ジクロフェナクの皮膚透過に及ぼす単環モノテルペ ン類とエタノールの併用効果
著者 小幡 誉子
学位名 博士(薬学)
学位授与機関 星薬科大学
学位授与年度 1992年度
学位授与番号 32676甲第51号
URL http://id.nii.ac.jp/1240/00000308/
ジクロフェナクの皮膚透過に及ぼす 単環モノテルペン類と工タノールの
併用 効果
星欝㌘
ジクロフェナクの皮膚透過に及ぼす 単環モノテルペン類とエタノールの 併用効果
目次
緒言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 1
第1章 ジクロフェナクナトリウムの経皮吸収に及ぼす単環モノ テルペン類の促進効果・・・・・・・・・・・・・・・・… 4
第1節 序論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 4 第2節 実験の部・・・・・… ◆・・◆◆◆◆◆… ◆・4 第3節 単環モノテルペン類の促進効果・・・… ◆・・◆・9 第4節1一メントールとAzoneの比較・・・・・・・・… 12 第5節 ジクロフェナクの血中濃度の予測◆◆◆・・・… 16 第6節 本章のまとめ・・・・・・・・・・・・・・・… 19
第2章 ジクロフェナクナトリウムの経皮吸収に及ぼす単環モノ テルペン類とエタノールの協同効果・・・・・・・・・… 20
第1節 序論・・・・・・・・・・… ◆◆◆・・・… 20 第2節実験の部・・・・・・・・・・・・・・・・・… 20 第3節 エタノール濃度の影響… ◆・・・・・・・… 21 第4節 テルペンとエタノールの協同効果・・・・・・… 23 第5節 ジクロフェナクの経皮吸収・・・・・・・・・… 26
第1節 序論… ◆・・・・・・・・・・・・・・・… 31 第2節 実験の部・・・・・・・・・・・・・・・・・… 32 第3節 ジクロフェナクの皮膚透過に対するpHの影響… 33 第4節 ジクロフェナクの溶解度に対するエタノールの影響・33 第5節 ジクロフェナクのフラックスと透過係数に対する
エタノールの効果・・・・・・・・・・・・・… 41 第6節 透過係数の理論値と実験値の比較・・・・・・… 44 第7節 本章のまとめ・・・・・・・・・・・・・・・… 48
第4章 分子形及びイオン形ジクロフェナクの皮膚透過に及ぼす 単環モノテルペン類の前処理の効果・・… ◆◆◆・… 49
第1節 序論・… ◆◆・・・・・・・・… ◆◆… 49 第2節 実験の部・・・・・・・・・・・・・… ◆… 49 第3節 ジクロフェナクの皮膚透過係数に対するテルペン類の 促進効果・・・・・・・・・・・・・・・・・… 50 第4節 本章のまとめ・・・・・・・・・・・・・・・… 53
総括・・・・・・… ◆◆・・・・・・・・・・・・・… 56
謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 58
参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 59
緒言
薬物の投与方法には、内服をはじめ、注射、坐剤、外用など従来か ら多くの形態が存在し、医療の現場では種々の剤形が、患者の症状に応 じて適宜選択されている。錠剤やカプセル剤の内服は、一般的に最も身 近な薬物投与法であるが、薬物の化学的特性により消化管内での酵素分 解や肝での初回通過による代謝を受けやすく、薬効の減弱を余儀なくさ
れる場合もある。これを回避する手段のひとつとして、注射による投与 があるが、患者の苦痛を伴うため、必ずしも望ましい方法とはいえない。
このように、薬物の投与形態は、多くの問題点を抱えている現状であり、
優れた薬効を有する薬物が、投与経路の制約により、その効果を充分発 揮できない例も知られている。また、血中半減期の短い薬物では、薬効 を持続させるために、頻回投与を行う必要があり、このことから派生す る患者のノンコンプライアンスの問題も無視できない。このようなこと から、近年、必要量の薬物を必要とする部位に送り込むことを目的とし た薬物送達システム(Drug Delivery System, D D S)の研究開発が活発に
行われるようになってきた。具体的には、保持体からの薬物の放出性の 制御、剤形の改善、吸収部位での薬物の吸収量の調節、あるいは標的臓 器への選択性向上を目的とするターゲティング療法などがDDSの研究 分野を構成している。
近年、皮膚を薬物投与部位として積極的に活用しようという試みは、
多くの研究論文を生みだし、そのいくつかは経皮吸収型製剤という形で 結実した1−4)。Transderm.Nitro(ニトログリセリン)、フランドルテー
プ S(硝酸イソソルビド)をはじめとするこれらの製剤の有用性は、
薬物投与部位としての皮膚をますます重要なものとして認識させるに至 っている。従来、外用剤は体表面そのものが患部であり、その部位に局
なくすることが可能で、投与回数を減らし、患者のコンプライアンスの 向上を図ることができることなどが挙げられる。また、副作用がみられ た場合、皮膚からシステムを除去することにより薬物治療を容易に中断 することも可能である5)。
しかしながら、皮膚は元来、外因性物質の体内侵入に対する防御壁と しての機能を持っている。皮膚最外層の角質層脂質中のセラミドのアシ ル部分に起因するといわれるこの障壁能により、生体は外界から保護さ れている6)。従って、通常の状態では、治療上充分な量の薬物を皮膚か
ら体内へ送達することは困難である。そこで、この障壁能に積極的に働 きかけ一時的に薬物の透過を促進する方法が、いくつか考案されている。
電気的駆動力を利用するイオントフォレシスは、主として、イオン化し やすく皮膚透過性の低いペプチド系薬物を体内に送達する研究である7
−9)。超音波を利用して薬物の皮膚透過を改善しようとするフォノブオ レシス(ソノフォレシス)は研究例は少ないものの今後の発展に期待が 寄せられている10−12)。また、疎水性の強い皮膚角質層の性質を考慮し
て、皮膚への分配性に優れるプロドラッグ化の試みも行われている13)。
薬物の皮膚透過性を改善する目的で、現在最も活発な研究が行われ ているのは、吸収促進剤の利用に関するものである。これは、皮膚に直 接作用して、一時的にその障壁能を低下させ、薬物の皮膚透過を促進す る物質を併用するものであり、簡便であることから、製剤化への応用性 に優れている。これまでに見いだされた経皮吸収促進剤で最もよく研究 されたものは、おそらくAzoneであろう14)。ネルソンリサーチ社により 発表されたAzoneは、無色澄明無臭の液体で、経皮吸収促進剤としての使 用を目的としてデザイン、合成された化合物である。Azoneは、広範な薬 物に対して優れた吸収促進効果を示すことが知られているが、皮膚の細 胞や粘膜に対する毒性についての報告例もある15 16)。近年、Azoneの 促進作用機序について、詳細な検討が行われ、その主要な作用機序は、
角質細胞間隙を構成する脂質二重層の流動化作用であると考えられてい る17−19)。薬物とAzoneをエステル結合させた二段階方式の経皮送達シ
Okabe 24 25)らは、モデル薬物として非ステロイド系抗炎症薬を用い て、テルペン系化合物の吸収促進活性をスクリーニングした。その結果、
d一リモネンに代表される炭化水素系テルペンに極めて高い活性を見いだ した。著者は、薬物にイオン性薬物であるジクロフェナクナトリウムを 選択し、その経皮吸収に対するテルペン系化合物の促進活性の評価と、
促進機構の解明を目的として詳細な研究を展開した。
ジクロフェナクナトリウムは優れた解熱消炎鎮痛作用を有し、慢性関 節リウマチ、変形性関節症をはじめ、かぜ症候群、咽喉頭炎の際の鎮痛、
消炎の治療薬として広く臨床に用いられている。フェニル酢酸誘導体に 分類されるジクロフェナクナトリウムは、アラキドン酸カスケード中の シクロオキシゲナーゼの活性阻害によるプロスタグランジン合成阻害を 作用機序とするため、胃障害を惹起する危険性がある。そのうえ体内に おける半減期が1.2から1.5時間と短く、経口投与では肝での初回 通過効果による代謝を受けやすい。このようなことからジクロフェナク
ナトリウムの経皮送達システムを開発することは、薬効の持続化や副作 用を回避する上で極めて重要であると判断される。
本研究は、ジクロフェナクナトリウムの経皮吸収型製剤を開発する 上で重要と思われる基礎的データの収集とその解析を中心に行ったもの
である。
第1章 ジクロフェナクナトリウムの経皮 吸収に及ぼす単環モノテルペン類の
促進効果
第1節 序論
透過促進剤の開発は、薬物の皮膚透過性向上のひとつの手段として 重要であることは、緒言でも述べてきたが、吸収促進剤としては、刺激 性や薬理活性がなく、また、安定で効果が可逆的であることが望ましい。
さらに、製剤化を考える上では他の処方因子との混合性に優れ、入手及 び取扱い力溶易であることも重要である。すでに、Azoneとその誘導体26 27)、ピロリドン誘導体28)、高級不飽和脂肪酸29)、シクロヘキサノン 誘導体30)などが有効な促進剤として報告されているが、実際製剤への 応用を考える時、さらに安全で有効な促進剤の開発が必要であると考え
られる。
これまでに、インドメタシンやケトプロフェンのような脂溶性薬物 のゲル軟膏からの経皮吸収に対してd一リモネンをはじめとする単環モノ テルペン類に著明な効果が見いだされている耽万)。また、テルペンの皮 膚刺激性は通常の使用量では充分低いものであることも確認されている。
本章では、5種類の代表的なテルペンを選択してラットにおけるジクロ フェナクナトリウムのin vivo経皮吸収に及ぼす促進効果を検討した31)。
第2節 実験の部 2−1 試薬
実験に用いた単環モノテルペン類は、東京化成工業株式会社製の試 薬特級品を購入して使用した。各テルペンの構造式をFig.1−1に示す。ジ
クロフェナクナトリウムはシグマ社製の特級品を購入して使用した。カ
O
1−Menthol 41−Menthone 1,8−Cine ole〃−Menthane 4−L㎞onene Fig.1−l Chemical stmctures of cyclic monoterpenes used in this study
2−2 ゲル軟膏の調製
ジクロフェナクナトリウムゲル軟膏の処方をTable 1−1に示した。ゲル 軟膏は以下の手順で調製した。まず、ジクロフェナクナトリウム、カル ボキシビニルポリマー、トリエタノールアミンを精製水に溶解した。こ れとは別に、単環モノテルペンをエタノールに溶解した。これらの溶液 を徐々に合わせ均一なゲルが形成されるまで撹拝した。調製したゲル軟 膏は密封容器に入れて、室温で24時間以上静置したのち実験に供した。
2−3 in vivo経皮吸収実験
実験には、体重160−180gのウイスター系雄性ラット(埼玉 実験動物供給所、埼玉)を用いた。ラットをウレタン生理食塩水溶液
(25%;3m1/kg,i.p.)で麻酔後、背位固定し、腹部を電気バリカンを 用)・て除毛した。除毛皮膚にガラスセル(内径16㎜、高さ10㎜)
を接着剤で固定し、その内部にゲル軟膏1.5gを適用した。セル上部をパ ラフィルムで覆うことにより、実験を通じて密封状態を維持した。適用
後、0.5、1、2、4、6、8時間後に頸静脈より血液0.5mlを 採取した。これを遠心分離して、血漿0.2mlを量り、内部標準物質
として、p一ヒドロキシ安息香酸一ローヘキシルエステルを含有するメタノ
ー
ル0.5mlと混合した。これを再度遠心分離したのち、上清をメン ブランフィルター(0.45μm)でろ過して、HPLCによる定量用 試料とした。HPLCによるジクロフェナクの定量条件は以下の通りである。
測定装置:日立655形高速液体クロマトグラフ(Hitachi,Ud.Tokyo Japan)
カラム:YMC PACKED COLUMN A−302 S−5
120A ODS
カラム温度: 室温
移動相:メタノール:水(0.1%リン酸添加)=73:27
Table 1−I
Fo㎜ulae of diclo允nac sodium gel OintmentS COntaining
cyclic monoterpenes
Diclofenac sodium 2.Og
Carboxyvinyl polymer 2.Og Triethanolamine 2.5g
Ethano1 30.Og Cyclic monoterpene 1.0−5.Og
Water ad 100.Og
2−4 血流速度の測定
ゲル軟膏適用部位における血流速度を、レーザー流速計(Model ALF 2100,アドバンス社製)を用いて測定した。1一メントール含有ジク
ロフェナクナトリウムゲル軟膏を経皮吸収実験と同様に適用した。適用 1時間後に、軟膏を除去し、直ちに測定を行った。
2−5 in vi加皮膚透過実験
フランツ型セルにラットの摘出腹部除毛皮膚を装着して、ドナーセ ルに種々のゲル軟膏を、レシーバーセルにpH7.2リン酸緩衝液を適 用した32)。実験は37℃で行った。一定時間毎に、レシーバー溶液の
一部を採取し、レシーバー側に透過したジクロフェナクナトリウム量を
HPLCで定量した。
2−6 ラットにおけるジクロフェナクナトリウムの薬動学的 パラメータの算出
ジクロフェナクナトリウムの生理食塩水溶液をウイスター系雄性ラッ トの頸静脈より静脈内投与した。一定時間毎に投与部位と反対側の頸静 脈から採血して血中ジクロフェナク濃度をHPLCで定量した。この方 法で得られた血中濃度を1一コンパートメントモデルにあてはめ、ジク
ロフェナクの薬動学的パラメータを算出した。
2−7 単環モノテルペン類の物理化学的特性の測定 2−7−1 ジクロフェナクナトリウムの溶解度の測定
1%テルペン含有エタノール/水混合液(体積比3:7)中のジク ロフェナクナトリウムの溶解度を調べた。これらの溶液に過剰量のジク ロフェナクナトリウムを加え、撹拝しながら24時間、37℃に保った。
上清中のジクロフェナクナトリウム濃度をHPLCで定量して、溶解度
を求めた。
て、それぞれの層中のジクロフェナクナトリウムの濃度をHPLCで定
量した。
第3節 単環モノテルペン類の促進効果
FigUle 1−2に示すように、ジクロフェナクナトリウムの吸収は、1一 メントールまたはd1一メントンの共存により、テルペンを含まないコント ロールに比較して著明に促進された。すでに報告されているように、イ ンドメタシンやケトプロフェンのような脂溶性薬物の経皮吸収において 効果の大きかったd一リモネンの効果は比較的弱かった24 25)。Barryと Wi皿ams 33 34)は、1,8一シネオールがin vitroヒト死体皮膚において5一フル
オロウラシルの透過に対して、極めて有効であるが、炭化水素系テルペ ンの効果は小さいことを報告している。一方、ユーカリ油とカンフルは、
摘出ヘアレスマウスの皮膚におけるニコチンのフラックスを増加させる ことが報告されている35)。また、テルピネオールとアセチルテルピネ オールは、ヘアレスマウスの皮膚におけるプレドニゾロンの拡散性を促 進する36)。このように、テルペンの経皮吸収促進効果は薬物や適用条 件によって異なっており、薬物や基剤成分の物理化学的性質に密接に関 連していることが示唆された。
そこで、これらのテルペン類の吸収促進機構を知る目的で、まず初 めにゲル軟膏中のジクロフェナクナトリウムの熱力学的性質に及ぼすテ ルペンの影響を検討した37)。すなわち、それぞれのテルペン1%を含 有する30%エタノール/水混合液中でのジクロフェナクナトリウムの 溶解度及びこれらのテルペンを含有するη一オクタノール/pH7.2リ ン酸緩衝液間のジクロフェナクナトリウムの分配係数を測定した。その 結果、Table 1−Hに示すように、ジクロフェナクナトリウムの溶解度及び
i§
竃1
ξξ
0 2 4 6 8
T㎞e(h)
Fig.1−2 Effect of cyclic monote中enes on the percutaneous absorption of diclofenac from gel ointments containing 1%teΦenes in rats.
●,1−mentho1;O,41−menthone;▲,1,8−cineole;△,」ρ一menthane;
鳳4−limonene;□, contro1.
Each point represents the mean±S.D. for three dete㎝inations.
Table 1−II
Solubility of diclofenac in 30%ethano1−water containing 1%cyclic monoterpenes at 37°C, and the partition coefficients
(K)of diclofenac sodium betweenη一〇ctanol containing l%
cyclic monoterpenes and buffer solution(pH7.2)at 37°C.
Cyclic monoterpene Solubility of diclofenac log K
sodium (9ハ)
1−Mentho1 179.3 1.27 d1−Menthone 176.4 1.29
1,8−Cineole 180.9 1.23
ρ一Menthane 178.8 1.23 4−Limonene 182.6 1.23 Control l61.3 1.28
第4節 1一メントールとA20neの比較
次に、1一メントールの吸収促進活性を、既存の促進剤であるAzoneと 比較した。Figule 1−3に、ジクロフェナクのCm、、とAUCo−8hに対する、
1一メントールとAzoneの影響を示す。 Cm。.およびAUCo−8hは、ゲル軟 膏中の1一メントールの濃度上昇に伴って直線的に増大したが、それとは 対照的に、Azoneの場合には両パラメータは2%までは増加し、それ以上
の濃度では逆に減少する傾向を示した。結果として、3−5%までの濃 度では五メントールの促進活性が有意に大きかった。さらに、1一メントー
ル含有ゲル軟膏の適用では、ジクロフェナクナトリウムの血中濃度は速 やかに定常状態に到達し、その濃度が長時間にわたって維持された。一 方、Azone含有ゲル軟膏の適用では、ジクロフェナクナトリウムの吸収は 比較的遅く、血漿中濃度は徐々に増大した。
Figu鵡1−4は、 in vitro透過実験より得られた、ジクロフェナクナトリ ウムの定常状態のフラックスと透過のラグタイムを示したものである。
in vivo実験で得られた結果と同様に、ゲル軟膏中の1一メントール濃度の増 加に伴ってフラックスは増加し、またラグタイムは2.8時間(1一メン
トール無しの場合)から1.0時間(3%1一メントール添加の場合)へ と減少し定常状態のフラックスはinvivo実験のCm、。およびAUCo−8h によく対応した。
次に、1一メントールを配合したゲル軟膏適用部位の血流速度をレーザ
ー
血流計を用いて測定した。その結果、Fig.1−5に示すように、ゲル軟膏 の適用による血流の変化はほとんど認められず、むしろ、∫一メントール 濃度の増大とともに血流速度が僅かに低下する傾向がみられた。従って、適用部位の血流改善による吸収性の増大は考えられず、またジクロフェ ナクナトリウムの物理化学的性質に対してテルペン類はほとんど影響を 与えないことから、これらの化合物の作用部位は皮膚であり、角質層に 直接作用することによって、その障壁能を変化させることが示唆された。
含§3
う、
5
含昌2・
き
」1・
<
012345 012345
Concentration of Concentration of
enhancers(%) enhancers(%)
Fig.1−3 Effect of 1−menthol and Azone on the percutaneous absorption of diclofenac in rats jηvゴvo.
●,1−menthol;O, Azone.
Each point represents the me㎝±S.D. fbr血ree dete㎜inations.
Significant differences(ρ<0.01)are denoted by asterisks.
500 忌400 言 昌300
8
§200 ぶ§100
の 0
3.5
3.0
b
ε 難
』1:,難鍵
0.o w端 :禄燈 w燃・ 品燃
0123
Concentration of∫−menthol(%)
Fig.1−4 Effect of 1−menthol concentration on the steady圃・state flux
(a)and lag time(b)of diclofenac from excised rat skin iηv匡ぴo.
Each column represents the mean±S.D. for three detemlinations.
2
メ
名
.窪
9
雪
0
≧ 1
唱ooピρq
0
0 1 2 3 Concentration of 1−mentho1(%)
Fig.1−5 Effect of 1−menthol concentration on blood flow rate in the application site of diclofenac sodium gel ointments in rats.
Each colu㎜represents也e me田1±S.D. for th佗e dete㎜madons.
The blood flow rate index represents the blood flow rate l h after treatment with the gel ointment divided by the control value
(no treatment with the gel ointment).
第5節ジクロフェナクの血中濃度の予測
経皮吸収されたジクロフェナクは速やかに定常状態に到達する。そ こで、1一メントール含有ゲル軟膏適用時のフラックスと薬動学的パラメ
ー
タから薬物の定速注入の式(1−1)を用いて、ジクロフェナクの血中濃度 の予測を試みた38)。C=FA/(Ke lxVd) (1−1)
ここでCは、定常状態のジクロフェナクの血中濃度、Fはin vi加透過実 験で得られた定常状態のフラックス、Aは透過面積、 Vdは分布容積、 K,1
は一次消失速度定数である。静脈内投与実験から得られたジクロフェナ クの薬動学的パラメータをTable1』に示す。ジクロフェナクナトリウム の投与量を変化させても、VdとK,1の変動はほとんど認められない。従 って、ラットでのジクロフェナクの薬物体内動態は用量に依存しないも のと考えられる。Figure 1−6に示すように、実験で得られた血中濃度は式
(1−1)による予測値と一致し、in vitroで得られた定常状態のフラックスは、
in vivOでの経皮吸収をよく反映することがわかった。従って、ジクロフ ェナクナトリウムの経皮吸収における律速段階は、主に、皮膚角質層の 透過過程であり、毛細血管の血流等生理的因子の影響は無視し得ると考
えられる。また、1一メントールの作用部位は皮膚角質層であり角質層の 透過抵抗を低下させることによってジクロフェナクの経皮吸収を促進す
るものと推測される。
Table 1−III
First order elimination rate constant(k。1)and distribution volume(V、▲of diclofbnac sodium
in rats
Parameter Dose(mg)
0.2 0.5
kel(h 1) 5.96±1.35 6.19±0.85
Vd(ml) 35.0±7.1 40.9±4.8
Each value represents the mean±S.D. for three dete㎝inations.
1 10
聾已o
1』1・°
§§
Q呵0 10−1
101
踵
馨
§§1。・
8田鑓
菱ξ
10−1
101
100
●
1%1−Mentho1
●・蜘●㎜馴膚』…
10 1
謬課n血。l l・1 Time(h)
?亀.. 岬.....白.....,
100
10 1
02468 02468
Time(h) Time(h)
Fig,1−6 Prediction of plasma concentration of diclofenac fbllowing application of gel ointments containing varying amounts of 1−mentho1.
Shaded areas are the predicted range of plasma concentrations of
diclofenac, calculated ffom the mean values of iηvi8ro steady−state且ux
(Fig.1−4)and pha㎜acokinetic parameters(Table 1−III).
第6節本章のまとめ
テルペン1%、エタノール30%を含有するゲル軟膏からのジクロ フェナクナトリウムの経皮吸収は、1一メントールを配合することによっ て著明に増大した。また、既存の吸収促進剤であるAzoneには至適濃度が 存在したのに対して、1一メントールの効果は濃度依存的であった。さら
に、in vitro皮膚透過実験から得られたジクロフェナクナトリウムの透過 フラックスを用いることにより、in vivoにおける血中濃度を精度よく予 測でき、これより経皮吸収の律速は皮膚角質層の透過過程であると推測
された。
第2章 ジクロフェナクナトリウムの経皮 吸収に及ぼす単環モノテルペン類とエタ
ノールの協同効果
第1節 序論
前章における検討から、ジクロフェナクナトリウムの経皮吸収に対し ては1一メントールが有効な促進剤であることが明かとなったが31)、これ はゲル軟膏中のエタノール添加量が30%に固定された条件下で得られ たものである。インドメタシンやケトプロフェン等の薬物を用いた実験 は軟膏中エタノール添加量がより多い条件下で行われていることを考慮 すると、テルペン類の活性とエタノール添加量の関連性を明確にする必 要があると思われる。
本章では、第1章と同様にラットを用いたin vivo実験により、ジクロ フェナクナトリウムの経皮吸収に対するテルペン類とエタノール添加量 の関連性を統計的手法を用いて評価することを試みた。すなわち、テル ペン添加量とエタノール添加量を要因とする二元配置の実験計画を導入 し、8時間までのみかけのAUC(AUCo−8h)を促進活性の指標とし て分散分析を行い、各要因の寄与を検討した39)。
第2節 実験の部 2−1 試薬
第1章 2−1と同様の試薬を用いた。
2−2 ゲル軟膏の調製
二元配置の実験計画に基づいて、テルペン及びエタノールの添加量 を割り付け、ジクロフェナクナトリウムおよびジクロフェナクのゲル軟
2−3 in vivo経皮吸収実験
第1章 2−3と同様に操作して経皮吸収実験を実施した。
2−4 統計的解析
実験結果の解析には、二元配置分散分析を用いた。計算は、デスク
トップデジタルコンピュータ(PC−9801RX, NECCorp.)
により行った。
第3節 エタノール濃度の影響
まず最初にテルペン添加量を1%に固定し、エタノール添加量の影響 を検討した。種々の濃度のエタノールを添加したゲル軟膏を用いて行っ たin vivo実験の結果を、 Fig.2−1に示す。8時間までの見かけのAUC
(AUCo−8h)を台形則を用いて計算し、それぞれのテルペンの促進効 果を比較するための指標とした。
ゲル軟膏中のエタノール濃度が20%のとき、1,8一シネオールが最も 効果的だったが、それぞれのテルペンの促進活性はコントロールに比較
してそれほど大きくなく、促進効果の差異も小さかった(Fig.2−1A)。こ のような結果が得られた理由として考えられるのは、ゲル軟膏中のエタ ノール添加量が少ないために促進活性を発揮するのに充分なテルペン量 が溶解できなかったことが考えられる。
これに比べて、30%エタノールでは、1一メントールやd1一メントン
の効果が大きかった(Fig.2−1B)。
さらに、エタノール添加量を増やした40%エタノールの場合には、
d一リモネンが最も効果的であり、また、各テルペンの促進効果の差が明 確にあらわれた(Fig.2−1c)。 全体として、エタノール濃度が小さいと、
40
官30
急
号20
3
宕10
0 0 0
abcdef abcdef abcdef
Fig.2−1 Effect of concentration of ethanol on the percutaneous absorption of diclofenac sodium under the existence of various terpenes(1%).
Each column represents the mean±S.D. for three dete㎝inations.
a;1−Mentho1, b;41−Menthone, c;1,8−Cineole, d;ρ一Menthane,
e;4−Limonene, f;Control.
第4節 テルペンとエタノールの協同効果
次に、各エタノール添加量毎に最も促進効果の大きかった3種類の テルペン類(1,8一シネオール、1一メントール、d一リモネン)を用いて、ジ クロフェナクナトリウムの経皮吸収に対するこれらのテルペン添加量と エタノール添加量の関連性を評価するために、二元配置の実験計画を導 入した。これに基づいてゲル軟膏を調製して、in vivo実験を行い、ジク
ロフェナクの血中濃度から促進活性の指標としてAUCo−8hを算出した。
これにより得られた結果をFig.2−2に示す。また、分散分析の結果をTable 2−1に示す。
まず、20%エタノールで最も促進効果の大きかった1,8一シネオール の場合には、3%のシネオールと、30%エタノールが処方された時、
AUCo.8hが特徴的に増大した(Fig.2−2a)。分散分析の結果、1,8一シネオ
ー
ルとエタノールの交互作用は、AUCo−8hの増加に対して高度に有意であった。
また、30%エタノールで効果のあった1一メントールの場合は、2%
または3%の添加量と40%エタノールとの組み合わせで促進効果が高 く、1一メントールもエタノールも相対的に高濃度に処方された場合に促 進活性がより強くなることが示唆された(Fig.2−2b)。上述の1,8一シネオー
ルの場合と同様に、1一メントールとエタノールの交互作用はAUCo−8h の増加に対して高度に有意であった。一方、d一リモネンにおいては、
d一リモネン濃度とエタノール濃度の増大に伴って、AUCo−8hの上昇が
認められ(Fig.2−2c)、1,8一シネオールや1一メントールの場合と異なる挙動を 示した。また、今回の実験範囲では、d一リモネンとエタノールの交互作 用項のAUC o−8hに対する寄与は認められなかった(Tabk》2−1)。以上の
ように、テルペンの吸収促進活性発現にとってエタノールの存在は重要
ψ
(
〜 3 喝
50
§
50
4° §
30き
20 暉1・9
ヨ <
50
喜
1
Table 2−I
ANOVA table fo r AUCo−8hcalculated with diclofenac sodium gel ointment
Factor DFa MSb Fc
O
1,8−C㎞eole 2 1184.7 142.5d Ethanol 2 512.3 61.♂
Interaction 4 338.0 40.6d
Error 18 8.3
1−Menthol 2 827.7 85.1d
Ethano1 2 872.6 89.1d
Interaction 4 343.8 35.3d
Error 18 9.7
4−Limonene 2 918.9 73.Od E也anol 2 1288.7 102.3d
Interaction 4 35.1 2.7
Error 18 12.5
『Degree of freedom.
第5節 ジクロフェナクの経皮吸収
ここまではジクロフェナクのナトリウム塩を用いて実験を行ってき たが、次に、ナトリウムを除いた酸型のジクロフェナクを用いて同様に in vivo実験を行い、ナトリウム塩の場合と比較した。
その結果、Fig.2−3に示すように、 AUCo−8hの変化に対するテルペ ンとエタノール添加量の寄与はジクロフェナクナトリウムの場合とほと んど同様であったが(Table 2−ID、AUCo−8hの著明な減少が認められ た。ゲル軟膏のpHは、ジクロフェナクを処方することによりジクロフ ェナクナトリウムに比較して約0.3の低下を示した。このようなゲル 軟膏のpH変化はジクロフェナクの分子形、イオン形の割合に直接影響 するため、その吸収性はpHにより大きく影響されることが示唆される。
第6節 ジクロフェナクの経皮吸収に対するpHの影響
ゲル軟膏のpHがジクロフェナクナトリウムの吸収にどのように影 響するかについてさらに詳細に検討した。実験には、2%1一メントール
/40%エタノール処方のゲル軟膏を選択し、ゲル軟膏のpHは、トリ
エタノールァミン添加量で調整した。その結果、Fig.2−4に示すように、
AUCo−8hはpHの上昇とともに増大しpH6.5で最大になった。そ れ以上pHが上昇すると、 AUCo.8hは若干低下した。 pHの上昇に伴
って、ジクロフェナクの溶解度は急激に増大するが、ゲル軟膏中のジク ロフェナクは2%に固定されている。そのため高いpH領域では、ジク ロフェナクの熱力学的活動度が低下してAUCo−8hの減少が生じたもの
と推測される。
一方、pH6.5以下では、ゲル軟膏中のイオン形ジクロフェナク の割合はpHの上昇に伴って増加することを考慮すると、経皮吸収にお ける支配的な透過経路といわれる脂質経路とともに、イオン形ジクロフ
50
§
侮
、o! 3
喝
50
50
§
§
ぎ
Table 2−II
ANOVA table fo r AUCo−8h calculated with diclofenac gel oinロnent
Factor DF Msb FC
o
1,8−Cineole 2 595.5 92.5d Ethanol 2 180.1 28.Od Interaction 4 127.2 19.7d Error 18 6.4
1−Menthol 2 40.9 5.5e Ethanol 2 143.1 19.8d
Interaction 4 85.9 11.7d
Error 18 7.3
4−Limonene 2 59.1 19.4d Ethanol 2 264.9 86.9d
Interaction 4 4.8 1.5
Error 18 3.0
aDegree of freedom.
bMean square.
cObserved F value.
争く0.01.
50
§4°
菖3°
冒1: ooo
♂
0
5.5 6.0 6.5 7.0 7.5
Fig.2−4 Effect of gel ointment pH containing 2%1−menthol and 40%ethanol on AUCo−8h.
●,diclofenac sodium;O, diclofenac.
Each point represents the mean±S.D. for three dete㎜inations.
第7節 本章のまとめ
in vivo実験におけるジクロフェナクナトリウムの経皮吸収に対して、
処方中のエタノールとテルペンの促進活性における交互作用を検討した ところ、テルペンの活性発現にはエタノールの共存が必須であることが わかった。最大の活性を得る上で必要な両者の添加量はテルペンの種類 によって大きく異なることが観察された。さらに、ジクロフェナクの経 皮吸収にはゲル軟膏のpHの影響が大きく脂質経路とともにイオン形の 透過経路の存在も示唆された。
第3章 分子形及びイオン形ジクロフェナ クの皮膚透過に対するエタノールの影響
第1節 序論
前章までの実験により、ジクロフェナクの経皮吸収はテルペンの種 類や添加量、また、エタノールの添加量やゲル軟膏のpHによって大き
く影響を受けることが明らかとなった31・39)。しかしながら、in vivO実 験を通して得られる結果は、生体側の因子を含めて非常に多くの要因を 包含しているために透過促進の機構を明らかにするうえで、有用な情報 を得ることは困難iである。従って、ジクロフェナクの皮膚透過性に及ぼ す要因の解析を行うためには、摘出皮膚を用いたin vi加透過実験を行う ことが望ましい。透過実験を行うにあたっては、ヒト皮膚の利用が理想 的ではあるが、我が国においては、入手がきわめて困難であるため、通 常、動物の皮膚を使用することになる。ヘァレスマウスやヘァレスラッ
トの皮膚をはじめとして、表面が角化していることからハムスター頬袋 などが用いられている40−1)。近年では、ヘビの抜け殻を利用する試み
も進められている42 43)。また、動物の皮膚の代替としてその透過性を 再現し得る合成膜の利用も検討されている44)。
透過実験に用いるセルにも数種類の形が知られている。実際製剤の 評価にはフランツ型セル(垂直型セル)が使いやすいが、薬物の透過速 度や透過係数を求めるためには、2一チャンバー拡散セル(水平型セル)
の利用が望ましい45)。 本章では、ジクロフェナクの皮膚透過性に及 ぼす要因を明らかにするために、まず、エタノールの促進作用に着目し た。エタノールは、よく知られた促進剤であり、しばしば、市販の軟膏 の主要な処方成分になっている。Nishiha協46)らは、ジクロフェナクの経
エタノールの効果を定量的に解析した。
薬物の皮膚透過経路については、Higuchiら47)のグループが提唱す る、皮膚は脂質と細孔部分から成る角質層とその下のヒドロゲル様の真 皮から構成されると考えるモデルを用いた考察が一般的であるが、これ に対して、Po鵬とGuy48)は、薬物の透過性を考察するには分子量や分子 容積を考えるべきでそのような方法においては細孔を仮定する必要がな いと述べている。本章では、ジクロフェナクの皮膚透過の機構に対する 若干の考察も加えた49)。
第2節 実験の部
2−1 試薬
ジクロフェナクナトリウムはエスエス製薬株式会社より提供された ものを用いた。ジクロフェナクナトリウムを、酸性条件下(0.1N HCl)で、再結晶することによりジクロフェナクを得た。得られたジ クロフェナクの純度は元素分析の結果からほぼ100%であった。
2−2 皮膚透過実験
ウォータージャケット型2一チャンバー拡散セル(37℃、有効拡散面 積:0.785cm2、セル容積3. Oml) に、ヘアレスラット(WBN、
埼玉実験動物供給所、埼玉)の摘出腹部皮膚を装着した50)。ドナーセ ルにジクロフェナク懸濁液(pHはMc皿vaine緩衝液で調整)を適用した。
レシーバーセルには、pH7.2リン酸緩衝液を適用した。一定時間毎 に、レシーバー溶液の一部を採取して、透過したジクロフェナク量を、
HPLCで定量した。透過実験は8時間まで行い、得られた累積透過量 は、時間に対して充分な直線性を示した。
2−3 ドナー液の調製
2−4 薬物溶解度の測定
ジクロフェナク懸濁液を、37℃で24時間撹絆し、メンブランフ ィルタニ(0.45μm)を用いてろ過したのち、ろ液中のジクロフェ ナク濃度を紫外部分光光度法により求めた。なお、測定は283nm付
近のλm。。により行った。
第3節 ジクロフェナクの皮膚透過に対するpHの影響
Figu㈹3−1aに緩衝液系におけるジクロフェナクの定常状態のフラック スに対するドナー液のpHの影響を示した。ジクロフェナクの定常状態 のフラックスはジクロフェナク懸濁ドナー液のpHの増加に伴って増大 した。この現象は前章におけるin vivo実験の結果とよく一致している31)。
ジクロフェナクの溶解度は、ドナー液のpHの上昇に伴ってイオン形ジ クロフェナクの量が増加することにより増大した。従って、pHの高い 領域でのフラックスの増大は、主に、ドナー液中のイオン形ジクロフェ
ナクの溶解度の増大により惹起されると考えられる。また、この結果は 皮膚を経由するジクロフェナクの透過に対して、イオン形ジクロフェナ
クの寄与が無視できないことを示唆している。緩衝液系のジクロフェナ クの定常状態の透過係数をFig.3−1bに示した。 p H 3−4で透過係数が最 大になったがこれは皮膚表面の電荷が中和され皮膚の疎水性が最大にな
ったことによると考えられる52)。ドナー液中のpHがさらに上昇する とジクロフェナクの透過係数は有意に減少した。例えば、pH3での透 過係数はpH7での透過係数よりおよそ100倍大きかった。ジクロフ ェナクのpK。は、水溶液中25℃の条件下で4.7と報告されているこ とから53)、ジクロフェナクはpH3ではほぼ分子形、 pH7ではほぼ イオン形として存在すると考えられる。このことはジクロフェナクの皮
怠1・1
日
☆
§
』1・°
§
甘 亘10−1
」
10−3 岩
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竃亘1°4
』菖1・5
霞㎡
一7
工 1034567
戸H I坦
Fig.3−1 E輪t of pH on nux and pe㎝eability coefficient of diclo允nac in buf飴r system.
Each colu㎜represents血e mean±S.D.允r three dete㎜inations.
pK。=pH−lo9{(S−So)/So} (3−1)
ここで、Sは各pHでのジクロフェナクの溶解度、 Soは分子形ジクロ フェナクの溶解度である(pH2で測定)。エタノールを含有する種々 のpHの溶媒中でのジクロフェナクの溶解度を、 Table 3−1にまとめた。
pK.は溶解度データを用いて式(3−1)より計算し、 Table 3−1に載せた。
Figu佗3−2に示すようにジクロフェナクのpK、はエタノール濃度の増大 に伴って上昇し、エタノールの重量分率fに対して式(3−2)に示す関係が得
られた。このことは分子形、イオン形の割合は同じpHであってもエタ ノール濃度の影響を受けることを示唆している。
pK.=2.49f+4.05 (3−2)
Figure 3−2に示すように、ドナー液中の分子形ジクロフェナクの割合 はエタノール濃度の増大に伴って増加する。一般的に、コソルベントは 溶液中の薬物の溶解度を上昇させることが知られており、薬物分子がコ
ソルベント中で分子形として存在する場合には、その溶解度S、は以下の ように表される54)。
logS cニlogSw+σf (3−3)
ここでσはコソルベントの溶解力を意味するパラメータ、Swは水溶 液中での薬物の溶解度である。Table 3−1に示したpK、と溶解度を用い
ることにより、種々の割合でエタノールを含有するコソルベント中での 分子形及びイオン形ジクロフェナクの溶解度(sn,si)を求めることがで
きる。Figure 3−3に示すように、分子形もイオン形もその溶解度はエタノ
Table 3−I
Solubility of diclofenac(M)a)in the media con㎞ng ethanol at various pH and pK畠values estimated using the solubility data.
Ethanol pH 2 pH 3 pH 4 pH 5 pH 6 pH 7 pK、b)
(w/w%)
0 5.30x10 65.89x10 68.34x10 65.11x10 54.84x1045.90x10 34.07 20 9.14x10 59.14x1σ51.18x10 44.62x10 42.46x10 33.46xlO 24.49 30 7.26xlO−47.32x1048.90x1041.79x10 38.63x10 39.44x10 24.83
40 3.79x 10 34.77x 10°35。23x10 38.92x10 32.22x 1σ29.98x10 25.05
a)Data wele shown as avemge of thl℃e detemlinations.
b)pK、 values wele calculated fアom Eqn 3−lby using the solubility data at pH 2
asSぴ
5.5
o
田 5.0 自
.2
唱 ト0 4.5
】 自
4.0
0 10 20 30 40
Concentration of ethanol(w/w%)
Fig.3−2 pKa Values of diclo允nac detemined at various concentrations of ethanol.
(10 ご10 1
自
唱10−2
唱
弓10 3
甘 .拾10 4 ロ
自10−5 8
10
0 10 20 30 40
Concentration of ethanol(w/w%)
Fig.3−3 Ef民ct of ethanol on solubility of the nonionized
(5n)and ionized(5z)fo㎜s of diclo允nac.
O,∫ ;●,5 .
Slopes of solid line(σvalue)are of 7.19,5n;3.28,∫ .
Each point represents the mean of three determinations.
Sci=Swix103 28f (3−5)
ここで、Swnは緩衝液中の分子形ジクロフェナクの溶解度を意味し、
実験的にはpH2での溶解度Soにほぼ等しい値であると考えられる。
一方、Swiは緩衝液中のイオン形ジクロフェナクの溶解度である。式
(3−1)より緩衝液中におけるジクロフェナクの各pHにおけるジクロフェ ナクの溶解度Swは次の式で与えられる。
Sw=Swn(1+10pH−pKa) (3−6)
ここで、Swnは式(3−1)のSoで置き換えることができるから、式(3−6)を コソルベントに適用した場合、コソルベント中のジクロフェナクの溶解 度S、は以下のようになる。
Sw=Scn(1+10pH−pKa) (3−7)
式(3−7)におけるS。nとpK.は式(3−2)および式(3−4)を代入することによ り次のように表される。
Sc=Swnx107・19f(1+10pH−4・05−2・49f)
=S。x107 19f(1+10pH−4 °5−2 49f)(3−8)
コソルベント中の各pHにおけるジクロフェナクの溶解度を式(3−8)を 用いて計算した結果、Fig.3−4に示すように実験値とよく一致した。この
ことは式(3−7)がエタノールを含有するコソルベント中の分子形及びイオ ン形ジクロフェナクの割合を見積もるために適用し得ることを示唆して
( 10 ご10 1
お 星10−・ . ▲
§1。3 ▲
ぬ二10−4 昌
自10
ち の 10−6
0 10 20 30 40
Concentration of ethano1(w/w%)
Fig.3−4 Solubilities of diclofξ》nac㎞the cosolvent at vadous pH values.
O,pH 3;●, pH 4;△, pH 5;▲, pH 6;口, pH 7.
Each point represents血e mean of dlree dete㎝inations.
Each line was obtained by using Eqn(3−8).
第5節 ジクロフェナクのフラックスと透過係数に対するエタ ノールの効果
ジクロフェナクの定常状態のフラックスに対するドナー液中のエタ ノールの効果を広範なpHにわたって検討した。その結果をFig.3−5に示 す。いずれの条件下でも緩衝液系に比べてフラックスは約10倍の増大
を示した。Figure 3−6に種々のエタノール濃度におけるジクロフェナクの 透過係数を示す。20%エタノールでは、緩衝液系に比べて透過係数は 約1/10だった。このことはドナー液へのエタノールの添加は透過係 数の減少を導くことを示唆している。この減少はドナー液へのエタノー ルの添加による溶解度の上昇とほぼ反比例の関係にあった。従って、エ タノールの添加によるジクロフェナクのフラックスの増大はエタノール の皮膚への直接作用よりも、むしろドナー液中ジクロフェナクの溶解度 の増大によって引き起こされたと考えられる。30%、40%エタノー ルでも同様の傾向が認められたがpHの変化による効果は20%エタノ
ー
ルの場合より小さくなった。次に、分子形及びイオン形ジクロフェナ クの透過係数に対するエタノールの効果について検討した。全体の透過 フラックスは、分子形のフラックスとイオン形のフラックスの和である と仮定すると、以下に示す式(3−9)が誘導される55)。Jt=pncn+pici (3−9)
ここでpnとpiはそれぞれ分子形、イオン形ジクロフェナクの透過係数 である。Cnとciは、同様にドナー液中の濃度を表している。これらの 値は、以下に示すHenderson−Hasselbalchの式から得られる。
100 100 100
§
甘、×こ〜
ヨ
」
1 1 1
34567
pH PH PH
Fig.3−5 Ef飴ct of pH on flux of diclofenac in hairless rat skin at various concentrations of ethano1.
Each column represents the mean±SD. for three detemlinations.
冒1・4 、2。%E血、n。1
.9(鑓1・−5
§号
誉自10 6
ヨ田…菖1・コ
ρ呵
q) o
10−8
一4
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10,7
10.8
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.5
10一6 ・
10 ・ 、 や
, ℃
ぺぺ s 謬
、 、 s、、 蓑s
10 7−一…裳・・灘灘・
一8
1034567 34567 34567
PH PH PH
Fig.3−6 Effect of pH on pemleability coefficient of diclofenac m hairless rat skin at various concentrations of ethano1.
Each column represents the mean±S.D. for three dete㎝inations.
ここでctはドナー液中のジクロフェナクの総濃度である。ドナー液 中のジクロフェナクは懸濁状態であるので、ここではジクロフェナクの 溶解度を、cnとdを予測するためのctとして用いた。分子形、イオン形
ジクロフェナクの透過係数はpH4とpH6の実験値を用いて式(3−9)よ り算出した。得られた結果は、Fig.3−7に溶解度測定の結果とともに示し た。分子形の透過係数は、ドナー液中のエタノール濃度の増大に伴って 有意に減少した。これは、ドナー液中の分子形の溶解度が上昇したこと により、ドナー液と皮膚表面間の分配係数が低下し、その結果、分子形 の透過係数が減少したものと考えられる。一方、イオン形の透過係数は エタノールの添加によってさほど大きな影響を受けなかったが、ドナー 液中のエタノール濃度が低いとき(20%)には分子形と同様に減少す
る傾向を示した。イオン形の透過機構として皮膚の細孔を経由する経路 を仮定すると、透過係数の減少を説明できない。従って、イオン形も分 子形と同様に、例えばイオンペアのような形で脂質経路を通過している 可能性が示唆される。
第6節 透過係数の理論値と実験値の比較
第5節に示したエタノールの影響をより明確にするために、実験を 通じて皮膚の構造変化が無いことを仮定して、分子形及びイオン形ジク ロフェナクの透過係数に対するエタノールの影響を定量的に解析するこ とを試みた。
薬物の分配係数Kwは、皮膚中の薬物溶解度Smと緩衝液中の薬物溶解 度Swの比で表される。
Kw=Sm/Sw (342)
分子形ジクロフェナクの場合、皮膚とコソルベント間の分配係数Kf
婁 100
皇 1。−1
ぺ
5(10−寮1°:3δΣ
0=110 ヨ唱10一
訟B
ぬのS 10−
§1。コ
ρ鴫 0 10 20 30 40
Concentration of ethanol(w/w%)
Fig.3−7 Pe㎜eability coefficient(P)and solubility(5)of diclofenac as a function of ethanol.
()P ;●,P輌;□,∫〃;■,5」.
Each point represents the mean of three dete㎝inations.