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大旦の成分改良に関する研究 学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 羽 鹿 牧 太

学 位 論 文 題 名

大旦の成分改良に関する研究 学位論文内容の要旨

  大豆はたん白質や脂肪を豊富に含んでおり、穀類で不足するこれら栄養成分を補完できる貴重な 作物である。しかし同様の特徴を持っ肉類に比較した美味しさの点でやや劣る。また国内で用いら れる食品用大豆は豆腐、味噌など伝統的食品が大半を占め、その需要量は横ばぃ状態である。大豆 は良質な蛋白質やイソフラボン等の健康機能性成分を豊富に含み、国民全体の健康維持にも大きく 寄与すると考えられることから、新たな利用方法を開発し、無理なく日常の摂取量を増大する方策 が求められている。

、大豆の食品用途を制限している最大の要因のーっは大豆製品独特の青臭みである。これを取り除 くことにより、風味による制限が少なくなり、大豆の新たな用途が開発されることが期待される。

また大豆の主要な貯蔵蛋白質|まローコングリシニン(7S)とグリシニン(11S)であり、両者で蛋白質全 体の60〜80%を占めると言われている。7Sタンパク質は11Sタンパク質に比べ含硫アミノ酸含量が 少なく、ゲル化特性や栄養性の面で劣っている。このため、7Sを減少させて、11Sを増加した品種 の育成が求められている。本研究ではこれらの成分を改変した大豆品種の作出とその特性の解明を 行った。

  第I章ではこれまで交配育種で は作出されなかったりポキシゲナーゼ完全欠失系統を作出する ことに成功した。この系統を用いて圃場における栽培試験を実施し、リポキシゲナーゼの栽培に与 える影響について検証した。

  関系2号(L―1‑L−3欠失)と関系1号(L―2‑L―3欠失)を交配した後代にガンマー線処理を行った突 然変 異集団をSDS―PAGEでスクリ ーニングし、1粒のりポキシゲナーゼ完全欠失系統を見っけ出し た。この系統を温室で栽培したところ生育異常は見られず、正常に次世代種子を得ることができた。

次世代でもりポキシゲナーゼ完全欠失特性は維持されており、この形質が遺伝的形質であることを 確認した。この系統を用いて圃場での特性調査を行った結果、戻し交雑親であるスズュタカとほぼ 同等の生育特性を示し、無防除圃場における栽培試験でも虫害程度に普通品種との差は見られなか った。また、主要成分・豆腐加工適性もほとんど差がなかった。「タマホマレ」「フクユタカ」に 戻し交雑を行った系統でも傾向は同じで、種子リポキシゲナーゼは大豆の生育に大きな影響を与え ないと考えられた。リポキシゲナーゼ欠失大豆を用いて行った加工適性試験では、普通品種に比べ 豆乳・豆乳では官能評価の差が小さかったが、豆乳プリンでは大きな差が見られ、用途によるりポ キシゲナーゼ欠失特性の優位性に差があることが示唆された。

  第H章では作出したりポキシゲナーゼ欠失系統の遺伝的背景を明らかにするとともに、リポキシ ゲナーゼ完全欠失品種を検定可能な新たな手法を検討した。

  普通品種と完全欠失系統の交配後代は野生型:L―1‑L―2欠失:L−3欠失:全欠失が9:3:3:1の比 に分離し、完全欠失系統とL―3欠失の交配後代のF2はL―3欠失:完全欠失が3:1に分離した。この 結果、L−1とL−2の間に強連鎖が存在することが確認された。またこの交配から初めてL―1‑L―2欠 失系統が作出された。

  育種現場でも利用可能なりポキシゲナーゼ欠失系統の簡易迅速検定法として、リポキシゲナーゼ のローカロテン退色能を用いた色素法を検討した。種子の一部を削って採取した種子粉に、Lー2溶 液(TestI)、L−3溶液(Test II)をそれぞれ補助酵素液として添加し、ローカロテン液を加えた後

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に 黄色の退色度合いを肉 眼で観察した。TestIではL−3を持つ系統で退色反応が起こり、TestH ではL―2を持っ系統で退色反応が生じた。普通大豆と完全欠失系統の交配後代からは、L―1とL−2 の間の強連鎖のために、野生型、L―1‑L−2欠失、Lー3欠失、全欠しか出現しないことから、ロカロ テン退色反応により、容易に完全欠失系統を選抜できた。戻し交雑系統を用いて実際に検定した結 果、誤判定率は1. 3%で、信頼陸は高いと考えられた。

  連続戻 し交雑の際に、ヘテロでも判別が可能な検定法としてDNAマーカーを用いた検定法を開発 した。L―2、L−3のそれぞれの欠失変異のDNA配列を利用してプライマーを設計してPCRを行った 結果、L―3は2カ所のSNPsが利用でき たので安定してバンドの増幅が起こったが、Lー2は1カ所の 変異のみ であったので、ミスアニーリングが生じることがあった。そこでSNPsを利用したプライ マ ーと、SNPsをはさむよ うに設計した2つのプライマ ーを混合してPCRを行うと、 ミスアニーリ ングで生じたバンドは濃さで判別でき、実験ミスの判定も可能であった。また時間やコストがかか るものの、より安定した検定法として、制限酵素を用いた検定法を開発した。L−2欠失型、L―3保 有 型が それ ぞれ 制 限酵 素NlamとSspIの認識部位であ ることを利用して、増幅したDNA断片を制 限酵素処 理して切断し、電気泳動することにより、欠失型と野生型を検定できることを示した。

  第m章では、貯蔵蛋白質の7Sを完全 に欠失した系統を見いだし、この系統の遺伝的背景を解明 するとともに、蛋白成分の変化について検討した。

  九州各地から収集した大豆の野生種のツルマメをスクリーニングした結果、天草下島で収集した ツルマメ から7Sが完全に久失した系統(QT2系統)を見いだした。QT2系統は正常に生育し、次世 代でも7S欠失性は保持されていた。QT2系統と普通大豆の交配実験の結果、Fiは全て7S欠失型、

F2は7S欠 失型:野生型が3:1に分離し、単一の優性遺伝子(Scg‑l)に支配されることを明らかにし た。また りポキシゲナーゼ完全欠失系統、ば 欠失系統との交配後代の分析から、Scg‑lはりポキ シ ゲ ナ ー ゼ や Q サ ブ ュ ニ ッ ト と は 独 立 に 遺 伝 す る こ と が 明 ら か と な っ た 。   QT2系統や大豆への戻し交雑系統の主要成分を分析した結果、7Sを欠失しても主要成分に大きな 違いは見 られなかった。また電気泳動像をデンシ卜メ卜リーで分析した結果から、7Sの減少を補 う形で11Sが増加していると推測された。

  第IV章の総合考察では、これまでに育成された成分改変大豆の普及が進んでいなぃ原因と普及の ための条件を考察した。成分改変品種の成功例の考察から、成分を改良した品種の普及のためには、

新規用途の開発だけでなく、従来の製造工程を生かした利用加工技術など、多面的な用途開発の重 要性を指摘した。

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学位論文審査の要旨 主査   教授   喜多村啓介 副査    教授    佐野芳雄 副査    教授    三上哲夫

学 位 論 文 題 名

大豆の成分改良に関する研究

本 論 文 は4章123頁 か ら な る 和 文 論 文 で あ り 、 図23、 表32お よ び 要 約 を 含 む 。

  大 豆 の 種 子 リ ポ キ シ ゲ ナ ー ゼ は 大 豆 製 品 独 特 の 青 臭 み の 原 因 と な っ て い る 酵 素 で あ る 。 こ れ を 取 り 除 く こ と に よ り 、 大 豆 製 品 の 風 味 改 善 が で き る と と も に 、 青 臭 み に よ る 大 豆 の 用 途 制 限 が 少 な く な り 、 新 た な 大 豆 製 品 の 開 発 が 期 待 さ れ る 。 ま た 大 豆 の 主 要 な貯 蔵蛋 白質 はロ ‐コ ン グリ シニ ン(7S)と グリ シニ ン(11S)であ り、両者で蛋白質全体 の60〜80% を 占 め る と 言 わ れ て い る 。7S夕 ン パ ク 質 は11S夕 ン パ ク 質 に 比 べ 含 硫 ア ミ ノ 酸 含 量 が 少 な く 、 ゲ ル 化 特 性 や 栄 養 性 の 面 で 劣 っ て い る 。 こ の た め 、7Sを 減 少 さ せ て 、11Sを増 加し た品 種の 育成 が求 めら れて いる 。

  本 研 究 で は こ れ ら の 成 分 を 改 変 し た 大 豆 品 種 の 作 出 を 行 い 、 そ の 特 性 の 解 明 や 選 抜 技 術の 開発 を行 った 。得 ら れた 結果 は以 下の 通り であ る。

1リ ポ キ シ ゲ ナ ー ゼ 完 全 欠 失 大 豆 の 作 出 と そ の 特 性

  こ れ ま で 得 ら れ て い な か っ た り ポ キ シ ゲ ナ ー ゼ 完 全 欠 失 系 統 を 、 ガ ン マ ー 線 処 理 を 行 っ た 突 然 変 異 集 団 か ら 見 い だ し た 。 こ の 系 統 を 温 室 で 育 て た と こ ろ 、 生 育 異 常 は 見 ら れ ず 、 次 世 代 で も り ポ キ シ ゲ ナ ー ゼ 完 全 欠 失 特 性 は 維 持 さ れ て い た 。 こ の 系 統 を 用 い て 圃 場 で の 特 性 調 査 を 行 っ た 結 果 、 戻 し 交 雑 親 と ほ ぽ 同 等 の 生 育 特 性 、 収 量 性 等 を 示 し た こ と か ら 、 種 子1」 ポ キ シ ゲ ナ ー ゼ は 大 豆 の 生 育 等 に 大 き な影 響を 与え ない と考 え ら れ た 。 リ ポ キ シ ゲ ナ ー ゼ 欠 失 大 豆 を 用 い て 行 っ た 加 工 適 性 試 験 で は 、 用 途 に よ ル リ ポ キ シ ゲ ナ ー ゼ 欠 失 特 性 の 優 位 性 に 差 が あ る こ と が 示 唆 さ れ た 。

2リ ポ キ シ ゲ ナ ー ゼ 欠 失 特 性 の 遺 伝 様 式 の 解 明 と 選 抜 法 の 開 発   リ ポ キ シ ゲ ナ ー ゼ 欠 失 系 統 と 普 通 品 種 と 完 全 欠 失 系 統 の 交 配 後 代 はL‑lとL‑2間 の

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強連鎖を仮定したときの分離比に良く適合した。またこの交配から初めてL‑l . L‑2 欠 失系統が作出された。

   リポキシゲナーゼ欠失系統の簡易迅速検定法として、B‑ 力口テン退色能を用いた色 素法を検討した。種子粉に、L‑2 溶液(TestI )、L‑3 溶液(Test II )をそれぞれ補助酵素 液として添加し、ロ‐カロテン液を加えた後に黄色の退色度合いを肉眼で観察すること により、L‑2 及びL‑3 の有無を判別できた。普通大豆と完全欠失系統の交配後代からは、

L‑l .L‑2 間の強連鎖のために、野生型、L‑l . L‑2 欠失、L‑3 欠失、全欠しか出現しない こ と か ら 、 ロ ‐ カ 口 テ ン 退 色 反 応 に よ り 、 容 易 に 完 全 欠 失 系 統 を 選 抜 でき る 。    ま たへ テ口で も判 別が 可能 な検 定法 とし て欠 失変 異の 配列 情報 をもと にし たDNA マ ー カ ーを 用 い た 検 定 法 を 開 発 し た 。L‑3 は2 力 所の SNPs を利 用し たプ ライ マー で PCR を 行う こと によ り判 別が 可能であった。また、L ―2 はSNPs を利用したプライマー と 、 SNPs を は さ む よ う に 設 計 し た 2 つ のプ ライ マー を混 合し てPCR を行 うと 、ミ ス アニーリングで生じたパンドと本来のバンドは濃さで判別でき、実験ミスの判定も可 能であった。より安定した検定法として、L‑2 欠失型、L‑3 保有型がそれぞれ制限酵素 Nla lII とSspI の認識部位であることを利用して、増幅したDNA 断片を制限酵素処理し て切 断し 、電 気泳動 する こと によ り、 欠失 型と 野生 型を 検定できることを示した。

37S サプュニット完全欠失系統の作出とその特性

   天草下島で収集したツルマヌから7S が完全に欠失した系統を見いだした。この系統 は正常に生育し、次世代でも7S 欠失性は保持されていた。また普通大豆との交配実験 の結果、7S 欠失性は単一の優性遺伝子(Scg‑l )に支配されることを明らかにした。さら にりポキシゲナーゼ完全欠失系統、a 欠失系統との交配後代の分析から、Scg‑l はり ポ キ シ ゲ ナ ー ゼ や a サ ブ ュ ニ ッ ト と は 独 立に 遺 伝 す る こ と を 明 ら か に し た 。   QT2 系 統や 大豆 への 戻し交雑系統の主要成分を分析した結果、7S を欠失しても主要 成分に大きな違いは見られなかった。また電気泳動像をデンシトメトリーで分析した 結 果 か ら 、 7S の 減 少 を 補 う 形 で 11S が 増 加 し て い る と 推 測 さ れ た 。

   本研究は、世界で初めて大豆の種子リポキシゲナーゼ完全欠失系統を作出し、その 生育特性や加工特性を明らかにした。また遺伝的特性を明らかにして、簡易なりポキ シゲナーゼ完全欠失系統選抜法を開発した。

   さらに大豆の野生種のツルマメから、生育異常を示さない7S 夕ンパク質完全欠失系 統を見いだし、その遺伝的特性を明らかにした。これらの成果は大豆の成分改変品種 の 実 用 化 に 重 要 な 道 筋 を 立 て る も の で あ り 、 学 術 的 に 高 く 評 価 で き る 。    よって、審査員一同は、羽鹿牧太氏が博士(農学)の学位を受けるに十分な資格を 有するものと認めた。

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