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共罰的事後行為について

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Academic year: 2021

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共罰的事後行為について

 

 

 

一   不可罰的事後行為 二   共罰的事後行為の本質 三   強盗の例外性の強調 四   不保護後の遺棄 五   まとめ

 

不可罰的事後行為

共罰的事後行為に関する最高裁のリーディング・ケースともいえる判例 、即ち共犯の一人が覚せい剤を騙取ないし盗 取し財物の占有を確保した︵一項詐欺ないし窃盗成立︶後、もう一人が取還を防ぐために殺害するつもりで狙撃したが これを遂げなかったという場合に、二項強盗殺人未遂の包括一罪が成立するとされた事例に関する最高裁判所判例解説 に お い て、 安 廣 文 夫 は こ の 判 断 を 次 の よ う に 説 明 し た。 ﹁ 窃 盗 罪 又 は 一 項 詐 欺 罪 の 被 害 者 に は、 財 物 の 返 還 請 求 権 な い し損害賠償請求権︵又は代金請求権︶があるところ、これらの権利は本来は被害財物とは別個に侵害客体になりうるの であって、窃盗罪等の犯人が、財物を費消・損壊するとか、他に売却するなどして、返還請求検討を侵害することが別 個の犯罪を構成しないとされるのは、窃盗罪等によりその違法評価が尽くされているということができるからであって

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︵不可罰的事後行為、共罰的事後行為︶ 、窃盗罪等の犯人が、被害者に対する新たな不法手段によって返還請求等を免れ る行為については、このような評価が尽くされているということはできず、被害財物とは別個の財産的法益を侵害する ものとして、別個の財産犯︵二項犯罪︶を構成する、と解すべきものと思われる。このように解しなければ、財物を取 得する行為が犯罪を構成しない場合と明らかに均衡を失することになるであろう。すなわち、例えば、高価な書画を借 り 受 け た 場 合 に、 そ の 返 還 を 免 れ る た め に 殺 人 に 及 べ ば 二 項 強 盗 殺 人 罪 が 成 立 す る が︵ こ れ に は 異 論 が な い と 思 わ れ る。 ︶、これを窃取又は騙取していた場合には、窃盗罪又は詐欺罪と単なる殺人罪が成立するにすぎないというのは、不 合理というほかないであろう﹂と 。 重要な判例に関するこの重要な解説の抜粋部分は、その前半が一般的な理論的説明を加えていて、後半は説得力ある 具体例を示すという二段階の構成になっている。 ま ず 前 半 の、 ﹁ 窃 盗 罪 又 は 一 項 詐 欺 罪 の 被 害 者 に は、 財 物 の 返 還 請 求 権 な い し 損 害 賠 償 請 求 権︵ 又 は 代 金 請 求 権 ︶ が あるところ、これらの権利は本来は被害財物とは別個に侵害客体になりうるのであって、窃盗罪等の犯人が、財物を費 消・ 損 壊 す る と か、 他 に 売 却 す る な ど し て、 返 還 請 求 検 討 を 侵 害 す る こ と が 別 個 の 犯 罪 を 構 成 し な い と さ れ る の は、 窃 盗 罪 等 に よ り そ の 違 法 評 価 が 尽 く さ れ て い る と い う こ と が で き る か ら で あ っ て︵ 不 可 罰 的 事 後 行 為、 共 罰 的 事 後 行 為 ︶、 窃 盗 罪 等 の 犯 人 が、 被 害 者 に 対 す る 新 た な 不 法 手 段 に よ っ て 返 還 請 求 等 を 免 れ る 行 為 に つ い て は、 こ の よ う な 評 価が尽くされているということはできず、被害財物とは別個の財産的法益を侵害するものとして、別個の財産犯︵二項 犯罪︶を構成する、と解すべき﹂としている点は、一体どのように理解すべきであろうか。 ここでは二つの類型が比較対照されている。一つは、先行の財物に対する一項犯罪ののち、後行の﹁財物費消﹂ 、﹁損

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壊﹂ 、﹁売却﹂が返還請求権侵害として別個の犯罪を構成しないのは、先行の犯罪行為によりその違法評価まで尽くされ ているからといえる場合である。もう一つは、先行の財物に対する一項犯罪ののち、後行の﹁新たな不法手段による返 還請求免脱行為﹂が別個の財産的法益に対する二項犯罪を構成するのは、先行の犯罪行為によりその違法評価が尽くさ れているとはいえないからとされる場合である。 このように比較すれば明らかなように、ここでは両者が取扱いを異にする場合であることは述べられているが、その 理由は何も書かれていないのである。つまり前者は違法評価が尽くされているということができるとし、後者は違法評 価が尽くされていないというのであるが、なぜ前者では尽くされていて、後者では尽くされていないのかの説明は何ら なされていないのである。 また、例えば前者の場合でも、取還を防ぐために壊す︵器物損壊︶とか売ってしまう︵占有離脱物横領︶ということ もありえ、これらの場合は、元の持主の返還請求権に対する免脱行為にほかならない。しかし、器物損壊や占有離脱物 横領は二項犯罪ではないので、返還請求権を独立に問題にしてこれに対する行為を論じることはできない。つまりこの 場合、違法評価が尽くされているから不可罰的事後行為となるのではなく、違法評価のための構成要件がないから新た な 二 項 犯 罪 は 成 立 し え な い の で あ る。 言 い 換 え れ ば、 不 可 罰 的 事 後 行 為 は 新 た な 一 項 犯 罪 を 否 定 す る 説 明 で は あ っ て も、新たな二項犯罪の不成立を否定する説明とはいえない。この意味でも、安廣の説明は当を得ていないし、まして両 者の違いを説明しうる理由を述べているとは何らいえないのである。つまり、繰り返しになるが、前者の場合には違法 評価が尽くされて、後者の場合には尽くされていないとする理由は何ら説明されておらず、ただそれぞれそうであると いう結論だけが述べられているにすぎない。なお、後半部分でも、具体例を挙げた上で、財産的利益の独立評価の結論

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でなければ﹁不合理というほかないであろう﹂と断じるだけで、なぜ不合理というほかないのかの説明、理由付けは何 らなされていない。 従って正しい問いは、不可罰的事後行為とされてきたケースで新たな一項犯罪が否定されるという場合と、前掲判例 のようなケースで二項犯罪が肯定された場合とで、いずれの場合でも先行行為により残余の利益まで汲み尽くされたと はいえないにもかかわらず、異なる結論が導かれるのはどのような理由からか、ということになる。 前掲した安廣の説明では、この点についてのはっきりした理由付けはなされていない。しかしその説明の中に、実は 両者の違いを見て取ることができる。その違いとは、両者における後行行為の手段内容の違いである。 前者では、後行行為の手段内容として挙げられているのは財物の費消、損壊、売却であり、つまり占有離脱物横領や 器物損壊である。これに対して後者での後行行為の手段内容として挙げられているのは二項強盗の暴行・脅迫である。 窃取ないし詐取後に、財物の費消、損壊、売却と同様に、例えばさらに詐欺行為により返還請求を免れた場合はどう であろうか。詐取した上でさらに、同一物・同一客体に対する返還請求権の侵害を認めて二項詐欺を成立させるべきで あろうか。観念できないわけではない が、結論の妥当性からすれば、先行する一項詐欺ですでに違法評価が尽くされて いるというべきであろう 。 しかしながらこの手段が暴行・脅迫によるとき、途端に違法評価が尽くされていないような印象が浮かび上がってく る。このように考え至るならば、やはり違法評価が尽くされていないわけではなく、その他の手段であればすでに先行 行為により違法評価が尽くされていると考えられるところを、暴行・脅迫という重大な手段を用いたことに注目して、 なお違法評価が尽くされてはいないことにしていると、他の手段であれば違法評価が尽くされているといえるにもかか

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わらず、暴行・脅迫を用いているからあえて残余の利益があると擬制して二項強盗の成立を認めていると指弾せざるを えないのではなかろうか。このような解釈は、暴行・脅迫の場合を過剰に重く処罰するものといわざるをえない。 安 廣 は 前 掲 引 用 部 分 の 後 半 で は、 ﹁ こ の よ う に 解 し な け れ ば、 財 物 を 取 得 す る 行 為 が 犯 罪 を 構 成 し な い 場 合 と 明 ら か に均衡を失することになるであろう。すなわち、例えば、高価な書画を借り受けた場合に、その返還を免れるために殺 人に及べば二項強盗殺人罪が成立するが︵これには異論がないと思われる。 ︶、これを窃取又は騙取していた場合には、 窃盗罪又は詐欺罪と単なる殺人罪が成立するにすぎないというのは、不合理というほかないであろう﹂というが、先の 理解を前提にすれば、むしろ書画の横領と殺人と解すべきことになり、窃取または騙取後の行為を単に殺人とすること との間に矛盾がない。不合理なのは、本来先行の一項犯罪で違法評価が尽くされているのに、暴行・脅迫が用いられた からといって擬制された残余の利益を持ち出して別に二項犯罪の成立を認めることのほうではなかろうか。 安廣はその後も無銭飲食やタクシー強盗の例を挙げて論じているが、いずれも後行行為は強盗の場合である。また、 当 初 か ら 無 賃 乗 車 の 意 思 で タ ク シ ー に 乗 る 場 合 に つ い て、 ﹁ 単 に 無 賃 乗 車 に と ど ま っ た の で あ れ ば、 運 賃 額 相 当 の 輸 送 利益を得たとして二項詐欺罪により処罰するのが実務であるが、さらに右のような強盗に発展した場合には、二項詐欺 罪を併せて起訴することは行われていないようである 。﹂というが、本当に安廣がいうように、 ﹁窃盗罪又は一項詐欺罪 の被害者には、財物の返還請求権ないし損害賠償請求権︵又は代金請求権︶があるところ、これらの権利は本来は被害 財物とは別個に侵害客体になりうるのであって﹂ 、﹁窃盗罪等の犯人が、被害者に対する新たな不法手段によって返還請 求等を免れる行為については、このような評価が尽くされているということはできず、被害財物とは別個の財産的法益 を 侵 害 す る も の と し て、 別 個 の 財 産 犯︵ 二 項 犯 罪 ︶ を 構 成 す る、 と 解 す べ き ﹂ で、 ﹁ こ の よ う に 解 し な け れ ば、 財 物 を

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取 得 す る 行 為 が 犯 罪 を 構 成 し な い 場 合 と 明 ら か に 均 衡 を 失 す る こ と に な ﹂ り、 ﹁ 例 え ば、 高 価 な 書 画 を 借 り 受 け た 場 合 に、その返還を免れるために殺人に及べば二項強盗殺人罪が成立するが︵これには異論がないと思われる。 ︶、これを窃 取又は騙取していた場合には、窃盗罪又は詐欺罪と単なる殺人罪が成立するにすぎないというのは、不合理というほか ないであろう﹂というのであれば、 ﹁二項詐欺罪を併せて起訴することは行われていない﹂実務は、 ﹁明らかに均衡を失 す る ﹂、 ﹁ 不 合 理 と い う ほ か な い ﹂ も の で 不 当 だ と い う こ と に な ろ う。 し か し こ の よ う な 実 務 は、 ﹁ 明 ら か に 均 衡 を 失 す る ﹂ と か、 ﹁ 不 合 理 と い う ほ か な い ﹂ も の と は 一 見 し て は 思 わ れ な い。 安 廣 も こ の よ う な 実 務 を 不 当 だ と 非 難 す る わ け ではない。なぜならば、このような実務は、本来二項詐欺と暴行・脅迫ないし殺人であるにもかかわらず、暴行・脅迫 や 殺 人 が 行 わ れ た か ら と い っ て 返 還 請 求 権 と い う 二 項 利 益 を 擬 制 し て 強 盗 や 強 盗 殺 人 を 認 め、 本 来 先 行 の 二 項 詐 欺 に よって汲み尽くされるはずの利益を後行行為の評価に勝手に組み入れることで、安廣がいうには﹁本来は⋮⋮別個﹂で あ り 堂 々 と 併 せ て 起 訴 し う る は ず の と こ ろ を、 む し ろ 二 重 評 価 の そ し り を 免 れ て 結 論 の 妥 当 性 を 繕 っ て い る か ら で あ る。安廣がさらに挙げている、一項詐欺が先行しているように見受けられるがこの点を詮索しないで二項強盗殺人の成 立を認めたという最高裁判例の態度も同様のものといえよう。 併合罪加重という罪数処理によって十分に当罰性や事案全体の悪質性を評価できるにもかかわらず、事実評価を捻じ 曲げて強盗の成立にこだわりこれを認めることは、不可罰的事後行為に当たる場合との均衡を欠き、不当に重く処罰す るものであって許されない。後行の強盗を認める立場は、論理一貫するならば、結局不可罰的事後行為のケースを全否 定するという結論に行き着かざるをえないが、このようなむしろ法益侵害の二重評価というべき態度が妥当なものとは 解されない。

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共罰的事後行為の本質

先行する窃盗や詐欺によって法益侵害に対する評価が尽くされたにもかかわらず、一項犯罪客体の財物とは別個の返 還請求権という財産的利益が観念されえ、これについてまだ評価が尽くされていないという擬制が不当であることはす でに見た。 し か し、 同 じ く 共 罰 的 事 後 行 為 が 問 題 と さ れ る 場 合 で も、 財 産 的 利 益 の 擬 制 に よ る 二 項 犯 罪 の 成 立 と い う 類 型︵ 一 項・二項類型︶とは異なるもう一つの類型︵部分・部分類型︶も認められる。こちらは擬制による二重評価を行うもの ではなく、むしろ汲み尽くされたかどうかという言葉どおり、先行する行為によっては法益が部分的に侵害されたにと どまるから、当該法益の侵害に関して先行の違法行為によって汲み尽くされたとか、当該法益に関してはもはや違法評 価が尽くされたとは未だいえないから、なお後行の行為による法益侵害が別個に認められるし、場合によっては先行す る行為と後行の行為の双方に同一客体に対する法益侵害、犯罪の成立を認めても差し支えない、不当とは思われない場 合である。それはいわゆる横領後の横領のケース である。 委託により占有する他人の土地にほしいままに抵当権を数回設定した上に、さらにその土地を売却したという場合、 抵当権の設定につき背任にとどまらず横領を認めるのであれば、その土地に対する横領は最初の抵当権設定により成立 し、完了しているといえれば、その後の抵当権設定や売却に重ねて横領が成立することはない、と形式的にはいえない こともない。 しかし、初度以降の数度の抵当権設定や更なる売却が可能であることからもわかるとおり、最初の抵当権設定により

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土地の価値が汲み尽くされているわけではなく、なお残余の価値に対して法益侵害行為を重ねることが可能である。ま ず、抵当が付いていない土地に対する担保価値分の横領行為がなされ、さらに抵当が付いた︵その意味で先行行為によ る価値減殺部分に相当する価値が差し引かれた︶土地の所有権全体に対する横領行為がなされるとき、実質的に見て、 同一客体における法益侵害の重複的評価は回避されている。 このような場合は状態犯では珍しくないように思われる。即成犯では、例えば殺人既遂罪では重ねて残余の法益に対 する侵害を行うことが通常は考えられないので、死亡直後の人に対する殺人未遂を重ねて認めるという極めて稀なケー スを別とすれば、実質的に同一の法益価値に対する複数の侵害は考えられない︵異なる法益に対する死体遺棄等は考え ら れ、 不 可 罰 的 事 後 行 為 と さ れ よ う ︶。 継 続 犯 で も 法 益 侵 害 が 継 続 し て い る 間 は、 同 一 の 法 益 侵 害 を 新 た に 別 個 に 捉 え るということができないから、同一客体に対する同種の法益侵害を複数認めるということは考えにくい。しかし、殺人 未遂も含め、傷害罪や建造物損壊、背任、業務妨害などを想定してみても、例えば大きな怪我を負わせてもなお怪我を 負わせる余地はあり、先行の傷害によって汲み尽くされるわけではない。罪数処理により包括一罪とされるにしても、 複数の犯罪の成立を同一客体について認めることができる。 そして、通常このような包括一罪の場合をあえて共罰的事後行為とは呼ばない。共罰的事後行為とは、包括一罪の中 の後行の犯罪行為を独立に括り出した場合の呼称といえよう 。 ただし、法益侵害の重複評価は避けなければならない。従って、同一法益内の一部分と他の部分について別個の違法 評価を認めることは許されるが、法益侵害を実質的にほぼ同一であるにもかかわらず一項的利益の侵害と二項的利益の 侵害とに分離させて重複的な違法評価を認めることは許されない。

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なお、横領後の横領のケースについて判例変更を加えた最大判平成一五年四月二三日は、委託の任務に背いて、その 物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をしたものにほかならないから、横領罪の成立自体は肯 定できるとした。しかし、果たして実質的に後行行為においても損害・法益侵害が生じているのかどうかこそが問題な のである。これに関連した説明・理由付けを欠き、形式的に成立要件の一部を挙げて成立を肯定できると断じているに すぎない点は批判せざるをえない。

 

強盗の例外性の強調

一項・二項類型において、二項的利益の擬制を認める立場につき、後行行為が強盗である場合に矛盾ある過剰な処理 を行う点で問題があると批判したが、この意味において逆に、この擬制説から強盗の例外性を強調する立論は可能であ る。 即 ち、 事 後 強 盗 を 独 立 に 規 定 す る 強 盗 は 唯 一、 一 項 犯 罪 後 の 二 項 利 益 に 対 す る 重 大 な 侵 害 を 過 小 評 価 し な い 類 型 で あ る。 窃盗の場合が事後強盗とされる以上、詐欺が先行するときに二項強盗を認める実質はある。 結局、不可罰的事後行為は、先行行為を罰する場合にはもはや後行行為に可罰的違法性がない場合であるが、後行行 為の手段が重大である強盗の場合︵強盗後の二項強盗も含む︶だけは、不可罰的事後行為論の例外となる︵共罰的事後 行為となる︶ 、と。

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確かに、窃盗には利益窃盗がないため事後強盗があるが、詐欺には二項詐欺があるので当罰的なら二項強盗を認めて 差し支えないとも思える。特に、先行犯罪から時間が経った場合には返還請求権を独立に保護する必要が高まり︵特に 後 行 行 為 が 先 行 行 為 と 同 等 か 重 大 な 場 合 ︶、 い ず れ の 場 合 で も 二 項 強 盗 を 認 め る 余 地 が 考 え ら れ る こ と か ら す れ ば、 先 行の犯罪の直後の機会についても、窃盗以外では二項強盗を認めてよいようにも考えられる。 また強盗以外でも、落し物を拾っていった︵占有離脱物横領︶人に返してもらいにいったらうまく嘘をつかれて追い 返された︵二項詐欺︶という場合、包括的に見ればむしろ二項詐欺を強調すべきようにも思える。また実際包括一罪と なるなら、二項詐欺に占有離脱物横領が吸収される形となる。このように、後行行為の違法が先行行為の違法よりも重 大なときは、共罰的結論を導くべきように思われてくるのである。 しかし、このような場合を包括一罪や併合罪とすべきでないのは、やはり実質的な法益侵害の二重評価とのそしりを 免れないからである。結局このように解する立場が不可罰的事後行為論である。 強盗の場合にしても、窃盗についてしか事後強盗が認められていないのは、他では二項犯罪の処罰規定があり二項利 益を観念できるからではなくて、窃盗の場合と同様の重い処罰による補完の必要性が認められないからというべきであ るならば、逆に法の趣旨に反する反対解釈を許容してしまうことになる。従って窃盗以外の場合では、取り返しを防ぐ 目的での暴行・脅迫については情状で重く評価すべきだということになる。そう解さなければ、結局、事後強盗のよう に法が明示的に許容している場合でないにもかかわらず、法が明示的に許容している場合と同じように、実質的にほぼ 同一の法益に対する侵害の違法を二重に評価してしまうことになるのである。 二重評価をやむをえないものとし、事後強盗に相当する部分につき二項犯罪の成立を認める代替・補完的アプローチ

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をよしとするか、結局の二重評価を回避しせいぜい情状として考慮すべきとする択一的アプローチをよしとするか。 前者によれば、取り返しに来た者を暴行・脅迫で追い返す行為について、何度でも、どれだけ時間が経っても二項強 盗が成立しうるという問題点をさらに指摘することができよう。いわば行為違法の多重評価が可能であり、その多重性 の分だけ違法の実質が希薄化しているにもかかわらず犯罪の成立を認める弊があると非難せざるをえないのである。 結局このような前者のアプローチの問題点は、強盗の手段たる暴行・脅迫の場合には重大な手段に対して手厚い保護 が要請されるので、なお二項利益を独立に保護すべきという理解できないではないところを出発点としているものの、 部分と部分の類型の場合と異なり、法益侵害の実質においては択一的な違法評価しか相当と思われないのに、形式的な 違法評価で足りるとして、実質的に同一の法益侵害に対して二重の違法評価を行ってしまっていることにある。

 

不保護後の遺棄

本稿の考察は、法科大学院の院生が他の院生から廊下で訊ねられた事例を、ディスカッションのテーマとして取り上 げてくれたことに端を発する。その事例は﹁不保護後の遺棄﹂というものであった。 不保護により生命・身体の安全へ及ぶ脅威は、それだけでは未だ生命・身体の安全に対する侵害の違法全体を汲み尽 くすものとはいえないから、不保護後の移置︵作為︶の場合でも置き去り︵不作為︶の場合でも、前者は行為が併存的 であり、後者は行為が連続的であるという印象の差異はあるものの、いずれも上記した部分・部分の類型に当たり、共 罰的な処理がなされる︵通常の包括一罪とされる︶場合であろう。

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まとめ

以下のとおりまとめておく。 ・不可罰的事後行為論は、特に財産犯としての重なりを法条競合と見て吸収関係を認め、そのため重複評価を避けて択 一的成立を認める理論である。 ・一項犯罪と二項犯罪とのこのような法条競合的処理は、先行行為が窃盗以外の事後強盗に相当する部分を補完しうる が、法が明示的に予定したものではないから、択一的であれば足りるとはいえず、従って強盗の重なり切らずはみ出 す部分については独立に評価すべきであって、恣意的な法条競合処理により法の明示するところによらず重く処罰す ることは不当である。 ・共罰的事後行為は、同一法益への同種行為についての包括一罪の中から独立に括り出された後行行為を指す呼称であ る 。 注 ︵1︶   最一小決昭和六一年一一月一八日刑集四〇巻七号五二三頁。 ︵ 2︶   安 廣 文 夫﹁ い わ ゆ る 一 項 強 盗 に よ る 強 盗 殺 人 未 遂 罪 で は な く 窃 盗 罪 又 は 詐 欺 罪 と い わ ゆ る 二 項 強 盗 に よ る 強 盗 殺 人 未 遂 と の 包 括 一 罪 に なるとされた事例﹂ ﹃最高裁判所判例解説   刑事篇   昭和六十一年度﹄二七六頁。 ︵3︶   安廣・前掲三〇五頁以下。 ︵ 4︶   追 求 権 侵 害 が 処 罰 さ れ て い る こ と を 想 起 せ よ。 し か し や は り、 本 犯 者 に 対 し て 重 ね て 追 求 権 侵 害 を 理 由 に 処 罰 で き る と す れ ば、 過 剰 と

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いわざるをえないだろう。 ︵5︶   安廣・前掲三二二頁の︵注三一︶や︵注三二︶にも、一項詐欺の後の二項詐欺を否定した判例が挙げられている。 ︵6︶   安廣・前掲三〇六頁。 ︵ 7︶   最 大 判 平 成 一 五 年 四 月 二 三 日 刑 集 五 七 巻 四 号 四 六 七 頁。 判 例 変 更 を 見 た も の で あ る。 な お、 こ の 場 合 の 部 分 的 横 領 に つ い て は、 い わ ゆ る 二 項 横 領 を 認 め る も の と も 見 え る が、 特 に 不 動 産 に 対 す る 横 領 の 所 有 権 侵 害 が 観 念 的 に な さ れ う る こ と か ら も 説 明 で き よ う。 西 田 典 之 ﹁抵当権の設定による横領について﹂研修六五七号一二頁以下も参照。 ︵ 8︶   こ れ に 対 し て、 不 可 罰 的 事 後 行 為 論 は、 特 に 財 産 犯 と し て の 重 な り︵ 窃 盗 の 違 法 状 態 と 毀 棄 ︶ を 法 条 競 合 と 見 て 吸 収 関 係 を 認 め る 理 論 で あ り、 両 者 を 同 時 に 成 立 さ せ る こ と は 重 複 部 分 の 二 重 評 価 に 当 た る た め 択 一 的 な 成 立 が 認 め ら れ る 場 合 で あ る︵ な お、 福 崎 伸 一 郎﹁ 1 委 託 を 受 け て 他 人 の 不 動 産 を 占 有 す る 者 が こ れ に ほ し い ま ま に 抵 当 権 を 設 定 し て そ の 旨 の 登 記 を 了 し て い た 場 合 に お い て そ の 後 こ れ に つ い て ほ し い ま ま に 売 却 等 の 所 有 権 移 転 行 為 を 行 い そ の 旨 の 登 記 を 了 す る 行 為 と 横 領 罪 の 成 否   2   委 託 を 受 け て 他 人 の 不 動 産 を 占 有 す る 者 が こ れ に ほ し い ま ま に 抵 当 権 を 設 定 し て そ の 旨 の 登 記 を 了 し た 後 こ れ に つ い て ほ し い ま ま に 売 却 等 の 所 有 権 移 転 行 為 を 行 い そ の 旨 の 登 記 を 了 し た 場 合 に お い て 後 行 の 所 有 権 移 転 行 為 の み が 横 領 罪 と し て 起 訴 さ れ た と き の 審 理 方 法 ﹂﹃ 最 高 裁 判 所 判 例 解 説   刑 事 篇   平 成 十 五 年度﹄二八〇頁の原判決の紹介も参照︶ 。     従 っ て、 重 複 部 分 の 行 為 の 共 同 に つ い て は、 異 な る 罪 名 間 の 共 犯 が 認 め ら れ う る︵ 森 本 和 明﹁ 状 態 犯 の 罪 に 当 た る 行 為 に つ い て、 公 訴 時 効 の 完 成 等 の 事 由 に よ り 処 罰 す る こ と が で き な い よ う な 事 情 が あ る と き は、 不 可 罰 的 事 後 行 為 と さ れ る よ う な 行 為 で あ っ て も、 こ れ を 処罰することが許されるとされた事例﹂研修六四〇号三三頁以下︵注一○︶参照︶ 。     一 項 犯 罪 と 二 項 犯 罪 と の こ の よ う な 法 条 競 合 的 処 理 は、 事 後 強 盗 を 除 け ば、 法 が 明 示 的 に 予 定 し た も の で は な い か ら、 択 一 的 で あ れ ば 足 り る と は い え な い。 強 盗 の 重 な り 切 ら ず は み 出 す 部 分 に つ い て は 独 立 に 評 価 す べ き で あ り、 恣 意 的 な 法 条 競 合 処 理 は 法 の 明 示 す る と こ ろによらず重く処罰することになり不当である。 ︵ 9︶   不 可 罰 的 事 後 行 為 論 を、 同 一 法 益 へ の 異 種 行 為 に つ い て の 包 括 一 罪 と し て 共 罰 的 事 後 行 為 に 含 め て 解 す る 立 場 は、 実 質 的 な 二 重 評 価 を 前 提 と し て い る 点 で 妥 当 で な い。 二 重 評 価 を 前 提 と す る た め 択 一 的 と い う よ り 全 一 的 な 処 理 と な り、 一 項・ 二 項 類 型 で も 重 い 二 項 犯 罪 の 拡 張 的 な 成 立 を 容 易 に 許 容 す る 結 論 へ と 至 ろ う。 曽 根 威 彦﹁ 不 可 罰 的 事 後 行 為 の 法 的 性 格 ﹂ 研 修 六 六 八 号 六 頁 参 照。 ま た、 西 田・ 前 掲 三 頁以下も参照。 ︵本学大学院法務研究科教授︶

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