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退職後の資産形成 : 債務返済後に賃料収入が年金の役割を果たす 節税対策 : ローンの利息と建物の減価償却は税制上 経費として認められることがある 高い利回り : 通常 購入価格に対する純利回りは 3-5% である 贈与税等対策 : 不動産に対する税率は金融資産に比べて低い 遺族年金の形成 : ロー

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【編集注】本格付け規準は、2014 年 12 月 19 日付「格付け規準|ストラクチャード・ファイナンス|RMBS:日本 の RMBS の格付け手法と想定」に取って代わられました。 【編集注】 本稿において、定期的な格付け規準見直しプロセスの一環として、日本における投資用マンション ローン証券化案件の格付け手法がアップデートされています。本稿では、2003 年 3 月 25 日付「格付け規準: 投資用マンションローン証券化のリスク分析」の解説部分を削除する一方で、一部の箇所を明確にしているの が主な変更点です。同格付け規準は、本稿により取って代わられています。

投資用ローンの種類

1. 日本において「投資用ローン」の名称は、概して「居住用住宅ローン以外」の住宅系賃貸 用物件を担保としているローンの総称として使われる。ただし、投資用ローンにもいくつか 種類があり、その種類によって債務者の属性、担保物件の特徴、リスク分析の方法などが異 なってくる。スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ(以下「S&P」)では、 日本の投資用ローンを「アパートローン」と「投資用マンションローン」の 2 つに分類して いる。本稿は、投資用マンションローンを対象としている(日本におけるアパートローン証 券化案件の格付け規準については、2013 年 9 月 10 日付「格付け規準|ストラクチャード・ ファイナンス|RMBS:アパートローン証券化の格付け分析の手法と想定」を参照)。

投資用マンションローン

2. 投資用マンションローンは、都市部のワンルームタイプ住戸を担保としたものが多いもの の、なかには、小規模のファミリータイプのマンション住戸を担保とするものもある。アパ ートローンの債務者と異なり、投資用マンションローンの債務者はいわゆる「地主」である ことは少ない。その一方で、給与所得などの現金収入には比較的余裕のある層が多い。この ような債務者が資産運用を目的にワンルームマンションを購入するのであり、その主な動機 は、以下のとおりである。

スタンダード&プアーズ

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2013 年 11 月 11 日

【旧版】格付け規準|ストラクチャード・ファイナンス|RMBS:

投資用マンションローン証券化の格付け分析の手法と想定

アナリスト: 薗田浩、東京 電話 03-4550-8474 山本武成、東京 電話 03-4550-8656 松尾俊宏、東京 電話 03-4550-8225 クライテリア・オフィサー: 山岡隆正、東京 電話 03-4550-8719 「スタンダード&プアーズ・レ ー テ ィ ン グ ズ ・ サ ー ビ シ ズ (Standard & Poor’s Ratings Services)」が発行した本リポ ートに記載されている格付け 規準は、スタンダード&プアー ズ・レーティング・ジャパン株 式会社において採用されてお ります。 また、本格付け規準は、日本 スタンダード&プアーズ株式 会社においても採用されてお ります。

The criteria in this report issued by “Standard & Poor’s Rating Services” is adopted by Standard & Poor’s Ratings Japan K.K. This criteria is also adopted by Nippon Standard & Poor’s K.K.

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• 退職後の資産形成:債務返済後に賃料収入が年金の役割を果たす。 • 節税対策:ローンの利息と建物の減価償却は税制上、経費として認められることがある。 • 高い利回り:通常、購入価格に対する純利回りは 3-5%である。 • 贈与税等対策:不動産に対する税率は金融資産に比べて低い。 • 遺族年金の形成:ローンには生命保険が付保されており、主債務者が死亡した後でも、 保険でローンを完済すれば、遺族が賃料を受け取れる。 3. マンション 1 戸当たりの平均価格は 1,800 万-2,500 万円程度で、小型賃貸物件の需要の高 い都市部に所在する物件が多い。債務者の多くが、年収 800 万円以上、年齢 40 歳以上の高収 入層の個人である。固定資産はあまり所有しておらず、利回りの高いマンションを購入して 退職後の収入を補うことが、購入の動機である。債務者の多くがそれほど住宅ローンを抱え ておらず、都市部以外の地域に住んでいることも多い。 4. 多くの場合、ローン・トゥ・バリュー(LTV)比率は高いが、最大限に借り入れることで 税負担を減らせることが、その背景にある。一方、債務者の多くが高収入者で、投資規模が 比較的小さいため、返済比率(DTI)は総じて低い。 5. S&P は、投資用マンションローンの代表的なオリジネーターやデベロッパーへのヒアリン グに基づき、表 1 の条件を満たすローンを標準的な投資用マンションローンと考えている。 表 1 投資用マンションローンの一般的な条件 金額 500 万-2,500 万円(LTV 比率はおおむね 90%以下) 期間 30 年以内 金利 固定もしくは変動だが、金利水準は居住用住宅ローンに比べて高い 元利均等分割返済 金利によって金額は変動 当初手数料 おおむね 0.4-1.0%

ヒストリカル・データの分析

6. S&P ではさまざまな金融機関、保険会社、ノンバンクなどから投資用マンションローンの スタティックおよびダイナミックのデフォルト・ヒストリカル・データの提供を受け、詳細 に分析している。これらの分析結果は、格付け分析上、不可欠なデフォルト率や損失率を決 定する際に極めて重要な役割を果たしている。 7. 検証したデータが、1990 年前後のバブル期にオリジネートされたローンを数多く含んでい ることもあり、データ上のデフォルト率の水準は高い。オリジネーターによって差はあるも のの、概して居住用住宅ローンの水準を大きく上回っており、この種のローンが比較的高い リスクを抱えていることが示唆されている。

投資用マンションローンのリスク要因

8. 投資用マンションローンの債務者がデフォルトに陥る理由として、主に以下の要因が考え られる。 • 投資用マンションの賃料水準の低下や空室率の上昇に伴う投資物件からの収入の減少。 格付け規準|ストラクチャード・ファイナンス|RMBS:投資用マンションローン証券化の格付け分析の手法と想定| スタンダード&プアーズ 2

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• 年収に見合わない高価格物件の購入と、それに伴う過大なローンの返済負担。 • 失業、および残業手当やボーナスの減少などによる収入の消失や減少。 • 離婚、病気や死亡など、個人や家庭にかかわる問題。 • 年収に見合わない出費の増加や、それに伴う貯蓄額の減少。 • 投資用マンション価格の下落が著しく、担保物件を任意に売却してもローンを全額返 済できないケース。 9. 投資用マンションローンは、居住用住宅ローンとは異なり、債務者自らの実需に基づくも のではなく、運用資産の購入に伴って発生する。したがって、ある意味、借り入れも用いて 投資資産購入を行う「信用取引」に似た性質を持っているとも言える。投資用マンションロ ーンでは担保資産からのキャッシュフローの減少が投資利回りの低下に直結し、ローン返済 原資の減少につながるとともに、債務者のローン返済に対するインセンティブの低下をもた らす可能性もある。その場合、ローン返済の原資のウエートは少しずつ債務者の給与収入な どに移行していくことになる。

投資用マンションローン格付けの手法と想定

10. S&P は、日本において住宅ローン証券化案件を格付けする際、住宅ローンの種類によら ず、同様の手法を適用している。S&P の格付け手法は基本的に、「ベンチマーク・プール」 「想定貸倒率」「想定価格下落率」「想定損失率」の 4 つの要素から成り立っている。分 析対象となる住宅ローンの種類に対応するベンチマーク・プールの性質を反映している証 券化プールであれば、ベンチマーク・プールに対する想定貸倒率と想定損失率によって導 かれる水準が信用補完水準となる。各案件のプールの性質は、ベンチマーク・プールと異 なることがほとんどであるため、実際の信用補完水準は上記の水準から適宜修正される。 本格付け手法では、デフォルト発生のタイミング、期限前返済や余剰金利の効用などを考 慮するキャッシュフロー分析やコミングリング・リスク、相殺リスクやサービサー・リス クなど、ストラクチャーや法的なリスクが別途分析され、最終的に案件に必要な信用補完 水準が算定される。 11. S&P は、一般的な日本の居住用住宅ローン証券化の格付け規準を、2007 年 6 月 27 日付の 「日本のストラクチャード・ファイナンス:格付け規準:居住用住宅ローン証券化の格付け 分析の手法と想定」で公表している。同格付け規準は、複数の主要な貸出機関からのデフォ ルト・データをもとに、以下の要因についても考慮している。 • 過去の経済状況、景気循環、不動産価格の動向、日本特有の社会事情や文化 • 日本の住宅ローン市場の性質 • 他の国々の格付け規準との比較 12. 投資用マンションローン証券化の格付け規準は、居住用住宅ローン証券化の格付け規準を 補完するものであり、投資用マンションローンの特徴を加味し、当該ローンのデフォルト・ データなどを別途分析した上で開発されたものである。 格付け規準|ストラクチャード・ファイナンス|RMBS:投資用マンションローン証券化の格付け分析の手法と想定| スタンダード&プアーズ 3

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ベンチマーク・プール

13. 分析の結果、日本の投資用マンションローンも、相応に均一性があり、主要金融機関の貸し 出し方針や与信基準を推定できないほどの大きな違いは見られない。投資用マンションローン の格付けでは、まず標準的な投資用マンションローン・プールの性質を分析した上で、その特 徴を反映し、かつ平均的な性質を持つベンチマーク・プールが定められる(表 2 参照)。ただ し、証券化されるプールの性質がベンチマーク・プールの性質と完全に一致することはないこ とから、これはあくまでも分析の出発点であり、個々のプールの貸倒率や損失率は、ベンチマ ーク・プールと証券化プールに含まれる個々のローンを比較検討した上で調整される。 表 2 投資用マンションローンのベンチマーク・プール概要 プールに含まれるローンの数 最低 300 件 ローンの当初金額 当該借り入れが 2,500 万円以下で、かつ他のローンも含めた総 借入額が年収の 5 倍以下 ローン・トゥ・バリュー(LTV)比率 90%以下 返済比率(DTI) 「月次の平均ローン返済額」が「ボーナス考慮後の総月次所得 に当該物件からの月次ネット収入を加えたもの」の 35%以下。 債務者の他の借り入れも「平均月次のローン返済」に合算する 債務者の年収 800 万円以上 ローンの種類 月次の元利均等返済 ローン金利 固定型、変動型、または固定選択型 ローン期間 最長 30 年 ローン経過期間 抽出時点で遅延がなく、3 カ月以上の経過期間がある 担保と抵当権 第一順位抵当権登記 担保物件 1981 年以降に建築された投資用マンションで、相応に実績のあ るデベロッパーの施工、管理物件 担保物件の築年数 融資時点で 10 年以内(立地条件や管理状況が良好な場合はその 限りではない) 投資用マンション物件数 1 債務者当たり 1 物件 借入人 日本国民または永住者 借入人の雇用 給与取得者または専門職(自営業を除く) 借入人の年齢 融資時点で 30-55 歳まで、かつローン終了時点で 70-75 歳 マンションの地理的分散 大都市圏に所在。市区町村やマンション単位で分散 ローンの目的 新規もしくは中古物件の購入 貸出機関 ノンバンク、大手銀行、生命保険会社 保険 火災保険と団体生命信用保険

想定貸倒率

14. 本分析手法では、投資用マンションローン証券化の格付けに際して、第 1 に、ベンチマー ク・プールから発生する貸倒率を想定する。貸倒率は累積ベースで考えられ、「貸倒率 15%」 であれば、ベンチマーク・プールの当初残高の 15%が証券化の償還期限までに貸し倒れにな ることを意味する。ベンチマーク・プールは投資用マンションローンの標準的な特徴を反映 しているため、ベンチマーク・プールからの貸倒率を想定することにより、大多数の証券化 プールに対応できると考えられる。本分析手法では、主要金融機関から入手したヒストリカ ル・デフォルト・データをもとに、昨今の経済情勢の変化、投資用マンションローンの商品 性、デベロッパー・リスク等を総合的に勘案して、適切なストレスを考慮した上で、ベンチ マーク・プールの想定貸倒率を想定している。 格付け規準|ストラクチャード・ファイナンス|RMBS:投資用マンションローン証券化の格付け分析の手法と想定| スタンダード&プアーズ 4

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15. 投資用マンションローンのヒストリカル・デフォルト・データが示すとおり、バブル期前後 に貸し出された投資用マンションローンの貸倒率は、当時の市場環境や経済環境を反映してい る。バブル経済崩壊後に貸し出されたローンの貸倒率とは大きな乖離があるものの、このデー タはストレス環境下におけるリスクを示唆している。さらに、投資用マンションローン特有の ストレス要因を勘案した上で、ベンチマーク・プールの想定累積貸倒率が定められている。投 資用マンションローンのベンチマーク・プールの累積想定貸倒率は、「AAA」格付けの場合、 20%前後と考えている(表 3 参照)。この累積想定貸倒率は、あくまで証券化プールに含まれ るすべてのローンがベンチマーク・プールと同一の属性を持つと仮定した場合の値である。 表 3 投資用マンションローンのベンチマーク・プールの想定貸倒率 格付け 想定貸倒率 AAA 20%前後 AA 16%前後 A 13%前後 BBB 10%前後

ベンチマーク・プールから乖離している債権の信用リスクの調整

16. 投資用マンションローン案件の格付けにおいて、本分析手法では、このベンチマーク・プ ールをもとに、貸倒率、価格下落率、損失率を想定する。証券化プールの性質がこのベンチ マーク・プールから乖離している場合、想定する貸倒率や損失率も調整される。例えば、証 券化プールの経過期間が長い、返済比率が低い、LTV 比率が低いなど、ベンチマーク・プー ルより優れた特徴を示す場合には、その強みを考慮して、想定貸倒率や損失率は引き下げら れる。当然ながら、証券化プールの属性がベンチマーク・プールよりも劣っている場合には、 逆に想定値は引き上げられる。実際の調整作業は信用リスクにかかわる各ローンの特徴を検 討することにより行われる。S&P では、さまざまな金融機関から入手したデフォルト債権の 属性分析を行っている。各属性がベンチマーク・プールからどの程度乖離し、それによって 信用リスクにどの程度の影響が及ぶのかを分析し、ベンチマーク・プールの累積想定貸倒率 に調整を加える際の参考にしている。また、オリジネーターの審査体制や回収体制の質など、 プール全体の信用力を左右する外的要因も調整項目となる。以下、主な調整項目について概 説する。 ローン・トゥ・バリュー(LTV)比率 17. 一般に、本分析手法では、LTV 比率の低いローンには低い貸倒率が想定され、LTV 比率の 高いローン、特に投資用マンションローン市場で一般的な水準である 90%を超える場合には、 高い貸倒率が想定される。投資用マンションローンでは、借り入れ目的に節税対策などが含 まれているため、90%までの借り入れを認めるのが一般的である。したがって、LTV 比率を 下げるのに十分な自己資金を持っている債務者であっても、節税目的などで LTV 比率 90% まで借り入れることを選ぶケースが多い。日本におけるベンチマーク・プールの LTV 比率は、 居住用住宅ローンの 80%に対し、投資用マンションローンでは 90%となっているが、この差 は、投資用マンションローンのリスクが、より大きいことを示している。この点を勘案して、 本分析手法では、投資用マンションローンのベンチマーク・プールの想定貸倒率は、居住用 住宅ローンと比べて、高い想定となっている。 格付け規準|ストラクチャード・ファイナンス|RMBS:投資用マンションローン証券化の格付け分析の手法と想定| スタンダード&プアーズ 5

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18. 想定貸倒率の調整は、当初 LTV 比率(当初ローン金額/当該時点での物件価格)に基づい ている。本分析手法では、低い LTV 比率で借り入れをしている債務者は、貯蓄能力が高く、 自らの年収に見合った適切な借り入れを行う保守性を備えており、投資物件の借り入れに対し ても、適切な返済計画を持っていることを想定している。したがって、こうした債務者は信用 力が高いと言える。低い LTV 比率で借り入れをしている債務者はまた、万一、デフォルトに 陥る危険性がある場合でも、社会的にもマイナス面の多いデフォルトよりも、担保物件に加え て自己居住用物件を自ら売却してまでもローンを完済するという選択肢を持っている。この場 合、本分析手法では、当該ローンはデフォルトではなく、期限前返済として認識される。 19. 投資用マンションローンの場合、債務者が投資用マンションローンや居住用住宅ローンを はじめ、他のローンの借り入れをどの程度行っているのかという点にも、注意が必要である。 投資用マンションローンの LTV 比率がどれほど低くても、債務者が極めて LTV 比率の高い 居住用住宅ローンの借り入れをしている場合、両ローンを合算すると、LTV 比率が高くなる 可能性がある。複数の投資用マンションローンの借り入れをしている場合も同様に、合算し て分析することが望ましい。S&P では、LTV 比率の分析においては、それぞれの投資用マン ションローン単独の LTV 比率を用いる一方で、返済比率の分析においては債務者のローンを すべて合算して算出した比率を用いている。 返済比率(DTI) 20. 返済比率(DTI;月次の平均ローン返済/ボーナス考慮後の総月次所得に当該物件からの 月次ネット収入を加えた金額)は、LTV 比率と並んで、債務者の信用力を査定する上で重要 な属性指標である。返済比率の分析においては、当該債務者のすべてのローンを合算した返 済比率を検証することが基本となる。したがって、返済比率の算出にあたり、債務者の負っ ているすべての債務の合計月次ローン返済額が分子となる。一方、分母については、給与な どの債務者の収入に投資用マンションからの収入をどの程度加えるかが、焦点となる。一般 的には、賃料から必要経費、および修繕積立金などを控除したネット・キャッシュフロー (NCF)を利用するのが妥当であろう。ただし、最長 30 年というローン期間中に、空室にな る可能性や賃料水準が下落する可能性も考慮する必要がある。 21. 投資用マンションにおいては、一般的にデベロッパーがオーナーに代わって、賃借人の募 集や物件の維持管理などのプロパティー・マネジメント業務を行うために、デベロッパーの 運営管理能力も、物件から上がる NCF の水準に大きな影響を与える。本分析手法では、担保 物件の質に加え、デベロッパーの能力も慎重に検討した上で、当該担保物件から得られるキ ャッシュフローをどの程度、分母に加えるか判断する。一方、金融機関では、債務者の配偶 者収入も分母に含めているケースがある。本分析手法でも、相応にストレスをかけた上で、 配偶者収入を格付け分析において考慮する場合がある。デベロッパーが債務者に対して賃料 保証を提供しているケースもあり、これについてはデベロッパーの信用力と保証契約内容を 検討した上で、案件にとってメリットがあるかどうか判断する。 22. 算出された返済比率が低いローンには低い貸倒率が想定され、返済比率が投資用マンショ ンローン市場の一般的な水準である 30-35%を超えるローンには高い貸倒率が適用される。 変動金利ローンの場合、返済比率を計算する際に金利上昇リスクを踏まえてローン返済額を 設定することが、重要なポイントとなる。 格付け規準|ストラクチャード・ファイナンス|RMBS:投資用マンションローン証券化の格付け分析の手法と想定| スタンダード&プアーズ 6

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債務者の年収 23. 投資用マンションローンは、投資に伴って発生するローン債務であり、居住用住宅ローン とは異なる。したがって、ある程度収入に余裕のある債務者でなければ、ローン返済負担が 家計を圧迫することになりかねない。この観点から、S&P は、ベンチマーク・プールにおけ る債務者年収を 800 万円に設定している。 債務者の雇用状態 24. 居住用住宅ローン同様、給与所得者よりも自営業者の債務者の方がデフォルトの可能性が 高いという分析結果が出ている。これは、自らが営む中小企業の経営に問題が生じた場合、 経営者個人の債務である住宅ローンも支払えなくなる可能性が高いからである。その意味で、 自営業者に対するローンは、中小企業向けローンに似た特徴を持つと言える。無職の債務者 も言うに及ばず、信用リスクは大きい。本分析手法では、自営業者と無職の債務者の貸倒率 には相応に調整が加えられる。 ローン経過期間 25. 一般的に、経過期間が長いローンは、経過期間の短いローンに比べて貸し倒れリスクが小 さいと言える。居住用住宅ローンでは、さまざまな金融機関から提出されたスタティック・ プールの実績データの分析によって、この傾向が確認されている。十数年経過したローンは 予定元本返済により、相応のエクイティ(物件価格からローン残高を控除)が積み上がる。 加えて、十数年履行を続けたローンは信用力の高い債権と見なすことが可能で、貸し倒れと なるリスクが経過期間の短いローンに比べて小さいと考えられる。投資用マンションローン でもこの傾向に変わりはないが、居住用住宅ローンに比べて貸し倒れリスク低下の度合いは 小さいと思われる。年月がたつにつれて投資用マンションの競争力が低下するリスクが顕在 化する可能性があるからである。したがって、本分析手法では経過期間が長いローンほど、 リスクが低下すると考えるものの、投資用マンションローンの分析においてその点が考慮さ れることのメリットは、居住用住宅ローンに比べて限定的である。 ローン金額と投資用マンション物件数 26. 多くの貸し出し金融機関では、ローンで購入した投資用マンションの所有物件数は、1 債 務者当たり 1 件を基準としている。所有物件数が増えると、物件競争力の低下リスクやロー ン返済に充てられる物件からの収入減少リスクが増大することになる。したがって、本分析 手法では、ベンチマーク・プールとして、ローンで購入する物件数は 1 物件と設定している。 2 物件以上を購入している債務者に対しては、相応にストレスをかけている。また、投資用 マンションや住宅ローンを含めた 1 債務者当たりのローン総額が 8,000 万円を超える場合、 債務者の返済負担が過重となる可能性が高い。ストレスのかかる経済環境下では、高額ロー ンの担保となっている物件では、買い手が少なくなる傾向がある。そのため、物件価格がよ り大幅に下落する可能性が高く、その結果、想定損失率も高まる。エクイティの少なくなっ た住宅ローンを抱える債務者については、返済負担が危険な水準に達した場合も物件売却に よる期限前返済という手段が選べず、その結果、デフォルトに陥る可能性が高まることから、 想定デフォルト率も相応に調整する。 マンションの地理的分散 27. 投資用マンションローンにおいては、物件が大都市圏、特に東京に集中する傾向がある。 本分析手法では、東京への集中が貸倒率に影響を与えるとは考えていないが、担保物件が特 格付け規準|ストラクチャード・ファイナンス|RMBS:投資用マンションローン証券化の格付け分析の手法と想定| スタンダード&プアーズ 7

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定のマンションに集中している場合にはリスクが大きいと考えている。投資用マンションロ ーンにおいて、多くのローンが特定デベロッパーによって建設されたマンションの購入資金 に充当されている場合、担保物件が特定のマンションに集中してしまうことがある。その場 合、当該マンションの競争力が低下したり、大規模な災害が発生した際には、プール全体に 及ぼす影響が大きくなると考えられることから、証券化プールにおいては担保物件の所在地 が適切に分散していることが望ましい。 マンションの築年数 28. 一般的に投資用マンションの場合、築年数が 10-15 年程度経過すると、競争力が大きく低 下してくると言われている。ローン実行時に築年数が 10 年を超えている物件を担保にしてい るローンについては適宜、想定貸倒率が上方修正される。 担保物件とデベロッパーの質 29. 担保物件やデベロッパーの競争力は、投資用マンションローンのパフォーマンスに大きな 影響を与える。前述のとおり、債務者はマンションからの収入を少なからず当てにして返済 計画を立てている。したがって、担保物件の競争力が低下した場合や、プロパティー・マネ ジメントに携わるデベロッパーの賃貸管理や物件管理の能力が低下した場合(デベロッパー の倒産も含む)、マンションからの賃料収入の減少に伴い、債務者の返済負担が重くなる。 また、債務者のローン返済インセンティブが低下する可能性もある。デベロッパーの営業姿 勢もリスク分析をする上で重要な要因であり、あまりにアグレッシブな営業姿勢を持つデベ ロッパーから投資用マンションを購入した債務者のリスクは一般的に大きい。本分析手法で は、オリジネーターがどのような方針でデベロッパーと提携関係を結び、ローンのオリジネ ーションを行っているかを考慮し、適宜、想定貸倒率を調整する。 オリジネーターの審査・回収体制 30. 証券化される投資用マンションローン・プールの信用力は貸し出し時点におけるオリジネ ーターの営業体制や審査体制に少なからず影響を受ける。したがって、想定貸倒率は営業体 制や審査体制の状況によっても、適宜、調整される。調整の度合いはオリジネーターのヒス トリカル・デフォルト・データに加え、オリジネーターに関する以下の事項を分析した上で、 決定される。 • ローン戦略:シェア重視か、ローンの質を重視か • 審査方法:収入など債務者情報の確認作業や物件調査の程度、審査基準の内容、決裁方 法の適切さ • 審査基準を満たさない債務者への例外的なローン実行承認の頻度や条件 • 担保物件の鑑定評価体制 • 住宅ローンビジネスにおける社員の経験と社内教育体制 • 審査基準の見直しの頻度と内容:見直しに際して過去のデフォルト率分析などが反映さ れているか • 適切な方針に基づいて、デベロッパーとの提携が行われているか • 延滞債務者に対する督促などが適切に行われているか 格付け規準|ストラクチャード・ファイナンス|RMBS:投資用マンションローン証券化の格付け分析の手法と想定| スタンダード&プアーズ 8

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想定価格下落率と想定損失率

31. 投資用マンションローンの想定価格下落率と想定損失率の分析は、おおむね他の住宅ロー ンの格付け手法と同様である。投資用マンションローンは担保付きであるため、貸し倒れと なった債権に付随する担保権からの回収を図ることができる。しかしながら、回収率の程度 は担保物件の処分時点の価格に大きく左右される。本分析手法では、投資用マンションロー ンの証券化案件を分析する際に、価格下落率を想定することによって、回収額にストレスを かける。価格下落率が高ければ高いほど、損失率が高くなり、回収率が低下する。 32. 貸倒債権からの回収は、価格下落率以外の要因にも左右される。特に、競売に要する期間 と費用は、回収額に影響を及ぼす。想定価格下落率と予想競売コストを勘案し、貸倒債権か ら実際損失として計上する必要のある額に基づいて、想定損失率を算出する。

関連リポート

2013 年 9 月 10 日付「格付け規準|ストラクチャード・ファイナンス|RMBS:アパートローン証券化 の格付け分析の手法と想定」 2007 年 6 月 27 日付「日本のストラクチャード・ファイナンス:格付け規準:居住用住宅ローン証券化 の格付け分析の手法と想定」 * 本格付け規準(criteria)は、信用リスクと格付け意見を決定する基本的原則(fundamental principles)を個別ケースに適用する際に用いられるものである。格付け規準の適用は、発行 体または個別債務に固有の事実、当該発行体または個別債務の信用リスクに対するスタンダ ード&プアーズ・レーティングズ・サービシズの評価、ならびに該当する場合には、発行体 や個別債務格付けのストラクチャーにかかるリスクによって決定される。手法(methodology) と想定(assumptions)は、市場や経済の状況、個別債務または発行体に固有の要因、信用力 の判断に影響を及ぼしうる実績データを勘案した結果を受けて、適宜変更されることがある。 ---

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