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本邦新生代層の花粉層序学的研究 ? ―二上層群 原川累層―

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

本邦新生代層の花粉層序学的研究 ? ―二上層群 原川累層―

著者 島倉 巳三郎

雑誌名 奈良学芸大学紀要

7

2

ページ 35‑42

発行年 1957‑12‑15

その他のタイトル Pollenstratigraphical Studies of the Japanese Cenozoic Formations II. The Harakawa Formation of the Nijo Group.

URL http://hdl.handle.net/10105/4881

(2)

(35)

本邦新生代層の花粉層序学的研究 正

一 一  言 は',:''i上∴

島 倉 巳 三 郎 (地学教室) (昭和32年10月1日受理)

Misaburo Shimakura : Pollenstratigraphical Studies of the Japanese Cenozoic

Formations H. The I王arakawa Formation of the Nijo Group.

1.緒 a

二上山は金剛山系の一部で奈良盆地の西南部にあり,古くから歴史上また文学上有名である。

この附近に発達する火山岩および堆積岩は二上層群とよばれ,火山層序学的研究には大湯(1910), 吉沢(1930) ,森本ほか5氏(1953)の報告があり,二上火山および噴出岩の様相はかなりよく 知られるに至った。しかし二上層群の上半郡を占める堆積岩は化石に乏しいものとされ,したが って古生物学的研究は殆ど行われていない。

筆者はこの上半部の地層から多くの花粉・胞子化石を見出すことができたので,こゝにその結 果を報告する。ほかの地域に分布する同時代の地層の花粉分析が進めば,二上層群の対比,東に 第三紀火成活動の考寮にも多少役立つであろう。

この研究に要した費用は文部省科学研究費によった。当局ならびに研究の機会をつくって下さ れた東京大学地震研究所森本助教授に感謝の意を表する。

2.也

二上山の地質については多数の報告があるが, 1953年森本・藤田・吉田・松本・市原・笠間の

(I)       (2)

6氏によって詳細な研究が発表され,翌年瀬戸内Vソポジウムの際市原氏により一部訂正された。

その結果によると,この附近の層序は上位から

大阪層群 (城ケ城累層を含む)

二上層群

寺山Dacite 原川累層

ドンズルポ‑累層 基盤:花閥岩

となる。 M

森本はか5氏によると,原川累層は「積算層厚120m以上に達する。碑岩・砂岩・泥岩・含小 角磯凝灰質泥岩からなり,春日山,明神山などの溶岩をはさんでいる。本累層の上・下部には円 傑層が,中部には層理明瞭な泥岩・砂岩が優勢であるが,北部にゆくにつれ疎岩がいちぢるしく なる傾向がある」とのべている。筆者の踏査結果もだいたいこれに一致するが,たゞ4‑5枚の 炭層乃至炭質泥岩層を認めている。下部の磯混り砂質凝灰岩の次に凝灰質泥岩・合炭泥岩・砂岩rサ:

(3)

・ 3i;) 島 倉 巳 三 郎

岩があり,層理が明瞭で上記の中部にあたるらしく,その上にかなり著しい円磯層があり泥岩層 を爽むO更に上位には頻灰質の砂,泥岩があり断続的な炭層を含む。

炭層乃至炭質泥岩層はきわめて薄いもので,膨縮著しく,厚い所で20‑30cmのポケットをつ くる。上部に爽在する石炭は主にtelitで炭化未を含むことが多い。

3.研 究 方 法

(1) Samphrlg

原川累層の模式地である長尾街道附近の原川(大和川の支流)では地層の傾斜がほゞ河流の方 向と一致するので,川筋に沿って上流から順次炭質物を含む泥岩を採取した。採集地点および試 料番号は第1図に示す。

第1図 試料採集地点.斜線は原川累層の分布を示す 試料の外観は次の通りである。

(4)

本邦新生代層の花粉層序学的研究I         (37) なお比較のため関谷北方に分布する大阪層群から採集した試料10を用いたo

(2) Preparation

XI

花粉胞子化石の分離はだいたい第1掛このべた方法によったが,試料の多くは凝灰質でかなり 硬く,炭質物は炭化がやゝ進んでいるため,直接NaOH液を加えても溶けない。それでHNO3

HCl混液による前処理を必要とする。各試料は毎回20‑50gくらいづつ用いたが処理方法の要 点を次にのぺる。

1.試料を粉砕し三角フラスコにとり HNO3・HOI混液を加え,放置後数十分間暖め,次に

%n車晶ヒ

2. NaOH液を加え,しばらく放酎変暖めて泥化させ,尚硬いときは乳鉢で砕き,水を加えて 大審ssにES:し,沈澱‑K高法によh日蝣蝣(I可恒L,ヒ

3.沈泥を茶腕に分注し,しばらく放置後沈毅表層部を集め,更に植物性残直を泥より分離し 遠心沈毅官に移す。

4. HNO3・HCl混液を加え,数十秒間暖めた後数回水洗,更にNaOH液を加え数分間暖め, 数回水洗

5.沈澱を茶腕に移し,しばらく放置した後沈泥表層に植物性残連をスポイトで集め沈澱管に 入れ,余分の水を除きポリエチレン容器に移しHF液を加え放置

6.遠沈管に移し水洗後,解放を経て無水酪酸,硫酸混液を加え,数十秒間暖め,再び酸酸で 洗い更に数回水洗し, NaOH液で処理し,数回水洗する。

7.残連をスライドグラス上に移し,クロラール・ガム又はプレダインで封入

(3) Identification

花粉棒の同定は文献および現生花粉との比較により,百分率は300内外の特定花粉を数えて求 めた。現生花粉の標太はすべてErdtmanのacetolysis法によってつくったプL/パラ‑ Tを用 いたが,比較資料不足のため同定できないものも相当残っている。

試料1からは植物性残淀を得られず,試料3ほ炭質物を含むに拘らず花粉が抽出されず,また 試料8は木質部の破片や多量の菌糸,菌胞子で,花粉は甚だ稀である。

4.花 粉 分 析

(1)花粉化石の種類

分離した花粉・胞子化石のうちには変形・分解しているものもあるが,保存は比較的良好で, 識別し得たおもなものは, Abies, Picea, Pinus, Tsuga, Salix?, Juglans (Pterocaryaを含む) , Alnus Quercus, Betula, Carpinus?, Corylus, Fagus?, Zelkova, Persicaria, Nyssa, Nymphaea‑

ceaei Liquidambar, Caesalpinia, Elaegnus?, Ilex?, Tilia, Rhus, Cornus, Aretha, Ericaceae, Symplocos, Viburunum, Lonicera?, Compositae等である.はかに羊歯植物の胞子もいろいろの

ものが多量あり,未決定の花粉も少くない。

Abies, Picea Pinus, Tsuga等マツ科植物の花粉は,すべての試料に相当量含まれているO と ころがMetasequ〇iaなどスギ科植物の花粉は見出されなかったが,大阪層群からの試料には明か に存在している。

一般に葉の印痕化石や種子・枝葉などの遺体化石に基いてつくられたフロラに於てほ,裸子植 物や羊歯植物が少く,そのため当時の植物界がそのようであったと錯覚し, 「新しい時代のflora

(5)

(38)       島 倉 巳 三 郎

(3)

として当然の事である」と結論するような事が起るが,花粉・胞子化石に基く限りこの様なこと 廻娼ISk

被子植物のうちLiqtridambarやNvssaが含まれていることは1つの特徴であろう。 Liquid‑

ambarは量的にも多く, ZelkovaやSymplocos等と共に殆どすべての試料から見出された Alnus ほどの試料にも大量に存在しているが,普通のAlnus型のものゝはか,いくぶん大型でやゝ膜の うすいものもある。 Juglandaceaeのものに似ているがporus周囲の肥厚で区別できる。

Caesalpiniaは,植物化石としてわが国では未だ知られていなかったものであるが,花粉化石 としては種子島の中新統,奈良市水谷川の地獄谷層から見出されている。 Peγsicariaは東支流の 試料中にかなり含まれており, Co坤ositaeの花粉も僅かながら存在する。

(2)花粉種の百分率

おもな花粉種20をえらんでその百分率を求め, Pollendiagramで示すと第2図のようになるO

s

.ヒQl t al

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j tl .匂..、 溜 iS tSe t3

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I 増 1

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4

5

6 b 6 7

9

■ ■ 10

■ ■■

第2因 原川累層のPollendiagram 伯し10は大阪層群

原川西支流の試料2と4,および東支流の試料5, 6b, 6ほいずれも類似しているが,試料7 ほ花粉の種類ならびに量がやゝ異る。そこで改めて試料6を見直すとその中間にあたる構成を示

しているように思われる。下流即ち地層から云えば上位の部分である試料9はこれらとかなり異 っており,東に上位の大阪層群からの試料では,花粉の裡類に於ても構成比に於ても著しい相違 を示している。

出現率の少い,またあまり重要でないと思われるものを除き Abies Picea, Pinus, Tsuga, Alnus, Quercus Zelkova, Per∫icaria, Liqutdambar, Tilia, Symplocos, Ericaceaeの12属につい

て百分率を求めpollenhistogramをつくってみると第3図のようになり,上にのべた異同が更 に明瞭となる。

(6)

本邦新生代層の花粉層序学的研究 n       (39)

9」ー10

7山上

IL

4十6b十

1234567891011       ,6789101112

第3因 原川累層のPollenhistogram. 1. Abies. 2. Picea. 3. Pinus. 4. Ttuga‑

5. Alnus. 6. Quercus‑ 7. Zelkova‑ 8. Perszcaria. 9. Liquidambar.

10. Tilia., ll. Symplocos‑ 12. Encaoeae.

試料2と5ほ原川累層中の最下部のものであり,試料4, 6および6bはやi上位のものである が,何れもAlnusが圧倒的に多くよく類似している。試料7ではAbies, Zelkovaを増しAlnus が減少し下位のものといくらか異ってくるが,試料9になるとこの傾向は東に著しく,下部層の 特徴は殆ど認められなくなっている。

大阪層群の試料10ではMetasequ〇ia, Nuphur, Sapium等の出現, Abies, Tsuga, Persicariaの 著しい増加, Alnus, Zelkova, Liquidambarの減少,明瞭なJuglansの存在等の点に於て原川累

層のものとは異り,両者の間隙が相当大きいことを示している。

(7)

(4in 島 倉 巳 三 郎

5.考

近畿地方に分布する新第三系のうち,古い方即ちIetter nominationのFi‑G (ほ珂J新統) にあたる積成層に2型あることが知られている。その1つは海棲動物化石を豊富に含み,そのフ ォーナから中新統中上部のものとされているo他の1つは海棲動物化石が殆ど発見されておらず, 若干の陸生管束植物の印痕化石や炭化した遺体,淡水性貝化石を含むものである。これは瀬戸内

の第三紀火成活動と密接な関係があるため火山性淡水堆積型ともよばれ,小豆層群中下部,神戸 層群,石槌碩南層群,二上層群等が属しているという。

(ll

二上層群中化石の発見されたものは原川累層のみで,森本ほか5氏によると「中部の泥岩中に は植物化石がある Cunninghamia, Alnus, Quercus, i/ダトクサの類を主とするが保存悪く種名 同定は困難である」というo こiに花粉化石として約25属を認めたが,なお多数の未決定の花粉

・胞子が存在する。

奈良市附近に分布する地獄谷累層については粉川氏の詳細な研究があり,それによると種子やm

枝葉の遺体化石として23属あげてある。著しく疑問のもの(??づきのもの)と,羊歯および単 子葉植物を除いた19属と,原川累層の花粉属とを比較すると次の様になる。

地獄谷累層産大型化石   l    原川累層産花粉化石

Alnus sp.

Canariwn album Cornus sp.

Foγtuneana sinensts

Liquidambar formosana Magnolia sp.

?Nyssa sp.

Pinus trifolia?

乃runus sp.

Quercus (Cyclob.') sp

Q〝ercus (Lepidob.) sp.

Rosa sp.

Sabta sp.

Stephania Dielstana Stvrax obassioides

? Symplocos sp.

? Tilia sp.

Tnch〇santhes japonica?

Vltis sp.

Aln us Abi es Cornus Caesalpin ia Li qut (由mbar B etula Nyssa Pi nus Persicana

Querc〟 s

OnerCLLS Eric aceae Rhus I/ex

Symplo co s Tilia Tsuga

V iburunum Zelhova

現在未決定の花粉化石も判明したならば更に共通属が増すであろうし,鑑呆植物が枝葉化石で は過少に識別され,花粉化石では高度に出現するものであることも考慮に入れるならば,半数以 上の共通属があることになろう。したがって原川累層と地獄谷累層とはフロラの点に於て密接な

(8)

本邦新生代層の花粉層序学的研究 Ⅲ (41) 関係をもつものと云える。この事は層位学上の知見と矛盾しない。

花粉分析の結果によれば,原川累層の上部と下部ではかなり著しい相違があるから, 2層に分 けることも考えられる。そのときは中部にある磯層の底を境とするがよいであろう。しかしこの このことは広く他の地域もしらべた上で決めるべきである。

6.捕 E=3

奈良県北葛城郡二上山附近に分布する二上層群原川累層の花粉分析を行った結果次のことが分 った。

1.原川累層の花粉フロラはAlr.usが圧倒的に多く I.iquidambar, Nyssa, Zelkova, Sympl ocos等で特徴づけられ,なおCaesalpvnia, Persicaria,等注意すべきものを含むO裸子植 物中Abies, PinuF Tsuga等が多いがMetasequo毎の存在は確実でない。

2.原川累層は花粉分析の結果から上下2層に分けることができる。

3.原川累層の花粉フロラは,種子等の遺体化石によって示された地獄谷累層(?H3‑G‑H) のフロラと相当多くの共通属を含んでいる。

引  用  文  献

(1)森本良平・藤田和夫・吉田博直・松本隆・市原実・笠間太郎(1953) :二上山の地質,地球科学11号 (2〕市原実(1954) :四国東部及び近畿に於ける̀̀瀬戸内"の開腹点,地向斜特別号瀬戸内シンポジウム (3)粉川昭平C1956D :奈良県三笠山およびその周辺の火山層序学的様相

(4)島倉巳三郎(1956) :本邦新生代層の託粉層序学的研究I,奈良学大紀要 1, 2 , (5)藤敬史Q9565 :奈艮盆地西南部の地質,奈艮学大卒論(手記)

(9)

(42)      島 倉 巳 三 郎

図 版 の 説 明

二上層群原川累層産花粉化石

1. Pinus sp.

2. Tsuga sp.

3. Juglans sp.

4. Alnus sp.

5. Betula sp.

6. Corylus? sp.

7. Zelkova sp.

8. Persicaria sp.

9, 10. Tilia sp.

ll, 12. Liquidambar sp.

13, 14. Elaegnus? sp.

15, 16. Caesalpinia sp.

17, 18, 19. Nyssa sp.

20. Ericaceae

21, 22. Symplocos sp.

23. Compositae

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参照

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西山層 椎谷層 上部寺泊層

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