IV期肺癌手術例の検討 山梨県立中央病院 外科 芹澤大 千葉成宏 太田仁 久保田至 藤塚光晴 西田広一郎 三井照夫 芦沢一喜 今村公一 中沢美知雄 飯田文良 はじめに 遠隔転移を有する肺癌の手術成績は一一般に不良であり、手術適応は少ないものと考えられて いる。しかし、手術時或いは、病理学的に認められた肺内転移の中には、手術後良好な予後を 示すものがあることが知られている。我々は、術後病期IV期の肺癌手術例について検討し、肺 内転移の予後について考察したので報告する。 対象および結果 図1は、1979年1月から1991年12月までの1 3年間に我々の施設において行なわれた肺癌 手術例は214例あり、このうち術後病期IV期 の症例は11例あり、これは全手術例の5.14% に相当する。今回は、この11例を検討対象と した。 図2は、11例の内訳は、年令44歳から77歳 、平均63.5歳で、男女比は9:2であった。 組織型は腺癌7例、扁平上皮癌3例、小細胞 癌1例であった。原発巣の発生部位は右側8 例、左側3例、上葉3例、中葉1例、下葉7 例であり、原発巣の大きさは3㎝以下のもの 4例、3㎝を越えるもの7例、最大のものは 、右上葉の殆どを占める肺胞上皮癌で15×10 ㎝であった。
図3は、術前後のTNM分類を示したもの
である。T因子については、胸膜播種による T4の診断が最も困難であり、全体の正診率 は11例中6例、54.5%であった。N因子につ いては、CTの導入される前の時期も含まれ るため、正診率は45.5%と低値であった。M 因子については、肺以外の臓器への遠隔転移 をM,で表し、肺内転移はPMで表した。更 に手術中に診断した肺内転移は大文字で、組 織学的に診断されたものは小文字で表した。 これらのうち術前に遠隔転移の診断がついた のは症例11のみであり、他の10例は全て手術 中又は術後にIV期と診断されたものである。 すなわち、症例2,8は手術時に肋骨および 肝への転移を認めたものであり、症例5,10 は組織学的に認められた径5m以下の小転移 である。 図4は、T因子、 N因子の手術前後での変 動を線で示したものであり、約半数で右下が り、すなわち術前診断の過小評価を示してい る。諸家の報告をみても、術前T3、特に壁 側胸膜浸潤の有無や、T4のうち、胸膜播種 や大血管への浸潤の有無の診断はしばしば困 難であり、またN因子の正診率は70%以下と するものが多く、術前病期診断の最大のweak pointとなっている。 図5は、症例5の切除された右下葉の割面 であるが、原発巣はS8にあり、最大径3,5㎝ 一28一である。 図6は、同一症例のS9の割面であり、径 5㎜未満の2個の肺内転移が認められる。 各症例にっいて行なわれた手術術式と合併 治療の内容を示した。 (図7) 局所的に原 発巣およびリンパ節の充分な切除が行なわれ たのは症例5,6,10,11の4例であり、他 の4例では単純肺葉切除、或いは腫瘍遺残の ある肺葉切除となり、胸膜播種の認められた 3例は試験開胸に終わった。 化学療法は術後2ヵ月で肺炎のため死亡し た1例を除き全例に行なわれ、放射線療法は 症例1,4,6の3例に行なわれた。(図8) 化学療法剤のうちEXはサイクロフォファマ イド(CPA, CPM)を示します。 化学療法剤は各種のものが使用されているが 、1986年までは、マイトマイシン(MMC)
、テガフール(FT)およびCOAM、すな
わちサイクロフォスファマイド、ビンクリス チン、ACNU、メトトレキセートが中心で あり、1987年以降はシスプラチンを中心とす る処方となっている。なお症例10は心疾患の 合併のため、シスプラチンの使用を断念した 0 11症例の予後は、死亡8例、生存3例であ り、死亡8例のうち7例は2年以内の死亡で 、1例は4年10ヵ月生存した。死因は、一側 肺全摘後の肺炎による在院死の1例を除いて 、いずれも癌死であった。生存3例は、1例 は担癌で15ヵ月、他の2例はdisease freeで 生存中であり、症例5が5年以上生存となっ た。2年以上生存の症例5,6,10はいずれ もTが2、Nが1以上で、局所的に充分な切 除が行なわれた肺内転移症例である。 11症例の術後の生存曲線をスライドに示し た。 (図9) Kaplan−Meier法による累積生 存率は、3年生存率34%、5年生存率17%と なった。 自験例では術後生存期間の長いIV期症例は 肺内転移例に限られたが、他の報告をみると 、骨転移、脳転移などの例の中にも少数なが ら長期生存例がみられており、単発の転移の 場合、原発巣と転移巣の切除により長期生存 の可能性がある。肺内転移の場合、特に同一 肺葉内の転移においては、原発巣と転移巣の 切除が同時に行なわれることになり、長期生 存が期待されているわけである。肺内転移例 の切除成績にっいては、最近の報告では松山 らの28例の3生率36,4%、渡辺らの3生率 43%、中川らの5生率37%など、pmを除け ば絶対治癒となる切除例においては非常に良 好な予後が示されている。肺内転移の成立には不明な点もあり、例えばN因子が0のPM
例も少なくなく、肺動脈への直接侵襲なども 考えられているが、もう1つの問題として多 発癌の可能性も考慮しなければならない。 これについては転移巣の詳細な病理学的検索 が必要であるが、いずれにしても切除後の予 後を良くする因子の1っとなるものと考えら れる。このようなことから最近では肺内転移 PMをM,とするかどうかの議論も始まって いる。 以上、自験のIV期肺癌手術例にっいて、若 干の考察を加えて報告した。 一29一1979年1月∼1991年12月 肺癌手術例 1期 fi 田A