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「気になる子ども」への保育者の対応に関する研究の動向

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Academic year: 2021

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著者

緒方 宣挙

雑誌名

大阪総合保育大学紀要

14

ページ

69-84

発行年

2020-03-20

URL

http://doi.org/10.15043/00000972

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「気になる子ども」への

保育者の対応に関する研究の動向

緒 方 宣 挙

Nobutaka Ogata

大阪総合保育大学大学院 児童保育研究科 児童保育専攻 Ⅰ 問題と目的  近年、保育現場では 「気になる子ども」1)の保育が大 きな課題となっている。この「気になる子ども」の特徴 を明らかにするために、これまでに多くの実態調査が行 われてきた。本郷ら(2003)は、質問紙による「気にな る」子どもの特徴の保育者評定から評定平均値が高かっ た項目を因子分析したところ5因子を抽出した。そのう ち4因子を採用し、「対人的トラブル」「落ち着きのな さ」「状況への順応性の低さ」「ルール違反」と命名し た。また、子どもの年齢とともに次第に大きな問題とな る「対人的トラブル」と比較的早い時期から継続的に問 題となる「落ち着きのなさ」「状況への順応性の低さ」 「ルール違反」があると述べている。倉光(2004)は、 「気になる子ども」には特に「気が散りやすく、集中す ることが難しい。」「じっとしていることができず、動き 回ることが多い。」といった特徴が多く見られることを 明らかにしている。池田ら(2007)は、「気になる子ど も」のもつ問題からその特徴をあげ、ことば・コミュニ ケーションに関する問題が多く、行動に関するもの、社 会性・対人関係に関するものと続き、「気になる子ども」 は軽度発達障害の特徴をもっていることを示唆した。久 保山ら(2009)は、アンケート調査から得られた回答を 整理し、「発達上の問題」「コミュニケーションの問題」 「落ち着きがない」「乱暴」「情緒面での問題」「しようと しない」「集団への参加」「その他」「いない・無記入」 の9カテゴリーに分類した。回答の多い順に、「発達上 の問題」「コミュニケーションの問題」「落ち着きがな い」となり、この3カテゴリーが全体の 52%であった。 回答が多かった3カテゴリーについてみると、「発達上 の問題」は加齢とともに回答割合が増加し、「コミュニ ケーション」「落ち着きがない」はともに、4歳児では 一度減少し、5歳児では再び増加する傾向が見られた。 古市(2009)は、保育者から見た特別な支援が必要な子 どもの行動特徴を分析し、「ルール違反・対人トラブル」 「感情統制の困難」「不器用・行動の遅さ」「相互性・融 通性の低さ」「注意集中の困難」の5つの因子を見出し ている。60% 以上もの子どもに見られた行動は8項目 あり、「友達とうまくかかわれない」「他児の気持ちを 理解するのが困難」「友達が嫌がっているのに気づかな い」といった対人関係の問題、「状況にかまわずしゃベ る」「好きなことには熱中する」「活動と活動の合間にフ ラフラしてしまう」「友達の悪い行動につられる」「きょ ろきょろする」といった集団活動の問題であった。知的  これまで「気になる子ども」に関する様々な研究が行われてきたが、保育現場における「気になる子ども」 への保育者の対応が一つの課題となっている。そこで本研究では、「気になる子ども」の支援に関する先行研 究を①「気になる子ども」への支援、②物的環境の調整、③クラス集団への支援、④保護者への支援、⑤保育 体制の整備の5つに分類し、この5つの観点から「気になる子ども」への保育者の対応の方策を探ることを目 的とした。その結果、「気になる子ども」へは声かけによる対応が多く取られており、有効性が実証されてい る技法を取り入れた介入等による対応を保育者が行っている報告はほとんどなかった。そのため、具体的な対 応方法は明らかとならなかった。一方、保育体制の整備についての報告が多く見られた。このような保育体制 の整備は、保育者の「気になる子ども」についての行動・特徴の把握や専門的な知識や技術を向上させ、保護 者支援にもつなげることができるなど、「気になる子ども」の支援において有効であることが示されている。 今後、巡回相談や研修、専門機関で行われている指導・助言の内容や介入技法についての先行研究の整理・分 析を行い、保育者が実施しやすい技法を取り入れた介入等による対応方法を明らかにする必要性が示唆され た。 キーワード:気になる子ども、保育、対応、支援、関わり

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障害の有無別に行動の違いをみると、知的障害無群に多 かったのは「やってはいけないとわかっているのについ やってしまう」「ちょっとしたことでも意地悪をされた と思ってしまう」「他児のことばを気にしすぎる」「他児 に暴言をはく」「一番にならないと気がすまない」とい う、「感情や行動を自分でコントロールして周囲に合わ せて行動する」といった内容の項目であった。このよう に、「気になる子ども」の特徴は多様である。  こうした「気になる子ども」についての捉え方は多岐 にわたるため、特定の定義が一致しているわけではな い。本郷ら(2003)は、「調査時点では何らかの障害が あるとは認定されていないが、保育者にとって保育が難 しいと考えられている子ども」、岡本・安田(2018)は、 「明確な診断名がないものの、保育者が日々の保育の中 で特別な配慮の必要性を感じたり、日常の保育を行う上 でどのように対応すべきか悩んだりするなど、保育上の 困難さがあると感じる子ども」、藤井ら(2010)は、「発 達障害と共通した特徴が認められるが、はっきりとした 診断がついておらず、保育者がその子どもに対してど のように関わってよいか戸惑う子ども」、佐藤ら(2019) は、「発達障害の診断はついていないが、定型発達から の軽度の遅れとゆがみ、偏りを持ち、保育士が保育上何 らかの特別な支援が必要だと認識している子ども」と定 義している。また、藤井・小林(2010)、平澤ら(2005) は、診断のない「気になる子ども」の中には発達障害が 疑われる子どもが含まれていることを指摘している。こ れらを踏まえると、「気になる子ども」の定義には多少 の認識の違いは見られるが、「明確な診断名がないもの の発達障害の特性が見られ、保育者2)にとって日常の 保育をする上で困難さがあり、特別な支援・配慮を必要 としている子ども」と言うことができるだろう。  これまでに述べたように、「気になる子ども」の定義 が明確でないために厚生労働省や文部科学省等による全 国的な統計は行われていない。しかし、中島(2014)、 原口ら(2015)の調査結果によると、診断のない「気に なる子ども」の調査園における在籍率は 83.3%~ 88.0% で、全在籍児に占める人数の割合は 3.4 ~ 5.9%である ことが明らかとなっている。診断のある子どもの在籍率 が 65.3%、出現率が 1.2 ~ 2.1%であることと比べると 非常に高い。また、橋本ら(2015)、斎藤ら(2008)に よると、85.2 ~ 96.6%の保育者が「気になる」子どもを 保育した経験があったと答えている。これらの報告か ら、保育現場には「気になる子ども」が多数在籍してい ることは確かである。  このような背景から、現在まで「気になる子ども」に 関する多くの研究成果が報告されてきた。しかし、池田 ら(2007)により、「気になる子ども」について問題や 悩みがあると回答した保育者が 68.5%にものぼるという 実態が明らかとされた。岡本・安田(2018)の最近の調 査ではさらに高く、「気になる子ども」の保育に不安を 感じる保育士は、90.4%にもなる。保育士は、「気にな る子ども」の保育または支援において、困難さを抱えな がら保育を行っており、その子どもに有効な保育や支援 を模索しながら保育を行っていると指摘している。ま た、郷間ら(2008)によると、保育者は障害児よりも 「気になる子」に指導上の問題を感じている場合が多い と述べている。  このように「気になる子ども」をめぐる様々な研究が 行われてきたが、保育の現場では依然として「気になる 子ども」への対応に保育者が苦慮している状態が続いて いるのである。それは、「気になる子ども」の特徴の不 明瞭さやその行動の背景を理解することの難しさにある だろう。「気になる子ども」が起こす問題に対して適切 に判断をし、対応することは容易なことではない。だか らこそ、岡本・安田(2018)の調査からも分かるよう に、「気になる子ども」への対応や関わり方、話し方な ど、直接かかわるための技術や子どもを理解するための 専門知識の必要性を多くの保育者は感じているのではな いだろうか。そのため、「気になる子ども」の保育を進 めるにはどのような配慮が必要であるかを明らかにしな ければならない。そして、そのような子どもが抱える困 難に保育者は寄り添いながらも適切な対応が求められて いる。  そこで本研究は、「気になる子ども」の保育者の支援 に関する先行研究を概観し、その内容を分析・整理する ことを通して、「気になる子ども」への保育者の対応の 方策を探ることを目的とする。 Ⅱ 研究方法    国立情報学研究所(NII)が提供する文献情報・学術 情報検索サービス CiNii Articles を使用し、データー ベース検索を 2019 年8月に行った。キーワードに「気 になる子」「保育」を「対応」「支援」「関わり」「援助」 とかけ合わせて検索を行った。キーワード検索の結果、 197 件が該当した。それらの中から、幼稚園、保育所、 認定こども園における「気になる子ども」の保育者の支 援に関する研究を主に選出し、原著論文であるものを対 象とした。その結果、61 件の論文が本研究では分析対 象となった。  本郷(2019)は、「気になる」子どもの行動の背景に は、「気になる」子ども自身の特性だけでなく、「気にな

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る」子どもを取り巻く人的・物的環境があると指摘し ている。そのような観点に立ち、「気になる子ども」の 支援を①「気になる」子どもへの支援、②クラス集団 への支援、③物的環境の調整、④保育・教育体制の整 備、⑤保護者支援の5つの柱に分類している。小柳津 (2018)、中山(2015)、本荘(2012)、平野ら(2012)の 他の研究における分類を見ると、本郷(2019)の分類に 概ねあてはめることが可能であった。よって本研究で は、本郷(2019)の分類を参考に分析対象の論文を精査 し、①「気になる子ども」への支援、②物的環境の調 整、③クラス集団への支援、④保護者への支援、⑤保育 体制の整備の5つに分類した。 Ⅲ 結果と考察    分析対象となった 61 件の論文の分類を行った結果を 表1に示す。①「気になる子ども」への支援は 20 件、 ②物的環境の調整は5件、③クラス集団への支援は8 件、④保護者への支援は 11 件、⑤保育体制の整備は 26 件となった。なお、支援を1つに限定できない論文に関 しては複数に分類した。 1.「気になる子ども」への支援   <結果>  「気になる子ども」への支援に分類された論文を概観 したところ、(1)子ども理解、(2)個別の対応、(3) 情緒の安定、声かけによる対応、(4)遊びによる支援、 (5)技法を取り入れた対応といった内容にさらに分け ることができた。以下に、その詳細を述べる。 (1)子ども理解  新井(2004)は、保育者は「気になる」子どもの背景 を視野に入れ、援助や対応をしていることを明らかにし ている。浅野(2015)は、「気になる」子どもの行動に 対する保育者の具体的な対応法に着目し、うまくいっ た・うまくいかなかった対応の傾向を調査した。その結 果、行動特性を理解した配慮や対応が重要であった。渡 邊(2006)は、観察によって、子どもの「気になる」行 動を明らかにすることは、保育者が混乱して「気にな る」ということだけで頭がいっぱいになっている思い を整理することができ、さらに子どもに対する理解を 促して、適切な援助につながることを示唆した。杉山 ら(2016)は、熟達保育者が「気になる」子どもと関わ る際の認識の特徴として、その子どもの過去と現在の統 合、多様な場面における行動の統合、子ども自身の視点 と保育者の視点の統合、といったように、多様な情報を 統合しながら子どもを理解し、関わり方を調整していた と述べている。 (2)個別の対応  小谷・山下(2008)の質問紙調査の結果からは、「気 になる子ども」と保育者との関わり方について、「子ど もと1対1」でゆっくりと関わるという回答が多く見ら れた。久保山ら(2009)の保育者へのアンケート調査か らは、「気になる子ども」への支援の実際として「個別 の関わり・声かけ」が半数以上を占めていることが明ら かとなった。保育所全体として個に対する支援を重視す る傾向が示唆された。 (3)情緒の安定、声かけによる対応  赤田ら(2008)は、公立保育所に勤務する職員 107 名 に質問紙調査を実施した。その結果、気になる子どもの 対応として「注意・指導」が最も多く、次いで「気分の 安定に配慮」が多かった。松永(2012)による「気にな る」子どもへの保育者の対応に関する質問紙調査から は、「注意、指導、約束」および「受容、気分の安定」 という対応が7割以上の保育者から挙げられていること が明らかとなった。「注意、指導、約束」では、43.5% で他の対応が併記されており、気分の安定を図ったり誉 めたりするなど他の対応を同時に取りながら行われてい た。若松・田坂(2018)は、保育所(園)への聞き取 り調査を行った。その結果、「声掛け」として、具体的 に「アバウトな声掛けではなく、『これが終わったらこ れをします』というような具体的な見通しがもてるよう に1つ1つ伝えるようにする」、「製作などをする際、全 体に声をかけた後、個別に一言多く言葉をかける」、「細 やかに声をかける」、「禁止をしないように、肯定的・具 体的で短い言葉に言い換える」、「誉め言葉には名詞をた くさん入れるように心がける」、「伝え方は子どもによっ てさまざまなので、担任がその子の特性をつかみ、みん なで統一する」というようなことが挙げられた。藤井ら (2011)は、担当保育士が “ 気になる ” と評価した子ど もに対して、通常の保育活動の中で支援を行った結果、 ①自発的な参加を促す取り組み、②次の活動へ促す取り 組み、③不注意に対する個別配慮の3つの支援で効果を 示した。保育士による言葉かけや指示の出し方の配慮が 行われていた。 (4)遊びによる支援  西川(2019)は、保育者は気になる子どもの運動遊び での支援として、子どもの姿を見て、子どもが楽しめる

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表1 本研究で分析対象となった論文一覧 (①「気になる子ども」への支援、②物的環境の調整、③クラス集団への支援、④保護者への支援、⑤保育体制の整備) 分類 表題 著者(年) 雑誌名 ① 保育所における気になる子どもへの保育士が行う運動遊びを用いた支援と課題 西川 ひろ子(2019) 安田女子大學紀要 ① スクリプトのあるごっこ遊びを通した幼児への言語およびコミュニケーションスキルの発達支援 篠原 陽風・小林 真(2019) 富山大学人間発達科学部紀要 ① 幼児教育における特別な支援が必要な子どもの理解と指導- RTI の考え方を生かした早期からの社会性の発達支援- 阿部 敬信・佐藤 真央(2018) 別府大学短期大学部紀要 ① 保育現場における気になる子への支援-トークンエコノミー法を活用した不適応行動の改善- 仁科 綾菜 ・遠藤 清香(2018) 山梨学院短期大学研究紀要 ① 特別な支援を必要とする子どもの理解と対応に関する研究-保育所に在籍する子どもの行動に着目して- 小柳津 和博(2018) 桜花学園大学保育学部研究紀要 ① 保育所における対人コミュニケーションを中心にした「気になる子」への発達支援 鷲尾 昌子(2018) こども臨床研究 ① 熟達保育者による「気になる子ども」の認識と支援プロセス 杉山 成史・松尾 剛・杉村 智子(2016) 福岡教育大学紀要 ① 幼稚園・保育所における「気になる」子どもの行動への対応 浅野 浩子(2015) 白鳳短期大学研究紀要 ① 衝動性が強い幼児への幼稚園の担任教師としての支援事例 守 巧(2013) 東京福祉大学・大学院紀要 ① 保育園における “ 気になる子ども(特別なニーズを有する子ども)”への特別支援保育-広汎性発達障害が疑われる男児の事例研究- 藤井 千愛・小林 真・張間 誠紗(2011) 教育実践研究 ① 「気になる子ども」「気になる保護者」についての保育者の意識と対応に関する調査-幼稚園・保育所への機関支援で踏まえるべき視点 の提言- 久保山 茂樹・齊藤 由美子・西牧 謙吾・ 當島 茂登・藤井 茂樹・滝川 国芳(2009) 教育実践研究 ① 公立保育所における障害幼児と気になる子どもの対応に関する調査研究-他機関の利用と保育上の対応の関係について- 赤田 太郎・滋野井 一博・小正 浩徳・友久 久雄(2008) 龍谷大学教育学会紀要 ① 保育所における「気になる」子ども-行動特徴、保育者の対応、親子関係について- 下野 未紗子・稲富 眞彦(2007) 高知大学教育学部研究報告 ① 「気になる子ども」の理解に関する一研究-保育現場での行動観察- 渡邊 美智子(2006) 近畿大学九州短期大学研究紀要 ① 保育者が気にする子どもの様子とそれへの対応-保育現場の視点- 新井 麻未(2004) 立正社会福祉研究 ② 保育園における「気になる子」への支援事例研究-一斉活動における退室行動を教室の環境調整によって減少させる試み- 木村 明子・松本 秀彦(2012) 作大論集 ② 保育室の環境構成が幼児の活動に与える影響-気になる子のカンファレンスより- 佐藤 智恵・七木田 敦(2009) 幼年教育研究年報 ② 保育所における「気になる」子どもの行動特徴と保育者の対応に関する調査 本郷 一夫・澤江 幸則・鈴木 智子・小泉 嘉子・飯島 典子(2003) 発達障害研究 ③ 特別な配慮を要する子を含めた子どもどうしの関係性の変容過程とその要因-担任保育者への聞き取り記録からの検討- 広瀬 由紀・岩田 美保(2017) 千葉大学教育学部研究紀要 ③ “ 気になる子 ” への援助とクラス全体への援助-保育者による援助の配分- 杉本 翔平・石田 淳也・松延 毅・中村 知嗣・藤田 清澄・本田 由衣・ 香曽我部 琢(2017) 宮城教育大学情報処理セン ター研究紀要 ③ 現職教員の対人関係に課題のある子どもへの意識-課題のある子どもと周囲の子どもに関するテキスト分析を中心に- 八木 成和(2017) 四天王寺大学紀要 ③ 高機能広汎性発達障害のある男児に対する支援的な保育-ルールのあるゲーム遊びを通したクラス集団への介入を通して- 小松 昌代・小林 真(2014) 教育実践研究:富山大学人間発達科学研究実践総合セ ンター紀要 ③ 「ちょっと気になる子ども」の集団への参加過程に関する関係論的分析 刑部 育子(1998) 発達心理学研究 ④ 保育士による発達上「気になる子」の保護者への支援の実態と関連要因の探索:発達上の課題の伝達に着目して 佐藤 日菜・田口 敦子・山口 拓洋・大森 純子(2019) 日本公衆衛生雑誌 ④ 発達の気になる子どもの保護者へのかかわりの現状と課題-保育者へのインタビューから- 今村 美幸・ 室津 史子・ 疋田 結香・ 森 千智・藤原 理恵子(2017) 広島都市学園大学雑誌、健康科学と人間形成 ④ 発達上 “ 気になる子ども ” の保護者に対する保育園の保育士の支援内容 大塚 敏子・巽 あさみ(2016) 日本公衆衛生看護学会誌 ④ 保育相談支援における保育士の葛藤-「気になる子ども」の保護者との関係変容に伴う支援の質的転換に着目して- 亀﨑 美沙子(2016) 十文字学園女子大学紀要 ④ 保育者の「子育て支援」に関わる専門性とリカレント教育(その2)- “ 障がいをもつ子 ”・“ 発達の気になる子 ” の子育て支援の課題を 通して- 川池 智子(2009) 山梨県立大学人間福祉学部 紀要 ④ 保育所における「気になる」子どもの保護者支援-保育者への質問紙調査より- (2008)斎藤 愛子・中津 郁子・粟飯原 良造 小児保健研究 ④ 「気になる」子どもの保護者支援に関する調査研究 本郷 一夫・高橋 千枝・平川 昌宏・角張 慶子・飯島 典子・杉村 僚子(2004) 教育ネットワーク研究室年報 ⑤ キンダーカウンセラー事業による継続的な支援についての効果の実感-気になる子どもに対する保育効力感に着目して- 日光 恵利(2018) 幼年児童教育研究 ⑤ 発達障害児とその保護者への支援に関する保育者研修のあり方についての検討- A 市の就学前施設の保育者に対する研修事業を通し て- 田中 尚樹・渡辺 顕一郎(2017) 日本福祉大学子ども発達学 論集 ⑤ 「気になる子」に関する巡回相談が保育士の行動および保育所のチーム援助に与える影響 熊上 藤子・石隈 利紀(2016) コミュニティ心理学研究

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ように見守り、言葉がけを行いながら、子どもの気持ち を尊重する関わりをしていると述べている。そして、社 会性のスキルも向上するように、ルールや危険なことを しないことについても並行して支援していた。篠原・小 林(2019)は、言語発達に遅れが見られる幼児に対し て、スクリプトを用いた小集団でのごっこ遊びを継続的 に実施した。その結果、暦年齢が5ヶ月増加したのに比 して語い年齢は 20 ヶ月の上昇が見られた。スクリプト を用いたごっこ遊びを経験することは、語いの獲得やコ ミュニケーションスキルの獲得に有効であることが考え られた。阿部・佐藤(2018)は、RTI の考え方を保育 所2歳児クラスにおける早期からの社会性を育む遊びに 援用した。その結果、一定の効果が明らかとなった。そ の要因の一つに、個別のねらいを設定することにより日 分類 表題 著者(年) 雑誌名 ⑤ 気になる子どもの変容を促す問題解決志向性コンサルテーションの効果に関する実践的研究-「行動の分析 & 支援シート」の開発と活 用- 阿部 美穂子(2015) 保育学研究 ⑤ 幼稚園における特別な配慮を要する子どもへの支援の実態と課題 -障害の診断の有無による支援の比較- 原口 英之・野呂 文行・神山 努(2015) 障害科学研究 ⑤ 「気になる子ども」に対する保育者の関わり方についての変化-効果的なコンサルテーションの在り方についての検討- (2015) 小野里 美帆・丑越 信子・南島 綾乃 生活科学研究 ⑤ 心理臨床家の保育者支援を考える:「気になる子どもの保育フォーラム」の実践から 今野 直子・斉藤 あゆみ・太田 祐貴子・青木 紀久代(2014) お茶の水女子大学心理臨床相談センター紀要 ⑤ 保育所における発達障害の早期発見・早期介入を阻害する要因の検討-「気になる子ども」に対する保育士の認識と支援体制から- 津田 朗子・木村 留美子(2014) 金沢大学つるま保健学会誌 ⑤ 保育士が主体となって取り組む問題解決志向性コンサルテーションが気になる子どもの保育効力感にもたらす効果の検討 阿部 美穂子(2013a) 保育学研究 ⑤ 気になる子どもの保育における効果的な巡回相談スタイルの実践的検討-保育所(園)長アンケートの分析- 阿部 美穂子(2013b) 富山大学人間発達科学部紀要 ⑤ 保育所における特別な配慮を要する子どもに対する支援の実態と課題-障害の診断の有無による支援の比較- 原口 英之 ・野呂 文行・神山 努 (2013) 障害科学研究 ⑤ 「気になる子」への保育援助をめぐる保育者の認識や戸惑い 増田 貴人・石坂 千雪(2013) 弘前大学教育学部紀要 ⑤ 保育者の主体的な保育実践を導くコンサルテーション成立要因の抽出-コンサルテーション実施の「その後」に焦点を当てて- 守 巧・中野 圭子・酒井 幸子(2013) 保育学研究 ⑤ 舞鶴市における発達障害児の実態とニーズに関する調査研究-保育所・幼稚園における「気になる」の特別なニーズと発達支援- 荒井 庸子・前田 明日香・張 鋭・井上 洋平・荒木 穂積・竹内 謙彰(2012) 立命館産業社会論集 ⑤ 多動・衝動性が強いA児の事例からみた幼稚園における担任への支援体制の構築 守 巧(2012) 東京福祉大学・大学院紀要 ⑤ 「気になる子ども」を捉える思考プロセスの形成-保育士に行った間接的支援の実践報告- 丹葉 寛之・大西 満・尾藤 祥子(2012) 藍野学院紀要 ⑤ 他児との関係形成が困難な「気になる」子どもに対する保育コンサルテーション 深谷 英治・江田 裕介(2011) 和歌山大学教育学部教育実践総合センター紀要 ⑤ 発達臨床の専門性は保育カンファレンスで保育者をどのように支援するか-保育園の “ 気になる子 ” の事例検討会の分析- 芦澤 清音(2010) 帝京大学文学部教育学科紀要 ⑤ 「気になる子」を担任する幼稚園教諭への集団コンサルテーションプログラムの効果 藤原 直子・大野 裕史・日上 耕司・久保 義郎・佐田 久真貴・松永 美希 (2010) 行動療法研究 ⑤ 保育現場で「気になる」子どもの理解と支援のための一考察-保育者と保育カウンセラーによるコンサルテーションを通して- 吉川 昌子・松尾 智則・渕上 乃里子・尾恒 素子・片山 瞳・早川 公美子・ 林 希・樋渡 紗由里(2009) 中村学園大学・中村学園大 学短期大学部研究紀要 ⑤ 幼稚園における特別支援教育の体制づくりに関する実践研究 水内 豊和(2008) 富山大学人間発達科学部紀要 ⑤ 保育の場における「気になる」子どもの理解と対応に関するコンサルテーションの効果 (2007)本郷 一夫・飯島 典子・平川 久美子 LD 研究 ⑤ 社会福祉実践における保育士の役割と課題~子育て支援に関する相談援助内容の多様化から~ 鑑 さやか・千葉 千恵美(2006) 保健福祉学研究 ① ③ 「気になる子ども」に対する保育の検討-「対象児の支援」「クラス集団作り」「保育展開の工夫」の視点から- 守 巧 ・山崎 摂史・駒井 美智子(2013) 東京福祉大学・大学院紀要 ① ③ 「気になる」子どもへの保育者の対応と周囲の子どもたちへの影響に関する保育者の意識調査 松永 あけみ(2012) 群馬大学教育学部紀要、人文・社会科学編 ① ③ 幼稚園・保育所における「気になる」子どもとその保護者への対応の実態-クラス担任を対象とした調査をもとに-(第2報) 平野 華織・水野 友有・別府 悦子・西垣 吉之(2012) 中部学院大学・中部学院大学短期大学部研究紀要 ① ⑤ 「気になる子ども」の実態とその対応に関する研究 小谷 隆史・山下 勲(2008) 心理教育相談研究 ① ② ④ 保育所(園)における「気になる子」に対する支援の研究-個別の(教 育)支援計画を中心としたハンドブック作成の試み- 若松 昭彦・田坂 泰子(2018) 広島大学大学院教育学研究 科附属特別支援教育実践セ ンター研究紀要 ② ④ 保育の場における「気になる」子どもの保育支援に関する研究 本郷 一夫・飯島 典子・杉村 僚子・高橋 千枝・平川 昌宏(2005) 教育ネットワーク研究室年報 ④ ⑤ 幼稚園・保育所(園)における「気になる」子ども・保護者への対応の実態と保育者養成-園長・主任調査をもとに-(第1報) (2011)別府 悦子 ・西垣 吉之・水野 友有 [他] 中部学院大学・中部学院大学短期大学部研究紀要 ④ ⑤ 保育所における「気になる子ども」の研究~保護者への対応について~ (2015)橋本 逸子・木村 留美子・津田 朗子 金沢大学つるま保健学会誌

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常的に配慮し、社会性を育むことをねらいとした遊び案 を継続的に実施したことが考えられた。 (5)技法を取り入れた対応  仁科・遠藤(2018)は、年少児を対象に、保育場面で 見られる不適応行動の改善におけるトークン・エコノ ミー法の効果について検証を行った。その結果、トーク ンを使用して支援すると、不適応行動の回数が減少し、 排泄や支度・片付けにかかる時間が短縮された。 <考察>  鯨岡(2017)は、保育者に子どもが「気になる」と映 る時、保育者の側にはおのずから負の感情が動いている と指摘している。それを子どもが今どういう困り感を抱 いてこの負の行動にでているかと問うようになると、ま ずはその「負の感情」が抑えられ、子どもの困り感に寄 り添って、それを温かく受け止めようとしていく気持ち が動き始めると述べている。保育者が「気になる子ど も」の行動から原因や背景を推測し、子どもを理解す ることは重要なことだと考えられる。だから、保育者 は「気になる子ども」の思いや考えなどを理解しようと する姿勢を大切にしているのだろう。多角的な視野と高 い専門性を養って子どもを理解することで子ども理解が 深まっていっていることが考えられる。そして、保育者 は個別対応を大切にし、丁寧に「気になる子ども」と関 わっている。実際の保育上の対応としては、「注意・指 導」が多く取られているが、気分の安定を図ったり褒め たりするなどの対応を保育者は同時にとりながら行って いる。また、肯定的・具体的でわかりやすい言葉かけを 心掛け、成功体験を増やし、認めることで「気になる子 ども」の自己肯定感を高められるような配慮も行われて いる。子ども理解を通して「気になる子ども」に合った 対応の仕方を工夫していることがうかがえた。  それから、「気になる子ども」の社会性の発達を促す ために、集団での遊びも大切にされていた。文部科学省 (2012)・幼児期運動指針には、幼児期には、徐々に多く の友達と群れて遊ぶことができるようになっていき、そ の中でルールを守り、自己を抑制し、コミュニケーショ ンを取り合いながら、協調する社会性を養うことができ るとある。保育においては、遊びの中からの学びを大切 にしていることが分かる。よって、遊びの様子を見守り ながら、必要な支援を行う保育者の役割は非常に重要で あると言える。  さらに、「気になる子ども」の問題行動や不適応を改 善するために有効性が実証されている技法が取り入れら れている。保育者は技法を学ぶことで、「気になる子ど も」の問題行動についての基本的な理解と適切な対応が できるようになると考えられる。基本的な理論・技法、 必要なアセスメント、介入方法の知識などを学ぶこと は、保育者の専門性として必要であるだろう。子どもの 育ちを保障するために、一人一人の子どもの状況や発達 を踏まえた適切な保育を行うことが望まれている。 2.物的環境の調整 <結果>  物的環境の調整に分類された論文を概観したところ、 (1)実態、(2)効果といった内容にさらに分けること ができた。以下に、その詳細を述べる。 (1)実態  本郷ら(2005)の研究からは、物的環境の整備の取り 組みの多くは、「気になる」子どもの行動の一部を制限 することや、子どもの行動やふるまいを安定させること を目的としていることが明らかとなっている。また、物 的環境の整備は「気になる」子どもの保育において、比 較的容易に操作可能な側面であることが考えられると述 べられている。本郷ら(2003)は、「気になる」子ども の保育者の対応(11 項目)について保育者に評定を求 めた。その結果、「気になる」傾向が高い群に対して、 「席の場所などを考慮する」などの「環境への配慮」の 項目の評定平均値が最も高かった。若松・田坂(2018) は、「個別の配慮を要する子どもに対しての保育所(園) での支援」について保育者への聞き取り調査を行い、聞 き取った内容から9カテゴリーに分類した。その中で 物的環境に関するものとして、「視覚化」、「席の配置」、 「落ち着ける空間やもの」の3つが挙げられた。また、 9カテゴリーの中で「視覚化」の聞き取り数が最も多 かった。具体的には、「日課表」や「手順表」といった スケジュール表の活用が多く挙がり、「時計におしまい のマークをつけたり、声の大きさを絵で示したりする」、 「視覚的な支援カードを使用する」、「相手の気持ちをそ の都度絵で示している」、「前もってその日の行程を絵や 写真などで予告しておく」といったことも挙げられた。 (2)効果  木村・松本(2012)は、集団活動時に参加ができず、 自席から離席したり、退室したりしてしまう「気になる 子」の支援として主に環境調整を行って、行動問題の減 少が認められるか検討を行った。退室の先行条件が課題 遂行の難しさ及び課題終了時であったため、教室の一角 に一人で過ごすことができる “ コーナー ” を設けたとこ

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ろ、退室回数が半減したことから、環境調整することで 有効な支援が行えることを示した。また、佐藤・七木田 (2009)は気になる子への保育室の環境構成という物的 な環境要因から検討を行い、環境構成を見直すことで幼 児の姿の変容を支えられることを明らかにした。変更さ れた環境構成は、結果的に他の子どもたちにとっても生 活しやすい環境構成となったと述べている。 <考察>  物的環境の調整は「気になる子ども」の「行動の制 限」や「行動の安定」を主な目的として行われ、「気に なる子ども」の支援として比較的実践しやすいことが認 められた。そして、空間・環境、時間、手順や活動につ いて視覚的な手がかりを用いて環境を整えていた。この ような物的環境を調整することは、「気になる子ども」 にとって有効であると言うことができる。また、本郷 ら(2005)は、物的環境の整備は「気になる」子どもの 保育において、比較的容易に操作可能な側面だと考えら れ、物的環境の変化は子どもや保護者にもわかりやすい 側面であると述べている。したがって、物的環境の整備 は、「気になる子ども」の保育においては、優先的に取 り組むことが可能な側面であると考えられている。  近年は、保育所保育指針で示されている5領域の一つ である「環境」の重要性に対する認識が広がってきてい る。これらを踏まえると、物的環境の整備による働きか けを多くの保育者が行っていることがうかがえる。ま た、物的環境の調整を行うことは「気になる子ども」だ けでなく、どの子どもにも分かりやすい環境を整えるこ とになると考えられる。 3.クラス集団への支援 <結果>  クラス集団への支援に分類された論文を概観したとこ ろ、(1)「気になる子ども」への保育者の対応による周 囲の子どもたちへの影響、(2)「気になる子ども」と保 育者との関係づくり、(3)「気になる子ども」と他児と の関係づくりといった内容にさらに分けることができ た。以下に、その詳細を述べる。 (1) 「気になる子ども」への保育者の対応による周囲の 子どもたちへの影響  松永(2012)は、「気になる」子どもへの保育者の対 応による周囲の子どもたちへの影響について保育者に意 識調査を実施した。その結果、「気になる」子どもに対 する保育者の対応による周囲の子どもたちの行動への影 響、及び認知や評価への影響について、8割以上の保育 者が影響の強さを感じていることが明らかとなった。行 動への影響については、保育者自身の対応と同様の行動 を周囲の子どもたちも行うようになると半数以上の保育 者が感じており、マイナスの影響をあげている保育者も 2割程度いた。また、認知や評価への影響については、 保育者の対応と同方向の評価を周囲の子どもたちがする と保育者の6割以上が感じており、「気になる」子ども に対してネガティブな認知や評価をすると感じている保 育者も3割近くいた。 (2)「気になる子ども」と保育者との関係づくり  杉本ら(2017)は、気になる子R児の成長プロセスを 明らかにしている。作成されたストーリーラインの中 で、保育者とR児との関係性が構築されていく過程が述 べられている。R児にとって保育者の存在が徐々に大き なものとなり、保育者に自分の思いが受け入れられる経 験を重ねることで、相手の関わりも受け入れられる双方 向的な関係へと変化していったことが考えられるとし た。そして、担任への承認欲求が受け止められることで 安定していき、関係性が構築されていったとしている。 関係性が構築されることで、課題や指示に素直に応じる ようになり、担任を拠所とした安定感が見られ、園生活 全般に意欲的に取り組むようになっていったと述べられ ている。 (3)「気になる子ども」と他児との関係づくり  平野ら(2012)は、保育者へ「気になる」子どもやそ の周囲の子どもへの対応に関する自由記述から内容別に 分類を行った。その一つとして、「気になる」子どもと 他の子どもとの関係づくりが挙げられた。刑部(1998) は、保育園における4歳児の「ちょっと気になる子ど も」の長期にわたる集団への参加過程を関係論的に分析 している。その結果、「ちょっと気になる子ども」が気 にならなくなっていく過程で起きていたことは、その子 ども個人の知的能力やスキルの獲得といった変化という よりも、周囲との関係づくりによる変化であることを明 らかにしている。広瀬・岩田(2017)は、ある特別な配 慮を要するA児が、クラスの中で受け入れられ仲間関係 を築いていくプロセスを明らかにしている。関係性が変 容した要因として、A児の多様な面を意図的に他児に伝 え、他児が関わりたいと思う気持ちを育むこと、無理な くつながりあう機会を模索すること、関わりを見守り、 より強力になるように支えることなどが挙げられてい る。小松・小林(2014)は、仲間関係の構築を企図した 集団ゲーム遊びの介入を通じて、発達障害のあるA児の

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発達的変化を検討した。その結果、A児のソーシャルス キル尺度の全ての尺度で得点が上昇し、特に他者の気持 ちを考える行動と自己主張のスキルを高めることが明ら かとなった。A児に対する支援に加え、クラスに対する 支援として、A児の気持ちを保育者が代弁したり、他児 の気持ちをA児に伝えたりして、A児と他児を仲介する ことなどが行われていた。 <考察>  守(2016)は、関わりの見本である保育者が気になる 子に対して肯定的に関わっていれば、自然と他児も肯定 的なまなざしを気になる子に向け、仲間として受け入れ ようとすると述べている。一方、保育者の関わり方に よっては、他児の行動へのマイナスの影響や「気になる 子ども」に対してネガティブな認知や評価をすることも 明らかとなっている。「気になる子ども」がいるクラス の保育を考える場合、保育者の「気になる子ども」への 関わりが他児へ与える影響の強さを十分に意識して進め なければならないと言える。また、クラス集団におい て、保育者、「気になる子ども」、他児の三者の関係づく りが大切にされてきた。特に保育者は、「気になる子ど も」との信頼関係を築くことに重点を置いていた。秋田 (2012)は、安心感や愛着は信頼関係の土台となると述 べている。保育者に抱く安心感や愛着がなければ、信頼 関係を築くことはできないと言えるだろう。よって、保 育者は「気になる子ども」との1対1の関係を大切に し、安心して生活が送れるよう支援していると考えられ る。加えて、「気になる子ども」と他児とがつながるよ うな関係をつくるよう努めていた。子ども同士の関わり をいかに育てるかが大切であると保育者は感じているこ とがうかがえる。保育者は丁寧に子ども同士をつなげ、 つながりのある集団づくりに取り組んでいると言える。 そうすることで、「気になる子ども」は安心できる保育 者との関係を基盤に、他児との関係を広げていくことが できると考える。子ども同士の関係性を重視し、子ども たちがお互いを認め合いながら育つクラス運営が行われ ている。 4.保護者への支援 <結果>  保護者への支援に分類された論文を概観したところ、 (1)保護者との信頼関係の構築、(2)保護者とのコ ミュニケーション、(3)専門機関へつなぐ関わりと いった内容にさらに分けることができた。以下に、その 詳細を述べる。 (1)保護者との信頼関係の構築  佐藤ら(2019)は、保育士を対象にアンケート調査を 行った。その結果、気になる子の保護者への支援の実施 状況として、「意識的な関係づくり」が 73.4%と最も多 く実施されていることが明らかとなった。亀﨑(2016) は、保育相談支援における葛藤事例に関する半構造化イ ンタビューから、子どもの発達的課題を保護者と共有す るための一つとして、連携を可能とする保護者との関係 構築を挙げている。若松・田坂(2018)によると、保育 者が家庭との連携の中で最も重視していることは、関わ り方であった。その中の一つとして、信頼関係を築くた めの関わりについて報告されている。別府ら(2011)の 質問紙調査からは、保育者は保護者との関係作りに力を 注ぎ、時間をかけて信頼関係を築きながら支援に努めて いる実情が明らかとなった。 (2)保護者とのコミュニケーション  斎藤ら(2008)は、「気になる」子どもの保護者との 関わりで工夫したこと・うまくいったことを自由記述形 式で保育者に回答を求め、記述内容をカテゴリーに分け た。その結果、最も回答の多かった<保護者への伝え 方>では、「子どもの良い面から伝える」、「伝える手段 の工夫」や「具体的に伝える」などが挙げられた。川池 (2009)は、主任保育者を対象に保護者への適切な配慮 や関わり方についてアンケートを実施し、回答を得た。 その結果、保育者から保護者へ伝える際の配慮として、 話し方に配慮する、細かな気配りをしながら伝える、希 望をもてる話をするなどが挙げられた。本郷ら(2005) は、保育者に保護者支援チェックリストを実施した。そ の結果、保育者の保護者とのコミュニケーションの配 慮・心がけとしては、保護者を責めない、肯定的なこと も交えて話をする、保護者が理解しやすいように話をす る、保護者が希望を持てるように接する、保護者の思い を受け止める、の順に得点が高かった。本郷ら(2004) は、「気になる」子どもの保護者支援の現状を把握する ために、質問紙調査を行った。その結果、「気になる」 子どもの保護者とのコミュニケーションの際の心がけの 項目として、<保護者が理解しやすいように話す><否 定的なことだけでなく、肯定的なことも交えて話す>< 保護者の話をたくさん聞く>といった項目の評定値が高 いことが明らかとなった。一方、保護者が直接問題と向 かい合うような働きかけは多くなかった。 (3)専門機関へつなぐ関わり  今村ら(2017)の質的記述的研究によると、保育者 は、発達の気になる子どもの保護者への関わり方の一つ

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として、「専門機関への受診・相談をすすめる」ように も関わっていた。大塚・巽(2016)は、保育士 12 名に 半構造化面接を実施し、インタビューから5つのコアカ テゴリを形成した。発達相談などの専門的支援について 保護者の気持ちを汲みながら推奨し、確実につなげよう と試みていることを表す「保護者の気持ちに配慮した専 門的支援活用のための支援」がコアカテゴリの一つとし て挙げられた。 <考察>  「気になる子ども」への直接的な関わりは保育者や保 護者によってなされる。「気になる子ども」の支援を考 える時、その保護者に対する支援についても合わせて考 える必要がある。保育者は、根気強く時間をかけながら 保護者との信頼関係を築いている。信頼関係を築くため に、保護者への傾聴、受容、共感的理解が大切にされて いた。また、保護者と話す時には誠実さ・丁寧さを心掛 けている。そして、具体的な子どもの様子をもとに保護 者が理解しやすい言葉で伝えていた。  しかし、保護者と保育者の間の信頼関係の構築は容易 なものではない。木曽(2011)は、“ 子どものため ” の 思いが保育士の基盤にあるため、それが保護者とのトラ ブルの一因となり、関係の崩壊につながることを指摘し ている。また、木曽(2016)は、未診断の発達障害の傾 向がある子どもの保護者へ子どもの課題を伝えることが 心理的負担になることを示唆している。保護者への伝え 方には困難性を伴うが、保護者に時間をかけ丁寧に伝え ることで、子どもの発達への気づきや理解、関わり方を 支援することができ、保護者が子どもの姿を前向きにと らえるようになっていくと考えられる。そのため、保護 者とのより良いコミュニケーションは、保育者が保護者 と連携して子どもの育ちを支えるためには大切である。 また、保育者は必要に応じて専門機関へつなぐ関わりも していた。厚生労働省(2018)・保育所保育指針解説に も、長期の観察によって、疾病や障害の疑いが生じた時 には、保護者に伝えるとともに、嘱託医や専門機関と連 携しつつ、対応について話し合い、それを支援していく ことが必要であると明記されている。保育者は、同年齢 の集団の中で子どもの発達を見ていることから、「気に なる子ども」の早期発見・早期療育へとつなぐ重要な役 割を担っていると言える。「気になる子ども」を専門機 関へつなげ、そして連携を図ることは保護者支援として 重要であると保育者は考えていることがうかがえる。 5.保育体制の整備  <結果>  保育体制の整備に分類された論文を概観したところ、 (1)保育者の相談、(2)支援会議、研修、巡回相談、 専門機関との連携の実態、(3)支援体制の構築、(4) 保育者の「気になる子ども」の理解や対応への効果、 (5)「気になる子ども」への効果、(6)保育者の効力 感への効果といった内容にさらに分けることができた。 以下に、その詳細を述べる。 (1)保育者の相談  増田・石坂(2013)は、保育所の保育者を対象に、 「気になる子」への意識及びその対応に関する質問紙調 査を実施した。その結果、「気になる子」への対応の戸 惑いを解消するために「相談頻度」を最も重視してお り、「いつでも」相談したいと考えていることが明らか となった。この水準は、頻度が高いほどニーズが高かっ たことを意味していた。「気になる子」をめぐる保育者 の戸惑いの解消のためには、どのような相手にどのよう なことを相談したいかよりも、どのような相手であれ相 談できる機会が多いこと、それもできるなら毎日でも 機会が設けられていることが最重要であった。橋本ら (2015)の質問紙調査によると、「気になる子ども」への 気づいた後の園内における対応としては、主任保育士 に相談 67.9%、同僚に相談 64.1%、園長(所長)に相談 60.9%であった。そのため、相談体制が整っていること が示された。また、主任保育士への相談と勤務年数の比 較では有意差が見られ、経験年数が 13 年以上の保育士 に相談する割合が高かった。荒井ら(2012)による質問 紙調査の結果、「気になる子」への対応の実態について は、「同僚・先輩に相談している」が 91.8%と最も高い 割合を示した。 (2) 支援会議、研修、巡回相談、専門機関との連携の 実態  原口ら(2013)は、保育所における特別な配慮を要 する子どもの支援の実態に関する質問紙調査を実施し た。その結果、特別な配慮を要する子どもの支援に関し て話し合う会議は、公立の 94.0%、私立の 85.0%におい て実施されていた。定期的に実施しているのは公立で約 5割、私立で約6割であり、その8~9割が1時間以内 で、月1回以上の実施であった。特別な配慮を要する子 どもへの支援に関する研修は約4割の保育所でしか実 施されていなかったが、所外での研修への参加は9割 以上の保育所で実施されていた。所内研修の実施の平

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均回数は、公立の保育所で 4.7 回、私立で 3.3 回であっ た。所外研修の平均回数は、公立で 3.2 回、私立で 2.8 回であった。特別な配慮を要する子どもへの巡回相談に 関しては、公立保育所の9割以上、私立保育所の6割程 度が実施していた。約5~6割の保育所で1年間に1~ 3回程度の実施であった。特別な配慮を要する子どもへ の支援に関する他機関との連携については、公立保育所 の 78.3%、私立保育所の 66.1%が連携していた。別府ら (2011)の質問紙調査からは、「気になる」子どもの対応 として、職員間で連携をとって支援にあたっていること が認められた。また、専門機関の活用や研修の機会を利 用していることが示された。小谷・山下(2008)の質問 紙調査からは、保育者が「気になる子ども」に対応する 際に外部専門機関との連携を図っている、あるいは図ろ うとしているという結果が示された。津田・木村(2014) の質問紙調査では、「気になる子ども」について外部機 関との連携があると回答した保育士が 74.0%になるとい う結果を得た。連携機関は、「保健センター」が最も多 く、次いで「療育センター」、「発達障害支援センター」 であった。 (3)支援体制の構築  水内(2008)は、園内委員会を立ち上げ、全園体制の 下、気になる幼児の支援を行った。定期的な園内委員会 時には、短期目標に基づいて記録をとる「観察記録シー ト」を担任保育者を含めたすべての教職員が持ち寄り、 支援の成果と今後の方向性を検討する際の資料とした。 その結果、園の教職員全体で対象児を支援していこうと する意識を高めることができた。また、実際に支援方法 の共有化ができたことで自信を持って活動に取り組む子 どもの姿が増えてきた。芦澤(2010)による発達臨床の 専門家がかかわった保育カンファレンスの結果、参加者 らが実践を協働で表象し語り合う過程で、問題がとらえ 直され、新たな保育の取り組みが生まれることが分かっ た。専門家の意見は、問題のとらえ方を転換し、子ども の理解と保育の省察を深めた。さらに、保育者の抱える 困難が共有されることで、保育者は心理的に安定し、保 育実践に良い影響がもたらされた。また、保育エピソー ドを使用したカンファレンスが保育者の協働を促す効果 のあることが認められた。熊上・石隈(2016)は、巡回 相談は、コンサルタントから受けた援助経験がケースに 関する保育士の行動を高めることを通して、保育所の チーム援助の活性化につながることを示した。吉川ら (2009)は、保育カウンセラーによるコンサルテーショ ンを実施した。その結果、継続的なカンファレンスによ り、経過観察が必要な子どもの発達状態を定期的に把握 し、その中でさらなる問題点や課題、対応の修正、子ど もの変化に対する理解を園全体で共有することが可能に なったことが示された。 (4) 保育者の「気になる子ども」の理解や対応への効 果  鑑・千葉(2006)は、保育士を対象とした事例検討会 においてソーシャルワーカーによるスーパービジョンを 実施した。その結果、保育士は子どもの行動の背景にあ るものを観察し、子どもや保護者の気持ちを肯定的に理 解するようになった。今野ら(2014)は、気になる子ど もへの対応に関する継続型研修の実践を行い、実践に関 するアンケートの分析を行った。アンケート分析の結果 から、研修会を通じて、子どもの理解が広がったり深 まったりしており、対応のヒントも得られていることが うかがえた。丹葉ら(2012)は、「気になる子ども」を 担当する保育士に対して、助言や指導を行う間接的支援 を実施した。その結果、保育士は子ども側の視点から気 になる行動を捉え、関わり方にも変化が見られた。小野 里ら(2015)は、コンサルテーションによる対象児及 び環境に関する保育者の働きかけの変容過程を検討し た。その結果、保育者は、困り感を抱えながらも、環境 調整、声かけ、指導の一貫性において自身の対応を変化 させることができた。阿部(2013b)は、巡回相談によ る保育士に対するコンサルテーションを実施した。巡回 相談後のアンケート結果から、保育士の気になる子ども の理解と対応方法への改善がなされていると感じている 保育所(園)長らが9割以上もいることが明らかとなっ た。 (5)「気になる子ども」への効果  阿部(2015)は、保育士による問題解決志向性コンサ ルテーション(PANPS コンサルテーション)による効 果を検討した。その結果、対象児に適切な行動が獲得さ れるとともに、問題行動を減少させることができた。藤 原ら(2010)は、「気になる子」を担任する幼稚園教諭 (コンサルティ)に対する集団コンサルテーションプロ グラムを作成し実施した。その結果、対象児の目標行動 に改善が見られた。本郷ら(2007)は、「子どもへの支 援」「クラス集団への支援」「物的環境の調整」「保育体 制の整備」「保護者への支援」という支援の五つの柱を 立て、それに対応するチェックリストに記入してもらう ことを中心に保育者への支援を進めた。「気になる」子 どもの行動について、因子では<ルール違反><状況へ の順応性の低さ>を中心に、「気になる」傾向が減少す るという結果が得られた。守(2012)は、保育中「気に

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なる子」に対し、筆者(学年主任)と担任教師が特徴的 な姿をフィールドノーツに書き留めて保育カンファレン スに活用し、支援策を講じた。その結果、対象児の問題 行動は減少し、自由遊び場面において他児から距離をと られることがあったものの、集団での活動もスムーズに 参加できるようになった。 (6)保育者の効力感への効果  田中・渡辺(2017)は、保育士や幼稚園教諭等の保育 者を対象とする研修プログラムを実施した。参加者に対 するアンケート調査の結果によると、研修後の方が支援 を必要とする子どもやその保護者に対する支援の困難感 が軽減される傾向が示された。藤原ら(2010)は、「気 になる子」を担任する幼稚園教諭(コンサルティ)に対 する集団コンサルテーションプログラムを作成し実施し た。その結果、コンサルティが子どもに対応する際に感 じるストレスが軽減し、保育者としての効力感が向上し た。日光(2018)は、定期的な巡回相談であるキンダー カウンセラー事業による支援を継続的に受けてきたこと で、ある程度の効力感を保ちながら気になる子どもの保 育を保育者が行えるようになったことを明らかにした。 阿部(2013a)は、保育士による協議主体型の問題解決 志向性コンサルテーション(PANPS コンサルテーショ ン)システムを開発し実施した。コンサルテーションに 参加した保育士の気になる子どもの保育効力感が、実践 後に有意に向上する結果を得た。 <考察>  「気になる子ども」への対応について、多くの保育者 は先輩や同僚に相談していた。必要な時に先輩や同僚に 相談できる体制が整っていることが示されたと言えるだ ろう。対話的な雰囲気が深まることで安心感が持て、保 育者の働きやすさにつながっていることが考えられる。 そして、先輩や同僚に相談することで経験や知識を共有 できる機会にもなっているだろう。  多くの保育現場で巡回相談や研修、専門機関との連携 が実施され、「気になる子ども」を支援するための保育 体制の整備も図られていた。これは、巡回相談や研修、 専門機関との連携により専門性と組織力を向上させてい くことが重要であると現場では捉えられているからであ ろう。このような保育体制の構築は、保育者同士の話し 合いの場を形成し、「気になる子ども」を職員全体で支 援していこうとする姿勢や協働を生み、支援チームを活 性化させていた。保育者にとっては、「気になる子ども」 の理解や具体的な支援方法を学ぶよい機会となってお り、「気になる子ども」への対応に変化をもたらすこと ができた。そして、「気になる子ども」への適切な対応 を保育者が学び実践することで、「気になる子ども」の 問題行動や不適応の改善へとつなげることができた。そ のような過程を経ることで、保育者の「気になる子ど も」への対応の困難さや戸惑いが軽減されていき、保育 者の効力感を高めることができたのである。しかし、白 井ら(2009)は巡回相談における回数不足や定期的・継 続的な実施の難しさ、真鍋(2010)は専門家への過度の 依存体質を強めてしまう可能性を指摘している。 Ⅳ 総括と今後の課題  「気になる子ども」の保育者の支援に関する先行研究 を概観し、①「気になる子ども」への支援、②物的環境 の調整、③クラス集団への支援、④保護者への支援、⑤ 保育体制の整備の5つに分類した。この5つの観点から 「気になる子ども」への保育者の対応の方策を探ること を目的とした。  「気になる子ども」への支援として、子どもを正しく 理解し、情緒の安定を図りながら関わり方を調整するな ど工夫しながら対応している保育者が多かった。また、 遊びの中で適切な支援をすることで発達を促すことも行 われていた。実際の対応としては、個に対する「声か け」や「注意・指導」が多く取られていた。なお、荒井 ら(2012)の「気になる子」への対応の実態調査による と、「自分の経験で対応している」と回答した保育者は 62.9%にもなるという。多くの保育者は自身の経験と勘 による対応に留まっている可能性が高いことが考えられ る。そのため、有効性が実証されている技法を取り入れ た介入等の対応を保育者が行っている報告はほとんどな かった。  「気になる子ども」の間接的な支援としては物的環境 の調整が行われていた。安定して活動できる環境を整え ることで「気になる子ども」の問題行動を軽減させるこ とが示唆されている。保育者にとって自らの意図を即座 に反映できることから、物的環境に関する多くの研究が 蓄積されてきたと考えられる。  「気になる子ども」を含めたクラス集団の保育の展開 に際して、クラス集団への支援の重要性を保育者は認識 しながら保育していた。一人一人を丁寧にとらえながら 集団の関係性を育み、集団の中で共に育ち合う保育が行 われていた。しかし、集団活動を保証する対応が優先さ れたり(下野・稲富、2007)、クラスや集団をまとめよ うとしたりする集団重視の傾向が強い保育者もいる。ま た、保育者の対応によっては否定的な仲間関係を形成し てしまうこともある。「気になる子ども」を含めたクラ

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ス(集団)の保育をどのように展開していけばよいのか が課題と言えるだろう。  保育者は、子どもの保育だけでなく、保護者の支援者 としての重要な役割を担うようになってきた。「気にな る子ども」の支援を考える時、保育者と保護者との連携 は欠かせない。そのため、信頼関係を築くことがとても 重要である。そこで、保護者対応の基本として「傾聴」 「受容」「共感的理解」が大切にされてきた。また、伝え 方には十分な配慮がなされ、必要に応じて専門機関へつ なぐ関わりもしていた。しかし、子どもの発達の課題、 家庭での養育の重要性、専門機関を勧めたい時の伝え方 は難しく、保護者への対応や支援に困難感を抱く保育者 についての報告もあるなど課題が残っている。  「気になる子ども」への対応には、包括的な支援の必 要性が示唆されている。包括的な支援を行うために、巡 回相談や研修、専門機関との連携を図るための保育体制 の整備が進められてきている。連携を図ることは、保 育者の「気になる子ども」に対する支援の困難感を軽減 し、保育者が専門的な知識や技術などを習得すること で、より具体的な支援方法を学ぶ機会となっている。そ して、「気になる子ども」への保育者による適切な対応 は、「気になる子ども」の問題行動や不適応の改善につ ながっている。しかし、回数不足や定期的・継続的な実 施の難しさ、保育者の専門家への依存などが課題として 挙げられている。  上記を踏まえ、「気になる子ども」への保育者の対応 について考察する。本郷ら(2007)は、保育環境の整備 は、保育者自身の考えに基づいてすぐに取り組むことが 可能であり、環境整備の効果が比較的短期間であらわれ やすく、その効果を捉えやすいという特徴があると述べ ている。また、本郷ら(2003)は、「気になる」子ども への保育者の対応として、周りの環境を整備するような 働きかけが多く行われていることを示唆している。物的 環境の調整は、「気になる子ども」の保育においては、 真っ先に取り組まれていると考えられる。しかし、それ は、「気になる」子どもに対する直接的働きかけの難し さを反映しているとも本郷ら(2003)は述べている。実 際、「気になる子ども」への保育者の対応は「注意・指 導」が多くなっている。また、多くの保育者は自身の経 験と勘による対応に留まっている可能性が考えられる。 気分の安定を図ったり褒めたりしながら、肯定的・具体 的でわかりやすい言葉かけを心掛けて保育者は対応して いても、全ての「気になる子ども」の問題行動や不適応 の改善にはつながっていない可能性がある。そのため、 保育者が「気になる子ども」に苦慮しているという報告 が依然なされているのだろう。有効性が実証されている 技法を用いるなどの介入等による保育者の効果的な対応 が明らかになっていないことが要因の一つとなっている ことが考えられる。  「気になる子ども」への対応がうまくいかなければ、 「気になる子ども」を取り巻くクラス集団への支援も難 しくなるだろう。なぜなら、幼児期における仲間関係を 支える役割を担うのは保育者である。全ての子どもが自 発的に他児と関わりたいと思えるように保育者は意図的 に働きかけることが重要となる。しかし、保育者の持 つ「気になる子ども」への否定的な感情や不適切な対応 を他児は的確に捉えてしまう。保育者の関わり方によっ ては、他児の行動へのマイナスの影響や「気になる子ど も」に対するネガティブな認知や評価につながってしま う。こうした影響に基づく、否定的な仲間関係が蓄積さ れることで、「気になる子ども」がクラスで他児に受け 入れられなくなっていく可能性が考えられる。  また、「気になる子ども」への対応がうまくいかない と保護者支援にもつながらない。厚生労働省(2018)・ 保育所保育指針解説によると、保育士の重要な専門性の 一つとして保護者に対する保育に関する指導があり、養 育(保育)に関する相談、助言、行動見本の提示その他 の援助業務を行うとされている。「気になる子ども」へ の対応に苦慮している保育者が助言や行動見本の提示を 保護者に行うことはできない。また、橋本ら(2015)に よると、「気になる子ども」の保護者に対して保育士の 気づきを伝えられなかった理由の一つに「保育士自身の 知識不足のため」が挙げられている。保護者支援を行う ためには、「気になる子ども」の知識や技術に関する専 門性が保育者に必要とされていると言えるだろう。  このような現状のため、巡回相談や研修、専門機関と の連携が図れるような保育体制の整備が進められてい る。巡回相談や研修、専門機関との連携により、保育者 が専門的な知識や技術などを習得でき、より具体的な支 援方法を学ぶ機会となっている。連携は保育者の保育技 術および援助技術という専門性の向上に有効であること が示唆されている。例えば、大西ら(2016)は、行動療 法をベースとしたティーチャー・トレーニング・プロ グラム(以下、TT)を保育者に実施している。その結 果、保育者の関わり方の変化が対象児との関係構築や回 復を促し、問題の困難さを緩和させ、保育者の自己効力 感が増大する過程が明らかとなった。また、肥後・今村 (2018)によれば、ペアレント・トレーニング(以下、 PT)のインストラクターを養成するためのプログラム を教員・保健師・保育士等に実施したところ、プログラ ム参加者が行動分析の知識・技術に関する内容を十分に 習得できたことを示唆している。さらに、今後の活動に

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