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乳幼児期における社会的な注視に対する反応の発達 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)乳幼児期における社会的な注視に対する反応の発達 キーワード:乳幼児;発達;視線;Gaze;Glance. 行動システム専攻. 心理学コース 曹. 叢蕾. 問題と目的. された。乳幼児には保護者のそばで実験者の方を向くよ. 注視は多くの分野で,情報伝達の明らかな信号である. うに座らせて一人で遊んでもらった。実験開始時の乳幼. とされていて,特に,相手の意図に対する理解には重要. 児と実験者の距離は約 2 メートルであった。保護者には. な情報である。多くの先行研究で,生後一年で自分を注. 実験者と視線を合わせないように方向を指定し座り,本. 視する視線に対して敏感であることが示されていて,こ. を読んでいてもらった。保護者には調査中は乳幼児に話. の感受性は,18 ヶ月で発達する一連の社会的コミュニケ. しかけたり,働きかけるのは控えるように事前に教示を. ーションスキルの兆しである例えば,言語の学習,顔表. 行った。乳幼児がブースに入った後,実験者は乳幼児に. 情の理解,意図の理解)(Elsabbagh , Mercure , HUdry , 2012)。 微笑みの表情で注視し,乳児が実験者を注視した時点か 相手の注視を感受した上での反応は,発達とともにど. ら 5 分間記録を行った。. う変化するか。乳児と他人の双方的社会的コミュニケー. 調査中,実験者は 30 秒ごとに,乳幼児を注視する,. ションの始まりは,生後 2 ヶ月付近で,対面でのインタ. または頭を下げて目を逸らし続ける,のどちらかの行動. ラクションの時で社会的微笑を示すことであるといわれ. をとった。5 分間の調査時間は 10 セッションから構成. ている(Rochat,2001) 。生後 10 ヶ月では,二人の成人. され,乳幼児を注視する 5 セッションと目を逸らす 5. の相互注視と逸視を区別でき,一人が会話中の社会的パ. セッションを実施した。実験者の行動パターンを擬似ラ. ートナーを見ることを期待していた(Beier , Spelke. ンダムに設定して,乳幼児 1 人につきは1パターン実施. 2012)。この能力は社会的,目標指向的両方の行動と同じ. した。実験者が乳幼児を注視する時の表情は微笑みで,. く,彼らの視線に対する理解に関連する可能性があると. 目を逸らす時の表情はニュートラルであった。. 示された。では,それ以降の反応はどう発達するかは,. 評定. また不明である。. 記録したビデオ映像もとに,ELAN v 4.5.0 を用いて,. 乳幼児期の生活では,他人からの注視は主に笑顔とと. 0.1 秒ごとに乳幼児および実験者の行動を以下の観点か. もに行われるので,本研究では,実際に合った親和的な. ら評定した:. 表情表出と伴う社会的な注視に対してどう反応するか,1. I.. 歳から 1 歳半へ発達の変化があるかを,実験的に検討し. 者を見る総回数(乳幼児が実験者の頭のあたりを見る回. た。. 数) ,実験者を見る 1 回あたりの持続時間(実験者の頭. 実験者に対する視線(Ⅲを削除した分):実験. のあたりを見ている時間) ,実験者を Gaze/Glance の各 方法 実験参加者 1 歳児 16 名(男女児各 8 名,平均日齢 376 日,レンジ. 回数(注視時間の分布によって,1.3 秒で分ける(理由 は後述する)) II.. 実験者から目を逸らした直後(2 秒以内) ,乳幼. 335~448 日),1 歳半児 14 名(男児 5 名,女児 9 名;平. 児の行動:保護者に向けられた行動の回数(保護者を見. 均日齢 570 日,レンジ 512~608 日). る,触る,おもちゃを保護者にあげるなど)と隠れる行. 手順. 動の回数(保護者の後ろに移動する,保護者の体を利用. 参加児にとって見知らぬ女性の実験者(21 歳—27 歳) して自分の顔を隠すなど。) が,事前に調査ブースに入り,ipad を見ている状況にし. III.. 実験者の行動が変わった場合の乳幼児の反応:. た。もう一人の実験者によるインフォームド・コンセン. 乳幼児が実験者を注視している間に実験者の行動が変. トが終了した後に,乳幼児と保護者は調査ブースに誘導. わった(注視している状態から目を逸らすか,あるいは. 1.

(2) 目を逸らした状態から乳児を注視し始める)における, 見られなかった。実験者の注視行動の主効果は有意傾向 出現する回数. 乳幼児の行動の変化。. 18 12 6 0. 1歳−正視条件. 0.10.50.91.31.72.12.52.93.33.74.14.54.95.3 持続時間の秒数. 出現する回 数. 18 12 6 0. 1歳−逸視条件. 0.10.50.91.31.72.12.52.93.33.74.14.54.95.3 持続時間の秒数. 出現する回 数. 18 12 6 0. 結果. 0.10.50.91.31.72.12.52.93.33.74.14.54.95.3 持続時間の秒数. 18 12 6 0. 出現する回 数. 図 1 調査ブースのセットアップ. 1歳半−正視条件. 1歳半−逸視条件. 0.10.50.91.31.72.12.52.93.33.74.14.54.95.3 持続時間の秒数. 年齢(1 歳群,1 歳半群),実験者の注視行動(「正視条 件」, 「逸視条件」 ),性別(男,女) ,セッションの前後半. グラフ 1 各年齢群における持続時間の長さ別の頻度. (前半の 2.5 分,後半の 2.5 分)を独立変数とし,乳幼児. だった(F(1,26) = 3.81, p =.06, η2=0.13)。セッション前. が実験者を見る総回数,対象児が実験者を注視する持続. 後半の主効果が有意であり (F(1,26) =6.44, p =.02,. 時間,持続時間により分けた 1.3 秒以内は Glance の回数. η2=0.20),前半では後半より実験者を Glance の回数が. と Gaze の回数,保護者に向けられた行動の回数,および. 有意に多かった。さらに,実験者の注視行動とセッシ. 隠れる回数を各従属変数とする,4 要因混合計画分散分. ョン前後半の交互作用の傾向がみられた(F(1,26) =. 析を行った。. 3.37, p =.07, η2=0.11)。前半で「正視条件」では「逸視. I. 実験者に対する視線の分析. 条件」でより多く実験者を Glance したが,後半で実. グラフ 1 のように, 「1歳—正視条件」 , 「1歳半—正視. 験者の視線とは関係なく,少なかった。(グラフ 2)。. 条件」,「1歳半—逸視条件」では,出現した見る行動の. 2.5. 持続時間のヒストグラムで,1.3 秒の時で谷があって,両 回数. から分けて,Glance の回数は総回数の 40.76%,Gaze の. 正視 条件. 2. 辺の秒数の頻度が高い。それに,1.3 秒の長さの持続時間 回数は総回数の 59.24%を占めるので,今回は 2 種の長さ. 1.5. +. 逸視 条件. 1 0.5. の行動を別々に分析した。. 0. 年齢と性別と実験者の注視行動による被験者の注視行. 前半. 動の差は,Glance の回数では総回数,持続時間と近似し た結果は見られなかったが,Gaze の回数では総回数,持. グラフ 2. 後半 Glance の回数. 続時間と近似した結果が見られた。Glance の回数と Gaze. 2.. の回数の割合は大きな差は見られなかった。このことか. り(F(1,26) = 5.56, p = .03, η2=.18) ,さらに年齢と性別. ら,総回数と持続時間の結果は Gaze の回数に影響されて. の交互作用があり(F(1,26) = 9.96, p <.01, η2=.28),1歳. いることが分かった。そこで,主に Glance の回数と Gaze. 男児は 1 歳女児より実験者を Gaze の回数が有意に多. の回数に注目した。. かったが,1歳半の男児の Gaze が減り,女児より実. 1.. Glance の回数の分析で,年齢や性別の主効果が. Gaze の回数の分析で,年齢の主効果が有意であ. 験者を Gaze の回数が有意に少なかった(F(1,52) = 6.00,. 2.

(3) p =0.02)。年齢と性別と実験者の注視行動の交互作用 2. があった(F(1,52) = 5.56, p =0.03, η =.10)(グラフ 3) 。 1 歳児が「正視条件」で,男児が女児より有意に多く 2. II.. 実験者から目を逸らした直後,乳幼児の行動. 1.. 実験者を見た後に起こった保護者に向けられた行. 動の回数(セッション中の保護者に対する行動の 44.2%). 実験者を長く見たが(F(1,52) = 6.44, p =.01, η =.11),1 歳半. 分析の結果,実験者の注視行動の主効果が見られて. 児で,男児が女児より有意に少なかった;1 歳の男児も 1. (F(1,26) = 6.82, p=.015, η2=.21),また,年齢と実験者の注. 歳半の男児も,実験者行動によって見る回数が異なり. 視行動の交互作用に有意傾向があり(F(1,26) = 3.84,. (F(1,26) =18.63, p < .001, η2=.42) (F(1,26) = 5.30, p =.02,. p=0.06, η2=.13),1歳の乳幼児は実験者の注視行動と関. η2=.17), 「正視条件」で「逸視条件」より実験者への長注. 係なく,実験者を見た後,保護者に対する行動が多かっ. 視行動が有意に多かった;一方で,女児には 1 歳で有意. たが,1歳半の乳幼児は見られることに気づいただけで,. 差がなかったが,1 歳半で「正視条件」では「逸視条件」. その後保護者に向けられた行動が多い傾向があった。. より実験者への長注視行動が有意に多かった(F(1,26) =. 2. 隠れる回数. 13.75, p < .01, η2=.35)。 4 3.5. ****. ***. 隠れる行動(セッション中に見られた隠れる行動全体 の 82.8%)に対する分析の結果,年齢の主効果は見られ. ****. *. 3. なかった(F(1,26) = 0.21, p=.64, η2=1)。実験者の注視行動 正視 条件. *. 2.5 回数. ****. *. の主効果の傾向(F(1,26) = 3.88, p=.06, η2=.13),セッショ ン前後半の主効果の傾向(F(1,26) = 3.93, p=0.058,η2=.13), 及び実験者の注視行動とセッション前後半の交互作用. 逸視 条件. 2 1.5. については,有意傾向が見られた(F(1,26) = 3.23, p=.08, η2=.11)。単純主効果の検定の結果,前半で「正視条件」. 1. では「逸視条件」でより目を逸らした後隠れる回数が多 い傾向があった。. 0.5. III. 注視中実験者の行動が変化した場合対象児の反応. 0 1歳-男. 1歳-女 1歳半−男 1歳半−女 グラフ 3. 実験者を注視していた時,実験者の行動が変わった場 合の,対象児の行動の変化を観察した。このような行動. Gaze の回数. 実験者の注視行動の主効果の傾向が見られて. は,1 歳児は 11 回,1 歳半児は 9 回あった。生起頻度は. 2. 多くなく検定にかけることができないために,ビデオを. (F(1,26) = 32.11, p < .01, η =.55), 「正視条件」では「逸. 視条件」でより実験者を Gaze の回数が有意に多かった。 もとに観察された対象児の行動を記述する。 さらに実験者の注視行動とセッション前後半の交互作. 1 歳児が 6 回,1 歳半児が 4 回視線を実験者から逸ら. 2. 用もみられた (F(1,26) = 8.19, p < .01, η =.24)(グラフ 9)。 した 1.5 秒から 7 秒後, もう一度実験者を見た。ただし, セッション前半において,前半で「正視条件」では「逸. 1 歳児のこのような実験者行動を確認する行動はセッ. 視条件」でより多く実験者を Glance したが,後半で実. ション前後半とは関係なかったが,1 歳半児のこのよう. 験者の視線とは関係なく,少なかった。(グラフ 4). な行動はセッション前半だけ行った。. 4. 考察. 3.5 正視条 件. 3 回数. 2.5 2. *. 逸視条 件. 1.5. 本研究で,見知らぬ人とノンバーバルなコミュニケー ション場面をセットアップして,乳幼児がこの場面に対 する反応を記録された。乳幼児の実験者を見る総回数の 分析で,実験者の注視行動による差が見られて,乳幼児. 1 0.5. は自分に向けられた社会的な視線に敏感であることが. 0 前半. 後半. 明らかになった。 実験者に対する持続時間により分けた Glance と Gaze. グラフ 4. Gaze の回数. を含んだ意図は違いと考えられた。Glance 行動は,相. 3.

(4) 手の行動をチェックするか,見られるのでテレになるよ. 後半でより実験者を良く見るのは,実験者に対する視線. うなニュートラルやネガティブな行動である。それ一方, の全ての分析でも,その後隠れる回数に対する分析でも Gaze は,動物の攻撃意図をついている正視とは違って, 見られた。年齢に関係なく,実験者の行動に最初の 2.5 乳幼児の表情は「怒り」の表情は付いていなくて,お互. 分間で十分に観察して学習したうえで,後半の 2.5 分で. いにコミュニケーション,または相手の行動および意図. はだんだん見なくなった可能性がある。. を観察するようなポジティブな行動である。. 注視中実験者の行動が変化した場合対象児の反応対. Glance の回数と Gaze の回数から得られた結果が違っ. する観察によって,実験者が注視するから目を逸らした. た。乳幼児が見知らぬ人に Glance 行動は年齢や性別に. 後,乳幼児が示した社会的随伴性は,もとは Still face. 影響されなかったが, Gaze の行動は年齢も性別も実験. パラダイムやダブルビデオパラダイムで調べられてい. 者行動によって違った。1 歳の男児も女児も長く実験者. た結果が近い,2~3 か月の乳児は,社会的随伴性に感. の行動をよく観察して,さらに男児は女児より回数が多. 受性があるという(Ellsworth, Muir, & Hains, 1993)。さ. かった。Greenberg, Hillman & Grice(1973)により,12. らに年齢とセッション前後半の間の関連は,ある程度 1. ヶ月の女児は見しらぬ人に対する反応は性別とは関係. 歳半児のより速い実験者の行動に対する学習能力を支. ないが,男児は男性の見知らぬ人より女性の方にもっと. 持する。しかし,データが少なくて有力な証拠を提供す. ポジティブに反応する。これは本研究における 1 歳の男. ることができない。今後の研究では,実験者の行動変換. 児の行動に一致する。1 歳半で女児の注視の量は変わら. を引き起こす乳幼児の反応をさらに実験をやって検討. なかったが,1 歳半の男児は Gaze の行動が少なくなっ. する。. た。さらに見ると,「正視条件」では,1 歳の男児,1. 要約すると,本研究の結果は,乳幼児期における積極. 歳半の男児,及び 1 歳半の女児が Gaze 行動が多かった. 的な社会的な意図に対する理解の発達に関して,将来の. が,1歳の女児では「正視」や「逸視」によって Gaze. 研究に根拠を提供する。生後 1 年目で社会的な視線をち. の回数が影響を受けなかった。1 歳半の女児は 1 歳の男. ゃんと知覚でき理解できるうえで,成長とともに見知ら. 児の行動と近似して, 「正視条件」でよく Gaze するが,. ぬ他者に情動が増強しつつある。. 1 歳半の男児だけ視線を回避する行動が見られた。 女児では「正視」と「逸視」への反応の発達が男児と. 主要引用文献. 比べると遅い可能性がある。もっと早い段階と2歳ぐら いのデータを比較しないと明確できない。1 歳半児が出 た性差のもう一つの原因は,男女の活動性の違いによる 可能性がある。活動力は養育環境,文化差,などに多く 影響を受けられる。それ一方,実験者は女性だけという 実験手続き上の制約が考えられる。保護者に向けられた 行動の分析にも 1 歳半児が実験者の注視行動によって 差がある傾向があったので,1 歳半児の相手の注視に引. 1. Beier J.S. & Spelke E.S. (2012). Infants’ Developing Understanding of Social Gaze. Child Development, 83, 2, Pages 486–496 2. Ellsworth, C. P., Muir, D. W., & Hains, S. M.J. (1993).Social competence and person-object differentiation : An analysis of the still-face efect. Developmental Psychology, 29, 63-73.. き起こった情動は 1 歳児より強いであると考えられる。 3. Elsabbagh M., Mercure E., HUdry K., 2012. Infant 女性の見知らぬ人だけではなく,男性の見知らぬ人から. Neural Sensitivity to Dynamic Eye Gaze Is. 出した視線に対する乳幼児の反応のデータを収束して. Associated with Later Emerging Autism. Current. 分析しようとする,年齢層も増えてもっと検討するのは,. Biology 22, 338–342, February 21.. 今後の課題にする。 実験者への視線(総回数・Glance の回数)及びその 後隠れる回数に関する分析では,セッションの前半にそ のような行動が多くみられる傾向があった。この原因の. 4. Greenberg, D.J. , Hillman D. and Grice D. Infant and stranger variables related to stranger anxiety in the first year of life. Developmental Psychology, Vol 9 (2), Sep 1973, 207-212.. 一つは,5 分間の調査が乳幼児にとってちょっと長くて, 5. Rochat, P. (2001). The infanr’s world. Cambridge, 後半では飽きてしまった可能性がある。ただし前半では. MA: Harvard University Press. 4.

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