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アジア通貨危機の教訓 (巻頭エッセイ)

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Academic year: 2022

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アジア通貨危機の教訓 (巻頭エッセイ)

著者 小浜 裕久

権利 Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization (IDE‑JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名 アジ研ワールド・トレンド

巻 144

ページ 1‑1

発行年 2007‑09

出版者 日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL http://doi.org/10.20561/00047088

(2)

巻頭エッセイ

一○年前︵一九九七年︶の七月二日︑それまで実質的に米ドルに固定されていたタイ・バーツが変動相場制に移行し︑大幅に下落した︒アジア経済危機の発端である︒前日の七月一日に香港が返還され︑新聞雑誌などで﹁香港返還﹂︑﹁アジア経済危機﹂から一○年の記念特集が組まれているので︑記憶を呼び起こされた方も多いだろう︒大づかみに言って︑危機以前の為替レートは︑タイ・バーツが一ドル二五バーツ︑インドネシアが一ドル二五○○ルピア程度だったから︑比較しやすい︒タイ・バーツは一番ひどい時には一ドル五○バーツを下回り︑インドネシア・ルピアは一ドル一万七○○○ルピア程度まで下落した︒現在では︑一ドル三五バーツ︑一ドル九○○○ルピア程度である︒通貨危機はタイからアジア諸国︑特にインドネシア︑韓国に伝播した︒それまで好調だった経済は大きく落ち込み︑一九九八年は︑インドネシア︑マイナス一三・一%︑タイ︑マイナス一○・五%︑マレーシア︑マイナス七・四%︑韓国︑マイナス六・七%と軒並みマイナス成長であった︒これらアジア諸国の経済成長率は持ち直しているが︑投資率は回復していない︒ウォール・ストリートが言うように︑アジア諸国の経済構造が脆弱だったことが危機の原因であるとか︑マレーシアのマハティール前首相が言うように︑ヘッジファンドが通貨危機を仕掛けたと言い合ってもあまり意味はない︒対外的要因と国内的 要因が複雑に絡み合ってアジア通貨危機は起こったのだろう︒国内企業の過度の海外借り入れをチェックする制度がないまま短期の資本移動を自由化することは︑アジア通貨危機が象徴するように︑危険なことであった︒危機に見舞われた国は︑マレーシアを除いてIMFに緊急融資を求めた︒IMFは︑金利の引き上げ︑財政収支改善のための補助金のカットなど︑旧態依然たる条件を付けて融資に応じた︒確かに危機に見舞われた国の経常収支は改善した︒しかし︑それは輸出の拡大によってではなく︑経済の収縮による輸入の減少によってもたらされたものだった︒インドネシアでは︑経済危機と政治危機の悪循環まで生じたのである︒IMFのケーラー前専務理事が言うように︑IMFはアジア通貨危機に対する対応を誤った︒変化に対応するには制度づくりが不可欠であり︑それには時間がかかり︑望ましい制度づくりには︑それによって影響を受ける社会が自分の問題として関わらなくてはならないのだ︒アジア諸国では金融制度改革も進み︑経常収支も改善し︑外貨準備も大きく積み増しされている︒しかし︑世界経済はアメリカの大幅な経常収支赤字という大きな問題を抱えている︒中国も日本も外貨準備の大半はアメリカ財務省証券であり︑今後︑外貨準備の多様化が進むことは間違いない︒︵こはま ひろひさ/静岡県立大学国際関係学部教授︶

アジア通貨危機の教訓

小浜裕久

1─アジ研ワールド・トレンド No.144(2007.9)

参照

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