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宇土半島周辺の地質と古環境 4 熊本県宇土市立鶴城中学校 2 年 科学部 渡辺萌生 濱﨑しずく 齊藤 凜 1 要旨 概要 地質調査からわかったこと (1) 堆積岩では下部から姫浦層群 赤崎層 白岳砂岩層 教良木層が分布し 姫浦層群と赤崎 層の関係は不整合 赤崎層と白岳砂岩層 白岳砂岩層と教良木層の関

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宇土半島周辺の地質と古環境4

熊本県宇土市立鶴城中学校2年 科学部 渡辺萌生・濱﨑しずく・齊藤 凜 1 要旨、概要 地質調査からわかったこと (1) 堆積岩では下部から姫浦層群・赤崎層・白岳砂岩層・教良木層が分布し、姫浦層群と赤崎 層の関係は不整合、赤崎層と白岳砂岩層、白岳砂岩層と教良木層の関係は整合であると考え られる。高杢島や三角岳では教良木層に角閃石安山岩が貫入して、溶岩ドームを形成したと 考えられる。 (2) 姫浦層群と赤崎層の境界は不整合であるため、姫浦層群から赤崎層へと層が変わる際は大 地が隆起・沈降したりして、大規模な地殻変動があったと考えられる。 (3) 白岳砂岩層は所々数cmの丸みを帯びた礫を挟み、礫には石英や長石を多く含み、黒雲母 を含んでいることもある。このことから当時、遠く離れたところに花崗岩があり、その花崗 岩が風化・侵食され、現在の場所まで流水のはたらきで運搬されてきて、堆積したと考えら れる。 化石からわかること (1) 姫浦層群に見られるアンモナイトやイノセラムスなどは上部の赤崎層や白岳砂岩層にはま ったく見られない。上部の赤崎層や白岳砂岩層に見られる巻貝や二枚貝の化石は下部の姫浦 層群には見られない。中生代から新生代に時代が変わる際に生息する生物が大きく変わるこ とから、大規模な環境の変化があったことが考えられる。 (2) 姫浦層群から示相化石であるサンゴの化石が出ることから、当時は暖かく浅い海だったこ とが考えられる。 (3) 赤崎層や白岳砂岩層が堆積した時代はシジミ貝の仲間である Corbicula がいたことから、 汽水や淡水の環境だったと考えられる。 検証実験から考えられること (1) 板状節理や柱状節理はマグマが地表付近で急激に冷やされるときに形成されるため、深成 岩には形成されないと考えられる。 (2) 砂岩泥岩互層は乱泥流によって堆積した乱泥流堆積物であることが考えられる。 (3) スランプ褶曲は地層が柔らかい状態の時に、海底地滑りや地震により、形成されたと考え られる。 (4) 断層は地殻が押されたり、引いたりして形成されたと考えられる。 (5) 褶曲は両サイドから押されたときに形成されたと考えられる。 (6) リップルマークは波によって海底の表面につけられた模様であることが考えられ、リップ ルマークの模様によって陸地の方向が推定できる。 宇土半島周辺の形成 露頭の観察結果や実験結果をまとめると宇土半島周辺は次の(1)から(5)のようにして形成 されたと考えられる。 (1) 宇土半島は中生代の時代には海底にあった。海底に姫浦層群のもとになる砂や泥が堆積し た。その際に乱泥流や海底地滑りなどが起こった。 (2) 海底に堆積した地層が陸上に隆起する。陸上に現れた部分は流水のはたらきによって侵食 され、不整合面ができあがる。

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(3) 再び、大地は沈降し、海底に沈む。その後、礫や砂や泥が堆積する。白岳砂岩層のもとに なる砂が堆積した当時の環境は、淡水が混じった海水(汽水)域から潮の満ち引きがあるよ うな浅い海だったことが考えられる。大地が両サイドから押されて、褶曲が形成された。 (4) 再び、これらの地層が地殻変動により、傾きながら隆起し、陸上に現れた。 (5) 火山活動により、溶岩ドームが形成され、火砕流や土石流により、凝灰角礫岩が堆積し、 現在の宇土半島が形成された。 私たちが住んでいる宇土半島はどのようにして形成されたかが解明できた。今後は、地滑りや 土砂崩れをしている地域があったらハザードマップを作成し、地域の人に利用してもらい、災害 から町を守ることに利用できると考えられる。 2 研究目的 私たちが住んでいる宇土半島の地質はどのようになっており、いつの時代に、どのようにして形 成されたのか、またそのメカニズムや古環境についても調査する。また、化石が出たら、その種類 についても判別する。 3 研究方法 (1) 海岸・崖・山の沢など露頭がある場所を観察する。 (2) 観察地点の位置を地図で確かめ、現れている露頭をスケッチ、または写真を撮る。 (3) それぞれの地層の色、厚さ、粒の大きさ、かたさ、手でさわった感じを調べて観察する。 地層の走向と傾斜を調べられるところでは、クリノメーターで測定する。 (4) 1つの地層の中で粒の大きさや色の違いはないか、上下の地層との境が平らかどうかを調 べる。 (5) 化石が見つかったら、ていねいに掘り出し、化石の種の判別ができるものは判別をする。 示相化石や示準化石が出たら古環境や地層が堆積した年代を推測する。 (6) すべての露頭で柱状図をつくる。さらに柱状図をもとに地質図をつくる。また全域で観察 した内容をまとめる。 (7) 断層や褶曲や柱状節理など特徴ある地形が見られたら、どのようにして形成されたかを実 験してみる。 写真1 地質調査に使った道具

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4 結果 (1) 調査した露頭の柱状図が図1である。柱状図は14本作成した。 教 良 木 層 白 岳 砂 岩 層 赤 崎 層 姫 浦 層 群 1から14の番号は柱状図番号である。 図1 調査した露頭の柱状図 柱状図の右横の数字は調査した露頭番号である。 縮尺は1cmが100m(1/10000)

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(2) 模式柱状図 地 質 地 柱 層 関 係 層 状 厚 地 層 の よ う す 時 代 名 図 (m) 化 石 沖 不 第 積 礫・砂・泥等の未固結な物質 層 明 不整合 新 四 安凝 西部では凝灰角礫岩が下部の第三紀層の教良木層・白岳砂岩層・赤崎層、中生 山灰 不 代の姫浦層群を不整合に覆う。黒色の輝石を多く含む輝石安山岩を含む凝灰角 岩角 礫岩である。火砕流堆積物と土石流堆積物が混ざってはっきりしない点が多い。 紀 礫 明 もととなった火山は不明である。東部は黒色の角閃石を含む角閃石安山岩で溶 岩 岩ドームを形成している。板状節理が観察される。 不整合 教 約 教良木層の厚さは約400mが分布する。上部は不明である。泥岩と 良 400 砂岩からなり、薄利性のある泥岩を主とする。砂岩の粒の大きさは細 木 m 粒である。教良木層と下部の白岳砂岩層の地層の走向傾斜は同じこと 第 層 以上 より、二つの層は整合関係であると考えられる。 白岳砂岩層の厚さは約400mである。塊状の砂岩層が主となる。風 生 白 約 整 合 化すると黄土色になる。粒の大きさは中粒から粗粒がほとんどである。 岳 200 所々に円磨された直径数 mm から数 cm の石英や長石を含む礫岩の層 三 砂 から Turritella をはさむ。石英と長石の白色の礫を含むことから、白岳砂岩層が堆積 岩 400 Corbicula した当時、宇土半島周辺に花崗岩が分布していたことが考えられる。 層 m 巣穴の化石 礫岩の層の厚さは数 cm から数mくらいである。白岳砂岩層の地層の 走行傾斜と下部の赤崎層の地層の走行傾斜が同じことより、二つの層 は整合関係であると考えられる。巣穴や巻貝の化石を産出する。 紀 整 合 赤 約 赤崎層の厚さは約150mある。赤紫色の塊状な泥岩と砂岩を主とす 40 Turritella る。赤紫色の砂岩の粒の大きさは極細粒である。厚さ数10cmから 崎 m Corbicula 数mの礫岩層を挟む。礫は数 mm から数cmの礫を主とする。最下部 から の化石 は厚さ50 cm から数mくらいの礫岩層である。下部の姫浦層群との 層 80 関係は不整合である。上部の赤崎層の走向傾斜と下部の姫浦層群の走 代 m 向傾斜はほぼ同じことから平行不整合であると考えられる。 不整合 中 姫 姫浦層群の厚さは約400mで下限は不明で 礫岩 後 400 アンモナイト ある。砂岩泥岩互層が主であることより、浅 砂岩 期 浦 m イノセラムス い海で堆積していた土砂が地震などが引き金 泥岩 生 白 以上 サンゴ となり雪崩のように海底斜面を下り、より深 砂岩泥岩 亜 層 サメの歯 いところに再度堆積したと考えられる。姫浦 火山堆積物 紀 下限 の化石 層にはスランプ褶曲が見られることから姫浦 変成岩 代 群 不明 層群が堆積した当時、海底地滑りや地震など 整合 が起きたこと考えられる。 不整合 不整合 不 不 肥変 不 姫浦層群の下部は宮原花崗閃緑岩・蛇紋岩・肥後変成岩が分布している。肥後 明 明 後成 明 変成岩として、結晶質石灰岩・片麻岩が観察される。結晶質石灰岩は雨水によ 岩 る風化・侵食により、鍾乳洞を形成している(権現山鍾乳洞)箇所がある。 図2 調査した地域の模式柱状図 図1の調査した露頭の柱状図をもとに模式柱状図を作成した。

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(3) 図2の模式柱状図をもとに宇土半島周辺の地質図や地質断面図を作成した。(図3・図4 参照)

図3

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(4) 調査地域から化石は新生代の赤崎層と白岳砂岩層、中生代の姫浦層群から見つかった。 白岳砂岩層と赤崎層から、巻貝は Turritella、Faunus の2種類、二枚貝は Anomia、Callista、 Corbicula の3種類、その他に巣穴の化石が見つかった。

姫浦層群からはアンモナイトは Eupachydiscus、Gaudryceras tenuiliratum Yabe、Polyptychoceras の3種類、イノセラムスは Inoceramus japonicus、Inoceramus ezoensis、Inoceramus balticus、 Inoceramus higoensis、Inoceramus amakusensis の5種類、三角貝は Pterotrigonia obsolete Nakano (転石)の1種類、イノセラムス・三角貝以外の二枚貝 Glycymeris amakusensis Nagao、と Fenestricardita ovata Tashiro の2種類、そのほかにネズミザメの歯 Genus cretolamna Gluckman、ヤスリツノガイ Fissidentalium、サンゴ Fossil Coral が見つかった。

化石4 Callista ユウカゲハマグリの仲間 化石3 Anomia ナミマガシワの仲間 化石1 化石2 化石5

Turritella キリガイダマシの仲間 Faunus Corbicula シジミ貝の仲間

化石6 化石7 化石8 化石9

Inoceramus ezoensis Inoceramus balticus Inoceramus higoensis Inoceramus amakusensis

化石 10 化石 11 化石 12 化石 13

Eupachydiscus haradai Polyptychoceras Gaudryceras tenuiliratum Glycymeris amakusensis Nagao タマキガイの仲間

化石 14 化石 16 化石 17

Genus cretolamna Gluckman 化石 15 Fossil Coral Pterotrigonia obsolete Nakano サメの歯 Fissidentalium.sp サンゴ 三角貝

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図5 1から17の番号は化石が出た露頭 黄色が新生代である赤崎層・白岳砂岩層 緑色が中生代である姫浦層群

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新 新 新 新 新 新 新 新 中 中 中 中 中 中 中 中 中 時 代 生 生 生 生 生 生 生 生 生 生 生 生 生 生 生 生 生 代 代 代 代 代 代 代 代 代 代 代 代 代 代 代 代 代 露 頭 番 号 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ⑭ ⑮ ⑯ ⑰ 巻 Turritella ○ ○ ○ ○ ○ 貝 Faunus ○ ○ 二 Anomia ○ 枚 Callista ○ 貝 Corbicula ○ ○ ○ ○ Inoceramus ezoensis ○ ○ ○ ○ Inoceramus balticus ○ ○ ○ ○ Inoceramus higoensis ○ ○ ○ ○ ○ ○ Inoceramus amakusensis ○ ○ ○ ○ ○ ○ Inoceramus japonicus ○ ○ ○ ○ ○ ○ Eupachydiscus haradai ○ ○ ○ ○ ○ Polyptychoceras ○ Gaudryceras tenuiliratum ○ ○ ○ ○ Glycymeris amakusensis Nagao ○ ○ Genus cretolamna Gluckman サメの歯 ○

Fissidentalium.sp ツノガイ ○ Fossil Coral サンゴ ○ 表1 化石が出る種類・時代と露頭の関係 イ ノ セ ラ ム ス ア ン モ ナ イ ト

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(5) 露頭を観察した結果から、板状節理・柱状節理、砂岩泥岩互層、スランプ褶曲、断層、褶 曲、リップルマークが見られた。 写真2 板状節理 写真3 砂岩泥岩互層 写真4 スランプ褶曲 写真5 スランプ褶曲 写真6 断層 写真7 リップルマーク 写真8 リップルマーク 写真9 不整合

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(6) 露頭を観察した結果から、板状節理・柱状節理、砂岩泥岩互層、スランプ褶曲、断層、褶 曲、リップルマークが見られた。これらの構造がどのようにして形成されたかを実験により 検証してみる。 実験1について 宇城市三角町西部(三角岳)の安山岩には板状節理が上天草市松島町高杢島の安山岩や宮崎 県高千穂や矢部町の通潤橋の溶結凝灰岩や呼子の七つ釜の玄武岩や南阿蘇のデイサイトでは 柱状節理が観察されるが、龍ヶ岳町樋島の花崗岩や龍ヶ岳町大道の松ヶ鼻の閃緑岩は板状節 理や柱状節理が観察されない。板状節理や柱状節理はマグマの冷え方の違いに関係するので はないかと考えられる。そのため、デンプン・水・エタノールなどの混合物を使って、どの ようにして板状節理や柱状節理が形成されたかを実験してみる。 実験2について 姫浦層群には砂岩泥岩互層観察される。砂岩泥岩互層がどのように形成されたかを実験に より検証する。 実験3について 姫浦層群にはスランプ褶曲が観察される。スランプ褶曲はどのように形成されたかを実験 により検証する。 実験4について 姫浦層群には断層が観察される。断層はどのように形成されたかを実験により検証する。 実験5について 戸馳島の姫浦層群中に褶曲(向斜)があると推定できる。褶曲はどのように形成されたかを 実験により検証する。 実験6について 龍ヶ岳町の椚島ではリップルマーク(漣痕)が観察される。リップルマークはどのようにし て形成されたかを検証実験をし、リップルマークから古環境を推測する。 (ア) 板状節理・柱状節理の形成実験 実験1 宇城市三角町西部(三角岳)の安山岩(写真10)には板状節理が上天草市松島町高杢島 の安山岩や宮崎県高千穂や矢部町の通潤橋の溶結凝灰岩や呼子の七つ釜の玄武岩(写真11) では柱状節理が観察されるが、龍ヶ岳町樋島の花崗岩や龍ヶ岳町大道の松ヶ鼻の閃緑岩は板 状節理や柱状節理が観察されない。板状節理や柱状節理はマグマの冷え方の違いに関係する のではないかと考えられる。そのため、デンプンと水の混合物を使って、どのようにして板 状節理や柱状節理が形成されたかを実験してみる。 写真10 三角岳の板状節理 写真11 呼子の七ツ釜の柱状節理 角閃石安山岩 玄武岩

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水とデンプンを使って節理の大きさの違いを観察する 実験方法 デンプン40gと水40gをそ れぞれ混合し、シャーレに入れる。 シャーレは電球から10cm・20 cm・30cm・40cm・50 cmの距離に置く。電球は2日間 点灯させておく。また、シャーレ 写真12 実験1をやってい には電灯を当てないものも準備す るようす る。2日後デンプンと水の混合物 写真13 のようすを観察する。実験はそれ 実験1の実験装置 ぞれ10回ずつ行う。 実験結果 電球からの距離と水の減少量と節理の個数は表2となった。写真14から写真19がシャ ーレ内に形成された節理である。 写真14 実験1結果 写真15 実験1結果 写真16 実験1結果 電球からの距離10 cm 電球からの距離20 cm 電球からの距離30 cm 写真20 電球から30 cm 離したときにでき た節理 写真17 実験1結果 写真18 実験1結果 写真19 実験1結果 電球からの距離40 cm 電球からの距離50 cm 電球を点灯しない場合

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0 20 40 60 80 100 10cm 20cm 30cm 40cm 50cm 電球なし 節 理 1 個 の 断 面 積 (m m) 電球からシャーレまでの距離(cm)

電球からの距離と節理の断面積の関係

電球からの 節理の 節理の1個の平均 1日あたりの水の平均減少量(g) 距離(cm) 平均数(個) 断面積(mm2) 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 合計 蒸発 10cm 725個 5.3 mm2 34.5g 5.1g 0.1g 0g 0g 39.7g 速度 20cm 672個 5.7 mm2 27.3g 11.4g 1.1g 0g 0g 39.8g 速い 30cm 305個 12.6 mm2 14.6g 12.0g 10.8g 2.1g 0.3g 39.8g 40cm 151個 25.5 mm2 11.0g 11.5g 10.4g 6.7g 0.1g 39.7g 50cm 74個 52.0 mm2 9.3g 10.9g 9.1g 7.7g 1.5g 38.5g 電球なし 48個 80.1 mm2 6.1g 5.3g 5.2g 4.9g 5.2g 26.7g 遅い 表2 実験1の結果から、電球からの距離と水の平均減少量と節理の個数の関係 ※ シャーレは直径7cmのもを使用した。(シャーレの断面積は 35mm × 35mm ×π で求めら れる) 柱状図1個の平均断面積(mm 2 /個)=シャーレの断面積(mm 2)÷節理 の平均個数(個) で計算を行った。 グラフ1 実験1の結果 電球からシャーレまでの距離と節理の断面積の関係 実験の考察 節理の実験から、電球からの距離(水の乾燥速度)と節理の断面積は関係があることがわか った。電球からの距離が離れると水の蒸発速度が遅くなり、節理の断面積が大きくなること がわかった。また、電球を当てない場合は、水は自然乾燥となり、乾燥速度がもっとも遅く なる。その場合、節理の断面積は最も大きくなった。デンプンに対しての水の乾燥速度とマ グマの冷却速度は同じような関係があると考えられる。マグマが地下深くでゆっくり冷えた 場合、深成岩になるが、この場合には柱状節理や板状節理ができない。デンプンと水の混合 物から、水がゆっくり蒸発した場合は節理の断面積が大きくなり、節理はできにくくなると 考えられる。マグマが地表付近で急に冷え固まるときに柱状節理や板状節理は形成されると 考えられる。

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(イ)砂岩泥岩互層の検証実験 実験2 姫浦層群には砂岩泥岩互層が観察される。砂岩泥岩互層はどのように形成されたかを実験 2により検証する。 実験方法 2種類の砂と水を2つの ペットボトルの中に入れ、写 真20のような装置を組み立 てる。ペットボトルの中身を 左右によく振って、砂と水を よく混ぜる。砂は片方のペッ トボトルの中に入っている状 態にしておく。砂と水の入っ 写真20 たペットボトルをよく振りな 実験2の実験装置 がら、何回かに分けて、もう 一方のペットボトルに流しこ 写真21 む。写真21が砂と水を流し 実験2を行っている 入れているようす。 ようす 実験結果 粒が大きい砂が下に、粒が小さい砂が上に堆積する。砂と泥を流し入れた回数の分、大き い砂と小さい砂の互層ができあがる。写真22 実験考察 砂岩泥岩互層は乱泥流(混濁流)によって堆積した乱泥流堆積物(タービライト)である ことが考えられる。何度も乱泥流を繰り返すことにより砂岩層と泥岩層をリズミカルに繰り 返すと考えられる。 茶色-砂、白-泥を5回繰り返し ている。(5回に分けて流し込んだ) 写真22 実験3の結果

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(ウ)スランプ褶曲(層内褶曲)の検証実験 実験3 姫浦層群にはスランプ褶曲が観察される。スランプ褶曲はどのように形成されたかを実験 3により検証する。 実験方法 蜂蜜に少量の水を入れ、ハンドミキサーを使って、 中に気泡を入れ、蜂蜜内部を観察しやすくし、蜂蜜 に流動性をもたせる。蜂蜜が入った容器を少し傾け る。写真23は実験3の観察装置 実験結果 容器を少し傾けると、蜂蜜が流れ出し、蜂蜜内部 に、スランプ褶曲のような褶曲模様ができあがる。 写真23 実験3の実験装置 スランプ褶曲のような模様(写真24)を観察する ことができる。 実験考察 スランプ褶曲(層内褶曲)は地層が柔らかいときに、地殻変動や地震や海底地滑りなどに よりできると考えられる。 写真24 蜂蜜内の気泡により、スランプ褶曲の模様 ができあがる。 (エ)断層ができる検証実験 実験4 姫浦層群には断層が観察される。断層はどのように形成されたかを実験4により検証する。 写真25 姫浦層群中の断層 写真26 姫浦層群中の断層

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実験方法 紙粘土を薄い板の上でのばし、紙粘土が乾いたところへ、カッターでうすく切れ込みを入 れる。切れ込みを入れた後、写真27から写真30のように両サイドに板を引いたり押した りしてどのようになるかを観察する。 実験結果・考察 断層ができるメカニズムは、固まった地層に、地殻変動により、両サイドから「引く」、 あるいは「押す」と断層ができあがることがわかった。その際、「引く」と正断層、「押す」 と逆断層になる。 写真27 写真28 固くなった紙粘土の表面にカッタ ーナイフで薄く、切れ込みを入れて 正断層になった おき、左右から強く引いてみる。 写真29 写真30 固くなった紙粘土の表面にカッタ ーナイフで薄く、切れ込みを入れて 逆断層になった おき、左右から強く押してみる。 (オ)褶曲ができる検証実験 実験5 図3、図4の地質図及び、地質断面図等より、調査区域には褶曲が(背斜と向斜)あると 考えられる。褶曲はどのように形成されたかを実験5により検証する。 実験方法 固まっていない紙粘土を両サイドから押してみる 実験結果 固まっていない柔らかい紙粘土を両サイドから、押してみると褶曲ができる。その際、下 に曲げられると向斜・上に曲げられると背斜ができあがる。図は向斜である。写真31

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実験考察 褶曲は、地層が柔らかい状態のとき、両サイドから押されるとできあがる。 三角町の戸馳島の南側には北東から南西方向にかけて向斜軸が見られるが、これらの褶曲 はまだ地層が固まっていない状態のとき左右から押されて同時に形成されたと考えられる。 褶曲は地層がまだ柔らかいときに、地殻変動により両サイドから押されるとできあがると 考えられる。 スランプ褶曲(層内褶曲)は地層が柔らかいときに、地殻変動や海底地滑りなどによりでき ると考えられる。

背斜

向斜

写真31 粘土を両サイドから押す。 (カ)リップルマークができる検証実験 実験6 龍ヶ岳町の椚島ではリップルマーク(漣痕)が観察される。リップルマークはどのようにし て形成されたかを実験し、リップルマークから古環境を推測する。 実験方法 ペットボトル内に砂場の砂を200gと水を 1.2 ㍑入れて、ペットボトルを横にして砂が沈 んでしまうまで待つ。沈んでしまったら右図の ようにつねにペットボトルを静かに10分間左 右に揺らし、ペットボトル内の砂を観察する。 写真32 ペットボトルを揺らしている ようす 実験結果 砂の表面にリップルマークと同じ模様ができ た。模様の感覚は 1.5 cmであった。ペットボ 1.5cm トルを揺らした向きに垂直にリップルマークの 模様ができあがった。 写真33 実験後の砂の表面のようす 実験の考察 これらの結果からリップルマークは波によって海底の表面につけられた模様であることが 考えられる。宇土市の御輿海岸の干潟の模様と類似している。また、リップルマークの模様

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は波の方向と直角にできることがわかった。このことより姫浦層群で観察されたリップルマ ークから当時の陸地を推測することができる。波は陸地(海岸線)に対して垂直にできるため、 そのことを利用して図の実験装置を利用して陸地の方角を推測すると中生代白亜紀の時代に は陸地は龍ヶ岳から見て、北西か南東の方角にあったことが推測される。 推測される。 写真34御輿海岸の干潟 写真35リップルマーク測定装置 写真36リップルマーク 宇土市網田の御輿海岸の 干潟の模様がリップルマー クに類似している。陸地に 対して波は垂直に流れ、干 潟の模様は陸地(海岸線)と 平行に形成される。 リップルマークから陸地を測定す る器具。この装置から陸地の方向 は N 60° W(北西方向)かS60 °E(南東方向) ということが考 えられる。 地層の走向傾斜は N30E 40W リップルマークの向きは N10W 10W 陸地の向きは N80W 40W

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5 考察 地質調査からわかったこと (1)堆積岩では下部から姫浦層群・赤崎層・白岳砂岩層・教良木層が分布し、姫浦層群と赤崎層 の関係は不整合、赤崎層と白岳砂岩層、白岳砂岩層と教良木層の関係は整合であると考えられ る。高杢島や三角岳では教良木層に角閃石安山岩が貫入して、溶岩ドームを形成したと考えら れる。 (2)姫浦層群と赤崎層の境界は不整合であるため、姫浦層群から赤崎層へと層が変わる際は大地 が隆起・沈降したりして、大規模な地殻変動があったと考えられる。 (3)白岳砂岩層は所々数cmの丸みを帯びた礫を挟み、礫には石英や長石を多く含み、黒雲母を 含んでいることもある。このことから当時、遠く離れたところに花崗岩があり、その花崗岩が 風化・侵食され、現在の場所まで流水のはたらきで運搬されてきて、堆積したと考えられる。 化石からわかること (1)姫浦層群に見られるアンモナイトやイノセラムスなどは上部の赤崎層や白岳砂岩層にはまっ たく見られない。上部の赤崎層や白岳砂岩層に見られる巻貝や二枚貝の化石は下部の姫浦層群 には見られない。中生代から新生代に時代が変わる際に生息する生物が大きく変わることから、 大規模な環境の変化があったことが考えられる。 (2)姫浦層群から示相化石であるサンゴの化石が出ることから、当時は暖かく浅い海だったこと が考えられる。 (3)赤崎層や白岳砂岩層が堆積した時代はシジミ貝の仲間である Corbicula がいたことから、汽 水や淡水の環境だったと考えられる。 検証実験から考えられること (1)実験1より、板状節理や柱状節理はマグマが地表付近で急激に冷やされるときに形成される ため、深成岩には形成されないと考えられる。 デンプンに対しての水の蒸発速度 遅い 速い マグマの冷え方 遅い(深成岩) 速い(火山岩) 柱状節理・板状節理 できない 大きい 小さい (2)実験2より、砂岩泥岩互層は乱泥流によって堆積した乱泥流堆積物であることが考えられる。 (3)実験3より、スランプ褶曲は地層が柔らかい状態の時に、海底地滑りや地震により、形成さ れたと考えられる。 (4)実験4より、断層は地殻が押されたり、引いたりして形成されたと考えられる。 (5)実験5より、褶曲は両サイドから押されたときに形成されたと考えられる。 (6)実験6より、リップルマークは波によって海底の表面につけられた模様であることが考えら れ、リップルマークの模様によって陸地の方向が推定できる。

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宇土半島とその周辺の形成 (1) 図3、図4の地質図・断面図から、宇土半島の地層は次の(ア)から(オ)のようにして 形成されたと考えられる。 (ア)宇土半島は中生代の時代に は海底にあった。 海底に姫浦層群のもとになる砂や泥が堆積した。 何度も乱泥流を繰り返すことにより砂岩層と泥岩 層をリズミカルに繰り返し、砂岩泥岩互層が形成 された。地層が柔らかいときに、地殻変動や地震 や海底地滑りなどによりスランプ褶曲(層内褶曲) ができた。 (イ)海底に堆積した地層が陸上に隆起する。陸上に 現れた部分は流水のはたらきによって侵食された。 このとき不整合面ができあがる。(上部の層と下部 の層の走向・傾斜が等しい。)(平行不整合)侵食さ れた部分は礫として残る。この礫が赤崎層の最下部 を形成する礫岩となる。 (ウ)再び、大地は沈降し、海底に沈む。その後、赤崎 層や教良木層のもとになる砂や泥が堆積する。白岳 砂岩層のもとになる砂が堆積した当時の環境は、淡 水が混じった海水(汽水)域から潮の満ち引きがある ような浅い海(砂浜)だったことが考えられる。白岳 砂岩層の中に含まれる礫は円磨された石英や長石が 観察されるため、当時、花崗岩が風化・侵食され、 宇土半島まで運搬されてきたと考えられる。大地が 両サイドから押されて、褶曲が形成された。 (エ)再び、これらの地層が地殻変動により、傾きな がら隆起し、陸上に現れた。 (オ)火山活動により、溶岩ドームが形成され、火砕流 や土石流により、凝灰角礫岩が堆積し、現在の宇土 半島が形成された。

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7 参考文献 岡部 鷹司(2001) 御所浦白亜紀資料館報 熊本県版理科学習資料 暁教育出版 熊本県高等学校教育研究会地学部会 熊本の自然をたずねて(2009) 嶋村 清(1997) 御所浦の地質 田代 正之(1997) 天草の地質と化石 南の風社出版 日本の地質 九州地方 (1992) 共立出版 吉本 浩(1985) 熊本県天草郡河浦町一町田周辺の地質 熊本大学理学部進級論文 理科1年生 大日本図書出版、 インターネットのホームページで、天草の地質について調べたアドレス http://www.edu-c.pref.kumamoto.jp/ws/kchigaku/ 8 謝辞 4年前からこの研究に取り組んでいるますが、フィールド調査やまとめなど科学部の顧問吉本教 諭には種々ご指導いただきました。大変お世話になりました。厚くお礼申し上げます。

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写真37露頭番号1 写真38露頭番号1 写真39露頭番号2 写真40露頭番号2 姫浦層群 姫浦層群 断層 木片化石 姫浦層群 スランプ褶曲 写真41露頭番号2 写真42露頭番号3 写真43露頭番号4 写真44露頭番号4 姫浦層群 フトン岩 姫浦層群 巣穴の化石 姫浦層群 不整合 写真45露頭番号4 写真46露頭番号5 写真47露頭番号5 写真48露頭番号7 赤崎層 基底礫岩 凝灰角礫岩 安山岩 凝灰角礫岩 写真49露頭番号 10 写真50露頭番号 12 写真51露頭番号 13 写真52露頭番号 14 上部凝灰角礫岩 赤崎層 白岳砂岩層 赤崎層 写真53露頭番号 16 写真54露頭番号 17 写真55露頭番号 17 写真56露頭番号 19 白岳砂岩層 白岳砂岩層 巣穴 姫浦層群 赤崎層

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写真57露頭番号 20 写真58露頭番号 21 写真59露頭番号 22 写真60露頭番号 23 赤崎層 不整合 姫浦層群 姫浦層群 写真61露頭番号 24 写真62露頭番号 105 写真63露頭番号 113 写真64露頭番号 109 白岳砂岩層 教良木層 教良木層 板状節理 安山岩 写真65露頭番号 109 写真66露頭番号 127 角閃石安山岩溶岩ドーム凝灰角礫岩 写真67 写真68 写真69 写真70 三角町の安山岩 高杢島の安山岩 高千穂の溶結凝灰岩 通潤橋の溶結凝灰岩 板状節理が観察される 柱状節理が観察される 柱状節理が観察される 柱状節理が観察される 写真71 写真72 写真73 呼子の七つ釜 玄武岩 樋島の花崗岩 大道松ヶ鼻の閃緑岩 柱状節理が観察される 柱状節理は見られない 柱状節理は見られない

参照

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