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中学校社会科における新聞活用学習の開発-「自ら学ぶ意欲」の育成に着目して-

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Academic year: 2021

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(1)Title. 中学校社会科における新聞活用学習の開発−「自ら学ぶ意欲」の育成に 着目して−. Author(s). 林, 祐史; 藤本, 将人. Citation. 釧路論集 : 北海道教育大学釧路校研究紀要, 第47号: 67-77. Issue Date. 2015-12. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/7927. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 釧路論集 -北海道教育大学釧路校研究紀要-第47号(平成27年度) Kushiro Ronshu, - Journal of Hokkaido University of Education at Kushiro - No.47(2015):67-78. 中学校社会科における新聞活用学習の開発 -「自ら学ぶ意欲」の育成に着目して- 林 祐 史・藤 本 将 人* 北海道教育大学大学院教育学研究科教科教育学専攻社会科教育学専修大学院生/釧路市立鳥取中学校 *北海道教育大学教育学部釧路校社会科教育学研究室. Designing a Social-Studies Lesson Using Newspapers in Junior High School HAYASHI Yoshifumi and FUJIMOTO Masato* Department of Social-Studies Education. Student of the Graduate School of Education, Hokkaido University of Education/ Tottori Junior High School, Kushiro City, Hokkaido *Department of Social-Studies Education, Kushiro Campus, Hokkaido University of Education. 概要 中学校社会科において,新聞活用学習を導入するとどのような力が育成されるのか。また新聞活用学習の内容はどのよ うに具体化され得るのか。本稿の目的は,新聞活用学習と自ら学ぶ意欲の高まりとの関係を中学校社会科の授業開発を通 して明らかにすることである。これら二つの問いに対する答えは以下に示す通りである。①中学校社会科に新聞活用学習 を導入すると自ら学ぶ意欲が高まること。②自ら学ぶ意欲の育成過程を基盤とした単元構成を採用し,一単位授業に内容 の異なる新聞記事教材を活用することで意欲の高まりの変容を判断できること。今後の課題は,自ら学ぶ意欲の高まりの 育成過程の基盤となる要素モデルの精緻化,及び単元,他分野における新聞活用学習の開発である。. 1 はじめに. 習の土台をつくり,公共性の育成に応える現実的・効果的 な手立てとなることを論じている3)。. 中学校社会科において,新聞活用学習を導入するとどの. もうひとつは,新聞活用学習の実践を通して学習意欲の. ような力が育成されるのだろうか。またその力が最も効果. 高まりを実感できたとする論考である。これらには例え. 的に身に付く新聞活用学習の内容はどのように具体化され. ば,新聞のもつ発信という役割を学び,新聞投稿等の発信. 得るのだろうか。. 活動を学習に取り入れることが学習意欲を高めるとした中. 本稿の結論を先取りして示せば次のようになるだろう。. の研究4)や,社会科において新聞を活用した学習は生徒の. ひとつは,中学校社会科に新聞活用学習を導入すれば学習. 学習意欲を高揚させるとした岡本の研究5)などがある。. 者の自ら学ぶ意欲が高まること,もうひとつは,自ら学ぶ. 上記の論考は,社会科において新聞活用学習と学習意欲. 意欲の育成過程を基盤とした単元構成を採用し,一単位授. の高まりに何らかの関係があることを紹介し示唆を与えて. 業において導入場面と帰結場面に内容の異なる複数の新聞. いる点で意義深い。学習意欲の向上が学力の三要素6)と位. 記事教材を活用すれば自ら学ぶ意欲の高まりの変容を見取. 置付けられる現在,学力向上のための具体的な手掛かりと. ることが可能となるということである。. してさらに研究が進められていくであろう。しかし,これ. 1). すでに新聞活用学習と学習意欲 との関係においては,. らの研究は,中学校社会科において新聞活用学習を導入す. 記事教材の活用により学習意欲を高められることが報告さ. るとどのような過程でどのような力が育成されるのかにつ. 2). れている 。先行研究の研究成果をまとめると,以下の二. いては論じきれていない。また実際の学習内容の具体や学. つに集約できるだろう。. 習後の意欲の高まりを客観的に示してもいない。. ひとつは,公民的資質を育成するという社会科の目的達. 本稿では,先行研究では論じきれてこなかった新聞活用. 成の手段として新聞活用学習を提案した論考である。例え. 学習と自ら学ぶ意欲の高まりとの関係を中学校社会科地理. ば,影山は現代社会のできごとを紙面に縮図化している新. 的分野の単元「北海道地方-自然環境を中心とした考察-」. 聞を教材化することが,生活と教育を結合させ,社会科学. の開発を通して明らかにすることを目的とする。以下では,. - 67 -.

(3) 林 祐 史 ・ 藤 本 将 人 中学校社会科において新聞活用学習が求められる背景と育. 3 新聞活用学習における自ら学ぶ意欲の高まり. 成される力を示す(2) 。次に新聞活用学習における自ら学 ぶ意欲の高まりの育成過程を示す(3) 。そして自ら学ぶ意. (1)自ら学ぶ意欲の発現プロセス. 欲の高まりを目指す新聞活用学習の実際として地理的分野. いかにすれば自ら学ぶ意欲を高めることができるのか。. 単元「北海道地方」を開発する(4) 。最後に生徒に育成さ. 桜井は,学習意欲を自ら学ぶ意欲と外発的な学習意欲に分. れた自ら学ぶ意欲の高まりを分析し,研究の成果と課題を. 類し,自ら学ぶ意欲を自発的に学ぼうとする意欲としてい. 示したい(5,6) 。. る8)。また,自ら学ぶ意欲の発現プロセスを図1のように示 している。. 2 中学校社会科における新聞活用学習. 図1の下段にある「知的好奇心」と「有能さへの欲求」 という二つの心理的欲求が自ら学ぶ意欲にあたる。「知的. (1)新聞活用学習が求められる背景 -知識基盤社会化と情 報活用力の育成-. 好奇心」とは,よりよく知りたい・わかりたいという情報 への純粋な興味であり,誰もが生まれながらにもってお り,しぼむことはあってもなくならないものである。情報. 21世紀は新しい知識・情報・技術が社会のあらゆる領. を得ることによる有能感の高まりが知的好奇心の動機づけ. 域で飛躍的に重要性を増す知識基盤社会の時代である。. となっている。「有能さへの欲求」とは,ある優れた目標. OECDは,知識基盤社会を担う子どもたちに必要な能力を. を立て,それを高い水準で完遂しようとする欲求である。. 相互作用的に道具(知識・情報,言語,技術など)を用い. これら二つの欲求は,図1の中段にある「積極探求」「思. る能力,異質な集団で交流する(協同的な学び・活動)能. 考と実践」「独立達成」といった学習活動を引き起こす。. 力,自律的に活動する能力をキー・コンピテンシー(主要. 「積極探求」とは,積極的に情報を集めたり,難しい問. 能力)として定義し,これらの能力をはぐくむ教育課程が. 題に挑戦したり,自ら計画を立てて勉強をする学習活動で. 7). 国際的に共有されつつあると指摘している 。. ある。「思考と実践」とは,物事を自分なりに考えたり,. 我が国の児童生徒については,OECDのPISA調査によ. 考えたことを現実場面に適用する学習活動である。「独立. ると「思考力・判断力・表現力等を問う読解力や記述式問. 達成」とは,できるだけ自分一人の力で問題を解決しよ. 題,知識・技能を活用する問題」や「読解力で成績分布の. うとする学習活動である。このような学習活動の結果,図. 分散が拡大しており,その背景には家庭での学習時間など. 1の上段にある学ぶことへの面白さ,楽しさや「やればで. の学習意欲,学習習慣,生活環境」等に課題があると指摘. きる」「自分も結構できる」という有能感(自信)が生じ. されている。これを受け,中学校学習指導要領社会には,. る。これらの感情認知は自ら学ぶ意欲へフィードバックさ. 「新聞,読み物,統計その他の資料に平素から親しみ適切. れ,さらに「知的好奇心」や「有能さへの欲求」を満たす. に活用すること」という文言が示されている。新聞記事な. ことになり再び同じプロセスが始動される。このようにし. どから情報を集め,集めた情報を活用する力を育成するこ. て,子どもの自ら学ぶ意欲が高まっていき学習活動が活発. とが社会科授業において求められている。. に展開されるというのである9)。. (2)新聞活用学習により育成される力 -自ら学ぶ意欲の向 上- 新聞活用学習は,新聞の特性(一覧性,俯瞰性,解説性, 詳報性,記録性,携帯性,保存性など)を活用して社会の 今を取り入れる教育である。中学校社会科において新聞活 用学習を採用すれば,社会構造を知るための情報収集・活 用能力,知るために必要な基礎的知識,社会の今を知るこ とによる自ら学ぶ意欲を育成することができる。 中学校学習指導要領総則においては, 「…基礎的・基本 的な知識及び技能を確実に習得させ, これらを活用して課 題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力その. 図1 自ら学ぶ意欲の発現プロセス. 他の能力をはぐくむとともに, 主体的に学習に取り組む態. (桜井の論考をもとに筆者が作成). 度を養い, 個性を生かす教育の充実に努めなければならな い。…」と示されている。自ら学ぶ意欲は学力の三要素と. 桜井の研究は,自ら学ぶ意欲自体を定義づけており,ま. 位置付けられることになり,中学校社会科の新聞活用学習. た発現プロセスは自ら学ぶ意欲の育成を判断するための有. において自ら学ぶ意欲を高めることが期待されている。. 効な手段となりうる。今後,意欲の観点を客観的に評価す. - 68 -.

(4) 中学校社会科における新聞活用学習の開発 る研究がさらに進められる可能性がある。しかし,これら. 報収集・情報理解を基盤とした思考力・判断力に関わる学. の自ら学ぶ発現プロセスは教育全体の一般的なプロセスを. 習活動である。このような学習活動の結果,学びの「面白. 示したものであり,中学校社会科固有の自ら学ぶ意欲の高. さ・楽しさ」が生じ,新たな欲求が生まれることとなる。. まりを示したものではない。また,新聞活用学習において. 「社会の今を知る欲求」とは,解説性,詳報性,記録性と. 期待される自ら学ぶ意欲の高まりも具体的には示せていな. いう社会の今を伝える新聞の特性からくる欲求である。過. い。以下,桜井の自ら学ぶ意欲の発現プロセスをベースに. 去と現在,現在とこれからの社会を比較したり,複数の視. しながら中学校社会科の新聞活用学習における自ら学ぶ意 欲の高まりを示していくこととしたい。 (2)自ら学ぶ意欲の発現プロセスの発展性 中学校社会科は, 「広い視野に立って社会に対する関心 を高め」 「諸資料に基づいて多面的・多角的に考察し」,「我 が国の国土と歴史に対する理解と愛情を深め」 , 「公民とし ての基礎的教養を培い国際社会に生きる平和で民主的な国 家・社会の形成者として必要な公民的資質の基礎を養う」 ことを目標とする教科である。このような特性に応じた中 学校社会科における「自ら学ぶ意欲」の高まりとは,「社 会的事象に対する関心を高め,よりよい社会を考え自覚を もって責任を果たすための意欲」 の高まりのことであろう。 中学校社会科の新聞活用学習における自ら学ぶ意欲の高 まりのプロセスを図2に示した。新聞活用学習における意 欲の高まりは中心教材となる新聞の特性に影響を受けるこ とになる。前述したように新聞の特性とは,一覧性,俯瞰 性,解説性,詳報性,記録性,携帯性,保存性等が考えら れるが,中学校社会科における新聞活用学習では解説性,. 図2 新聞活用学習における自ら学ぶ意欲の高まり. 詳報性,記録性といった特性が意欲の高まりに有効に機能. (筆者作成). することになる。 新聞活用学習により社会の今を知る欲求と知るために必. 点から現在の社会を見つめ直すことが可能となる新聞活用. 要な基礎的知識を獲得する欲求が高まることになる。これ. 学習固有の欲求である。また,社会の今を知るためには基. らの欲求は基礎・基本の知識の定着や問題解決という新た. 礎的な知識が必要となり基礎的知識の獲得にせまられる。. な新聞活用学習へと発展させる。また,情報収集・情報理. 「基礎的知識の獲得欲求」が生じるのである。これらの新. 解・情報活用の力や様々な視点から社会を見つめる力も形. 聞活用学習固有の欲求は新たな学習活動へと発展させる。. 成され,現実の社会構造や構造上の問題点を理解できるよ. 「情報収集・情報活用」とは,情報収集,情報理解を基盤. うになる。新たな学習活動は,社会の今を理解する面白さ. とした情報を活用する学習活動である。情報を活用するこ. や楽しさという気持ちと問題解決の達成感から得られる自. とにより多角的・多面的な物事の見方考え方が形成される. 信を生じさせ,さらに自ら学ぶ意欲を高めていくことにな. 「多様な見方考え方」を育む学習活動となる。少し難しい. ろう。. 「問題解決」に挑戦するためにさらなる「基礎・基本の知. 図2の下段にある「知的好奇心」と「有能さへの欲求」. 識」も必要となろう。新たな学習活動の結果,自らの力で. という2つの心理的欲求が自ら学ぶ意欲にあたる。これは. 調べ,考えて学習課題を解決していく「面白さ・楽しさ」. 新聞活用学習に限らずいかなる学習に対しても変わらない. に加え,達成感や成就感からくる「有能感(自信) 」も生. 自ら学ぶ意欲であると考えられる。従って新聞活用学習に. まれる。これらの新たな感情認知はフィードバックされ自. おける自ら学ぶ意欲も「知的好奇心」と「有能さへの欲求」. ら学ぶ意欲へとつながっていき,再び同じプロセスが始動. となる。 「知的好奇心」と「有能さへの欲求」の定義は前. される。. 述したものと変わらない。 「情報収集・情報理解」とは, 教材化された新聞から学習課題の解決に必要な情報を収集 し,記述内容を理解する学習活動である。新聞活用学習に おける基本的な学習活動となる。 「様々な見方考え方」と は,異なる内容や同一内容の複数の新聞記事教材から自分 自身の考えや解釈を導き出し判断する学習活動である。情. - 69 -.

(5) 林 祐 史 ・ 藤 本 将 人 4 地理的分野単元「北海道地方」の開発. 面には北海道の第一次産業を中心に様々な産業に関わる記 事が掲載されている。北海道の農業に関する新聞記事を教. (1)単元構成. 材として活用することにより生徒の自ら学ぶ意欲の高まり. 以下に単元指導計画(表1)を示す。表の左から「時数」,. と基礎・基本の充実を図る指導を目指す。自ら学ぶ意欲を. 「学習内容・学習活動」 , 「評価規準」を表している。全5. 高める手段として,授業展開の工夫,学習課題や発問の工. 時間の単元構成である。 「評価規準」の関心・意欲・態度. 夫などが考えられるが,本単元では新聞記事という教材の. の観点については,自ら学ぶ意欲という視点で具体を示し. 工夫と自ら学ぶ意欲の育成過程を基盤とした単元構成によ. ている。. り意欲を高めることを目指している。. 本単元では,新聞記事教材を活用し,北海道地方を自然. 新聞記事を教材として使うことにより,最終的には社会. 環境を中心とした考察から,気候,産業(主に農業,水産. の今に対する自分なりの多角的な考えへの発展と自ら学ぶ. 業の第一次産業) ,観光業,歴史に関する基礎的知識の定. 意欲の向上を図る。教科書記述に対する社会(地域)の現. 着と自ら学ぶ意欲の育成を目指している。. 状理解と教科書以外からの新たな情報収集意欲の高まりか. 北海道の産業に関する新聞記事は多い。特に,長年,北. ら学ぶことの面白さや楽しさを体感し,基礎・基本の充実. 海道における社会的出来事を取り上げてきた北海道新聞紙. を図ることとしたい。. 時数. 表1 地理的分野単元「北海道地方」単元指導計画 学習内容・学習活動 ・北海道の地形のあらましや歴史を理解す. 1. る。 ・北海道の自然環境の改変を理解する。. 評価規準 思考・判断・表現. 関心・意欲・態度. 技能. 知識・理解. 北海道の歴史に興味. 北海道の歴史につい. 北海道の地形,歴史,. をもち,自然環境の. て考え,記述するこ. 自然環境の改変を理. 改変に関心と意欲を. とができる。. 解できる。. もつことができる。 ・北海道の気候の特徴を都市の比較を通し 2. 3 本 時. 4. て考えることができる。 ・各地方の気候の特色を理解できる。. 各地方の気候の特色. 北海道の気候の特色. それぞれの特徴を記. を地図帳や資料集か. を理解できる。. 述することができ. ら読み取ることがで. る。. きる。. ・北海道の農業の特色を理解できる。. 北海道の農業の特色. 北海道の農業の特色. 北海道の農業の特色. 北海道の農業の特色. ・北海道の農業発展の歴史を理解できる。. と発展の歴史に関心. を考え,記述するこ. を教科書資料から読. と歴史を理解でき. と意欲をもつことが. とができる。. み取ることができ. る。. できる。. る。. ・北海道の水産業の特色を理解できる。. 北海道の水産業の特. 北洋漁業の変容の理. 北海道の水産業の課. ・北洋漁業の変容の理由を考えることがで. 色に関心と意欲をも. 由を記述することが. 題と現状を理解でき. つことができる。. できる。. る。. きる。 5. 都市の気候を比較し. ・北海道の観光産業の特色を理解できる。. 北海道の観光業の特. 自然環境の観光への. 北海道の観光産業の. ・資料から自然環境の観光への生かし方を. 色に関心と意欲をも. 生かし方を読み取る. 課題と現状を理解で. つことができる。. ことができる。. きる。. 理解できる。. (筆者作成) (2)単元目標. 本単元及び本時においては,「ⅰ北海道の産業の特色に. 単元目標は以下の四点である。. 対して関心をもち,基礎的知識を身に付けることができ る」,「ⅳ北海道の産業,気候,歴史に対する課題や現状を. 地理的分野単元「北海道地方」単元目標. 理解することができる」という目標を重点においている。. ⅰ北海道の産業の特色に対して関心をもち,基礎的知識を身に付 けることができる。 〈関心・意欲・態度〉 ⅱ北海道の産業,気象,歴史に関して,分布や現状について記述 することができる。 〈思考・判断・表現〉 ⅲ地図帳,資料集,教科書の資料から北海道の産業の特色を読み 取ることができる。 〈技能〉 ⅳ北海道の産業,気候,歴史に対する課題や現状を理解すること ができる。 〈知識・理解〉. (筆者作成). 自ら学ぶ意欲に関しては「新聞活用学習における自ら学 ぶ意欲の基盤となる要素」(表2)を示した。表の左から意 欲の基盤となる「要素」,「具体的な要素内容」,「図2・本 時の授業記録との関連」を表している。「学習活動」 「感情 認知」の要素は桜井の論考から引用し,「学習活動」 「感情 認知」の具体的な要素内容は桜井の論考を参考に筆者が解 釈したものを具体化して示している。「新聞活用学習にお ける欲求」の要素と具体的な要素内容は筆者の考えを具体. - 70 -.

(6) 中学校社会科における新聞活用学習の開発 表2 新聞活用学習における自ら学ぶ意欲の基盤となる要素 要素. 学習活動. 感情認知. 新聞活用学習 における欲求. 具体的な要素内容. 図 2・本時の授業記録との関連. ・積極的に情報を集める,情報を理解する。 ・情報から物事を様々な視点から捉え,自分なりに考える。. 【学習活動】①. ・積極的に情報を集める,情報を理解し問題解決のために情報を活 用する。 ・物事を多面的・多角的に捉え,自分なりに考え判断する。 ・問題解決に必要な基礎・基本の知識を理解する。 ・自らむずかしい問題に挑戦し,解決しようとする。. 【新たな学習活動】④. ・学習活動を通して学ぶことに対する面白さや楽しさを感じる。. 【感情認知】②. ・学習活動を通して自ら計画をたてて学ぶことや解決することに対 する面白さや楽しさを感じる。 ・むずかしい問題に挑戦し,解決したことが自信となる。. 【新たな感情認知】⑤. ・様々な情報を収集・理解する新聞活用学習により,自分たちの社 会の今を知りたいと感じる。 ・様々な情報の理解や社会の今を知るために必要な基礎的知識を獲 得したいと感じる。. 【新聞活用学習による欲求】③. (要素及び具体的な要素内容は桜井の論考から引用または筆者が解釈したものを具体化している) 化している。図2との関連は,具体的な要素内容が図2の新. 2)内容. 聞活用学習における自ら学ぶ意欲の高まりのプロセスのそ. 教材化する新聞記事の収集方法としては三つ採用してい. れぞれに対応していることを示している。また本時の授業. る。ひとつは,日々の新聞講読において教材化できそうな. 記録との関連は,本時のパートごとの自ら学ぶ意欲の高ま. 記事の蓄積である。蓄積する記事は地理的分野に限らな. りとして表している。本単元全体においては表2と図2によ. い。歴史的分野や公民的分野,複数の分野に関連する記. り自ら学ぶ意欲を見取ることとしたい。. 事もある。蓄積する際は分野ごとにまとめておく必要があ る。もうひとつは,市立図書館や大学図書館の利用による. (3)本授業の開発方法. 収集である。そして,北海道新聞NIE推進センターへの記. 本授業の開発方法について以下に説明しておきたい。こ. 事の依頼である。. こで開発方法を示す理由は,中学校社会科における新聞活. 今回の実践では蓄積してきた記事と図書館の利用により. 用学習の具体と新聞活用学習固有の自ら学ぶ意欲との関係. 収集をおこなったが,学習内容によって収集方法を考える. をより明確にしておきたいからである。. 必要がある。. 1)目標. 3)方法. 本時の目標を二つ設定している。ひとつは,北海道の農. 本実践における新聞記事を教材化する目的は二つある。. 業の特色と発展の歴史を意欲的に考える関心・意欲・態度. ひとつは,自ら学ぶ意欲を高めるためである。同じ北海道. の観点である。もうひとつは,北海道の農業の特色と歴史. 米の記事でも品種に関する記事と広報活動に関する記事の. を理解する知識・理解の観点である。. 二種類を提示することで学習課題へより関心をもって取り. 最初に関心・意欲・態度の目標を検討することから授業. 組めるよう考えた。もうひとつは,知識と理解をさらに深. 作りを開始した。基礎的知識が不足している生徒の多くは. めるためである。北海道農業の歴史に関する新聞記事を提. 自ら学ぶ意欲が低い傾向にある。教材提示の工夫により意. 示することにより北海道農業の特色に対する基礎・基本の. 欲を高めることが基礎・基本の充実につながると考えた。. 充実と理解がさらに深まると考えた。. 次に知識・理解の目標を検討した。北海道の農業に関す. 新聞記事を教材化する基準は三つある。ひとつは,生徒. る新聞記事を教材化することで北海道の農業を身近に感じ. が記事の内容をおおむね知っているものである。メディア. ることができ,北海道独自の農業構造や発展の歴史を様々. などでよく取り上げられるものを選択する。生徒自身が内. な視点からわかりやすく理解できると考えた。自ら学ぶ意. 容を知っている記事を教材化することで,授業への参加意. 欲の高まりから北海道の農業の特色に関する基礎的知識の. 欲を高めるためである。もうひとつは,生徒が記事の内容. 定着を目指した。稲作,畑作,酪農を柱とする北海道の農. をよく知らないものである。メディアに取り上げられない. 業の基本構造と日本の食糧基地となるまでに発展した歴史. 地域に関するものなどを選択する。生徒自身が内容を知ら. の知識・理解を深めることを目標とした。. ない記事を教材化することで,知識の獲得意欲を高めるた. - 71 -.

(7) 林 祐 史 ・ 藤 本 将 人 めである。そして最後は,一見すると社会科の授業とは全. (5)本授業について. く関係のなさそうな内容のものである。社会科の教科書で. 以下に本時の授業の実際を示す。. は取り扱わない内容のものを選択する。生徒自身が社会科. 1)日時 平成24年12月10日(火)5校時. の授業との関わりを探る内容の記事を教材化することで,. 2)場所 釧路市立鳥取中学校 2年3組教室 男子19名 女 子20名 計39名. 学習内容への想像意欲を高めるためである。. 3)本時の目標 (4)本授業の構造図. ○北海道の農業の特色と発展の歴史に関心をもつことがで きる。〈関心・意欲・態度〉. 本授業の構造図(図3)を示す。図3の中央にある太線の 枠が本時の学習課題である。その下の二重線の枠が本時の. ○北海道の農業の特色と歴史を理解できる。〈知識・理解〉. 学習内容である。図中に4つある点線の枠は生徒の思考を. 4)生徒について. 表しており,1つ目の生徒の思考から本時の学習内容まで. 2年3組の生徒は,全体的に明るく素直で毎時間の授業に. を貫く太い矢印は生徒の思考の流れを示す。この生徒の思. 対して落ち着いて取り組むことができる。新聞記事を読む. 考の流れの中に埋め込んである文言は学習課題と知識獲得. ことへの抵抗感が少なくなり,朝の会における1分間スピー. へと導く教師の働きかけである。4つ目の生徒の思考から. チの題材を新聞記事から選ぶなど,社会科の授業以外でも. 本時の学習内容までを貫く細い矢印は,本時の学習内容の. 新聞への関心が高くなっている。. 定着に必要な新たな知識の獲得を表している。この新たな. しかし,授業態度はやや受け身的であり,自分自身に. 知識の獲得の流れに埋め込んである文言は学習内容の定着. とって興味が薄い学習内容に対しては積極性に欠ける。学. へと導く教師の働きかけである。. 習意欲の高まりが十分ではなく,基礎的知識が身に付いて いない場面が見られる。そこで,新聞記事を教材とするこ とで学習内容を身近なことと捉えさせ興味をもたせたい。 また,学習内容と関連する記事を選択することで社会の今 と学習内容を近づけ,自ら学ぶ意欲を高め基礎・基本の充 実を目指す。 5)本時の展開 本時の授業記録(表3)を示す。横軸は左からパート, 主な学習活動と予想される生徒の反応,教師の働きかけ, 新聞記事・資料,自ら学ぶ意欲の高まりとなっている。縦 軸は上段から導入,展開前半,展開後半,帰結となってい る。主な学習活動と予想される生徒の反応における1から9 までの数字は学習活動の順番である。かっこ内は生徒の予 想される反応を示しており,二重かっこ内は生徒が学習す る基礎的知識を示している。自ら学ぶ意欲の高まりにおけ る記述は図2及び表2との関連を表している。導入における 枠内の内容は本時の学習課題であり,帰結における枠内の 内容は本時の学習課題に対する答えを示しており,同時に 本時の学習で獲得する基礎的知識のまとめとなっている。 (6)本時で高まりをめざす自ら学ぶ意欲 1)導入 導入は生徒の自ら学ぶ意欲を高めるもっとも重要な場面 である。今回の実践における導入場面では自ら学ぶ意欲を 高める工夫を三つ取り入れた。第一は,学習の始めの問い. 図3 本授業の構造図(筆者作成). である。始めの問いを生徒が抱く北海道のイメージを考え る問いとした。北海道といって連想すること,北海道の特 徴など生徒自身が生活している身近な場である北海道に関 する問いが自ら学ぶ意欲の高まりにつながると考えた。第 二は,新聞記事①の提示である。概要を以下に示す。新聞 記事の内容は北海道米の品種と作付面積の比較である。特 に品種の内容に絞り提示した。新聞記事は生徒には公的な. - 72 -.

(8) 中学校社会科における新聞活用学習の開発 表3 本時の授業記録 パート. 主な学習活動と予想される生徒の反応. 導入. 1 北海道のイメージを考えることができる。 (大自然 寒い 雪 食べ物がおいしい…) 2 北海道米の種類や特徴を知ることができる。 (北海道米 主要6種類 特徴…) 3 北海道米の広報活動を知ることができる。. 教師の働きかけ ○北海道民として北海道のイメージ を考えさせる。 ○新聞記事から北海道米の品種や特 徴を読み取らせる。 ○新聞記事から北海道米の広報活動 の現状を読み取らせる。. 新聞記事・資料. 自ら学ぶ意欲の高まり. 北海道地図 新聞記事①. 【学習活動】①. 新聞記事② 【感情認知】②. 北海道の農業の特色を考えよう。. 展開前半 展開後半. 4 北海道の農業を調べることができる。 ①日本の耕地面積に占める北海道の割合 ②北海道の農家一戸当たりの耕地面積 ③耕地の利用状況 ④北海道の農業分布 ・稲作:石狩平野 上川盆地 ・畑作:十勝平野 富 良野盆地 石狩平野 北見盆地 ・牧草地:根釧台地 5 北海道の稲作について理解できる。 輸入自由化 減反政策 後継者不足 石狩平野 上川 盆地. ○表やグラフから北海道の農業の特 徴を調べさせる。 ○教科書資料を説明する。. 6 北海道の畑作について理解できる。 てんさい あずき じゃがいも 大規模経営 十勝平 野 7 北海道の酪農について理解できる。 パイロットファーム 根釧台地. ○地図帳で地形の確認をしながら教 科書記述を理解させる。. 8 北海道の農業の発展の歴史をふまえて北海道の農業の 特色を理解できる。. ○新聞記事から北海道農業の発展の 新聞記事③ 歴史を読み取らせる。 ○北海道の農業の特色を理解させる。. 地図帳. 【学習活動】①. ワークシート ○机間指導で個々人への対応を行う。 ○教科書の基本的知識の説明を行い 理解させる。. 【感情認知】②. 地図帳 十勝産銘菓. 【学習活動】①. 【新聞活用学習による欲求】③ 【新たな学習活動】④. 帰結. 【新たな感情認知】⑤. ・北海道の農業は大規模な経営により日本有数の生産量を誇る作物が多い。 ・北海道の農業は稲作,畑作,酪農全てにおいて日本の食糧生産の中心的役割を担っている。 ・北海道の農業は品種改良により厳しい自然環境を克服してきた歴史がある。 9 本時の授業を振り返る。. ○本時の自己評価を行わせる。. 振り返りシート. (筆者作成) 情報要素であり信頼性も高い。その新聞記事の内容と本時. 第三は,新聞記事②の提示である。概要を以下に示す。新. の授業と何か関連があるのだろうか,そもそも新聞記事の. 聞記事①の提示が北海道米の品種であったのに対し新聞記. 内容は何であろうかという興味がわくはずである。. 事②は北海道米の全国PRの内容とし,同じ北海道米でも. 新聞記事①の概要 「道産米 家庭用から業務用まで」 道産米には,ゆめぴりかのほかに,作付面積が最大のななつぼ し,業務用が中心のきらら 397 など多彩な品種がある。食味の違 いのほか,病気や寒さに対する強さ,生育期間なども異なり,農 家は各品種を組み合わせて生産している。(中略)2011 年のうる ち米全道作付面積は 105,571 ヘクタール。品種別内訳は,最多 のななつぼしが 40.7%,2 位のきらら 397 が 28.3%,3 位ゆめぴ りかが 9.6%,ふっくりんこ 5.6%,おぼろづき 4.8%と続く。12 年産の家庭用米店頭価格は高い方からおおむね,ゆめぴりか,お ぼろづき,ふっくりんこ,ななつぼし,ほしのゆめの順。各品種 の横顔は次の通りだ。ゆめぴりかは道立総合研究機構上川農試が 開発した超良食味米。ぴりかはアイヌ語で美しいの意。ななつぼ しは同中央農試が育成。つや,粘り,甘みのバランスが良く,冷 めても良食味が失われにくい。家庭用が中心。(以下省略) 2015 年 10 月 23 日北海道新聞より. 視点を変えた新聞記事を教材化した【学習活動】①。二種 類の新聞記事教材の提示により北海道の稲作の今を知るこ とになる。さらに,多種多様な米の品種や全国に認知され るための活動の今も知ることになる。北海道の稲作を多角 的に見つめることで,学ぶことへの面白さや楽しさを実感 できる【感情認知】②。 新聞記事②の概要 「ゆめぴりかもっと知って 都内で新米発表会」 ホクレンなどは 23 日,道産ブランド米「ゆめぴりか」の認知 度向上を図る新米発表会を東京都内で開いた。(中略)発表会に は取引先関係者約 50 人が出席し,白米やおにぎりが振る舞われ た。(中略)ホクレンによると,関東,関西,中京の 3 地区での ゆめぴりかの認知度は 11 年 5 月に 14%だったが,テレビ CM の 効果で 12 年 5 月は 51%に上昇している。(以下省略) 2015 年 10 月 24 日北海道新聞より. - 73 -.

(9) 林 祐 史 ・ 藤 本 将 人 新聞記事の提示後,本時の学習課題を提示した。ここで 二種類の新聞記事の内容と「北海道の農業の特色を考え. 新聞記事③の概要 「奇跡の北海道 フロンティア精神でコメ作り」. る」という学習課題がつながることになる。生徒は,北海. 今では稲作が道内の多くの地域で見られますが,明治時代にコ. 道米に関する情報から身近な地域の農業や稲作以外の北海. メを作るのはとても大変だったと聞きました。(中略)北海道を. 道の農業に関心が移ることとなる。その後の展開場面にお ける情報収集,情報理解の学習と帰結場面の知識定着の学 習まで自ら学ぶ意欲の高まりが期待できる。. 耕すのは北陸や東北などからやって来た日本人。ご飯を食べたく て仕方がありません。縄や俵,馬の餌にも稲わらが必要です。切 り開いた土地に何とか水を引き,コメを作り始めるのです。(中 略)稲作は寒い北部ほど難しいのですが,人々の工夫と努力で北 限をだんだん伸ばしていきます。(中略)こうして北海道農業は,. 2)展開. 畑作中心の米国型農業でも,稲作中心の本州型農業でもない「北. 本時の学習内容である北海道の農業の特色は,多種にわ. 海道型」と言うべき独自のスタイルを築き上げていくのです。 2015 年 10 月 25 日北海道新聞より. たる農業を大規模に展開していることである。導入場面に おける稲作ばかりが北海道の農業ではない。展開前半で は,導入からの流れで地図資料から稲作が盛んな地域を探 す。さらに稲作が盛んな地理的条件を資料や教科書から調. 「奇跡の北海道 畑とコメに酪農加わり 3 本柱に」 本格的に酪農が盛んになったのは 1960 年代(昭和 30 年代後半) からですね。(中略)70 年(昭和 45 年)には牧草地が農地の 4. べ,考えていく。調べ,考えていくための基盤となる教科. 割まで広がりました。酪農が盛んになったからです。(中略)畑. 書の資料やグラフの説明も行う。情報収集や情報理解を通. 作中心の農業を毎年続けると,畑の栄養分が減ります。また,切. して自ら学ぶ意欲を高めるために個で考える場面を設定し 資料内容を把握させる【学習活動】①。北海道の農業の詳 細を理解することで情報理解の学びに対する面白さや楽し さを実感できる【感情認知】②。. り開ける原野はだいたい開いてしまったので畑は増やせません。 そこで考えたのが,家畜を飼うことでした。(中略)こうして, 「畑 作・稲作・酪農」という,北海道農業の 3 本柱が形づくられたの です。(以下省略) 2015 年 10 月 26 日北海道新聞より. 展開後半では稲作以外の畑作や酪農について地理的条件 や収穫される農作物など基礎的知識を理解していく。北海. 5 生徒に育成された自ら学ぶ意欲の高まりの分析. 道の畑作の中心地である十勝平野の大規模経営の実際や酪 農が盛んな道東地区の現状を知ることになる【学習活動】. 単元始めと最後に,生徒に自ら学ぶ意欲の高まりに関す. ①。情報収集が進むとなぜ自分たちが生活する釧路,根室. る質問をした。具体的には,以下の三つの内容である。. などの道東地区で酪農が盛んなのかという疑問がわいてく るであろう。さらなる情報収集,情報理解により疑問を解. 1 これまでの学習で「もっと情報が必要だ」と感じたことはあ りましたか。具体的に書きましょう。(どのような時に,どのよ. 決していく学びの面白さや楽しさを感じることになる。さ らに道東地区における酪農の歴史や現在の酪農の状況を知 りたいという気持ちも高まるであろう。この気持ちは他地. うな情報が必要だったのですか。) ※【学習活動】①,【新たな学習活動】④に関する質問 2 これまでの学習で「面白い・楽しい」や「自信になった」と 感じたことはありましたか。具体的に書きましょう。(どのよう. 区における畑作や稲作についても同じである。北海道の農. な時に,どのように感じたのですか。). 業が発展してきた歴史的知識は新聞記事教材がきっかけと なり生徒に与えられることになる【新聞活用学習による欲. ※【感情認知】②,【新たな感情認知】⑤に関する質問 3 これまでの学習で「自分の生活と比べて考える」と感じたこ. 求】③。. とはありましたか。具体的に書きましょう。(どのような時に, どのような事を感じたのですか。) ※【新聞活用学習による欲求】③に関する質問. 3)帰結 本時の学習内容は新聞記事教材で始まり,新聞記事教材 で終えた。導入と帰結に新聞記事教材を使用することに. 上記の質問に対する回答をワークシートに記述させた。. よって自ら学ぶ意欲の高まりを持続したいと考えたからで. その記述をもとに自ら学ぶ意欲の高まりを分析したのが表. ある。本時の帰結で提示した新聞記事③の内容は北海道の. 4である。表4は男子19名分を表している。表の左から生徒. 農業の発展の歴史である。概要を以下に示す。北海道の農. の番号,単元始めの質問(上段)と単元終わりの質問(下. 業の特色についての理解と関心をさらに深めるためには,. 段),具体的な要素内容となっている。. 北海道の農業が発展してきた歴史を取り上げる必要がある. 前述の表2に照らし合わせて分析を行った。ワークシー. と考えた。新たな情報を収集,理解し活用することにより. トの記述に表2の具体的な要素内容があれば「○」印を,. 異なる視点から北海道の農業をとらえることとなる【新た. 文言は異なるが具体的な要素内容と判定できる内容があれ. な学習活動】④。次時の学習内容や学習課題を把握させ見. ば「△」印を,判定が曖昧な記述のものは「*」をつけて. 通しをもった帰結とした。本時において課題を解決した方. 示している。なお,質問の意図からはずれているものや無. 法で次時も取り組むことを理解することで達成感も持続さ. 記入については「0」で示している。分析は始めと終わり. せた【新たな感情認知】⑤。. それぞれの各要素内容の「○」印と「△」印の人数を集計. - 74 -.

(10) 中学校社会科における新聞活用学習の開発 表4 新聞活用学習における自ら学ぶ意欲の変容【男子】. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19. 始 終 始 終 始 終 始 終 始 終 始 終 始 終 始 終 始 終 始 終 始 終 始 終 始 終 始 終 始 終 始 終 始 終 始 終 始 終. 【学習活動】① ○* ○ △ ○* ○ ○ ○. ○. 自ら学ぶ意欲の基盤となる具体的な要素内容 【感情認知】② 【新聞活用学習による欲求】③ 【新たな学習活動】④ 【新たな感情認知】⑤ ○ △ △ ○ △ △ △ ○ △ △ △* ○ △ △ ○ △* ○ ○ △. △ ○ ○ △ ○. ○ △. ○ ○ △ ○ 0 △ △ ○. ○ △ ○ ○. △ △ △ ○* 0. 0 ○ ○ △. △ ○ 0. ○ 0. △. ○ ○ ○ △ 0 ○. △ △*. ○ △ △ ○ 0 ○. ○ △ ○ △ △ △ ○. ○ ○ △. 0. 0. 0. △. ○. ○. (筆者作成) 表5 新聞活用学習における自ら学ぶ意欲の変容の集計【全体】. 始 終 始 女子 終. 男子. 【学習活動】① 15 人 8人 12 人 5人. 自ら学ぶ意欲の基盤となる具体的な要素内容 【感情認知】② 【新聞活用学習による欲求】③ 【新たな学習活動】④ 【新たな感情認知】⑤ 13 人 4人 5人 0人 7人 8人 12 人 9人 14 人 2人 6人 1人 8人 7人 10 人 8人. (筆者作成) し,自ら学ぶ意欲の高まりを考察する。なお女子20名も同. 男女全体における学習の始めの結果は,【学習活動】①. 様の分析を行っている。男女全体の変容の集計を表5の新. 27人,【感情認知】②27人,【新聞活用学習による欲求】③. 聞活用学習における自ら学ぶ意欲の変容の集計【全体】と. 6人,【新たな学習活動】④11人,【新たな感情認知】⑤1人. して示している。. であった。男女全体の学習後の結果は,【学習活動】①13. - 75 -.

(11) 林 祐 史 ・ 藤 本 将 人 人,【感情認知】②15人, 【新聞活用学習による欲求】③15. 化させる必要があろう。また単元全体における授業開発の. 人,【新たな学習活動】④22人, 【新たな感情認知】⑤17人. 具体や他分野での自ら学ぶ意欲が高まる新聞活用学習の開. であった。男女全体の学習後の自ら学ぶ意欲の変容は, 【学. 発も可能となろう。. 習活動】①27人→13人, 【感情認知】②27人→15人,【新聞 活用学習による欲求】③6人→15人, 【新たな学習活動】④. 【註】. 11人→22人, 【新たな感情認知】⑤1人→17人であった。. 1)本稿では,学習意欲の中に自ら学ぶ意欲を位置付け定義. 以上の結果から新聞活用学習における本実践から,情報. した。したがって先行研究における学習意欲や意欲は本. 収集・情報理解や様々な見方考え方から学ぶ面白さ・楽し. 稿の自ら学ぶ意欲とほぼ同義とし考察を進めたい。参考. さを感じ,新聞活用学習固有の欲求が生まれたことがわか. とした先行研究は以下の通りである。桜井茂男「学習意. る。さらにその欲求が新たな学習活動への意欲へと向上. 欲とその評価・活用」辰野千嘉,石田恒好,北尾倫彦監. し,面白さ・楽しさに加えて学習課題の解決から自信も生. 修『教育評価事典』図書文化,2006年,pp.254-255, 桜井. まれている。これらの面白さ・楽しさや自信はさらなる自. 茂男『学習意欲の心理学』誠信書房,2000年,pp.18-22. 及び,. ら学ぶ意欲の向上につながる。中学校社会科において新聞. 桜井茂男『たのしく学べる最新教育心理学』図書文化,. 活用学習を展開すると生徒の自ら学ぶ意欲が高まることが. 2011年, pp.48-55. 2)板 垣 雅 夫「NIEの 教 育 的 効 果 」 日 本NIE学 会 編『 情 報. 明らかになった。 しかし,本実践においては単元の始めと最後に記述回答. 読解力を育てるNIEハンドブック』明治図書,2008年,. による調査のみで判定を行ったため,生徒の記述の意図や. pp.23-25.. 考え方が読み取りにくいものが少なくなかった。また,自 ら学ぶ意欲の高まりを判断するための質問の数が三つと少. 3)影山清四郎「NIEの今日的意義」日本社会科教育学会『社 会科教育研究』No.101,2007年,p.39.. ないことや,質問内容自体もやや抽象的で記述しにくい場. 4)中義則「応用力のある知の獲得を目指した社会科授業-. 面もみられた。判定方法も筆者の主観が少なからず入る可. NIEを土台として-」日本NIE学会『日本NIE学会誌』第. 能性は否定できない。今後は,記入後に聞き取りを行うな. 5号,2010年,p.57.. ど調査方法や質問数,質問内容の吟味など判定方法の工. 5)岡本光子「実践的指導力向上をめざした教員研修-NIE 実践講座を通して-」日本NIE学会『日本NIE学会誌』. 夫・改善が必要であろう。. 第5号,2010年,p.73. 6 おわりに. 6)学力の三要素とは中学校学習指導要領総則編による基 礎的・基本的な知識・技能の習得,思考力・判断力・表. 本稿の目的は,新聞活用学習と自ら学ぶ意欲の高まりと. 現力の育成,学習意欲の向上のことである。文部科学省. の関係を中学校社会科地理的分野の単元「北海道地方-自. 『中学校学習指導要領解説総則編』ぎょうせい,2008年,. 然環境を中心とした考察-」の開発を通して明らかにする. pp.19-20.. ことであった。最後に, 「1 はじめに」で掲げた二つの問. 7)同上,pp.1-3.. い,すなわち,中学校社会科において,新聞活用学習を導. 8)桜井茂男「学習意欲とその評価・活用」辰野千嘉,石. 入するとどのような力が育成されるのだろうか,またその. 田恒好,北尾倫彦監修『教育評価事典』図書文化,2006. 力が最も効果的に身に付く新聞活用学習内容とはどのよう. 年,p.254.及び,桜井茂男『たのしく学べる最新教育心理. に具体化されるのだろうか,について答えを提示しておき. 学』図書文化,2011年, pp.46-48.参照. 9)桜井茂男『自ら学ぶ意欲を育む先生』図書文化,1998. たい。 一点目について,中学校社会科に新聞活用学習を導入す. 年,pp.53-62.及び,桜井茂男『学習意欲の心理学』誠信書. ると,学習者の自ら学ぶ意欲が高まることが明らかとなっ. 房,2000年,pp.18-30.及び,桜井茂男『たのしく学べる最新. た。新聞活用学習固有の欲求がより効果的に自ら学ぶ意欲. 教育心理学』図書文化,2011年, pp.48-50.参照.. を育成する過程も示した。 二点目について,自ら学ぶ意欲が高まる新聞活用学習の. 【参考文献】. 具体とは,自ら学ぶ意欲の育成過程を基盤とした単元構成. ・天野正輝編『重要用語300の基礎知識①教育課程』明治 図書,1999年.. と一単位授業において導入場面と帰結場面に内容の異なる 複数の新聞記事教材を活用することを示した。また客観的. ・市川伸一『学ぶ意欲とスキルを育てる今求められている 学力向上策』小学館,2005年.. な自ら学ぶ意欲の変容を新聞活用学習における自ら学ぶ意. ・梅津正美「規範反省能力の育成をめざす社会科歴史授業. 欲の基盤となる要素に基づく分析で示した。 最後に今後の課題を述べる。新聞活用学習における自ら. 開発-小単元「形成される『日本国民』:近代都市の規. 学ぶ意欲の高まりの育成過程と基盤となる要素モデルを中. 範と大衆社会」の場合-」全国社会科教育学会『社会科. 学校社会科固有のものとして成立させるためにさらに精緻. 研究』第73号,2010年,pp.1-10.. - 76 -.

(12) 中学校社会科における新聞活用学習の開発 生の事例からの探索的研究-」全国社会科教育学会『社. ・唐木清志『子どもの社会参加と社会科教育-日本型サー. 会科研究』第79号,2013年,pp.25-36.. ビス・ラーニングの構想-』東洋館出版社,2008年. ・小島宏『ハンドブック学ぶ意欲を高める100の方法』教. ・峯明秀「知識の量的拡大・効率化を図るPDCA-客観的 実在としての社会の事実的知識を獲得する社会科-」. 育出版,2008年. ・桜井茂男『自ら学ぶ意欲を育む先生』図書文化,1998年.. 全国社会科教育学会『社会科研究』第71号,2009年,. ・桜井茂男『学習意欲の心理学』誠信書房,2000年.. pp.51-60.. ・桜井茂男『たのしく学べる最新教育心理学』図書文化,. ・峯明秀「社会科の学力評価論の批判的検討-学習の事実 に基づく授業改善研究の必要性-」全国社会科教育学会. 2011年.. 『社会科研究』第80号,2014年,pp.33-44.. ・社会認識教育学会編『社会科教育学ハンドブック-新し. ・文部科学省『中学校学習指導要領解説社会編』日本文教. い視座への基礎知識-』明治図書,1997年.. 出版,2008年.. ・社会認識教育学会編『改訂新版中学校社会科教育』学術. ・文部科学省,国立教育政策研究所『評価規準の作成,評. 図書,2005年.. 価方法等の工夫改善のための参考資料【中学校社会】 』. ・社会認識教育学会編『中学校社会科教育』学術図書,2010. 教育出版,2011年.. 年. ・社会認識教育学会編『新社会科教育学ハンドブック』明. ・森分孝治,片上宗二編集『社会科重要用語300の基礎知 識』明治図書,2000年.. 治図書,2012年. ・辰野千嘉,石田恒好,北尾倫彦監修『教育評価事典』図. ・森敏昭,秋田喜代美編集『教育評価重要用語300の基礎 知識』明治図書,2000年.. 書文化,2006年. ・土肥大次郎「社会的意思決定の批判的研究としての社会. ・吉永潤「社会科における外交意思決定能力育成の意義と. 科授業-公民科現代社会小単元「市町村合併と地方自. その授業構成」全国社会科教育学会『社会科研究』第75. 治」の場合-」全国社会科教育学会『社会科研究』第71. 号,2011年,pp.51-60.. 号,2009年,pp.41-50. ・中本和彦「自己の社会認識を相対化させる地理授業-社 会科地理・単元「イスラーム社会」の教育内容開発-」 全国社会科教育学会『社会科研究』第71号,2009年, pp.21-30. ・日本社会科教育学会編『新版社会科教育事典』ぎょうせ い,2012年. ・深澤広明,恒吉宏典編集『授業研究重要用語300の基礎 知識』明治図書,1999年. ・松浦雄典「社会科における批判的参加学習としての授業 構成-小学校第4学年「安全なくらしを守る人たち」を 例に-全国社会科教育学会『社会科研究』第79号,2013 年,pp.37-48. ・松岡尚敏「平成20年度学習指導要領と社会科授業改善の 視点」 『宮城教育大学紀要』第43号,2008年,pp.27-42. ・松岡尚敏「平成20年度学習指導要領と社会科授業改善の 視点(2)-社会科授業における「わかる」 「考える」再考 -」 『宮城教育大学紀要』第44号,2009年,pp.23-37. ・松岡靖「ネットメディアによる販売と消費の変化を読み 解く「メディア解釈学習」-単元「成長するネットショッ ピング」の場合-」全国社会科教育学会『社会科研究』 第74号,2011年,pp.11-20. ・溝口和宏「開かれた価値形成をめざす歴史教育の論理と 方法-価値的知識の成長を図る四象限モデルの検討を通 して-」全国社会科教育学会『社会科研究』第77号, 2012年,pp.1-12. ・南浦涼介,柴田康弘「子どもたちの社会科学習観形成の ために教師は何ができるか-ある中学校教師とその卒業. - 77 -.

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参照

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