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イニシアティブゲーム体験が参加学生に及ぼす心理的影響: 沖縄地域学リポジトリ

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Academic year: 2021

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Title

イニシアティブゲーム体験が参加学生に及ぼす心理的影

Author(s)

張本, 文昭

Citation

琉球大学教育学部紀要 = COLLEGE OF EDUCATION

UNIVERSITY OF THE RYUKYUS(56): 219-223

Issue Date

2000-03

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12001/10076

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イニシアティブゲーム体験が参加学生に及ぼす心理的影響

張本文昭*

ThePsychologicallnfluencesofInitiativeGamesinUniversityStudents

FumiakiHARIMOTO Abstract ThisstudyexaminedthepsychologicalinfluencesoflnitiativeGames・Universitystudentswho participatedinlnitiativeGamesinCampclasses(N=69)answeredtheevaluationscales,apartof FriendshipStrategiesScaleandGroupAtmosphereScaletwotimes,beforeandaftertheGamesThey alsoassessedSe1f-EvaluationSca]eafterthat・Tbefollowmgresultswereobtained:1)Theatmosphere ofgroupschangedforthebetter,2)Studentshadmanychancesofdiscoveringthemselvesthroughthe Games. 1.緒言 入され‘】7)8),)、さらにはスポーツにおけるト レーニングや、スポーッコーチ養成プログラムと して活用されていることが報告されている'0)。ま た学校における学生研修や、企業における社員研 修として、民間野外教育団体がプログラムを提供 している。さらにアメリカでは精神科における治 療や非行少年に対するカウンセリングの一貫とし て実施されている'')。このように野外教育の分野 で始まり、ゲームの特性を利用して近年様々な分 野で普及されつつあるイニシアティブゲームであ

るが、参加者に及ぼす効果を実証的に検証した例

は少なく、日本においては井村ら'0)の報告がある のみである。井村らはJFAQapanFootball Association).S級コーチ養成コースにおいてA SEプログラムを実施し、生理的、心理的、社会 的にもプログラムが有効であったことを明らかに している。 一方、近年の青年期における交友関係について は外面的、消極的なつきあい方が特徴とされてい るように聰)社会性の不足を指摘する声は多い。先 も述べたようにイニシアティブゲームではその課 題を解決するなかで他者との関わりについて考え、 イニシアティブゲーム(InitiativeGames) は、1人では解決できないような肉体的・精神的 課題に対し、メンバー1人1人がそれぞれの能 力を出しあい、協力しあいながらグループで課題 を解決していく活動である')。ASE(Action SocializationExperience)、プロジェクト・アド ベンチャー・プログラム(ProjectAdventure

Program)、アイスブレイキングゲーム(Ice

BreakingGames)などの名称も知られている

が、おおむね目的や手法は共通していると捉える ことができる2)。これらのゲームの課題解決の過 程においては、自分の考えや意見を表現し、他者 の考えや意見を受け入れ、それに従って試行錯誤 することが求めらる。その結果、信頼感や協力感、 責任感や問題解決能力等を身に付け、自己や他者 関係について見直すきっかけとなる。また継続的 に実施することで体力面の強化も可能である。こ れらのゲームは野外教育3)のプログラムとして 以前から知られているが‘)5)、近年学校での体験 学習や総合学習の1手法として体育科において導 *琉球大学非常勤講師 -219-

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琉球大学教育学部紀饗第56集 また自ら動くことが要求される。ゲームを通して、 グループの共同体意識が高まり、、人を思いやる 気持ちや、心を開いて相手を受け入れ、互いに支 えあうようになることが期待でき'3)、参加者に対 して心理的に好ましい影響が予想される。 そこで本研究においては、本学共通教育健康運 動系科目「キャンプ」においてイニシアティブゲー ムを実施し、受講学生に及ぼす心理的影響を明ら かにすることを目的とする。 あい方について「非常にあてはまる」から「全く あてはまらない」までの5段階で評定するもので る。各項目とも、1~5点の範囲で得点が分布す る。因子の尺度得点については、「友達とのつき あいの深さ」が8~40点であり、得点が少ないほ どつきあいが深いことを示す。「相手との心理的 接近の仕方」については4~20点であり、得点が 少ないほど心理的に接近しようとすることを示す。 2.3.2グループ雰囲気調査 井村ら'01が用いた班雰囲気調査をそのまま採用 した。井村らはイニシアティブゲーム実施前後に おける班の雰囲気をSD法により調査しているが、 これは班の雰囲気を表す10項目の形容詞対の用語 を8段階で評定するものである。各項目とも、l ~8点の範囲で得点が分布し、得点が少ないほど 好ましい雰囲気であることを示す。 2.3.3イニシアティブゲームふりかえり調査 井村ら'0)が用いたASEふりかえり票を参考に調 査を作成した。これはゲームの実施後に班内にお ける集団技能評価(自分の意見や考えを述べるこ とができたか、他のメンバーの意見や考えを聞く ことができたか、自分の意見や考えが受け入れら れたか)に関するものと、自己の諸能力の評価 (体力、コニュニケーション能力、リーダーシッ プ能力、創造的な思考能力、意思の伝達能力)を 6段階で評定するものである。各項目とも、1~ 6点の範囲で得点が分布し、得点が高いほど高く 自己評価していることを示す。 さらに、自己及び他者への気づきについて自由 記述形式により用紙に記入させ、質的な資料とし て使用することとした。 2.3.4調査及び手続き 友達づきあい検査をイニシアティブゲーム実施

iii(初回授業時の始め:以下PREと略す)と、

イニシアティブゲーム実施後(2回目授業時の終

わり:以下POSTと略す)の計2回実施した。ま

たグループ雰囲気調査をPRE、POSTの計2回実 施した。グループ雰囲気調査は後期受講学生のみ を対象とした。またイニシアティブゲームふりか えり調査をPOSTにおいて実施した。イニシアティ ブゲームふりかえり調査も後期受講学生のみを対 象とした。

2.方法

2.1対象 対象は、ゲームを行った本学共通教育健康運動

系科目1999年度前期及び後期「キャンプ」(以下

「キャンプ」と略す)受講学生(聴講生を含む)

69名から成る。前期受講者は36名、後期受講者は

33名であった。 2.2ゲームの概要

「キャンプ」の、初回と2回目の授業において

イニシアティブゲームを実施した。受講生をlグ ループ7~9名からなる4グループに編成し、本学 陸上競技場を使用し、90分の授業時間の内、約70 分にわたって2~4つのゲームを実施した。実施

したゲームは「日本列島」「目隠しラインナップ」

「エレクトリックフェンス」「お告げ」「人間知恵

の輪」「バックフライング」「魔法の鏡」「魔法の

絨毯」「デュオ・シット」であるが、ゲームの進

行状況に伴い、グループによっては取り組んでい ないゲームもある。指導M)は「キャンプ」の担当 教官が行った。 2.3測定項目 2.31友連づきあい検査 長沼.落合15)による同性の友達とのつきあい方 に11Mする調査から一部を採用し、検査用紙を作成 した。奨沼.落合は、中学生から大学生を対象に 同性の友達とのつきあい方に関して「友達とのつ

きあいの深さ」と「相手との`し、理的接近の仕方」

という2因子を抽出した。本研究ではこの岡子構

造をもとに、2因・子12項目を友達づきあい検在と

して採用した。質問はこの授業内の友達とのつき

-220-

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張本:イニシアティブゲーム体験が参加学生に及ぼす心理的影響

3.結果及び考察

483,2<、001~05)、また1項目において有意

傾向で(t(32)=1.90,p<・10)好ましい方向へ

の変化がみられた。 井村ら1mは、3時間にわたるASEプログラム実 施前後の班雰囲気を調査し、全10項目で好ましい

方向へ変化したことを明らかにしており、本研究

においてもおおむねそれを支持する結果となった。 ゲーム実施前の平均得点が既にある程度好ましい 雰囲気を示していたが、それがさらに好ましい方 向へ変化したことは、ゲームの実施がグループの 雰囲気に強く影響を及ぼしていると推察できる。 なお、「成功:失敗」の項目においては変化がみ られなかった。このことはゲームの課題解決の最 中に授業が終了してしまったグループによる影響 と考えられる。途中でゲームを終了させられるこ とが自分たちのグループに失敗感を認識させた可 能性があると推察できる。このことは今後、授業 という限られた時間内でイニシアティブゲームを 実施する際の留意点となるであろう。 3.1イニシアティブゲーム実施前後の友達づ きあいの変化について

「友達とのつきあいの深さ」の平均と標準偏差

を表1に示す。得点が低いほど友連づきあいが深

いことを示す。また「相手との心理的接近の仕方」

の平均と標準偏差を表2に示す。得点が低いほど 心理的に接近しようとすることを示す。それぞれ、 t検定を用いてPREとPOSTを比較したところ、 有意差はみられなかった。 松永ら'`)は、イニシアティブゲームを含む4泊 5日のキャンプに参加した女子高校生に対して同

様の調査を行った結果、キャンプを通して友達づ

きあいが深まり、心理的に分離したつきあい方に 変化することを明らかにしている。キャンプでは 5日間にわたって生活を共にし、様々な体験を経 て自己や他者関係を見つめなおし、その結果友達 づきあいに変化がみられたと推察できる。本研究 において実施したゲームは2回合わせても3時間 に満たず、それが友達づきあいにまで影響を及ぼ さなかったと考えられる。今後はゲームを継続的 に実施し、その影響を明らかにすることが必要で あろう。 3.3集団技能評価及び自己の諸能力の評価に ついて 集団技能及び自己の諸能力について評価させた 結果を表4表5に示す。得点が高いほど高い自己 評価を示す。 集団技能の評価に関しては全ての項目で4点代 を示し、全般的にはやや高い自己評価をしている ことが読みとれる。このことからグループ内のコ ミュニケーションが円滑に進められていたことが 推察でき、先のグループの雰囲気にも影響を及ぼ していたと考えられる。特に他のメンバーの意見 や考えを聞くことは高い自己評価がなされていた。 自己の諸能力の評価に関しては普通か、やや高 い自己評価がなされている。イニシアティブゲー ムは他のレクリエーションゲームや競技スポーツ などの身体活動とは性質が大きく異なり、ゲーム を通して自己の諸能力を再認識する機会になって いたことが結果から伺える。一方、他の項目と比 較して特に低い値を示したのが、体力、リーダー シップ能力であり、現代大学生の特徴を示してい るのではないかと考えられる。 さらに、自己や他者関係について新たに気付く きっかけになったことが自由記述から伺うことが 表1友達とのつきあいの深さの変化 PRE MSD POST 白●。●巳■■。■■。●●●---。c MSD t 3.770.76 3.820.72-.51 表2相手との心理的接近の仕方の変化 PRE MSD POST MSD t 2.98q69 2.99061-.22 3.2イニシアティブゲーム実施前後のグルー プ雰囲気の変化について グループ雰囲気の平均と標準偏差を表3に示す。 得点が低いほど好ましい雰囲気を示す。各項目に ついてt検定を用いて比較したところ、10項目の うち、8項目において有意仁化(32)=2.75~ -221-

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琉球大学教育学部紀要第56集 表3グループの雰囲気の変化 PRE POST MSD M SD t 1友好:非友好 2受容:拒否 3満足:不満 4熱心:不熱心 5生産:非生産 6暖かい:冷たい 7協力:非協力 8支持:対立 9面白い:つまらない 10成功:失敗 9741950250 5374113817 ●■■●●●凸●●● 3333433332 LLLL111LLL 師⑫船㈹6邪伯蛆兜船 6876343733 9726174818 ■C■■●●●●●● 2222322222 6563514438 6936599881 ■$●pB●●●■● 1111111111 2.96.* 1.90T 4.83.*、 3.12.. 3.50** 2.75. 3.35.率 4.42... 2.92コ゛ 、56

…p<、001..p<01.率p<、O5Tp<・10

できる。以下にその一部を記述する。「声を出せ

ばコミュニケーションは誰とでもとれることが分

かった」「リーダーシップをとる自分がいてびっ

くりだった」「一応うまくいかなかったけど自分

の意見は言うことができた」「もうちょっとアピー

ルアピールしてみようと思う」「みんな何も言わ

なくても自分の役割みたいなものが分かっている みたいで、しかもそれがちゃんと機能していたの

で不思議だったけど、人間はすごいなぁと思った」

「見知らぬ人たちの間では発言しにくいのを感じ

ました」「話ざないとやっていけないので自分な

りに打ち解けられるよう頑張った」「初対面の人

とはあまり打ち解けることができない」「あまり

リーダーシップがとれない」

イニシアティブゲームでは課題を達成した後の

「ふりかえり」’7)が重要視されているが、これら

の自由記述からは「ふりかえり」が効果的に機能

し、ゲームを通して多くの学生が自己や他者関係

に関する気づきを得ていたことが読みとれる。

高梨ら91も同様のゲーム実施における自11J記述

の分析から、ゲームの実施は「自己概念」や「他

者との関わり」の確立に効果的であろうとしてお

り、今後さらにイニシアティブゲーム体験による

心理的影響が多方面から明らかにされることが望

まれる。 表4集団技能の自己評価 MSD 自分の意見や考えを述べることができた 他のメンバーの意見や考えを聞くことができた 自分の意見や考えがグループに受け入れられた 4.16 4.91 4.16 122 1.06 1.42 表5自己の諸能力と自己評価 MSD 体力(M1力や持幼のレベル、バランスや熱性、巧みさ) コミュニケーション能力 リーダーシップ能力 創造的な思考能力(アイデアの豊富さ) 意思の伝達能力(自己表現力) 3.56 4.16 3.47 3.97 4.03 124 1.11 122 128 1.09 4.結論

本研究では以下のことが明らかとなった。

1)イニシアティブゲーム体験により、参力11学生

の友達づきあいに変化はみられなかった。

2)イニシアティブゲーム体験により、参加学生

のグループの雰囲気が好ましい方向へ変化した。

3)イニシアティブゲーム体験により、参加学生

-222-

(6)

張本:イニシアティブゲーム体験が参加学生に及ぼす心理的影響 (1999):JFA.S級コーチ養成コースにおけ るASE活用に関する基礎的研究、野外教育研 究2(2):37-42 11)上野行良・上瀬由美子・松井鍵・福富譲 (1994):青年期の交友関係における同調と 心理的距離、教育心理学研究42:21-28 12)ディック.ブラウテイ・ジム.ショーエル・ ポール.ラドクリフ(1997)プロジェクトア ドベンチャージャパン(訳):アドベンチャー グループカウンセリングの実践、OS.L・学 習評価研究所、神奈川、15 13)Johnson,DavidW.&Johnson,FrankP.

(1982):JoiningTogether(secondedr

ion)、PrenticeHalLEnglewoodCliff、 NewJersey、410 14)イニシアティブゲームにおける指導は、課題 解決の方法を直接教示するのではなく、あく までも参加者の言動を見守るスタンスをとり、 必要に応じて助言やアドバイスを行う程度で ある。野外教育の分野では指導者は参加者か らカウンセラーまたはリーダーと呼ばれ、一 般的な指導者とはニュアンスが異なる。 15)長沼恭子・落合良行(1998):同性の友達と のつきあい方からみた青年期の友人関係、青 年心理学研究10:35-47 16)松永太郎・飯田稔・井村仁・関智子・ 落合良行(1999):キャンプ実習体験が女子 高校生の友達づきあいに及ぼす影響、野外教 育研究2(2):21-28 17)ゲームが成功した原因や上手くできなかった 原側、課題に対する自己の対応やグループの 対応などをきっかけに、ゲームをふりかえ り、体験を強化したり、共通化したりする手 法のこと。話し合いや筆記、発表などの手段 がとられる。プロジェクト・アドベンチャー・ プログラムではデイブリーフイングと呼ばれ る。 }よ自己の集団技能や諸能力について認識する機 会を得ていた。 今後の課題としては、以下のことが挙げられる。 1)イニシアティブゲームの継続的実施による心 理的影響について検討する。 2)イニシアティブゲームの実施方法の違いによ る心理的影響について検討する。 3)イニシアティブゲームの実施による心理的影 響について多方面から検討する。 注及び文献 1)井村仁(1989):イニシアティブゲーム、 日本野外教育研究会編キャンプテキスト、 東京、杏林書院、138-147 2)プロジェクト・アドベンチャー・プログラム の一部には身体のリスクを伴う極めて挑戦性 の高い冒険的活動が含まれ、他のゲームとは 手法が大きく異なる場合がある。 3)野外教育とは、「自然の中で組織的、計画的 に、一定の教育目標を持って行われる自然体 験活動の総称」(青少年の野外教育の振興に 関する調査研究協力者会議(1998昨青少年の 野外教育の充実について(報告)、文部省)で あり、第15期中央教育審議会第1次答申にお ける「生きる力」の育成策の一つとして重要 視されている。 4)井村仁(1992):イニシアティブ・ゲーム のいろいろ、日本野外教育研究会編キャン ププログラム、東京、杏林書院、49-63 5)江橘慎四郎編著(1987):野外教育のプロ グラム、野外教育の理論と実際、来京、杏林 書院、72-96 6)林寿夫(1996):学校教育のシステムの中 で「冒険」を活かす、学習評lilli研究25:153‐ 159

7)中村正雄(1999):身体活動における課題解

決、体育科教育47(7):34-36 8)二宮紫(1999):プロジェクト・アドベン チャーのススメ、体育科教育47(9):36-38 9)高梨美奈・徳''1部夫.「11「'’一徳(1999):冒 険教frを導入した体育実技について、日本体 育学会第50回記念大会大会号.:548

10)井村仁・飯田稔・lll鵬幸三・供|根章文

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