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大学における英語音声教育の理論と実践
添 田 裕
AN ATTEMPT AT THE IMPROVENMET OF TEACHING
ENGLISH PRONUNCIATION AT COLLEGE LEVEL IN JAPAN Yutaka SOEDA
The sound flow of the concrete speech event is an丑11interrupted moveme駐t.
、一N.S.Trubetzkoy
The main purpose of this paper is to present a few theoretical aHd practical suggestious on how to improve the Japanese college student s hearing comprehension of Englisll speech,not segme虹tal phonemes. Becallse there are few, if any, units iRvolved in the production and perception of speech which correspond to phonemes,
it is no wollder that phoneme−domhated exercises have failed to enable the student to perceive English speech clearly when spoken at natural speed. It is, therefore,
much better and more desirable to introduceα55盛〃2iZα診ゼ。η5,τσθα々ノ:b7吻∫,ωπ一
〃α6擁olη5, etc. at the earliest stage, which the student cannot avoid hearing in a flow of speech a丑d wllich are usually studied onlアsketchily af主er studying the vowels and consollants individuallγ.
The difficulties that phonemes tend to prese砒maγbe called stat三。 , but speech tends to raise a lot of dynamic difficulties. In other words, overcomillg static difficulties never guarantees understa五ding speech correctlア.
My suggestion is that the student should first of all be made to realize that despite his fair knowledge of English vocabulary and phonemes the reason for his greater inability is his inadequate knowledge of and. practice in sandhi−variations.
lt is time for us to stop thinkiug of the phoneme as the only pho丑ological unit of teach≒ng English pronunciation and to adopt syUable−based practice more widly and intensively.
* * * * * * *
0.この小論において筆者が言わんとすることに,英語の音声教育の目標をしっかり見定
ることの必要性とそれを実現させるための具体的方法の示唆である。特に「大学におけ
る」という限定を加えたのは,筆者が大学の英語(または英文)専攻一年生の音声学を担
当した約8年間の経験と思索を基礎とした論考であるからである。まず現在の大学におけ
る英語の音声教育の状態を考えてみると,多くの大学はLL装置をもち様々な録音教材に
よって指導が行なわれている。20才前後の学習者の知識と知的レベルを考えると,理論と
実践の巧みな組合わせが望ましいことには異論のないところであって,そのどちらかに偏
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しすぎるとよい結果は望めないと思う。実際,大学生の知識と発音は大変不完全である。
例えばsegmental phonemeについての知識は不確実で,その発表能力は不十分であり,
全面的な再教育の必要を感じる程である。したがって多くの大学で個々の音素の指導と練 習にかなりの時間をかけていることは容易に想像できるし,音素識別力の向上についての 研究報告もいくつかある♂)筆者もここ3年間は,」.D.0 Connor著Bθ漉r.翫gZゼ論 Pγoηππ6伽勿%を使い,まず音素を中心とした指導を行なっている。ある短期大学英文 科1年生2クラス(94名)を対象に,英語の音声についての興味のあるなしを高校時代と 大学入学後にわけて調査のたのが次の表である。調査時期は音声学を学び始めて3カ月余
り経った時であった。
\\\大学入学後
高校時代\\
興味があった
興味がなかった
どちらでもない
計
興味あり
22
25
26
71
興味なし
0
5
1
4
どちらでもない
2
6「
屑
19
高校時代に興味をもっていた者は,大学入学後もその興味を持続していると言える。特に 目立つのは,入学前に興味がなかったものや無関心であった者が,現在興味を抱いている ものの約65%を占めていることであって,これは大学に入って,「音声学」という独立し た教科として,英語の音声を根本的に見直す機会を与えられたためであろう。単に強勢の 位置を記憶したり,母音の違いに注意するといった機械的表面的な観点から脱却して,新
しい世界を知り得たためであろう。
1.ここで筆者が昭和46年に実施した音素識別力の向上についての調査を簡単に紹介する と同時に,その後加えた新しい資料を基にこの種のテストについての筆者の立場を明らか にしたい。
この表の第4回までは,すでに教育工学研究業績(1971年)に報告したものである。/
回から4回までは,予告も準備もなしにR.LadoのTθ5オげノ1曜αZ P〃6θρあ。π碗 Eπg傭んノ加」αραπ656翫π4θ勉5を課したのであるが,除々に点は上昇するものの頭打 ちの兆しが個人的にも全体的にも見えている。Ladoの意図は,意味に関係なく音素だけ の識別能力をテストすることにあるが,leaveとliveのようによく知った単語の識別は比 較的容易だが,日頃ほとんど耳にしたことのない単語に含まれた音素は聴き取りが困難と いう事実はこのテストの一つの限界を示しているといえよう。また/z/:/5/の識別をさせ る問題もあってよいし2),短縮形を含む項目(We ll gOとWe gOとの識別)があれば一 層日本人向きの実際的なテストになると思う。さて第5回は被験者に出てくる単語の意昧
を全部明らかにしてみたところ,表のようにまた一段と成績が向上した。この結果から,
肱doの意図に反して語い力があればある程成績がよいと言えるわけである。
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A B C D E F
G H
I J
K
L
平均点 最高点 最低高
第1回 4月 第2回 5 月
第乙回 6 月
61 67 68 55 72 57 57 66 57 70
6て
53
72 72 70 69 75 62 67 68 75 74 62 56
66 77 69 69 79 77 61 66 71 71 6ア
64
第4回 9 月
61・8i 72 55
69.2 75 56
69.7
79
61
70 84 77 77 79 74 66 70 70 75
ア7
75
74.3
84 66
第5回 11月
85 92
% 85 92 85 69 68 80 81 85 66
81.6
% 66
(但しA〜Fは専攻の1年生,G〜Lは小学課 程5年生)
克服しえたとしても,実際のspeechで,様々に姿を変える音素,切れ目なく連なった音 声に直面して感じる困難性(staticに対してdynamicと呼ぶことにする)が大して減少 するわけではない。自然なspeechでは,実際には存在しない音素がきこえたように感じ たり,上記のLadoのTestにはない無関係の音素と錯覚したりすることは普通の出来事 である。もちろん,聞き落す場合も多い。一例をあげるとPat didn teat dinner.を2,
3回きいてわかるのは1クラスの中で極く少数である。これはPa!di些 t ea王dinner・の 1 2 3
1と3の/t/が後退同化のため発音されないのと,2のnasal plosio戴が原因であるのは明 白である。これらの具体例とその音声学的分析はあとで詳述する。
払adoのテストに限らずこの種の テストは聴き取る能力の全部を測定 できるものではなく,限定されたも のであることを忘れてはならない。
さらに音素識別能力の向上といって もそれは決して最終目標ではなく,
あくまで自然な速さで話される英語 をきいてわかるようになるための1 つの訓練にすぎないことは言うまで
もない。
音素識別という困難性はあくまで 静的(static)なものである。かつ その静的な困難は何も音素識別に限 らないという事実を認識しておく必 要があろう。一例をあげればnasal plosion3)であるが,大学一年生で written〔ritn〕の下線部を正しく発 音できるものはほとんどいないと言 ってよい。したがってdidn tの下 線部がよく聴きとれないことにな
る。
さて仮にそういった静的な困難を
2.以上大学における英語の音声教育の聞題点をいくつか指摘したが,ここで更にもう一 歩突っ込んで考えてみたい。
英語の音声学関係の書物や録音教材は,ほとんど例外なく発声器管の解説から始まり,
母音,子音の記述に主力をおいて,最後の方にstress, strong aれd weak forms, assimilation
と進みintonationで終るという・のが普通の順序である。これはこれなりに意味のあること
であるが,大学生の音声教育をもっと能率的かつ実際的にするためには,少し指導の順序
を手直しした方がよいのではないかと思う。まず母音から始めるやり方は止めて子音から
始めるべきである。0 Connorの …consonants contribute more to make English
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uuderstood than vowels do. 4)という言葉は示唆に富んでいる。母音をまず取り上げる と学生は母音が一番大切だと考えがちである上,英米の母音の違いという難問にぶつか り,教える方も学習者も労のみ多しという挫折感に悩まされて意欲を失う恐れがある。
当学部の専任外人教師(米人)に,学生の発音をどう思うかときいたところ,悪いといっ て指摘するのは子音だけであった。もちろん母音はよろしいということはないはずであ
るが,如何に問違った子音は聞きづらいかということを示す例である。われわれは次の 0 Connorの説を素直に理解して実践してはどうであろうか。
Native speakers of English from different parts of the world have different accents, but the differe且ces of accents are mainly the result of differences in the sound of theτoτσθ15;the consonants are pronounced in very much the same way wherever English is spoken. So if the vowels you use are imLperfect it will not prevellt you from being understood, but if the consonants are imperfect there wiU be a great risk of misunderstading。5)
学生に子音の重要性を認識させて,最大の努力を払わせる必要を痛感する。
子音,母音の学習順序はともかく,音素の個別指導の過程で留意すべきことが3つあ る。第1は,大学入学前に彼等が断片的ながら持っている既習の知識と多少とも重複した ところがあるので退屈する恐れがあること。第2に異音(a110phone)に注意を換起して も,音素はいつも同じように発音されるという固定観念を壊すことはなかなか容易ではな いし,それを強化するおそれもあるので注意を要する。第3は音素のarticulationの理解 とそれを含む単語の発音練習とで,自然の英語がわかると錯覚したり,またどんなに努力 してもわからないため意欲を失う学生がいることである。
3.前述したように,英語の音声指導の順序が大体きまっていて,音素の個別学習が終っ て力疹,轡形,短縮形,同化というものが出てくるが,多くの場合,時間不足のため十分 やれない。ところが大学入学前にこの訓練はほとんど受けていないのである。そこで,不 完全ながら多少の知識をもっている音素を全部やり直してから,これらを勉強させるので はなく,より大局的な立場から,並行的に練習させることを提案したい。この方法はより 現実的でもある。すなわち音素から自然な音声へという方向を逆にして,自然な音声を聞 かせてそこから音素へ注意を向けさせるやり方であって,例えば轡形をこの方法でやらせ ると,英語のrhythmやintonationの大切さを同時に知るという利点もある。さらに,ど うして英語を聞いてわからないのか一多くの学生は語い力がないためだと思っているが 一を実感として悟らせることもできる。実は中学め時からよく知っている単語がきき取 れないのである。ごく簡単なif, and, a, theなどがわからないのである。その/つの方 法は,Lしで書き取らせ,何度きいてもわたらなかった原因をつきとめるやり方である。
次に示すのはその1例である。録音材料はJ.D.0 ConnorのB観6プEπgZi繭Pγoπ辮一 6伽加PP。160−1,録音速度は1分約/50〜60語である。(但し各センテンス毎に休止があ
る)上記の英文科1年の1組を1正に入れ,材料を全部各自のテープに録音させて書き取
らせた。これ以上何度きいても同じというところまでやらせたら約40分経っていた。そし
て比較的出来の良さそうなのを11枚調べたのが以下である。まずどういう誤りが多いかそ
の具体例を11名中題名かという数字と共にあげる。そのあとで,誤りの原因を探れば,音
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声教育を考えるための貴重な資料を提供しうるのではないかと思う。
(φ・=その部分の脱落,*=非英語, ()内の数字は,該当個所だけの誤答数)
1 That,s a nice suit.I haveガt seen it I〕efore, have I?
2 No, it s the first time I veworn it actuaUy. I o丑ly got it about four
{18}7難…81§講籠器帥…、。
wanna etc・ φ etc.
5 days ago. You like it, do you?
4 Very much. Did you have it specially made, or did you buy it off the peg?
after pe9
・ ll躍d…6
etc.
5 1had it 田ade・Ivery rarely buy且_suit,so I thought I 旦 have it tailor甦,
{鮮酬y}…7鄭…8磁..3φ 4
etc.
6 alld I, m quite pleas璽with it.
膿h,}…6φ●●●4
7 1should think so.It,s very handsome.May I ask where you got it?
{驚。ア}…3
8 The same亙墜Igot my last one,nineteen years ago.
・ Places… 9
gNineteen years!D・y・u rea11y mean t・tell me y・uhav・n thadasuitsincethen2
φ…10
10 That s right. I don t often wear a suit, you see, so they tend to last {難蹴…7臨』…8
attend a φ
11al・ng time.
12 Nineteen years is certainly a long time, alld even if you don t wear them
{瑳an}…4
15 much,アour old one must have lasted we11.
一
{鍵甜}…6㎡ る
t8 'ftcaJk<il}2#EEI}2zzAis:IGlt¥liJIliYrvalli・ ag25E'
t4 Oh, it did. They did a very good job on it.
Iefiii']6
15 What was the name of the tailor?
ip・・・ 3
¢・・・4 O・・・4
16 Philipson. It's guite a small shop, right at the end of King Street.
a quite・・・5 *guite bend
to end
hand ・・・5 tend
been
Iifh.aJ l'‑6
17 I know it. Rather A shabby‑looking place. I've never been in there.
(?hr(e4)l7 lnner・3
18 I wouldn't call it shabby, but it isn't very modern, I admit.
five minutes nine minutes
/ like minutes
・‑8 *might mit
I've met Q(2) t9 However, they are very obliging and take a great deal of trouble.
(9h,e.rels ¢̀
2o So Ecan see.Ithink I'll go along there. I need a new suit.
di‑ 3
ilk".g,} ,
ILs; )".,
2G Oh,by the way, what sort of prices do they charge?
Iggzg,ht ] , (:.og.a;'s} 4
22 Pretty reasonable really. This was thirty‑・five pounds.
:,Ou,l.12.y.oul...,
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100kin9… 4
25 That,s not bad;1伍ink I, Il Iook in there tomorrow.
姫5{鴛d}…m
24 Yes,do melltion my name, if you like. It won 辺g any harm,哩
騨細ト4
25 it might do some good.1二堕lust paid my biU・
my… 3 φ… 3
φ…3
上記の誤りは特に数的に目立っものだけを選んだのであるが,以下順を追い他の資料も参 照しつつこれらを検討することにする。
〔コ.1〕 aniceがわからず仮名で「アナイ」としたのが1例。 beforeを<for>とした のが2例。
〔L2〕 冠詞の脱落,取り違えば予想通り多かった。先行または後続の語と連語的に発 音される冠詞は意外と聞き取りが困難らレい。短縮形も日本人学生にとって困難なものの
1っである。長崎大学英語科の1年8名のうち,半分は,別に実施した書き取り練習で we ve usedを<will use>,<we used>,<with use>と聞いていた。同様にwe ll go backで IIを落したものは8名谷7名であった。 dark lは最大の問題点の1つであ
・る。onlγgotがこれ程聞き取れない原因ははっきりしないが,恐らくonly〔6unli〕
の二重母音と強勢の影響と思われる。
〔ll・2〜3〕 four daysを<today>としたのが1例あったが,直前のaboutの⊂一t〕
の残響のせいである。
〔監.4:〕 off the pegのtheは〔t9〕みたいにきこえ, offと一緒になって<after>と なったと思われる。buy itのitの脱落2例。
〔L5〕 自然なspeechの中では,音素は全然無縁な音素に化けてきこえる例である。
veryの〔v〕が/p/や/t/にきこえたらしい。 rarelyという単語を知らない学生にとって very rarelyとつづくと全くわからなくなる。 a suitの不定冠詞の脱落がやはり多い。 a
を<your>としたのはbuy aというsequenceのせいである。短縮形1 dの dの脱落 も多い。それから形態素の聴覚訓練が必要である。
〔L6〕 andの脱落も意外と多いもので1あるが,ここでは次の1 mと連続して発音され ているので1 mの脱落も2つある。
〔L7〕 whereの/w/についてはLado Testの批判で言及したように日本人にとって訓 練を要する音素である。
〔1.8〕 …place asをほとんどの者が<places>と聞いているのはasの弱形に慣れて
20 長崎大学教育学部人文科学研究報告「第25号
いないのが主原因である。The same…の定冠詞の脱落2例。
〔1・9〕 Do you…?のDoの脱落の数は正に驚異的である。 これもweak formに不慣れ のためである。
〔L10〕 …suit, you seeが<yoガto see>,<suit to see>となった原因は,明らか にsuitの/t/とyouの〔j〕がassimilationとしてきこえ,別個の単語と思い違いしたた めである。…tend toでは/d/+/t/(stoP+stoP) というsequenceに慣れていないため,
大部分のものが聞き違えている。
〔L11〕 接続詞(if, until, even if, etc.)がわかりにくいことは注意すべきである。
ここでもevenの脱落が2例。 wearを<well>とした例が1つ。その脱落1例。 themの 美形がわからない例4つ。
〔1.12〕 haveを<of>とした者は,弱形〔ov〕を一応正確にとらえたといえるが,そ れがhaveとは気付いていない。<lasted>を米<last it>とした者2人,<last>とした 者1人。weUを<wear>としたもの1人。
〔L13〕 didのあとに<it>を入れたもの2人。 aを<the>としたもの1人,落した もの1人。They didはdidにstressがあるためかtheyを聞き落したもの3名。<He>
や<That>としたもの計3名。
〔L14〕 what wasのwasを<is>としたもの2名,落したもの1名。結局〔wgz〕
が聞き取れないのである。the tailorのtheがやはり落ちやすい。
〔L15〕 right at the end of〜といった単音言語の連続は極めて聴取困難である。二形 が連続するので,関係ない語があるようにきこえたり,いくつかの語をきき逃す場合が多 い。きき違いの中に<to end>や<tend>があるのは,恐らくrightの/t/と/et/の/e/が重 なったためであろう。atの/9/が消える感じがするのは, at allが<taU>や<told>みた いにきこえるのと同じである(最後の例は別の資料による)。
〔]・16〕 Rather aの〔一ro〕が聞きづらいためか,不定冠詞の成績はここでも悪い。
in thereでは,/一n/が比較的強く聞こえるためか次の/δ/と重なって/δ/をまぎらわしくし ている。
〔1.17〕 Iadmi↑がわからない主原因は,明らかにadmitの/d/+/m/(すなわちstoP+
/m/)というsequenceの正しい発音訓練が不足しているためである。すなわち/d/が破 裂されないために落してしまっている。大学入学前にはこういう種類の訓練は全然なされ ていないのが現状である。
〔1・18〕 theγareは実際にはthey reと等しく発音されたのでわかりにくいらしい。
be動詞の聴取訓練も不足している。ここでもandの弱形にてこずっている。
〔1.19〕 ここでも短縮形Cll)とalongの〔o一〕が問題であることがわかる。
〔L20〕 sort(of)がこれ程困難とは思わなかった。恐らくwhat sort ofと連続した中
でsortが目立たなくなったためであろう。もしkind ofであったらもっと楽に聴取でき
たと思われる。次にここでもdo theyのdoの聞き違えばかなり多い。
大学における英語音声教育の理論と実践(添田) 21
〔L21〕 prettyをこんなに間違えた理由は定かではない。やはり次の単語と連続して発 音されたため切れ目が明瞭でなかったからであろう。
〔L22〕 not badのnotを<Ho>としたのは,明らかに/t/・+/b/のsequellceにおけ る/t/の不完全破裂に気付かなかった証拠である。そして1 llの Uは次のIookの/1/
と重なったため,その困難度が倍加してほとんど全員がその存在に気づいていない。
〔L23〕 ここでも短縮形won tが問題である。さらにwon tの/t/と次のdoの/d/が重 なって/t/が消えるため(regressive assimilation)その困難度が増したものに違いない。
〔i.24〕 上記と同じことがmightの/t/と次のdoの/d/との間に言える。
4.前節で個々に論じた点を要約してみよう。書き取りに使った英文の単語は大学1年生 にとって決して無理ではないはずである。したがってそれを何度聴いてもわからないの は,前述の通り単語力の不足ではなく,多くの場合中学以来なじみの単語が聴取できない からである。しかも彼等は不正確ながら英語の音素についての知識もかなりあるのに,ど うしてわからないかということを彼等に実感として悟らせることが何より大切だと思う。
書き取りのあと正解を見せ,どんなところがわからなかったかを書かせたところ,主なも のは次の各項目である。 (順不同)
1.短縮形 6.切れ目がわからない 2.前置詞 7.否定か肯定かわからない。
3.短い単語が続く時 8.be動詞
4.語尾 9.haveやandのような簡単な語 5.接続詞 10.語尾と次の語との続き方
彼等が困難だとして挙げたのは多分に重複しているので整理すると,(1)同化作用(assim−
ilation)(2)弱形(weak form),(3)英語のリズム についての知識と訓練不足が原因とな っている。今回の資料だけでなく,過去数回の書き取りの資料も同じことを証明してい る。故にこの3つの要素を含む訓練教材を作製し,徐々に応用力をつけさせることが必要 である。弱形がわからないために,それが隣接する音まで連鎖的にわからなくする悪影響
を忘れてはならない。
AIlything short of complete faithfulness to what is real spoken language results in
distortion. ,6)
nnly the actual continuous sound flow of the speech event is a positive entity, 7)
という事実を教授者も学習者や直視し,すべてのhearin9力養成は,動的(dγnamic)な 困難を克服することを目指すものでなくてはならない。個々の音素の学習の時も,常にこ れを意識させることが肝要である。大学段階では,出来るだけ早く,前述したような体験
と訓練を与えた方がよいと思う。
5.言い換えると,筆者が提唱する訓練は,静的(static)な練習と,内容理解を主眼と
する訓練の中間を行くものである。どの訓練も大切であ』るが,この種の教材が量的にも質
的にも劣っているのが現状である。ここでわれわれは音素(phoneme)という概念をもう
一度考察してみる必要はないであろうか。また母国語として英語を習得して行く過程で,
22 長崎大学教育学部人文科学研究報告 第25号
はたして音素はどんな役目を果しているのであろうか。こういう問題と外国語としての英 語の音声教育の関わりを見ると新しい展望が開けるかもしれない。
まずAbercrombieは,音声分析の伝統的手法を phoneme。dominatad approachと呼 びphonemeはある目的のためだけに考え出された仮空の存在であり, speechについて考 える際,害になったり,邪魔になるものと批判した後次のように続けている。
ham sure it gives rise, for example, to mistaken ideas about the perception of speech, making people think that phoneme−representing segments are perceived separately and seriaUy−which is most unlikely. But it is not onlア sometimes misleading;it is often聡ot the most efficient means for thinking about and describing speech. 8)
また彼は子供が言語を習得するのはsegmental phonemeの数を増しながらそれをつない で行くという考えも疑問視して次のように言う。
hsuggest that what the child Iearns are patterns of movent which are璽uite large iR time, and it learns them at first sketchilγand roughly,filling them in, in more detail,
as it improves.The learning of these patterns is best thought of as being in parametric terms. This is certai血ly better than saying, as olle authority has, that the average baby under two months of age has mastered seven and a half phonemes! 6)
ノ
同様な考察はLadefegedにも見られる。
…there is,in fact, very little experimental evidence for the assumptioll that there are discrete units involved in the production and perception of speech which correspond to pho隷emes. There are certainly no皿atura1, self−evident, segments of speech of this size;and no one has as yet succeeded in describing a set of operations which can l)e used for reduciHg speech to a set of either articulatory or acoustic segme盤ts. lo)
shey(=babies)seem to learn syllables as a whole,with little regard to the smaller units which phoneticians employ in their descriptions. 11)
Trubetzkoyも言うように,璽2)音素の概念自体複雑である上,どんな定義を下しても現実 のspeechを反映していないという事実と,音声教育では当然発表力(production)の指導
も同時に考えるとなると,音素レベルだけの訓練では不十分であることは自明である。し たがって音声レベルすなわちsyllabic units13)を中心とした訓練がどうしても必要である。
そこで次の課題は具体的な教材の作製とその効果の測定ということになるが,今回は今 手許にある市販の録書教材を利用した1例をあげるに止めておく。
1.
2.
3.
4.
5.
0,Connor, B6甜6プEπgZ¢5ん.Pro7zz6η6盛α診foアz, PP.88−95,117−127.
K:enichi Ando 8ヵαZ.,8オα7z4αγ・4 LL EπgZ 5んCoπプ5ε(Taishukan), pp.86−91.
Tsuneo Kimura,1〃ψγoηθYo解EπgZi31z Pプ。π魏。乞αあ。π(Taishukan),§§107−9,
175・96.
:E.L. Tibbitts and A.C. Wilson, Tゐ630ππ4げ.翫gZ励.(Oxford),pp.17−24.
大井上 滋,Susie F.Cowan,「米会話リダクシ・ンの演習」 (語研)
大学における英語音声教育の理論と実践(添田) 25
それぞれ編集方針の違う教材の寄せ集めだが,指導の一貫性に注意し℃編集すれば,これ だけでも音素にこだわり過ぎた不自然な発音の矯正に大いに役立つはずである6ただし指 導に当っては,理論的な説明を加えることが不可欠である。こういう訓練を経験すれば,
今度は逆に音素を個別にもっとよく観察しようとする態度も養われると思う。
(注)