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国際標準になった認定情報技術者(CITP):4.CITPによる地域復興アイデアソン -社会価値創造への挑戦-

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Academic year: 2021

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(1)小特集. Special Feature. [国際標準になった認定情報技術者(CITP)]. 基 応 専 般. 4 CITP による地域復興アイデアソン. ―社会価値創造への挑戦―. 赤坂 亮 日本アイ・ビー・エム(株) 土屋俊樹 (株)ハイマックス 社会価値創造への挑戦.  CITP が実際に現地を訪れ,被災地が現在どう なっているか,現地はどのように考えているか,ど.  企業の枠を越えて新たな価値を創造するために,. のような問題があるのかを共感し,理解することを. CITP コミュニティ内に社会価値創造分科会を設け,. 重要視してプロジェクトを開始した.. 企業数 10 社・参加者 15 名にて 2016 年 4 月より活 動を開始している.. 共感を求めて/石巻視察.  本分科会では,実践可能なプラクティスを調査・.  2017 年 3 月,CITP 関係者有志数名により宮城. 研究し,成果を共有・実践することを目標としてい. 県石巻市を訪れた.有名な日和山公園や震災遺構,. る.個人認証,企業認定,ユーザ,ベンダ企業を. 各地の復興まちづくり情報交流館等を巡り,石巻専. 問わず,CITP から広く参加者を募って活動をして. 修大学の山崎ゼミでは震災復興ワークショップに参. いる.. 加した.震災から 6 年余りが経過していたが,まだ.  社会価値創造分科会では,単なる提言にとどまら. 復興途上であることを強く意識した.. ず,CITP 自らが実践的に問題解決に取り組むため.  現地 NPO の方の話では,IT による復興支援の. に新たなプロジェクトの企画・実践に挑戦している.. 話はよくあるが,結局本社のある東京の会社が儲か. 社会価値の創造として防災,震災復興,障害者支援 やビジネス効率の向上など,複数のテーマを設定し て活動を行っているが,昨年(2017 年)は地域復. 共感. 興のためのアイデアソンを企画した.  アイデアソンの場所は宮城県石巻市とした.東日 本大震災からすでに 7 年が経過しているが,現地で は被災者のメンタルヘルスの問題,孤独死,不登校. テスト. 問題定義. 出現率の増加など目に見えない問題が悪化している. アイデアソンの実行に際しては,デザイン思考の考 え方を参考とした.. プロトタイプ.  シリコンバレー発祥のデザイン思考では革新的な イノベーションは共感から始まるとされる(図 -1 参照) . 928. 図 -1 デザイン思考のサイクル. 情報処理 Vol.59 No.10 Oct. 2018 小特集 国際標準になった認定情報技術者(CITP). 創造.

(2) る仕組みであったり,継続しない 1 回だけの取り組. クを通じて,ものの考え方や視野を広げるきっかけ. みであったりして現地のためになっていないとおっ. になると考えた.そしてアイデアソンから創出され. しゃっていた.また山崎ゼミのワークショップを通. たアイディアがユニークなものであれば実際の地域. じて,直接的な支援も大事だが関心を持ち続けるこ. 貢献サービスを創出できる可能性もあり得ると考え. とがより大切である,ということを学んだ.. た.CITP にとっては,被災地での社会貢献はもち.  現地に赴くことによって,「IT による復興支援」. ろん,現地でのフィールドワーク的な取り組みを通. というカッコイイ耳触りの良い取り組みではなく,. じて,CITP 自身の活動の場を拡げることに繋がる. まずは大仰に構えずに小さなことでもよいので持続. のではないかと考えた.. して取り組むことが大切である,という気付きを得 た(図 -2 参照) .. プロジェクト始動. 模索/協力者からの支援  SIG にて検討を開始したが,このような取り組み に長けたメンバがおらず手探り状態で進めた.SIG.  ある新聞記事に地域活性化に向けてシビックテッ. メンバ全員,多忙な本業に追われる中,メール等で. クの取り組みが掲載されていた.シビックテックと. コミュニケートしながら少しずつ実施内容を固めて. は, 「市民(シビック)による IT(テック)を使っ. いった.. た地域の課題解決や生活の利便性向上への取り組 み」 である. この取り組み自体が面白いと感じた我々. ■大学への協力依頼 ■. は社会価値創造分科会メンバを中心にシビックテッ.  まずは石巻専修大学理工学部の亀山充隆教授に. ク専門部会(シビックテック SIG)を立ち上げ検討. CITP による取り組みと今回のアイデアソンの趣旨. を開始した.. を説明し,協力していただけないか相談した.快く.  検討の結果,石巻専修大学にて大学生を相手に地. ご賛同いただき実施会場の貸与と学生の募集に協力. 域のオープンデータを活用した地域復興アイデアソ. していただけることになった.. ンの実施を企画した.社会価値創造分科会の目的に 照らすと,学生にとってはアイデアソンを通じて改. ■オープンデータの活用 ■. めて地域社会の課題を見つめ直すきっかけとなり,.  オープンデータ活用を推進している石巻市 ICT. また, 現役の IT 技術者(社会人)とのグループワー. 推進室に助言を請うべく相談した.こちらでも賛同 していただき,石巻専修大学経営学部の益満環教授 がオープンデータの知見があるとの助言をいただい た.同教授にも趣旨を説明し学生の募集に協力して いただいた.. ■アイディア出しのフレームワーク ■.  実際のアイデアソンをどのように進めたらよいか 考えあぐねていたところ,情報処理学会の旭寛治氏 より慶應大学 SDM 研究生の江幡彩氏をご紹介いた だいた.同氏はデータの組合せパターンからアイ 図 -2 情報館にて現地 NPO の方との会話. ディアを創出するフレームワークの研究をされてい. 4 CITP による地域復興アイデアソン 情報処理 Vol.59 No.10 Oct. 2018. 929.

(3) 小特集. Special Feature. る.SIG メンバが日吉キャンパスにて取り組みを説. きるようになった.そして CITP 自身も普段あまり. 明し,実施結果をフィードバックすることを前提に,. ふれあう機会のない若い学生たちに交じって議論す. そのフレームワークの使用許諾をいただいた.. ることで,今までにない笑顔が見られた.実はこれ が最大の収穫かもしれない(図 -4,図 -5)  最後に各チームから,創出したアイディアについ. ■顧客価値連鎖分析 ■. て発表があった.発表内容は下記の通りである..  以上の結果をデザイン思考の顧客価値連鎖分析. • A チーム:「石巻ステキ!サイクル」(観光業に. (Customer Value Chain Analysis)を用いて図式化. よる地域振興). すると,今回かかわった各ステークホルダとのやり とりにおいて価値の交換(「連鎖」ではなく「交換」. • B チーム:「石巻どうでがす?」(観光案内). ではあるが)が成立している.誰かの一方的な価値. • C チーム:「学生生活サポートシステム」(大学ま でのバス運行状況を見る). 提供ではないこと,つまりはお互いに価値を交換し ている持続可能な利害関係が成り立っている,とい. • D チーム:「若い血が欲しい」(献血促進). うことが分かる(図 -3 参照).. 時間が足りないにもかかわらず,全チーム発表まで たどり着けた(図 -6).. 実行/アイデアソン実施 ■アイデアソン実施 ■. ■評価 ■.  2017 年 10 月 27 日,石巻専修大学石巻キャンパ.  実際にアイデアソンを見学していただいた亀山教. ス内教室にて CITP シンポジウム兼シビックテック. 授より「大変有意義な取り組みである.ぜひ継続し. 「地域復興アイデアソン」を実施した.当日は,全. てほしい」とのコメントをいただいた.また参加し. 国から CITP11 名,オブザーバ 3 名,大学生 17 名. た大学生全員にアンケートを実施した結果,参加者. が参加した.また石巻 ICT 推進室から 1 名,地元. のほぼ 9 割が有用との回答を得た.. の石巻日日新聞の記者の方も取 材に来られた.  CITP に よ る 講 演 の あ と,. デザイン思考/CVCA(顧客価値連鎖分析). チームに分かれてアイデアソン を実施した.石巻市オープン. 支援. ・シビックテックの主催 ・企業IT技術者の参画 ・IT社会価値の啓蒙. データを元に江幡氏提供フレー ムワークを用いて新しい地域貢 献サービスのアイディア出し を行う.そして CITP2 名と大 学生 3 ∼ 4 名でチームを作り, チーム内でのディスカッション を経て,そのアイディアを最後. ・オープンD提供 ・シンポジウム広報 ・職員派遣. 石巻市 ICT推進室. 930. CVCA (Customer Value Chain Analysis). 図 -3 アイデアソンにおける CVCS. 情報処理 Vol.59 No.10 Oct. 2018 小特集 国際標準になった認定情報技術者(CITP). 情報処理学会. IT技術者育成. ・地域振興への貢献 ・学生との交流 ・CITP知名度の向上 ・活動領域拡大への試金石. 学会 発表. ・フレームワーク提供. ・学生への教育,啓蒙 ・地域課題への関心向上. CITP 紹介. 慶應大学SDM 江幡氏. ・実施結果フィードバック. 石巻専修大学 亀山教授,益満教授.  はじめは緊張気味であった学 に緊張もほぐれ積極的に会話で. 支援. シビックテック (アイデアソン). ・オープンデータ  認知度向上 ・ICT推進 ・会場提供 ・学生募集支援. に発表する,という進行である. 生たちも議論が進むにつれ徐々. CITPメンバ. 所属企業.

(4)  主な意見としては下記の通りであった.. はとにかく実践してみた,というかたちになってし. • 地域住民の観点ならではの課題を浮き出すことが. まった.しかし CITP 自身がそのコミュニティを. できる,良い機会だと思った. • 技術,知識があっても活用(活かし方)を考える. 通じて自ら企画・実行し,結果的にそれなりの手ご たえを掴んだことは収穫であった.デザイン思考的. 作業について市民のアイディアを聞くというのは. に考えるならば,稚拙でもまずは実行してみること,. 面白いと思った.. そして取り組みのハードルを下げ,CITP 自身が継. • CITP にせよ AI にせよ,まだまだ知らない未知. 続してかかわれるサイクルを作ることが重要だとい. の領域を非常に多く見ることができたので,今後. える.そのように考えると,うまく実施できるよう. の進路を考える際に参考にしたい.. になるのはもう少し先でよいのかもしれない.. • これからの就職に対して職業研究や目標を考える 上で非常に役に立つ話だったと思います. • 多くの人とかかわることが楽しく有意義だった. また行うときは参加したいと思う.. 展望/今後の活動に向けて.  今年度も石巻でのアイデアソンに向けて準備が始 まっている.今回の実施内容を振り返り,よりブラッ シュアップして臨みたい.  またこの取り組み自体は ICT 教育の普及という 観点でも有意義と考える.よりブラッシュアップで きた段階で他大学への横展開も考えていきたい..  SIG メンバが本業で多忙を極める中,十分な準備 のもとに実施したというよりは,準備不足でもまず. ※各団体,個人名は敬称略とさせていただきました. 参考文献 1)CITP アニュアルレポート 2018 年度版, https://www.ipsj.or.jp/event/sj/sj2018/download/citp/ Session2.pdf (2018 年 7 月 9 日受付) 赤坂 亮(正会員) [email protected] 日本 IBM でヘルスケア・ライフサイエンス事業を中心に医療ビッグ データ分析による価値共創や,サービス学における戦略立案支援技術 の開発に取り組んでいる. 土屋俊樹 [email protected] (株)ハイマックスにて産業・流通系のシステム開発に,主にプロ マネとして従事.また,顧客情報システム部向け IT 関連講座の企画, および講師を担当.. 図 -4 アイデアソン会場の雰囲気. 図 -5 笑顔の参加メンバ. 図 -6 チーム発表の様子. 4 CITP による地域復興アイデアソン 情報処理 Vol.59 No.10 Oct. 2018. 931.

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