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<症例報告>Nitinol素材の弾カステント(Ultraflex)を用いて,悪性腫瘍による中枢気道狭窄を回避し得た2症例 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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症例報告

Nitinol素材の弾力ステント(Ultraflex)を用いて,悪性腫瘍による中枢

気道狭窄を回避し得た2症例

 山梨県立中央病院

呼吸器内科 山本夏男 宮下義啓

外科 千葉成宏

Key words:Nitinol素材, Ultraflex, SENS,弾力ステント,気管狭窄,扁平上皮癌,食道癌, 肺癌,気管支内浸潤,Dumon, Gianturco, Expandable metallic stent, EMS       はじめに  原発性肺癌,転移性肺癌による浸潤性気 道狭窄に対し,近年はexp andable metallic stent(EMS,Gianturoo 1) ste nt),silicone ste nt(Dumon2) ste nt)等を 用いて,狭窄症状の改善が得られた報告が なされている。  ニッケルとチタンの特殊形状記憶合金であ る,Nitino1をメッシュ状に編んだ,自己拡張 型金属ステント(Self−expanding nitinol stent;SENS)は,当初は悪性腫瘍による胆 道や食道狭窄に対しての開存維持を目的と して開発された。  今回我々は,中枢気道狭窄を呈した末期 扁平上皮癌(肺扁平上皮癌,食道癌縦隔転 移)2症例に対して,気管内ステント (Ultraflex m)(Fig.1)により症状の改善が 得られたため報告する。

      症例1

【患者】74歳,男性. 【主訴】咳漱,呼吸困難,疾喀出困難 【家族歴】特記事項なし 【既往歴】33歳時肺結核,左肺上葉切除,胸 郭形成術後. 【喫煙歴】20本/日×50年(禁煙後5カ月) 【現病歴】1998年4月頃より呼吸苦の悪化 (H−J4度)を認め,その後咳の増加や,粘稠 疾の喀出困難が生じた。4月20日早朝,突 然の呼吸苦と喘鳴を認め,緊急入院となっ た。 【身体所見】身長163.7cm,体重39kg,体温 37.0度血圧150/100㎜Hg,脈拍70回/分, 呼吸数30回/分,表在リンパ節触知せず,貧 血・黄疸なし。両側胸部に吸気・呼気共に喘 鳴あり。四肢浮腫なし,榎声を認める以外は 神経学的異常所見なし。 【検査値】赤沈1時間値33mmと軽度の充進 を示し,CRPは陰性であった。白血球数は 8,800/mm3,赤血球数は459万/mm3,ヘモグ ロビン14.4g/dlであり,生化学検査ではAST 831U/1, ALT 701U/1と,トランスアミナーゼの 上昇があり, HCV抗体が陽性であった。各種 腫瘍マーカーは陰性でありLDH2301U/1と軽 度に高値を示した。動脈血液ガスは鼻カニ ュラ2.OL/分の条件下でpH 7.361, PaCO2 48.O torr. PaO277.6 torr. HCO326.6mmol/L であった。呼吸機能はVC 1.28L,%VC・38.6%, FEV 1.0 1.05L, FEV 1.0%89.7%となってい た。 画像診断:入院時胸部X線(Fig.2)では左上

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葉切除後であり,胸郭形成術が施行されてい る。右中肺野には長径3cm大の淡い結節影 を認める。胸部CT(Fig.3)では,気管分岐下 のリンパ節腫大が著明であり,内部に強い壊 死を思わせる濃度差を認める。これにより,右 主気管支の一部が狭窄している。 気管支鏡所見(Fig.4):左上は右中間気管支 間近位であり,内腔にホ゜リープ様の突出を認め る。これは呼吸に伴い,前後にフラップ様に運 動していた。右上は2日後の同部の観察時 であり,壊死物質と潰瘍形成による粘膜陥凹 が目立っ。左下はステント挿入後の右上葉 支分岐部であり,ステントの近位が中間管近 位端にアンカー状に引っ掛かっている。 気管支粘膜生検:上記の部位より生検を行い, 扁平上皮癌(壊死傾向が目立つ)を診断し た。 【入院後経過】入院後,成人発症の気管支喘 息発作を疑い,気管支拡張剤及びステロイド の点滴を行ったが,4fi 25日低酸素,ショック

にてICUに入室。5月15日人工呼吸管理下

で同部位に内径10mm,長径20㎜の

Ultraflexを挿入した。挿入直後より自覚症状 は速やかに改善した。その後ステントの移動 により,再び呼吸苦・喘鳴の再燃があり,5月

22日再度中間管へ内径12mm,長径20㎜の

Ultraflexを挿入した。ステント再挿入後5月28 日に抜管し,翌日には吸入酸素を中止した。 抜管後の胸部レントゲン像をFig.5に示す。そ の後,主に栄養管理とリハビリテーションを行 い,6月24日に退院とした。しかし翌日の夜よ り再度呼吸困難が増悪し,来院。再入院時に は右肺野で喘鳴を聴取し,気管支鏡による 再精査で①気管の全周性の圧迫,②右主気 管支内の,新たなホ゜リープの出現などが認めら れた。この時には再度のステント留置の適応 はなく,ステント再留置より36日後の7月3日, 低酸素血症を伴うII型呼吸不全と心停止に より死亡した。

      症例2

【患者】69歳男性 【主訴1呼吸苦,榎声,嚥下困難,体重減少 【既往・加療歴】 食道癌縦隔リンパ節転移摘出術(1997年

11月21日),術後放射線50Gy

【喫煙歴】なし 【現病歴】上記手術後経過良好にて退院した。 平成1998年4月頃より再び榎声の悪化を認 め,その後,咽頭違和感に続き嚥下困難が 生じた。摂食困難となり,体重減少を認め, 1998年6.月1日再入院となった。 【身体所見】身長161.5cm,体重45.4㎏(1ヶ 月半で15kg減少),体温36.5度,血圧 130/90mmHg,脈拍68回/分,呼吸数26回/ 分,間欠的にチアノーゼを認める,右眼瞼浮 腫あり,右鎖骨上に固形腫瘤(4cm大)あり, 貧血・黄疸なし,呼吸音全体に減弱あり,両 側胸部に喘鳴あり。腹部やや膨隆・軟,四肢 浮腫なし。右上腕痔痛,しびれ感あり。 【臨床経過】 入院後,食道造影(Fig.6)を施行したところ, 食道には全周性に不整な狭窄を認めた。胸 部X線では上縦隔の拡大があり,胸部CTで は気管と上大静脈を取り巻く腫瘍塊と気管の 狭窄が認められた(Fig.7)。気管の高度狭窄 による呼吸困難と疾の喀出困難感が持続す るため,症状改善を目的として,狭窄気管に 対するステント留置を行うこととした。6月16

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日に気管支鏡を用いて内径20mm,長径 60mmのUltraflexを挿入した。内視鏡では, 声帯を通過してすぐに,気管は膜様部からの 強い圧排を受けていた(Fig.8左上)。軟骨部も 腫瘍の浸潤による白苔や凹凸に囲まれてい た(Fig.8右上)。気管は,通常の気管支ファイ バーがかろうじて通る程度であった。気管分 岐部以下の開存は保たれていた(Fig.8左下)。 ステント挿入後,気管の開大が得られ(Fig.8 右下),ステント挿入後の胸部CTにおいても, 気管の充分な開大を確認できた(Fig.9)。   気管内にステントを留置し,帰室した後より 速やかに呼吸苦は改善した。数日にて飲水, 食事,排疾や軽労作が可能となったが,7月 4日より嫌気性細菌感染を併発し,ステント留 置22日後の7月7日に死亡した。

       考察

  症例1の様に,過去にアレルギー歴のな い人が,吸気性呼吸困難を来した場合は, 中枢気道の閉塞を必ず除外しなければなら ない3)。症例の狭窄気道部位を図1に示す。 症例2の,気管の狭窄の場合は無論,症例1 のような低肺機能者の時は,中間気管支管 部分の狭窄であっても,一箇所の閉塞が窒  息につながる。   腫瘍が中枢気管支を狭窄した場合,重篤 な呼吸困難の出現と窒息の危険により,生命 に緊急の影響を与える。中枢気道に対するス テント留置は,緊急の窒息の予防・回避と呼  吸症状の緩和を目的に試みられている。今 回の症例はいずれも,内科で行える気管支 ファイバーの簡便な手技を用いて,急性期の 呼吸困難を回避し得た。これまで報告されて  いる中枢気管支内へのステント留置後の予 後はおおむね22∼155日程度4)である。今回 の症例も,挿入後の生存期間はそれぞれ36 日,22日と短い。悪性腫瘍による気道閉塞を 認めた場合,症状改善が目的のステント挿入 処置に伴う合併症で,予後を悪化させうるリス クもあり,これについても充分な評価を必要と する。  以前の8ilicone stent(Dumon stent) やexp andable metallic ste nt(EMS, Gianturco ste nt)と今回のSENS (Ultraflex)の特徴を,室ら∋が簡潔に比較し ている(図2)。今回用いたNitino1ステントの 利点は,手技的に容易であること。軟らかな 伸展力,可動性が良好な点などである。 Gianturcoステントには出血,穿孔といった 合併症6)がある。Dumonステントの挿入には 全身麻酔と硬性鏡が必要ηである。又, Dumonステントは可塑性に乏しく,乾燥した 粘稠な疾の閉塞に弱く,これが時に致死的 合併症となる4)。一方,EMSやSENSではス テントの内腔が4∼6週間で気管支上皮に覆 われ,線毛運動も保たれ,喀疾排出能を維 持しやすいともいわれる8)。

 留置後の腫瘍増殖による再閉塞がDumon

タイプ以外のステントでは問題とされている。 但しSENSの網目は狭く,隙間からの腫瘍の 増殖は制限され,浸潤性狭窄に対する抑制 効果が期待される9)。金属ステント内に腫瘍 の進展を防ぐために,その内腔をダクロンメッ シュ6),Gore−Texやポリウレタンで覆った,カ バードメタリックステントlo)も製品化されつつ ある。 予後,改善し得た症状(ADLに関する条件 も含め),合併症,手技上の簡便さ,X線不透

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過性,拡張力など,ステント治療に関して今 後も検討すべき要素は多い。       まとめ 1.気管支内扁平上皮癌,及び食道癌縦隔リ ンパ節転移による,中枢気道狭窄を伴う2例 にNitino1素材を用いた,自己拡張型の弾力 ステントが有効であった。 2.ステントの挿入は一般的な気管支鏡を用 いて,容易に施行できた。 3.ステントの挿入後,喘鳴を伴う呼吸困難 低酸素血症は速やかに改善し,以後挿入部 の再狭窄は認めなかった。

      文献

1)Wa皿ace MJ,Charnsangavej C,Ogawa K,Carrasco CH,Wdght KC,McKenna 民McMurtey M,Ganturco C: Tracheobronchial tree. Expandable metallic stents used in e)q)et㎞ental and c1血ical apPlications. Radiology 158:309−312,1986 2)Dum.on JF:Adedicated tracheobronchial stent. Chest 97:328−332,1990 3)竹中英昭,長澄人,生駒行拡,他:喘息様 症状で発見されステントの逆λ型留置が有 効であった腺様嚢胞癌の1例.日呼吸会誌 36(1):io6・・110,1998 4)野守裕明,堀尾裕俊:腫瘍性気道狭窄に 対するシリコンステント留置.日胸外会誌 45(5):666−669,1997 5)室恒太郎,水野浩,柳原一広,池修,和田 洋己,人見磁樹:Self二e)rpanding nitinol stentを気道と食道に留置し, quality of lifeの 著明改善を得られた気管分岐部癌の1例. 日胸外会誌44:2205−2211,1gg6 6)小鹿猛郎,向山憲男,村田透,長谷川洋: 食道癌術後リンパ節再発による気管狭窄に 対しExpandable Metallic Stent(EMS)を挿入 した1例.胸部外科49(9):791−793,1996 7)Bolliger CT, Probst R. Tschepp K, SoIer M,Pemlchoud AP:Silicone stents in the management of inoperable tracheobronchial stenoses.lndications and 1irnitations. Chest 104:1653−1659,1993 8)Nomori H,Kobayashi R,KOdera]覧 Mo血1aga S, Ogawa K:lndications for an eXPandable metallic stent for tracheobronchial stenosis.Ann Thorac Surg 56:1324−1328,1993 9)室恒太郎,水野浩,柳原一広,倉田昌彦: 食道癌による両側主気管支狭窄に対し, Self−expandng nitinol stentを留置した1例. 目胸外会誌45:1183−1188,1997 1◎)出村芳樹,岡村誠太郎,中西正教,東田 元,他:カバードメタリックステントの食道内 留置が有効であった食道癌による肺膿瘍の1 例.日呼吸会誌1998;36(11):989−993

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      ABSTIRACT

      TWO CASES OF CARC】[NOMA WIT且TRACH呂OBRONCHIAL STENOSIS

      TREATED BY SEIIiF−EXPANDING N皿INOL STENTS(SENS)        Natsuo Yiamamoto l), Yosh丑丘ro Miyashita’), Shigehiro Chiba2) DiVision of Respiratory Diseases, Department of lnternal Medicine i), Surgery 2)    Central Hospital, Yamanashi Prefecture,1−1−1,Fujimi,Yarnanashi, Japan Two ca8e8 with tracheobronchial stenosi8 due to tumor8(lung and esophage al cancer)were treated by Self二exp anding皿itino1 ste nt(Ultra血ex). Severe dyspne a and stridor were markedly impromed after placement of nitino1 stents. l nsertion of Ultra且ex iS e asy and usefU1 for prevention and improvement of airway obstruction.

(6)

Fig.1

(7)

Fig.4

(8)

Fig.7

Fig.8

(9)

       図1各症例における、Ultrafiexの挿入部位

症例1

①内径10m瓜長径 m

②内径12mm.長径20mm

症例2

③内径2・mM.長径6・mm

図25)Features of airway stents

Nitinol

Gianturco

Dumon

materialS

nitinol

StainleSS Steel silicon

wall thic㎞ess

negligible

negligible

thick

insertion 狽?モ?獅奄曹浮

smooth

reratively 唐高盾盾狽 geneaロI ≠獅?唐狽??唐奄       ●

??垂≠獅唐高

mild

strong

weak

flexibility

good

aUttle

none

nxation

expansive fbrce expansive fbrce

studs

adjustment afler

奄獅唐?窒狽奄盾

impossible

impossible

possible

extirpation possible surgical

盾垂?窒≠狽奄盾

rigid   一

b高獅モb盾唐モ盾垂

complications

unknown

bleed㎞g penetration OCClusion by р窒奄?п@secretion

参照

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