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学位論The diversity of protein博士(理学)上堂地美佳文題名structures and functions

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Academic year: 2021

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(1)

     学位 論

The diversity of protein

博 士 ( 理 学 ) 上 堂 地 美 佳 文 題 名

structures and functions

( 蛋 白 質 の 構 造 と 機 能 の多 様 性 に関 す る 研究 )

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  生物は、遺伝子の変異・挿入・欠失・重複・融合を繰り返し、進化・多様化してきた。遺伝子の進 化は、蛋白質の進化をもたらし、いくっかの蛋白質は、その基本機能を保ちながらも生物種によって 独特の機能を獲得して多様性を示す。このような機能の多様性を示す蛋白質の構造と機能を解析する 事は、蛋白質の構造と機能の相関、また進化・多様化を解明するための有カな手がかりになると期待 できる。 本研究では、筋収縮、ATP再生系そして酸素運搬に際して独自の機構を持つ生物に焦点を当 て、それ に関与する蛋白質について、分子生物学、生理・生化学、X線結晶解析学の手法を用い、そ れ ぞ れ の 蛋 白 質 の 構 造 と 機 能 の 関 連 性 そ し て そ の 多 様 性 に つ い て 検 討 し た 。

(1)軟体動物の筋肉収縮制御機構について

  筋収縮は、細胞内Ca2゛濃度の上昇に伴うミオシンATPaseの活性化によって起こる。脊椎動物横紋筋 では、Ca2゛はアクチン繊維上に存在しているト口ポニンCに結合し、収縮制御はト□ポミオシン(TM)

.ト口ポニン(TN)系によって行われている。一方、二枚貝の貝柱閉殻筋ではCaz゛はミオシンに結合す るため、 ミオシン自身が制御蛋白質であるが、完全な制御にはTM‑TN系が必要であり、二重の制御機 構が存在 している。また、閉殻筋では、ATPをほとんど消費せずに張カを発生し続けるというキャツ チ現象が知られているが、その機構は不明である。本研究では、ホッキガイ閉殻筋より新しく見いだ した分子量230Kの蛋白質についてマイオニンと名付け、その単離・精製と機能の解析を行った。マイ オニンのアミノ酸組成は、ミオシン繊維のコアを形成しているパラミオシンと類似していた。また、

バラミオ シンの分子量はマイオニンの約1/2の110Kであることから、マイオニンはバラミオシンタイ プの2ドメイン構造であると推定した。さらに、マイオニンはミオシンのMgz十―ATPase活性のCa2゛感 受性を低下させる機能を持つことを明らかにした。これらの結果は、ホッキガイ開殻筋には、ミオシ ン、TM‑TN系に加 えて、マ イオニ ンが関与する第3の制御系が存在すること、そしてマイオニンのキ ヤッチ機構への関与を示唆するものであった。

  次に、TMを高収率 で迅速 に精製する方法を考案し、この方法でウサギとホタテガイ横紋筋よりTM を精製してミオシンのMgz十‑ATPase活性に与える影響を検討した。Baileyが示した従来の方法は、筋肉 のア セ ト ン粉 末 よりTMを調製す る方法 で、調製 に4日 を要し た。一方 、今回 考案したTMの調製 法 は、 筋 肉 から 塩 抽 出し て 得 た 天然 ア ク 卜ミ オシン(NAM)よ りTMを調製 する方 法である 。調製 は1 日で 完 了 し、 従 来 の方 法 の4〜6倍 と いう 高 収率でTMが 得られ た。ホタ テガイ 横紋筋TMの ウサギ

(2)

骨格筋合成アクトミオ シンに対する影響を検討したところ、ホタテガイ横紋筋TMはCaz゛濃度に関わ らずウサギ骨格筋合成アクトミオシンのMg2十一ATPase活性を25010低下させることが確認できた。また、

ホタテガイ合成アクトミオシンのMg2十一ATPase活性に対しては影響を与えないことから、ホタテガイ 横紋筋TMは、単独では制御機能を持たないことを明らかにした。

(2) 無 脊 椎 動 物 に お け るATP再 生 酵 素 ア ル ギ ニ ン キ ナ ー ゼ の 機 能 と 構 造 の 多 様 性 に つ い て   ATPは、解糖系、TCA回路、電子伝達系で産生されるが、筋肉や脳などの組織 やミ卜コンドリアで は、急激なATP消費に備えて、高工ネルギーリン酸 基がフォスフんゲンと総称される化合物に貯蔵さ れている。脊椎動物で は、フォスフんゲンとしてクレアチンリン酸(CrP)が存在し、クレアチンキナ ー ゼ(CK)がCrPの り ン 酸 基 をADPに転 移さ せる こと です ばや くATPを再 生す る。 多く の無 脊椎 動 物 は 、CrPの 代 わ り に ア ル ギ ニ ンリ ン酸(ArgP)とア ルギ ニン キナ ーゼ(AK)を持 つ。CKは 、分 子 量43Kの二 量体 で あり 、AKの多 くは 分子 量40Kの単量体であ る。本研究では、ホッキガイ閉殻筋よ り 、軟 体動 物と して は初 めて 分子 量80KのAKを発 見し 、そ の精 製、cDNA配列の決定、反応速度論 的 解 析 を 行 っ た 。 ま た 、 ナ マ コ 縦 走 筋 よ り2量 体AKを 精 製 し、2量体AKと レて 初め てcDNA配 列 を 決 定 し てAKやCKを は じ め と す る フ ォ ス フ ァ ゲ ン の 進 化 ・ 多 様 化 に つ い て 考 察 し た 。   ホッキガイAKは、硫 安分画と各種ク口マトグラフイーによって精製できた。cDNA配列とアミノ酸 配 列 か ら 、 ホ ッ キ ガ イAKは ア ミ ノ酸 残基 数724個、 分子 量81Kの 蛋白 質で あ り、40K夕イ プのAK 遺 伝子 が重 複し た2ドメイン構造であることを明らかにした 。また、ホッキガイAKの各基質につい て ミ カ エ リ ス 定 数Kmを 求 め た と こ ろ 、ATP再 生 ヘ 向 か う 正 反応 の基 質で あ るADPとArgPのKmは 他 種 軟体 動物AKと 同程 度で あっ たが 、ArgP再 生 ヘ向 かう 逆反 応の 基質 であ るATPとArgのKmは 低 い傾向にあった。また 、ナマコAKについてもcDNA配列とアミノ酸配列を決定し、アミノ酸残基数370 個 、 分 子 量42KDaと 算 定 し た 。 ナマ コAKの全 体 的な アミ ノ酸 配列 はAKより もCKに類 似し てい た が、Arg結合部位周辺の構造はAK型を示した。また 、系統樹の解析より、フォスフんゲンは共通の遺 伝 子 よりAKとCKに 分化 した のち 多様 化が 進ん だ と考 えら れる が、 ナマ コAKはCKに分 化し た原 始 遺伝子よりAKに分化したことを示唆する結果を得た。

(3)ヤツメウナギヘモグロピンIの機能と構造について

  ヤツ メウ ナギ は最も原始的な 脊椎動物の一種である。多くの脊椎動物ヘモグ口ビン(Hb)が4量体 であるのに対して、ヤ ツメウナギHbは単量体/二量体/多量体の平衡状態で存在することなど独自の 性質を保持している。 そこで本研究では、カワヤツメよりHbを単離・精製し、生理的性質と立体構造 を決定した。

  ヤツメウナギHbは、 溶血液をDEAE‑Toyopearlカラムにかけることで精製でき た。溶血液中には分 子 量の 異な る4種 類のHbが 存在 して いた が、 そのうち含有量が90%以上と最も多いHbをHbIとし、

解析を進めた。アミノ 酸配列を決定したところ、アミノ酸残基数149個、分子量16.5Kであり、ウミ ヤ ツメHbと 比較 すると4残基の置換があるのみであったが、 ヒ卜Hbロ鎖と比較すると、ヤツメウナ ギHbIで はN末 端が8残基 長く 、C末端 側のaヘリ ック ス間 のル ープ 部に 欠失 が あっ た。 また 、HbI の酸素結合特性は、HbIが低濃度の時には非協調的であるが、高濃度であると協調性が現れた。さらに、

HbI結晶構造を2.3Aの 分解能で決定したところ、単位格子中に12個のHbI分子が存在しており、これ

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(3)

らの分子は、2量体、6量体、12量体に会合していた。ヒトHbロ鎖と比較して付加・欠失していた部 分は6量体を構成する分子間の接触部に存在していた。以上より、ヤツメウナギHbIは、高濃度で多 量 体 を 形 成 し 、 協 調 的 に 酸 素 を 結 合 し 得 る こ と を 示 唆 す る 結 果 と な っ た 。

(4)

学位論文審査の要旨

主査   教授   田中   勲 副査   教授   新田勝利

副査   教授   矢澤洋一(北海道教育大旭川校)

副査   助教授   渡邉信久

     学位論文題名

The diversity of protein structures and functions      (蛋白質の構造と機能の多様性に関する研究)

  生物は、遺伝子の変異・重複などにより、進化・多様化し、蛋白質の種分化・

機能分化 をもたら した。本 研究では、筋収縮、ATP再生系そして酸素運搬に焦点 を当て、 それに関 与する蛋 白質にっ いて、構造 と機能の 関連性そしてその多様 性にっい て検討し た。

  筋 収縮は、細 胞内Ca2゛濃 度の上昇 に伴うミオシンATPaseの活性化によって起 こ る。脊椎動物横紋筋では、Ca2゛はアクチン繊維上に存在しているト口ポニンC に 結 合し 、 収 縮制 御 はト 口 ポ ミオ シ ン(TM)― ト □ポニン(TN)系によっ て行わ れている。一方、二枚貝貝柱閉殻筋ではCa2゛はミオシンに結合するが、完全な制 御 にはTMーTN系が 必要であ り、二重 の制御機 構が存在 している 。本研究では、

ホ ッキガイ閉 殻筋より 新しく見 いだした 分子量230Kの 蛋白質マ イオニンと名付 け 、その単離 ・精製と 機能の解 析を行っ た。マイ オニンの アミノ酸組成は、パ ラ ミオシンと 類似して おり、バ ラミオシンの分子量はマイオニンの約1/2の110K で あ るこ と か ら、 マイ オニンはバ ラミオシ ンタイプ の2ドメイ ン構造で あると 推定した。さらに、マイオニンはミオシンのMg2十ーATPase活性のCa2゛感受性を低 下 させる機能 を持つこ とを明ら かにした 。これら の結果は 、ホッキガイ閉殻筋 に 、ミオシン 、TMーTN系に 加えて、 マイオニンが関与する第3の制御系が存在す る ことを示唆 するもの であった 。次に、TMを高収率 で迅速に 精製する方法を考 案 し た。 従 来 の方 法で は、調製に4日を要し たが、今 回考案し た調製法 では、

調 製 は1日 で完 了 し 、従 来 の方 法 の4〜6倍と い う 高収 率 でTMが 得ら れ た 。こ の 方 法 で精 製 し たホ タ テガ イTMは 、 ホ タテ ガ イ合 成 ア クト ミ オシ ン のMg2+̲

ATPase活 性に対して は影響を 与えない ことから 、ホタテ ガイ横紋 筋TMは、単独 では制御機能を持たないことを明らかにした。

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(5)

  ATP は、解糖系・ TCA 回路電子伝達系で産生されるが、この他にホスファゲン キナーゼによる ATP 再生系がある。脊椎動物では、クレアチンキナーゼ (CK) がクレアチンリン酸 (CrP) のりン酸基を ADP に転移させることですばやく ATP を再生する。多くの無脊椎動物は、CrP の代わりにアルギニンリン酸(ArgP) と アルギニンキナーゼ (AK) を持つ。 CK は、分子量 43K の二量体であり、 AK の多 くは分子量 40K の単量体である。本研究では、ホッキガイ閉殻筋より、軟体動 物としては初めて分子量80K のAK を発見し、その精製、cDNA 配列の決定、反応 速度論的解析を行った。また、ナマコ縦走筋より 2 量体AK を精製し、2 量体AK として初めてcDNA 配列を決定してAK やCK をはじめとするフォスファゲンの進 化・多様化について考察した。 cDNA 配列とアミノ酸配列から、ホッキガイAK は 分子量 81K の蛋白質であり、40K 夕イプの AK 遺伝子が重複した 2 ドメイン構造 であることを明らかにした。また、ホッキガイAK の各基質についてミカェリス 定数 Km は ATP と Arg について 低い傾向にあった。また、ナマコAK についても cDNA 配列とアミノ酸配列を決定した。ナマコAK の全体的なアミノ酸配列はAK よりもCK に類似していたが、Arg 結合部位周辺の構造はAK 型を示した。また、

系統樹の解析より、フォスファゲンは共通の遺伝子よりAK とCK に分化したの ち多様化が進んだと考えられるが、ナマコ AK は CK に分化した原始遺伝子より AK に分化したことを示唆する結果を得た。

   ヤツヌウナギは最も原始的な脊椎動物の一種である。多くの脊椎動物ヘモグ 口ビン(Hb) が4 量体であるのに対して、ヤツヌウナギHb は単量体/多量体の 平衡状態で存在することなど独自の性質を保持している。ヤツメウナギHb の溶 血液中には分子量の異なる 4 種類の Hb が存在していたが、そのうち含有量が 90 %以上と最も多いHb をHbI とし、解析を進めた。 HbI はアミノ酸残基数 149 個、分子量16. 5K であり、配列は他種ヤツメウナギとは類似していたが、ヒ卜 Hb ロ鎖と比較すると、ヤツメウナギHbI では N 末端が 8 残基長く、 C 末端側の a ヘリックス間のループ部に欠失があった。また、HbI の酸素結合特性は、HbI が 低濃度の時には非協調的であるが、高濃度で協調性が現れた。さらに、HbI の結 晶構造を 2 . 3A の分解能で決定したところ、単位格子中に12 個のHbI 分子が存 在しており、これらの分子は、2 量体、 6 量体、12 量体に会合していた。ヒト Hbp 鎖と比較して付加・欠失していた部分は6 量体を構成する分子間の接触部 に存在していた。以上より、ヤツメウナギHbI は、高濃度で多量体を形成して、

協 調 的 に 酸 素 を 結 合 し 得 る こ と を 示 唆 す る 結 果 と な っ た 。

   本研究は、進化における蛋白質の構造と機能の多様化について3 つの異なる

系において研究したものであり、その成果は,蛋白質の構造と機能の進化に関

して有益な知見を与える。本研究が生物科学に及ぼす貢献には多大なものがあ

ると考えられ、よって審査員一同は申請者が博士(理学)の学位を得る十分の

資格があるものと認めた。

参照

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