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博士(医学)川村孝仁 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(医学)川村孝仁 学位論文題名

   び ま ん 性 大 細胞 型 B 細 胞リ ン パ 腫に お い て      ●

Chk2 のタンパク発現低下は予後不良因子である 学位論文内容の要旨

【背景および目的】

  び まん 性 大 細胞 型B細 胞リ ン パ 腫(Diffuse largeBcell lymphoma:DLBL)の 治療方針は,1993年に提唱されたIntemational Prognostic Index (IPI)を基準に決 定されるこ とが多い .IPI基準に 従って患 者の層別 化を行う ことは予後の推定だ けで な く適 切な 治療方針 の決定に 寄与する, しかしな がら初回 治療時よ り通常 化学 療 法で 治療 抵抗性を 示す例や ,寛解後の 早期再発 例も存在 し,これ らの症 例について は,現時 点ではIPIと は異なっ た手法を 用いて患 者の層別化を行い,

通常 化 学療 法を 行うこと の適性を 検証するこ とが必要 と考えら れる.一 方,近 年,DNA損傷 時 に 細胞 内 で活 性 化 され る 一連の シグナル 伝達系が 存在する こと が明 ら かに され ,チェッ クポイン トと呼ばれ ている. チェック ポイント シグナ ルはDNAが損 傷を受 けたとき に活性化 されるが, その下流 の標的分 子にはp53, Cdc25A,CやBRCA1等 が 存 在 し, 細 胞 周期 停 止 ,DNA損 傷修 復 , アポ ト ーシ ス に関 与 する .チ ェックポ イントの シグナル伝 達分子の ーっに核 内キナー ゼ分子 で あ るCHK2が 存 在 す る が ,CHK2は 放 射 線 照 射 や 抗 癌 剤 処 理 時 にataxia telangiectasia mutated (ATM)依存性に強く活性化されることが知られている.

CHK2は 発 癌 への関与 や癌の治 療抵抗性 に関与する ことが推 定されて はいるが , これ ま で臨 床検 体を用い てCHK2の発現 の有無と抗 癌剤や放 射線治療 の反応性 , また 予 後と の相 関に関す る検討は 行われてい ない.そ こで本研 究では,DLBLに お け るCHK2の 発 現 を 病 理 検 体 に お け る 免 疫 組 織 染 色 で 検討 し ,CHK2発 現 の 有無 と 治療 反 応 性, 予 後,IPIと の関 連 につい て検討し た.また ,CHK2発現低 下を 認 めた 検体 では,CHK2プ ロモータ ーのメチル 化が関与 するか否 かについ て 検討した.

【 方 法 お よ ぴ 結 果 】

DLBL症 例 の う ち , 治 療 反応 性 ,予 後 調 査,IPI評価 , 病 理検 体 に よりCHK2発 現 の 評 価 で き る 26症 例 を 本 研 究 の 対 象 と し た . 1. CHK2安 定 発 現 株 KM‑H2/T7‑CHK2の 樹 立 :T7‑CHK2発 現 レ ト ロ ウ イ ル ス ベ ク タ ー を 作 製 し ,     ―422ー

(2)

CHK2が 発 現 低 下 し て い る ホ ジ キ ン 病 由 来 細 胞 株KM‑H2にレ ト ロ ウイ ル ス を感 染 し , CHK2安 定 発 現 株 KM‑H2/T7ーCHK2を 樹 立 し た . こ のKM‑H2と KM‑H2/T7‑CHK2を 抗CHK2抗 体 の 評 価 及 ぴ , 免 疫 染色 の 陰 性お よ び陽 性 コ ント ロ ー ル と し て 用 い た . 2.抗CHK2抗 体 の 作 成 、 評 価 : ヒ トCHK2のC末 端24 ア ミ ノ酸 配 列 を抗 原 とし , ウサ ギに免疫 すること で得られ た抗血清を 免疫原ペ プ チドによるaffinity chromatographyで精製し て使用し た.作製 した抗CHK2抗 体 はKM‑H2とKM‑H2/T7‑CHK2に よ っ て ,Westem blotting法と 免 疫染 色 法 に使 用 可 能 で あ っ た.3.免疫 染 色 :固 定 され た パ ラフ ィ ン包 埋 切 片を 脱 パ ラフ イ ン後,0.1 mM EDTA (pH 8.0)による高圧加熱を行うheat‑induced antigen retrieval 処 理 を行 っ た 後に , 自動 免 疫 染色 装 置 によ っ て行 っ た .KM‑H2はほとんど 染色 さ れ ない の に 比し て ,KM‑H2/T7‑CH1く2で は 核にCHK2が 染 色された ‐DLBL検体 に お いて も ,16例 でKM‑H2/T7‑CHK2と同 様に核へ の染色が 観察され た.4.メ チ ル 化 検出 : リ ンパ 腫 組織 か ら のgenomic DNAの 抽出 は 病 理固 定パラフ イン切片 を 用 い ,DNeasy Tissue Kit (QIAGEN)を 用い て 行 った . メ チル 化DNAの 検 出 に はCpG Genome DNA Modification Kit  (CHEMICON)を 使用 した.肺 癌でのメ チ ル 化 が 報 告 され て い るCHK2プ ロ モー タ ー 領域 ( 開 始コ ド ンよ り 上 流‑615ー

‑411) について検 討した結 果,DLBL検体 ではメチ ル化は認 められな かった.5. 臨 床 検討 :CHK2陽 性群 と 陰性 群 に 分け , 生存 曲 線 を描 き ,Mann‑WhitneyUtest に て 検 定 し た と こ ろ ,Pく0.001 (P=0.0014)と 両群 間 に 有意 差 を認 め ,CHK2 陽 性 群の5年 生 存 率は86% , 陰 性群 は16% と 推定 さ れ た. 化学 療法奏功率 にお いては,Fisher s testを使用し,検定したところ,CR群とPR.others群の比較で はPく0.02 (P=0.015),CR・ PR群 とothers群 の比 較 ではPく0.01 (P=0.009)と 両群間で有意差を認めた.

【考察】

こ れ まで ,Westem blotti11g法, マ イ クロ ア レイ やRT−PCRを 用いてのDLBLの 予 後 との 関 連 が強 い 遺伝 子 の発 現解析と 予後予測 モデルの 解析が行わ れている が , 免疫 組 織 学的 検 討が 可 能な 予後因子 を同定で きれば, 手技が簡便 であるこ と に 加え て , 正常 細 胞と 腫 瘍細 胞が混在 するよう な検体に おいても検 討が可能 で あ る . 今 回 ,DLBLに お け るCHK2の 発 現 を 免 疫 組 織 学 的 手 法 に て 検 討 し,

そ の 臨床 的 意 義を 検 討し た とこ ろ,CHK2の発 現低下を 認める例 においては 化学 療 法奏功率, 累積生存 率共に有 意に低い ことが明 らかとな った.またIPIにおけ る 同dsk群 の 比 較 に お い て も 同 様 にCmQ発 現 低 下 が 予 後 不 良 因 子 で あ る こと が 示 さ れ , 今 穫 ,CHlQ陰 性DLBL患 者 に お け る 治 療 法 の 最 適 化 に つ い て の検 討が必要と考えられる.

  【結語】

免 疫 組 織 学 的 検 討 に よ るCHK2の 発 現 の 有 無 はDLBL患 者 に お け る 予 後 因 子と な り , 治 療 選 択 に お け る 患 者 層 別 化 へ 応 用 で き る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た .

423 ‑

(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫において Chk2 のタンパク発現低下は予後不良因子である

  び ま ん 性 大 細 胞 型B細 胞 リ ン パ 腫(Diffuse largeBcell lymphoma:DLBL)の 治療方針は,1993年に提唱されたIntemational Prognostic Index (IPI)を基準に決 定さ れる こと が多 い.IPI基準に従って患者の層別化を行うことは予後の推定だ けで なく 適切 な治 療方 針の 決定 に寄 与する .し かし ながら初回治療時より通常 化学 療法 で治 療抵 抗性 を示 す例 や, 寛解後 の早 期再 発例も存在し,これらの症 例に つい ては ,現 時点 ではIPIとは異なった手法を用いて患者の層別化を行い,

通常 化学 療法 を行 うこ との 適性 を検 証する こと が必 要と考えられる.一方,近 年 ,DNA損傷 時に 細胞 内で 活性 化さ れる 一連 のシ グナ ル伝 達系 が存在 する こと が明 らか にさ れ, チェ ック ポイ ント と呼ば れて いる .チェックポイントのシグ ナ ル 伝 達 分 子 の ー っ に 核 内 キ ナ ー ゼ 分 子 で あ るCHK2が存 在 す る が ,CHK2は 発癌 への 関与 や癌 の治 療抵 抗性 に関 与する こと が推 定されてはいるが,これま で 臨 床 検 体 を 用 い てCHK2の 発 現 の 有無 と抗 癌剤 や放 射線 治療 の反応 性, また 予後 との 相関 に関 する 検討 は行 われ ていな い. そこ で申請者の研究グループで はT7‑CHK2発 現 レ ト ロ ウ イノ レ ス ベ ク タ ー を 作 製 し , ヒ トCHK2のC末 端24ア ミノ 酸配 列を 抗原 とし ,ウ サギ に免 疫する こと で得 られた抗血清を免疫原ベプ チド によ るaffinity chromatographyで精製して作製した抗CHK2抗体を使用し,

DLBLに お け るCHK2の 発 現 を 病 理 検 体 に お け る 免 疫 組 織染 色 で 検 討 し ,CHK2 発現の有無と治療反応性,予後,IPIとの関連について検討した.その結果,CHK2 の発 現低 下を 認め る例 にお いて は化 学療法 奏功 率, 累積生存率共に有意に低い こ と が 明 ら か と な った . ま たIPIに お け る 同risk群 の 比 較 に お いて も同 様に CHK2発現 低下 が予 後不 良因 子で ある ことが 示さ れた .免疫組織学的検討による CHK2の 発 現 の 有 無 はDLBL患 者 に お け る 予 後 因 子 と な り, 治 療 選 択 に お け る 患者層別化ヘ応用できる可能性が示唆された.

  口 頭 発 表 に 際 し ,副 査 の 今 村 教 授よ り,CHK2の発 現低 下と メチル 化, ヒス     ―424―

   

(4)

トン の ア セチ ル 化の 関 与 ,p53の 関与 , 遺伝 子異常の 頻度,IPIのLowrisk (L) 群とLow intermediate risk(LI)群での生存率、加療奏功率の検討についての質問が あっ た . これ に対し,申 請者はメ チル化の 関与はな く,ヒス トンのア セチル化 の関与も ないと考 えている こと,p53の 関与はある が頻度は 明らかでないこと,

IPIのLとLIの検 討 でも 有 意 差が 出 てい る と 回答 し た .次 い で, 副 査 の武蔵 教 授か らCHK2の 発現 低 下の 頻 度 は他 の 報告 と 比 較し て どう か , 腫瘍 増 殖よ りも 治療反応 性に関与 するか,p53やカスパーゼ3との関係についての質問があった.

こ れ に 対 し , 申 請 者 は 他 の1報告 よ りも 本 研 究結 果 の 方がCHK2の 発現 低 下 の 頻度が高 かったこ と,腫瘍 増殖への 関与は明ら かでない こと,p53やカスパーゼ 3との関係は検討していないと回答し・た.さらに,主査の浅香教授より,臨床病 期m期とIV期で の 生存 率 , 加療 奏 功率 の 検討 ,肺癌, 膀胱癌の 免疫染色 でも同 様の 結 果 が出 るか否か, 今後症例 数を増や して検討 するかの 質問があ った.こ れに対し ,申請者 は,臨床 病期1IIとIVで は有意差が 得られな かったが,症例数 が増 え れ ぱ差 がでる可能 性がある こと,肺 癌,膀胱 癌では免 疫染色の みの検討 報告 は あ るが ,臨床デー ターとの 相関をみ た研究が ないこと ,今後症 例数を増 やして検討した方がよいと回答した.

  本 研 究 はDLBLに 茄 け るCHK2の 発 現 を 病 理 検 体 に お け る 免疫 組 織 染色 で 検 討し ,CHK2発 現の 有 無と 治 療 反応 性 ,予 後,IPIとの関連 について はじめて 明 らかにしたことで高く評価された.

  審 査 員一 同は ,これらの 成果を高 く評価し ,大学院 課程にお ける研鑽 や取得 単位 も 併 せ博 士(医学) の学位を 受けるの に充分な 資格を有 するもの と判定し た.

425

参照

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