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鍼灸治療が脱毛症、薄毛に及ぼす影響について

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平成 21 年度

(社)全日本鍼灸学会

第 29 回近畿支部学術集会

講演要旨集

平成 21 年 11 月 23 日(月,祝)

明治東洋医学院専門学校

主催 (社)全日本鍼灸学会近畿支部

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平成 21 年度(社)全日本鍼灸学会第 29 回近畿支部学術集会 開催概要 会 期 平成 21 年 11 月 23 日(月,祝) 会 場 明治東洋医学院専門学校 講堂 〒564-0034 大阪府吹田市西御旅町 7-53 TEL(06)6381-3811/FAX(06)6381-3800 主 催 (社)全日本鍼灸学会近畿支部 参加受付 時 間/9:00~15:00 場 所/2F 講堂 参加費/会 員 2,000 円、学生会員 1,000 円 一 般 3,000 円 一般学生 2,000 円 ※一般学生の方は学生証の提示が必要です。 ※受付後、名札を着用の上、会場に入場下さい。 演者・座長受付 時 間/9:00~14:00 場 所/2F 講堂 ※一般演題Ⅰ-Ⅲで発表もしくは担当される演題開始 30 分前までに演者・座 長受付にお越し下さい。 認 定 学会参加・・・5 点 昼 食 会場および最寄り駅周辺に飲食店はほとんどありません。 昼食を持参の上、指定の場所での飲食をお願いいたします。 関連会議 近畿支部学術委員会/12:10~13:10 2F 会議室 事 務 局 明治東洋医学院専門学校(担当 河井正隆) 〒564-0034 大阪府吹田市西御旅町 7-53 TEL(06)6381-3811/FAX(06)6381-3800 交通案内 阪急千里線(北千里行)梅田駅から約 11 分の「下新庄駅」下車徒歩 5 分 詳細はhttp://www.meiji-s.ac.jp/よりご確認下さい。 演者・座長へのご案内 1.講演時間(一般演題) 発表 7 分・討論 3 分 時間厳守でお願いいたします。 2.発表機材 ①発表は PC プレゼンテーション(1 面映写)となります。

②学会で使用するのは Windows XP MS Power Point2007 となります。 3.進 行 ①一般演題Ⅰ-Ⅲで発表される演題開始 30 分前までに演者受付(2F 講堂)にお越しいただき、 その後、発表開始 10 分前までに会場最前列左の次演者席にお着き下さい。 ②発表者は、座長の指示に従って発表を行って下さい。 ③パソコンの操作は、演台にてご自身でお願いいたします。 ④発表開始 6 分時に鈴を 1 回、7 分(発表終了)時に鈴を 2 回、10 分(討論終了)時に鈴を 3 回鳴らしますが、討論等の進行は座長にお任せいたします。 ⑤座長は、担当演題の開始 10 分前までに、会場最前列右の次座長席にお着き下さい。 ⑥発表・討論を含めて 10 分以内で終了するようにお願いいたします。 4.討 論 ①個々の発表毎に個別に討論が行われます。 ②討論者は、予め会場内の討論用マイクの近くでお待ち下さい。 ③討論は、所属・氏名を述べた後、簡潔にご発言下さい。

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プログラム ◆開会の辞 9:55-10:00 (社)全日本鍼灸学会近畿支部長 安藤文紀(明治東洋医学院専門学校) ◆一般演題Ⅰ 10:00-11:00 座長 坂本豊次(森ノ宮医療大学) 田口辰樹(明治東洋医学院専門学校) 01 腰部および右下肢痛の改善に難渋した変形性腰椎症患者の一症例 ○山田哲平1,2)、酒井英謙1,2,3)、谷 万喜子4)、鈴木俊明4) 1)kirari 鍼灸マッサージ院 2)喜馬病院リハビリテーション部 3)関西医療大学研修鍼灸師 4)関西医療大学保健医療学部臨床理学療法学教室 02 リウマチ性多発筋痛症に対する鍼治療の 1 症例 ○松村匡哲1)、鈴木雅雄1)、小西未来1)、加藤久人2)、加用拓己1) 竹田太郎1)、福田文彦1)、石崎直人1)、北小路博司1)、山村義治2) 1)明治国際医療大学臨床鍼灸学教室 2)明治国際医療大学内科学教室 03 成人期のアトピー性皮膚炎に対する鍼治療の 1 例 ○太田和宏1)、江川雅人2)、山村義治3)、苗村健治3) 1)明治国際医療大学大学院 2)明治国際医療大学齢鍼灸学教室 3)明治国際医療大学内科学教室 04 鍼灸治療による鼻アレルギー疾患自覚症状の改善【第二報】 ○緒方 萌1,2)、中村真理1,2,3) 1)関西東洋医学臨床研究所 2)まり鍼灸院 3)森ノ宮医療学園専門学校 05 末梢性顔面神経麻痺に対する鍼治療の1症例 ○池上友規、江川雅人、松本 勅 明治国際医療大学加齢鍼灸学教室 06 鍼灸における補完代替医療効果の検討(第 7 報) ―帯状疱疹に対する鍼灸治療の報告(8 症例)― ○花谷貴美子 花谷整骨鍼灸院 ◆特別講演 11:00-12:00 座長 安藤文紀(明治東洋医学院専門学校) 「肥満(メタボリック)と栄養管理」 ~メタボリックシンドロームを防ぐグッド・ダイエットについて~ 前田和久 大阪大学大学院医学系研究科准教授 生体機能補完医学講座

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◇昼食 12:00-13:30 ◆一般演題Ⅱ 13:30-14:20 座長 谷 万喜子(関西医療大学) 清藤昌平(明治東洋医学院専門学校) 07 神経因性膀胱による排尿困難患者に対する鍼治療の1症例 ○金田暁美、高野道代、田口辰樹 明治東洋医学院専門学校附属治療所 08 MDQ(月経随伴症状日本語版)にみる鍼灸治療の効果 ○米山 奏1,2)、中村真理1,2,3) 1)関西東洋医学臨床研究所 2)まり鍼灸院 3)森ノ宮医療学園専門学校 09 肝硬変に伴い腹水穿刺を繰り返した患者に対する鍼灸治療の 1 症例 ○小西未来1)、鈴木雅雄1)、松村匤哲1)、加用拓己1)、竹田太郎1) 福田文彦1)、石崎直人1)、加藤久人2)、北小路博司1)、山村義治2) 1)明治国際医療大学臨床鍼灸学教室 2)明治国際医療大学内科学教室 10 長期にわたって持続した吃逆に対する鍼治療の 1 例 ○加用拓己1)、鈴木雅雄1)、松村匡哲1)、小西未来1)、竹田太郎1) 福田文彦1)、石崎直人1)、岡田晃一2)、中尾昌宏2)、北小路博司1) 1)明治国際医療大学臨床鍼灸学教室 2)明治国際医療大学泌尿器科学教室 11 最重症期 COPD に対する鍼治療の 1 症例 ○鈴木雅雄1)、小西未来1)、松村匡哲1)、加用拓己1)、竹田太郎1) 福田文彦1)、石崎直人1)、山村義治2)、苗村健治2) 1)明治国際医療大学臨床鍼灸学教室 2)明治国際医療大学内科学教室 ◆一般演題Ⅲ 14:20-15:10 座長 伊藤和憲(明治国際医療大学) 戸村多郎(関西医療学園専門学校) 12 コ・メディカルによる脳実習の実施と課題について ○萩原三義 京都大学医学部人間健康科学科(研究生) 13 画像解析による施灸痕の客観的技術評価の試み―艾重量と施灸痕の関係― ○山本哲也1)、澤田 規2) 1)大阪医専 2)森ノ宮医療大学保健医療学部鍼灸学科

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14 弁証別美顔鍼灸治療の効果―中医弁証論治― ○中村真理1,2,3)、米山 奏2,3) 1)森ノ宮医療学園専門学校 2)関西東洋医学臨床研究所 3)まり鍼灸院 15 頸部および体幹の伸展を呈したジストニア症例に対する鍼治療 ○谷 万喜子1,2)、鈴木俊明1,2)、吆田宗平2) 1)関西医療大学保健医療学部臨床理学療法学教室 2)関西医療大学神経病研究センター 16 深部感覚評価からみた頸部ジストニア患者の鍼治療効果 ○鈴木俊明1,2)、谷 万喜子1,2)、吆田宗平2) 1)関西医療大学保健医療学部臨床理学療法学教室 2)関西医療大学神経病研究センター

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「肥満(メタボリック)と栄養管理」 ~メタボリックシンドロームを防ぐグッド・ダイエットについて~ 大阪大学大学院医学系研究科准教授 生体機能補完医学講座 前田和久 メタボリックシンドローム(Mets)の診断基準策定から 5 年目を迎え、患者および該当者に 対しては、国内学会のガイドラインと錯綜するマスコミ情報の渦中、一体、Mets 治療に向けて 何を正確に伝えることが出来るか。まさにその指導する医療従事者の裁量が問われる時代とも 言えるのではないでしょうか。 本講演では、現在までに我々が行ってきた分子生物学的アプローチにより明らかにされてい る Mets 研究の最前線の知見を判り易く紹介し、ハーバード式ダイエット法による Mets を防ぐ ライフスタイルを交え、エビデンスに基づく最も効果的な栄養管理戦略について紹介したいと 思います。 1.バイオマーカーアディポネクチンの発見 内臓脂肪症候群のメカニズムあるいは治療標的となる分子は何であるか。私たちはこの問い かけに対する答えを得るべく、90 年代後半その発症に際し最も重要な臓器と考えられる脂肪組 織の網羅的発現遺伝子の解析を行ないました。そして、1 万分の 1 の確率で脂肪組織のみから 特異的に分泌される、ヒトアディポネクチン遺伝子 apM1 を発見しました(文献 1、2)。現在 Mets 発症のマスター分子として知られるこのアディポネクチンを中心に、Mets の基本メカニズムに ついて概説します。 2.疫学的アプローチによる Mets を防ぐライフスタイル 一方、70 年代より米国ハーバード大学栄養部門において確立されてきた疫学研究では心臓病、 糖尿病、ガンの多くは食生活を中心としたライフスタイル改善により予防できることが報告さ れています。本講演では最新の国内外ダイエットガイドラインにも取り入れられている効果的 なグッド・ダイエットによるこれら疾患予防について御紹介差し上げます(文献3)。 参考文献 1. Maeda K, et al. BBRC 1996;221(2):286-9.

2. Matsuzawa Y, et al. ATVB 2004 Jan;24(1):29-33.

3. Walter C Willett Eat, Drink, and Be Healthy: The Harvard Medical School Guide to Healthy Eating. Simon & Schuster. 2000.

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01 腰部および右下肢痛の改善に難渋した変形性腰椎症患者の一症例 ○山田哲平1,2)、酒井英謙1,2,3)、谷 万喜子4)、鈴木俊明4) 1)kirari 鍼灸マッサージ院、2)喜馬病院リハビリテーション部、 3)関西医療大学研修鍼灸師、4)関西医療大学保健医療学部臨床理学療法学教室 【はじめに】座位や歩行動作において、腰部および右下肢に疼痛が出現する変形性腰椎症患者 を担当した。本症例に対し椎間関節へのストレスに着目し、運動療法と遠隔部鍼治療を行った 結果、症状の改善が見られたので報告する。なお、発表に際し症例には了解を得た。 【症例】症例は 68 歳女性。端座位、正座にて右鼡径部、右大腿部につっぱる様な痛みを感じ、 整形外科を受診したところ、L4/5 間、L5/S1 間の椎間関節変形が見られ、変形性腰椎症と診断 された。その後、腰部から右下肢外側に疼痛が出現し、長時間歩行や座位姿勢時、自転車の運 転で疼痛が増強したため、当院にて治療開始となった。 【評価と治療】座位・立位姿勢ともに、体幹左側屈・右回旋、骨盤は左側偏移し、腰椎の過伸 展、骨盤の前傾が見られた。腰背部の筋緊張亢進(左>右)、腹筋群、大殿筋の筋緊張低下が確 認され、疼痛は腰部、右下肢外側にみられた。原因として、腰椎の過伸展状態と椎間板の変性 による、椎間関節への荷重負荷増大が考えられたため、荷重負荷軽減を目的に腰背部のストレ ッチング、腰痛体操を行った。その結果、立位姿勢時の腰椎過伸展、体幹左側屈・右回旋が軽 減し、疼痛改善が見られたが、端座位姿勢時の右下肢への疼痛が残存した。そこで、端座位姿 勢を再評価したところ、体幹の左側屈・右回旋が残存していた。また端座位姿勢の状態から、 本症例の肩甲帯を上方から押し下げて確認を行った体幹の固定力テストでは、体幹の左側への 崩れが著明であった。体幹回旋の MMT 検査では、左右ともに 3 レベルであったが、左回旋より も右回旋で弱さが見られた。体幹の左側屈・右回旋は左内腹斜筋の筋緊張低下により、体幹を 正中位に保つことができずに生じていることが考えられ、疼痛残存の原因としては、体幹左側 屈・右回旋による右椎間関節の伸張・回旋ストレスが考えられた。そこで、左内腹斜筋の筋緊 張促通目的で、左腹斜筋群を通る足尐陽胆経の丘墟穴へ 10 分間の置鍼による遠隔部鍼治療を行 った。 【結果と考察】左内腹斜筋の促通により体幹の左側屈・右回旋の姿勢が改善し、右椎間関節へ の伸張・回旋ストレスが軽減し、疼痛の軽減が見られた。腰椎過伸展の改善だけでなく、本質 的に問題であった左内腹斜筋へのアプローチを行い、体幹の固定性が得られたことが、症状の 改善につながったと考えられた。また足尐陽胆経の経穴を使った腹斜筋群への鍼治療の有用性 が示唆された。 キーワード:腰椎過伸展・体幹アラインメント・腹斜筋・筋緊張促通・遠隔部鍼治療

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02 リウマチ性多発筋痛症に対する鍼治療の 1 症例 ○松村匡哲1)、鈴木雅雄1)、小西未来1)、加藤久人2)、加用拓己1) 竹田太郎1)、福田文彦1)、石崎直人1)、北小路博司1)、山村義治2) 1)明治国際医療大学臨床鍼灸学教室、2)明治国際医療大学内科学教室 はじめに:リウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatica:PMR)とは、原因不明の炎症疾患 であり、通常 50 歳以上の中高年者に発症し、両側・対称性の肩、腰臀部など近位関節や筋の疼 痛とこわばりを主徴として、尐量のステロイド治療にて著効を示す疾患である。 今回、糖尿病のためステロイド治療が困難であった PMR 患者に対して鍼治療を行い、症状の改 善が得られた一症例を報告する。 症例:78 歳 男性。主訴:肩痛、腰痛、臀部痛。現病歴:20 年前より糖尿病、高血圧にて本学 附属病院内科外来で治療中であった。4 月初旬ごろより上肢・下肢・両肩から腰のこわばりが 出現したため、本院整形外科外来を受診し腰部脊柱管狭窄症と診断され NSAIDsの処方を受け 朋用するが症状に変化を認めなかった。5 月 13 日内科定期受診時の血液検査にて血清アミロイ ド A 蛋白 (SAA)、CRP、赤血球沈降速度(ESR)等の炎症マーカーが高値であったため、PMR が 疑われ入院加療となり、主治医の指示により疼痛緩和を目的に鍼治療が開始された。 所見:血液検査所見:WBC 8430 /μl、CRP 16.6mg/dl、ESR(1 時間)70.0mm/1h、ANCA(-)。 疼痛所見:肩部・腰部・臀部の関節に、圧迫された様な疼痛を認めた。朝起床時に 1 時間程度 の肩関節のこわばりや可動域制限を認めた。さらに、天候不良時に疼痛の増悪を認めていた。 その他の所見:側頭静脈怒張、視野欠損、頭痛は認めなかった。鍼治療:①PMR の疼痛に対し ては、疼痛緩和を目的に鍼治療を行った。②弁証論治に基づき着痺証と弁証し鍼治療を行った。 治療頻度は、1 日に 1 回として、計 22 回行った。評価:鍼治療前後で Visual analogue scale(VAS) にて疼痛を評価した。経過:1 診目から 7 診目までは、鍼治療直後において疼痛の軽減を認め ていたが、翌日には疼痛の再燃が認められた。しかし、8 診目からは、疼痛の再燃を認める事 なく経過しており、VAS では 95mm(初診日)から 4mm と著明に改善した。その後も、継続的な鍼 治療により疼痛の増悪を認めることなく退院となった。さらに、PMR に特徴的な炎症マーカー の改善も認められた。 考察・まとめ:今回、PMR に伴なう強い疼痛が認められた患者に対して鍼治療を行った結果、 疼痛、炎症マーカーの改善が認めたれたことで、ステロイド治療を行わず退院できた本症例に 対して鍼治療は有用であったと考えられた。 キーワード:リウマチ性多発筋痛症(PMR)、鍼治療、疼痛

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03 成人期のアトピー性皮膚炎に対する鍼治療の 1 例 ○太田和宏1)、江川雅人2)、山村義治3)、苗村健治3) 1)明治国際医療大学大学院、2)明治国際医療大学齢鍼灸学教室、3)明治国際医療大学内科学教室 【目的】成人期のアトピー性皮膚炎(以下 AD)に対する鍼治療の 1 例を報告する。【症例】21 歳、 男性。初診 X 年 6 月 25 日。主訴:皮膚掻痒感。現病歴:X-2 年より痒みを伴う皮疹を生じ、近 医皮膚科を受診し AD と診断された。ステロイド外用薬を処方され一時的に症状は軽減するも完 治せず、自己判断でステロイド外用薬を中止し、市販の止痒薬を用いていた。本学での AD に対 する鍼灸治療を知り来院した。現症:痒みを伴う皮疹は、頚部、両肘窩部、右手首に紅斑、丘 疹、苔癬化が認められ、一部に痂疲も認められた。痒みは「人前でも掻破を止められない」程 強く、ハウスダスト、ダニ、ネコなどのアレルゲンの暴露以外に、発汗時、乾燥時、就眠前に 増悪した。随伴症状として腰痛、不眠、軟便傾向を認めた。既往歴・家族歴に気管支喘息を認 めた。【治療】鍼治療は、本学の治療プロトコルに従い、曲池、吅谷、足三里、三陰交、肺兪、 脾兪、腎兪を治療穴とし、40mm16 号ステンレス鍼を用いて鍼響後 10 分間の置鍼術を行なった。 随伴症状の腰痛には大腸兪、不眠には神門、巨闕を、軟便傾向には脾兪を用いて同様の施術を 行なった。治療頻度は週 1 回程度とした。治療効果の判定は、掻痒感は「想像する最も強い痒 み」を 100 とした Visual Analogue Scale(VAS)により、皮疹は Scoring of Atopic Dermatitis (SCORAD)により罹病範囲と重症度を評価した。血液検査により末梢血好酸球数、IgE 値、TARC 値、Th1/Th2 リンパ球比を測定した。QOL は皮膚疾患の QOL 評価表である Skindex29 を用いた。 以上の評価を治療期間前後に行なった。【経過と結果】鍼治療は X 年 6 月 25 日から X 年 7 月 28 日まで計 10 回行なった。掻痒感は治療 6 回目頃から就寝前の症状が軽減し、鍼治療期間前後で VAS 値は 77→40 と減尐した。SCORAD は罹病範囲が 46%→46%、重症度は 34→33 と著変はなかっ た。アレルギー炎症の強さを示す末梢血好酸球数は 560→530/μl、重症度を反映する IgE 値は 3766→3172 IU/ml、TARC 値は 761→403 IU/ml と減尐した。Th1/Th2 値は 14.7→21.5 とアトピ ー体質の改善の可能性が考えられた。QOL は Skindex29 が 28→23 と改善傾向が認められた。随 伴症状の腰痛は治療 4 回目に消失、治療終了時には軟便傾向も改善した。【考察】鍼治療により 掻痒感の軽減と随伴症状の改善が認められた。アレルギーの強さを示す末梢血好酸球数、重症 度を示す血中 IgE 値や TARC 値が低下し、アレルギー疾患としての改善が示された。また、Th1/Th2 値の上昇が認められ、アトピー体質改善の可能性が示唆された。本症例において鍼治療は有効 であったと考えられた。 キーワード:鍼治療、アトピー性皮膚炎、IgE、TARC、Th1/Th2

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04 鍼灸治療による鼻アレルギー疾患自覚症状の改善【第二報】 ○緒方 萌1,2)、中村真理1,2,3) 1)関西東洋医学臨床研究所、2)まり鍼灸院、3)森ノ宮医療学園専門学校 【目的】昨年我々は、第 28 回近畿支部学術集会にて、アレルギー性鼻炎(以下:AR)患者に JRQLQ No1 を用い、弁証選穴と上星・風門・大椎・身柱の灸の治療の有効性を報告した。本報 告では、長期治療患者(治療期間 2 年以上)と短期治療患者(治療期間 1 年未満)に分類した。 各年度症状が最も激しい時期、及び毎回治療終了にアンケート調査を実施し、その結果、有効 な回答が得られたので報告する。 【方法】JRQLQ No1 を用いてアンケート調査を行った。対象者 19 名(女性 12 名、男性 7 名、 平均年齢 37,8 歳)を長期治療患者 8 名(以下:長期)と、短期治療患者 11 名(以下:短期) に分類した。調査時期として、各年度の症状が最も激しい時期(シーズン終了後に記入)と、 毎回治療終了に実施した。鍼灸治療は、全身調整として弁証選穴を用いた。局所的治療として 上星・風門・大椎・身柱に半米粒大 9 分灸を、患者が温かいと感じてから 3 壮行った。なお花 粉飛散数は、平成 19 年度 2423、平成 20 年度 975、平成 21 年度 4517(環境省)となっている。 【結果】まず、全対象者の平成 20 年度と平成 21 年度の花粉症の自覚症状(JRQLQNo1 項目Ⅰ) 平均スコアを比較すると、2項目を除き改善傾向が見られた。特に鼻閉において顕著な改善が 見られた。また、長期・短期に分けて平均スコアを比較すると、すべての項目において、長期 の方がより値が低値であった。特に鼻の痒み・目の痒みについては優位に改善した。個人別に データを分析すると、あまり変化がみられない患者が 4 名いた。しかし、毎回治療終了実施し たスコアを見ると、顕著に改善が見られた。その他 QOL17 項目、フェイススケールにおいても 改善が確認できた。 【考察・結語】長期・短期共に鍼灸治療での自覚症状、QOL、フェイススケールの改善が確認で きた。また、本年度は花粉飛散数が比較した中で最も高値だったが、症状の改善が見られた。 これにより、鍼灸治療が AR 患者に対して何らかの影響を与え、また長期的に治療を継続すると より症状に改善傾向がみられると示唆された。しかし、今回は毎回治療終了時に調査を行った 為、治療前後の症状の程度と一回の治療の持続効果が確認出来なかった。治療前後の改善は AR 患者にとって効果を実感できる指標の一つとなるので、今後さらにデータを蓄積し、更なる検 討をしていきたい。 キーワード:JRQLQ、上星・風門・大椎・身柱の灸、弁証選穴

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05 末梢性顔面神経麻痺に対する鍼治療の1症例 ○池上友規、江川雅人、松本 勅 明治国際医療大学加齢鍼灸学教室 【はじめに】早期治療を行ったにもかかわらず症状の改善困難とされた Bell 麻痺に対し鍼治療 を行ったところ良好な結果が得られたので報告する。 【症例】患者 66 歳 男性。初診日 X 年 4 月。主訴:左顔面麻痺 現病歴:X−1 年 12 月、思い当たる原因無く左口角より飲食物がこぼれ、眼部周囲のつっぱり感 が出現した。翌日近医耳鼻咽喉科にて Bell 麻痺の診断を受けた。2 週間の入院によりステロイ ド治療を行うも症状の改善は見られず、入院時 47%だった ENoG 値は、退院時には 15%まで低下 し症状の改善は困難とされた。以後も朋薬は継続しているが変化は見られないため、本学附属 鍼灸センターを受診した。既往歴:糖尿病を 35 歳より罹病。現症:Lt:眼瞼下垂、眼部周囲の つっぱり感、口角下垂、口角より飲食物の溢流、額しわよせと眉間反射の減弱を認めた。兎眼、 Bell 現象、聴覚過敏、味覚異常、唾液分泌障害は認めなかった。朋薬内容:高脂血症治療薬、 血流改善薬、メチコバール(ビタミン B12)、ノボリン R・30R(インスリン自己筋注用)【治療】 鍼治療は表情筋群、顔面神経の循環改善を目的として印堂、陽白、瞳子髎、攅竹、承泣、觀髎、 地倉、承漿、翳風、吅谷を治療穴とし 40mm 16 号ステンレス鍼を用いて 5mm 程度の置鍼術 10 分間を行った。治療頻度は週 1〜2 回とした。【評価】顔面部写真撮影により症状が著明であっ た安静時、イーと歯を見せる、頬を膨らます表情を評価した。また、顔面神経麻痺スコア(以 下麻痺スコア)を用いて麻痺の程度を評価した。【結果】X 年 4 月から 8 月までに計 30 回の鍼 治療を行った。治療 2 診目より飲食物の溢流軽減、口角下垂、眼瞼下垂、目のつっぱり感の軽 減を自覚した。その後の鍼治療の経過より 12 診目には口角、眼瞼の下垂が軽減し、非対称性の 改善が認められた。歯を見せる表情でも、麻痺側の歯が確認できるようになり、頬を膨らませ る事も可能となった。麻痺スコアは 16 点(初回)→28 点(12 診)→36 点(22 診)と正常点数 へ推移した。また、主治医からも麻痺スコア 36 点(26 診)と判定され症状改善が示された。 【考察】本症例は発症直後からステロイド剤による治療を受けたが症状の改善は認められず、 ENoG 値が低下を示し、以後の症状の改善は困難とされた症例であった。しかし鍼治療の開始後 より表情、麻痺スコア、ADL の改善が認められたことから、ステロイド治療による症状改善の 見られないケースにおいても鍼治療が効果を示す可能性が示唆された。 キーワード:鍼治療、顔面神経麻痺、Bell 麻痺、顔面神経麻痺スコア、ステロイド

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06 鍼灸における補完代替医療効果の検討(第 7 報) ―帯状疱疹に対する鍼灸治療の報告(8 症例)― ○花谷貴美子 花谷整骨鍼灸院 【目的】ヘルペスウイルスによる帯状疱疹に対して一般的に外用薬・口朋薬投与にて効果 が得られるが、鍼灸治療も補完代替医療として効果が現われるので報告する。 【方法】対象は 2004 年 4 月~2009 年 7 月までに来院した帯状疱疹患者 8 症例(男性 1 名、 女性 7 名、平均年齢 60.2 歳)であった。発症季節は春 1 例、夏秋(7 月~9 月)7 例、罹 患部位は単側の胸・背中 5 例、腰・太もも 2 例、仙骨部 1 例であった。発症の誘因は疲労、 加齢、精神的なストレスなどがあった。急性期患者の 6 例は皮膚の発疹は赤く、帯状に分 布した膨れた水疱、ピリピリとした痛みと痒みを訴え、医療機関に依頼した結果、帯状疱 疹と診断された。帯状疱疹後神経痛患者の 2 例は肋間神経痛と坐骨神経痛が残っていた。 東洋医学の弁証では、肝経郁熱 3 例、脾虚湿蘊 3 例、気滞血瘀 2 例に分類し、扶正袪邪、 清熱利湿、解毒活血の治療原則に基づいた。取穴は痛みがある部位の同側夾脊穴、手・足 の陽明経、足の尐陽経の吅土穴、足の陽明経の絡穴、手の尐陽経の経火穴、脾兪穴を基本 経穴とした。局所の皮疹に囲針法で寸 6 の 4 番鍼を 20 分間置鍼し、囲灸法で半米粒大の 透熱灸を施した。最初の 2 週間は週に 5 回、3 週間目からは週に 2~3 回、疱疹を完全に 消すまで行った。鍼灸治療と同時にビタミン B 類を多く含む食事や刺激物を避ける指導も 行った。 【評価と結果】評価方法は、痛みの VAS、皮疹の改善度自己評価法を用いた。全症例は 2 診目から痛みが改善し、急性期の 6 例は最短 2 週間目、最長 4 週間目で乾燥した痂皮が脱 落し、痛みの後遺症を残さず治癒となった。神経痛を伴う後遺症の 2 例でもそれぞれ 4 週 間目、7 週間目で痛みがほぼ消失した。 【考察と結語】帯状疱疹は古典中医学で蛇串瘡や纒腰火丹と呼ばれ、進行期に痛みが強い と記載されている。発症のきっかけは体の抵抗力が落ち、感覚神経節に潜在したヘルペス ウイルスの再活性化と思われる。鍼灸治療が身体の免疫力を向上させ、軸索反射による鎮 痛作用を促し、初期の患者は早く奏功し、後遺症の患者も症状が改善されることから、帯 状疱疹の鍼灸治療は安全で有効な補完代替医療となりうることが示唆された。 キーワード:帯状疱疹 鍼灸治療 補完代替医療

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07 神経因性膀胱による排尿困難患者に対する鍼治療の1症例 ○金田暁美、高野道代、田口辰樹 明治東洋医学院専門学校附属治療所 【目的】腰椎椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症による神経因性膀胱で排尿困難となり、減圧手術 を受けたものの僅かな改善しかみられず、カテーテル自己導尿を続けていた排尿困難患者に対 して鍼治療を行ったところ改善がみられた 1 症例を報告する。 【症例】59 歳、女性、主訴:排尿困難、左臀部下肢の痛みとだるさ。 現病歴:200X-9 年、坐骨神経痛と診断。頻尿にて膀胱炎治療。200X-3 年、尿管狭窄と診断後 経過観察を続ける。200X-2 年、尿の腎臓逆流でカテーテル導尿をすすめられるが使用せず投薬 (ウブレチド)にて治療。200X-1 年、L4/5 椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄による神経因性膀胱(低 活動膀胱)と診断、エブランチル朋用とカテーテル自己導尿を開始。8 ヶ月後脊柱管狭窄減圧 手術を受けたが、腰下肢症状が残り、排尿も不十分でカテーテル自己導尿を続ける。現症:尿 線細く尐量、腹圧をかけても尿勢弱。尿意あり、残尿感なし。自力排尿後カテーテル自己導尿 を行う(1回平均排尿量は、自力排尿量 80ml、導尿量 140ml)。長時間の同じ姿勢で腰部の こわばり、臀部下肢外側の痛みやだるさ。間歇性跛行、会陰部違和感あり、増悪因子は冷え。 エブランチル、ガスコン、降圧剤朋用。鍼治療:2 回/週。排尿困難に中髎穴への捻鍼刺激を 60mm/30 号ステンレス鍼にて 10 分間。その日の症状にあわせ腎経を中心に下肢反応点なども適 宜選穴。治療 2 回目からは陰部神経刺鍼点への低頻度(1Hz)鍼通電刺激を 90mm/24 号ステンレ ス鍼にて 10 分間追加。 【結果】鍼治療 1 回目直後から尿勢、自力排尿量に増加がみられ、6 回目で導尿中止になった (自力排尿量 250ml)。6 回治療後ひとまず終了。1 ヶ月経過後、再び腹圧排尿、導尿再開にな り、腰下肢症状も再発したため治療を再開。再治療 2 回目で導尿中止、さらに 2 回治療継続の 結果、現在まで効果は持続し体操教室やスポーツジムに通うまでになった。 【考察・結語】腰椎椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄による神経因性膀胱(低活動膀胱)の治療で は減圧手術と排尿障害への対症療法が同時に行われているが、膀胱機能回復には数ヶ月~数年 かかり、術前の経過が長期にわたる場吅には膀胱機能が回復しないこともある。本症例は、鍼 治療により膀胱機能回復が促進され、それとともに腰下肢症状も緩和されたと考えられる。ま た導尿中止後しばらく治療を継続するほうが効果的であると考えられた。 キーワード:神経因性膀胱、治療、排尿困難、カテーテル導尿、脊柱管狭窄

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08 MDQ(月経随伴症状日本語版)にみる鍼灸治療の効果 ○米山 奏1,2)、中村真理1,2,3) 1)関西東洋医学臨床研究所、2)まり鍼灸院、3)森ノ宮医療学園専門学校 【目的】東洋医学への関心が高まる昨今、女性の婦人科領域に対する鍼灸治療効果への関心も 高まっている。今回、月経随伴症状日本語版(MDQ)を使用し、通院女性患者に調査を実施した。 その結果、月経随伴症状に改善傾向がみられたので報告する。 【方法】対象は当院にて平成 21 年1月~平成 21 年 7 月に全身治療を受けた患者 15 名。 (平均 年齢 34.6 歳) アンケート調査は初診時、初診後第 1 回目~2回目の月経時(以下治療後)(平均 治療回数 4.7 回)に実施した。アンケートは月経随伴症状日本語版(MDQ)を使用した。評価方 法は◎○△×の4段階とし、◎=3(強い)、○=2(中位)、△=1(弱い)、×=0(なし)とし計上 した。痛みをきく項目には、NRS(痛みの最大時を 10 とする11段階評価)を用いて痛み評 価をした。治療頻度は 1~3週に 1 回以上とした。鍼灸治療は中医学弁証論治による全身治療 を採用した。 【結果】アンケート項目では、大項目8/9 項目に改善傾向がみられた。今回の結果で症状の訴 えが多かった項目は、①痛み②行動の変化③集中力の順であった。改善度は①行動の変化 187 →117②痛み 311→242③集中力 183→128(月経前中後の総計)の順に高かった。また、痛み項 目のNRS値については①頭痛 74→49②下腹部痛 72→53③腰痛 8→6④身体痛 30→23 といずれ も改善傾向がみられた。改善がみられなかった項目は、コントロール(ex.息苦しい・胸のしめ つけ感・耳鳴り etc.)39→47 であった。また、数名の患者に対して初診~第4回目の月経まで の長期的回答を得たが、初診時に比べ全体に改善傾向がみられた。 【考察】今回は治療回数 4.7 回の効果であるが MDQ8/9 項目に改善がみられた。数例の長期的調 査においても、全体に改善傾向がみられたことから、鍼灸治療が婦人科疾患に対して何らかの 影響を与え、また治療を継続することにより月経の随伴症状はより改善されることが示唆され る。 【結語】女性は男性に比べ鍼灸治療受診率が高い傾向がある。多くの女性が抱える月経随伴症 状の悩みを鍼灸治療によって改善していくことは、患者の満足度につながり、鍼灸治療への信 頼にもつながる。今後さらにデータを蓄積して長期クールでの症状変化の傾向をみていく必要 性がある。 キーワード:月経随伴症状日本語版(MDQ)、中医学弁証論治、婦人科領域

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09 肝硬変に伴い腹水穿刺を繰り返した患者に対する鍼灸治療の 1 症例 ○小西未来1)、鈴木雅雄1)、松村匤哲1)、加用拓己1)、竹田太郎1)、福田文彦1) 石崎直人1)、加藤久人2)、北小路博司1)、山村義治2) 1)明治国際医療大学臨床鍼灸学教室、2)明治国際医療大学内科学教室 【はじめに】腹水貯留は肝硬変の重症化に伴い出現する症状である。腹水貯留は腹張による不 快感や、呼吸困難感、食欲低下などを引き起こし患者の QOL を著しく低下させる。腹水に対す る治療は対症療法として腹水穿刺が行われる事があるが、感染などのリスクを伴う場吅がある。 今回、重度の肝硬変に伴い腹水を認めた患者に穿刺治療と鍼灸治療を併用して、腹水の管理を 行い、良好な結果が得られたので報告する。 【症例】89 歳、女性。主訴:摂食量減尐、腹水。現病歴:X-1 年 4 月、精密検査にて肝硬変と それに伴う腹水と診断され入院加療となった。退院後も、1‐2 ヶ月に 1 回の頻度で腹水穿刺を 行っていた。X 年 4 月、発熱と咳嗽、摂食量の減尐、傾眠傾向を認めたため本学附属病院内科 を受診し入院加療となった。嚥下機能の低下が、摂食量の減尐に関係していると考えられ主治 医の指示により、嚥下機能の改善と腹水管理を目的に鍼灸治療の併用が開始となった。 【現症】身長:145 cm、体重:41.5 kg、体温:37.3℃、SpO2:93%。肝硬変に伴う傾眠傾向、 右前胸部にクモ状血管腫を認めた。腹部所見として腹張が強く、腹部CTにて大量の腹水貯留 を認めた。また、認知症のため会話は困難であった。入院時の主な血液検査所見は WBC:3810/u l、RBC:390×104/ul、Hb:12.9g/dl、CRP:2.9mg/dl、NH 3:92μg/dl、Alb:3.4g/dl、AST: 44lu/l、ALT:30lu/l、BUN:17.9mg/dl、Cr:0.3mg/dl であった。 【鍼治療】摂食量の減尐に対し、嚥下機能改善と腹水軽減を目的に土日を除く毎日、計 73 回行 った。【評価】摂食量はカルテに記載されている食事量にて評価し、腹水の程度を排尿量、穿刺 回数及び排液量により評価した。【経過】初診から 15 診は嚥下機能の改善を目的に鍼治療を行 ったが、摂食量は変化せず、主な原因に腹水貯留による内臓圧迫が考えられた。そのためこれ まで行っていたアルブミン製剤に併用して、16 診目から腹水軽減を目的に鍼灸治療を開始した。 その結果、排尿量が徐々に増加し、腹水穿刺の頻度も約 2 週に 1 回から治療開始後は 3-4 週に 1 回となり、摂食量の増加も認めた。 【まとめ】本症例に鍼灸治療を行った結果、腹水貯留の速度を遅延させたことで嚥下困難が改 善し、摂食量の増加が認められ、全身状態の改善が図れたと考えられた。 キーワード:肝硬変、腹水、嚥下、鍼灸治療

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10 長期にわたって持続した吃逆に対する鍼治療の 1 例 ○加用拓己1)、鈴木雅雄1)、松村匡哲1)、小西未来1)、竹田太郎1)、福田文彦1) 石崎直人1)、岡田晃一2)、中尾昌宏2)、北小路博司1) 1)明治国際医療大学臨床鍼灸学教室、2)明治国際医療大学泌尿器科学教室 【目的】長期間持続する吃逆は、摂食や睡眠を障害し、体重減尐、疲弊、不安や抑鬱を引き起 こし、胸腹部手術の既往がある患者では創傷開離を起こすこともある。今回、長期間持続する 吃逆を認めた患者に対し鍼治療を行い、吃逆頻度の減尐が得られた1 症例を報告する。 【症例】症例:71 歳男性。主訴:吃逆。現病歴:X-4 年 7 月に脳出血により右片麻痺を併発し、 長期臥床状態となった。その時期から吃逆が頻回に起きる様になり(発症時期の詳細について は不明)、一向に改善しないため、X-1 年 6 月に本学附属病院脳神経外科にて頭部 MRI 検査を 施行したが、頭部には吃逆の原因となるような器質的異常は認めなかった。X 年 4 月 6 日、腎 尿管結石による除石目的で本学附属病院泌尿器科に入院となったが、入院中も吃逆が持続して いたため、同年4 月 20 日、主治医の指示により鍼治療を開始した。現症:吃逆は 1 度出だす と数日間止まらないことも多く、吃逆による疲弊や夜間の睡眠障害が認められ、発作時の体動 に伴い結石による腰痛の増悪も認められた。長期臥床による呼吸機能の低下から、多量の喀痰 を認め、聴診でも両肺野に低音性連続性ラ音を聴取した。検査所見:腹部CT 画像にて結石と 多量の腸管ガスを認めた。中医学的所見:舌診:紅舌、胖嫩舌、裂紋、尐白苔。脈診:弦、細、 数。聞診:吃逆、咳嗽(無力)、尐気。問診:喀痰(水様)、口渇(冷飲)、五心煩熱、イライラ、 頭痛。腹診:胸脇苦満、腹力軟弱。 【治療】中医学的に気陰両虚、胃気上逆、肺気虚、肝陽上亢との弁証に基づき、吅谷、内関、 太淵、足三里、太衝、太谿、公孫、中府、膻中、中脘、天枢などに鍼治療を行った。鍼治療頻 度は1 週間に 5 日、1 日 1~2 回とし、両側尿管切石術による休止期間も含めて、4 週間で吅計 21 回行った。 【評価】その日の吃逆の頻度などを患者本人、家族より聴取し評価した。 【経過】吃逆は鍼治療期間中には消失し、休止期間(週末、手術前後)に再燃、鍼治療再開に より消失する傾向にあった。 【考察・まとめ】本症例は、長期間持続した吃逆の頻度が減尐したことで、吃逆に伴う疲弊や 夜間の睡眠障害、結石による腰痛などの症状改善が認められ、入院中の患者の QOL 向上が得 られた。また、本症例では入院中に両側尿管切石術を行っており、鍼治療により発作頻度が減 尐したことが手術後の創傷開離を予防できた可能性も考えられた。

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11 最重症期 COPD に対する鍼治療の 1 症例 ○鈴木雅雄1)、小西未来1)、松村匡哲1)、加用拓己1)、竹田太郎1) 福田文彦1)、石崎直人1)、山村義治2)、苗村健治2) 1)明治国際医療大学臨床鍼灸学教室、2)明治国際医療大学内科学教室 はじめに:慢性閉塞性肺疾患(以下 COPD)は、気道感染の罹患により容易に重症化し、呼吸困 難が増悪し ADL の低下を認め長期臥床を余儀なくされる場吅がある。今回、気道感染を契機に COPD が重症化し入院に至った患者に対して鍼治療を行い、良好な結果が得られたので報告する。 症例:77 歳、男性。鍼灸主訴:呼吸困難、食欲低下。現病歴:10 年前より気管支喘息と COPD を罹患しており増悪と寛解を繰り返していた。X 年 1 月 4 日に気道感染を契機に気管支喘息と COPD の急性増悪を認めたため、1 月 16 日に当院内科に入院加療となった。入院後、薬物治療に より気道感染および喘息発作の改善を認めたが、COPD の急性増悪と長期臥床に伴い労作時呼吸 困難(以下 DOE)の悪化を認めたため、主治医の指示により X 年 3 月 2 日より鍼治療の併用が 開始となった。所見:GOLD 分類:IV(最重症期)。呼吸困難は会話、食事、洗面などで認めら れ、離床出来ない状態であった。また、Borg Scale(呼吸困難スケール、以下 BS)は 6(強く 感じる程度)を示していた。治療方法:呼吸筋疲労および全身治療として中医弁証を行い、1 日 1 回、週 5 日間の鍼治療を実施した。評価:呼吸困難は Borg Scale を用いて評価した。食 欲については、①患者の訴え・②食事量・③血清アルブミン値を評価した。 経過:鍼治療開始 3 診目より DOE の改善が認められ、5 診目では呼吸機能検査において 1 秒量 0.68L(鍼治療開始前)から 0.80L と改善を認めた。しかし、ADL 向上に伴い体動を契機に気胸 となり、鍼治療の休止を余儀なくされた。その後、気胸は順調に回復したため気胸発症 9 日目 より鍼治療が再開となった。しかし、DOE は増悪を認めており BS で 8(とても強く感じる)を 示していたが、継続的な鍼治療により漸減的に DOE の改善を認め、鍼治療開始 27 診目では ADL における BS は 0(息切れを感じない)にまで減尐し、全身状態が良好に保てたため退院に至っ た。食欲についても DOE の改善に伴い増加し、albumin 値も 2.9g/dl から 3.9g/dl まで改善を 認めた。 結語:今回、気道感染を契機に増悪した COPD の一症例に対して鍼治療行った。その結果 DOE の改善が認められ、さらに食欲の増進が得られた事で栄養状態が改善され退院に至った。本症 例に対して鍼治療が有用であったと考えられた。 キーワード:慢性閉塞性肺疾患(COPD)、鍼治療、低栄養状態

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12 コ・メディカルによる脳実習の実施と課題について ○萩原三義 京都大学医学部人間健康科学科(研究生) 【目的】コ・メディカルとして人の身体を対象とした医療行為を行う以上、その基礎となる人 体を客観的に観察・認識・表現し、その知見を体系的に集成しようとする解剖学的視点は、鍼 灸師らにとっても必要であると思われる。そこで、2007 年 3 月 5 日・6 日、2007 年 10 月 6 日、 2009 年 3 月 7 日の 3 回延べ 4 日に亘り実施した、コ・メディカルによる脳実習内容と課題につ いての考察を行った。 【方法】参加者に対し、下記内容を項目とした事前の「参加シート」提出を依頼した。 1)氏名 2)所属 3)連絡先 4)参加目的(動機)5)具体的な課題(各自の実習目標)6)(実習 指導者による)ショートレクチュアーの希望項目。又事後に感想・コメントの提出を依頼した。 又併せて 1 回目・2 回目の重複参加者(回答 5 名/6 名)には、「前回の脳実習参加後、自らの学 習・研究に何らかの変化があったと感じられるか」等に関するアンケートを行った。 実習は、次の手順でおこなった。1)解剖実習部屋内での注意 2)各自の事前設定課題に基づ く実習 3)個別の指導・質疑 4)(実習指導者による)ショートレクチュアー5)再度ショートレ クチュアーの内容に従ってグループで観察・同定。 【結果及び考察】通算実習時間は約 17 時間、延べ参加者は 33 名であった。事後の感想・コメ ント等から、1)アトラスや模型では理解が難しかった立体構造や脳室系のつながり等の同定が できた。2)概ね参加者各自の実習課題は達成できたことが示された。また、3)参加者全員か ら脳実習の継続参加の希望が示された。一方 4)「コ・メディカルによる脳実習を含む人体解剖 実習の実施が違法になるのではないか」という疑問や、5)密度のより濃い実習のための、参加 者との事前の具体的な課題(各自の実習目標)の整理等に関しての課題も示された。 キーワード:コ・メディカル、解剖学的視点、脳実習、実施の意義、実施の課題

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13 画像解析による施灸痕の客観的技術評価の試み―艾重量と施灸痕の関係― ○山本哲也1)、澤田 規2) 1)大阪医専、2)森ノ宮医療大学保健医療学部鍼灸学科 【はじめに】灸の実技教育における技術評価法に温度センサーを用いた客観的方法があるが費 用面より広く浸透していない。そこで紙上での灸痕が用いられている。しかし、その評価方法 については一定でなく客観的な評価方法の確立が望まれている。そこで施灸痕面積などの指標 が最高燃焼温度や施灸サイズを客観的に評価できる可能性を報告したが、画像解析による各指 標が施灸に関する要素をどの程度反映しているのかは不明である。今回、艾重量の違いが、最 高燃焼温度および画像解析結果に及ぼす影響について検討を行った。 【方法】同一の点灸用艾を電子天秤で 0.5mg、1.0mg、1.5mg、2.0mg、2.5mg の各重量に取り分 け、高さ 5mm、底辺 3mm の大きさに統一した艾炷を手で作成した。艾炷は温度センサー上で各 8 壮燃焼させて艾重量の違いによる最高燃焼温度を測定した。次に温度センサーに紙を置き、各 重量の艾 8 壮を紙上で燃焼させて艾重量の違いによる最高燃焼温度の測定と紙上に残った施灸 痕について画像解析を行った。 【結果】最高燃焼温度については、温度センサー直上での施灸と紙上での施灸では 6.9℃~ 11.7℃の差を認めたが、艾重量が 2.0mg と 2.5mg では最高燃焼温度に大きな変化を認めなかっ た。一方、艾重量と画像解析結果との検討では、面積、外周長および総濃淡値と艾重量との間 に r=0.9 以上の強い相関を認めた。 【考察】これまでの報告と今回の結果より、施灸痕を画像解析することで温度センサーを用い なくても最高燃焼温度を推測でき、さらに艾重量の増加と画像解析における面積、外周長、総 濃淡値の各指標の相関が強いことから施灸した艾重量についても推測が可能であると考えられ た。今回の実験結果より、艾重量 2.5mg の最高燃焼温度が 2.0mg と同程度であったのは、艾の 大きさを規定したため空気の含有量が尐なくなり燃焼時の酸素不足によるものと考えられ、艾 の燃焼が画像解析結果に及ぼす影響は、艾重量だけでなく施灸に関する他の要因も影響を与え ている可能性が高いので、今後はさらに調査対象を広げ検討する必要があると考えられる。 【結語】艾重量の違いが画像解析結果に与える影響について検討した結果、艾重量の増加と画 像解析結果の面積、外周長、総濃淡値の各指標と強い相関を認めた。これらより画像解析によ り最高燃焼温度を推測できることが示唆された。 キーワード:画像解析、施灸痕、客観的評価、艾重量

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14 弁証別美顔鍼灸治療の効果―中医弁証論治― ○中村真理1,2,3)、米山 奏2,3) 1)森ノ宮医療学園専門学校、2)関西東洋医学臨床研究所、3)まり鍼灸院 【目的】我々は第 28 回近畿支部学術集会にて「美顔鍼灸の効果」、第 58 回全日本鍼灸学会にて「中 医弁証論治と美顔の効果」について報告した。今回、中医弁証論治と美顔鍼灸を気虚タイプ(以下 気虚)と陰虚タイプ(以下陰虚)の 2 タイプに分けて悩み度アンケート調査を実施した。その結果悩み や改善に各々特徴的な差が見られたので報告する。 【方法】対象は当院にて平成 19 年 6 月~平成 21 年 3 月に美顔コース 10 回受けた患者 26 名。 (平 均年齢 42.2 歳、女性 25 名、男性 1 名)アンケート調査は施術前、施術 10 回後(以下施術後)に実 施した。アンケート項目は①悩み度総吅評価②症状別悩み度③症状別部位別悩み度④随伴症状(肩こ り、頭痛、冷え、眼精疲労等 9 項目)である。評価方法は 0~4 の 5 段階とし、数値が大きくなる程 悩み度が高いとした。治療頻度は 1~2 週に 1 回以上とした。治療は中医弁証論治による全身治 療と頭面部の局所治療とした。 【結果】①悩み度総吅評価は気虚 3.1→1.2、陰虚 3.2→1.9 であった。②症状別悩み度は両タイプ 共に悩み度が最も高かったのは「たるみ」であった。改善は気虚の方が高い。「毛穴の開き」「しわ」 は気虚、「くすみ」は陰虚に悩み度が高い。③症状・部位別悩み度は、気虚は「しわ」「たるみ」に 悩みが多い。「毛穴の開き」は、鼻に悩みが集中していた。陰虚は目周囲の「くすみ」に悩みが 多い。④随伴症状 9 項目の悩み度計(人数平均)を施術前後で比較すると、気虚 14.9→8.9、陰虚 15.6→8.6 であった。両タイプ共に改善が見られた。 【考察】中医弁証論治と美顔鍼灸は気虚・陰虚共に改善が見られた。今回の結果から両タイプの特 徴を考えると、気虚は鼻周囲の毛穴の開きが目立ち、「たるみ」の気になる部位が多く、「しわ」 も気になる。施術による改善は高い。陰虚は皮膚がくすみやすく顔全体茶色っぽい。特に目の 周囲のくすみ・シミが気になる。筋肉は筋張り頬がこそげたるんだ印象を受ける。弁証別悩み が異なることから、弁証に応じた施術・説明をする事で満足度は高まると考えている。 【結語】美顔鍼灸の効果は、マスコミ等の影響により周知の事実となっている。しかし具体的 な研究報告は尐ないのが現状である。今後さらにデータを蓄積して弁証タイプ・症状別の治療の指 針となるような報告をしていきたい。 キーワード:中医学弁証論治、美顔鍼灸、悩み度、気虚、陰虚

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15 頸部および体幹の伸展を呈したジストニア症例に対する鍼治療 ○谷 万喜子1,2)、鈴木俊明1,2)、吆田宗平2) 1)関西医療大学保健医療学部 臨床理学療法学教室、2)関西医療大学神経病研究センター 【目的】頸部および体幹の伸展を呈し、難治と考えられたジストニア症例への1回の鍼治療効 果について報告する。 【症例】40 歳、男性。X-2 年 11 月末頃、頸のこわばりと痛みを感じた。X-1 年 1 月、A 医科 大学神経内科を受診、頸部ジストニアと診断されボツリヌス治療を継続したが著効なかった。X 年 9 月、鍼治療目的で関西医療大学附属診療所神経内科を受診し、研究への同意を得て鍼治療 を開始した。初診時鍼治療前の頸部姿勢は、左回旋 5°、左側屈 10°、伸展 20°で、Tsui 変 法スコア 11 点であった。同時に、体幹伸展、両側肩関節内旋を呈していた。安静座位時の頸部 筋の表面筋電図波形では、両側胸鎖乳突筋に持続的な筋活動を認めた。頸部伸展に関与する僧 帽筋上部線維および板状筋には異常な筋活動は認められず、両筋には筋緊張亢進と筋短縮が混 在していた。両側胸鎖乳突筋の筋活動は、頸部伸展を止めるための働きと考えられたが、同筋 は頸部伸展位で活動すると頸部はさらに伸展してしまうため、筋緊張抑制が必要と考えた。体 幹伸展の要因は、両側広背筋の筋緊張亢進と、両側腹筋群の筋緊張低下と考えられた。両側肩 関節内旋は体幹伸展を止めようとする両側大胸筋の働きで、同筋に筋緊張亢進が認められた。 鍼治療はまず、後頸部の皮膚短縮、両側僧帽筋上部線維、両側板状筋および両側広背筋の筋短 縮を集毛鍼で伸張した。その後、40mm・20 号のステンレス製ディスポーザブル鍼で頸部・体幹 の全般的な筋緊張抑制を目的に百会、両側胸鎖乳突筋の筋緊張抑制目的で両側吅谷、両側僧帽 筋上部線維の筋緊張抑制目的で両側外関、両側板状筋の筋緊張抑制目的で両側後谿、両側広背 筋の筋緊張抑制目的で両側崑崙、両側腹筋群の筋緊張促通と両側大胸筋の筋緊張抑制目的で両 側衝陽にそれぞれ刺入深度 5mm で置鍼した。置鍼時間は、筋緊張抑制目的では 15 分、筋緊張促 通目的では 30 分であった。 【結果】上記の鍼治療を実施した結果、初診時の鍼治療後における頸部姿勢は右回旋 5°、伸 展 15°となり、Tsui 変法スコア 9 点と改善した。 【考察と結語】これまで我々が実施した頸部ジストニアに対する鍼治療において、治療効果を 得難い症例に、頸部姿勢が伸展(後屈)であるという特徴がある。本症例では、体幹の異常姿 勢を改善させることへの着目と、異常姿勢の問題を詳細に分析し、頸部筋の筋緊張異常と筋短 縮の改善図ったことにより、初回の鍼治療後に改善を認めた。 キーワード:頸部ジストニア、体幹ジストニア、頸部伸展、鍼治療

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16 深部感覚評価からみた頸部ジストニア患者の鍼治療効果 ○鈴木俊明1,2)、谷 万喜子1,2)、吆田宗平2) 1)関西医療大学保健医療学部臨床理学療法学教室、2)関西医療大学神経病研究センター 【目的】頸部ジストニアにおいて、罹患筋の筋緊張の改善が充分であるにも関わらず治療効果 を認めない症例が存在する。その問題点のひとつに、頸部位置覚異常が考えられる。本研究で は、頸部回旋偏倚を呈する頸部ジストニア患者に深部感覚評価として位置覚検査を行い、臨床 所見との関連、鍼治療前後における位置覚の変化を検討した。 【方法】研究への同意が得られた頸部回旋偏倚を呈する頸部ジストニア患者 6 名(男性 4 名、 女性 2 名、平均年齢 50.8±20.1 歳、平均罹病期間 41.7±44.5 か月)を対象とした。閉眼での 座位姿勢で、頸部偏倚側への最大回旋時から対側へ他動的に頸部を回旋させた。患者には頸部 正中位と感じる位置で吅図するように指示し、正中位からのずれを測定して位置覚障害とした。 検査は 3 回行い、3 回の平均を求めた。同様の検査を鍼治療前後に実施し、鍼治療効果の出現 と位置覚の関係を考察した。 【結果】対象症例の頸部回旋偏倚は、左回旋を示す症例 4 名、右回旋を示す症例 2 名であった。 頸部回旋偏倚の程度が強いほど、位置覚障害が著明であった。頸部回旋偏倚は軽度だが位置覚 障害が著明な症例は、罹病期間が長い傾向であった。1 回の鍼治療前後における比較では、頸 部回旋偏倚が軽度の 1 症例は鍼治療前後の頸部回旋偏倚角度、位置覚に変化なかった。鍼治療 後に位置覚の改善を認めた 3 症例のうち、2 症例は安静時の頸部回旋偏倚角度にも改善を認め、 1 症例は位置覚障害が軽度で、鍼治療前後に変化なかった。残る 2 症例のうち 1 症例は、頸部 回旋偏倚角度は軽度に悪化したが、Tsui 変法スコアおよび位置覚に改善を認めた。1 症例は頸 部の不随意運動は軽減したが、頸部回旋偏倚角度は軽度に悪化し、位置覚障害に一定の傾向が みられず、症状改善に難渋すると予想された。 【考察と結語】ジストニアでは、特定の感覚刺激に対する過敏性や、感覚トリックによる改善 がみられ、その病態に感覚情報の処理異常が存在すると考えられている。また「もぐらたたき 現象」と呼ばれる、治療した筋緊張亢進が改善したのちにその協働筋の筋緊張が新たに亢進し て元の異常姿勢を再現してしまう現象があり、固有感覚情報に基づく身体イメージの歪曲が存 在することも示唆されている。本研究結果も、それを支持するものであった。これまでの我々 の研究では、鍼治療によって頸部ジストニア患者の頸部姿勢の改善を得ているが、同時に位置 覚も改善している可能性が示唆された。 キーワード:頸部ジストニア、鍼治療、頸部回旋偏倚、深部感覚、位置覚

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平成 21 年度(社)全日本鍼灸学会第 29 回近畿学術集会 関係一覧 支部長 安藤文紀 明治東洋医学院専門学校 学術委員 今井賢治 明治国際医療大学 学術委員 太田嗣治 おおた鍼灸接骨院 学術委員 尾﨑朊文 森ノ宮医療大学 学術委員 河井正隆 明治東洋医学院専門学校 学術委員 吆備 登 関西医療大学 学術委員 木村研一 関西医療大学 学術委員 小島賢久 森ノ宮医療大学 学術委員 坂口俊二 関西医療大学 学術委員 曽 炳文 兵庫県立東洋医学研究所 学術委員 原田滋泉 鏡之坊鍼灸院 学術委員 福田文彦 明治国際医療大学 学術委員 和辻 直 明治国際医療大学 (五十音順・敬称略) 協力団体 明治東洋医学院専門学校

参照

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