との連携を図るため、研修成果の還元まで支援する。3 県教育センターにおける研修の構成
(1) 指定研修 教員としての基本的な資質・能力を育成し、その後の教職経験や役職に応じた実 践的指導力や教育への使命感と教育理念を深め、総合的な人間力を高めるために、 次の研修を悉皆として行う。 ■ 初任者研修、経験者研修 ■ 管理職研修 ■ 特別支援教育研修 (2) 専門研修 教員としての資質と指導力の向上を図り、学校や地域における教育活動の推進と 充実に寄与できるよう、教科・領域、教育課題、マネジメントに関する研修を行う。 ■ 教科・領域等に関する研修講座 ■ 教育課題等に関する研修講座 ■ マネジメントに関する研修講座 (3) 出前サポート 県教育センターが企画する研修を、各学校等を会場として実施し、より多くの教 員に研修の機会を提供することによって、指導力の向上を図る。また、校内研修や教育研究会等の活動への支援を行い、OJTの充実を図る。 ■ 教科・領域等に関する出前研修講座 ■ 教育課題等に関する出前研修講座 ■ 研究研修に関する指導・助言 (4) オープンセミナー 教員等の自己研修を支援するために、指定研修の中で公開可能な講義について、 所定の受講者以外にも公開する。 ■ 教育課題に関する講義 ■ マネジメントに関する講義
4 初任者研修~中学校理科の研修より~
平成24 年度初任者研修第4回県教育センターにおける研修「中学校理科教科指導Ⅴ『評 価と授業改善』」では、個々の授業実践をもとにした研修を行った。 (1)ねらい 単元計画や指導方法、生徒理解等について、互いの実践をもとに評価し合うことを 通して、自分自身の改善点に気付き、よりよい授業づくりをしていこうとする態度を 養う。 (2)研修の概要 中学校で作成される学習指導案では、単元の指導計画がそれほど詳細でないことが 多い。そのため、学習指導案を持ち寄った研修を行った際に、子どもの思考のつなが りや教師の指導の意図が検討されにくいことが予想された。 そこで、単元計画の6時間分を連続して取り出し、単元のねらい、1単位時間の学 習課題、評価の観点、評価規準、やってみての成果と課題をA4判1枚にまとめ、初 任者が資料として持参することにした。また、具体的な学習活動がイメージしやすい ように6時間分の板書の画像も合わせて持参することにした。 こうして初任者が持参した単元計画及び板書の画像をもとに協議を行った。 (3)研修の実際 ① 単元計画より 右図は、初任者が持参し た単元計画である。1単位 時間の学習課題や評価の観 点、評価規準を明確にした ことで、図の最も右側にあ る欄に記載されている1時 間ごとの振り返りが具体的 になり、前時や次時とのつ ながりを意識した記載が見 られる。例えば、「前時の生 徒の考察から……。」といっ た、子どもの思考を授業に 位置付けていこうとする指 導の意図も感じられる。 また、6時間を通しての 最終振り返りでは、「わかっ た生徒の考えを生かし、そ れをわからない生徒に広げ ていきながら、どちらの生徒も伸ばしていけるような授業を目指していきたい。」と記載しているように、学習 指導だけではなく、生徒指導や特別支援教育へもつながる内容になっている。 こうした授業観を初任者が描くことにあたっては、指導教員はじめ、勤務校の中 に、「一人一人の能力を最大限に伸ばす授業」、「子ども同士が精一杯考え合い表現し 合う授業」などといった担任力を生かした授業づくりを意識した雰囲気があること が、大きな要因となっているのではないかと考えられる。 ② 板書より 下図は、具体的な授業イメージを共有することができるようにと持ち寄った、初 任者の板書である。 「スチールウールを加熱しよう」という課題が書かれ、図を用いながら実験の方 法が説明されている。さらに、この時間に考えることとして、「加熱前と加熱後を比 較してみる」ことを板書し、明確に示している。こうした板書であったからこそ、 気付いたこととして生徒の様々な見方や考え方が表出され、検討されていったので はないかと考える。そして、それらの生徒の言葉が板書に位置付けられている。授 業を終えた生徒が、この時間の学習を振り返る際に、その思考の足跡をたどってい くことのできる板書になっている。 こうした板書の機能に目を向けながら、互いの板書を見合うことで、自分の板書 の改善点に気付く初任者の姿があった。 ③ 協議より 初任者にとっては、日ごろ悩んでいることや疑問に感じていることを初任者同士 で話すことができ、有意義な協議となった。単元の流れの違いが、教科書による違 いからきていたり、同じ内容でも教科書によって実験方法が違っていたりすること に気付き、教材研究の幅を広げていかなければ ならないと考えている様子があった。また、教 科書どおりに単元を計画するのではなく、目の 前の子どもの興味や関心に合わせて学習活動を 工夫した実践に触れることで、自分もそういっ た取組を行ってみたいという思いをもつ様子も あった。日ごろ悩んでいることとしては、「小数 の計算ができない子どもの支援をどうしていっ
たらよいのか」、「子どもに誤差の概念を獲得させていくことの難しさ」などが出さ れていた。どの初任者も、自分の目の前にいる生徒と向き合い、その一人一人を大 切にしていきたいという思いは同じであった。 (4)研修の考察~担任力の視点から~ 担任力の考え方を生かした授業づくりの最も核になることは、目の前にいる一人一 人の子どもを学習指導力、生徒指導力、特別支援教育力の視点からじっくり見つめる ことであろう。そして、そこから一人一人の子どもの思いや願い、課題に寄り添った 支援をしていくことであると考える。それだけに、担任力が最も発揮される場は、授 業中なのである。 現在の初任者の現状を見ると、大学や大学院を卒業してすぐに教員になった者、他 都道府県で教員を経験してきた者、講師経験がある者など、様々な経歴がある。特に、 大学や大学院を卒業してすぐに教員になった初任者は、日々の授業にあたって、「どの ような教材を使ったらよいか」、「どのように授業を進めたらよいか」など、授業づく りの技術を追い求める日々になっている場合が多い。ある程度経験がある初任者は、 授業づくりの技術を多少なりとも身につけ、目の前の子どもに合わせた授業づくりへ と目を向け始めている。こうした様々な初任者の現状があるからこそ、互いの授業に ついての見方や考え方を交流させていくことに意味があると考える。 第4回県教育センターにおける研修中学校理科教科指導Ⅴ「評価と授業改善」では、 単元計画と板書の画像を持ち寄った研修を行った。実際に、持ち寄った単元計画や板 書の画像から、個々人の授業に対する見方や考え方が伺えた。そして、それらがきっ かけとなり、初任者の授業に対する見方や考え方の変容があったと思われる。日々、 授業づくりの技術に追われている初任者も、「授業をつくる際に大切にしなければなら ないこと」、「自分の目指したい授業」などといったことにも目を向ける時間になった。 また、持参資料として、単元の計画だけではなく、授業後の振り返りや板書を持ち寄 ったことが効果的であった。担任力を高めるためには、日常の授業と研修を繰り返し つないでいくことが大切であると考える。互いの授業を、振り返りや板書といった具 体的な授業が見えるものから評価し合えたことで、また、次の具体的な授業に生かさ れていくといったサイクルが生まれやすい。実際、研修を終え、自分自身の授業の在 り方について見つめ直す初任者の姿が見られた。