は じ め に 厚生労働省の患者調査によると我が国の2017 年の心疾患(高血圧性のものを除く)の総患者 数 は173万2,000人 で あ り,2014年 に 比 べ て 約 3,000人の微増となっている。高齢化が進むこ とにより心疾患患者のさらなる増加が見込まれ ており,心疾患患者の二次予防が重要となって いる。 当院循環器病棟では,年間のべ約250例の心 不全入院加療を行なっており,2012年に心不全 に対する心臓リハビリテーションを開始した。 各職種による個別指導介入は行なっていたが, 職種間で情報共有ができておらず指導前に退院 した症例もみられた。多職種で情報を共有し, 患者に必要な指導を行なうことで,心不全増悪 による再入院を軽減できると考え,2014年より 多職種カンファレンスを導入し,チームとして 包括的リハビリテーションを行なった。多職種 カンファレンスは患者 1 人につき週 1 回の頻度 で行ない,看護師による日常生活指導は,心不 全手帳および生活指導パンフレットを用いて行 なった。しかしながら自宅へ退院する患者に対 する日常生活指導率は,多職種カンファレンス 導入当初の2014年は77%(191/248例)であっ たが,2017年は61%(128/210例)へ低下して いた。そのため,心不全に対する日常生活指導 に対して看護師がどのような認識を持っている か調査した。
看護研究報告:
当院では,2014年より心不全に対する包括的心臓リハビリテーションを導入した。導入 当初,患者の生活指導率は77%だったが,2017年度は61%と低下していた。心不全に対す る日常生活指導に対して看護師がどのような認識を持っているか調査した。当院では独自 のパンフレットを使用し,心不全手帳を用いて自己管理するように指導を行なっている。 2018年12月に循環科病棟に所属する看護師28名に生活指導に関する意識調査をアンケート にて実施した。結果は,「患者指導を意欲的に行なっている」26名(96%),「達成感がある」 21名(80%)であった。「指導にマンネリを感じる」15名(58%)であった。患者指導で 最も重点を置いているのは「生活背景の把握」14名,「心不全手帳」 9 名,「パンフレット 指導」 6 名であり,看護師が主で行なっている項目が多かった。「自分の指導に不安を感 じている」と 5 名(19%)が回答した。意欲的に指導している反面,長年の指導体制でマ ンネリ化していることがわかった。指導率が低下している原因は,指導に対するマンネリ 化や,指導に関する不安であると推測された。今後,指導率の向上のために指導内容の確 認,指導方法の見直しをしていく必要がある。 ──────────────────── ①看護師 ②包括的心臓リハビリテーション ③心不全指導 ④指導率向上 ────────────── * 〒738-8503 広島県廿日市地御前1-3-3 JA広島総合病院看護科 2* 同 リハビリテーション科 3* 同 循環器内科 (受付:2020年 6 月29日)心不全患者に対する生活指導の看護師意識調査
津 之 下 真 海
*・小 林 平
2*・門 内 美 鈴
*・石 川 恵 子
*川 村 洋 子
*・藤 原 敬 士
3*・上 田 雅 美
2*・本 間 智 明
2*方 法 1 .調査対象 2018年12月に当院循環器病棟に所属していた 看護師28名を調査対象とした。 2 .調査期間 2018年12月 1 日から 1 か月間を回答の期限と した。 3 .調査方法 看護師への説明は,研究担当者より口頭で行 ない,質問紙を配布した。回答は自由意志によ るものであることおよび個人情報は保護される ことを説明し,回収は病棟詰所に設置したメー ルボックスにて行ない,個人が特定されないよ うに配慮した。 4 .質問紙の構成 本研究は検索的横断研究として,無記名自記 式質問紙調査を実施した。 主要評価項目 指導に対する看護師の意識調査を行なった。 ・達成感を感じるか (そう思う,やや思う,あまり思わない,思 わない) ・意欲的に指導しているか (そう思う,やや思う,あまり思わない,思 わない) ・看護師の役割を果たしているか (そう思う,やや思う,あまり思わない,思 わない) ・マンネリを感じるか (そう思う,やや思う,あまり思わない,思 わない) 副次評価項目 ⒜ 看護師背景 ・年齢(20歳代,30歳代,40歳代,50歳代) ・性別 ・ 循環器病棟経験年数( 5 年未満, 5 年~10 年未満,10年以上) ・多職種カンファレンス導入当時からの在籍 の有無 ⒝ 指導教材(パンフレット,心不全手帳)の 活用について (大変活用できている,まずまず活用でき ている,あまり活用できていない,活用で きていない) ⒞ 指導における重点項目( 1 回答のみ) (心不全手帳による指導,パンフレット指 導,生活状況の把握,治療方針,多職種共 同,リハビリテーション,食事管理,服薬管 理,家族指導,在宅への連携) ⒟ 他職種とのコンタクト ・最もコンタクトのとりやすい職種 (医師,理学療法士,管理栄養士,薬剤師, 社会福祉士) ・最もコンタクトのとりにくい職種 (医師,理学療法士,管理栄養士,薬剤師, 社会福祉士) ⒠ 指導で困っていること(自由記載) ⒡ 指導を充実させるための提案(自由記載) 倫 理 的 配 慮 看護師に実施するアンケートは無記名とし て,アンケートの回答をもって研究に同意した こと,辞退しても不利益は生じないことを明記 した。JA 広島総合病院倫理委員会において研 究発表の承認を得た【第18-52号】。 結 果 回答数は27名であり,回答率は96%であっ た。27名の内訳は20歳代20名,30歳代 2 名,40 歳代 4 名,50歳代 1 名であった。循環器内科病 棟の経験年数は 5 年未満23名, 5 ~10 年未満 2 名,10年以上 2 名であった。多職種カンファ レンス導入直後から在籍する看護師は 8 名 (30%)であった。 主要評価項目の指導に対する意識調査結果を 表 1 に 示 す。 指 導 の 達 成 感 に 対 し て は21名 (81%)が,指導に対する意欲については26名 (96%)が,肯定的な回答をした。また26名 (96%)が,指導で看護師の役割を果たしてい ると回答した。一方,16名(59%)が指導に対
最も多く,次いで薬剤師 9 名(33%),理学療 法士 5 名(19%)医師は 1 名( 4 %),管理栄 養士 1 名( 4 %)であった。1 名は無回答であっ た。「他職種の中で最も連携のとりにくい職種 は」の項目では医師と回答した者が21名(78%) で最も多く, 2 名( 7 %)が理学療法士, 1 名 ( 4 %)が管理栄養士であった。 1 名は無回答 であった。指導で困っていることや提案の自由 記載項目に関しては表 3 に示す。 5 名(19%) が自分の指導に対する不安を回答した。 するマンネリを感じていた。 副次評価項目の指導教材の活用については表 2 に示す。パンフレットは26名(96%)が,心 不全手帳は26名(96%)が活用できていると回 答した。指導において最も重点をおいているこ とについては図 1 に示す。14名(52%)が生活 背景の把握と回答し, 9 名(33%)が心不全手 帳, 6 名(22%)がパンフレット指導を回答し た。他職種とのコンタクトについては図 2 に示 す。「他職種の中で最も連携のとりやすい職種 は」の項目では,社会福祉士が10名(37%)と 図 1 .指導で最も重点をおいている事( 1 人 1 回答のみ) 表 1 .看護師の意識調査 そう思う やや思う あまり思わない 思わない 達成感を感じるか 1 20 6 0 意欲的に指導しているか 6 20 1 0 看護師の役割を果たしているか 2 24 1 0 マンネリを感じるか 3 13 10 1 表 2 .パンフレットおよび心不全手帳の活用について 大変活用出来ている まずまず活用出来ている 出来ていないあまり活用 活用出来ていない パンフレット 20 6 1 0 心不全手帳 17 9 1 0
図 2 .⒜ 最もコンタクトのとりやすい職種 ⒝ 最もコンタクトのとりにくい職種 ⒜ ⒝ 考 察 近年,多職種によるチーム医療が,心不全患 者のquality of life (QOL)を改善し,再入院 率を低下させ,医療コストの削減につながるこ とが示唆されている。多職種介入により心不全 による再入院回避率は約35~50%に低減できる と報告されている1~3)。日本循環器病学会のガ イドラインでも患者の自己管理に向けた支援 と,多職種による包括的チームアプローチの必 要性が明記されている4)。特に患者の自己管理 がその中でも重要な役割を果たすとされる5)。 自己管理能力を高めるためには,患者教育を行 なう際には,患者の理解度を高めるための教材 を有効に活用することが重要であると報告され ている6)。林らは心不全パンフレットを用いた 指導と,心不全手帳を用いたセルフモニタリン グの重要性を明記している7)。当院では患者教 育の際に心不全手帳およびパンフレットを使用 している。本検討で,心不全手帳およびパンフ レットを生活指導時に活用できていると回答し た看護師は96%であり,指導で最も重点をおい ていることの項目で15名(56%)が指導教材と 回答しており,看護師は指導教材の重要性を認 識していたと考えられる。 本検討では,他職種の中で最も連携のとりに くい職種は21名(78%)が医師と回答した。吾 妻らはチーム医療における連携困難の検討で, 247名の看護師にアンケート調査を行ない,医 師と連携・協同することに困難を覚えるとの回 答が多かったと報告している8)。保健師助産師 看護師法において看護師は,看護独自の機能で ある「療養上の世話」と医師の指示を前提とす る「診療の補助」という業務を有しており,医 師の指示という法的規制が看護師と医師の従属 関係を形成していると言われ,対等な立場が築 表 3 .指導で困っていることおよび提案(自由記載) 指導で困っていること ・自分の指導が合っているか不安 ・ 他の人がどのような指導をしているのか見る機会がなく,自分の指導がこれで大丈夫なのかと思うこ とがある ・どこまで指導したらいいのか,自分の指導が合っているのか心配になることがある ・指導パンフレットに沿って指導しているが,先輩の指導と同じように行なえているか不安 ・看護師によって指導内容に差がある 指導を充実させるための提案 ・先輩がどんな指導をしているか,もっと知りたい ・指導で困った際などに認定看護師と話せる機会があればいい
本研究は27名という少数の看護師アンケート 研究であり,設問ごとに看護師の経験年数等の 比較などの詳細な検討が行なえなかった。また 2017年の指導率が低下していたが,本検討は 2018年に行なったものであり,指導率の低下し た2017年時点の看護師の意識と差異がある可能 性があること,またこの時間的な差異により看 護師の意識に変化が生じた可能性があることが 本研究の限界点である。 結 論 心不全に対する包括的チーム医療に従事する 看護師の日常生活指導に対する意識調査を行 なった。意欲的に指導している反面,長年の指 導体制でマンネリ化していることがわかった。 指導率が低下している原因は,指導に対するマ ンネリ化や,指導に関する不安であると推測さ れた。今後,指導率の向上のために指導内容の 確認,指導方法の見直しをしていく必要があ る。 本研究は,第68回日本農村医学会学術総会に て発表した内容を加筆・修正したものである。 著者の COI 開示 本論文発表内容に関連して特に申告なし。 文 献 1 ) 大久保圭子,木庭新治,正司 真,他.慢性心不 全高齢患者における入院中の心臓リハビリテー ションによる再入院回避効果.心臓リハ 2016; 21:192─197.
2 ) Rich MW, Beckham V, Wittenberg C, et al. A multidisciplinary intervention to prevent the readmission of elderly patients with congestive heart failure. N Engl J Med. 1995 ; 333 : 1190─ 1195. 3 ) 黒崎智之,松浦佑哉,上田正樹,他.当院におけ る心不全入院患者の再入院に影響する因子の検討 と多職種介入の効果.松江市立医誌 2019;23: 1─7. 4 ) 日本循環器病学会.慢性心不全治療ガイドライン (2010年改訂版);http://www.j-circ.or.jp/guideline. /pdf/JCS2010_matsuzaki_h.pdf(2020年12月 5 日アクセス).
5 ) McAlister FA, Stewart S, Ferrua S, et al. Multi-disciplinary strategies for management of heart
きにくい環境にある。しかし田村は医師-看護 師関係について,ステータス,賃金,教育, ジェンダーなどが影響するため,決して単純な ものではないとのべ,看護師は,経験を積み重 ね豊富な知識を活用して患者のニーズや望みを 理解する必要があり,そうなれば,従属的な役 割は誰にとっても利益にならないことが理解で きるようになると指摘する9)。看護師は同じ専 門職として,医師と対等・同等・平等な協働関 係を構築するために,自立した看護専門職とし ての深い知識を身につける必要があると思われ る。 多職種介入による心不全再入院率の低下の要 因として衣笠らは,β 遮断薬などの薬剤処方の 適正化,患者教育実施率の向上などをあげてい る10)。当院では2012年より心不全に対する心臓 リハビリテーションを開始し,2014年より包括 的なチーム介入を行なったが,生活指導実施率 は2014年77%であったのに対して,2017年61% と低下していた。アンケート調査では16名 (59%)の看護師が指導にマンネリ化を感じる と回答しており,これが 1 つの原因となったと 推測される。坂根らはメタボリックシンドロー ムに対する指導の中で,「食事制限と運動で減 量しましょう!」を連呼するだけでは,マンネ リ化を感じてしまう医療従事者は多いとしてい る11)。この報告のなかで,知識,自信不足から 「○○しましょう」と提案型の指導になってし まうこと,また画一的な指導になってしまい, これがマンネリ化の原因の 1 つとなってしまう としている。知識,経験不足による画一的な指 導は,患者の行動変容を起こさせることができ ず,これが指導者である看護師の意欲を低下さ せるといった負のスパイラルに陥るものと考え られる。当院では2014年の開始時に在籍した看 護師は,検討時点で30%しか在籍していなかっ た。自由回答項目で 5 名(19%)の看護師が指 導に対する自信のなさを回答しており,今後は 画一的な指導とならないように看護師の知識, 経験不足を補い,スキルアップしていく必要が あると思われた。 本研究の限界
プロフェッショナル・ワーク入門.東京:看護の 科学社,2012.
10) Kinugasa Y, Kato M, Sugihara S, et al. Multi-disciplinary intensive education in the hospital improves outcomes for hospitalized heart fail-ure patients in a Japanese rural setting. BMC Health Serv Res. 2014 doi: 10. 1186/1472-6963-14-351 (2020年12月5日アクセス).
11) 坂根直樹,松田文子 . マンネリ指導にさようなら 対象者を動かす「説明力」と「回答力」を磨く! 産業保険と看護 2018;10:106─111.
failure patients at high risk for admission: a systematic review of randomized trials. J Am Coll Cardiol. 2004 ; 44 : 810─819. 6 ) 筒井裕之.絵でわかる心不全患者さんのためのい きいき生活ガイド.東京:ライフサイエンス社, 2009. 7 ) 林亜希子.心不全患者・および家族への教育指導. Medicina 2015;52:1090─1092. 8 ) 吾妻知美,神谷美紀子,岡崎美晴,他.チーム医 療を実践している看護師が感じる連携・協働の困 難.甲南女子大研紀看リハ 2013; 7 :23─33. 9 ) 田村由美.新しいチーム医療 看護師とインター
Nurses’ Awareness of Life Guidance for Congestive Heart Failure
Mami TSUNOSHITA*, Taira KOBAYASHI2*, Misuzu MONNAI*,Keiko ISHIKAWA*, Yoko KAWAMURA*, Takashi FUJIWARA3*,
Masami UEDA2* and Tomoaki HONMA2*
We began providing comprehensive cardiac rehabilitation for congestive heart failure (CHF) in 2014 at our institution, using an original pamphlet and heart failure notebook to provide life guidance for CHF. However, the life guidance rate was lower in 2017 (61%) than it was in 2014 (77%). The objective of this study was to investigate the awareness of life guidance among nurses. We administered a questionnaire survey regarding life guidance to 28 nurses in December 2018. Among the 27 respondents, 26 nurses (96%) had high motivation and 21 (80%) felt a sense of accomplishment. Responses to the “most important point in life guidance” were “understanding living condition” by 14 nurses, “heart failure notebook” by 9 nurses, and “guidance using the pamphlet” by 6 nurses. Fifteen nurses (58%) felt that the guidance had become routine in nature, and 5 nurses (19%) were worried about their instruction. The nurses were motivated to provide life guidance, but they also felt that the guidance had become routine because they had been providing the same guidance for many years. We consider that the factors related to the lower life guidance rate are the routine/repetitive nature of the guidance and concerns about instruction. Going forward, we need to review the content of the guidance and the teaching approach. ──────────────