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日本ヘのマルハナバチ利用技術の導入

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ミツバ チ科 学 16(1):17-23 HoneybeeScience(1995)

日本へのマルハナバチ利用技術 の導入

岩崎 正男

日本においてマルハナバチが トマ トの受粉 に 利用されるようになってか ら約3年 になる (図 1).当初 は ヨ- ロッパ とE]本 の施設栽培 とで は,規模を始めとして栽培管理などの条件が余 りにも相違す るため, この技術の導入 はかなり 難 しいものと考え られていた. しか しなが ら,いざ導入をは じめてみると優 秀な生産者の新技術に対す る積極的な取 り組み 方 に,各県の試験研究所機関や普及所 などの指 導 も速やかに対応 されたため,まだまだ問題点 は残 されているが,全国各地の トマ ト栽培者 に 省力化技術 として次第に定着 しつつある. 今後, この技術が施設栽培の基本的なものと して,より一般化 してい くためには生産者 によ る細かい指導体制の確立 も必要であろう. また 生態系問題に対す る注意, さらにコス ト低減の 問題などマル-ナパテ供給業者の協力 もより必 要 となろう. このような時点 においてマルハナバチ利用技 術がどのようにわが国に紹介され,受け入れ ら れたのか,その導入過程 につい筆者の知 る範囲 において参考 までに報告 したい. 天敵 や マルハ ナバ チ利 用技 術 の開発 1979年か ら現在に至 るまで約15年間,ちょ うど欧州の施設栽培 における トマ トをは じめ, ナス, ピーマ ン,キュウ リなどの果菜類が,土 耕栽培か らすべて コンピュータ制御による人工 培地のロックウール栽培へ と飛躍的発展を遂げ た時代に,筆者 は毎年訪欧 して幸 いにその進捗 状況を見続 けることがで きた. 最初 に訪れた1979年 の冬や1982年 の夏 に 視察 した頃の施設内では,天敵の姿を見 ること 図 1 トマトの花を訪れたセイヨウオオマル-ナバチ はまだなか った し,土耕 の トマ ト栽培 にお い て,受粉作業 も木製の電気振動器を用 いた方法 によって行われていた (図 2). 土壌の殺菌には臭化 メチルなどの薬剤が使用 され,その他の土壌による病虫害対応には農薬 使用が常識 の状態であった. 1984年 に訪欧 した時点では, ロックウール 栽培が急速 に普及 しは じめていた. 1982年当 時 この技術開発 はまだまだ先のことと思 ってい たが,その急速な普及には大いに驚 きこの技術 開発に急遁関心を持っようになった. 当時の現地ではすでにロックウール栽培の普 図2 1979年頃の電気振動法の受粉作業(オランダ)

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18 及 とともに,臭化 メチルなどは徐 々に使用 され な くなり,地上部 の温湿度管理,特 に湿度環境 も向上 していたため,病虫害 に対す る農薬の使 用 は大幅に減少 しつつあ った. この年 の NTV (毎年開催 されるオ ランダの 施設園芸展)会場でチ リカプ リダニ (ハ ダニの 天敵) とオ ンシツツヤコバチ (オ ンシツコナ ジ ラ ミの天敵)の大 きな模型 の展示があ り,天敵 が販売 されるよ うな時代 になっている事を知 っ た (図3,4). そ して, その後 イギ リスのバ ンテ ィング社 を 訪 れ,施設内でオ ンシツツヤコバチの実用化 の 実状 を初 めて見 ることがで きた. さらに煙草 を 栽培 しなが ら天敵 を増殖 している室内の見学 も 許 され, よ り天敵 に対す る認識 と関心が深 まっ た. 帰国後間 もな く大手農薬 メーカーを訪問 しこ の事 を報告 したが,いろいろと国内において も 試験 はされたが, まだまだ問題 の多 い技術 と教 え られた. この後静岡県農業試験場を訪れ,池田研究主 幹か ら当時すでに手元で飼育 されていたオ ンシ ツツヤコバチを顕微鏡で見せ られ, この天敵が とて も小 さな-チの一種 であることを知 った. このよ うなこともあ り, 1984年 の視察以降 の NTV会場 において, ロックウール栽培 シス テムや養液 コン トロール装置, コンピュータ利 用の複合気象環境制御機器などの合間をみて天 敵資料の収集 も続 けるよ うにな った. 1989年 の会場 で初 めて- モグ リバ ェやアザ ミウマなど複数 の新 しい天敵 が展示 されている 図3 1984年のNTV会場におけるオンシツツヤ コバチ(オンシツコナジラミの天敵)の模型 のに出会 い, いよいよ本格的な天敵利用時代の 到来 しつつあることを,実質的な内容 までは理 解 され得なか ったが肌で感 じることがで きた. このよ うな天敵技術 の進展 した背景 と して は, 少 し前 に戻 るが 1986年頃にはすでにロッ クウール栽培が果菜類全般 に行 き渡 り,農薬激 減 によ り施設の作物生育環境が全般的に向上 し ていた. これまで病虫害 に悩 まされていた トマ ト栽培 は品質 も向上 し,収獲量 も増加 して安定 した生産時代を迎えつつ あった. このよ うな現実 も天敵 を迎えた要因の一つ と 考 えてよいだろう. マルハ ナバ チ利 用技 術 との 初めての出会 い 1990年 の夏, 養液栽培研究会第一回欧州視 察団員の一人 として渡欧 した, 9月3日にオラ ンダの総合農業資材業者 の ブ リンクマ ン社を訪 問 した際, トマ ト生産者 の施設 においてマルハ ナバチの設置 してあるのを見 ることがで きた. この時 は簡単 な説明に終 わ り, こち ら側の認識 もまった くこの知識 なか ったため,興味 は持 っ たが写真を撮 るのが精一杯で この技術の持っ偉 大性 を知 ることはで きなか った (図 5).この後 9月10日にベルギーの野菜試験場 を訪問 した 時, トマ トの養液栽培温室 において従来の電気 振動法 に変わる トマ トの新技術 としてマル-ナ 図4 1984年のNTV会場におけるチリカプリダニ (-ダニの天敵)の模型

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図5 オランダの農場における巣箱の設置状況 (1990年9月5日) バチ利用が最近 ベルギーで開発 されたことが説 明 された. そ して この技術が新 しい優秀な技術 であることと, トマ ト栽培 の受粉作業 は今後 こ の技術 に移行 してい くので はないか と指摘 され た (図 6). この時参加 されたメンバ ーは静岡大学 の糠谷 助教授 と千葉県農業試験場 の宇 田川主任研究員 を指導者 とす る総勢16名の生産者, 農協指導 員,養液栽培関係企業,地方栽培関係企業,也 方試験場研究 員, 同普及員 などの構成 であ っ た. このためマルハ ナバ チ利用技術 の認識 は 個 々の立場 によって理解度 が異 な ったが, トマ ト栽培 に直接関係 していた人々にはかな りの感 動 を与 えたようであ った. マル-ナバチの情報 は帰国後, これ らの人 々 か ら国内の生産者をは じめ,研究,普及機関な どの関係者 に伝え られてい った.筆者 も静岡県 農業試験場 の池 田研究主幹 に報告 した り,雑誌 の寄稿 のなかで簡単 に報告 を した. マ ルハ ナバ チ に関 す る情 報 収 集 1991年 1月の中旬, 例年通 り訪欧の準備中 の と ころ に配 達 され た

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(1990) の記事 に トマ トの交配 にマル-ナバチ を利用す る新技術が総合的 に掲載 され,現在 ヨ ーロッパ全域 に急速 しつつあることをは じめ, 巣箱 の解説 を図によって示すなど, よ り具体的 図6 ベルギーの野菜試験場における巣箱の設置状況 (1990年9月10日) な事項 まで見 ることがで きた. この記事 を直ち に池田研究主幹 に持参 して専門分野か らの見解 を求め, この技術が大変 な ものであることを確 認 した. このとき環境制御部門担 当 とはいえ農業試験 場 に14年 もの在職経験 を持 ちなが ら, トマ ト の花 には蜜がない事 を始 めて教 え られた. そ し て このため トマ トの交配 には ミツバチが使用で きず, 日本ではホルモ ン剤 を,外国では電気振 動法を使用 していることも始 めて理解で きた. このよ うな残念 な状態で はあ ったが,差 し迫 った訪欧時の資料収集 の在 り方のア ドバイスを 受 け, マルハナバチに関す る情報収集 の準備が で きた. そ して この後, 1月 29日に訪 れた NTV会 場 において,施設栽培の総合機器,資材 を出品 している企業が展示 しているコーナーの中で, コパ ー ト社の天敵 を陳列 した一遇 にマル-ナパ テが展示 されているのをよ うや く発見 した. ここでマルハナバチ担当者か ら, 約40分 く `らい用意 して きた質問事項 の内容を専門的に説 明を求 めた. たまたま増殖法 まで話が進 むと, あなたはどういう方ですか と逆 に質問 されるよ うな場面 もあったが,かな り細部 まで懇切丁寧 な説明を受 ける事がで きた (図7). 最後 にカタログを分 けて もらったが,オ ラン ダ語版であ り直ちに理解で きるものではなか っ

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20 図7 NTV会場でのマル-ナバチの展示(1991年) た. しか し, このカタログを帰国後,池 田研究 主幹 を通 じ三重大学 の松浦教授 に送 り,専門的 な翻訳依頼を し,現地 におけるマルハナバチ利 用 に関す る貴重な技術資料 が得 られた. そ して 先の質問事項 の回答資料 などと併せて,マルハ ナバチ利用技術 に関す る情報解析が池田研究主 幹を中心 に一段 と進行 した. マルハ ナバ チ研 究 会 活 動 の始 ま り 1991年 5月のある日, 東海物産株式会社 よ り,愛知県の生産者か らマルハナバチを扱 って 欲 しいとい う要望があ り, これについて現地 な どの詳 しい情報 を提供 して貰えないか との連絡 があ った. この時点 における会社側へのア ドバイスは5 月 30日に単 なる概要説明を し, 本格的にこの 問題 に取組む考えな らば池田研究主幹や松浦教 授をは じめ,東海地方の各県試験場 の研究者達 の多 くの意見を聴 く場 を作 るよ う提案 した. 6月22日名古屋 において池 田研究主幹,松 浦教授 をは じめ愛知県の菅原主任研究員,三重 県の西 口主幹研究員の各氏や大手商社 の開発担

図8 NTV会場のDr.RolandodeJonghe(1992年)

当,東海物産 の企画担当などの参加を得て研究 会形式 により開催 された.議題 と しては筆者 の マル-ナパテ利用技術 に関す る欧州の実状報告 や,マル-ナバチの生理生態について松浦教授 より解説がなされた. この後, 日本の トマ ト栽 培 に関す る現状 や問題点 などにつ き検討がなさ れた. この技術 は省力のみな らず品質向上 も期待で きる優秀な ものであるが, 日本の トマ ト栽培の 場合 は, ヨーロッパの栽培条件 とは大 きく異 な り,その効果の期待 は難 しい. マルハナバチに関す る情報収集 と同時に農薬 使用条件や,施設が小面積 である事 などの具体 的問題点 について も,同時 に対応策の検討 も早 急に行 ってい くことも提案 された. 最後 に導入を前提 とした総合的な検討会をさ らに今後 も続 けて開催 し,前向 きの姿勢で進む ことを全員で確認 した. しか しなが ら, その後間 もな く大手商社 の不 参加決定などの問題 もあ り,導入-の協力体制 は崩れかか り,その行先 さは一時停滞を余儀 な くされた. 10月 に入 り東海物産 の ロックウール素材輸 入 メーカーのグロダニア社 (デ ンマーク)の紹 介 によ り, この技術を開発 したベルギーのバイ オ ベ ス ト社 の社 長 で あ る Dr.Rolando de Jongheが来 日 し (図 8),導入化への説明を直 接す ることが決 まった. そ して,その来 日の日 程 に合わせて, 名古屋 において10月9日に研 究会が慌 ただ しく開催 される事 にな った. この会 においては, 日本の実用化 についての 問題点である強 い日射や高温,農薬使用,施設 の小規模 などの疑問点 をは じめ,-チの輸送問 題 などのより具体的な問題点 まで,直接聴 く機 会を得 る事がで きた. そ してそれ ら個 々の答え と同時 に,すでに同社が実際に体験 しているモ ロッコなど高温地帯の国 におけるの実績説明 も あ った (図 9). このような日本への導入 を可能 とす る開発者 としての自信,彼の情熱的な独特的の説得力 に 参加者全員が導入への関心 を再 び高めた. そ して,最終意見 と しては, まず実験的に最

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加者全員で観察 していくことが良 いのではない かという事になった. この後,商業的契約,輸入の関税,防疫手続 などが,東海物産株式会社の手により速やかに 行われ,12月 4日の夕刻名古屋空港に 16コロ ニーの巣箱がマルハナバチの導入第一陣 として 到着 した. この時, 到着 した巣箱を

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より手渡 された瞬間の-チ特有の活動 する音の感触 は未だに強 く記憶 している. このマル-ナバチは直ちに、東海各県の試験 場や篤農家に翌 日配送 された.送 る方 も受 け取 る方 も見 るのがは じめて, マニュアル もない状 態であったため,各地で初歩的 ミスによる問題 を起 こしたが,幸 いにも大 きな障害的なものに はな らずに終わ った. そ して第2回の導入が 1 週間後に行われ,実質的な試験が各地の農家や 試験場 などにおいて開始 された. 本格 的実 用化 試 験 の開始 静岡県農業試験場においてはマル-ナバチの 情報を早 く得ていたため,中島専門技術員を中 心 に出先の普及員と虫害研究室や野菜教室 とポ リネ一夕-研究会を組織 していた. このプロジェク トチームは第-回のマル-ナ バチ配布先の大東町における体験を活か して2 図10静岡県大東町の巣箱設置状況 (1991年12月5日) 図9 バイオベスト社の欧升目こおける展開図 (1993年 2月7日) 月は じめか ら,試験場近 くにある鈴木信好氏の トマ ト-ウスにおいて,825m2と当時の業者規 準 の 1コロニー当た り1320m2には及 ばなか ったが現地生産家を対象 と したマルハナバチ利 用 の受粉試験 を全国 に先駆 けて開始 した (図 10,ll). この当時各県の試験場において も一斉に試験 が行われようとしていたが, トマ ト栽培研究者 は-チの扱 いに戸惑 い,-チに詳 しい虫害研究 者 は トマ トの受粉の生理 には弱いなど,試験に 取組む体制 に苦労 しているのが現状であった. このため, 1コロニー当たり 1320m2程度の 広 さを必要 とす る実用化試験 はともか く,生産 図11 デンマークの農場における巣箱の設置状況 (1992年 1月28日)

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22 家を対象 とした試験対応 はまずで き得 ないのが 実状であった. このような東海物産株式会社の導入マルハナ バチの試験の開始段階にあって,約

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か月遅れ でこの月に株式会社 トーメンがオランダのコパ ー ト杜か ら導入を開始 された. そ して全国各地 の試験研究機関や農家に直ちに送 られ, コパー ト社のマル-ナバチによる試験が始め られた. しか し, これ らも受 け入れ体制が十分できて いなか ったため,期待 した成果はほとんど得 ら れずに終わった. 結局 はポ リネ一夕ー研究会 グループの試験結 果が,唯一の試験成績 と期待 された. このよう な中で6月 23日に静岡県農業試験場 において 開かれたポ リネ一夕-研究会会場 において中島 専門技術員か ら成績がようや く発表された. 期 待 され て いた成 果 の発表 日本におけるマル-ナバチを利用 した トマ ト の受粉 に対す る成果 として,省力化 とともに ト マ トの糖度の増加をもた らす こと,同時に空洞 化を減少 させ るなど期待以上の効果が立証 され た. しか し,全てが順調 に行われたわけではな く,最初の頃, アブラムシ防虫用 にアル ミ蒸着 フイルムをマルチとして使用 していたため受粉 活動の失敗 もあり,直ちに取 り外 したところ, 効率的な受粉活動が再開 されるなどのハプニ ン グのあったことも報告 された. このような成果が得 られた陰には,業者連絡 によるバイオベス ト社のマニュアルと研究者の 専門的なア ドバイスを頼 りに しなが ら,優秀農 家の持っ特有な技術力によって,思考錯誤を繰 り返 しなが ら新技術 に取組んだ鈴木氏の努力が あったこと. また, ポ リネ一夕ー研究会の協力 や東海物産株式会社の現場担当者の熱心 な情報 連絡があ ったことも,短時間にこの成果を生む 結果 ともなった. 導入 開始 と問題 点 の解 決 欧州 における トマ トの施設栽培 はlha単位 の大 型 ガ ラス室 にお いて, 日中21℃,夜 間 18℃の温度設定,しか も全面マルチのロックウ 一ルの栽培の上,天敵を利用 した総合防除体制 下にある. 日本の小面積, ガラスとビニル被覆 の施設構造の相違,夜間の設定温度8℃∼10℃ とまちまちの温度管理体制, さらに病虫害対策 には全面的農薬対応 とマル-ナバチ利用上の条 件 は余 りにも違 い過 ぎており, これ らをどのよ うに対処 し解決 してい くかは当初か ら問題視 さ れていた. 温度問題では, ミニ トマ トやロックウール栽 培 においては,夜間温度 は13℃以上 の設定で あ り問題 はなか った. しか し夜間の設定温度 8℃∼10℃の設定を標準 とす る低温管理の場合 などでは期待どお りの成績 は得 られなか った. 室内の小面積の場合 には毎 日夕方 に移動 させる 方法を案出 して解決す ることができた. また最大の難問 とされていた農薬対策では, イチ ゴの防除規準 に従 う管理体制 の もとで, 徐々に合理的な使用体制 を作 りなが ら一応の成 果を上げることができた. このように初期の段階ではマニュアルもまだ 内容的に詳 しいもの もな く,かなりの失敗例 も み られたが,全般的にはこの技術を放棄す るよ うな致命的な事 にはな らなか った. このように して日本独特のマル-ナバチ利用技術が優秀な 生産者の手で作 られ,地道ではあるが一般の生 産者 にも普及 しつつある. 日本 に導入 が実 現 した要 因 困難祝 されていた日本 にまだ完全 に技術導入 がで きたとは必ず しも断言できないが,実質的 にはほぼ生産農家全般に定着 しつつあると考え てよいだろう. これ らの要因 と考え られる点について筆者の 私見ではあるが少 し述べておきたい. 1. この技術 は省力化技術でありなが ら, 同 '時に作物の品質向上をもた らす優秀な ものであ った . 2. 欧州において も日本にあって も, トマ ト 栽培者にあっては極端な労働力不足の状態にあ り,受粉作業 の労力負担 は大変 な ものであ っ た . 3. 受 け入れ側の各生産地 に労力不足を克服

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して,現状の生産性向上 を目指 し,あるいは施 設の規模拡大を図ろうとしていた優秀な生産者 が少数ではあった各地 に確実に存在 していた. これ らの人々の-チの飼育管理や環境の改善な どへの取組みによって困難視 されていた問題点 を次々と解決 して新技術 の安定化に寄与 して く れた. 4.導入を検討す る時点か ら産官学の協力体 制ができていた.特にマル-ナバチという特別 な専門知識を有す る松浦教授や池田研究主幹 な どの協力が得 られ, さらに静岡,愛知,三重の 各試験場の協力で研究会が組織 され当初か ら現 場の指導が得 られた. 5.生産者の声を取 りあげ,大学,研究機関 などの協力の もとに,導入を決定 しさらに導入 後 もこれ らの機関 と連携を密 に取 り,現地指導 に徹 した東海物産株式会社の対応,また1か月 遅れで国内導入を決定 し, 1年後の93年度か ら,先発の東海物産株式会社 と技術指導協定を 結 び,生産者への普及に適進 した株式会社 トー メンの協力体制 も,国内全般への初期の普及を より早めた一要因 と云えよう. まとめ 1970年半ばか ら始 まったオランダを中心 と する欧州の施設栽培開発 は,素晴 らしい環境制 御技術 の もとにロックウール栽培技術を確立 し,天敵利用技術を育成 し, さらにマルハナバ チ利用技術を誕生 させ,施設栽培 における理想 的な昆虫利用時代を確立 させた.導入 されたマ ル-ナバチ利用技術 はここ当分 日本の施設栽培 トマ トにおいて も大 きな役割を果たす ことだろ う.そ して,その使用数量 も次第に増加すると ともに,生産者の生態系への関心 も深まってい くだろう.国内のハチを国内で増殖 し,生産者 に配送 される事 も可能 となろう.それか ら,義 近開発された交配技術の不要な単為結果性 トマ トの普及 も次第 に広 まる事 も予想 され,マル-ナバチの必要 もな くなる時代 も来 るか もしれな い.時の流れによって施設栽培技術 も刻々と変 わ ってい くだろうが,マル-ナパテを導入 した 生産者 も,協力 した我々 も, ここ当分 は トマ ト の生産性向上を図 り, コス ト低減 に努力するこ とが最善の道 となろう. トマ トの施設栽培では 風 もな く,虫 もいないことか らホルモン剤によ る受粉作業を信 じ,長年 この方法に頼 って きた 日本の生産者に,マルハナバチは トマ ト栽培の 基本を色々と教えて くれるのではなかろうか. 発達 した環境制御技術 による温度管理,湿度 調節,炭酸 ガス施用などと トマ トの生育気象環 境を人工的に調節す る技術に長年携 って きた筆 者であるが,それ らはすべて トマ ト自体には無 理遣 りに,ただ押 し付 けてきた技術 に過 ぎなか ったように思える. トマ トを一時的ではあるが自然界にかえす, 花 と昆虫による施設栽培開始以来の新技術であ る.そこに-関係者 として ロマ ンを感 じる. (〒432 浜松市文丘町 18-18) 主 な 参 考 文 献 池田二三高 ・忠内雄次.1992.農業および園芸67: 1213-1216. 岩崎正男.1991.施設園芸33(5):20-21. 岩崎正男.1991.施設園芸33(6):20-23. 岩崎正男.1991.施設と園芸73(6):54-58. 岩崎正見 1992.施設と園芸74(9):17-21. 岩崎正男.1992.環境保全と施設園芸における欧州 の先進事情.'92施設新技術シンポジウム資料5. p.1-7. 松浦 誠.1993.マル-ナバチの生態的特性.第2回 マルハナバチ利用技術研究会発表資料.p.1-8.

IwASAKI,MASAO. Introduction ofcommmercial bumblebeesintoJapan,HoneybeeScience(1995) 16(1):17-23. 18-18,Fumioka-cho,Hamamats u-shi,Shizuoka,432Japan.

In1991,16coloniesofcommercialbumblebee (Bombusterrestns)were imported fortheflrSt timefrom Belgium toJapan. Thislaborator y-CulturedbumblebeesspreadrapidlyinJapanese greenhouse system for polllnatlOn Of tomato flowersbecausetheuseofthlSpOllinatorsaves laborand produceshlgher-quality fruits. The author described the circumstances how the bumblebeeiロportation wasrealized

図 5 オランダの農場における巣箱の設置状況 ( 1 990 年 9 月5 日) バチ利用が最近 ベルギーで開発 されたことが説 明 された. そ して この技術が新 しい優秀な技術 であることと, トマ ト栽培 の受粉作業 は今後 こ の技術 に移行 してい くので はないか と指摘 され た ( 図 6)
図 8 NTV会場のDr . Rol andodeJ onghe( 1 992 年)

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