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博 士 ( 理 学 ) 金

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 金    海 英

     学位論文題名

ピリジル基を配位部位とする六座配位子の各種金属錯体 学 位 論 文 内 容 の要 旨

序 : 金 属 錯 体 の 立 体 化 学 を 考 え る 上 で 重 要 な 点 は , 配 位 子 と 金 属 イ オ ン の 組 み 合 わ せ で ど の よ う な 構 造 が 生 じ る か を 系 統 的 に 解 明 す る こ と で あ る . 本 研 究 で は , 六 座 配 位 子 、NNNINLテ 卜 ラ キ ス(2. ピ リ ジ ル ヌ チ ル ) エ チ レ ン ジ ア ミ ン(tpen)お よ び そ の 光学 活 性 ジア ミ ン (露 プ ロ バン ジ ア ミン ) 誘 導体(tppn)を 用い て ,第二、 第三遷 移、

お よ び ラ ン タ ノ イ ド 元 素 と の 錯 体 を 合 成 し , そ れ ら の 構 造 お よ び 性 質 を 調 べ た 。 モ リ ブデ ン 錯 体の 研 究 には 、1,3一 ジ アミ ノ プ 口バ ン 誘 導 体(tptn)も用 いた。合 成した 新 規 錯 体 は29種 で 、 そ の う ち 、15種 の 錯 体 の 構 造 をX線 構 造 解 析 に よ り 明 か に し た ・ 研 究 成 果 : (1)Mo錯 体 , 新 た に 合 成 し た 錯 体 は , ス ル フ ィ ド 架 橋 を も つ 複 核 鉛 体

[M0202眦・S)2(R,S‑tppn)]2十(図1),Mo(VI)複核錯体M〇206(tptn),Mo(0)複核錯体 M02 (CO)6 (tptn)の3種である。X線構造解析の結果、[M0202叫ーS)2(R,S−tppn)]2十のMo− Mo距 離(2.771(1) A)は 、 仙 ・o)2錯 体(2.546(1) A)に 比 べ かな り 長 く、 対 応 する 眦 ‑ S) 2EDTA錯体(2.799(1) A)に 近 いこ と が わか っ た 。 この 錯 体 は結 晶 学 的な 鏡 映 面を も   I  一一

ち 、4つ の 配 位 ピ リ ジ ル 窒 素 の 配 置 に は 不 斉 な ね じ れ は な い 。 し か し 、CDス ベ ク ト ル で はR‑tppn錯 体 のCDス ペ ク 卜 ル の 符 号 が(Y‑0)2錯 体 と ほ ぼ 完 全 に 逆 転 し て い た 。 こ のこ と は 、仙 一S)2錯 体 にも わ ず かの ね じ れが あ り 、 両者 で の 不斉な 骨格の捻 れ構造 が 逆で あ る こと を示して いる。 [M0202仙 ーS)2(R‑tppn)]2十 のアセト ニトリ ル溶液中 で の サイ ク リ ック ボルタモ グラム(CV)は、Mo(V,V)/(V,IV)お よび(IV,V)/aV.IV)の 過程に 対応する準可逆波を、−0.45および−1.13Vvs Fc厄c十に示し、仙‐o)2錯体(゜1,23および―

1.70Mに比べ、かなり還元されやすくなっている。

(2) Re錯 体 . 中enを 含 むRe錯 体 に つ い て は , 最 近 、 珍 し い 七 配 位 構 造 の オ キ ソ ReoWの 単核 錯 樺[ReW(O)(tpen) ]2十 が合成 され、そ のX線構造解 析がなさ れてい た.

本 研 究 で は 、 四 価 以 外 のReに 範 囲 を 広 げ ,tpenやRtppnと の 錯 体 の 合 成と 諸 性 質を 調 べ た 。 七 配 位 オ キ ソReくIり 錯 体 に つ い てもRtppn錯 体を 新 た に 合成 す る など , 諸 性質 を さ ら に 詳 し く 調 べ た . そ の 結 果 、ReMの 単 核 七 配 位 錯 体 、 お よ びReくD複 核 錯 体 、

【Re30)6(tpen)】2十 が得られ た。X線解析 により、 [ReV(o) (tpen)] (Cl04)3は

【Re(o)(tpen)](野瀦萎類似の7酉そ位構造を取っていることがわかった(図2).両錯体 の 主 な 違 い はRE  : で は 四 つ の ピ リ ジ ル 窒 素 原 子 が ほ と ん ど 平 面 で あ る の に 対 し , ReV錯 体 で は 大 き く ね じ れ て い る 点 で あ る .ReW錯 体 は 常 磁 性 で ルeff値 は300Kで 1,99B.M(S=1/2) であるの に対し ,ReV錯 体は反磁性であった(S=0)。Re(Iり錯体の 不 対 電 子 の 入 る 軌 道 と の 反 発 に よ り 、4つ の ピ リ ジ ル 窒 素 が よ り 平 面 に 近い 配 置 をと る も の と 考 え ら れ た 。ReW錯 体 の ア セ 卜 ニ 卜 リ ル 中 で のCVは ,Rem/ (IMの 過 程 に 対 応 す る 準 可 逆 波 を0,31VvsAg/AgCnこ 示 した . 一 方,pH=4.33の酢 酸 緩 衝水 溶 液 では

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Re(V)/(IV)Re(IV)/(III)の 過 程 に 対 応 す る 準 可 逆 波 が そ れ ぞ れ ―0.28及 び0.15V vs Ag/AgClに 見 ら れ た . さ ら にRe (IV)/(IIIの 準 可 逆 波 岳 壁 雲 依 存 性 が 観 測 さ れ ,Re(III) 錯 体 は オ キ ソ ヘ プ □ ト ン 付 加 し た 【ReI  I(OH) (tpen)  : っ て い る と 結 論 さ れ た 。

3) ラ ン タ ノ イ ド(iiD錯 体 . ラ ン タ ノ イ ド(iiDイ オ ン の 錯 体 の 大 き な 特 徴 は , 配 位 数 が8  12の 錯 体 を 形 成 し や す い こ と で あ る . し か し 、tpenR‑tppnの よ う な ピ リ ジ ル 窒 素 を 配 位 原 子 と す る 多 座 配 位 子 の ラ ン タ ノ イ ド(iiD錯 体 に つ い て の 研 究 は ほ と ん ど み ら れ な か っ た 。 し か し 、 既 知 錯 体[EuC12 (R‑tppn)] 十 で は 四 つ の ピ リ ジ ル 基 の 配 位 窒 素 が テ 卜 ラ ヘ ド ラ ル 方 向 に 不 斉 に ね じ れ て い て 、 こ の 不 斉 の 場 を 用 い て 光 学 活 性 シ フ ト 試 薬 と し て の 用 途 が 開 発 さ れ て い る な ど 興 味 深 い 事 実 も わ か っ て い た 。 そ こ で , 一 連 の ラ ン タ ノ イ ド(iiDイ オ ン に つ い て ,tpenR‑tppn錯 体 を 合 成 , そ の 構 造 の 比 較 を 行 う と と も に , シ フ ト 試 薬 と し て の 機 能 も 調 べ る こ と に し た . そ の 結 果 、22 の 新 錯 体 を 合 成 し 、 そ の う ち 、11種 のX線 構 造 解 析 に よ り そ の 構 造 を 明 か と し た 。11 種 の 錯 体 の う ち 、Ce(III)Pr(III)錯 体 は 塩 化 物 イ オ ン で 三 重 に 架 橋 さ れ た9配 位 複 核 錯 体[Ln2Cl3tpen2]3十で (図3)、ほかのすべ ての錯体は8配位単核構造【LnC12(tpenorR tppn) ] 十 , で あ̲た ( 図4) 。8配 位 単 核 構 造 を 持 つ 錯 体 に お い て 、 金 属 イ オ ン と 配 位 原 子 間 距 離 を 比 較 す る と 、 そ の 結 合 距 離 は 原 子 番 号 の 増 加 に っ れ て 減 少 す る 傾 向 が あ る 。 こ れは 金属 イオ ン半 径 の順 序と 対応 し てい る。

    一 連 の ラ ン タ ノ イ ドRtppn錯 体 に 対 し 、 シ フ ト 試 薬 機 能 を 調 べ た 。R$ ア ラ ニ ン の DO溶 液 に 少 量 の Rtppn錯 体 を 加 え て 、 剛 本 と5体 の シ グ ナ ル の シ フ ト と そ の 分 裂 を 調 べ た と こ ろ 、Gdか ら `nま で の 錯 体 で は シ グ ナ ル が ブ 口 ー ド と な り 、 シ フ ト 試 薬 と し て の 機 能 は 認 め ら れ な か っ た 。 し か し 、Laか らEuま で の 錯 体 で は シ フ ト 試 薬 機 能 を 示 し 、 中 で もCePr錯 体 は 従 来 用 い ら れ て き たEu錯 体 よ り 優 れ た シ フ ト 試 薬 機 能 を も つ こ と が わ か っ た 。 さ ら に 反 磁 性 のh錯 体 に も シ フ ト 試 薬 機 能 が あ る こ と が わ かっ た。

図1. [MoV202(11―S)2(R,S‑tppn)]2゛の構造

図3.[Prm2Cl3 (tpen)213゛の構造 (Ceも同じ)

(3)

2 [ReVO(tpen)]3゛ の 構 造

198―

図4.  [YbIIICl2 (tpen)]゛の構造

(4)

学 位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

佐々木 稲辺 日夏 今村

陽一     保 幸雄     平

     学位論文題名

ピリジル基を配位部位とする六座配位子の各種金属錯体

  金 属 錯 体 の 立 体 構 造 が ど の よ う な 因 子 に よ っ て 決 定 さ れ る か を 明 か に す る こ とは 、 金 属錯 体 の 化 学 の 最 も 基 本 的 な テ ー マ で あ る 。 比 較 的 自 由 度 を も つ 多 座 配 位 子 で あ れ ば 、錯 体 の 立 体 構 造 は 、 金 属 イ オ ン の 要 請 と 、 配 位 子 の 要 請 と の 両 方 が 反 映 さ れ た 形 と な る の で、 様 々 の 立 体 構 造 が 発 現 す る こ と に な る 。 こ の よ う な 配 位 子 と し て は 、 分 析 試 薬 と し て 有 名 なEDTA が 挙 げ ら れ る 。EDTAは 多 く の 金 属 イ オ ン と の 組 み 合 わ せ で 多 様 な 立 体 構 造 の 錯 体 を 与 える 。 こ のEDTAは 、 カ ル ボ キ シ ル 基 を 配 位 部 位 と す る の で 、 比 較 的 ハ ー ド な 配 位 子 と み な さ れ て い る 。 一 方 、 ピ リ ジ ル 基 は 、 比 較 的 ソ フ ト な 配 位 基 と み な さ れ 、 周 期 表 で 前 の 方 のし か も 低 酸 化 数 の 金 属 イ オ ン と の 錯 体 が 主 に 研 究 対 象 と さ れ て き た 。 ピ リ ジ ル 基 を 持 つ 多 座配 位 子 の 重 要 性 は 最 近 、 基 礎 錯 体 化 学 的 観 点 か ら は 勿 論 、 金 属 酵 素 モ デ ル 錯 体 や 触 媒 反 応 との 関 連 に お い て も 、 認 識 さ れ て き て い る 。 し た が っ て 、 そ の よ う な 配 位 子 の 金 属 錯 体 の 立 体化 学 を 系 統的 に 明 か にす る 研 究の 必 要 性が 増 し てき て い た。

  ピ リ ジ ル 基 を 多 座 配 位 子 に 導 入 し 、 キ レ ー 卜 効 果 に よ り 錯 形 成 を 有 利 と す る こと に よ り、

幅 広 い 金 属 イ オ ン と の 錯 体 が安 定 に 得ら れ る こと が 期 待 でき る 。 本論 文 で はこ の 考 えの 基 に 、 EDTA型 の、 テ ト ラキ ス (2− ピ リ ジル メ チ ル) 工 チ レン ジ ア ミ ン(tpen)お よび 類 似 の六 座 配位 子 を 取 り 上 げ 、 比 較 的 ハ ー ド な 金 属 イ オ ン も 含 め た い く つ か の 金 属 イ オ ン と の 錯 体 生成 を 調 べ て い る 。 新 た に 合 成 さ れ た 錯 体 は 、 モ リ ブ デ ン 、 レ ニ ウ ム 、 ラ ン タ ノ イ ド イ オ ン を対 象 と し て28種 に 及 び 、 そ の 立 体 構 造 が 、15種 の 錯 体 に つ い て 単 結 晶X線 構 造 解 析 で 明 か に さ れ て い る 。 さ ら に 、 新 錯 体 の 興 味 深 い 諸 性 質 が い く っ か 明 か に さ れ て い る 。   モ リ ブ デ ン 錯 体 で は 、VI価 、V価 お よ びO価 の 複 核 錯 体 が 合 成 さ れ て い る 。 特 にV価 の 錯 体 で は 、 二 つ の モ リ ブ デ ン 間 の 距 離 が 、 オ キ ソ 架 橋 錯 体 と ス ル フ ィ ド 架 橋 錯 体 と で異 な る こ と か ら 、4つ の 配 位 ピ リ ジ ル 基 の 配 位 平 面 が ね じ れ る 方 向 が 逆 転 す る と い う 立 体 化 学 的 に 微 妙 で 新 た な 側 面 が 示 さ れ て い る 。 こ の よ う な 違 い はEDTA錯 体 で は 認 め ら れ な か っ た も の で あ り 、 ピ リ ジ ル 系 配 位 子 の 特 徴 が 浮 き 彫 り に さ れ て い る 。 ま た 、0価 の 複 核 錯 体 は 、 カ ル ボ

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二ル (CO) 配位子 との 混合 配位子錯体として、やはり本研究で得られた同型のレニウム錯体と ともに、EDTA 配位子では見られない特徴的な錯体である。

   レ ニウ ム錯体 では 、IV 価と V 価 の7 配 位オ キソ 単核 錯体 が対 とし て得ら れて おり 、これも EDTA 配位 子では 得ら れて いな い特 徴的 な構 造の 錯体 であ る。 対の 錯体が 得ら れた ことで、

構造 上の 比較か ら、 酸化 数の 違い によ る1 ケ の電 子数 の違いが構造に及ぼす要因が明かにさ れ て いる 点 は 特 筆 す べ き 研究 成果 であ る。 d 電子 との 反発 によ り、 同じ 7 配位 でも 4 ケ のピ リジ ル基 の立体 的配 置が IV 価錯体の方がより平面に近い状態となっていることが指摘されて いる 。さ らに、 酸化 還元 電位のpH 依存性に関する研究から、III 価の状態では、7 配位構造を 保っ たま まオキ ソに プ□ トン付価した錯体となることが明かにされているなど、これまでの レ ニ ウ ム 錯 体 の 研 究 で は 知 ら れ て い な か っ た 重 要 な 知 見 が 報 告 さ れ て い る 。    ランタノイド系列のIII 価イオンの錯体の研究は、本論文の中で特に注目されるものであり、

一 連 のラ ン タ ノ イ ド (III) イ オン につ いて 、22 種 の新 錯体 の合 成と 11 種 の錯 体の 構造 解析 がな され 、ラン タノ イド シリーズの錯体の立体的な特徴が系統的に明かにされている。シリ ーズ 始め の方の Ce(III) 、Pr(III) の錯体が9 配位複核構造、その他が単核8 配位構造で、かつ 結合 距離 はイオ ン半 径の 傾向をそのまま反映している。ピリジル基を配位基とする多座配位 子が 配位 した一 連の ラン タノイド(iiD 錯体の構造決定は本研究が初めてであり、本研究はこ の意 味で も貴重 な情 報を 提供している。さらに、tpen のジアミン部分を光学活性とした配位 子を 用い て、光 学活 性NMR シ フ卜 試薬 として の機 能が 全シリーズに渡って調べられており、

従来のEu(III) 錯体に比べても、Ce 、Pr 、La 錯体などがむしろ優れた機能を持つことが明かに さ れ て お り 、 一 連 の 錯 体 の 応 用 面 に も 踏 み 込 ん だ 重 要 な 成 果 で あ る 。    以 上の ように 、本 研究 ではピリジル基を配位基とする六座配位子を用いて、第二、第三遷 移元 素、 ランタ ノイ ド元 素の 錯体 28 種 を合 成し 、そ れら の立 体構 造を明 かに して 、この配 位子 の錯 体の立 体化 学を 比較考察している。これらの成果は、幅広い金属イオンを対象とし たも ので 、錯体 化学 の広 い分野に関連した重要な情報となっており、錯体化学及び関連分野 の発展に大きく貢献するものである。

   よ って 著者は 、北 海道 大学 博士 (理 学) の学 位を 授与 され る資 格があ るも のと 認める。

参照

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