• 検索結果がありません。

爪木崎周辺の白浜層群についての野外観察

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "爪木崎周辺の白浜層群についての野外観察"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

著者 山本 玄珠

雑誌名 静岡地学

巻 101

ページ 29‑32

発行年 2010‑06‑20

出版者 静岡県地学会

URL http://doi.org/10.14945/00024752

(2)

静岡地学 第101号 (2010)

爪木崎周辺の白浜層群についての野外観察

山 本 玄 珠 1.はじめに

伊豆下田市爪木崎周辺は,爪木崎公園として整備されており,この地域は爪木崎から須崎にかけて 遊歩道が整備されている.この爪木崎から須崎にかけての地域には酸性の凝灰質砂岩と安山岩の貫入 岩および溶岩が分布する.本層は研究者によって異なった地層名が記載されているが,本層を詳細に 研究した松本ほか(1985)によって白浜層群須崎層と命名されている.この爪木崎の貫入岩の安山岩 は柱状摂理が発達しており,俵磯として有名である(土, 1985).爪木崎周辺から須崎まで連続してい る遊歩道では,かつて伊豆石として切り出された採掘跡や白浜層群の火山岩が観察される(山本, 2005).

また,爪木崎から南西の須崎および下田まで続く海岸には同様の地層が連続しており,手石港南西部 においては,茨木(2004)によって貫入している安山岩を須崎安山岩として紹介されている.本層も 同層準で,同質の安山岩からなるため,以下須崎安山岩とする.本地域と隣接する下田市南部の弁天 島や石廊崎周辺でも同様の白浜層群が分布しており,その噴出形態は,狩野(1983)や伊藤ほか

(1984)によって酸性凝灰岩層に安山岩などが貫入し噴出した海底火山での噴火が推定されている.爪 木崎周辺については,海底火山の産状を考慮した記載は少ない.また,松本ほか(1985)とは分布が 異なるところがある.本稿では

ここで観察される火山岩の水中 火山活動を表す産状と新しく発 見したマンガン鉱床の位置を記 載する.なおマンガン鉱床の詳 細については別に述べる.図1 に位置図を示す.

2.地質概説

爪木崎周辺はほぼ海岸に沿っ て遊歩道が整備されており,そ こでは白浜層群の地層が観察で きる.本地域の爪木崎付近では,

やや緑色化した凝灰岩と安山岩 を主体とするハイアロクラスタ イトの二次堆積物や黒色の普通 三島長陵高等学校

図 1.調査位置図.

(3)

布している.本凝灰岩は平行葉 理や斜交葉理が発達しており,

爪 木 崎 東 で は N 4 0 ~ 6 0 E , NW10 ~ 20 °で,それが細間付 近でゆるやかに向斜,背斜し,

その西では北に約20 度,ゆるや かに傾斜している.このため,

西部の須崎に向かっての遊歩道 沿いはほぼ同じ層準のものから やや上位の地層を観察すること となる.須崎周辺になるに従っ て,白色の凝灰岩を主とするよ うになる(図2).また,近隣 には須崎鉱山跡もあり,茶褐色

から淡黄色の変質帯が観察される場所も多多存在する.また,本調査地域西方の須崎漁港の恵比寿島 等では,黒褐色の普通輝石安山岩の給源岩脈とそれから発生したハイアロクラスタイトが分布してお り,さらに下田よりでは厚いハイアロクラスタイトの層となる.以下にポイントを絞って岩相につい て詳細に報告する(図2).

3.地質各説

(1)ポイント①:本ポイントは爪木崎東側のスイセン浜の北側の海岸にあたる.本ポイント付近で は,緑色に変質したハイアロクラスタイトからなる.本層は礫と基質とも緑色変質しており,礫と基 質との境界も明確でない部分もある.礫部は変質しているが,輝石と斜長石が観察され複輝石安山岩 からなる.本礫は中礫から巨礫サイズを主とするが,不淘汰である.

(2)ポイント②:本ポイントは爪木崎灯台のスイセン浜の灯台よりの場所にあたる.本地域の海岸 は緑色の凝灰岩からなり,変質による数 mm の黄鉄鉱が見られる.本緑色凝灰岩は,上位になると淘 汰の悪いガラス質の巨礫サイズ~細礫サイズの角礫を多量に含むハイアロクラスタイトになり,その 間に数十 cm の黒色のマンガン鉱床が見られる.このような淘汰の悪いハイアロクラスタイトは,爪 木崎先端方向に分布を広げている.

(3)ポイント③:土(1985)の爪木崎の俵磯および佐野(2004)の爪木崎の柱状節理にあたる(佐 野, 2004 とは地図上の場所が異なる).土(1985)佐野(2004)は凝灰岩などとは時代関係が異なる単 に貫入岩とした.松本ほか(1985)はこれを一連の活動として溶岩として記載している.しかし,松 本ほか(1985)のように爪木崎東海岸には連続しない.本地域には暗灰色から黒色のガラス質の普通 輝石安山岩の溶岩溜りやラバーローブが存在する.灯台側ではこの本溶岩たまりと凝灰岩層おび,ポ イント"の凝灰角礫岩状のハイアロクラスタイトと接しているのが観察される.本溶岩と凝灰岩とは

図 2.調査地域の岩相分布図.

(4)

静岡地学 第101号 (2010)

厚さ9 mm ほどの急冷層で接している.凝灰岩と本安山岩の接点の凝灰岩中にはガラス片が多数みられ,

中には引きちぎられたような形態を示すものなどペペライトが観察される.本安山岩は柱状節理が発 達しており,県指定の天然記念物となっている.本溶岩の柱状節理中には,ジャスパーを観察できる ことがある.

(4)ポイント④:本ポイントは爪木崎より北西側の海岸で,緑色したハイアロクラスタイトの二次 堆積物が観察され,その上位にラーバーローブが累重しているのが観察される.ハイアロクラスタイ トは中礫を主体とし,層状構造が発達している.礫や基質とも淡緑色を呈している.ラバーロー直径 2 ~ 3 m からなり,シートフロー状の溶岩となり,岬の方向に流出しており,爪木崎安山岩と同様な 黒色を呈する普通輝石安山岩である.このラバーローブの流出の延長線上に田牛島があり,松本ほか

(1985)も溶岩として示している.ラバーローブに接する淡緑色のハイアロクラスタイトの二次堆積 物には,中礫サイズの普通輝石安山岩がペペライト状に含まれており,この二次堆積物中に噴出した ことを示している.

(5)ポイント⑤:本ポイント付近は松本ほか(1985)が大きな安山岩の溶岩が分布するとされてい る場所であるが,このような溶岩は観察することは出来なかった.本ポイントは変質が激しく,黄色 の硫化物のが表面を覆い,ケイカ作用により白色化している.しかし,溶岩ではなく,ハイアロクラ スタイトであることは確認できる.

(6)ポイント⑥:本ポイントには,直径 2 ~ 3 m ほどのチューブ状のラバーローブが数本観察され,

その周りでは淘汰の悪いハイアロクラスタイトが観察される.ラバーローブは,岬の方向に流動した ことを示している.またこの付近は白色の平行ラミナの発達した凝灰岩からなる.

(7)ポイント⑦:本ポイントは,遊歩道のベンチから観察した方がよい.遊歩道のベンチ付近から 観察すると下位には凝灰岩から一部凝灰角礫岩からなり,その上位に厚さ 5 m ほどのラバーローブが 岬に向かって観察される.

近づいて観察すると本ローブと凝灰岩の境界は急冷層が発達し,ぺぺライト状のガラス質の礫が観 察される.

(8)ポイント⑧:本ポイントはポイント⑦の南側となるが,遊歩道が尾根を通り,また海岸にでた ところから,旧遊歩道沿いを通って観察される.大きなラバーローブが白色の凝灰岩中に貫入してお り,ほぼ水平に貫入し,まるでクジラの背中のように観察される.本ラバーローブにも急冷層とぺぺ ライトが発達している.凝灰岩にはフレームストラクチュアやクロラミナが発達した部分もあるが大 部分は平行ラミナからなり,小さな堀状の採掘跡となっている.この採掘状跡はこの後にたくさん観 察され,ちょうど満ち潮時には海そこに沈み,引き潮時には陸に現れる位置にある.引き潮時に採掘

(伊豆石)し,船を採掘場のわきに付け,乗せて満ち潮時に船を浮かせて,運び出したそうである.

(9)ポイント⑨:ポイント⑨本ポイントは細間の段と呼ばれている.本ポイントから須崎に向かっ て遊歩道は海岸線から離れるが,ほぼ同じものが遠望として観察でき,遊歩道でも小規模であるが同 じものが観察される.本層は白色化した凝灰岩からなり,場所により少量の細礫サイズの安山岩を含 むことがある.本層の凝灰岩はクロスラミナや平行ラミナが発達し,厚いところでは,2 ~ 3 m ほど ある.須崎港付近では,淡緑色のハイアロクラスタイトが観察される.

(5)

本層には,酸性凝灰岩およびハイアロクラスタイト層が分布し,それに普通輝石安山岩のラバーロ ーブ,や岩脈が分布している.このラバーローブや岩脈には,それから供給されたと思われるペペラ イトやハイアロクラスタイトが分布している.爪木崎の俵磯の安山岩は凝灰岩との接点でぺぺライト が観察されるなど,同時代の活動で給源岩脈である可能性が高い.この安山岩の分布も海岸線で急に 厚さを減じている.この爪木崎の俵磯も陸上に露出しているところがすべて浸食によって削れたとす ると柱状節理の方向から考えても大きな溶岩溜まりが推定できる.このような溶岩だまりがかりにあ ったとすれば,近隣の須崎で報告されている放射状の柱状節理が発達した貫入岩と考えられる.また,

放射状の摂理が発達して,球状になり,ハイアロクラスタイトに変化していく産状は狩野(1983)が 石廊崎付近で観察した安山岩の給源岩脈の産状として観察されている.また,この層の上位では須崎 港恵比寿島付近で同質の安山岩の給源岩脈から大規模なハイアロクラスタイト層に変化しているのが 観察される.以上のように本地域の爪木崎の俵石を含む普通輝石安山岩は,茨木(2004)が近隣で報 告したように,酸性凝灰岩や安山岩の凝灰各礫岩の未固結な浅海に輝石安山岩(須崎安山岩)質の海 底火山活動がおこり,安山岩のラバーローブやハイアロクラスタイトが形成されたものと思われる.

つまり,狩野(1983)が示すように伊豆半島南部から下田にかけてはこの時代,基本的には酸性凝灰 岩中に噴出した安山岩質もしくは酸性岩質の海底火山活動が盛んに行われたものと考えられる.この 地層にマンガン鉱床が発達する.

引用文献

茨木雅子(2004):盥岬の放射状節理. 静岡県教育委員会編, 静岡県の天然記念物(地質鉱物)天然記 念物緊急調査(地質鉱物)報告書, 240-241, 静岡県教育委員会.

伊藤谷生・松本 良・狩野謙一・柵山雅則(1984):マグマ貫入による固結酸性凝灰岩及び変質る流 紋岩礫の溶結―伊豆半島南端部新第三紀白浜層群の例―. 地質学雑誌, 90, 191-205.

狩野謙一(1983):安山岩質海底火山の浅部構造―伊豆半島南端部の新第三系白浜層群に見られる例

―. 静岡大学地球科学研究報告, 8, 9-37.

松本 良・片山哲哉・飯島 東(1985):伊豆半島南部下田周辺の地質の再検討―堆積盆の変遷,火 山活動と熱水変質作用―. 地質学雑誌, 91, 43-63.

佐野貴司(2004):爪木崎の柱状節理. 静岡県教育委員会編, 静岡県の天然記念物(地質鉱物)天然記 念物緊急調査(地質鉱物)報告書, 240-241, 静岡県教育委員会.

土 隆一(1985):爪木崎の俵磯. 土 隆一編, 静岡県の自然景観, 32-33, 第一法規出版.

山本玄株(2005): 2 爪木崎~須崎―白浜層群の海底火山活動―. 地学団体研究会静岡支部編, 静岡の 自然をたずねて, 10-15, 築地書館.

参照

関連したドキュメント

「この崖は今箱の中にあります.箱を取ると中に

真を紹介してきた(村松, 2019b)が,今回は追加試料を 中心に改めて最近の露頭状況と顕微鏡写真を紹介する。 主な火山灰層の対比の例を図 3 に示す。 3-1 名古屋地域

最初の不整合は,手の届かない崖の面の花 閥岩の上に姫浦層群基底部が重なる.ここの

には、試料採集の際にわずかの注意を払えば組んできた。チャートの堆積構造から判定さ

のであろう。 これ は白岩氏 も記憶 されていた。 また ,築 地 の論文中に「新町南端 の小 さな崖崩れ よ り東 に向い北 70° 東 と北 70°

当社は広域火山灰との直接比較や複数の火山灰の上下関係,地層の堆積の様子,

-87- 鳴門教育大学授業実践研究 -学部・大学院の授業改善をめざして- 第15号 2016

※ セロハンテープでそれぞての層の土をはりつける。