2015, Vol. 28, No. 2, 47
–54
母親の楽観主義が育児幸福感に及ぼす影響
関西学院大学大学院文学研究科 関西学院大学文学部
金田 亜里沙
大竹 恵子
The effect of maternal optimism on their happiness in child rearing
Arisa Kaneda
*
1and Keiko Otake
*
2(*1
Graduate School of Humanities, Kwansei Gakuin University,
*2Depertment of Integrated Psychological Sciences, Kwansei Gakuin University
)The purpose of this study was to develop a scale measuring mothers
’level of happiness in the daily events of
child rearing and to investigate the effect of maternal optimism on their happiness in child rearing. Six hundred
seventy-six mothers with toddlers (age one through preschool) completed a questionnaire containing scales on
optimism, child-rearing happiness in daily events, happiness regarding child care, and feelings about child
rear-ing. The main results were as follows: (1) factor analysis revealed that the
“child-rearing happiness in daily events
”scale consists of two factors, called
“care giving
”and
“interacting with toddlers
”and (2) regression analysis
revealed that optimism is related to increased child-rearing happiness in daily events, happiness in child care, and
positive feelings about child-rearing. Also, optimism decreases negative feelings about child-rearing. These results
indicated that the
“child-rearing happiness in daily events
”scale can measure the degree of happiness felt by
mothers in daily child rearing.
Key words: optimism, child-rearing happiness, subjective well-being, daily life, mother
問 題
次世代を担う子どもたちを育むことは人間にとって 重要な役割のひとつであるが,親にとって育児は,と きにさまざまな問題や病態を引き起こす要因になるこ とが指摘されている。たとえば,子どもを持つ親は 子どもがいない人に比べてうつ病の有病率が高く (Evenson & Simon, 2005
),日常生活においてポジ ティブ感情よりもネガティブ感情を感じ,とりわけ母 親は育児の中で怒りというネガティブ感情を多く感じ ている(Ross & Van Willingen, 1996
)など,育児が 主観的ウェルビーイングの低さと関連することを示唆 する研究が多い(Kahneman, Krueger, Schkade, Schwarz,
& Stone, 2004; McLanahan & Adams, 1987
)。わが国 でも,育児ストレスが抑うつに影響すること(佐藤・ 菅原・戸田・島・北村,1994
)や末子の年齢や母親 の就労形態,周囲からのサポートという要因が育児感 情の中の負担感に影響することが報告されている(荒 牧・無藤,2008
)。 しかしながら我々人間は当然,親になることや子ど もを育てることを通してさまざまなポジティブな影響 も受ける。たとえば,育児という経験を通して,誰か を育てるということの意味を見出したり,育児に対す る喜びや満足感が高まることが明らかにされている (Russell, 1974; Umberson & Gove, 1989; White &
Dolan, 2009
)。また,子どもを持つ人にとっては,日常のさまざまな活動のうち育児という活動がもっとも ポジティブ感情や人生の意義を感じる要因となってい ること(
Nelson, Kushlev, English, Dunn, & Lyubomirsky,
2013
),親になることによって人生の意義や目標への 追求意欲が高まることも報告されている(Delle Fave &
Massimini, 2004; Baumeister, 1991
)。人生の意義や目 的への意識は,主観的ウェルビーイングにとって不可 欠であるため(Ryff, 1989; Steger, 2009
),親になり人 生の意義や目的意識が高まることによって幸福感が 高まることが示唆されている(Nelson, Kushlev, &
Lyubomirsky, 2014
)。このように子どもを持たない人 との比較研究から,子どもを持つ親は,幸福感や人生 満足度,人生の意義に関する得点が高いことが示され ているが,この傾向はとりわけ父親や26
∼62
歳の親 において顕著であり,一方,母親や17
∼25
歳の若い 親,未婚の親ではポジティブな影響が認められないこ とも明らかにされている(Nelson et al., 2013
)。すなわち,育児によるポジティブな影響にはさまざまな条 件が存在することが考えられる。 このように近年,母親の主観的ウェルビーイングを 支える育児に関連したポジティブな要因を検討する研 究が注目されている。わが国では,母親の主観的ウェ ルビーイングを扱った研究は多くはなく,育児中に感 じる肯定的な感情である育児幸福感について研究が行 われてきた(
e.g.
清水・関水・遠藤・落合,2007;
清水・ 関水・遠藤,2010a
)。主観的ウェルビーイングは, 人生満足感という認知的側面と日常のポジティブ感情 の強さ/ネガティブ感情の弱さである感情的側面を統 合した概念(Diener, 1984
)と定義されているため, 育児幸福感は親の育児に関する狭義の意味での主観的 ウェルビーイングを測定している概念だと考えられ る。そこで本研究では,最終目標を主観的ウェルビー イングと設定し,それを支える重要な要素のひとつと して育児に焦点をあてた育児幸福感について検討す る。 日本の育児幸福感研究として,清水他(2010a
)は 育児中に感じる肯定的な感情を育児幸福感とし,尺度 を開発している。この尺度では,日々の育児の中で母 親が感じる全般的な喜びを育児の喜び,子どもと母親 あるいは他者との間に起こった出来事から母親と子ど もとの関係のゆるぎなさを実感し安堵する気持ちを子 どもとの絆,子育てを通して感じる夫婦や家族の絆や 誇りなど間接的な育児幸福感を夫への感謝とし,これ らの3
因子から育児幸福感を定義している。そして育 児の喜びや夫への感謝が高いほど主観的幸福感が高 く,育児の喜びが低いほど絶望感が高いことを明らか にしている。しかしながら,この育児幸福感尺度では, 育児幸福感を測定する項目内容として具体的な育児場 面や状況が考慮されていない。精神的健康や感情状態 は状況に応じて異なった反応を示すことが指摘されて おり,たとえば自己愛傾向と精神的健康との関係で は,ストレッサの少ない状況においてのみ両者に関連 があることや(小西・山田・佐藤,2008
),対人欲求 が対人不安に及ぼす影響は状況によって異なる(清 水,2007
)という研究報告がある。また,Kahneman
et al.
(2004
)は,仕事や家事,子どもの世話など特定 の状況ごとに行動や感情を記録させる1
日再現法(the
Day Reconstruction Method; DRM
)を開発し,ポジ ティブ感情得点の高さから活動をランク付けした。そ の結果,女性にとって育児は日常での活動16
項目中12
位であり,育児や家事よりも買い物やテレビを見 る方がより楽しいと感じていることを明らかにしてい る。これらのことから,育児幸福感を測定する際にも どのような場面や状況で幸せを感じるのかを把握する ことは重要であり,このことは効果的な介入研究を行 う上でも有益な知見になると考えられる。そこで本研 究では,育児幸福感を感じる場面に着目し,状況を考 慮した日常生活での育児幸福感尺度の開発を試みるこ とを第1
の目的とする。日常生活での育児幸福感は育 児幸福感(清水他,2010a
)の「育児の喜び」,「子ど もとの絆」および育児感情(荒牧,2008
)の「肯定感」 との間に中程度から強い相関がみられると予測した。 先に述べてきたようにわが国では育児幸福感に関す る研究は多くはないが,育児幸福感に影響する要因が いくつか報告されている。関水・清水(2007
)は, フルタイム,パートタイム,専業主婦という母親の就 労形態別に育児幸福感を比較し,専業主婦の母親は他 の就労形態の母親と比べて,夫からのサポートの有無 が育児幸福感により強く関連することを示している。 またフルタイムの仕事を持つ母親は,子どもの成長に 対する喜びによって社会参加に対する不安感が緩和さ れることを明らかにしている。この他にも,清水・関 水・遠藤・落合(2010b
)は,母親や末子の年齢が上 がるにつれて母親の心のゆとりが生まれ,育児幸福感 が高まることを報告している。しかしながら,先に指 摘されている母親や末子の年齢,母親の就労形態は, 操作不可能もしくは操作が困難な要因だといえる。育 児支援や虐待防止などの臨床的なアプローチだけでは なく,育児に対する満足感や充実感を高めるといっ た,よりポジティブな成果を目指したアプローチを行 うためには,育児幸福感に影響を及ぼす個人要因につ いても検討する必要があると考えられる。 本研究では育児幸福感に影響を与えるひとつの要因 として,楽観主義(optimism
)に注目したい。楽観 主義とは,物事がうまく進み,悪い出来事よりも良い 出来事が起こるという信念を持つ傾向(Scheier &
Carver, 1985
)やポジティブな結果を期待する傾向(
Kassinove & Sukhodolsky, 1995
)など研究者によっ て定義はさまざまであるが,結果の予測に関わる要因 であるため,育児という継続する事象に対する幸福感 にも関連があるのではないかと考えられる。 楽観主義は,これまで主に健康との関連から注目さ れてきた。たとえば,冠状動脈バイパス手術を受ける 患者のうち,楽観主義者は術前に将来の計画を立てて 回復目標を設定するがネガティブな側面には焦点をあ てないこと(Scheier, Matthews, Owens, Magovern,
Lefebvre, Abbott, & Carver, 1989
),バイパス手術後で は楽観主義者は悲観主義者に比べて術後5
年の間にビ タミンや低脂肪食品を積極的に摂取したり,心臓のリ ハビリテーションプログラムに積極的に関与するなど (Scheier & Carver, 1992
),楽観主義が患者の術前術 後行動と関連することが報告されている。また,12
年間の疫学研究から,楽観主義が心臓発作や致死性冠 動脈性心疾患の罹患率を下げる予測因子である可能性 (Kubzansky, Sparrow, Vokonas, & Kawachi, 2001
)や,高齢者を対象にした
10
年間の縦断研究からは楽観主 義者が悲観主義者よりも死亡率が低いこと(Giltay,
Geleijnse, Zitman, Hoekstra, & Schouten, 2004
)が示 されている。これらの結果は,楽観主義者は現状から 逃避するという対処ではなく,将来に対する期待を含 め た 対 処 行 動 を 行 う た め 病 気 が 進 行 し に く い (Ironson, Balbin, Stuelzle, Fletcher, O
’Cleirigh,
Laurenceau, Schneiderman, & Solomon, 2005
)とい う報告例からも理解できる。またわが国の研究では, 楽観主義者は悲観主義者よりも抑うつが低く,主観的 健康感や自己効力感が高いことが報告されている (戸ヶ崎・坂野,1993
)。 以上のことから,楽観主義という要因は母親の行動 や心身の状態にも影響を与える可能性が考えられる。 母親を対象にした研究を見てみると,たとえば楽観主 義が母親の不安や抑うつ,育児に関する負担感などを 弱める機能を持つこと(Taylor, Widaman, Robins,
Jochem, Early, & Conger, 2012
),初産の母親における 知覚されたストレスは楽観主義を介して健康促進行動 に影響を与えること(Gill & Loh, 2010
),新生児集中 治療処置室に入院中の子どもを持つ母親のうち楽観主 義者は,回避的な対処方略ではなく,認知的な対処方 略を用いる傾向があり,子どもの入院中および退院1
か 月 後 の 知 覚 さ れ た ス ト レ ス が よ り 少 な い こ と (McIntosh, Stern, & Ferguson, 2004
)が明らかにされ ている。また楽観主義は妊娠中の行動にも影響を及ぼ す可能性が示唆されており,楽観主義者は妊娠中の薬 物乱用に陥りにくいこと(Strack, Carver, & Blaney,
1987
),楽観主義が妊娠後期や出産後の抑うつのリス ク を 低 下 さ せ る 予 測 因 子 で あ る こ と(Carver &
Gaines, 1987
)が指摘されている。 このような楽観主義と健康のメカニズムを説明する 媒介要因のひとつとして,免疫の活性化が指摘されて いる。楽観主義傾向の強い高齢者はインフルエンザワ クチンの効果が高く(Costanzo, Lutgendorf, Kohut,
Nisly, Rozeboom, Spooner, Benda, & McElhaney,
2004
),楽観主義者は将来への楽観的な見込や期待を 持っているため,ポジティブ感情の高まりによって免 疫が強化されること(Segerstrom, 2006; Segerstrom
& Sephton, 2010
)が報告されている。つまり,良い 結果の予測と期待を高く持つ楽観主義者は,さまざま な問題に直面した際,ポジティブ感情が生起しやすく (Scheier & Carver, 1992
),その結果,楽観主義が健康に影響を及ぼしていると考えることができる。 以上のことから,母親の楽観主義傾向が育児中に感 じる肯定的な感情である育児幸福感に影響を与えると 予測できる。そして,この育児幸福感は母親の主観的 ウェルビーイングを支える重要な要因だといえる。し かしながら,母親の楽観主義と育児幸福感との関連に ついてはこれまで検討されていない。 そこで本研究では,日常生活での育児幸福感尺度を 開発することを第
1
の目的とし,楽観主義と育児幸福 感との関係について検討することを第2
の目的とした。方 法
調査対象者と手続き 調査対象者は1
歳から6
歳(未就学)の子どもを 持つ母親計676
名で,平均年齢は34.56
±4.91
歳(範 囲:21
∼45
歳)であった。調査対象者の未既婚の内 訳は,未婚18
名,既婚658
名であった。また職業の 内訳は,公務員12
名,経営者・役員1
名,会社員(事 務系)65
名,会社員(技術系)6
名,会社員(その他)17
名,自営業5
名,自由業3
名,専業主婦475
名,パー ト・アルバイト84
名,その他8
名であった。調査は モニター会社に依頼し,個人情報保護方針については モニター会社の規定を利用した上で匿名化されたデー タのみを取得し,調査内容についてはモニター会社で の倫理審査を経たのちにWeb
上で実施した。 調査内容 フェイスシート 性別,年齢,年代,居住地域(都 道府県・地方),職業,未既婚,子どもの有無,家計・ 経済状況(満足しているか),夫婦関係(仲が良いか), 育った家庭環境(恵まれていたと思うか),今の健康 状態(良いか)の計12
項目を用いた。 育児感情尺度 育児への否定的な感情と肯定的な感 情を測定する尺度(荒牧,2008
)は,育児への束縛 による負担感,子どもの態度・行為への負担感,育て 方への不安感,育ちへの不安感,肯定感の5
因子,計21
項目で構成されており,評定方法は,「まったくな い(1
点)」∼「よくある(4
点)」の4
件法であった。 育児幸福感尺度 育児中に感じる肯定的な感情を育 児幸福感として捉えている育児幸福感尺度(清水・関 水・ 遠 藤・ 落 合,2007
) の 短 縮 版 尺 度( 清 水 他,2010a
)を用いた。この尺度は育児の喜び,子どもと の絆,夫への感謝の3
因子,計13
項目で構成され, 回答方法は,「あてはまらない(1
点)」∼「あてはまる (5
点)」の5
件法であった。 楽観主義尺度 中村(2000
)によって邦訳されたLife Orientation Test
(Scheier & Carver, 1985
)の日本 語版であり,楽観主義傾向を測定する尺度である。こ の尺度は楽観的自己感情と悲観的自己感情の2
因子, 計8
項目と4
つのフィラー項目で構成され,回答方 法は「全くあてはまらない(1
点)」∼「非常にあてあ まる(5
点)」の5
件法であった。なお,本研究では 楽観的自己感情因子の4
項目の合計/項目数を楽観主 義得点として使用した。 日常生活での育児幸福感尺度 本研究では,従来の 育児幸福感尺度には含まれていない,日常生活の中で 頻繁に経験する出来事に対する感じ方・家事や子ども とのかかわりの中で感じる幸福の程度を測定するため に独自に項目を作成した。先行研究を参考に,育児をしている母親に意見聴取を行い,「育児中の母親が日 常生活の中で頻繁に経験する出来事・場面」について 検討し,最終的に計
13
項目を作成した。回答方法は, 各項目についてうれしいと感じる程度を測定するため 「うれしくない(1
点)」∼「うれしい(5
点)」の5
件 法とした。結 果
日常生活での育児幸福感尺度の検討 各項目の回答分布から回答偏向について検討し, 「うれしい」の選択肢に70
%以上の回答の偏りが見ら れた2
項目を除外した。また,項目分析および信頼性 分析から1
項目を除外した。以上の結果から,10
項 目について因子分析(最尤法,プロマックス回転)を 行ったところ,2
因子と解釈することが妥当だと考え られた。Table 1
に因子分析の結果と各項目の平均値,SD
を示した。 第1
因子は「子どもの食事を作っているとき」や 「子どもに洋服を着替えさせるとき」など家事や子ど もの世話に関する項目で構成されており,「生活場面」 因子と名づけた。第2
因子は「子どもと手をつないで 歩いているとき」や「子どもが,両親以外の人と楽し そうに遊んでいるとき」など子どもとの直接的なかか わりに関する項目内容であり,「関係性場面」因子と 解釈した。両因子の相関はr
=.64
であった。抽出さ れた2
つの因子について信頼性α
係数を算出したとこ ろ,第1
因子の「生活場面」はα
=.87
,第2
因子の「関 係性場面」はα
=.78
,尺度全体ではα
=.88
であり, 各因子の内的整合性を確認できた。育児幸福感尺度短 縮版尺度,育児感情尺度,楽観主義尺度については, 先行研究にしたがって因子分析を行い,因子構造が同 じであることを確認した。次に作成した尺度の併存的 妥当性について検討するため,本研究で作成した日常 生活での育児幸福感尺度と育児幸福感尺度短縮版尺度 および育児感情尺度との相関分析を行った。その 結果,日常生活での育児幸福感の関係性場面と育児幸 福感の育児の喜び(r
=.66, p
<.01
),子どもとの絆(r
=.52,
p
<.01
),育児感情の肯定感(r
=.55, p
<.01
)との間 に強い正の相関がみられた。また,日常生活での育児 幸福感の生活場面と育児幸福感の育児の喜び(r
=.48,
p
<.01
)および育児感情の肯定感(r
=.39, p
<.01
)と の間に中程度の正の相関がみられた。これらの結果 は,日常生活での育児幸福感尺度の併存的妥当性を示 していると考えられた。 日常生活での育児幸福感,育児幸福感および育児感情 得点 日常生活での育児幸福感,育児幸福感および育児感 情得点の平均値とSD
を算出した(Table 2
)。この値 を 清 水 他(2010a
) の 育 児 幸 福 感 尺 度 お よ び 荒 牧 (2008
)の育児感情尺度の平均値/項目数と比較する と,先行研究とほぼ同程度であると考えられた。本研 究ではモニター会社に依頼しWeb
上で調査を実施し たため,従来型の質問紙調査とは異なる傾向が認めら れる可能性が考えられたが,これらの結果から本研究 のデータは従来型の質問紙調査で得られたものと同様 であると考えられた。 Table 1 日常生活での育児幸福感尺度の各項目の因子負荷量,共通性および平均値(SD) 因子負荷量 共通性 平均値(SD) 第1因子 生活場面(α=.87) 子どもの食事を作っているとき .92 −.10 .69 3.43 (0.89) 子どもの服を洗濯し,たたんでいるとき .80 .01 .68 3.57 (0.91) 子どもの食事が終わった後,片づけ(食器洗いなど)をしているとき .74 −.12 .49 3.26 (1.04) 子どもに洋服を着替えさせるとき(子どもの着替えを手伝うとき) .66 .14 .60 3.51 (0.92) 子どもと一緒にお風呂に入っているとき .55 .26 .57 3.75 (0.88) 第2因子 関係性場面(α=.78) 子どもと手をつないで歩いているとき −.16 .81 .60 4.53 (0.71) 子どもの洋服など,必要なものを選んでいるとき .04 .67 .50 4.29 (0.79) 子どもが,知らない人の前や知らない場所で「ママ!」と頼ってくる とき .15 .58 .47 4.11 (0.87) 子どもが,両親(あなたとあなたの夫)以外の人と楽しそうに遊んで いるとき −.05 .54 .41 4.07 (0.88) 子どもに絵本を読んであげているとき .30 .47 .50 3.89 (0.84) 因子間相関 F2 F1 .64楽観主義と日常生活での育児幸福感,育児幸福感およ び育児感情の関係 楽観主義と日常生活での育児幸福感,育児幸福感お よび育児感情の関係について検討するため,相関分析 を行った。その結果,楽観主義と日常生活での育児幸 福感の生活場面(
r
=.38, p
<.01
),関係性場面(r
=.31,
p
<.01
),育児幸福感の育児の喜び(r
=.31, p
<.01
), 夫への感謝(r
=.35, p
<.01
)および育児感情の肯定感 (r
=.31, p
<.01
)との間に中程度の正の相関がみられた。 楽観主義が日常生活での育児幸福感,育児幸福感お よび育児感情に及ぼす影響について検討するため,楽 観主義を説明変数,日常生活での育児幸福感の2
下位 尺度,育児幸福感の3
下位尺度,育児感情の5
下位尺 度それぞれを目的変数とした単回帰分析を繰り返した (Table 2
)。その結果,楽観主義は日常生活での育児 幸福感の2
下位尺度,育児幸福感の3
下位尺度,育児 感情のうち育ちへの不安感を除く4
下位尺度にとって 有意な説明変数であった。とくに,楽観主義が日常生 活での育児幸福感の生活場面と関係性場面,育児幸福 感の夫への感謝に強く影響を与えることが示された。考 察
本研究では,日常生活での育児幸福感を測定するた めの尺度を開発し,楽観主義と育児幸福感との関係に ついて検討するため,1
歳から6
歳(未就学)の子ど もを持つ母親を対象に調査を行った。本研究では,母 親にとって育児は生活の一部であるため日常生活での 場面や状況を考慮した育児幸福感の測定が必要だと考 え,尺度を開発した。因子分析および信頼性分析の結 果から,本研究で作成した日常生活での育児幸福感尺 度は2
つの因子から構成されることが確認され,この 尺度を用いることによって母親が経験する具体的な育 児場面での幸福感の程度を測定できると考えられた。 現時点では尺度の再テスト信頼性などの検討が不十分 であることから,今後さらに尺度としての検討が必要 だと考えている。 楽観主義と育児幸福感との関係については,単回帰 分析の結果,楽観主義が日常生活での育児幸福感,育 児幸福感および育児感情(育ちへの不安感を除く)に 影響を与えることが示された。この結果は,親の自信 という楽観的な認知がウェルビーイングと関連を持つ (Williams, Joy, Travis, Gotowiec, Blum-Steele, Aiken,
Painter, & Davidson, 1987
)ことや,やればできると 思えるような経験によって得た育児への自信が高い母 親は高い育児幸福感を示す(清水,2013
)ことから も支持されたといえる。本研究では,楽観主義と育児 幸福感を直接的な関係として位置付け,楽観主義が育 児幸福感を高める要因として寄与する可能性を検討し たが,一方で楽観主義が必ずしもポジティブな結果を もたらすわけではない可能性も示唆されている。たと えば,楽観主義者は悲観主義者に比べて心臓発作のリ ス ク に つ い て 学 ぶ 努 力 を し な い 傾 向 に あ る こ と (Radcliffe & Klein, 2002
)や,楽観主義者は自分が重 大だと感じる健康問題やリスクにのみ焦点を当てるこ とが指摘されており(Aspinwall & Brunhart, 1996
), 母親の育児という問題を取り上げる際にも,楽観主義 とリスク認知バイアスの関係を考慮する必要性が示唆 される。親であることと主観的ウェルビーイングの関 係には,さまざまな要因や条件が複雑に関連すること が指摘されている(Nelson et al., 2014
)。楽観主義と 育児幸福感の因果関係についても,母親が育児という さまざまな状況をどのようなリスクとして認知してい るのかということや,楽観主義と育児幸福感を媒介す る変数も含めて今後さらに検討していく必要があると 考えられる。 本研究では母親の個人要因のひとつとして楽観主義 をとりあげたが,自己効力感や自己イメージといった 自己に対するポジティブな認知が主観的ウェルビーイ ングと関係することが指摘されている。たとえば,自 Table 2 楽観主義が日常生活での育児幸福感,育児幸福感および育児感情に及ぼす影響 説明変数 目的変数 平均値(SD) R2 F Adj.−β 楽観主義 日常生活での育児幸福感 生活場面 3.50 (0.75) .14 113.47 .38* 関係性場面 4.18 (0.60) .09 70.41 .31* 育児幸福感 育児の喜び 4.46 (0.63) .09 70.99 .31* 子どもとの絆 4.19 (0.70) .04 30.10 .21* 夫への感謝 3.95 (0.97) .12 95.95 .35* 育児感情 育児への束縛による負担感 2.72 (0.67) .02 17.31 −.16* 子どもの態度・行為への負担感 2.48 (0.68) .04 32.20 −.21* 育て方への不安感 2.69 (0.75) .04 30.96 −.21* 育ちへの不安感 2.22 (0.81) .00 3.65 −.07 肯定感 3.34 (0.60) .09 69.35 .31* * p<.001己効力感が高い母親は高い主観的ウェルビーイングを 示すこと(西出・江守,
2011
)や,反対に自己効力 感が低い母親は育児への自信がなく,子どもとゆっく りとした気分で過ごすことがないと感じていること (佐々木・後藤・矢部・安村,2010
)が報告されている。 また,自己イメージが肯定的な母親は育児不安が低 く,支援されているという認知が高いことが指摘され ていることから(眞 ・橋本・奥富・池田,2011
), 今後はこれらの自己に関する要因と楽観主義との関係 についても明らかにしながら,育児幸福感および母親 の主観的ウェルビーイングのメカニズムについて検討 することが必要だと考えられる。Nelson et al.
(2014
)は,親の主観的ウェルビーイ ングに関する仮説モデルを提唱し,主観的ウェルビー イングを高める要因として,人生の目的/意義,人間 としての欲求,ポジティブ感情,社会的役割を,一方 ネガティブな要因としてネガティブ感情,経済面での 負担,睡眠障害,ぎくしゃくした夫婦関係をあげ,こ れらが主観的ウェルビーイングに影響を与える可能性 を示唆している。たとえば母親の社会的役割のひとつ として就労状況をあげることができるが,清水他 (2010b
)はフルタイマーとパートタイマーでは妻が 働くことについての夫の考え方や理解が異なることを 指摘し,就労形態と育児幸福感の関係は複雑であると 述べている。このことは,母親が仕事をすることに対 する周りのサポートが重要であることを意味してお り,多くのソーシャルサポートを得ている母親は心の 健康度が高いこと(西出・江守,2011
)や,父親の 育児・家事参加度が高い家庭では,母親の育児への肯 定感が高く,育児による制約感が低い(柏木・若松,1994
)という研究結果からも理解できる。今後は,Nelson et al.
(2014
)が指摘したような要因を含む包 括的なモデルを想定した上で,母親の育児幸福感さら には主観的ウェルビーイングを支える要因について検 討することも必要だろう。 この他にも母親の育児幸福感を考える際に考慮すべ き要因がある。Dyrdal & Lucas
(2013
)は,妊娠中や 子どもの誕生直後には人生への満足が強化されるが,2
年以内に妊娠前と同じ状態に戻ることを明らかにし ている。別の研究では,子どもの誕生直後には主観的 ウェルビーイングが高まるが,最初の1
年以内に元の 状態に戻る(Clark, Diener, Georgellis, & Lucas, 2008;
Miller & Sollie, 1980
)という報告もある。このこと は,子どもの年齢が上がるにつれてさまざまな問題が 生じ,時間経過に伴って育児幸福感が変化する可能性 を示唆しており,母親の育児幸福感を高める支援を行 うためには,さまざまな状況を考慮した上で母親の心 身の状態を理解することが重要であると考えられる。 本研究では母親の育児幸福感に焦点をあてて検討し たが,母親の育児幸福感を高めることは,母親本人だ けではなく,子どもにとっても良い効果をもたらすこ とが期待できる。Nelson et al.
(2013
)は,感情経験 (Haviland & Lelwica, 1987
)や熱中,温かさ(Klein
& Forehand, 2000
),自己制御(Park & Peterson,
2006
)などのポジティブな親の要因は,子にとって も良い結果を導くと述べている。母親の主観的ウェル ビーイングが子どもや家族はもちろん,地域や社会の ウェルビーイングにも繋がると考えると,次世代の子 どもの健全な育成という重要な責務を担っている (母)親の幸福感を高める要因の解明と介入を目指し た実証研究が今後さらに必要になると考えられる。 利益相反自己申告:申告すべきものなし引用文献
荒牧美佐子(2008
).幼稚園への入園前後における母 親の育児感情の変化 家庭教育研究所紀要,30,
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–149.
荒牧美佐子・無藤 隆(2008
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–97.
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