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輸液製剤

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Academic year: 2021

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(1)

体液の区分

人体を構成する最大の要素は水分であり、体重の60%を占める。 そのうちの2/3(体重の40%)は細胞内液であり、残りの1/3(体重 の20%)は細胞外液として存在する。細胞外液の3/4(体重の 15%)は細胞の周囲を満たす液体であり、この液体を間質液と呼 ぶ。残りの1/4(体重の5%)の大半は血液の液体成分である血漿 である。体液にはさまざまな物質がとけており、それは電解質と 非電解質に分けられる。

(2)

体液の組成

電解質: Na+, K+, Ca2+, Mg2+, Cl-, HCO3-, HPO 42-, SO42-蛋白 質も電荷をもちイオンと なっている。 非電解質: グルコース、尿素、クレア チニン、など 細胞外液は、Naイオン (142mEq/l)とClイオン (103mEq/l)が主要イオン で、細胞内は、Kイオン (157mEq/l)が多い。 単位のmEq/lとは、水1L 当たりの当量の濃度 (Ca2+は2価イオンなので 1mmol/Lの濃度が 2mEq/lに相当する)

(3)

電解質の役割

1. 体内の水の変動を調節し(体液量の調節)、その分布の 正常化をはかる。 2. 体液の浸透圧を正常に保ち、細胞内外の浸透圧の変動 の平衡を保つ。 3. 酸塩基平衡(バランス)を保たせる。体液が酸性または アルカリ性に傾きすぎないように、pHを一定(7.4付近)に 保たせる。 4. 神経・筋の刺激性を正常に保たせる。 電解質の役割は、生体の生命維持に欠かせない要素である。

(4)

体液のpH

体液の

水素イオン濃度

(pH)を一定に保つことは、生命

を維持する上で最も大切なことのひとつである。生体反

応は、pHや温度が一定でないと機能しないからである。

正常血漿のpHは

7.4付近(7.35〜7.45)

で、ややアルカリ

性である。pHが正常より低下した状態は

「アシドーシス」

と呼び、逆に上昇した状態は

「アルカローシス」

と呼ぶ。

正 常 7.35 7.45 7.8 6.0 6.8 死 アシドーシス アルカ ローシス

(5)

pHの決定因子

体液のpHは、体液の電解質の組成の変化によって変動する。 pHの値は次のHenderson-Hasselbalchの式によって決められる。 この式であらわされるように、分子におかれる炭酸水素イオン (HCO3-)と分母の炭酸( H 2CO3 )の割合がpHを決定する。 pH = pK’ + log [HCO3-] [H2CO3] 炭酸・重炭酸塩系のpK’(解離定数)は6.1である。 pH = 6.1 + log = 6.1 + log = 6.1 + 1.3 = 7.4 27 1.35 20 1

(6)

血漿の緩衝作用 血漿中の炭酸、リン酸、タンパク質やヘモグロビンなどに は、体内あるいは体外からくる過剰の酸やアルカリ性のイ オンを中和する作用がある。 重炭酸緩衝系: 血中に酸が入るとただちに平衡は右側に傾き中和する。 緩衝作用の結果生じたCO2(酸)は肺から排出される。 H+ + HCO 3- ⇔ H2CO3 ⇔ H2O + CO2 アルカリ性 酸性

pHの調節機構

(7)

酸塩基平衡の異常 正 常 7.35 7.45 7.8 6.0 6.8 死 アシドーシス アルカ ローシス 血漿のpHが7.35以下になった場合をアシドーシス、7.45以上に なった状態をアルカローシスという。その原因が呼吸の異常によ る場合を呼吸性、それ以外の原因による場合を代謝性という。 酸塩基平衡の異常: 1)呼吸性アシドーシス 2)呼吸性アルカローシス 3)代謝性アシドーシス 4)代謝性アルカローシス

(8)

呼吸性アシドーシス: 呼吸が障害されると、CO2分圧(Pco2)が 上昇する。上の式では、左向きに進み H+が産生され、pHは酸性となる。 腎臓はHCO3-の再吸収を促進しpHの変動 をできるだけ小さくするように働く (腎性代償)。 呼吸性アルカローシス: 過換気症候群などにより呼吸が促進さ れた場合、過剰な換気によりCO2が正 常以上呼出されCO2分圧(Pco2) が減少 する。上の式では、右に進みH+が減少 する。 これに対する腎性代償は、HCO3-の排出 の促進である。 H+ + HCO 3- ⇔ H2CO3 ⇔ H2O + CO2

(9)

H+ + HCO 3- ⇔ H2CO3 ⇔ H2O + CO2 代謝性アシドーシス: 腎不全によるH+の排出障害、下痢など によるHCO3-の喪失や循環不全による乳 酸などの酸の産生が体内で異常二増加 したときなどに生じる。 過剰なH+を処理するために呼吸が促進 されるため、 CO2分圧(Pco2) は低下し HCO3-も減少する(呼吸性代償)。 代謝性アルカローシス: 頻回の嘔吐による胃液(H+を多量に含 んでいる)の喪失や低カリウム血症な どの際にみられる。これに対する呼吸 性代償として、減少したH+を補充する ために呼吸は抑制され、上の式の反応 を左に進める。このためCO2分圧(Pco2) は上昇し、 HCO3-も増加する。

(10)

輸液製剤

輸液は、経口摂取ができない場合や経口のみで

は不十分な場合、以下の目的で用いられる。

①水分・電解質の補充・補正

②血漿量・血液量の補充

③栄養の補給

輸液療法は、

①電解質輸液、②糖質輸液、

③血漿増量剤、④栄養輸液、⑤浸透圧利尿剤

分類される。

10

(11)

各種輸液剤

(12)

電解質輸液、細胞外液補充液

体液と浸透圧をほぼ等しくした液である等張電解質輸液薬 として乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、生理食塩液などがあ る。これらは、細胞外液の欠乏を補うために使用される。電解 質は細胞膜を自由に透過しないので、輸液により入った液は 血漿と組織液からなる細胞外液に分布することになる。 ①生理食塩液(生食)の組成: Na+ 154 mEq/l, Cl- 154 mEq/l ②リンゲル液の組成: Na+ 147 mEq/l, Cl- 156 mEq/l, K+ 4 mEq/l, Ca2+ 5 mEq/l ③乳酸リンゲル液の組成: Na+ 130 mEq/l, Cl- 109 mEq/l, K+

4 mEq/l, Ca2+ 3 mEq/l, 乳酸- 28 mEq/l

④酢酸リンゲル液の組成: Na+ 130 mEq/l, Cl- 109 mEq/l, K+

4 mEq/l, Ca2+ 3 mEq/l, 酢酸- 28 mEq/l

(13)

乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液

乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液は、リンゲル液に乳酸ナト リウム、酢酸ナトリウムを加えた液である。乳酸ナトリウム、酢 酸ナトリウムはアルカリ化剤である。乳酸ナトリウムは生体内 において次の式のように代謝される。 CH3-CHOH-COO- + Na+ + 30 2 → Na+ + HC0 3- + 2H20 + 2C02 すなわち、1分子の乳酸ナトリウムから1分子の重炭酸イオ ン(HC03-が生成され、アルカリ化作用を示し、アシドーシスを 是正する。酢酸ナトリウムも同様に重炭酸イオンを生成する。 アルカリ化剤を含まない生理食塩液を大量に輸液すると、 希釈により重炭酸イオンが減少し、希釈性アシドーシスとなる。 13 救急救命士が行う輸液は、心肺機能停止患者への乳酸リン ゲル液を用いた静脈路確保のための輸液である。

(14)
(15)

糖質輸液

体液と浸透圧がほぼ等しい5%グルコース液は、カロリー 補給というよりも水分補給のために使用される。それは、 グルコースが細胞内に入り、代謝されてC02と水(H20)に なってしまうからである。末梢血管から点滴静注するには、 10%グルコース液が限界であり、それ以上の濃度では血管 炎を起こす。 ※5%グルコース液(ブドウ糖液)輸液の浸透圧の中心は電 解質による浸透圧である。グルコースも浸透圧物質として 作用する。しかし、グルコースは速やかに代謝され短時間 しか浸透圧物質として作用しない。したがって5%グルコ― ス液は全部自由水と考えてもよい輸液剤なのである。 15

(16)

血漿増量剤

出血性ショックなど

循環血液量減少

の際に、緊急

輸液として血漿増量剤が使用される。

製剤としては、

デキストラン製剤(低分子デキストラ

ンなど)

ヒドロキシエチルスターチ製

剤などがある。

これらは

代用血漿剤

とも呼ばれる。

アルブミン製剤

も血漿量の増加を目的として使用

され、血漿増量剤に含まれる。アルブミン製剤はヒ

ト血漿からの分画であり、高価で保険適応上の制

約がある。

16

(17)

栄養輸液

水に高濃度糖質液、アミノ酸、脂肪乳剤などの栄養成分 を加えたものである。経口摂取が不十分な傷病者に対 する栄養補給を目的で経静脈投与される。 高張液なので、末梢静脈からではなく中心静脈から投 与され、この方法は中心静脈栄養とも呼ばれる。 17

(18)

浸透圧利尿剤

浸透圧を利用して尿を排出することを目的とし

たもので、

脳浮腫の治療

急性腎不全

の初期

治療に使用される。

浸透圧利尿剤

は、糸球体で濾過されると再吸

収されないため、尿細管内の浸透圧が上昇し、

水の再吸収が抑制される。脳圧亢進時などに

用いられる。

D-マンニトール

濃グリセリン(グリセオール)

などがある。

18

(19)

血液製剤

血液製剤は、ヒトから採取された血液を原料とする製剤

で、

循環血液量や血液中の各成分を補充することを目的

とする。血液製剤には、ヒトの全血(全血製剤)あるいは

必要な成分だけを分離したもの(成分製剤)、血漿分画

製剤がある。

19

血液成分製剤には、

赤血球濃厚液、

新鮮凍結血漿、

血小板濃厚液

などがある。

(20)

赤血球濃厚液

ヒトの血液から赤血球を分離したも のである。 急性あるいは慢性の出血に対する 治療および貧血の急速な補正を必要 とする病態に使用する。 赤血球補充の第一義的な目的は、 末梢循環系へ十分な酸素を供給する ことであるが、循環血液量を維持する という目的もある。 20 ヒト血液200mL又は400mLから血漿の大部分を除去した 赤血球層を生理食塩液で洗浄した後、生理食塩液を加え てそれぞれ全量を200mL、400mLとした濃赤色の液剤。

(21)

血小板濃厚液

ヒトの血液から

血小板

を分

離したものである。

血小板輸血は、血小板の

減少や、血小板が正常に機

能しないため出血が止まら

ない時に、

止血や出血の予

に使用される。

21

(22)

新鮮凍結血漿(血漿製剤)

ヒトの血液から血漿成分を

分離して凍結したものである。

血漿中の

血液凝固因子を補

することにより、

出血の予

防や止血の促進効果

をもた

らす目的で使用される。

22

(23)

アルブミン製剤

ヒトの血液から血漿中の

アル

ブミン

を分離したものである。

アルブミン製剤を投与する目

的は、

血漿膠質浸透圧を維持

することにより

循環血液量を確

することおよび体腔内液や

組織間液を血管内に移行させ

ることによって治療抵抗性の

度の浮腫を治療

することにある。

(24)

等張電解質

輸液製剤の体内分布

• 等張電解質輸液製剤を静脈内に投与するとき、

一部は血管内にとどまるが容易に血管壁から血

管外(間質)に移行する。しかし、細胞内には入

らない。

• ヒトの細胞外液の血管内と血管外(間質)の容積

比は

1:3

である。

• したがって輸液された等張性電解質製剤は、そ

の量の

3/4

は血管外(間質)に分布し、血管内に

1/4

しかとどまらず、血漿増量作用は極めて少

ないことになる。

24

(25)

5%ブドウ糖溶液

および

血漿増量製

の体内分布

• 5%ブドウ糖溶液の場合は、ブドウ糖が細胞

内で代謝されるために、電解質を含まない水

を投与した場合と同様になり、体液分布に

従って、

血管内(5%)、間質(15%)、細胞内

(40%)

に均等に分布する。従って、循環血

液量を補う効果は極めて少ない。

• 血漿増量製剤や等張アルブミン製剤では、そ

の100%近くが

血管内にとどまる

ために、一

時的には血漿量を増加させる。

25

(26)

輸液製剤の体内分布

26 輸液製剤 細胞外液(20%) 細胞内液 (40%) 血管内 (5%) 間質 (15%) 血漿増量剤 1,000 mL 等張電解質製剤 (乳酸リンゲル液など) 250 mL ( 1 : 750 mL 3 ) 5%ブドウ糖溶液 83 mL 250 mL 667 mL

輸液製剤 1,000 mLを静脈内投与した時:

( 1 : 3 ) ( 1 : 2 )

(27)

出血に対する循環血液量の補充(1)

◆循環血液量の20%までの出血の場合

細胞外液(乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液な

ど)を出血量の2~3倍量投与する。

◆循環血液量の20~50%の出血の場合

細胞外液の他に膠質浸透圧を維持するために、

人工膠質液(血漿増量剤:デキストランなど)を

投与する。赤血球不足による組織への酸素供

給不足が懸念される場合には、赤血球濃厚液

を投与する。

27

(28)

出血に対する循環血液量の補充(2)

◆循環血液量の50~100%の出血の場合

細胞外液、人工膠質液および赤血球濃厚液の投

与だけでは

血清アルブミン濃度の低下

による肺水

腫や欠尿が出現する危険性があるので、適宜、

張アルブミン製剤を投与

する。

◆循環血液量以上の大量出血(24時間以内に1

00%以上)

または

100mL分以上の急速輸血を必

要とする事態

には、凝固因子や血小板数の低下

による出血傾向(希釈性の凝固障害と血小板減

少)が起こる可能性があるので、

新鮮凍結血漿

血小板濃厚液

の投与を考慮する。

28

参照

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