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重症の口腔粘膜びらんを初期症状とした, ラモトリギンによるスティーブンス・ジョンソン症候群と考えられた1例

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Academic year: 2021

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(1)J Environ Dermatol Cutan Allergol,11(4):322-325,2017. 症. 例. 重症の口腔粘膜びらんを初期症状とした,ラモトリギンによる スティーブンス・ジョンソン症候群と考えられた例 佐々木奈津子),尾本. 大輔),小田 要. 友子),吉岡. 学),中村. 元信). 旨. 49 歳,男性。双極性障害に対しラモトリギンによる加療を開始された。ラモトリギン投与週 間後より,発熱,口腔粘膜びらんと,それによる嚥下困難を生じたたため,当科紹介となった。皮 膚生検にて採取された組織学的検討にて,表皮にて個細胞角化が存在し,真皮表皮境界部に炎症細 胞が浸潤していた。被疑薬同定目的に行ったリンパ球幼若化試験ではラモトリギンにて陽性を示し た。以上より,ラモトリギンによるスティーブンス・ジョンソン症候群と考えた。プレドニゾロン 60 mg/日の投与を開始し皮疹は改善した。ラモトリギンによる重症薬疹は死亡例が多く,注意喚 起されている。また,スティーブンス・ジョンソン症候群において,重症粘膜疹が体幹,四肢の紅 斑に先行した例は少ないため,症例報告を行う。 (J Environ Dermatol Cutan Allergol,11(4) :322-325,2017). キーワード:ラモトリギン,スティーブンス・ジョンソン症候群,薬疹,口腔粘膜びらん. 症. 例. 患者:49 歳,男。 主訴:口腔内に広がる潰瘍・びらん。 既往歴:双極性障害。 現病歴:44 歳時より双極性障害の治療歴があっ た。精神症状の悪化に伴い,ラモトリギンによる加 療を開始した。ラモトリギンの内服を 25 mg/日で 週間加療したのち,50 mg/日に増量した。その 日後より口腔粘膜びらんが出現し,続いて 38 度 台の発熱が出現した。嚥下困難も生じたため,すべ ての薬剤の内服を自己中断し,当院耳鼻咽喉科を受 診し溶連菌感染症を疑われ加療目的に入院した。ク リンダマイシンの投与を開始されたが,口腔内びら んは増悪した。また,入院日目ごろから背部に丘 疹が出現し,薬疹が疑われ当科紹介受診のうえ,転 科入院した。 耳鼻咽喉科初診時の内服薬: (日量)ラモトリ. ). 産業医科大学皮膚科学教室 〒807-8555 福岡県北九州市八幡西区医生ケ丘 1-1 連絡先:佐々木奈津子 掲載決定日:2017 年月 16 日. ギン 50 mg,ロフラゼプ酸エチルmg,炭酸リチ ウム製剤 400 mg,エスシタロプラム 20 mg。 入院時現症:発熱 38.3℃。 皮膚:口蓋および口唇に全周性にびらん・潰瘍を 伴い,開口障害があった(Fig. 1a)。 背 部 お よ び 前 胸 部 に 紅 色 丘 疹 が 散 在 し( Fig. 1b),両頸部の軽度リンパ節腫大を認めたが,眼症 状は認めなかった。 血液検査所見:TP 6.5 g/dl,Alb 3.5 g/dl,LDH 269 U/l,AST 31 IU/l,ALT 38 IU/l,BUN 11 mg/dl, Cre 0.84 mg/dl,Na 138 mmol/l,K 3.8 mmol/l, Cl 102 mmol/l,CRP 9.10 mg/dl,WBC 4,900/μl (Seg 47.0%,Stab 18.0%,Eos 3.0%,Baso 0.0%, Lympho 18.0%,Mono 13.0%,Atypical-Lympho 1.0% ),Hb 14.4 g/dl,PLT 196,000/μl,HSV IgG 0.2(−)COI,HSV IgM 0.09(−)COI,VSV IgG 12.0(+)COI,VSV IgM 0.17(−)COI,CMV IgG 37.5(+)COI,CMV IgM 0.34(−)COI,EBV IgG.

(2) J Environ Dermatol Cutan Allergol・Vol. 11(2017). ― 323 ―. (b). (a). (c) Fig. 1:初診時の所見 (a)口唇・口腔:全周性に潰瘍・びらんを伴い,開口障害がある。 (b)前胸部:米粒大までの紅色丘疹や紅斑が散在する。 (c)皮膚病理組織:表皮には壊死性ケラチノサイトが散在し,真皮浅層にリンパ球浸潤と 一部空胞変性がみられる。. 160 倍,EBV IgM <10 倍,抗 EBNA 抗体 169 倍, ASO 49 IU/ml(基準値 240 IU/ml 未満),抗 Dsg  抗体<3.0 U/ml,抗 Dsg 抗体< 3.0 U/ml,抗核 抗体<40 倍。 DLST 検査:ラモトリギン S.I 1.8,122 cpm(control 67 cpm)。. 上層の血管周囲にリンパ球浸潤がみられた(Fig. 1c)。 治療および経過:耳鼻科入院後よりクリンダマイ シン 1,200 mg/日にて加療したが臨床症状は改善せ ず,当院転科後にクリンダマイシン投与を中止,ス. 皮膚病理組織:口腔内の生検は同意が得られず, 背部の紅色丘疹より生検を行った。弱拡大で真皮浅. ティーブンス・ジョンソン症候群と診断し,プレド ニゾロン 30 mg/日の静脈内投与を開始した。しか し,口腔内びらんならびに背部の丘疹は軽快せず,. 層に炎症細胞が浸潤し,強拡大で不全角化および表 皮内に壊死性ケラチノサイトを散見した。表皮真皮 境界部にリンパ球浸潤および空胞変性があり,真皮. プレドニゾロン 60 mg/日に増量して口腔粘膜症状 ならびに皮疹は改善され,経口摂取も可能となっ た。内服薬をすべて中止していたため,不眠などの.

(3) ― 324 ―. 佐々木奈津子他:ラモトリギンによる重症口腔粘膜びらん. Fig. 2:経過 耳鼻科にてクリンダマイシンを投与されていたが改善が乏しく,当科入 院のうえプレドニン 30 mg の投与を開始した。しかし反応乏しくプレドニ ン 60 mg まで増量したところ改善し、以後漸減し退院した。. 精神症状の悪化がみられた。DLST 検査にてラモト リギンのみが S.I 1.8 と陽性であったため,精神科 と連携して他の内服薬(ロフラゼプ酸エチル,炭酸 リチウム製剤,エスシタロプラム)を徐々に再開し た。精神症状も安定し,皮疹の悪化もなく,プレド ニゾロン 30 mg/日まで漸減して入院 15 日目に退院 となった(Fig. ઄) 。なお,薬剤の皮膚貼布テスト は患者の同意を得られず,実施しなかった。 診断:粘膜疹が先行し,播種状紅色丘疹様の皮疹 が出現したという非典型的な臨床像であったが, DLST はラモトリギンで陽性を示したこと,皮膚生 検にて表皮に壊死性ケラチノサイトを呈しており, 粘膜疹を初期症状としたスティーブンス・ジョンソ ン症候群と考えた。 考. 察. であることから,ラモトリギンの果たす役割は大き い。しかし,皮膚障害のリスクが高く,そのファク ターとしては①用法・用量の非順守例,②バルプロ 酸併用例,③他の抗てんかん薬での薬疹の既往例, ④ 13 歳以下の小児,⑤投与週以内があげられて 2) いる 。しかし,2014 年月〜12 月には因果関係の 否定できない重篤な皮膚障害をきたした死亡例が 例確認され,2015 年月に厚生労働省は安全性速 報(ブルーレター)で注意喚起情報提供を行った。 これを受けて,日本うつ病学会と日本神経精神薬理 学会,日本臨床精神神経薬理学会は学会連名のス テートメントを発表した。そのなかで重篤な皮膚障 害が発現した症例のうち,57.8%は用法・用量を遵 守したうえで発生しているとの報告に触れ,「リス クファクターを排除すれば 100%安全に使用できる 訳ではないことに留意する必要がある」と解説して. ラモトリギンは 2008 年に抗てんかん薬としてわ が国で使用が開始された。さらに,2011 年に双極 性障害治療薬としても承認された。本剤は双極性障 害のうつ病相に対してより高い予防効果を示し,短. いる。患者への十分な説明に加え,皮疹の特性から 薬剤性の判断がむずかしいため,投与と皮疹の出現 時期から広く薬疹の可能性を想定して診療に臨むよ 3) う求めている 。. 周期で再発頻度の高い症例において特に有効である とされる。また,副作用としては,急性期の皮膚症. 自験例は精神科主治医より本人に薬疹のリスクを 十分に説明され,容量についても慎重に増量する方 針を取られていた。しかしながら,粘膜疹から発症 したという非典型的な経過をとったことから患者自. 状をのぞくと忍容性は総じて高く,他の気分安定薬 1) より優れているとされる 。双極性障害患者は気分 障害エピソードに翻弄され,その大部分はうつ病相. 身がラモトリギンの副作用の可能性を想定できず,.

(4) J Environ Dermatol Cutan Allergol・Vol. 11(2017). 発熱や粘膜疹自覚後にも服薬を続け重症化した。ラ モトリギン投与例には,薬疹のさらなる詳細な説明 が必要であると考えた。 本症例は被疑薬同定方法として DLST を用いた が,ラモトリギンは陽性で,他剤は陰性であった。. ― 325 ―. な お,本 論 文 の 主 旨 は,第 45 回 日 本 皮 膚 ア レ ル ギー・接触皮膚炎学会総会学術大会(2015 年 11 月 20 日〜22 日,於島根県)にて報告した。 利益相反. なし. DLST は in vitro の被疑薬同定検査として有効な方 法である一方,偽陽性や偽陰性の可能性は完全には 否定できないため,本症例がラモトリギンと確定す. 文. 献. るのは慎重に行う必要がある。本疾患を発症する前 の向精神薬などは内服再開を行い皮疹が再燃しない ことを考えると,粘膜疹出現時のトリガーとしては ラモトリギンが最も可能性として高いと考えられ. 1)中村明文, 近藤. る。一方,耳鼻科入院中に使用したクリンダマイシ ンも皮疹の悪化に寄与した可能性は完全には否定で きず,今後投与する際は慎重を要すると考える。ま. 2)荻野清子, 堺由利子, 荒木隆秀:ラモトリギンの適. た,本症例のように重症型薬疹を呈する場合は, チャレンジテストは非現実的であり,パッチテスト も皮疹を惹起する可能性は完全に否定できず,今 後,より精度の高い検査方法の開発が待たれる。. 3)尾崎紀夫, 石郷岡純, 大谷浩一,「ラモトリギンに関. 毅: 【双極性障害治療薬としての. lamotrigine】Lamotrigine への期待. 双極性障害. 治療における役割, 臨床精神薬理, 15:1343-3474, 2012 正使用及び皮膚障害の発現状況解析, 佐世保市立総 合病院紀要, 40:1340-6906, 2015 する連名ステートメント」 :www.asas.or.jp/jsnp/ img/csrinfo/20160120.pdf. Stevens-Johnson Syndrome with Initial Severe Oral Mucosal Erosion Possibly Induced by Lamotrigine Natsuko SAITO-SASAKI1), Daisuke OMOTO1), Tomoko ODA1), Manabu YOSHIOKA1), Motonobu NAKAMURA1) 1). Departoment of Dermatology, University of Occupational and Enviromental Health 1-1, Iseigaoka, Yahatanishi-ku, Kitakyushu-shi, Fukuoka, 807-0804, Japan. A 49-year-old man had been treated for bipolar disorder. He exhibited a high fever and severe oral mucosal erosion with dysphagia three weeks after lamotrigine administration. He was referred to our department for evaluation. A skin biopsy specimen taken from a papule on his trunk revealed necrotic keratinocytes in the epidermis, and infiltration of lymphocytes and neutrophils into the interface. The lymphocyte stimulation test(LST)was positive with lamotrigine. Based on the clinical course and laboratory examination, we diagnosed his skin eruption as Stevens-Johnson syndrome caused by lamotrigine. After daily administration of prednisolone at 60 mg and discontinuation of lamotrigine, his eruption markedly improved. There have been many case reports on severe cutaneous adverse reactions induced by lamotrigine. Compared with other reports, our patient had an unusual clinical manifestation in which severe oral membrane erosion preceded the development of erythema and papules on the trunk and extremities. (J Environ Dermatol Cutan Allergol, 11(4):322-325, 2017). Key words :lamotrigine,Stevens-Johnson syndrome,severe cutaneous adverse reaction,oral membrane erosion.

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