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11-19_会計監査(税効果会計シリーズ⑧後編)_責

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(1)

税効果会計シリーズ( 9 )・最終回

連結財務諸表における繰延税金資産及び 繰延税金負債の計上②

公認会計士 

なが

ᅠ孝

たか

ゆき

はじめに

税効果会計シリーズでは、税効果会計に関する会計処 理及び開示の基本的な内容を

Q&A

方式で連載している。

本号(最終回)では、連結財務諸表固有の一時差異に ついての繰延税金資産及び繰延税金負債を計上する場合 の論点のうち、未実現損益の消去に係る一時差異及び退 職給付に係る負債又は退職給付に係る資産に関する一時 差異について、

2018

2

月に公表された企業会計基準 適用指針第

28

号「税効果会計に係る会計基準の適用指 針」(以下「税効果適用指針」という。)を踏まえて解説 する。

Q1 未実現損益の消去に係る一時差異

連結会社間の売買取引から生じた未実現損益を消 去したことに伴う一時差異に繰延税金資産又は繰延 税金負債を計上する場合、どのような点に留意する 必要があるか。

A

▶ 我が国の税効果会計は、資産負債法が採用されて いるが、未実現損益の消去に係る税効果会計につ いては、例外として繰延法が採用されている。

▶ 未実現損益の消去に係る連結財務諸表固有の将来 減算一時差異については、売却元の連結会社にお いて売却年度に納付した又は軽減された当該未実 現損益に係る税金の額を繰延税金資産又は繰延税 金負債として計上する。

▶ 未実現利益の消去に係る繰延税金資産を計上する にあたっては、その回収可能性を判断しない。

▶ 計上した繰延税金資産又は繰延税金負債について は、当該未実現損益の実現に応じて取り崩す。

解 説

1 連結決算手続(未実現損益の消去)の 概要

連結会社間の取引によって取得した棚卸資産、固定資 産その他の資産に含まれる未実現損益は、その全額を消 去する。ただし、未実現損失については、売却元の帳簿 価額のうち回収不能と認められる部分は消去しない(企 業会計基準第

22

号「連結財務諸表に関する会計基準」

(以下「連結会計基準」という。)第

36

項参照)。未実現 損失を消去しない場合、連結財務諸表において取得した 棚卸資産等を簿価切下げしたことと同じ結果となる。

売却元の子会社に非支配株主が存在する場合、未実現 損益は、親会社と非支配株主の持分比率に応じて、親会 社の持分と非支配株主持分に配分する(連結会計基準第

38

項参照)。

2 連結財務諸表における税効果会計

1

基本的な考え方と「繰延法」の適用

未実現損益(連結会社間における資産の売却に伴い生 じた売却損益)については、税務上の要件を満たし課税 所得計算において当該売却損益を繰り延べる場合*1を 除き、個別財務諸表において、繰延税金資産又は繰延税 金負債は認識されない。これは、売却元の連結会社では 売却損益に対応する課税関係は完了しており、また、資 産を保有している購入側の連結会社では会計上の簿価

(個別財務諸表上の簿価)と税務上の簿価は一致してい るため、売却元及び購入側のいずれも一時差異が生じて いないからである。

しかし、連結決算手続において未実現損益を消去する ことで、売却された資産の連結貸借対照表上の額と購入 側の連結会社における個別貸借対照表上の当該資産の額 との間に一時差異が生じ、消去された未実現損益は、連 結財務諸表固有の一時差異に該当するため、繰延税金資 産又は繰延税金負債を計上することとなる。

*1

) 完全支配関係にある連結会社間における資産の売却に 伴い生じた売却損益について、税務上の要件を満たし

会計・監査

(2)

(法人税法第

61

条の

13

)、繰り延べられた当該売却損 益は売却元の連結会社の財務諸表上の一時差異に該当 する。連結決算手続上、当該売却損益は消去されるこ とから、売却元の連結会社の財務諸表上の一時差異

(子会社株式等の売却に伴い生じた一時差異(税効果 適用指針第

39

項参照)を除く。)に係る繰延税金資産 又は繰延税金負債を計上している場合、当該売却損益 の消去に係る連結財務諸表固有の一時差異に対して、

個別財務諸表において計上した繰延税金資産又は繰延 税金負債と同額の繰延税金負債又は繰延税金資産を計 上する。これらの繰延税金資産又は繰延税金負債は相 殺されるため、結果として、連結財務諸表において当 該売却損益に関連する繰延税金資産又は繰延税金負債 は計上しないこととなる(税効果適用指針第

38

項及 び第

142

項参照)。

2

)未実現損益の消去に係る一時差異

未実現損益の消去に係る連結財務諸表固有の将来減算 一時差異(又は将来加算一時差異)については、売却元 の連結会社において売却年度に納付した(又は軽減され た)当該未実現損益に係る税金の額を繰延税金資産(又 は繰延税金負債)として計上し、当該未実現損益の実現 に応じて取り崩す(税効果適用指針第

34

項参照)。

未実現利益の消去に係る繰延税金資産を計上するにあ たっては、その回収可能性を判断しない(税効果適用指 針第

35

項参照)。

3

)未実現損益の消去に係る一時差異の上限 未実現利益の消去に係る繰延税金資産を計上するにあ たって、繰延税金資産の計上対象となる当該未実現利益 の消去に係る将来減算一時差異の額については、売却元 の連結会社の売却年度における課税所得の額*2(未実 現損益に関連する一時差異の解消額を除く*3)を上限 とする(税効果適用指針第

35

項参照)。

未実現損失の消去に係る繰延税金負債を計上するにあ たって、繰延税金負債の計上対象となる当該未実現損失 の消去に係る将来加算一時差異の額については、売却元 の連結会社の売却年度における当該未実現損失に係る税 務上の損金を算入する前の課税所得の額*2(未実現損

益に関連する一時差異の解消額を除く*3)を上限とす る(税効果適用指針第

36

項参照)。

*2

) 売却元の連結会社における税金の納付額又は軽減額の 計算にあたって、売却元の連結会社での未実現損益に 係る税務上の益金又は損金の算入は、課税所得(税務 上の繰越欠損金控除後)計算上、最後に行われたとの 仮定が置かれている(税効果適用指針第

140

項参照)。

*3

) 未実現損益の消去に関連する一時差異の解消に係る税 効果とは、例えば、売却元の連結会社で過年度におい て、会計上、棚卸資産の評価損として計上されるが、

税務上の損金に算入されなかったことにより生じた将 来減算一時差異が、当該棚卸資産を連結会社に売却す ることにより解消される場合などが想定されている。

この場合、売却元の連結会社の個別財務諸表上、当該 棚卸資産の売却年度に当該将来減算一時差異が解消さ れることから、これに係る繰延税金資産が法人税等調 整額を相手勘定として取り崩される。この取崩額は、

棚卸資産の売却に伴う未実現損益に係る税金の納付額 又は軽減額に加減され、その結果得られた税金の合計 額又は差引額が未実現損益の消去に対して計上すべき 繰延税金資産又は繰延税金負債となる(税効果適用指 針第

141

項参照)。

4

)計算に用いる税率

未実現損益の消去に係る一時差異に関する繰延税金資 産又は繰延税金負債の計算に用いる税率は、繰延法が採 用されるため、未実現損益が発生した売却元の連結会社 に適用された税率を使用する(税効果適用指針第

137

項 参照)。

このため、次の点にも留意する必要がある(税効果適 用指針第

138

項参照)。

 未実現損益の消去に係る一時差異は、購入側の連 結会社の保有する資産に関連しているが、当該連 結会社における税効果の計算には影響させない。

 売却元の連結会社に適用されている税率が変更さ れても、売却元の連結会社において売却年度に未 実現損益(資産に係る売却損益)に対して課税さ れているため、当該税率の変更に伴う繰延税金負 債又は繰延税金資産の額の見直しは行わない。

設例

1-1

(未実現利益の消去に係る一時差異の取扱い)

(3)

以下では、本設例における

X1

3

月期及び

X2

3

月期の会計処理を解説する。

1

) 

X1

3

月期 連結修正仕訳

① 連結会社間の取引高の消去及び未実現利益の消去

(借) 売上高

1,000

(貸) 売上原価

1,000

(借) 売上原価

200

(貸) 棚卸資産

200

② 未実現利益の消去に伴う繰延税金資産の計上

(借) 繰延税金資産(

*1

60

(貸) 法人税等調整額

60

*1

) 未実現利益の消去に係る将来減算一時差異

200

×

P

社(売却元)の売却年度における法定実効税率

30

%=

60

未実現損益の消去に係る一時差異に関する繰延税金資産又は繰延税金負債の計算に用いる税率は、繰延法が採用 されるため、未実現損益が発生した売却元の連結会社に適用される税率となる(税効果適用指針第

137

項参照)。

〈参考図:未実現利益の発生(連結会社間の商品売上)〉

連結グループ

P

社(親会社)

S

社(子会社)

簿価

800

の商品を

1,000

で販売

P

社損益計算書(▲は借方)

P

社貸借対照表

S

社貸借対照表

売上高

1,000

未払税金

60

棚卸資産

1,000

売上原価 ▲

800

税引前利益

200

法人税等 ▲

60

当期純利益

140

〈連結財務諸表〉(税効果仕訳(上記②)反映前。便宜上、上記情報のみを反映)

連結損益計算書 連結貸借対照表

税引前利益 - 棚卸資産

800

未払税金

60

法人税等 ▲

60

当期純利益 ▲

60

〈連結財務諸表〉(税効果仕訳(上記②)反映後。便宜上、上記情報のみを反映)

連結損益計算書 連結貸借対照表

税引前利益 - 棚卸資産

800

未払税金

60

法人税等 ▲

60

繰延税金資産

60

法人税等調整額(貸方)

60

当期純利益 - 税金費用なし …税引前利益(なし)と対応する

(4)

2

) 

X2

3

月期 連結修正仕訳

① 未実現利益の実現(開始仕訳含む)

(借) 利益剰余金期首残高

200

(貸) 棚卸資産

200

(借) 棚卸資産

200

(貸) 売上原価

200

② 未実現利益の実現に伴う繰延税金資産の取崩し(開始仕訳含む)

(借) 繰延税金資産

60

(貸) 利益剰余金期首残高

60

(借) 法人税等調整額

60

(貸) 繰延税金資産

60

〈参考図:未実現損益の実現(連結グループ外部への売却)〉

連結グループ

P

社(親会社)

S

社(子会社) 連結グループ外部の顧客

連結グループ外部に

1,300

で販売

S

社損益計算書(▲は借方)

S

社貸借対照表

売上高

1,300

未払税金

90

売上原価 ▲

1,000

税引前利益

300

法人税等 ▲

90

当期純利益

210

〈連結財務諸表〉(税効果仕訳(上記②)反映前。便宜上、上記情報のみを反映)

連結損益計算書 連結貸借対照表

売上高

1,300

未払税金

90

売上原価 ▲

800

税引前利益

500

法人税等 ▲

90

当期純利益

410

〈連結財務諸表〉(税効果仕訳(上記②)反映後。便宜上、上記情報のみを反映)

連結損益計算書 連結貸借対照表

売上高

1,300

未払税金

90

売上原価 ▲

800

税引前利益

500

法人税等 ▲

90

法人税等調整額(借方)

60

当期純利益

350

税金費用

150

 …税引前利益

500

×

30

%と対応する

(5)

設例

1-2

(非支配株主の存在する子会社から親会社に売却する場合(アップストリーム)における未実現利益の消去に係る 一時差異の取扱い)

〈前提〉

1

) 

S

社は、

P

社の子会社であり、

P

社は

S

社株式の

80

%を保有している。

2

) 

P

社及び

S

社の決算日は、

3

31

日である。

3

) 

P

社は、

S

社から製品を購入して、連結グループ外部の顧客に販売する取引を行っている。

4

) 

S

社は、

P

社に対して製品を利益率

10

%で販売している。

5

) 

X1

3

月期の期末において、

P

社は

S

社から購入した製品

1,000

を保有している。

6

) 

X1

3

月期における

S

社の課税所得は

200

である。

7

) 

P

社及び

S

社の法定実効税率は、

30

%である。

〈図示〉

P

社(親会社)

S

社(子会社)

非支配株主

持分

80

1,000

持分

20

売却益

100

以下では、本設例における

X1

3

月期の未実現利益の消去に係る会計処理(連結修正仕訳)を解説する(なお、

連結会社間の取引高の消去仕訳は別途行っており、ここでは省略している)。

① 未実現利益の消去

(借) 売上原価

100

(貸) 棚卸資産

100

(借) 非支配株主持分(

*1

20

(貸) 非支配株主に帰属する当期純利益

20

*1

) 持分比率に応じた額

20

(=未実現利益

100

×非支配株主持分比率

20

%)を非支配株主に負担させる。

② 未実現利益の消去に伴う繰延税金資産の計上

(借) 繰延税金資産(

*2

30

(貸) 法人税等調整額

30

(借) 非支配株主に帰属する当期純利益

6

(貸) 非支配株主持分(

*3

6

*2

) 未実現利益の消却に伴う繰延税金資産

30

(=

100

×売却元の法定実効税率

30

%)を計上する。

*3

) 未実現利益の消去に伴う繰延税金資産に関して、持分比率に応じた額

6

(=繰延税金資産

30

×非支配株主持分比率

20

%)を非支配株主に負担させる。

(6)

設例

1-3

(減価償却資産に未実現利益が含まれている場合における未実現利益の消去に係る一時差異の取扱い)

〈前提〉

1

) 

S

社は、

P

社の子会社であり、

P

社は

S

社株式の

100

%を保有している。

2

) 

P

社及び

S

社の決算日は、

3

31

日である。

3

) 

X1

3

月期の期首に、

P

社は

S

社に対して、機械装置(簿価

10,000

、売却価額

12,000

、売却益

2,000

) を売却した。

4

) 

S

社では

P

社から購入した機械装置を定額法(耐用年数

5

年、残存価額なし)で償却する。

5

) 

X1

3

月期における

P

社の課税所得は

5,000

である。

6

) 

P

社及び

S

社の法定実効税率は、

30

%である。

7

) 法人税法第

61

条の

13

は適用されないものとする。

〈図示〉

P

社(親会社)

S

社(子会社)

持分

100

機械装置

取得原価 

12,000

減価償却費 

2,400

X1

3

月期)

売却益

2,000

以下では、本設例における

X1

3

月期の未実現利益の消去に係る会計処理(連結修正仕訳)を解説する。

① 未実現利益の消去

(借) 固定資産売却益

2,000

(貸) 機械及び装置

2,000

② 未実現利益の消去に伴う繰延税金資産の計上

(借) 繰延税金資産(

*1

600

(貸) 法人税等調整額

600

*1

) 未実現利益の消去に伴う繰延税金資産

600

(=

2,000

×売却元の法定実効税率

30

%)を計上する。

③ 減価償却費の修正

(借) 機械及び装置

400

(貸) 減価償却費(

*2

400

(減価償却累計額)

*2

) 

S

社が

X1

3

月期の期末において保有する、

P

社から購入した機械装置に関する減価償却費

2,400

には、消去された 未実現利益

2,000

から生じている額

400

(=未実現利益

2,000

÷耐用年数

5

年)が含まれるため、連結決算手続と して減価償却費の修正を行う。

④ 減価償却費の修正に伴う繰延税金資産の取崩し

(借) 法人税等調整額

120

(貸) 繰延税金資産(

*3

120

*3

) 減価償却費の修正に伴う未実現利益が一部実現するため、繰延税金資産

120

(=減価償却費の修正

400

×売却元の

(7)

企業会計基準委員会での議論

未実現損益の消去に係る税効果会計について、繰延法の採用を継続するか、国際的な会計基準との整合性を勘 案し資産負債法を採用するかに関する議論

2018

2

月に税効果適用指針が公表されるにあたっては、国際財務報告基準(

IFRS

)では資産負債法が採用 されており、また、米国会計基準においても棚卸資産以外の資産の未実現損益の消去に係る税効果会計につい ては資産負債法が採用されることから、未実現損益の消去に係る税効果会計に関する繰延法の取扱いについて 国際的な会計基準と整合性を図り、資産負債法に変更すべきとの意見が聞かれた。

この意見に関し、まず、繰延法と資産負債法の論拠は以下のとおりと考えられた(税効果適用指針第

132

項 参照)。

(繰延法)

繰延法については、未実現利益を消去する時に当該利益に対して納付した税金相当額を繰延税金資産として 計上し税金費用を消去することにより、実際に税金を納付した時点において利益と税金費用が対応する点で一 定の論拠がある。

(資産負債法)

資産負債法については、未実現利益が実現した時に当該利益に対して納付すると仮定した場合の税金相当額 を税金費用として計上することにより、実際に資産が売却された時点において利益と税金費用が対応する点で 一定の論拠がある。

そして、繰延法も資産負債法も一定の論拠があることを前提に、未実現損益の消去に係る税効果会計につい て資産負債法に変更するかどうかについて審議を行い、以下の意見を踏まえ、未実現損益の消去に係る税効果 会計については、繰延法の採用を継続することとされた(税効果適用指針第

133

項から第

136

項参照)。

資産負債法に変更する場合、連結決算手続上、購入側の企業で繰延税金資産の回収可能性を検討する必 要が生じることにより、企業によっては多大なコストが生じる可能性がある。

米国会計基準のように棚卸資産以外の資産の未実現損益の消去に係る税効果会計についてのみ資産負債 法に変更することも考えられるが、その場合、未実現損益の消去に係る一時差異をシステムで管理して いるときは、棚卸資産か棚卸資産以外の資産かによりシステム上の計算テーブルが異なることとなり、

実務が煩雑となる。また、棚卸資産か棚卸資産以外の資産かにより未実現損益の消去に係る税効果会計 に関する会計処理を変えることは理論的な根拠が乏しい。

一般に、棚卸資産に係る未実現損益は短期に実現することや、連結会社間で棚卸資産以外の資産を取引 している頻度は、棚卸資産に比べて高くはないと考えられることを勘案すると、我が国の会計基準にお いて繰延法を採用することにより、国際的な会計基準との比較可能性を必ずしも損なうことにはならない。

未実現損益の消去に係る一時差異に関する繰延税金資産について、国内企業においては回収可能性適用 指針に基づき、スケジューリングの可否や企業の分類によって当該繰延税金資産の計上額が決定される ことを踏まえると、結果として

IFRS

に基づく計上額と異なる可能性があるため、必ずしも両者を整合さ せる必要はない。

Q2 退職給付に係る負債又は退職給付に 係る資産に関する一時差異

退職給付に係る未認識項目のオンバランスにより 生じる連結財務諸表固有の一時差異に対して繰延税 金資産又は繰延税金負債を計上する場合、どのよう な点に留意する必要があるか。

A

▶ 連結財務諸表上、退職給付に係る負債に関する繰 延税金資産については、個別財務諸表上の退職給 付引当金に係る繰延税金資産の額(又は前払年金 費用に係る繰延税金負債の額)に、未認識項目の 連結修正により生じる将来減算一時差異に係る繰 延税金資産の額又は将来加算一時差異に係る繰延 税金負債の額を合算した純額で繰延税金資産が生 じる場合、当該合算額について回収可能性を判断 する。

▶ 未認識項目の一時差異に係る繰延税金資産又は繰 延税金負債について、その他の包括利益を相手勘 定として計上する。

(8)

解 説

1 連結決算手続(退職給付に係る未認識 項目)の概要

連結財務諸表において、退職給付債務と年金資産との 差額(積立状況を示す額)を退職給付に係る負債又は資 産として計上することとされている(企業会計基準第

26

号「退職給付に関する会計基準」(以下「退職給付会 計基準」という。)第

13

項参照)。また、数理計算上の 差異の当期発生額及び過去勤務費用の当期発生額のう ち、費用処理されない部分(未認識数理計算上の差異及 び未認識過去勤務費用。本稿では、これらを合わせて

「未認識項目」という。)については、その他の包括利益 に含めて計上し、その他の包括利益累計額に計上されて いる未認識項目のうち、当期に費用処理された部分につ いては、その他の包括利益の調整(組替調整)を行うこ ととされている(退職給付会計基準第

15

項参照)。

個別財務諸表上においては、退職給付債務に未認識項 目を加減した額から、年金資産の額を控除した額を退職 給付引当金(又は前払年金費用)として計上することと されているため(退職給付会計基準第

39

項参照)、連結 決算手続上は未認識項目についての修正処理が行われ る。

2 連結財務諸表における税効果会計

連結財務諸表における退職給付に係る負債に関する繰 延税金資産又は退職給付に係る資産に関する繰延税金負 債については、個別財務諸表における退職給付引当金に 係る将来減算一時差異に関する繰延税金資産の額又は前 払年金費用に係る将来加算一時差異に関する繰延税金負 債の額に、連結修正項目である未認識項目の会計処理に より生じる将来減算一時差異に係る繰延税金資産の額又 は将来加算一時差異に係る繰延税金負債の額を合算し、

当該合算額について次のとおり処理する(税効果適用指 針第

42

項参照)。

① 当該合算により純額で繰延税金資産が生じる場 合、当該合算額について回収可能性を判断し(企 業会計基準適用指針第

26

号「繰延税金資産の回 収可能性に関する適用指針」(以下「回収可能性 適用指針」という。)第

43

項及び第

45

項参照)、

未認識項目の一時差異に係る繰延税金資産又は繰 延税金負債について、その他の包括利益を相手勘 定として計上する(回収可能性適用指針第

10

1

)、税効果適用指針第

9

項(

2

)参照)。

② 当該合算により純額で繰延税金負債が生じる場 合、未認識項目の一時差異に係る繰延税金資産又 は繰延税金負債について、その他の包括利益を相 手勘定として計上する(税効果適用指針第

9

項(

2

) 参照)。

設例

2

(退職給付に係る負債又は退職給付に係る資産に関する一時差異)

〈前提〉

1

) 

A

社は、従業員非拠出の確定給付企業年金制度を採用している。

2

) 

A

社は、数理計算上の差異については当期の発生額を翌期から

10

年にわたり定額法で費用処理する方法 を採用している。

3

) 

A

社の

X1

年度末における個別財務諸表上の退職給付引当金は

1,000

である。

なお、退職給付債務、年金資産、未認識数理計算上の差異及び数理計算上の差異の発生の状況は下表の とおりである。

( )は貸方

X1

年度末

(予測) 数理計算上 の差異

X1

年度末

(実際)

退職給付債務 (

2,400

) (

100

) (

2,500

年金資産

1,400

200

1,200

(9)

以下では、本設例における

X1

年度の連結財務諸表上における未認識数理計算上の差異に係る会計処理(連結修正 仕訳)を解説する。

① 未認識数理計算上の差異に係る連結修正

(借) 退職給付に係る調整額

300

(貸) 退職給付に係る負債

300

(その他の包括利益)(

*1

*1

) 連結財務諸表において、数理計算上の差異の当期発生額

300

(借方)は、その他の包括利益(退職給付に係る調整 額)に含めて計上する。

なお、連結財務諸表においては、退職給付債務

2,500

と年金資産

1,200

との差額

1,300

が、退職給付に係る負債と して計上される(個別財務諸表における退職給付引当金

1,000

に、数理計算上の差異の当期発生額

300

が加算修正 される)。

② 未認識数理計算上の差異に係る連結修正に関する繰延税金資産の計上

(借) 繰延税金資産(

*2

90

(貸) 退職給付に係る調整額

90

(その他の包括利益)

*2

) 数理計算上の差異の当期発生額

300

×法定実効税率

30

%=

90

この仕訳により、連結財務諸表上は、退職給付に係る負債

1,300

に関する繰延税金資産

390

が計上される。すなわ ち、個別財務諸表における退職給付引当金に係る将来減算一時差異に関する繰延税金資産

300

に、未認識数理計算 上の差異に係る連結修正により生じる将来減算一時差異に係る繰延税金資産

90

を合算し、回収可能性を判断した 上で計上する。

〈参考図〉

税務上の簿価

個別財務諸表 連結財務諸表

未認識項目に係る 将来減算一時差異

300 退職給付引当金に係る

将来減算一時差異

1,000

1,300

1,000

(簿価なし)

退職給付引当金 退職給付に係る負債

将来減算一時差異(合算)1,300×法定実効税率30

=繰延税金資産390

(回収可能性があるものとする)

会計上の簿価

以 上

参照

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